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審決分類 審判 訂正 2項進歩性 訂正しない B65D
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない B65D
管理番号 1144807
審判番号 訂正2004-39295  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2006-11-24 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2004-12-27 
確定日 2006-10-16 
事件の表示 実用新案登録第1839235号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯及び請求の要旨
本件審判の請求の要旨は、登録実用新案第1839235号(実願昭59-161589号(前特許出願日昭和54年4月4日援用、昭和63年9月8日実用新案出願公告(実公昭63-33829号)実用新案法第13条で準用する特許法第64条の規定により、平成1年7月31日付け手続補正書により補正がなされている。)の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるものである。
したがって、本件請求は、訂正事項として、願書に添付された明細書の実用新案登録請求の範囲に記載された、
「平坦な底板と、底板の周囲から上方へ拡開傾斜して一体に延長された周壁と、周壁の上部外側面全周に形成された接着剤塗布面とを有し、未包装状態で多数個を積み重ねたとき、各接着剤塗布面が、上下方向に連続して露呈して略垂直な面として柱状を呈する如く形成され、その状態で接着剤を一括して塗布されたトレーと、
上記トレー内に置かれた被包装物と、
上記トレーの上面開口部をオーバーラップして被覆し、かつ、トレーの接着剤塗布面に接着剤を介して接着された周縁を有するストレッチフイルムとからなり、
上記ストレッチフィルムは、その周縁を、トレーの接着剤塗布面に接着させた位置に接近した下側で抵抗線により全周に亘って切断してあることを特徴とするストレッチフイルムによるトレー包装体。」
を、
「平坦な底板と、底板の周囲から上方へ拡開傾斜して一体に延長された周壁と、周壁の上部外側面全周に、上部周縁を外方に折り返して、または、上部外周縁に直接、形成された接着剤塗布面とを有し、未包装状態で多数個を積み重ねたとき、各接着剤塗布面が、上下方向に連続して露呈して略垂直な面として柱状を呈する如く形成され、その状態で接着剤を一括して塗布されたトレーと、
上記トレー内に置かれた被包装物と、
上記トレーの上面開口部を加熱軟化させた状態でオーバーラップして被覆し、かつ、トレーの接着剤塗布面に接着剤を介して接着された周縁を有するストレッチフイルムとからなり、
上記ストレッチフイルムは、その周縁を、トレーの接着剤塗布面に接着した位置に接近した下側で抵抗線により全周に亘って切断してあることを特徴とするストレッチフイルムによるトレー包装体。」
と訂正することを訂正事項として含むものである。

一方、当審において、平成17年3月4日付で通知した訂正拒絶理由の概要は、訂正考案は、本件出願の出願日(前特許出願日援用:昭和54年4月4日)前に頒布された刊行物である実願昭51-13482号(実開昭52-104756号)のマイクロフィルム(以下、「引用刊行物1」という。)、実願昭51-126274号(実開昭53-45102号)のマイクロフィルム(以下、「引用刊行物2」という。)、特開昭52-84088号公報(以下、「引用刊行物3」という。)に記載された考案及び周知技術に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、平成5年法律第26号附則第4条第1項の規定によりなおその効力を有するとされる実用新案法第3条第2項の規定により、その出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものであるので、本件訂正は、平成5年法律第26号附則第4条第1項の規定によりなおその効力を有するとされ、平成15年法律第47号第12条で改正された平成5年法律第26号附則第4条第2項の規定によって読み替えられる実用新案法第39条第1項第5項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない、というものである。

これに対して、平成17年4月5日付で意見書が提出されている。

2.当審の判断
2.1 訂正後の考案
上記訂正事項は、実用新案登録請求の範囲に記載された「接着剤塗布面」に係る構成に、願書に添付された明細書に記載される「上部周縁を外方に折り返して、または、上部外周縁に直接」形成するという限定を付加し、また、同「ストレッチフイルム」のトレーへのオーバーラップに係る構成に、同じく記載される「加熱軟化させた状態で」という限定を付加するものであり、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
以上のとおり、上記訂正事項は、願書に添付された明細書または図面に記載された事項の範囲内であり、かつ、実用新案登録請求の範囲の減縮に該当するものであるから、いわゆる独立登録要件を充足するものか、以下検討する。

