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審決分類 審判    E03F
管理番号 1179076
審判番号 無効2007-400005  
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2008-07-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-08-21 
確定日 2008-05-12 
事件の表示 上記当事者間の登録第3126043号実用新案「側溝改修工事用切断機」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 実用新案登録第3126043号の請求項3、4に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1.手続の経緯
平成18年 7月28日 出願(実願2006-6097号)
平成18年 9月20日 実用新案登録
(実用新案登録第3126043号)
平成19年 8月21日 本件無効審判請求
(無効2007-400005号)
平成19年 9月28日 答弁書及び訂正書
平成19年11月15日 弁駁書
平成20年 1月25日 口頭審理陳述要領書(請求人)
平成20年 2月 8日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
口頭審理(口頭で無効理由を通知)
平成20年 2月22日 意見書及び訂正書

第2.審判請求の概要・被請求人の答弁等
2-1.請求人株式会社スカイ・アーク外1名は、本件の請求項1?5に係る考案についての登録を無効とするとの審決を求め、本件の請求項1?5に係る考案は、甲第1号証?甲第4号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定に違反し登録されたものであり、実用新案法第37条第1項第2号の規定により無効とされるべきである旨主張し、証拠方法として甲第1?4号証を提出し、弁駁書で、訂正後の請求項1?4に係る考案についても実用新案法第3条第2項の規定に違反しており、実用新案法第37条第1項第2号の規定により無効とされるべきである旨主張し、口頭審理に際して甲第5?16号証、参考資料1?10を提出した。
甲第1号証:特許第3784820号公報
甲第2号証:特開2006-29015号公報
甲第3号証:特開2002-225027号公報
甲第4号証:特開2002-178892号公報
甲第5号証:大滝英征著「機械機構設計ノート」、初版1刷、
日刊工業新聞社、昭和61年11月11日、
表紙、134?136頁、奥付
甲第6号証:特開昭63-312007号公報
甲第7号証:特公平2-8094号公報
甲第8号証:特開平6-238249号公報
甲第9号証:特開平10-168977号公報
甲第10号証:特開2002-317481号公報
甲第11号証:特開2004-150246号公報
甲第12号証:特許第3688981号公報
甲第13号証:特開2000-74046号公報
甲第14号証:特開昭63-134110号公報
甲第15号証:特開平4-183429号公報
甲第16号証:特開平5-161596号公報

2-2.被請求人高橋土建株式会社は、本件審判の請求は成り立たないとの審決を求め、平成19年9月28日付け意見書で、請求人主張の無効理由はない旨、及び平成20年2月22日付け意見書で、訂正後の請求項3及び4に係る考案には、口頭審理で示された無効理由はない旨主張した。

第3.訂正の内容
平成19年9月28日付けの訂正により、明細書及び実用新案登録請求の範囲は、訂正書に添付した明細書及び実用新案登録請求の範囲の通り訂正(登録日:平成19年10月10日)され、訂正書に添付した実用新案登録請求の範囲の記載は、以下の通りである。更に、平成20年2月22日付けの訂正により、実用新案登録請求の範囲の請求項1及び2が削除(登録日:平成20年3月12日)された。

【請求項1】
走行用レール及び走行用レールと平行に且つ一体に設けたピニオン歯車レールを備えたアプト式レール部、並びに前記アプト式レール部を側溝内の所定高さに固定する固定部を備えたレール体と、前記レール部上に配置されると共に、内装した油圧モータで歯車レールに噛み合わせた駆動歯車を駆動して走行させる走行機構を備えた走行機体と、走行機体上に水平首振り可能に首振り機構を介して装着し、且つ先端部に油圧モータ駆動の水平面で回転する切断刃体を装備した回動体と、前記各油圧モータに所定の作動油を供給する油圧ポンプユニットとで構成され、前記走行機体の走行機構の回転軸と接続した取付部並びに回動体の首振り機構の回転軸と接続した取付部を、走行機体の外側に設けると共に、前記各取付部に回転伝達可能に装着できる装着部、及び前記装着部と連結して遠所から回転伝達を行なうフレキシブルワイヤー部、及び前記フレキシブルワイヤー部に回転動作を付与する手動ハンドル部とで構成した手動操作部材を備えた手動機構を付設してなることを特徴とする側溝改修工事用切断機。
【請求項2】
固定部を、レール体の側方に出没自在に設けた複数のネジ体で、側溝体の左右側壁を押圧してレール体を所定の高さに固定するように構成した請求項1記載の側溝改修工事用切断機。
【請求項3】
首振り機構に、油圧作動機構を付設してなる請求項2記載の何れかの側溝改修工事用切断機。
【請求項4】
回動体に、切断刃体に向けて放水を行なう放水管を付設してなる請求項3記載のいずれかの側溝改修工事用切断機。

