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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) A23B
管理番号 1127400
審判番号 無効2003-35188  
総通号数 73 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2006-01-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-05-13 
確定日 2005-10-05 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の登録第2089093号「魚貝類処理装置」の実用新案登録無効審判事件についてされた平成16年 6月16日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成17年(行ケ)第0016号平成17年 6月20日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。   
結論 訂正を認める。 実用新案登録第2089093号の請求項1に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由
I.手続の経緯

本件実用新案登録第2089093号の請求項1に係る考案は、平成3年2月8日に実願平3-4878号として出願され、平成7年3月1日に実公平7-7737号として出願公告後、平成7年11月21日に実用新案権設定の登録がなされたところ、これに対して、川万水産株式会社及び株式会社エフネットより平成15年5月13日に本件無効審判の請求がなされ、平成15年7月24日付けで被請求人株式会社アルスより答弁書が提出された。
次いで、平成15年7月17日付けで請求人より提出された上申書に挙げられた新たな補助証拠に基づいて、平成15年8月14日付けで当審の職権審理による無効理由が通知され、平成15年10月20日付けで被請求人より意見書と訂正請求書が提出された。これに対して平成16年1月6日付けで請求人より弁駁書が提出され、この弁駁書に挙げられた補助証拠に基づいて、更に、平成16年1月27日付けで当審の職権審理による無効理由が通知され、平成16年3月30日付けで被請求人より意見書が提出されたものである。

II.訂正の可否に対する判断

1.訂正の内容
(1)訂正事項1
実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る記載、
「両端を閉じた中空の円筒ドラムとこのドラムを受入れる処理液槽とを組合わせて成り、円筒ドラムはその外面に内部に通じる多数の小孔と魚貝類の出入れ用の蓋板と吊上げ用の吊金具を備え、処理液槽は槽本体内で前記ドラムを回転自在に支持する支持ローラとドラムを回転駆動する駆動部を備え、駆動部の回転軸をドラムに対して着脱自在な連結部により連結して成る魚貝類処理装置。」を、
「両端を閉じた中空の円筒ドラムとこのドラムを受入れる処理液槽とを組合わせて成り、円筒ドラムはその外面に内部に通じる多数の小孔と魚貝類の出入れ用の蓋板と吊上げ用の吊金具を備え、処理液槽は槽本体内で前記ドラムを回転自在に支持する支持ローラとドラムを回転駆動する駆動部を備え、駆動部の回転軸をドラムに対して着脱自在な連結部により連結して成り、この連結部が前記ドラムの側端に設けたハの字状の受金具と、このハの字状の受金具の内側に係合する、前記回転軸の軸端に設けた平板部材から成る魚貝類処理装置。」
と訂正する。
(2)訂正事項2
明細書の【0006】段落の記載、
「上記課題を解決するためこの考案は、両端を閉じた中空の円筒ドラムとこのドラムを受入れる処理液槽とを組合わせて成り、円筒ドラムはその外面に内部に通じる多数の小孔と魚貝類の出入れ用の蓋板と吊上げ用の吊金具を備え、処理液槽は槽本体内で前記ドラムを回転自在に支持する支持ローラとドラムを回転駆動する駆動部を備え、駆動部の回転軸をドラムに対して着脱自在な連結部により連結して成る魚貝類処理装置の構成としたのである。」を、
「上記課題を解決するためこの考案は、両端を閉じた中空の円筒ドラムとこのドラムを受入れる処理液槽とを組合わせて成り、円筒ドラムはその外面に内部に通じる多数の小孔と魚貝類の出入れ用の蓋板と吊上げ用の吊金具を備え、処理液槽は槽本体内で前記ドラムを回転自在に支持する支持ローラとドラムを回転駆動する駆動部を備え、駆動部の回転軸をドラムに対して着脱自在な連結部により連結して成り、この連結部が前記ドラムの側端に設けたハの字状の受金具と、このハの字状の受金具の内側に係合する、前記回転軸の軸端に設けた平板部材から成る魚貝類処理装置の構成としたのである。」
と訂正する。
(3)訂正事項3
明細書の【0017】段落、【0021】段落、符号の説明欄中符号15の記載「L字部」を、
「平板部材」と訂正する。
(4)訂正事項4
明細書の【0026】の記載「【効果】 以上詳細に説明したように、この考案の処理装置は多数の小孔を設けたドラムを処理液槽と組合せ、処理液槽に設けた駆動部の動力を着脱自在な連結部を介してドラムに伝達するようにしたから、複数工程の処理液槽に対してドラムを次々に容易に装着、取外しでき、その間に最初にドラム内に封入された蛸などの魚貝類は中から取り出すことなく所要の解凍、塩もみ、薬品処理などの作業が極めて効率的に行なわれるという種々の利点が得られる。」を、
「【効果】 以上詳細に説明したように、この考案の処理装置は多数の小孔を設けたドラムを処理液槽と組合せ、処理液槽に設けた駆動部の動力を着脱自在な連結部を介してドラムに伝達するようにし、この連結部が前記ドラムの側端に設けたハの字状の受金具と、このハの字状の受金具の内側に係合する、回転軸の軸端に設けた平板部材から構成したから、回転軸の軸端の平面部材を上向きにするだけで、複数工程の処理液槽に対してドラムを次々に容易に装着、取外しでき、その間に最初にドラム内に封入された蛸などの魚貝類は中から取り出すことなく所要の解凍、塩もみ、薬品処理などの作業が極めて効率的に行なわれるという種々の利点が得られる。」
と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
上記訂正事項1は、「連結部」という構成要件に「この連結部が前記ドラムの側端に設けたハの字状の受金具と、このハの字状の受金具の内側に係合する、前記回転軸の軸端に設けた平板部材から成る」という要件を追加してより具体的に限定するものであって、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、「L字部」という明りょうでない記載を、「平板部材」と明りょうにするものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、本件実用新案登録明細書には、この連結部に関し、「処理液槽2の外側には、円筒ドラム1を回転駆動するためのモータ13が設けられ、その回転軸14は処理液槽2の内部に側壁を貫通して延びている。この回転軸は、図3に示すように、その軸端にL字部15が固定されており、このL字部に対応して円筒ドラム1の側端にはハ字状の受金具16が設けられ、これらが着脱自在な接続部を形成している。なお、17は槽内へ処理液を供給する供給管である。」(段落【0017】)と記載されているから、上記訂正事項は、願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものである。
また、上記訂正事項が、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
(2)訂正事項2?4について
訂正事項2?4は、訂正事項1に伴うものであり、実用新案登録請求の範囲を訂正したことに伴い、考案の詳細な説明の欄の記載を整合させるものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項2?4は、いずれも願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成15年法律第47号)附則第13条第1項の規定によりなお従前の例によるとされた同法による改正前の特許法等の一部を改正する法律(平成5年法律第26号)附則第4条第2項において読み替えられた同法による改正前の実用新案法第40条第2項並びに同条第5項において読み替えて準用する同法第39条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.当事者の主張及び当審による無効理由通知の概要

