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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認めない。無効とする(申立て全部成立) B05C
審判 全部無効 1項2号公然実施 訂正を認めない。無効とする(申立て全部成立) B05C
管理番号 1122960
審判番号 審判1998-35147  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2005-10-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-04-07 
確定日 2005-09-20 
事件の表示 上記当事者間の登録第2534772号「自動壁紙糊付機」の実用新案登録無効審判事件についてされた平成11年 6月23日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成11年(行ケ)第0263号平成15年 3月27日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。   
結論 登録第2534772号の実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 手続の経緯
1.実用新案登録第2534772号の請求項1に係る考案の実用新案登録 は,平成4年5月14日に実用新案登録出願(平成4年実用新案登録願 38553号),平成9年2月13日に実用新案権の設定の登録がなさ れたものである。
2.これに対し,平成10年4月7日に,極東産機株式会社(以下,「本件 請求人」という。)より本件実用新案登録を無効とすることについて ,本件審判請求(以下,「本件無効審判請求」という。)がなされた。3.その後,平成10年5月21日に審判請求書の副本が実用新案権者であ るヤヨイ化学工業株式会社(以下,「本件被請求人」という。)に送達 され,平成10年7月21日に訂正請求(以下,「本件訂正請求」とい う。)がなされた。
4.平成11年6月23日に,本件無効審判請求につき,「訂正を認める。 本件審判の請求は,成り立たない。審判費用は,請求人の負担とする。 」旨の審決がなされ,平成11年8月12日に,本件請求人により東京 高等裁判所に訴えが提起された(平成11年行ケ第263号)。
5.平成15年3月27日に,「特許庁が平成10年審判第35147号事 件について平成11年6月23日にした審決を取り消す。訴訟費用は被 告の負担とする。」旨の判決が言い渡され,本件被請求人により平成1 5年4月10日に最高裁判所に上告されたが,この上告は平成15年9 月26日に棄却された。
6.上記5の判決言い渡し後,本件被請求人により平成15年4月24日に 「実用新案登録第2534772号の明細書を請求書に添付した訂正明細 書のとおり訂正する」旨の訂正審判請求(訂正2003-39080号 ,以下,「後の訂正審判請求」という。)がなされた。
7.後の訂正審判請求に対して,平成15年7月16日(発送(再送);平成 15年7月29日)付で訂正拒絶理由の通知がなされると,本件被請求 人は,平成15年8月6日に意見書及び手続補正書を提出した。
8.平成15年10月20日付けで,後の訂正審判請求に対して「本件審判 の請求は成り立たない。」旨の審決がなされたところ,これを不服とし て,本件被請求人により,平成15年11月10日に東京高等裁判所に 訴え(平成15年(行ケ)第493号)が提起されたが,この訴えは, 平成16年3月22日付けで,取り下げられた。
9.上記8の審決後の平成15年11月16日に,本件訂正請求に対して, 訂正拒絶理由の通知がなされたところ(発送:平成15年12月1日), 平成16年1月29日に,本件被請求人により,意見書が提出された。10.平成16年3月26日に,本件被請求人により,後の訂正審判請求に係 る訴えを取り下げた旨の上申書が提出された。

第2 訂正についての当審の判断
1.訂正の内容
本件訂正請求で請求された訂正の内容は,訂正請求書及び全文訂正明細書の記載からみて,次の訂正事項(1),(2)のとおりである。
(1)訂正事項(1)
実用新案登録明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1について,
「モータにより連動して回転駆動される複数のロールによりシート状壁装材を所定の経路に沿って移動させつつ,糊桶内の糊を糊付けロールにより前記壁装材の裏面に連続的に転写塗布する自動壁紙糊付機において,
入側ピンチロールの下側ロールを,フレーム側板に設けられた長穴又はU字穴によって軸受したことを特徴とする自動壁紙糊付機。」(以下,「訂正前の請求項1」という。)とあるのを,
「モータにより連動して回転駆動される複数のロールによりシート状壁装材を所定の経路に沿って移動させつつ,本体部に内蔵された糊桶内の糊を糊付ロールにより前記壁装材の裏面に連続的に塗布する自動壁紙糊付機において,
下側ピンチロールとドクターロールは互いに回転方向が逆になるものであり,前記下側ピンチロールとドクターロールは互いの間隔が手指の太さより狭い位置に設置してあり,しかも両ロール間は内側に向かう回転方向となっており, 前記糊付けロールが,フレーム側板に軸受され, 前記下側ピンチロールを,フレーム側板に設けられた長穴又はU字穴によって軸受したことを特徴とする自動壁紙糊付機。」(以下,「訂正後の請求項1」という。)
と訂正する(以下,「訂正事項1」という。)。
なお,下線は,訂正個所を明確にするために当審で付したものである。