訂正後の明細書及び図面の記載からみて、訂正後の登録実用新案第1839235号の考案の要旨は、その訂正された実用新案登録請求の範囲に記載された以下のとおりのものと認める。
「平坦な底板と、底板の周囲から上方へ拡開傾斜して一体に延長された周壁と、周壁の上部外側面全周に、上部周縁を外方に折り返して、または、上部外周縁に直接、形成された接着剤塗布面とを有し、未包装状態で多数個を積み重ねたとき、各接着剤塗布面が、上下方向に連続して露呈して略垂直な面として柱状を呈する如く形成され、その状態で接着剤を一括して塗布されたトレーと、
上記トレー内に置かれた被包装物と、
上記トレーの上面開口部を加熱軟化させた状態でオーバーラップして被覆し、かつ、トレーの接着剤塗布面に接着剤を介して接着された周縁を有するストレッチフィルムとからなり、
上記ストレッチフィルムは、その周縁を、トレーの接着剤塗布面に接着した位置に接近した下側で抵抗線により全周に亘って切断してあることを特徴とするストレッチフィルムによるトレー包装体。」(以下、「訂正考案」という。)

2.2 刊行物の記載事項
(1)引用刊行物1の記載事項
a 「トレー嵌置受皿の外側面部に、上フイルムを熔断する抵抗線と、上フイルムを抵抗線に接触保持させるフイルム密着手段とを周方向に沿って設けてなるフイルム包装切断用テーブル。」(実用新案登録請求の範囲)
b 「現在、肉、魚、加工品及び雑貨等の包装においては、トレーと熱可塑性合成樹脂樹脂フイルムとを用いて次の2通りの包装が行われている。第1に、第8図に示す如く真空包装機の下部ボツクス(1)内のテーブル(2)上に、被包装物(3)を盛ったトレー(4)を載せ、テーブルを下降させ、下部ボツクスの開口上面に上フイルム(5)を張り、上部ボツクス(6)を閉じ、ボツクス内を真空にすると共に、上フイルムを加熱板(7)によって成型温度に加熱軟化させ、真空化と加熱が完了した時点でテーブルを上フイルム面に上昇させ、上フイルムを被包装物に接触させ、テーブルの周縁と上部ボツクスの開口下面内側のフランジとにより上フイルムの周緑部を挟持させ、大気をボツクス内に導入して上フイルムを被包装物とトレーに形通りに密着させる。第2に、・・吸気孔より上フイルムの内側の空気を排気して上フイルムを大気圧により被包装物とトレーに形通りに密着成型させる。」(明細書第1頁下から7行?第2頁15行)
c 「ところで、上記のテーブルは大きくし、トレーを多数載せ並べ、この上に1枚の上フイルムを被覆して多数一度に密着包装すると、作業能率がよいが、この場合上記包装後に上フイルムを各トレー間で切り離す必要がある。」(明細書第2頁第16行?同頁末行)
d 「本考案は上記フイルム包装とフイルム切断とが簡単確実に行なわれるフイルム包装切断用テーブルを提供するものであって、その構成を図面にもとづいて説明すると次の通りである。第1図乃至第3図に示すように、長方形の金属板製の基板(14)上にトレー嵌置受皿(15)を多数格子状配列に形成する。この各受皿(15)は、トレー外周の傾斜と合致する内側面(16a)を有する電気絶縁性の枠体(16)の下部外側フランジ部(16b)を基板(14)上に定着して形成する。枠体(16)の基板(14)と直角状の外側面(16c)にフイルム熔断用抵抗線(17)を周方に張り巡らせる。この抵抗線(17)は枠体外側面(16c)に周方向に適当間隔で突設した止め輪(18)に挿通して若干突出させ、この両端部は枠体の1コーナー部に形成した端子取付部(16d)の各端子(19)(20)に接続する。」(明細書第3頁第8行?第4頁第3行)
e 「第4図に示すように、各枠体(16)の外側面(16c)及びフランジ部(16b)の上面に上フイルム(25)の密着手段(26)を設ける。すなわち合成樹脂製の接着剤又は加熱上フイルムが密着する塗料或いはフイルムシート等の密着手段(26)を塗布又は粘着して設ける。」(明細書第4頁第8?13行)
f 「このテーブルは前述の第8図に示す真空包装機の下ボツクス内に収容し、この各受皿(15)に第4図に示すように被包装物(29)を入れたトレー(30)を上周縁が少し突出した状態に夫々嵌置して前述の包装作業を行なう。この場合、大気圧の導入時、各トレー(30)及び被包装物(29)上の加熱軟化した上フイルム(25)はそれらに凹凸形状通りに押付けられ延伸して密着被覆される。各トレーの周囲上の上フイルム(25)もコ字形の凹部又はL形の段部の塗料はフイルムシート(26)面に押付けら延伸してそれに密着し、上フイルム(25)は抵抗線(17)上に全周に亘り確実に接触する。」(明細書第5頁第1?12行)。
g 「従つて包装後に抵抗線(17)に通電させて発熱させると、この熱により凹状又はL形に形成されている上フイルム(25)が熱収縮を生じて抵抗線(17)との接触部から離れんとするがこれが密着保持手段(26)によって防止され、全周に亘り確実に熔断される。この後、各トレーを取り出すと共に、スクラツプフイルムを適当に剥離除去し、再び包装作業を行なう。」(明細書第5頁第12?末行)
h 「包装フィルムとして通常使用されるオレフイン系フイルムの80?150ミクロン厚のものを熔断するには、」(明細書第6頁第11?13行)
と記載され、引用刊行物1の第4図には、トレー(30)の一部分が描かれ、これによれば、トレー(30)は、平坦な底板と、底板の周囲から上方へ拡開傾斜して一体に延長された周壁とを有するものと認められる。
そして、同図には、基板(14)上に形成されたトレー嵌置受皿(15)の中に、内部に被包装物(29)が置かれたトレー(30)が嵌置され、上フイルム(25)が被包装物に密着しつつトレー(30)の上面開口部をオーバーラップして被覆した状態にあるトレー包装体としてが描かれており、前記f、g、hの記載によれば、この被覆した状態にあるトレー包装体における上フイルム(25)は、それがオーバーラップして被覆しているトレー(30)の周壁の外側面の上端部から下側の位置で、抵抗線(17)の発熱により全周にわたって熔断つまり切断されるものと認められる。