1.請求人の主張
請求人は、「第2089093号の請求項1に係る考案についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、証拠方法として以下の甲第1号証乃至甲第13号証を提出し、その理由として、
(1)訂正前の本件請求項1に係る考案は、甲第1,6,7号証によれば、自然法則に反し、かつ未完成であって、自然法則を利用した考案に該当しないから、実用新案法第3条柱書きの考案に該当せず、本件実用新案登録は、実用新案法第37条第1項第2号の規定により無効とすべきものである、
(2)訂正前の本件実用新案登録明細書には、甲第1,6,7号証によれば、本件請求項1に係る考案を当業者が容易に実施できる程度に記載されておらず、実用新案法第5条第4項の規定に違反するものであるから、本件実用新案登録は、実用新案法第37条第1項第4号の規定により無効とすべきものである、
(3)訂正前の本件請求項1に係る考案は、甲第2号証刊行物に記載された考案及び甲第3,4,8,13号証刊行物に記載された周知慣用技術並びに甲第5,9乃至12号証により証される公知技術に基づいて当業者が極めて容易に考案できたものであって、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであるから、本件実用新案登録は、実用新案法第37条第1項第2号の規定により無効とすべきである、旨主張している。

甲第1号証:本件実用新案登録に係る明細書の考案の詳細な説明(実施例)中に記載された魚貝類処理装置を作動させる実験を行った結果を示す実験報告書
甲第2号証:米国特許第4,324,020号明細書
甲第3号証:特開昭61-265043号公報
甲第4号証:実願昭63-774号(実開平1-105483号)のマイクロフィルム
甲第5号証:請求人が使用していた魚貝類解凍洗機を示す写真
甲第6号証の1:平成14年(ワ)第12523号実用新案権侵害差止等請求事件に関する原告準備書面(1)(平成15年3月31日付け)
甲第6号証の2:平成14年(ワ)第12523号実用新案権侵害差止等請求事件に関する被告第1準備書面(平成15年2月24日付け)
甲第7号証の1:甲第1号証実験報告書に係る実験を撮影したビデオテープ
甲第7号証の2:甲第1号証実験報告書に係る実験を撮影したビデオテープの説明書
甲第8号証の1:実願昭53-41147号(実開昭54-143476号)のマイクロフィルム
甲第8号証の2:特開昭54-129557号公報
甲第8号証の3:実願昭59-116100号(実開昭61-31081号)のマイクロフィルム
甲第8号証の4:実願昭60-58361号(実開昭61-173277号)のマイクロフィルム
甲第9号証:請求人が使用していた魚介類解凍洗機を撮影した写真
甲第10号証の1:平成14年(ワ)第12523号実用新案権侵害差止等請求事件に関する小峰幸男の陳述書(平成15年6月17日付け)
甲第10号証の2:小峰幸男の現在の名刺の写し
甲第11号証の1:冷凍タコ解凍機に関するリース契約書の写し
甲第11号証の2:冷凍タコ解凍機に関するリース契約書に付属する引渡書の写し
甲第11号証の3:冷凍タコ解凍機に関するリース契約についての支払い明細書の写し
甲第11号証の4:冷凍タコ解凍機に関するリース契約期間満了案内の写し
甲第12号証の1:八洲工業株式会社の閉鎖謄本の写し
甲第12号証の2:八洲工業株式会社の閉鎖謄本の写し
甲第13号証の1:実願昭59-19758号(実開昭60-133229号)のマイクロフィルム
甲第13号証の2:実公昭53-49955号公報
甲第13号証の3:実公昭58-21934号公報
甲第13号証の4:実願昭63-139870号(実開平2-59739号)のマイクロフィルム

2.被請求人の主張
一方、被請求人は、請求人の提出した証拠方法によっては、本件実用新案登録を無効にすることができないと主張し、証拠方法として、以下の乙第1号証乃至乙第2号証を提出している。

乙第1号証の1:本件実公平7-7737号公報
乙第1号証の2:本件実用新案登録2089093号の実用新案登録証
乙第1号証の3:本件実用新案登録2089093号の実用新案登録原簿謄本
乙第2号証:実験報告書