(2)訂正事項(2)
実用新案登録明細書の考案の詳細な説明の記載を,訂正明細書中の考案の詳細な説明のとおりに訂正する(記載省略)。

2.訂正拒絶理由の概要
上記第1,9の訂正拒絶理由の概要は,次のとおりである。
「本件訂正考案は,本件出願前に公然実施をされた「β-MAX2に係る糊付機の考案」(以下,「β-MAX2」という。)と同一であるので,平成5年法改正前の実用新案法第3条第1項の規定により,独立して実用新案登録を受けることができない。
また,本件訂正考案は,本件出願前に公然実施をされたβ-MAX2に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものであるので,旧実用新案法第3条第2項の規定により,独立して実用新案登録を受けることができない。
したがって,本件訂正は,平成5年法改正前の実用新案法第39条第3項に規定された要件を満たしていない。」

3.当審の判断
(1)訂正の目的の適否
上記訂正事項(1)に係る訂正は,訂正前の請求項1における「糊桶」に「本体部に内蔵された」との限定を加え,「下側ピンチロールとドクターロールは互いに回転方向が逆になるものであり,前記下側ピンチロールとドクターロールは互いの間隔が手指の太さより狭い位置に設置してあり,しかも両ロール間は内側に向かう回転方向となっており,前記糊付けロールが,フレーム側板に軸受され」る点を新たな構成として付加するとともに,訂正前の請求項1における「入側ピンチロールの下側ロール」を,訂正前の明細書の記載に整合させて「下側ピンチロール」とするものであるから,実用新案登録請求の範囲の減縮,及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

(2)独立実用新案登録要件
上記(1)のとおり,本件訂正は,実用新案登録請求の範囲の減縮,及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当するので,訂正後の実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案(以下,「本件訂正考案」という。)が,実用新案登録出願の際,独立して実用新案登録を受けることができるものであるか否かについて,以下に検討する
(2-1)本件訂正考案
本件訂正考案は,上記訂正後の明細書(以下,「本件訂正明細書」という。)及び願書に添付された図面(以下,「本件図面」という。)の記載からみて,その実用新案登録請求の範囲の請求項1(以下,「訂正後の実用新案登録請求の範囲」という。)に記載されたとおりのものであると認める(上記1,(1)の「訂正事項(1)」参照)。

(2-2)対比する公然実施をされた考案
極東産機株式会社昭和63年9月1日発行「総合カタログ,インテリア業務用,NO.3」(本件無効審判請求における甲第3号証,以下「資料1」という。),極東産機株式会社作成「フルチョイス糊付機 β-MAX2の取扱説明書(昭和58年版)」(本件無効審判請求における甲第4号証,以下「資料2」という。),室内装飾新聞社昭和63年8月1日発行「室内装飾新聞」(本件無効審判請求における甲第5号証,以下「資料3」という。),及び平成11年2月9日に実施された証人調べの証人調書(以下,「調書」という。)によると,資料1,資料2に示されたβ-MAX2という糊付機は,本件の実用新案登録出願前において日本国内において公然実施をされた考案であると認められる(特に調書第4頁?第5頁における004-010の質疑応答参照)。
そして,資料1,資料2及び調書には,β-MAX2という糊付機に関して,次のとおりの事項が記載されているものと認められる。
(a)「・・・・・ベーターマックスII型があれば,通常は自動(家庭用 AC100V)で。現場で電気が使えない,停電した-自動車用バ ッテリー(DC12V)から,もしくは手動で。・・・・・」
(資料1第23頁)
(b)「自動でも手動でも出来るということで,送り出しローラーというも のがありまして,そのローラーが自動糊付け機として使用する時は, モーターで駆動されてクロスを上の検尺ローラーとの間でピンチロー ラーにしてクロスを送り出します。・・・」(調書第5頁における0 14の質疑応答)
(c)資料2の第8頁第6図及び第9頁第7図から,送リ出シローラー,糊 付ローラーによりクロス原反を,所定の経路に沿って移動させつつ, 本体内部の糊が供給される糊箱内の糊を糊付ローラーにより前記クロ ス原反の裏面に連続的に塗布すること,及び送リ出シローラーとドク ターローラーは互いに回転方向が逆になるものであり,内側に向かう 回転方向となっていることが看取できる。
(d)資料2の第8頁第6図及び第14頁第14図から,送リ出シローラー が糊箱の側壁上部に突設された保持部に設けられた上部開放穴によっ て軸受され,糊付ローラーが糊箱の側壁に軸受されていることが看取 できる。
(e)送リ出シローラーとドクターローラーは互いの間隔が概略15mm- 20mmであること,すなわち互いの間隔が手指の太さより狭い位置 に設置してあること(調書第20頁における113の質疑応答)。

