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審決分類 審判    A63B
審判    A63B
管理番号 1192199
審判番号 無効2008-400002  
総通号数 111 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2009-03-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-04-07 
確定日 2009-01-23 
事件の表示 上記当事者間の登録第3107046号実用新案「超薄型頂部カバーのゴルフクラブヘッド」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 実用新案登録第3107046号の請求項1乃至10に係る考案についての実用新案登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 I.手続の経緯
本件実用新案登録第3107046号の請求項1?10に係る考案についての出願は、平成16年8月5日に実用新案登録出願され、同年11月17日にその考案について設定の登録がなされた。その後、その登録実用新案について、平成20年4月7日に請求人藍 守徳により無効の申立てがなされ、被請求人に対し、同年4月24日付けで答弁書提出の機会を与えたが、その指定期間内に何ら応答がなかったものである。

II.本件考案
本件請求項1?10に係る考案は、その登録実用新案明細書及び図面の記載からみて、実用新案登録請求の範囲の請求項1?10に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。(以下、請求項1?請求項10に係る考案をそれぞれ「本件考案1」?「本件考案10」といい、請求項1?請求項10に係る考案をまとめて「本件考案」という。)

「【請求項1】
クラブヘッド本体があり、概ねゴルフクラブヘッド形状を呈しており、一つの正面、一つの底面および一つの背面を有し、正面に一つの打球プレートを有し、クラブヘッド本体は一つの頂面を有し、頂面に一つの穴を有し、
一つの薄型頂部カバーがあり、クラブヘッド本体の頂面の穴をカバーして合わされ、薄型頂部カバーの厚さは0.7mm以下であり、硬度はHRC35以上であることを特徴とする超薄型頂部カバーのゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
薄型頂部カバーは、金属材料により製造され、比重は7g/cm^(2)以上であり、厚さは0.5mm以下であることを特徴とする請求項1記載の超薄型頂部カバーのゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
薄型頂部カバーは、非鉄金属材料により製造され、比重は5g/cm^(2)以下であり、厚さは0.7mm以下であることを特徴とする請求項1記載の超薄型頂部カバーのゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
薄型頂部カバーは、金属材料により製造され、厚さは0.35mmであることを特徴とする請求項2記載の超薄型頂部カバーのゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
薄型頂部カバーは、非鉄金属材料により製造され、厚さは0.5mmであることを特徴とする請求項3記載の超薄型頂部カバーのゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
薄型頂部カバーは、硬質はんだ付け技術を使用し、クラブヘッド本体上にはんだ付けされていることを特徴とする請求項1記載の超薄型頂部カバーのゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
薄型頂部カバーは、クラブヘッド本体の頂面上にはんだ付けされていて、クラブヘッド本体の頂面の全体を覆い、クラブヘッド本体の頂面の穴に蓋をして合わされることを特徴とする請求項6記載の超薄型頂部カバーのゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
薄型頂部カバーは、周縁で以って穴周縁と相対して硬質はんだ付けで繋げられ、クラブヘッド本体の頂面の穴に蓋をして合わされることを特徴とする請求項6記載の超薄型頂部カバーのゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
打球プレートは、クラブヘッド本体と共に一体成型により作り出されることを特徴とする請求項1記載の超薄型頂部カバーのゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
打球プレートは、クラブヘッド本体上に於いてはんだ付けされることを特徴とする請求項1記載の超薄型頂部カバーのゴルフクラブヘッド。」

III. 請求人の主張及び証拠方法

1.請求人の主張
請求人は、実用新案登録第3107046号の実用新案登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その無効理由を概略次のように主張している。
(なお、無効理由番号は便宜的に当審において付与したものである。)