3.当審による無効理由通知の概要
1)平成15年8月14日付けの当審の職権審理による無効理由通知の概要は、訂正前の本件請求項1に係る考案は、甲第2号証刊行物に記載された考案及び甲第3,4,8号証刊行物に記載された周知慣用技術に基づいて当業者が極めて容易に考案できたものであって、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであるから、本件実用新案登録は、実用新案法第37条第1項第2号の規定により無効とすべきであるというものである。
2)平成16年1月27日付けの当審の職権審理による無効理由通知の概要は、訂正後の本件請求項1に係る考案は、その出願前日本国内或いは米国において頒布された下記の刊行物に基づいて当業者が極めて容易に考案できたものであって、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであるから、訂正後の本件実用新案登録は、実用新案法第37条第1項第2号の規定により無効とすべきであるというものである。
ここで、下記の刊行物1乃至3は、夫々無効審判請求人の提出した甲第2乃至4号証に、上記刊行物4乃至7は、同じく甲第8号証の1乃至4に、上記刊行物8乃至11は、同じく甲第13号証の1乃至4に相当する。

刊行物1:米国特許第4,324,020号明細書
刊行物2:特開昭61-265043号公報
刊行物3:実願昭63-774号(実開平1-105483号)のマイクロフィルム
刊行物4:実願昭53-41147号(実開昭54-143476号)のマイクロフィルム
刊行物5:特開昭54-129557号公報
刊行物6:実願昭59-116100号(実開昭61-31081号)のマイクロフィルム
刊行物7:実願昭60-58361号(実開昭61-173277号)のマイクロフィルム
刊行物8:実願昭59-19758号(実開昭60-133229号)のマイクロフィルム
刊行物9:実公昭53-49955号公報
刊行物10:実公昭58-21934号公報
刊行物11:実願昭63-139870号(実開平2-59739号)のマイクロフィルム

VI.本件考案

訂正後の本件請求項1に係る考案(以下、「本件考案1」という。)は、訂正後の明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】両端を閉じた中空の円筒ドラムとこのドラムを受入れる処理液槽とを組合わせて成り、円筒ドラムはその外面に内部に通じる多数の小孔と魚貝類の出入れ用の蓋板と吊上げ用の吊金具を備え、処理液槽は槽本体内で前記ドラムを回転自在に支持する支持ローラとドラムを回転駆動する駆動部を備え、駆動部の回転軸をドラムに対して着脱自在な連結部により連結して成り、この連結部が前記ドラムの側端に設けたハの字状の受金具と、このハの字状の受金具の内側に係合する、前記回転軸の軸端に設けた平板部材から成る魚貝類処理装置。」

V.刊行物の記載事項

これに対して、平成16年1月27日付けの当審の職権審理による無効理由通知に引用された、本件出願の出願日前に頒布された甲第2乃至4号証、甲第8号証の1乃至4及び甲第13号証の1乃至4には次の事項が記載されている。

1.甲第2号証:米国特許第4,324,020号明細書
(1-1)容器は、典型的には5ガロンで、円周面に多数の開口を有する。(公報第1欄第33?34行)
(1-2)更なる目的は、安価に製造でき、使い易く、軽く、簡単に持ち運びできる紫胎貝洗浄機を開示することである。各人が集めた紫胎貝を迅速に完全に洗浄することができ、各人にとって使い勝手の良いものである。(公報第2欄第19?23行)
(1-3)本発明の紫胎貝洗浄機2は、ドラム4を備え、該ドラムは、当該ドラムの各端に装着された気泡浮き円盤6,7を有する。ドラムの一端からはクランク8が延び、このクランク8は当該ドラムを回転するために使用される。・・・図1および図2に示すように、ドラムは、穴の開いた外周10と中実な円形の端部12とを有する略円形の容器である。非常に多くの開口14が外周10に形成されている。・・・紫胎貝は、扉18を通じてドラムの内部に入れられ、またドラムから取り出される。・・・(図1、図2、公報第2欄第40?62行)
(1-4)使用者の要望に応じて、洗浄された貝は取り出すか、ドラム内に入れたまま、移動される。図3に別の実施例を示す。表面に複数の穴33を有する八面ドラム31が水槽34内に設置されており、これは水槽の両側面の溝に支持されたジャーナル軸受けを使用し、貫通クランクによる従来の方法で設置されている。ハンドル8は、水槽の一側面を通過して延び、水槽内において通常のやり方でドラムを回転するのに使用される。(図3、公報第4欄第13?22行)
(1-5)例えば、ドラムを回転させるためにモータを設けることができる。(公報第4欄第43?44行)

2.甲第3号証:特開昭61-265043号公報
(2-1)全周面に多数の孔2,2′を備え、内部に螺旋状の区切り壁と気泡噴出装置を有する円筒ドラム(円筒状の回転ドラム1)と、このドラムを受け入れる処理液槽(水槽型の洗浄タンク7)とを組み合わせた魚介類洗浄装置において、円筒ドラム1は、第3図に特に示されるように支持ローラ(車輪式の軸受15,15′ ,15”・・・)によって回転自在に支持されており、駆動部(モータ20)により回転駆動される。(第1図、第3図、公報第2頁右下欄?第3頁右下欄)

3.甲第4号証:実願昭63-774号(実開平1-105483号)のマイクロフィルム
(3-1)円筒ドラム(円筒形の洗浄槽6)を備えた棒状物の洗浄装置において、円筒ドラム6は、支持ローラ5によって回転可能に台車1の上に支持され、回転駆動装置21により回転駆動され、この駆動装置21の回転軸22は、第1図に示されるように連結部(カップリング等からなる軸継手23)によって、ドラム6に対し着脱自在とされている。(第1図、第4図、明細書第3?5頁)