以上を総合すると,β-MAX2は,次のとおりの考案であると認められる。
「モータにより連動して回転駆動される複数のローラーによりクロス原反を,所定の経路に沿って移動させつつ,本体内部の糊が供給される糊箱内の糊を糊付ローラーにより前記クロス原反の裏面に連続的に塗布する手動型と自動型の切替型のクロス原反糊付機において,
送リ出シローラーとドクターローラーは互いに回転方向が逆になるものであり,
前記送リ出シローラーとドクターローラーは互いの間隔が手指の太さより狭い位置に設置してあり,しかも両ローラー間は内側に向かう回転方向となっており,
前記糊付けローラーが,前記糊箱の側壁に軸受され,
前記送リ出シローラーを,前記糊箱の側壁上部に突設された保持部に設けられた上部開放穴によって軸受けした手動型と自動型の切替型のクロス原反糊付機。」

(2-3)本件訂正考案とβ-MAX2との対比
本件訂正考案と上記β-MAX2とを対比する。
(a)β-MAX2の「ローラー」は,その機能に照らして,本件訂正考案 の「ロール」に相当し,以下同様に「送リ出シローラー」は「下側ピ ンチロール」に,そして,「糊箱」は「糊桶」にそれぞれ相当する。(b)資料1及び資料2を総合すれば,β-MAX2がインテリア業務用の クロス原反の糊付機であり,本件訂正考案の「シート状壁装材」の実 施例として,本件訂正明細書にも「壁装材(クロス)」,「クロスロ ール27」等と記載されていることから,β-MAX2における「ク ロス原反」も,「シート状壁装材」に含まれ,β-MAX2のクロス 原反糊付機も壁紙糊付機といえる。
(c)β-MAX2は,手動型と自動型を切り替えることができる糊付機で あるが,この糊付機は,自動壁紙糊付機としての構成を含むことは明 らかであるから,β-MAX2の「糊付機」は,本件訂正考案の「自 動壁紙糊付機」に相当する。
(d)β-MAX2において,「糊箱」は本体内部にあるから,本体部に内 蔵されたものといえる。
(e)β-MAX2においては,送リ出シローラー(下側ピンチロール)は ,糊箱の側壁上部に突設された保持部の上部開放穴に軸受けされてい るが,資料2の第8頁及び第14頁には,この上部開放穴の下端は, 送リ出シローラーを軸受けするため,少なくとも半円形状となってお り,送リ出シローラーを取り外すことが記載されているから,この上 部開放穴は,上方に該半円形状の直径に相当する幅の開口を有してい るものと解することができる。そしてこのような形状の穴は,一般的 にU字穴と称することができるから,β-MAX2の送リ出シローラ ーを軸受けする上部開放穴も,U字穴ということができる。