第4.無効理由について
4-1.本件実用新案登録考案
前記のとおり訂正され、口頭審理において、上記請求項3記載の「請求項2記載の何れかの側溝改修工事用切断機」は、「請求項2記載の側溝改修工事用切断機」の誤記、上記請求項4記載の「請求項3記載のいずれかの側溝改修工事用切断機」は、「請求項3記載の側溝改修工事用切断機」の誤記である旨、被請求人が述べ、請求人は、それについて同意した。
それらが誤記であることは明白であるので、当審において、誤記を修正した上で請求項3を独立形式で記載すると、本件の削除後の請求項3、4に係る考案(以下、「本件考案3」、「本件考案4」という。)は、以下のとおりのものである。

【請求項3】走行用レール及び走行用レールと平行に且つ一体に設けたピニオン歯車レールを備えたアプト式レール部、並びに前記アプト式レール部を側溝内の所定高さに固定する固定部を備えたレール体と、前記レール部上に配置されると共に、内装した油圧モータで歯車レールに噛み合わせた駆動歯車を駆動して走行させる走行機構を備えた走行機体と、走行機体上に水平首振り可能に首振り機構を介して装着し、且つ先端部に油圧モータ駆動の水平面で回転する切断刃体を装備した回動体と、前記各油圧モータに所定の作動油を供給する油圧ポンプユニットとで構成され、前記走行機体の走行機構の回転軸と接続した取付部並びに回動体の首振り機構の回転軸と接続した取付部を、走行機体の外側に設けると共に、前記各取付部に回転伝達可能に装着できる装着部、及び前記装着部と連結して遠所から回転伝達を行なうフレキシブルワイヤー部、及び前記フレキシブルワイヤー部に回転動作を付与する手動ハンドル部とで構成した手動操作部材を備えた手動機構を付設してなる側溝改修工事用切断機において、
固定部を、レール体の側方に出没自在に設けた複数のネジ体で、側溝体の左右側壁を押圧してレール体を所定の高さに固定するように構成し、
首振り機構に、油圧作動機構を付設してなる側溝改修工事用切断機。
【請求項4】
回動体に、切断刃体に向けて放水を行なう放水管を付設してなる請求項3記載の側溝改修工事用切断機。

4-2.無効理由の概略
当審が口頭で通知した無効理由の概略は、以下の通りである。
平成19年9月28日付けの訂正後の請求項1?4に係る考案は、下記刊行物1?5に記載の事項から当業者がきわめて容易に考案し得るものであり、実用新案法第3条第2項の規定に違反しており、実用新案法第37条第1項第2号の規定により取り消されるべきである。
1.特許第3784820号公報(甲第1号証、以下、「刊行物1」という。)
2.特開2006-29015号公報(甲第2号証、以下、「刊行物2」という。)
3.特開2002-225027号公報(甲第3号証、以下、「刊行物3」という。)
4.特開昭63-134110号公報(甲第14号証、以下、「刊行物4」という。)
5.特開平9-111715号公報(以下、「刊行物5」という。)