4.甲第8号証の1:実願昭53-41147号(実開昭54-143476号)のマイクロフィルム
(4-1)冷凍魚類を入れた吊上げ用部材を設けた伸縮可能な網状部材からなるカゴ10を解凍水槽Aに沈めて解凍を行う冷凍魚類の解凍装置。(第1図、第5図、明細書第4頁下から2行目?第7頁9行)

5.甲第8号証の2:特開昭54-129557号公報
(5-1)金網等で形成された籠2に冷凍魚塊を入れ、この籠2をホイスト等で運搬して解凍槽1に入れ、槽1内に水を満たして解凍を行い、解凍後、籠2は解凍槽1から引き上げられる冷凍魚類解凍装置。(第1図?3図、公報第2頁左下欄11行目?第3頁右上欄3行)

6.甲第8号証の3:実願昭59-116100号(実開昭61-31081号)のマイクロフィルム
(6-1)作業台50に解凍容器30を載せて冷凍食品を収容した後、ホイスト21を操作して吊り下げワイヤ23の先端に取り付けたフック24によって解凍容器30を吊り下げ、これを移動させて解凍槽2に沈めて解凍作業を行い、解凍作業終了後には再び解凍容器30を吊り下げ、水を切り作業台50に移動する、冷凍食品の解凍装置。(第1図?3図、明細書第10頁8行目?第14頁12行)

7.甲第8号証の4:実願昭60-58361号(実開昭61-173277号)のマイクロフィルム
(7-1)金網等で形成された籠2に冷凍魚を投入する一方、解凍槽1に海水を入れ、この解凍槽1に籠2を入れて冷凍魚の解凍を行う冷凍餌解凍装置。(第1、4、5図、明細書第6頁2?6行)

8.甲第13号証の1:実願昭59-19758号(実開昭60-133229号)のマイクロフィルム
(8-1)継手部材11を従動軸14に固着し、継手部材12を駆動軸13に固着しても良く、継手部材11,12と軸13,14との関係は適宜設定されるものである。(明細書第4頁13?16行)
(8-2)端面11aには一端が巾広で他端が巾狭のテーパ状の嵌合溝11bが形成され、端面12aには駆動軸13と従動軸14とが同軸にあるときに嵌合溝11bに間隙なく嵌合するテーパ状の嵌合突起12bが突設されている。・・・従って、第4図に示す如く、嵌合溝11bの巾広側から嵌合突起12bを挿入してこの嵌合溝11bに嵌合突起12bを嵌合させることにより、嵌合溝11bの側壁面と嵌合突起12bの側面とが係合して駆動軸13と従動軸14とが精度良く同軸に連結される。(明細書第4頁19行?5頁16行)
(8-3)上記の軸継手10を例えば駆動モータとこれにより駆動される負荷装置との連結に用いれば、この連結作業を容易かつ精度良く行うことができる。すなわち、第5図において、駆動モータMの駆動軸13(出力軸)に設けられた継手部材11を嵌合溝11bの巾広側が上方に向くように位置決めしておくと共に、負荷装置Dの従動軸14(入力軸)に設けられた継手部材12を嵌合突起12bの巾狭側が下方に向くように位置決めしておく。次いで、床面F上に設置された駆動モータMに対してホイスト(図示せず)に吊られた負荷装置Dを下降させつつ継手部材11と継手部材12とを嵌合させて駆動軸13と従動軸14とを同軸に連結し、合板S等を介在させて負荷装置Dを床面F上に設置する。このように、負荷装置Dを床面F上に設置するのとほとんど変わらない作業で、駆動軸13と従動軸14とを精度良く同軸に連結することができる。(明細書第6頁1?19行)

9.甲第13号証の2:実公昭53-49955号公報
(9-1)第2図a?dにおいて、11aは一側の軸端に形成された継手フランジ、11bは他側の軸端に形成された継手フランジである。継手フランジ11aの端面に・・・軸線Aと直角に走る溝幅Taの凹状の溝13aを設ける。・・・継手フランジ11bの端面に・・・軸線Aと直角に走る凸状の歯13bを設ける。(公報第1頁右欄21?32行)

10.甲第13号証の3:実公昭58-21934号公報
(10-1)出力軸16の下端には連結部24が構成されている。この連結部24は、第4図に示すように、出力軸16の周面に孔または突起からなる係合部25を形成し、この孔または突起の係合部25に2枚の連結板28を係合する。この連結板28は、中間部の彎曲部27に上記孔または突起の係合部25に係合する突起または孔の係合部26を形成するとともに、両端に回り止め片29を形成する。そして、出力軸16の孔または突起の係合部25に2枚の連結板28の突起または孔の係合部26を係合するとともに、彎曲部27を介して2枚の連結板28を両側から出力軸16を挟むように互いに相対向させ、その両端の回り止め片29を相互にスポット溶接など適宜な固定手段にて固定する。そして、この重合した連結板28に負荷軸33を連結する。この負荷軸33は、端面中央に上記連結板28の彎曲部27の外径に嵌合する孔30と、この孔30の両端に回り止め片29が係合する回り止め溝31とからなる係合溝32を形成する。そして連結板28を係合溝32に嵌合する。このため、出力軸16からの回転は、各回り止め片29により負荷軸33に確実に伝達される。(公報第2頁左欄10?右欄2行)