以上(a)?(e)の検討結果,及びβ-MAX2の「糊箱の側壁」と本件訂正考案の「フレーム側板」とは,ともに糊付ローラーあるいは糊付ロールを軸受する側板である限りにおいて一致し,かつ,β-MAX2の「糊箱の側壁上部に突設された保持部」と本件訂正考案の「フレーム側板」とは,ともに送リ出シローラーあるいは下側ピンチロールの軸受板であるかぎりにおいて一致していることを総合すると,本件訂正考案とβ-MAX2とは,「モータにより連動して回転駆動される複数のロールによりシート状壁装材を所定の経路に沿って移動させつつ,本体部に内蔵された糊桶内の糊を糊付ロールにより前記壁装材の裏面に連続的に塗布する自動壁紙糊付機において,
下側ピンチロールとドクターロールは互いに回転方向が逆になるものであり,前記下側ピンチロールとドクターロールは互いの間隔が手指の太さより狭い位置に設置してあり,しかも両ロール間は内側に向かう回転方向となっており,
前記糊付けロールが,側板に軸受され,
前記下側ピンチロールを,軸受板に設けられたU字穴によって軸受した自動壁紙糊付機。」
で一致し,次の点で一応相違する。
〈相違点1〉
糊付ロールあるいは糊付ローラの軸受に関し,本件訂正考案においては,「フレーム側板」に軸受されているのに対して,β-MAX2においては,「糊箱の側壁」に軸受されている点。
〈相違点2〉
下側ピンチロールあるいは送リ出シローラーを軸受けする軸受板に関して,本件訂正考案においては,「フレーム側板」であるのに対し,β-MAX2においては,「糊箱の側壁上部に突設された保持部」である点。

(2-4)相違点についての判断
〈相違点1について〉
訂正後の実用新案登録請求の範囲には,「フレーム側板」と糊桶の関係について明確には記載されていないが,仮にフレーム側板と糊桶とが別の部材であると解しても,軸受を別の機能部品の側板に設けたり,専用の側板に設けたりすることは,機械設計上,当業者が適宜選択し得ることであり,相違点1は,実質的な相違点であるとはいうことはできない。

〈相違点2について〉
β-MAX2においては,送リ出シローラー(下側ピンチロール)を係止するための保持部を糊桶の側壁上部に突設し,この保持部に軸受のためのU字溝を設けたものであることが認められ,上記保持部に軸受をするという構成を採ることによってもたらされる糊付機の機能として,特段のものが存在することをうかがわせる証拠はない。
一般に,ある構成部材を設計するに際して,一部材として構成するか,複数の部材を組み合わせたものとして構成するかは,当業者が適宜なし得る設計事項に属するものと解されるところ,上記相違点は,下側ピンチロール又は送リ出シローラーの軸受のためのU字溝が,直接フレーム側板に設けられているか,糊箱の側壁(フレーム側板)上部に突設された保持部に設けられているかという差異であって,上記のとおり,この差異によって糊付機の機能として特段のものが存在することをうかがわせる証拠はないのであるから,この相違点は,当業者が糊付機の設計にあたり,適宜なし得る程度の単なる設計事項の範囲に属するものというべきであり,実質的な相違点であるとはいうことはできない。

以上のとおりであるから,本件訂正考案は,本件出願前に公然実施をされたβ-MAX2と同一であると認められるので,平成5年法改正前の実用新案法第3条第1項の規定により,独立して実用新案登録を受けることができない。
また,本件訂正考案は,本件出願前に公然実施をされたβ-MAX2に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものでもあるので,旧実用新案法第3条第2項の規定により,独立して実用新案登録を受けることができないということもできる。