4-3.引用刊行物
4-3-1.刊行物1には、以下の記載が図示とともにある。
a.【0017】
また、符号1は、側溝Uの溝において、側溝Uに沿って配設された案内レールを示している。この案内レール1は、支持部材2によって側溝Uの側壁UWの内面に取り付けられており、図示しない歩道や車道の表面と平行となるように配設されている。この支持部材2は、側壁UW内面だけを利用して案内レール1を支持する固定機構、例えば、パンタグラフ状の固定機構を有するものであり、案内レール1を側溝Uの内底面から浮かせた状態となるように支持している。つまり、支持部材2は、側溝Uの側壁UW上端や内底面を利用せずに、側壁UW内面だけを利用して案内レール1を支持できるように構成されているのである。
このため、案内レール1は、側溝Uの内底面や上端に凹凸があっても、歩道や車道の表面と平行に配設することができるし、側溝Uの内底面や上端に対して傾斜させることも可能である。そして、案内レール1の配置に側溝Uの内底面や上端の影響がないから、案内レール1を溝内において正確な位置に配設することができる。
b.【0018】
なお、案内レール1は、歩道や車道の表面と平行となるように配設されていなくてもよく、歩道や車道の表面に対して所望の角度となるように配設してもよい。
さらになお、支持部材2はパンタグラフ状の固定機構を有するものに限られず、側溝Uの内底面から案内レール1を浮かせた状態で支持でき、かつ、側溝Uの側壁UW上端や内底面を利用せずに、側壁UW内面だけを利用して案内レール1を支持できるものであればよく、特に限定はない。
さらになお、支持部材2は側溝Uの内底面を利用しても案内レール1を支持するものでもよいが、この場合には、側溝Uの内底面にゴミ等の堆積や破損などによる凹凸が形成されていても、その凹凸の影響を受けないように案内レール1を支持できる機構を支持部材2が有していることが必要である。
c.【0019】
図1に示すように、前記案内レール1には、この案内レール1に沿って移動可能に切断手段10が取り付けられている。この切断手段10は、案内レール1に沿って移動する移動機構を備えた本体部11と、基端が本体部11に取り付けられ基端を支点としてその先端が揺動可能に設けられた揺動アーム12と、円盤状の切断刃13とから構成されている。揺動アーム12は、切断刃13を案内レール1と平行、つまり、歩道や車道の表面と平行となるように保持し、かつ、切断刃13を歩道や車道の表面と平行に移動させるように構成されている。
なお、案内レール1が歩道や車道の表面に対して所望の角度となるように配設している場合には、揺動アーム12は、案内レール1が歩道や車道の表面に対してなす角度と同じ角度で切断刃13を保持し、かつ、案内レール1が歩道や車道の表面と対してなす角度と同じ角度を維持したまま切断刃13を移動させることができる。
d.【0020】
また、図1(B)に示すように、揺動アーム12は、切断刃13を案内レール1よりも上方に位置するように保持し、かつ、その基端を支点として揺動しても切断刃13および揺動アーム12が案内レール1と干渉しないように配置されている。
なお、揺動アーム12を揺動させる機構および切断刃13を回転させる機構は本体部11に設けられているが、切断刃13を回転させる機構は揺動アーム12の先端に設けてもよい。そして、揺動アーム12を揺動させる機構および切断刃13を回転させる機構は特に限定されない。
e.【図1】及び【図2】から、切断手段10の本体部11は、案内レール1上に配置されていること、切断手段10の揺動アーム12の基端は、基端を支点として水平首振り可能に取り付けられ、先端部に切断刃13Aを装備し、切断刃13Aは、水平面で回転することが看取できる。

刊行物1は、側溝の切断方法、側溝の改修方法および側溝改修用ブロックに係るものであるが、側溝の改修方法に用いる切断手段10を認識できるから、上記記載を含めた明細書全体の記載及び図面の記載から、甲第1号証には、以下の考案が記載されているものと認められる。
「案内レール1と、案内レール1を側溝Uの内底面から浮かせた状態となるように支持する固定機構を有する支持部材2と、前記案内レール1上に配置されると共に、案内レール1に沿って移動する移動機構を備えた本体部11と、本体部11上に基端を支点として水平首振り可能に取り付けられ、且つ先端部に水平面で回転する切断刃13Aを装備した揺動アーム12とで構成されてなる側溝の改修方法に用いる切断手段10。」(以下、「引用考案」という。)