11.甲第13号証の4:実願昭63-139870号(実開平2-59739号)のマイクロフィルム
(11-1)回転軸21の上部には、・・・カッター支え22が被着されている。・・・カッター支え22の周面には係止凸部24が形成されたリブ25が上下方向に沿って設けられている。・・・回転軸21の上部に上下逆様に反転して付け変え可能な調理カッター11の中央部には、カッター支え22に着脱可能に嵌合される嵌合部27が形成されている。・・・調理カッター11には係止凸部24を設けたリブ25が挿脱される切欠溝28が形成されている。(明細書第8頁17行?10頁4行)
(11-2)調理カッター11をミキサー用カッターとして使用する場合、調理カッター11は第1図に示すように刃13を上に向けた状態で、その嵌合部27を回転軸21の上部のカッター支え22に嵌合して取付けられる。この取付けにおいて、カッター支え22のリブ25および係止凸部24は嵌合部27の切欠溝28に挿入する。(明細書第11頁17行?12頁4行)
(11-3)回転軸から調理カッターへの回転力の伝達を、回転軸の上部に被着したカッター支えの周面に突設した係止凸部と、この凸部が挿脱される調理カッターの切欠満との係合を介して行った・・・(明細書第15頁17?20行)

VI.当審の判断

本件考案1の処理装置は、多数の小孔を設けたドラムを処理液槽と組合せ、処理液槽に設けた駆動部の動力を着脱自在な連結部を介してドラムに伝達するものであって、処理液槽は槽本体内で前記ドラムを回転自在に支持する支持ローラとドラムを回転駆動する駆動部を備え、駆動部の回転軸をドラムに対して着脱自在な連結部により連結して成り、この連結部を前記ドラムの側端に設けたハの字状の受金具と、このハの字状の受金具の内側に係合する、前記回転軸の軸端に設けた平板部材として、処理液槽は槽本体内で前記ドラムを回転自在に支持する支持ローラを備えたことにより、複数工程の処理液槽に対してドラムを次々に容易に装着、取外しでき、その間に最初にドラム内に封入された魚貝類は中から取り出すことなく所要作業が効率的に行なわれるものである。
これに対して甲第2号証刊行物には、上記記載事項、特に、図1と図3を合わせ考慮すると、「両端を閉じた中空の円筒ドラムとこのドラムを受入れる処理液槽とを組合せて成り、円筒ドラムはその外面に内部に通じる多数の小孔と魚貝類の出入れ用の蓋板を備えた魚貝類処理装置」が記載されているといえる。
本件考案1と甲第2号証刊行物に記載された考案(以下、引用考案という。)とを対比すると、両者は、「両端を閉じた中空の円筒ドラムとこのドラムを受入れる処理液槽とを組合せて成り、円筒ドラムはその外面に内部に通じる多数の小孔と魚貝類の出入れ用の蓋板を備えた魚貝類処理装置」である点で一致し、前者が、(a)円筒ドラムが吊上げ用の吊金具を備えている点、(b)処理液槽はドラムを回転駆動する駆動部を備える点、(c)駆動部の回転軸をドラムに対して着脱自在な連結部により連結し、連結部が前記ドラムの側端に設けたハの字状の受金具と、このハの字状の受金具の内側に係合する、前記回転軸の軸端に設けた平板部材から成る点、(d)処理液槽は槽本体内で前記ドラムを回転自在に支持する支持ローラを備える点で相違している。
そこで、これら相違点について検討する。

(1)相違点(a)について
甲第8号証の1刊行物には、吊上げ用部材を設けた伸縮可能な網状部材からなるカゴを解凍水槽に沈めて解凍を行う冷凍魚類の解凍装置が、甲第8号証の2刊行物には、金網等で形成された籠に冷凍魚介を入れ、この籠をホイストで運搬して解凍槽に入れて解凍する冷凍魚類解凍装置が、甲第8号証の3刊行物には、吊り下げワイヤの先端に取り付けたフックによって解凍容器を吊り下げ、これを移動させて解凍槽に沈めて解凍作業を行い解凍作業終了後には、再び解凍容器を吊り下げ、水を切り作業台に移動する冷凍食品の解凍装置が、甲第8号証の4刊行物には、金網等で形成された籠に冷凍魚塊を投入する一方、解凍槽に海水を入れ、この解凍槽に籠を入れて冷凍魚の解凍を行う冷凍餌解凍装置が記載されており、甲第8号証の1、2、及び4等によれば,本件考案の出願前において,多くの事業者が日常的に工場で大量の魚貝の洗浄・解凍処理をしていたことが認められる。
このような状況下にある当業者が引用考案に接したとき、引用考案に開示されたドラムを工場内で使用するために大型化し、一度に処理できる量を増やすことは、当業者がごく自然にしかも日常的な設計変更の範囲内でなし得ることであるといえ、そして,円筒ドラムを大型化して一度に処理できる量を増やせば、魚貝類の入った円筒ドラムの重量も当然大きくなるはずであるから、当然に人力で持ち上げることができなくなることが予想され、そうなると、機械力を利用して円筒ドラムを吊り上げようと考えるのはごく自然のことである。
ここで、甲第8号証の1乃至4刊行物には、吊下式の籠あるいは解凍容器を有する解凍装置が開示されており、この技術は,引用考案と同一の技術分野に属し、かつ近似した機能ないし作用を有するものといえるから、引用考案の「両端を閉じた中空の円筒ドラムとこのドラムを受入れる処理液槽とを組合せて成り、円筒ドラムはその外面に内部に通じる多数の小孔と魚貝類の出入れ用の蓋板を備えた魚貝類処理装置」という技術に、甲第8号証の1乃至4刊行物に記載された技術を組み合わせて、円筒ドラムを吊下式のものとし、「円筒ドラムが吊上げ用の吊金具を備え」た構成にすることは、当業者が極めて容易になし得ることである。