そこで、前記a?hの記載事項を第1?9図を参照しながら総合すると、引用刊行物1には、次の考案が記載されているものと認める。
平坦な底板と、底板の周囲から上方へ拡開傾斜して一体に延長された周壁とを有するトレーと、
上記トレー内に置かれた被包装物と、
上記トレーの上面開口部を加熱軟化させた状態でオーバーラップして被覆し、かつ、トレーの周壁の上部外側面全周に密着させた周縁を有する熱可塑性合成樹脂からなる上フイルムとからなり、
上記上フイルムは、その周縁を、トレーの周壁の外側面の上端部から下側の位置で抵抗線により全周に亘って切断してある、熱可塑性合成樹脂からなる上フイルムによるトレー包装体。

(2)引用刊行物2の記載事項
a 「然して、上記容器は第3図に示す如く、その上周縁を外側下方に曲折垂下させ、この垂下縁片部10’が十分な長さとなるように当初成型しておき、ついで第4図に示す如く、この垂下縁片部10’を適宜カール機によつて曲折内方に巻込ませて容器周側面3の上縁外側に丸みのある耳部10を形成するものである。」(公報第2頁第3欄第14?20行)
b 「一方、上記耳部10は第5図に示す如く、容器複数枚の積合せた際、丸い耳部同士が重なり合う為容器間に空気Sを生じさせる役目を果し、積合せた容器を一枚々々剥しやすくする上で非常に効果的となり、スタツキング防止を完遂する。」(公報第2頁第4欄第6?10行)
と記載され、引用刊行物2の第4、5図には、耳部10の外面が上下方向に連続して露呈して略垂直面となるものが記載されているものと認められる。