4-3-2.刊行物2には、以下の記載が図示とともにある。
f.【0019】
図1、図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る側溝の側壁切断装置(以下、単に側壁切断装置という)10は、施設された側溝11の対向する側壁12、13の上端部に沿ってそれぞれ移動する左右対となるつば付車輪14?17を前後に備えた台車18と、台車18の移動方向に沿って台車18上に載置されたレール部材19を有している。また、側壁切断装置10は、レール部材19上にラックピニオン機構20を介して取付けられレール部材19に沿って進退する子台車21と、子台車21に設けられた回転駆動源22から回転力伝達機構の一例であるベルト23を介してその回転力が伝達され、レール部材19の幅方向にその位置を変更可能な垂直回転軸24を有している。更に、側壁切断装置10は、垂直回転軸24に装着された回転刃25と、回転刃25の高さ位置を台車18に対して上下調整可能な高さ調整機構26を有している。以下これらについて、詳細に説明する。
g.【0023】
子台車21は、ラックピニオン機構20を介してレール部材19に取付けられレール部材19上を進退する移動部51を有している。また、ラックピニオン機構20は、レール部材19上に設けられたラック52と、移動部51に設けられラック52と噛み合う図示しない歯車及び歯車を回動する図示しない歯車機構を備えた油圧モータを有している。また、子台車21は移動部51に取付けられた回転駆動源22を有し、回転駆動源22には油圧モータ53と、油圧モータ53の回転駆動軸54を軸心として回動可能なアーム55が設けられている。そして、アーム55の先部には軸受56を介して垂直回転軸24が取付けられ、垂直回転軸24には回転駆動軸54からベルト23を介してその回転力が伝達されている。
このような構成とすることにより、油圧源66(図4参照)から供給される加圧された油を給油口67を介してラックピニオン機構20の油圧モータ及び回転駆動源22の油圧モータ53にそれぞれ分配することにより、移動部51をレール部材19上で進退させたり、油圧モータ53を駆動させたり、移動部51をレール部材19上で進退させながら油圧モータ53の回転駆動軸54を回転させることができる。また、アーム55を回転駆動軸54の周りに回動させることにより、垂直回転軸24を回転駆動軸54の周りの任意の角度位置に移動させることができる。

4-3-3.刊行物3には、以下の記載が図示とともにある。
h.【0019】また、該機台フレーム17の下面後部には、油圧シリンダー取付軸22が設けられ、この油圧シリンダー取付軸22に油圧シリンダー23の後端が取付けられており、油圧シリンダー23の先端には枢軸24を介して稍長六角形状をした可動フレーム25が接続されている。
i.【0020】前記取付けブラケットフレーム19には、油圧ホース接続口15が設けられており、小型のショベル系の掘削作業機Aに設けた予備油圧源取出口11と油圧ホース12で接続されて、小型のショベル系の掘削作業機Aから油圧の供給を受けて油圧シリンダー23、及び機台フレーム17の上面の取付けブラケットフレーム19の前方寄りにボルト27、27で取付けられた油圧モータ26に圧油が供給されるようになっている。

4-3-4.刊行物4には、以下の記載が図示とともにある。
j.「管状被加工体の内側に挿入されて所定の位置に位置決めされて設定されるシャシと、このシャシに対し回転自在に取り付けられた旋回フレームと、この旋回フレームに対しその外側に刃先が張り出すように偏芯的に取り付けられたカッタとを具えていることを特徴とする管状コンクリート成型体等の切断装置。」(特許請求の範囲1)
k.「尚、本装置においてカッタ4の出没、旋回フレーム3の旋回、及び位置決めロッド8の出没等は、それぞれカッタ設定用シャフト51、旋回駆動用シャフト40、及び位置決めロッドシフト用シャフト25等によって行われたものであるが、これらについても例えばフレキシブルワイヤ等を適用して回転伝達を行うことももとより可能である。」(第6頁左上欄第12?19行)