A.無効理由1について(実用新案法第5条第6項違反)
(1)本件考案1は、「厚さは0.7mm以下」、「硬度はHRC35以上」という構成要件を有しているが、本件の考案の詳細な説明(明細書)には、これらの数値範囲を特定する技術的意味を理解するに足る明確かつ十分な記載がされておらず、また、「厚さ」については当該構成要件が「0」であることを含み、それ故、必須の構成要件であるはずの薄型頂部カバーが存在しない場合をも含むことになり、登録実用新案の範囲が明確でなく、実用新案法第5条第6項第1号又は第2号の規定に違反するものであるから、実用新案法第37条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
(2)本件考案2は、請求項1に従属し、前記(1)に係る構成要件に加えて、「金属材料により製造」、「比重は7g/cm^(2)以上」、「厚さは0.5mm以下」という構成要件を有しているが、本件の考案の詳細な説明(明細書)には、すべての金属材料に適用できると理解するに足る明確かつ十分な記載がされておらず、また、「厚さ」については当該構成要件が「0」であることを含み、それ故、必須の構成要件であるはずの薄型頂部カバーが存在しない場合をも含むことになり、加えて、比重とその単位との関係が明りようでないために、登録実用新案の範囲が明確でなく、実用新案法第5条第6項第1号又は第2号の規定に違反するものであるから、実用新案法第37条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
(3)本件考案3は、請求項1に従属し、前記(1)に係る構成要件に加えて、「非鉄金属材料により製造」、「比重は5g/cm^(2)以上」、「厚さは0.7mm以下」という構成要件を有しているが、本件の考案の詳細な説明(明細書)には、すべての非鉄金属材料に適用できると理解するに足る明確かつ十分な記載がされておらず、また、「厚さ」については当該構成要件が「0」であることを含み、それ故、必須の構成要件であるはずの薄型頂部カバーが存在しない場合をも含むことになり、加えて、比重とその単位との関係が明りようでないために、登録実用新案の範囲が明確でなく、実用新案法第5条第6項第1号又は第2号の規定に違反するものであるから、実用新案法第37条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
(4)本件考案4は、請求項2に従属し、前記(1)、(2)に係る構成要件に加えて、「厚さは0.35mm以下」という構成要件を有しているが、本件の考案の詳細な説明(明細書)には、当該数値範囲を特定する技術的意味を理解するに足る明確かつ十分な記載がされていないために、登録実用新案の範囲が明確でなく、実用新案法第5条第6項第1号又は第2号の規定に違反するものであるから、実用新案法第37条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
(5)本件考案5は、請求項3に従属し、前記(1)、(3)に係る構成要件に加えて、「厚さは0.5mm以下」という構成要件を有しているが、本件の考案の詳細な説明(明細書)には、当該数値範囲を特定する技術的意味を理解するに足る明確かつ十分な記載がされていないために、登録実用新案の範囲が明確でなく、実用新案法第5条第6項第1号又は第2号の規定に違反するものであるから、実用新案法第37条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

B.無効理由2について(実用新案法第3条第2項違反)

甲第1号証:特開2003-180885号公報
甲第2号証:アメリカ特許第6334817号公報
甲第3号証:アメリカ特許第6494789号公報
甲第4号証:アメリカ特許第5569337号公報
甲第5号証:特開2002-165902号公報
甲第6号証:特開2002-113137号公報

(1)本件考案1は、甲第1?甲第4号証に記載された考案を、単に組み合わせただけであり、甲第1?甲第4号証から当業者がきわめて容易になし得たものである。
(2)請求項1を引用する本件考案2は、甲第1?第4号証に記載された考案から当業者がきわめて容易になし得たものである。
(3)請求項1を引用する本件考案3は、甲第1?第4号証に記載された考案から当業者がきわめて容易になし得たものである。
(4)請求項2を引用する本件考案4は、甲第1?第4号証に記載された考案から当業者がきわめて容易になし得たものである。
(5)請求項3を引用する本件考案5は、甲第1?第4号証に記載された考案から当業者がきわめて容易になし得たものである。
(6)請求項1を引用する本件考案6は、甲第1?5号証に記載された考案から当業者がきわめて容易になし得たものである。
(7)請求項6を引用する本件考案7は、甲第1?第5号証に記載された考案から当業者がきわめて容易になし得たものである。
(8)請求項6を引用する本件考案8は、甲第1?第5号証に記載された考案から当業者がきわめて容易になし得たものである。
(9)請求項1を引用する本件考案9は、甲第1?第4号証に記載された考案から当業者がきわめて容易になし得たものである。
(10)請求項1を引用する本件考案10は、甲第1?第4号証及び第6号証に記載された考案から当業者がきわめて容易になし得たものである。

よって、本件考案1?本件考案10は、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、同法第37条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。