そこで、前記a、bの記載事項及び耳部略図、容器積合せ状態の耳部略図を示す第4、5図の記載を総合すると、上下に連続する略垂直面は所謂柱の形状と云えるので、引用刊行物2には、次の考案が記載されているものと認める。
耳部を設け、容器を積み重ねた際、耳部の外面が上下方向に連続して露呈して略垂直な面として柱状を呈する容器。

(3)引用刊行物3の記載事項
a 「従来ストレッチフイルム等を使用して包装する包装機に於て各使用状況、特に夏、冬等温度、湿度等に差のある場合、又は使用する機械の設置された地域、場所等の差でフイルムに直射日光が当る場合等使用状況によりフイルムの状態が夫々変化してくるものである。少し具体的に実施例をもつてフイルム使用の場合を説明してみれば夏期又は春秋期の昼間に於ては一次包装時点即ちフイルムを熱着しない状態でフイルムの接着が充分であるが冬期又は春秋期の朝等に於てはフイルムの伸縮が悪るくフイルムのヤブレ、シワ等が生じ又フイルムの接着が不充分のため二次包装工程として、熱板を設け包装品の底部に当てフイルムを熱着させる為め相当の熱量を必要としなければならない。」(公報第1頁左下欄下から8行?同頁右下欄第4行)
b 「本発明は上記の様に構成されているので常に熱が均一にフイルム(7)になる様にしてある為め即ち各パネルヒーター(4)の温度調整は使用状況時の外気により自由に調整出来るよう温度コントロールユニット(6)が作動するのでフイルムが常に安定した状態で使用可能であるから従来の如く使用場所の範囲、又は季節等に使用フイルムが限定されることなくフイルムは最も包装に適した包装し易い状況及び状態に置かれてあるため包装能率は上昇し、」(公報第1頁右下欄下から7行?第2頁左上欄第2行)
と記載されている。

そこで、前記a、bの記載事項を統合すると、引用刊行物3には、次の考案が記載されているものと認める。
ストレッチフイルムを加熱軟化させた状態で用いる包装。

2.3 対比・判断
ここで、引用刊行物1記載の考案における「上フイルム」は、その配置からみて、訂正考案における「フイルム」に相当する。
そこで、訂正考案と引用刊行物1記載の考案とを比較すると、両考案は、
平坦な底板と、底板の周囲から上方へ拡開傾斜して一体に延長された周壁とを有するトレーと、
上記トレー内に置かれた被包装物と、
上記トレーの上面開口部を加熱軟化させた状態でオーバーラップして被覆し、かつ、トレーの周壁の上部外側面全周に密着させた周縁を有するフイルムとからなり、
上記フイルムは、その周縁を、全周に亘って切断してある、フイルムによるトレー包装体。
である点で一致し、次の点で相違する。

【相違点ア】
訂正考案では、トレーが、周壁の上部外側面全周に、上部周縁を外方に折り返して、または、上部周縁に直接、形成された接着剤塗布面を有し、未包装状態で多数個を積み重ねたとき、各接着剤塗布面が、上下方向に連続して露呈して略垂直な面として柱状を呈する如く形成され、その状態で接着剤を一括して塗布されたものであるのに対し、引用刊行物1記載の考案では、トレーが接着剤塗布面を有さず、したがって、接着剤塗布面の形状についての言及もない点。

【相違点イ】
トレーの上面開口部をオーバーラップして被覆するフイルムが、訂正考案では、加熱軟化させた状態のストレッチフイルムであるのに対し、引用刊行物1記載の考案では、加熱軟化させた状態の熱可塑性合成樹脂フィルムである点。

【相違点ウ】
トレーの上面開口部をオーバーラップして被覆するフイルムが、訂正考案では、トレーの接着剤塗布面に接着剤を介して接着された周縁を有するのに対し、引用刊行物1記載の考案では、トレーの周壁の上部外側面全周に密着させた周縁を有する点。

【相違点エ】
トレーの上面開口部をオーバーラップして被覆するフイルムの周縁の抵抗線による全周に亘る切断が、訂正考案では、トレーの接着剤塗布面に接着した位置に接近した下側で行われるのに対し、引用刊行物1記載の考案では、トレーの周壁の外側面の上端部から下側の位置で行われる点。