4-3-5.刊行物5には、以下の記載が図示とともにある。
l.【0010】
【実施例】以下、本発明にかかる好適な実施例を添付図面と共に詳細に説明する。図1は本発明にかかる舗装盤切断機の一実施例を示す側面図であり、図2は図1の実施例の平面図、図3は図1の実施例の正面図である。また、図4は図1の実施例の要部を示す側面断面図であり、図5は図1の実施例の要部を示す正面断面図である。1は車体であり、車輪(前輪2、中間輪3、後輪4)を備えて路面上を移動可能に設けられている。2は前輪であり、車体1の底面前部に、車体1の進行方向に直交する方向に軸受された回転軸の両端に固定され、車体1の進行方向に転がるように設けられている。4は後輪であり、車体1の底面後部に、車体1の進行方向に直交する方向に軸受された回転軸の両端に固定され、前輪2と同様に車体1の進行方向に転がるように設けられている。また、車体1には、原動機(図示せず)が搭載されている。原動機としては、内燃機関(エンジン)、電動モータまたは油圧モータを用いることができる。
m.【0020】なお、26は手押ハンドルであり、前後方向に伸縮自在に設けられており、作業者はこの手押ハンドル26を把持して、車体1の進行方向を確認しながら操作して舗装盤の切断を行う。また、27は前後進用の手動ハンドルであり、通常の作業においては動力によって自走するが、手動ハンドル27を操作することで切断初期位置の設定等を好適に行うことができる。

4-4.対比、判断
4-4-1.本件考案3について
本件考案3と引用考案とを対比すると、引用考案の「支持部材2」、「切断刃13A」、「揺動アーム12」、「側溝の改修方法に用いる切断手段10」は、本件考案3の「固定部」、「切断刃体」、「回動体」、「側溝改修工事用切断機」に相当する。
引用考案の「案内レール1」と、本件考案3の「走行用レール及び走行用レールと平行に且つ一体に設けたピニオン歯車レールを備えたアプト式レール部」とは、いずれも「レール」の点で共通する。
引用考案の支持部材2は、側溝Uの内底面から浮かせた状態となるように支持する固定機構を有するから、側溝内の所定高さに固定する固定部といえ、引用考案の案内レール1と支持部材2を合わせて「レール体」と称することができる。
引用考案の案内レール1に沿って移動する移動機構が本体部11を走行させることは明らかであるから、引用考案の「移動機構」は、本件考案3の「走行機構」に相当し、引用考案の「本体部11」は、本件考案3の「走行機体」に相当する。
引用考案の揺動アーム12は、本体部11上に基端を支点として水平首振り可能に取り付けられているから、走行機体上に水平首振り可能に首振り機構を介して装着されているといえる。
よって、両考案は、
「レール、並びにレールを側溝内の所定高さに固定する固定部を備えたレール体と、前記レール上に配置されると共に、走行機構を備えた走行機体と、走行機体上に水平首振り可能に首振り機構を介して装着し、且つ先端部に水平面で回転する切断刃体を装備した回動体とで構成されてなる側溝改修工事用切断機。」
の点で一致しており、以下の点で相違している。
[相違点1]レールに関し、本件考案3は、走行用レール及び走行用レールと平行に且つ一体に設けたピニオン歯車レールを備えたアプト式レール部であるのに対し、引用考案は、案内レール1であって、本件考案3のような特定がなされていない点。
[相違点2]固定部に関し、本件考案3は、レール体の側方に出没自在に設けた複数のネジ体で、側溝体の左右側壁を押圧してレール体を所定の高さに固定するように構成しているのに対し、引用考案は、側溝Uの内底面から浮かせた状態となるように支持する固定機構を有する、即ち、側溝内の所定の高さに固定するものの、本件考案3のような特定がなされていない点。
[相違点3]走行機体と、首振り機構を介して装着され切断刃体を装備した回動体に関し、本件考案3は、内装した油圧モータで歯車レールに噛み合わせた駆動歯車を駆動して走行させる走行機構を走行機体に備え、切断刃体が油圧モータ駆動であって、側溝改修工事用切断機は、油圧モータに所定の作動油を供給する油圧ポンプユニットを有し、走行機体の走行機構の回転軸と接続した取付部並びに回動体の首振り機構の回転軸と接続した取付部を、走行機体の外側に設けると共に、前記各取付部に回転伝達可能に装着できる装着部、及び前記装着部と連結して遠所から回転伝達を行なうフレキシブルワイヤー部、及び前記フレキシブルワイヤー部に回転動作を付与する手動ハンドル部とで構成した手動操作部材を備えた手動機構を付設し、首振り機構に、油圧作動機構を付設しているのに対し、引用考案は、本件考案3のような特定がなされていない点。