2.証拠方法及び主な証拠の記載事項
請求人が提出した証拠方法とその主な証拠の記載事項は、次のとおりである。

(1)甲第1号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
【特許請求の範囲】
「【請求項1】ソール部をなすソール壁部に、トウ側からヒール側を連ねるサイド壁部とホーゼル部とを設けかつクラウン部側のクラウン開口部と、前側のフェース開口部とを有するヘッド主部、
前記クラウン開口部に取り付けられることによりクラウン部を形成するクラウン部材、及び前記フェース開口部に取り付けられるフェース部材を一体に溶着することにより内部に空所を形成し、
前記フェース部材は少なくともクラウン部側の縁部に、後方に曲がる折曲げ部を有し、
かつ前記クラウン部の前側部分の厚さを0.3?1.5mmとするとともに、該前側部分の前縁に、前記折曲げ部の前記空所側の内面に向かって垂下する垂下片を介して前記折曲げ部の内面を受ける受片を有する鍵状部を形成したことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項2】前記クラウン部材は、厚さが0.3?1.5mmをなしかつその前縁に前記鍵状部が一体に形成されてなることを特徴とする請求項1記載のゴルフクラブヘッド。」

段落【0002】
「【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】金属材料からなるウッド型のゴルフクラブヘッドとしては、例えば複数個の部品を溶接により一体に固着して製造される。図14、図15には、従来の2ピー構造のヘッドを例示している。図14のヘッドa1は、底部を開口bとしたヘッド本体部cと、このヘッド本体部cの前記開口bに溶接により固着される板状のソール部材dとから構成されている。ヘッド本体部cは、フェース部e、クラウン部f、ホーゼル部g、サイド部jを一体に具えている。また図15に示すヘッドa2は、上面を開口bとしたヘッド本体部kと、この開口bに溶着されるクラウン部材mとから構成されている。このヘッド本体部kは、フェース部e、ホーゼル部g、サイド部j、ソール部nを一体に具えている。」

段落【0003】
「前記各ヘッド本体部c、kは、通常、ロストワックス精密鋳造などにより成形された鋳造品が用いられる。このような鋳造品では、ヘッド本体部c、kの各部の厚さを例えば連続的に変化させ得るなど自在に設計でき、所望の重量配分を行うことができる。従って、ヘッドの重心位置や慣性モーメント等の設計自由度が高いという利点がある。」

段落【0006】
「また近年では、ヘッドの低重心化を図るべく、クラウン部材qの薄肉化が進んでいる。このため、クラウン部材qとフェース部材pとの厚さの差が大きくなり、両部材の接合部において溶接不良が生じ易い。とりわけ薄肉化されたクラウン部材qにおいて、溶接熱による変形が生じ、溶接後に表面が凹凸化するおそれがある。」

段落【0007】
「本発明は、以上のような実状に鑑み案出なされたもので、フェース部の材料選定自由度を損ねず、また溶接後のクラウン部の形状安定性に優れたゴルフクラブヘッド及びその製造方法を提供することを目的としている。」

段落【0015】
「図1において、ゴルフクラブヘッド(以下、単に「ヘッド」ということがある。)1は、ボールを打撃するフェース部2と、このフェース部2の上縁2aに連なりヘッド上面をなすクラウン部3と、前記フェース部2の下縁2bに連なりヘッド底面をなすソール部4と、前記クラウン部3とソール部4との間を前記フェース2のトウ側縁2cからバックフェースを通りヒール側縁2dまでのびるサイド部5と、図示しないシャフトが装着されるホーゼル6とを具えたものが例示される。また本例のヘッド1は、金属材料からなりかつ内部に空所を形成したウッド型のものが例示されている。」

段落【0016】
「また図2?図4に示すように、本実施形態のヘッド1は、ヘッド主部11と、その前部に配されるフェース部材12と、前記ヘッド主部10の上部に配されるクラウン部材13との3つの部材を溶接により一体に固着して形成される。」

段落【0027】
「前記クラウン部材13は、本実施形態では、圧延材などの金属板材を所定形状に打ち抜き、これをプレス加工することにより形成された塑性加工品21から形成され、各部が実質的に同一厚さをなしている。このクラウン部材13の厚さtcは、0.3?1.5mm、より好ましくは0.3?0.8mm、さらに好ましくは0.5?0.8mmとするのが望ましい。このように、クラウン部材13を薄肉化することによって、ヘッドの上部の重量を削減でき、低重心化を図りうる他、軽量化、大型化などにも役立つ。また圧延材は、厚さが小のものでも鋳造品に見られるような「巣」といった材料欠陥が少なく、緻密な結晶構造を具えている。従って、圧延材をクラウン部材13に用いたときには、クラウン部3を薄肉化しつつ材料欠陥に伴う強度低下を効果的に抑制しうる。なおクラウン部材13の厚さtcが0.3mm未満であると、十分な強度が得られずに耐久性が低下する傾向があり、逆に1.5mmを超えると、ヘッド重心が高くなるなど打ちこなすのが難いヘッドになる傾向がある。」