(3)本件被請求人の主張についての検討
これまでの経緯を踏まえ,本件被請求人が主張している点に関して,当審の判断を下記に示す。
(3-1)内蔵について
本件被請求人は,本件訂正考案においては糊桶が内蔵されており,本体から着脱が可能であるのに対して,β-MAX2においては糊桶が本体と一体であって,本体から着脱が不可能である点を相違点(以下,「相違点A」という。)として挙げる。
この点について検討すると,考案の要旨の認定は,特段の事情のない限り,願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲の記載に基づいてされるべきであり,その記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか,一見してその記載が誤記であることが明細書の考案の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなどの特段の事情がある場合に限って,明細書の考案の詳細な説明の記載を参酌することが許されるにすぎないものと解するのが相当である(最高裁第2小法廷判決平成3年3月8日・民集45巻3号123頁参照)。
そこで,訂正後の実用新案登録請求の範囲の記載をみると,「本体部に内蔵された糊桶内の…」となっている。この「内蔵」との語義は,「内部に収蔵すること」(広辞苑第4版)とされており,「内蔵」という語が「着脱可能」又は「収蔵する本体から取り出せる」との意味を含むものとは解されない。
したがって,訂正後の実用新案登録請求の範囲の記載によれば,「本体の内部に収蔵された糊桶」ということにとどまり,それ以上の限定をする記載は存在せず,糊桶が着脱可能か否かを特定するものではないというべきである。以上は,一義的に明確に理解することができるものであり,この理解を前提とすることによって,実用新案登録請求の範囲の理解に矛盾等が生じることもない。したがって,本件被請求人主張のように,本件訂正考案において,「糊桶が本体から着脱が可能である(本体から取り出せる)」との解釈をすることは,実用新案登録請求の範囲の記載に基づかないものであって,許されない。
なお,念のため,本件訂正明細書の考案の詳細な説明の欄を参酌しても,「糊桶が本体から着脱が可能である(本体から取り出せる)」旨の記載は存在しないのであって,上記本件被請求人の主張の解釈が許されないことは一層明白である。
そして,「内蔵」という語に「着脱可能」という意味を込めるという,通常の用語法から逸脱した用法をすることが,当業者の間で確立し,業界において一義的に理解されていることを認め得るような証拠はない。また,「内蔵型」と称することで,当然に,糊桶が本体から着脱可能な構成を意味するものと,当業者において一義的に理解されていることを認めるべき証拠もない。そもそも,考案の要旨認定は,前述のとおり実用新案登録請求の範囲の記載に基づいてなされるべきであり,これにより何ら問題なく一義的に理解可能なのであるから,本件被請求人の主張は,到底採用することができない。
そうすると,本件被請求人が主張する相違点Aは,実質的な相違点であるとはいうことができない。

(3-2)自動(専用)型か手動・自動切替型かという点について
本件被請求人は,相違点として,本件訂正考案は自動専用型の糊付機に関する考案であるのに対して,β-MAX2は自動型と手動型の切換え型であるという点(以下,「相違点B」という。)を挙げる。
この点について検討すると,訂正後の実用新案登録請求の範囲の記載をみると,「自動壁紙糊付機」となっており,自動「専用」型である旨の記載はなく(念のため,考案の詳細な説明欄をみても同様である。),本件被請求人の主張は前提を欠く。また,β-MAX2が手動型と自動型の切替型の糊付機であることは認められるが,いずれにしても,β-MAX2が「自動壁紙糊付機」として使用し得ることに変わりはない。
したがって,本件被請求人が主張する相違点Bの点は,実質的な相違点であるとはいうことができない。

(3-3)糊付けロールの軸受態様の点について
本件被請求人は,相違点として,本件訂正考案においては,「糊付けロール」が糊桶とは別体の本体フレーム側板に固定された状態で軸受されている構成であるのに対して,β-MAX2においては,「糊付ローラー」が糊桶の側板に直接に着脱可能に軸受されているという点(以下,「相違点C」という。)を挙げる。
この点について検討すると,訂正後の実用新案登録請求の範囲の請求項1の記載(全文訂正明細書)をみると,「糊付けロールが,フレーム側板に軸受され」となっているだけであり,本件被請求人主張のように「本体フレーム側板」が糊桶とは別体である旨の記載,及び「固定された状態で」軸受されている旨の記載はない。なお,「軸受」とは,「機械などで,固定部と回転部との間にあって回転部を支える装置」(広辞苑第5版)という意味である上,上記明細書に「糊付けロールが,フレーム側板に軸受され」という以上の限定を加える記載はないので,糊付けロールが固定された状態か着脱可能かは,特定されていないものというほかない。また,「フレーム側板」に軸受されているとの記載が,直ちに糊付けロールが固定されていることを意味することにはならない。
したがって,本件被請求人の相違点Cに関する主張は前提を欠く。

(3-4)下側ピンチローラの軸受構成について
本件被請求人は,相違点として本件訂正考案においては,「下側ピンチロール」が糊桶の両側に位置する本体フレーム側板に設けられた長穴又はU字穴に軸受されている構成であるのに対して,β-MAX2においては,「送り出しローラー」(下側ピンチロール)が糊桶の側面板から上部に突出する略半円状の切欠き部からなる保持部で軸受されている点(以下,「相違点D」という。)を挙げる。
この相違点Dについては,前記第2,3,(2)の(2-4)の「〈相違点2について〉」で述べたとおりである。
なお,両者のU字穴の深さについて,図面上からは若干の違いがあるかのようにもみえるが,本件訂正明細書において,U字穴の深さについて特定されているわけではなく,これも設計事項の域を出ないものである。