(2)相違点(b)について
(1-5)記載のとおり、引用考案は、ドラムを回転させるためにモータを設けることができるものであるから、引用考案において、処理液槽がドラムを回転駆動する駆動部を備えるものとすることは当業者が極めて容易になし得ることである。

(3)相違点(c)について
モータ側と、これによって回転駆動される負荷側とを着脱可能に連結する構造として楔形連結構造を採用して、回転軸に直交する方向に延びる嵌合部材を一方に設け、この部材を収容する溝などの受け部を他方に設けてモータと負荷側とを連結することは、甲第13号証の1乃至4刊行物記載のとおり周知慣用の技術であり、特に、甲第13号証の1刊行物には、負荷装置Dを吊り上げ、これを上方から駆動モータMに下降させることによって嵌合溝11bの内側に嵌合突起12bを嵌合させ、モータ側と負荷側とを接続する連結構造が記載されているから、駆動部の回転軸をドラムに対して着脱自在な連結部により連結し、この連結部をドラムの側端に設けた受金具と、この受金具の内側に係合する、回転軸の軸端に設けた平板部材とすることは、甲第13号証の1刊行物から当業者が極めて容易になし得ることであるといえる。
その際に、受金具の形状を「ハの字状」にすることは、当業者が必要に応じて適宜選択し得る設計事項にすぎないから、受金具の形状を「ハの字状」とすることに格別の困難性は認められず、それにより当業者が予期し得ない効果を奏するものではない。
被請求人は、「甲第13号証の1刊行物に記載された考案は、『嵌合溝の巾広側から嵌合突起を挿入して嵌合させることにより、嵌合溝の側壁面と嵌合突起の側面とが係合して駆動軸13と従動軸14とが精度良く同軸に連結される。』ものであって、本件考案1の受金具に相当する嵌合溝の形状は、逆ハの字状になっており、連結は容易であるが、楔形の楔が強く食い込むと、取り外しが困難になる」旨主張しているので、この点を検討する。
本件考案の実用新案登録請求の範囲には、「処理液槽は槽本体内で前記ドラムを回転自在に支持する支持ローラとドラムを回転駆動する駆動部を備え,駆動部の回転軸をドラムに対して着脱自在な連結部により連結して成り、この連結部が前記ドラムの側端に設けたハの字状の受金具と,このハの字状の受金具の内側に係合する」と記載されており、槽本体内で円筒ドラムを回転自在に支持しているのは「支持ローラ」であり、「ドラムに対して着脱自在な連結部」ではない。
また,本件明細書の考案の詳細な説明をみると、実施例には,「処理液槽2は、前記円筒ドラム1を受入れるに十分なスペースの槽本体を支持部11により支持され、その内部に円筒ドラム1を回転支持するための支持ローラ12を備えている。支持ローラ12は、ドラム本体3の両端を支持するように槽本体斜めの底部に設けられている。」(段落【0016】)、「円筒ドラム1を槽内に入れる際は、予め回転軸14の先端のL字部15を上向きにしてドラム側の受金具16に対して接続し易いように調整しておく。ドラム両端の下部は槽内に4点で支持する支持ローラ12に対して正しくセットする。」(段落【0021】)との記載があり、これらの記載によれば,円筒ドラムは、「支持ローラ」により支えられていると認められ、「連結部」は、元来がドラムに対して着脱自在なのであって、受金具の形状をハの字状とするか否により、平板部材が受け金具に食い込む強さに格別の相違が生じると解すべき根拠は見当たらない。
そして、本件考案のような連結構造を採用すれば、吊り下げによるドラム装着や吊り上げによるドラム取り外しが容易になることは、当業者にとっては自明のことである。
よって、被請求人の主張は採用できない。

(4)相違点(d)について
甲第3号証刊行物に、「全周面に多数の孔2,2′を備え、内部に螺旋状の区切り壁と気泡噴出装置を有する円筒ドラム(円筒状の回転ドラム1)と、このドラムを受け入れる処理液槽(水槽型の洗浄タンク7)とを組み合わせた魚介類洗浄装置において、円筒ドラム1は、第3図に特に示されるように支持ローラ(車輪式の軸受15,15′ ,15”・・・)によって回転自在に支持されており、駆動部(モータ20)により回転駆動される。」と、甲第4号証刊行物に、「円筒ドラム(円筒形の洗浄槽6)を備えた棒状物の洗浄装置において、円筒ドラム6は、支持ローラ5によって回転可能に台車1の上に支持され、回転駆動装置21により回転駆動され、この駆動装置21の回転軸22は、第1図に示されるように連結部(カップリング等からなる軸継手23)によって、ドラム6に対し着脱自在とされている。」と記載されているように、円筒ドラムを支持ローラにより回転自在に支持することは周知の技術である。
上記のとおり、当業者が引用考案に接したとき,引用考案に開示されたドラムを工場内で使用するために大型化し,一度に処理できる量を増やすということは,当業者がごく自然にしかも日常的な設計変更の範囲内でし得る事項であるところ,円筒ドラムを大型化して一度に処理できる量を増やせば,当然に,魚貝類の入った円筒ドラムの重量が大きくなるので,この重い円筒ドラムを何らかの手段で支持しようと考えるのが普通である。
その際,この魚貝類処理装置につき,その円筒ドラムを回転自在に支持する手段として,甲第3乃至4号証刊行物に記載された支持ローラの技術に着目し,「処理液槽は槽本体内で前記ドラムを回転自在に支持する支持ローラを備える」という構成とすることは,当業者が必要に応じて適宜し得る設計事項といえる。
そして、本件考案1の「複数工程の処理液槽に対してドラムを次々に容易に装着、取外しでき、その間に最初にドラム内に封入された魚貝類は中から取り出すことなく所要作業が効率的に行なわれる。」という効果も、甲第2乃至4号証、甲第8号証の1乃至4及び甲第13号証の1乃至4に記載された考案及び周知慣用技術から、当業者が予期し得る効果にすぎず、格別のものとすることはできない。
したがって、本件考案1は、甲第2乃至4号証、甲第8号証の1乃至4及び甲第13号証の1乃至4に記載された考案及び周知慣用技術に基づいて当業者が極めて容易に考案できたものである。