段落【0028】
「またクラウン部材13には、クラウン部3の外面をなす基部9の前縁eに鍵状部10が形成されている。該鍵状部10は、図2、図3及び図6に示すように、クラウン側の折曲げ部12aの前記空所i側を向く内面12aiに向かって垂下する垂下片10Aを介して前記折曲げ部12aの内面12aiを受ける受片10Bを有する。」

段落【0040】
「また図13には、さらに本発明の実施形態を示している。この形態のヘッド主部11は、クラウン開口部Ocと、フェース開口部Ofとの間を区切る継ぎ部23が形成されている。この継ぎ部23は、巾Wが例えば3?5mm程度をなすとともにクラウン部3の前側部分をなしその厚さを0.3?1.5mmとしている。そして、この継ぎ部23の前縁eに、前記鍵状部10を設けている。本発明は、このような形態としても実施できる。」

段落【0042】
「【実施例】表1に示す仕様によりヘッド体積が320cm3 、ヘッド質量が186gの略同一外形のウッド型ゴルフクラブヘッドを試作するとともに、クラウン部材の加工性、溶接時の変形不良率、位置決め不良率、ヘッドの耐久性を評価した。なおフェース部材は、いずれもTi-4.5Al-3V-2Fe-2Moを熱間鍛造した塑性加工品とし、図2に示すお椀状のものを用いた。またヘッド主部は、いずれもTi-6Al-4Vを真空精密鋳造した鋳造品とした。テストの内容は次の通りである。」

段落【0043】
「<クラウン部材の加工性>クラウン部材を加工したときの不良品発生率を調査した。数値が小さいほど良好であることを示す。」

段落【0044】
「<溶接時の変形不良率>溶接後、ヘッドのクラウン部の凹凸などを、ヘッド塗装後、目視により観察し、凹凸が生じたものを不良品としてその発生率を求めた。数値が小さいほど良好であるが5%以下であればほぼ合格レベルである。」

段落【0045】
「<溶接時の位置決め不良率>溶接時の、クラウン部材とフェース部材との位置決め性などを総合的に評価した。位置決めが容易でないものを不良とし、その発生率を調べた。数値が小さいほど良好であるが5%以下であればほぼ合格レベルである。」

段落【0046】
「<ヘッドの耐久性>各供試ヘッドにFRP製の同一のシャフトを装着し46インチのウッド型ゴルフクラブを試作するとともに、該クラブをスイングロボットに取り付け、ヘッドスピードが54m/sとなるように調節して2ピースゴルフボールを各クラブ毎に3000球づつ打撃し、フェース面の損傷具合を目視により観察した。テスト結果などを表1に示す。」

段落【0047】
【表1】として、当該甲第1号証に係る実施例1?6について、比較例1?3との対比が示されており、実施例1?4ではクラウン部材が材料Aから成り、実施例1?3のクラウン部材の厚みは0.8mmであること、実施例4のクラウン部材の厚みは0.5mmであること、実施例5は材料Cから成り、クラウン部材の厚みは0.8mmであること、実施例6は材料Bから成り、クラウン部材の厚みは0.8mmであることが把握できる。
そして、これら材料A?Cは、以下のものとの記載がある。
「材料A:Ti-4.5Al-3V-2Fe-2Mo
材料B:Ti-6Al-4V
材料C:Ti-15V-3Al-3Sn-3Cr」

段落【0002】、【0003】には、従来の技術として、2ピース構造のヘッドが存在したこと、そして、このようなヘッド本体は、通常、ロストワックス精密鋳造により成形された鋳造品が用いられていることが記載されている。

段落【0006】、【0007】には、ヘッドの低重心化を図るべく、クラウン部材qの薄肉化が進んでいること、このために、クラウン部材qとフェース部材pとの厚さの差が大きくなり、両部材の接合部において溶接不良が生じ易い故に、当該甲第1号証記載の発明では、フェース部の材料選定自由度を損ねず、また溶接後のクラウン部の形状安定性に優れたゴルフクラブヘッド及びその製造方法を提供することが目的とされていることが記載されている。