上記相違点1について検討する。
刊行物2には、レール部材19(本件考案3の「走行用レール」に相当。)及びレール部材19上に設けられたラック52(同「ピニオン歯車レール」)が記載されており、該ラック52がレール部材19と平行に且つ一体に設けられていることは明らかである。
刊行物1及び2は、いずれも本件考案3と同じ側溝改修工事用切断機に関するものであるから、引用考案の案内レール1に代え、刊行物2記載のレール部材19及びラック52を採用し、両者を合わせてアプト式レール部と称し、本件考案3の上記相違点1に係る構成とすることは当業者がきわめて容易になし得る程度のことである。

上記相違点2について検討する。
刊行物1の上記a.に「案内レール1を支持する固定機構、例えば、パンタグラフ状の固定機構」と記載され、引用考案の固定機構は、案内レール1の側方に出没自在であり、側溝Uの左右側壁を押圧して案内レール1を所定の高さに固定するものといえる。このような固定を行うに際し、側方に出没自在であり、側壁を押圧する手段として、複数のネジ体は、例示するまでもなく周知技術であり、引用考案の固定部に前記周知技術を採用し、本件考案3の上記相違点2に係る構成とすることは当業者がきわめて容易になし得る程度のことである。

上記相違点3について検討する。
刊行物2の上記g.には、「ラック52と噛み合う図示しない歯車及び歯車を回動する図示しない歯車機構を備えた油圧モータを有している。」とあり、油圧モータでラック52(本件考案3の「歯車レール」)に噛み合わせた歯車機構(同「駆動歯車」)を駆動して走行させる旨記載され、刊行物2の上記g.には「子台車21は移動部51に取付けられた回転駆動源22を有し、回転駆動源22には油圧モータ53と、油圧モータ53の回転駆動軸54を軸心として回動可能なアーム55が設けられている。そして、アーム55の先部には軸受56を介して垂直回転軸24が取付けられ、垂直回転軸24には回転駆動軸54からベルト23を介してその回転力が伝達されている。」とあり、刊行物2の上記f.には「垂直回転軸24に装着された回転刃25」とあるから、回転刃25(同「切断刃体」)が油圧モータ駆動である旨記載されており、刊行物2の上記g.には、「油圧源66(図4参照)から供給される加圧された油を給油口67を介してラックピニオン機構20の油圧モータ及び回転駆動源22の油圧モータ53にそれぞれ分配する」とあり、側溝の側壁切断装置(同「側溝改修工事用切断機」)が油圧モータに所定の作動油を供給する油圧源66(同「油圧ポンプユニット」)を有する旨記載されている。
刊行物1及び2は、いずれも本件考案3と同じ側溝改修工事用切断機に関するものであり、油圧モータを内装することは必要に応じ適宜なし得る設計事項であり、油圧モータと歯車機構を合わせて走行機構と称することができるから、引用考案に刊行物2記載の事項を適用し、上記相違点3の「内装した油圧モータで歯車レールに噛み合わせた駆動歯車を駆動して走行させる走行機構を走行機体に備え、切断刃体が油圧モータ駆動であって、側溝改修工事用切断機は、油圧モータに所定の作動油を供給する油圧ポンプユニットを有」する構成とすることは、当業者がきわめて容易になし得る程度のことである。
次に、相違点3の内、「首振り機構に、油圧作動機構を付設」について検討する。
刊行物3には、稍長六角形状をした可動フレーム25(本件考案3の「回動体」に相当。)に油圧シリンダー23(同「油圧作動機構」)が接続されることが記載されており、可動フレーム25が首振り機構を介して装着されていることは明らかであるから、刊行物3には、首振り機構に、油圧作動機構を付設することが記載されているものといえ、刊行物1及び3は、いずれも本件考案3と同じ側溝改修工事用切断機に関するものであるから、引用考案に刊行物3記載の事項を適用し、上記相違点3の「首振り機構に、油圧作動機構を付設」する構成とすることは、当業者がきわめて容易になし得る程度のことである。
最後に、相違点3の内、「走行機体の走行機構の回転軸と接続した取付部並びに回動体の首振り機構の回転軸と接続した取付部を、走行機体の外側に設けると共に、前記各取付部に回転伝達可能に装着できる装着部、及び前記装着部と連結して遠所から回転伝達を行なうフレキシブルワイヤー部、及び前記フレキシブルワイヤー部に回転動作を付与する手動ハンドル部とで構成した手動操作部材を備えた手動機構を付設し」について検討する。