VII.むすび

以上のとおりであるから、本件請求項1に係る考案の実用新案登録は、その出願前日本国内或いは米国において頒布された上記の刊行物及び周知慣用技術に基づいて当業者が極めて容易に考案できたものであって、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであるから、本件実用新案登録は、実用新案法第37条第1項第2号の規定により無効とすべき ものである。
審判に関する費用については、実用新案法第41条で準用する特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
魚貝類処理装置
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】両端を閉じた中空の円筒ドラムとこのドラムを受入れる処理液槽とを組合せて成り、円筒ドラムはその外面に内部に通じる多数の小孔と魚貝類の出入れ用の蓋板と吊上げ用の吊金具とを備え、処理液槽は槽本体内で前記ドラムを回転自在に支持する支持ローラとドラムを回転駆動する駆動部を備え、駆動部の回転軸をドラムに対して着脱自在な連結部により連結して成り、この連結部が前記ドラムの側端に設けたハの字状の受金具と、このハの字状の受金具の内側に係合する、前記回転軸の軸端に設けた平板部材から成る魚貝類処理装置。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この考案は、生蛸などの魚貝類を生鮮保持するための処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
蛸、イカ、貝などの生鮮魚貝類を大量に販売する場合、生鮮度や長持ちするための処理を施す設備として、従来は水、塩水、あるいは薬液を入れた水溶液を木製の樽に入れ、これを適当な回転座上に乗せて回転させ、解凍、塩もみ、あるいは薬液処理による酸化防止などをしていた。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
かかる従来の樽による生鮮処理方法では、解凍、塩もみ、あるいは薬液処理などの処理作業ごとに木樽内に生鮮魚貝類と処理液を投入して樽を密封し、これを回転させて内容物を撹拌させていた。
【0004】
このため、処理液が異なるごとに樽の開閉作業を行なわなければならず、このような作業は極めて煩らわしく作業効率が悪いという問題があった。又、樽を回転させる場合も回転台上で樽を人手で支えて回転させるため回転が十分でなく、従って処理液の流動が十分でないなど問題もあった。
【0005】
この考案は、以上のような従来の木樽による生鮮・保存処理方法の問題点に留意してなされたものであり、ドラムと処理液樽を組合せ、ドラム内に入れた魚貝類を取り出すことなく種々の処理作業を効率的に行なうことのできる処理装置を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するためこの考案は、両端を閉じた中空の円筒ドラムとこのドラムを受入れる処理液槽とを組合せて成り、円筒ドラムはその外面に内部に通じる多数の小孔と魚貝類の出入れ用の蓋板と吊上げ用の吊金具とを備え、処理液槽は槽本体内で前記ドラムを回転自在に支持する支持ローラとドラムを回転駆動する駆動部を備え、駆動部の回転軸をドラムに対して着脱自在な連結部により連結して成り、この連結部が前記ドラムの側端に設けたハの字状の受金具と、このハの字状の受金具の内側に係合する、前記回転軸の軸端に設けた平板部材から成る魚貝類処理装置の構成としたのである。
【0007】
【作用】
以上のように構成したこの考案による処理装置は、魚貝類などの生鮮・保存等の処理に使用される。例えば冷凍された蛸を解凍する場合、まず取り外された円筒ドラムの蓋板を開けてドラム内に冷凍蛸のブロックを投入する。蓋板を閉じてドラムを吊り上げて処理液槽内に入れる。
【0008】
処理液槽には予め解凍用の水が注入されており、この中に入れられたドラムは槽内で支持ローラにより回転自在に支持されると共に、駆動部の回転軸がドラムに対して着脱自在な連結部を介して接続される。駆動部によりドラムを回転させるとドラム内に侵入した水で冷凍蛸は攪拌されて次第に解凍される。
【0009】
解凍が終るとドラムは処理液槽から引き上げられるが、この時ドラム内に侵入していた水はドラムの小孔から排出されて水切りされる。こうして最初の処理が終了すると次の処理液槽へ円筒ドラムだけを移動させる。
【0010】
かかる処理作業は異なる処理ごとに同じ作用を行なって処理される。
【0011】
【実施例】
以下この考案の実施例について図面を参照して説明する。
【0012】
図1はこの考案による魚貝類を生鮮・保存処理する処理装置の実施例の全体構成を示す断面図である。この処理装置は中空の円筒ドラム1とこれを受入れる処理液槽2とから成る。
【0013】
円筒ドラム1は、ドラム本体3の両端を側板4で閉じ、その両端にフランジ付きのリング5が設けられ、ドラム本体3の外周面には内部に通じる多数の小孔6が所定の間隔で設けられている。さらに円筒ドラム1は、ドラム本体3の外周面の適宜位置に魚貝類を出し入れするための蓋板7が設けられている。この蓋板7は係止具8でドラム本体3に固定される。又、ドラム本体3の両端には円筒ドラム1を吊り上げるための吊上金具9が設けられている。
【0014】
なお、ドラム本体3はこの実施例ではプラスチック製としているが、金属、木材を用いてもよい。又、小孔6はドラム外周面のみに設けているが、側板4にも設けてもよい。