以下、相違点について検討する。
【相違点ア】について
相違点アに係る訂正考案の構成は、トレー周壁の上部外側外周面一周に、上部周縁を外方に折り返して、または、上部外周縁に直接、形成された接着剤塗布面が形成されているという構成(以下、「本件接着剤塗布面構成」という。)、及び、未包装状態で多数個を積み重ねたとき、上部外側面の一部が、上下方向に連続して露呈して略垂直な面として柱状を呈する如く形成されているという構成(以下、「本件形状構成」という。)という二つの構成とからなっている。
そして、本件において、本件接着剤塗布面構成の容易想到性が本件形状構成の容易想到性を前提とするものであったり、逆に、本件形状構成の容易想到性が本件接着剤塗布面構成容易想到性を前提とするなど、両者を切り離して把握することが許されないとする特段の事情があるとは認められないから、両者それぞれについて検討する。

まず、本件接着剤塗布面構成について、フイルムによるトレー包装体において、フイルムとトレーとの密着性を改良するために、トレー周壁の上部外側外周面一周に、上部周縁を外方に折り返して形成された接着剤塗布面、すなわち、本件接着剤塗布面構成を採用することは、本件に係る出願の出願時においては周知の技術(以下、「周知技術1」という。)である。(例えば、特公昭50-17915号公報、実公昭39-38574号公報等。)
そして、引用刊行物1記載のトレーについても、フイルムとの密着性を改良するという課題は、当然内在し得るものである。したがって、当業者が、上記周知技術1の構成である本件接着剤塗布面構成とすることは、きわめて容易に想到し得るものというべきである。

つぎに、本件形状構成について、トレイの形状として、耳部を設け、トレーを積み重ねた際、耳部の外面が上下方向に連続して露呈して略垂直な面として柱状を呈する形状、すなわち、本件形状構成の形状を採用することは、引用刊行物2に開示されている。
ここで、引用刊行物1記載のトレーについても、製造過程ないし搬送の過程で積み重ねられる場合が当然想定され、その際、このトレーが、スタッキングを生じるおそれのある形状であることは明らかであるから、当業者が、引用刊行物2記載の技術的事項である本件形状構成の形状、すなわち、耳部を設け、その形状を、耳部の外面が上下方向に連続して露呈して略垂直な面として柱状を呈するようなものにすることも、きわめて容易に想到し得るものというべきである。

そして、本件接着剤塗布面構成と本件形状構成を同時に採用するとき、接着面として、トレー外側面のうち、底面と垂直をなす平坦面を選択することは、作業の容易性や接着強度の確保等を考慮するときは、むしろ、当然のことといい得る範囲の事項である。すなわち、引用刊行物2に記載される技術的事項を前提に、引用刊行物1記載の考案、周知技術1に接した当業者が、そこから本件接着剤塗布面構成及び本件形状構成を読み取り、これらを組み合せて、相違点アに係る本件考案の構成を想到することは、きわめて容易であるというべきである。

なお、請求人は、前記意見書の第2頁「1.」において、刊行物2記載の考案は製造不能である旨主張しているが、開示される形状は上記のものであり、物品の形状に係る考案の認定として誤りはなく、その製造に最適な方法があるか否かは別異の事項である。また、本件トレーはスタッキングしていなければならない旨も主張しているが、本件の訂正後の実用新案登録請求の範囲には、スタッキングしていることの裏付けとなる記載はないし、さらに考案の詳細な説明又は図面にもそのことを裏付ける記載はない。そして、本件トレーにおいて、トレーの接着剤塗布面に接着剤を塗布するには、「各接着剤塗布面が、上下方向に連続して略垂直な面として、柱状を呈する」ようにすればよいのであるから、必ずスタッキングしていなければならないものとは認められない。
また、前記意見書の第4頁「4.」において、周知技術1で示した特公昭50-17915号公報、実公昭39-38574号公報をいずれも製造することができない旨も主張しているが、合議体が認定した周知技術の把握は可能なものである。