被請求人の提出した平成20年2月8日付け口頭審理陳述要領書第3頁第19?21行に『「取付部」は、「走行機体の外側箇所に設けられて、手動操作部材と連結して、各回転軸に回転力を伝達するための手動操作部材を取り付けることのできる構造部」といえる。』と記載され、同第4頁第22?28行に『「走行機体の走行機構の回転軸と接続した取付部並びに回動体の首振り機構の回転軸と接続した取付部」は、「走行機体が走行するための駆動歯車、及び首振り動作させるために回動体に、各々回転力を付与・伝達するための回転構造部(各回転軸)と連結していて、前記各回転軸に外部からの回転力を伝達できる構造」と解される。』と記載され、同第5頁第1?5行に『「各取付部に回転伝達可能に装着できる装着部」は、「分離状態の手動操作部材が、前記の取付部に装着可能であって、装着状態で手動操作部材からの回転力を回転軸に伝達できる構造」と解され、装着後の着脱構造は任意(非特定)である。』と記載され、本件の考案の詳細な説明の項から見ても、本件考案3の「取付部」は、回転軸に回転力を伝達し、「装着部」を取り付けることのできるものであれば足りるものといえる。
一方、刊行物4には、カッタ4の出没(本件考案3の「首振り機構」の動きと、被切断層の厚み方向へ切断刃体を移動させる点で共通する。)、旋回フレーム3の旋回(本件考案3の「走行機構」の動きと、被切断層の面に沿った方向へ切断刃体を移動させる点で共通する。)について、フレキシブルワイヤを適用して回転伝達を行う管状コンクリート成型体等の切断装置(本件考案3の「側溝改修工事用切断機」と切断機の点で共通する。)が記載されており、刊行物5には、通常の作業においては動力によって自走し、前後進用の手動ハンドル27を有する舗装盤切断機が記載され、即ち、被切断層の面に沿った方向へ切断刃体を移動させる手段として手動と動力の2系統の伝達手段を設けることが記載されている。
刊行物1、4、5はいずれも地面に設置された層を切断する技術に関するものであり、刊行物5に手動と動力の2系統の伝達手段を設けることが記載されており、2系統の伝達手段があれば、それに応じて切断刃体を移動することができ便利であるから、既に検討した油圧モータでの駆動に手動伝達手段を加え、その手動伝達手段として刊行物4に記載のフレキシブルワイヤーによる手動伝達手段を採用することは当業者がきわめて容易になし得る程度のことである。
そして、フレキシブルワイヤ装着部を取り付けることができ回転軸に回転力を伝達する取付部を設けることは、フレキシブルワイヤの取付において周知技術(登録実用新案第3019318号公報、「回転軸スリーブ1」、「方形軸体」が「取付部」、「装着部」に相当する。特開2002-98179号公報、「他端部22b」、「チャック36」が「取付部」、「装着部」に相当する。特開昭62-205841号公報、「出力軸」、「ソケット33」が「取付部」、「装着部」に相当する。)であるから、フレキシブルワイヤの取付に際し、該周知技術を採用することは、当業者がきわめて容易になし得る程度のことであり、引用考案の移動機構並びに首振り機構は、いずれも走行機体の中あるいは近傍に存在していることは明らかであり、フレキシブルワイヤを取り付ける際に、取り付けやすい場所が求められるのは当然であるから、取付部を走行機体の外側に設けることは、設計事項にすぎない。
更に、フレキシブルワイヤー部に回転動作を付与する手動ハンドル部を設けることも当然である。
よって、上記相違点3の「走行機体の走行機構の回転軸と接続した取付部並びに回動体の首振り機構の回転軸と接続した取付部を、走行機体の外側に設けると共に、前記各取付部に回転伝達可能に装着できる装着部、及び前記装着部と連結して遠所から回転伝達を行なうフレキシブルワイヤー部、及び前記フレキシブルワイヤー部に回転動作を付与する手動ハンドル部とで構成した手動操作部材を備えた手動機構を付設し」とすることは、当業者がきわめて容易になし得る程度のことである。
以上により、本件考案3の上記相違点3に係る構成とすることは当業者がきわめて容易になし得る程度のことである。