(4)本件被請求人の主張についてのむすび
以上のとおり,本件被請求人の上記主張(3-1)?(3-3)は,いずれも訂正後の実用新案登録請求の範囲の記載,本件訂正明細書の記載に基づかないものであり,また上記主張(3-4)で主張する相違点も設計的事項の域を超えないものであるから,そのいずれをも採用することはできない。

4.むすび
以上のとおり,本件訂正考案が,実用新案登録出願の際,独立して実用新案登録を受けることができないものであるから,本件訂正は,平成5年法改正前の実用新案法第39条第3項に規定された要件を満たしていない。
それゆえ,本件訂正は認められない。

第3 本件無効審判請求についての当審の判断
1.本件考案
上記のとおり,本件訂正請求による訂正は認められないから,本件考案は,実用新案登録明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであると認められる(上記第2,1,(1)の「訂正事項(1)」参照)。

2.本件請求人の主張の概要
本件無効審判における請求人の主張は,概略次のとおりである。
「本件登録実用新案は,下記甲第1号証及び甲第2号証に記載された考案に基づいて,当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり,また,下記甲第3号証,甲第4号証に示される,本件出願前に公然実施をされたβ-MAX2と同一であるから,実用新案法第3条第2項,第1項の規定により,実用新案登録を受けることができないものである。
したがって,本件登録実用新案は,無効とすべきものである。
〈証拠方法〉
甲第1号証 実公昭62-40701号公報
甲第2号証 実公昭59-25507号公報
甲第3号証 KYOKUTO総合カタログ
(極東産機株式会社 昭和63年9月1日発行)
甲第4号証 フルチョイス糊付機β-MAX2取扱説明書(昭和58年版) 甲第5号証 室内装飾新聞(室内装飾新聞社 昭和63年8月1日発行, 甲第3号証が昭和63年9月1日に発行されたものであるこ とを立証するための証拠)

3.対比する公然実施された考案
本件無効審判請求において,本件請求人が提出した証拠である甲第3号証?甲第5号証,及び平成11年2月9日に実施された証人調べの証人調書に基づき,本件出願前に公然実施をされた考案と認められるβ-MAX2は,第2,3,(2)の(2-2)に記載したとおりのものであると認められる。
4.本件考案とβ-MAX2との対比,検討及び判断
上記第2,3,(1)によれば,本件考案は,本件訂正考案から,「糊桶」に関して「本体部に内蔵された」との限定を削除し,さらに「下側ピンチロールとドクターロールは互いに回転方向が逆になるものであり,前記下側ピンチロールとドクターロールは互いの間隔が手指の太さより狭い位置に設置してあり,しかも両ロール間は内側に向かう回転方向となっており,前記糊付けロールが,フレーム側板に軸受され」るとの構成を削除したものである。
そうすると,本件考案の構成をすべて含み,さらに他の構成を付加したものに相当する本件訂正考案が,上記第2,3,(2)に示したとおり,本件出願前に公然実施をされたβ-MAX2と同一,あるいはβ-MAX2に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものであると認められるので,本件考案も同様の理由により,β-MAX2と同一,あるいはβ-MAX2に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものである。

5.むすび
以上のとおり,本件考案は,本件出願前に公然実施をされたβ-MAX2と同一であり,あるいはβ-MAX2に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものであるので,平成5年法改正前の実用新案法第3条第1項,あるいは同法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
したがって,本件考案に係る実用新案登録は,同法第37条第1項第1号に該当し,無効とすべきものである。
審判に関する費用は,同法第41条で準用する特許法第169条第2項でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により,被請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 1999-06-01 
結審通知日 1999-06-18 
審決日 1999-06-23 
出願番号 実願平4-38553 
審決分類 U 1 112・ 112- ZB (B05C)
U 1 112・ 121- ZB (B05C)
最終処分 成立  
特許庁審判長 石原 正博
特許庁審判官 長谷川 一郎
清田 栄章
登録日 1997-02-13 
登録番号 実用新案登録第2534772号(U2534772) 
考案の名称 自動壁紙糊付機  
代理人 佐藤 年哉  
代理人 西澤 利夫  
代理人 佐藤 正年  
代理人 岡崎 謙秀  
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