【相違点イ】について
引用刊行物1記載の考案は、加熱軟化させた状態の熱可塑性合成樹脂フイルムをトレーにオーバーラップするものであるが、トレー包装体のフイルムとして、常温で延伸性のあるフィルム、すなわちストレッチフイルムを用いることは、例示するまでもなく、周知の技術(以下、「周知技術2」という。)であり、かつまた、一般に、熱可塑性合成樹脂フィルムはストレッチフイルムを含み得るものであり、しかも、引用刊行物1における「熱可塑性合成樹脂フイルム」が、ストレッチフイルムを排除していると認めるべき特段の事情もない。また、ストレッチフイルムを加熱軟化させた状態で包装に用いることは、引用刊行物3にも開示されている。
これらを総合的に勘案すれば、引用刊行物1記載の考案において、加熱軟化させた状態のストレッチフイルムを採用することは、当業者にとってきわめて容易に想到し得たものというべきである。

なお、請求人は、前記意見書の第3頁「3.」において、「引用刊行物1における「熱可塑性合成樹脂フィルム」がストレッチフイルムを排除していると認めるべき特段の事情もないと述べるが間違いである。・・・理由はストレッチフイルムとは15μ程度のごく薄いフイルムであって・・・これは約30%の可塑剤を含有することが原因である。」と主張している。しかしながら、ストレッチフイルムは、厚さ、可塑剤の含有量とも所望とする特性等に応じて各種設定し得るものであり、また、材料によっても特性が変わることも当業者にとってよく知られるところであり、しかも、引用刊行物1の記載から認定する考案は上記のとおり、これら各数値を論拠とするものではないので、「引用刊行物1における「熱可塑性合成樹脂フィルム」がストレッチフイルムを排除している」とする請求人の主張は採用できない。

【相違点ウ】、【相違点エ】について
上記【相違点ア】についてで示したように、引用刊行物2に記載される技術的事項を前提に、訂正考案、周知技術1に接した当業者が、トレーが、「周壁の上部外側面全周に、上部周縁を外方に折り返して、形成された接着剤塗布面を有し」との構成に至ることは、当業者にとってきわめて容易である以上、同構成を有するトレーをフイルムで包装した場合に、相違点ウに係る「トレーの上面開口部をオーバーラップして被覆するフイルムが、トレーの接着剤塗布面に接着剤を介して接着された周縁を有する」との構成に至ることは必然である。

また、引用刊行物1には、「上フイルム(25)は抵抗線(17)上に全周に亘り確実に接触する。・・・抵抗線(17)に通電させて発熱させると、この熱により・・・上フイルム(25)が・・・全周に亘り確実に熔断される。」(明細書第5頁第11?17行)との記載があり、この記載と引用刊行物1の第4図によれば、引用刊行物1記載の考案においては、フイルムとトレーの密着部に接近した下側で、フイルム周縁が抵抗線により全周にわたって切断されていると認めることができる。そうであれば、引用刊行物1記載の考案が、本件接着剤塗布面構成に至った場合には、フイルムとトレーの密着部が「トレーの接着剤塗布面」となり、接着位置に接近した下側で、フイルムの周縁の抵抗線による全周に亘る切断が行われざるを得ないのであるから、相違点エに係る構成に至ることもまた必然である。

3.むすび
以上のとおり、訂正考案は、引用刊行物1?3に記載された考案及び周知技術1、2に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められるから、平成5年法律第26号附則第4条第1項の規定によりなおその効力を有するとされる実用新案法第3条第2項の規定により、その出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものであるので、本件訂正は、平成5年法律第26号附則第4条第1項の規定によりなおその効力を有するとされ、平成15年法律第47号第12条で改正された平成5年法律第26号附則第4条第2項の規定によって読み替えられる実用新案法第39条第1項第5項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2005-06-24 
結審通知日 2005-06-28 
審決日 2005-08-03 
出願番号 実願昭59-161589 
審決分類 U 1 41・ 856- Z (B65D)
U 1 41・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 雅夫北川 清伸  
特許庁審判長 粟津 憲一
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
寺本 光生
登録日 1990-11-14 
登録番号 実用新案登録第1839235号(U1839235) 
考案の名称 ストレツチフイルムによるトレ-包装体  
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