そして、本件考案3の作用効果も、刊行物1?5及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

4-4-2.本件考案4について
本件考案4は、本件考案3を引用し、本件考案3の構成を「回動体に、切断刃体に向けて放水を行なう放水管を付設してなる」と技術的に限定したものである。
そこで、この限定した構成について検討する。
切断によって生じる熱や、粉塵の飛散防止のために、切断刃体に向けて放水を行なう放水管を切断機に付設することは、周知技術(特開2001-295216号公報、特開平10-30209号公報、特開平9-300340号公報)であり、また、引用考案の切断刃13A(本件考案3の「切断刃体」に相当。)は、揺動アーム12(同「回動体」)に装備されているから、切断刃13Aとともに回転する揺動アーム12に放水管を付設し、上記限定事項のような構成とすることは、当業者がきわめて容易になし得る程度のことであり、その効果も予測の範囲内である。

4-5.被請求人の主張について
被請求人は、平成20年2月22日付け意見書第6頁第3?4行で、「a(当審注:刊行物5を指している。)切断機の手動走行機構は、切断作業における走行制御ではなく、初期位置設定のためのものであり、その使用目的が異なる」と主張するが、手動走行機構を切断作業のときに操作するか、初期設定のときの操作するかはその使い方であって、切断作業に手動走行機構を操作することが刊行物5に記載されていないからといって、刊行物5に記載の事項を引用考案に適用することに困難性はなく、刊行物1、5は、いずれも地面に設置された層を切断する技術に関するものであるから、引用考案に手動と動力の2系統の伝達手段を設けることは、当業者がきわめて容易になし得る程度のことである。
また、請求人は同意見書6頁第18?19行で「しかも引用文献aには、「切り込み」の動作入力は1系統入力である。」と主張する。確かに、刊行物5に記載の2系統の伝達手段は、被切断層の面に沿った方向(被請求人のいう「切り進み」方向)へ切断刃体を移動させる手段に採用されているものであり、被切断層の厚み方向(被請求人のいう「切り込み」方向)へ切断刃体を移動させる手段に採用されているものではないが、既に切断刃体の移動を行う手段への適用が示されている以上、被切断層の面に沿った方向と同様に被切断層の厚み方向への切断刃体の移動に対しても、刊行物5に記載の2系統の伝達手段を採用することに困難性はない。

第5.むすび
以上のように、本件考案3及び4は、いずれも刊行物1?5に記載された考案及び周知技術に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件考案3及び4の実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第37条第1項第2号の規定により無効とすべきものである。
審判に関する費用は、実用新案法第41条で準用する特許法第169条第2項で更に準用する民事訴訟法第61条の規定を適用して、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2008-03-18 
結審通知日 2008-03-21 
審決日 2008-04-01 
出願番号 実願2006-6097(U2006-6097) 
審決分類 U 1 114・ 121- ZA (E03F)
最終処分 成立  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 尾崎 俊彦
酒井 進
登録日 2006-09-20 
登録番号 実用新案登録第3126043号(U3126043) 
考案の名称 側溝改修工事用切断機  
代理人 山内 康伸  
代理人 近藤 彰  
代理人 中井 博  
代理人 中井 博  
代理人 山内 康伸  
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