段落【0027】、【0028】におけるクラウン部は、金属材料から形成されており、その厚さtcは、0.3?1.5mm、より好ましくは0.3?0.8mm、さらに好ましくは0.5?0.8mmとすると記載されている。

段落【0040】には、他の実施例として、ヘッド主部11が、クラウン開口部Ocと、フェース開口部Ofとの間を区切る継ぎ部23を形成されたものが示され、この実施例においても、クラウン部の厚さは、0.3?1.5mmとされていることが記載されている。

段落【0042】?【0047】には、クラウン部を非鉄金属材料とし、当該クラウン部の厚さを0.5或いは0.8とした実施例が、溶接時の変形不良率、位置決め不良率の点で比較例よりも良好なものとなし得ることが記載されている。

前記各段落記載を参酌しながら、【図1】?【図3】及び【図6】を参照するに、甲第1号証には、
「ソール部をなすソール壁部に、トウ側からヒール側を連ねるサイド壁部とホーゼル部とを設けかつクラウン部側のクラウン開口部と、前側のフェース開口部とを有するヘッド主部、
前記クラウン開口部に取り付けられることによりクラウン部を形成するクラウン部材、及び前記フェース開口部に取り付けられるフェース部材を一体に溶着することにより内部に空所を形成し、
前記フェース部材は少なくともクラウン部側の縁部に、後方に曲がる折曲げ部を有し、
かつ前記クラウン部の前側部分の厚さを0.3?1.5mmとするとともに、該前側部分の前縁に、前記折曲げ部の前記空所側の内面に向かって垂下する垂下片を介して前記折曲げ部の内面を受ける受片を有する鍵状部を形成したことを特徴とするゴルフクラブヘッド。」が、記載されている。
(以下、「甲1考案」という。)

(2)甲第2号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
なお、請求人が提出した箇所及び抄訳を示す。
3欄40?45行
「The golf club head 10 of the first embodiment has a three piece structure comprinsing of a main head body 11, a face 12, and a crown 13.
The main head body 11 has a neck 11a and a sole 11d which are integrally formed therewith, and also has a face securing opening 11b and a crown securing opening 11c.」
(抄訳)「第1実施例のゴルフクラブヘッド10は、主ヘッド本体11とフェイス12とクラウン13とからなるスリー・ピース構造を有する。
主ヘッド本体11はネック11aとそれと一体に形成されたソール11dとを有し、そしてまたフェイス取付け用開口11bとクラウン取付け用開口11cとを有する。」

3欄55?57行
「The crown 13 is formed martensite deposition hardening-type stainless steel(17-4PH,specific gravity:7.9) by casting. The crown 13 has a thickness(t3) of 0.6mm.」
(抄訳)「クラウン13はマルテンサイト鍍金硬化型ステンレス鋼(17-4PH,比重:7.9)からキャスティングにより形成される。クラウン13は0.6mmの厚さ(t3)を有する。」
(3)甲第3号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
なお、以下では、請求人が提示した箇所及びその抄訳に加えて、当審が提示する箇所については、当審による抄訳を付し(当審抄訳)と記載する。

1欄3?5行
「FIELD OF THE INVENTION
The present invention relates generally to a golf club, and more particularly to a head of the golf club.」
(当審抄訳)「発明の分野
この発明は、大略、ゴルフクラブに関する。そして、さらに詳細には、ゴルフクラブのヘッドに関する。」

1欄50?59行
「DETAILED DESCRIPTION OF THE INVWNTION
The golf club head of the present invention comprises a ball-hitting face and a main body. The face is made of a steel alloy containing …」
(当審抄訳)「本発明のゴルフクラブヘッドは、打球フェースと本体から構成される。フェースは、…を含有する鋼合金により製造される。」

2欄7?9行
「With the removal of the precipitate, the steel alloy has a hardness of HRC 46-53,」
(抄訳)「沈殿物を除くと、鋼合金はHRC46-53の硬度、155-189kgf/mm^(2)の引っ張り強度を有する、」

2欄13?19行
「The main body of the golf club head of the present invention is made by the afore-mentioned steel alloy, or SUS 17-4PH or SUS 15-5 PH stainless steel or pure titanium, titanium alloy, aluminumu alloy. The main body is made by a precision casting in conjunction with the surface punching and pressing. The metal is then inlaid.」
(抄訳)「本発明のゴルフクラブヘッド本体は、前述の鋼合金、SUS17-4PH、SUS15-5PHステンレス鋼、或いは純チタン、チタン合金、アルミニウム合金により製造される。この本体は、パンチ或いはプレスによる表面と共に精密鋳造法により製造される。この時に金属材料が嵌め込まれる。」