【0015】
さらに、図2の断面に示すように、ドラム本体3の内周面には魚貝類を内部で攪拌するための突条部10がその長さ方向に沿って適当な間隔で設けられている。
【0016】
処理液槽2は、前記円筒ドラム1を受入れるに十分なスペースの槽本体を支持部11により支持され、その内部に円筒ドラム1を回転支持するための支持ローラ12を備えている。支持ローラ12は、ドラム本体3の両端を支持するように槽本体斜めの底部に設けられている。
【0017】
処理液槽2の外側には、円筒ドラム1を回転駆動するためのモータ13が設けられ、その回転軸14は処理液槽2の内部に側壁を貫通して延びている。この回転軸は、図3に示すように、その軸端に平板部材15が固定されており、この平板部材に対応して円筒ドラム1の側端にはハ字状の受金具16が設けられ、これらが着脱自在な接続部を形成している。なお、17は槽内へ処理液を供給する供給管である。
【0018】
以上のように構成した実施例の処理装置は次のように使用される。
【0019】
魚貝類、例えば蛸を処理する場合、一般に解凍、塩もみ、及び薬品処理が施される。これは、冷凍された蛸を市場に送り出す前に生鮮度・保存状態を良くしておくためである。従って、円筒ドラム1は1台、処理液槽2は3台のものが用意される。
【0020】
円筒ドラム1は処理液槽の外で、蓋板7を開いて氷で蛸を固めたブロックXが適当量投入される。蓋板7を閉じてドラム1を、図1には図示省略の吊上げ装置のフックFで吊り上げて、図1のように処理液槽2内に入れる。槽内には予め処理液Wとして水が適当量注入されている。
【0021】
円筒ドラム1を槽内に入れる際は、予め回転軸14の先端の平板部材15を上向きにしてドラム側の受金具16に対して接続し易いように調整しておく。ドラム両端の下部は槽内に4点で支持する支持ローラ12に対して正しくセットする。
【0022】
この状態でモータ13を回転駆動すると、円筒ドラム1が回転してドラム内の突条部10に冷凍蛸のブロックXが衝突し、位置を持上げられて落下しというようにしてドラム内で攪拌される。ドラム内にはドラムを槽内に入れた際にドラムの外周面に設けた多数の小孔6を介して水が侵入しているから、この水によって上記攪拌作用と共にブロックXは解凍される。
【0023】
解凍が完了すると、再び円筒ドラム1は吊上げ装置で槽から吊上げられ、次の処理液槽へと移動される。このとき、ドラムの蓋板7は閉じたままでよい。水はドラムの多数の小孔6から排出される。
【0024】
次の処理槽では処理液Wとして塩水が槽内に供給されている。この槽に上記手順と同様にして円筒ドラム1を入れると、ドラム内に塩水が侵入してドラムの回転と共に塩もみが行なわれる。
【0025】
塩もみが完了すると、さらに次の薬品処理槽へ送られる。この槽では蛸が市場へ出荷されるまでの流通経路途中での酸化を防止して保存状態を良くするため、酸化防止用の薬品を入れた水溶液が供給されている。この槽での処理も前と全く同様の手順で行なわれ、この処理が終了すると円筒ドラム1は槽から引き揚げられた後、ドラムの蓋7が開かれ、処理済の蛸を取り出して市場へと出荷される。
【0026】
【効果】
以上詳細に説明したように、この考案の処理装置は多数の小孔を設けたドラムを処理液槽と組合せ、処理液槽に設けた駆動部の動力を着脱自在な連結部を介してドラムに伝達するようにし、この連結部を前記ドラムの側端に設けたハの字状の受金具と、このハの字状の受金具の内側に係合する、回転軸の軸端に設けた平板部材から構成したから、回転軸の軸端の平板部材を上向きにするだけで、複数工程の処理液槽に対してドラムを次々に容易に装着、取外しでき、その間に最初にドラム内に封入された蛸などの魚貝類は中から取り出すことなく所要の解凍、塩もみ、薬品処理などの作業が極めて効率的に行なわれるという種々の利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
魚貝類処理装置の実施例の全体構成図
【図2】
図1の線II-IIから見た断面図
【図3】
処理装置の一部斜視図
【符号の説明】
1 円筒ドラム
2 処理液槽
3 ドラム本体
4 側板
5 リング
6 小孔
7 蓋板
8 係止具
9 吊上金具
10 突条部
12 支持ローラ
13 モータ
14 回転軸
15 平板部材
16 受金具
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2004-05-12 
結審通知日 2004-05-13 
審決日 2004-06-16 
出願番号 実願平3-4878 
審決分類 U 1 112・ 121- ZA (A23B)
最終処分 成立    
特許庁審判長 河野 直樹
特許庁審判官 鵜飼 健
種村 慈樹
登録日 1995-11-21 
登録番号 実用新案登録第2089093号(U2089093) 
考案の名称 魚貝類処理装置  
代理人 増子 尚道  
代理人 鳥居 和久  
代理人 鎌田 文二  
代理人 田中 康之  
代理人 鳥居 和久  
代理人 増子 尚道  
代理人 永田 豊  
代理人 東尾 正博  
代理人 小野 明  
代理人 鈴木 弘美  
代理人 生駒 啓  
代理人 田中 康之  
代理人 小野 明  
代理人 東尾 正博  
代理人 鈴木 弘美  
代理人 坂東 宏  
代理人 鎌田 文二  
代理人 生駒 啓  
代理人 永田 豊  
代理人 坂東 宏  

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