2欄22?23行
「The sample of the present invention is given a name "CH-1", which was tested in a series experiments.」
(当審抄訳)「本発明のサンプルは、”CH-1”と呼称され、一連の試験がなされた。」

2欄28?30行
「In addition, the CII-1 of the present invention has a the lowest density of 7.715 g/cm^(3)」
(抄訳)「加えて、本発明のCH-1は7.715g/cm^(3)の最も低い密度を有する。」

3欄、表1
「 TABLE 1
Material Comparison of Present Invention and Prior Art
Kinds of materials
Property SUS630 SUS431 CH-1
Density(g/cm^(3)) 7.8 7.75 7.715
Tensile strength(kgf/mm^(2)) 136 80.2 184
Tensile strength(kgf/mm^(2)) 126 65.5 174
Coefficient of Young(kgf/mm^(2)) 19600 20000 20255
Expansibility(%) 15 20 13
Hardness(HRC) 36 45 48-52」
(抄訳)「 表1
本発明及び従来技術の材料構成
材 料 の 種 類
特 性 SUS630 SUS431 CH-1
密度(g/cm^(3)) 7.8 7.75 7.715
引っ張り強度(kgf/mm^(2)) 136 80.2 184
引っ張り強度(kgf/mm^(2)) 126 65.5 174
ヤング計数(kgf/mm^(2)) 19600 20000 20255
伸張率(%) 15 20 13
硬度(HRC) 36 45 48-52」

前記に摘示した2欄7?9行の記載は、これに先立つ1欄50?59行の記載からみて、フェースに用いる鋼合金を特定したものであるが、後続する2欄13?19行において、ヘッド本体に当該フェース用の鋼合金を使用して製造するとの記載がされている。
そして、2欄22?23行及び2欄28?30行の記載によれば、当該甲第3号証における発明のゴルフクラブヘッド本体のサンプルであるCH-1では、その密度が7.715g/cm^(3)と記載されている。

(4)甲第4号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
1欄6?10行
「1. Field of the Invention
The present invention relates to a metal head for a golf club, which is tough and has a relatively large volume without increasing the weight, and can manufactured with ease.」
(当審抄訳)「1.発明の分野
本発明は、堅牢であって、重量増加なく比較的大体積であって、簡単に製造することのできるゴルフクラブの金属ヘッドに関する。」

3欄52?55行
「In table 3, the specific gravities of the alloy steels according to the present invenntion and the SUS 630(AISI Standard Type 630) stainless steel of the comparative example are 7.9-8.1, and 7.8, respectively.」
(抄訳)「表3において、本発明による合金鋼と比較例のSUS630(AISI)規格630型)ステンレス鋼の比重はそれぞれ7.9-8.1と7.8である。」

5欄
「 TABLE 3
Tensile Strength Elongation Reducton Specific Hardness
Heat treatment conditions (kgf/mm^(2))(ksi) (%) of area(%) gravity (HRC)
Inventive
alloy
steel
No.1 1040℃×1.5h+540℃×6h 180.0 256.0 10.2 25.0 7.9 50
No.1 1040℃×1.5h+510℃×1h 121.5 172.8 20.9 51.3 7.9 38
No.1 1040℃×1.5h+540℃×2h 165.0 234.7 13.0 31.4 7.9 48
No.2 1040℃×1.5h+540℃×6h 180.2 256.3 10.4 26.4 7.9 50
No.2 1040℃×1.5h+480℃×3h 153.7 218.6 15.1 38.5 7.9 46
No.2 1040℃×1.5h+480℃×1.5h 130.0 184.9 19.3 47.2 7.9 40
No.3 1040℃×1.5h+540℃×6h 182.4 259.5 9.2 20.4 7.9 51
No.4 1040℃×1.5h+540℃×6h 182.1 259.0 9.8 20.6 7.9 51
No.5 1040℃×1.5h+540℃×6h 181.5 258.2 11.0 24.3 8.0 50
No.6 1040℃×1.5h+540℃×6h 178.2 253.5 13.0 25.4 8.1 49
No.7 1040℃×1.5h+540℃×6h 180.2 256.3 11.5 24.0 8.1 50
No.8 1040℃×1.5h+540℃×6h 179.2 254.9 12.0 25.1 7.9 50
SUS630 1040℃×1.5h+540℃×4h 119.1 169.4 8.0 17.9 7.8 38
(AISI Standard 1040℃×1.5h+480℃×1h 126.3 179.7 5.3 12.0 7.8 39
Type 630)」
(抄訳)「 表3
引っ張り強度 伸張率 領域の 密度 硬度
熱処理条件 (kgf/mm^(2))(ksi) (%) 縮小率(%) (HRC)
強化
合金鋼
No.1 1040℃×1.5h+540℃×6h 180.0 256.0 10.2 25.0 7.9 50
No.1 1040℃×1.5h+510℃×1h 121.5 172.8 20.9 51.3 7.9 38
No.1 1040℃×1.5h+540℃×2h 165.0 234.7 13.0 31.4 7.9 48
No.2 1040℃×1.5h+540℃×6h 180.2 256.3 10.4 26.4 7.9 50
No.2 1040℃×1.5h+480℃×3h 153.7 218.6 15.1 38.5 7.9 46
No.2 1040℃×1.5h+480℃×1.5h 130.0 184.9 19.3 47.2 7.9 40
No.3 1040℃×1.5h+540℃×6h 182.4 259.5 9.2 20.4 7.9 51
No.4 1040℃×1.5h+540℃×6h 182.1 259.0 9.8 20.6 7.9 51
No.5 1040℃×1.5h+540℃×6h 181.5 258.2 11.0 24.3 8.0 50
No.6 1040℃×1.5h+540℃×6h 178.2 253.5 13.0 25.4 8.1 49
No.7 1040℃×1.5h+540℃×6h 180.2 256.3 11.5 24.0 8.1 50
No.8 1040℃×1.5h+540℃×6h 179.2 254.9 12.0 25.1 7.9 50
SUS630 1040℃×1.5h+540℃×4h 119.1 169.4 8.0 17.9 7.8 38
(AISI Standard 1040℃×1.5h+480℃×1h 126.3 179.7 5.3 12.0 7.8 39
Type 630)」

(5)甲第5号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
【特許請求の範囲】
「【請求項1】内部を中空としたゴルフクラブヘッドであって、
ヘッド上面のクラウン部の主要部をなすクラウン板と、このクラウン板が配されるヘッド本体部とからなり、
前記クラウン板は、比重が5.0以下の低比重金属材料から形成され、かつ前記ヘッド本体部は比重が7.0以上の高比重金属材料を用いて形成されるとともに、
前記クラウン板とヘッド本体部とをロウ付けにより接合したことを特徴とするゴルフクラブヘッド。
【請求項2】前記クラウン板の重量が、前記ヘッド本体部の重量の10?30%であることを特徴とする請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】前記ヘッド本体部は、ボールを打撃するフェース部と、該フェース部の下縁に連なりヘッド底部をなすソール部と、前記ソール部の周囲から立ち上がりかつ前記フェース部のトウ側からバックフェースを通り該フェース部のヒール側にのびるサイド部と、シャフトを装着しうるシャフト差込部とを含んでなる請求項1又は2記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】前記クラウン板は、チタン又はチタン合金からなり、かつ前記ヘッド本体部はステンレス鋼を含むことを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。」

段落【0005】
「本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、ヘッド上面のクラウン部の主要部をなすクラウン板と、このクラウン板が配されるヘッド本体部とからなり、かつ前記クラウン板を、比重が5.0以下の低比重金属材料から形成するとともに、ヘッド本体部を比重が7.0以上の高比重金属材料を用いて形成しこれらをロウ付けにより接合することを基本として低重心化を図りつつも慣性モーメントの低下を防止して打球の方向安定性を向上できしかも耐久性にも優れるゴルフクラブヘッドを提供することを目的としている。」

段落【0010】
「【発明の実施の形態】以下本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。図1は本発明の実施形態に係るゴルフクラブヘッドの斜視図、図2は、その分解斜視図を例示している。図1において、ゴルフクラブヘッド(以下、単に「ヘッド」ということがある。)1は、ボールを打撃するフェース面Fを表面に具えたフェース部2と、該フェース部2の上縁2aに連なりヘッド上面をなすクラウン部3と、前記フェース部2の下縁2bに連なりヘッド底面をなすソール部4と、このソール部4の周囲から立ち上がりかつ前記フェース部2のトウt側からバックフェースを通り該フェース部2のヒールe側にのびるサイド部5と、シャフトを装着しうるシャフト差込部6とを具えたものが例示される。また本例のヘッド1は、金属材料からなりかつ内部に中空部iを設けたウッド型のものが例示される。」

段落【0026】
「また本発明では、クラウン板7とヘッド本体部9とは異種金属からなるため、クラウン板7とヘッド本体部9とをロウ付けにより接合されている。ロウ付けは、異種金属同士を接合するために母材よりも融点の低い金属ないし合金、すなわちロウを溶融させ、母材間の隙間に例えば毛細管現象を利用してロウを満たし固化させることで異種金属同士を接合する方法である。このような、ロウ付けは接着剤を用いて接合した場合に比して接合強度をより大にでき、これによりヘッドの耐久性が維持されうる。」

段落【0027】
「このようなロウ付けを行う場合、特に限定されるわけではないが、図5に拡大して示したように、クラウン周縁部3eの周囲に受け部12を設けることにより、クラウン板7の周縁7eと内外で重なる重ね継手Jを形成することが望ましい。このような重ね継手Jとすることにより、例えば強度の低いロウを用いた場合や多少の欠陥が生じても重ね代を十分に確保することにより、継手部分の強度を向上しクラウン板7とヘッド本体部9との外れを防止できる。」

段落【0030】
「またロウ付けに用いるロウは、接合する金属材料、その融点などに応じて種々選択されるが、強度とロウ付け条件の適正化という理由により、好ましくは銀ロウ(Ag-Al、Ag-Cu(BAg-19)、Ag-Al-Mn、Ti-Zr-Ni、Ti-Cu-Ni、Ti-Cu-Ni-Zr、Ag-Pb-Ga、Pb-Ag-Si)を用いるのが望ましい。」

段落【0005】には、当該甲第5号証記載のゴルフクラブヘッドが、ヘッド上面のクラウン部の主要部をなすクラウン板と、このクラウン板が配されるヘッド本体部とからなり、かつ前記クラウン板を、比重が5.0以下の低比重金属材料から形成するとともに、ヘッド本体部を比重が7.0以上の高比重金属材料を用いて形成しこれらをロウ付けにより接合することを基本として低重心化を図りつつも慣性モーメントの低下を防止して打球の方向安定性を向上できしかも耐久性にも優れるものであることが記載されている。

段落【0010】を参照するに、【図1】と【図2】とを対比すると、クラウン板が、クラブヘッド本体の表面上にはんだ付けされていて、クラブヘッド本体の頂面の全体を覆い、クラブヘッド本体の頂面の穴に蓋をしている構成が把握できる。

段落【0026】を参照するに、クラウン板とヘッド本体とが異種金属からなる故に、両者がロウ付けにより接合されていること、これにより、接着剤を用いた接合に比較して接合強度を大きくでき、ヘッドの耐久性が維持されることが記載されており、さらに、段落【0027】及び【0030】を参照すれば、ロウ付けにあたっての工夫及びロウ付けに用いる接合金属材料の具体例が上げられている。

(6)甲第6号証には、図面とともに次の事項が記載されている。
段落【0017】
「【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳述する。図1?図3には、本発明に係るゴルフクラブヘッドとして、金属材料で形成された中空のウッド型(メタルヘッド)のゴルフクラブヘッドを例示している。本例では前記ヘッドは、ヘッド本体1と、このヘッド本体1の前面に配されたフェース板2とから構成される。またゴルフクラブヘッドは、例えばヘッド体積を80?360cm^(3) 、好ましくは230?360cm^(3) とするのが望ましい。」

段落【0018】
「前記ヘッド本体1は、ボールを打撃するためのフェース部6の周縁をなし前記フェース板2を装着しうるフェース取付部1aと、このフェース取付部1aに続くソール部7、クラウン部8、及びサイド部9などを具える。前記フェース取付部1aは、本例では、図3に示すように前記フェース板2を装着する段差部3aを有してヘッド内部へ貫通する嵌合用の開口3を形成したものを示している。」

段落【0019】
「また前記フェース板2は、本例ではフェース部6の主要部をなし、前記嵌合用の開口3に、例えば溶接、かしめ、接着剤などの接合方法により一体化され、前記フェース取付部1aとともにフェース部6を構成しうる。なおフェース取付部1aは、図4(A)に示すように、前記段差部3aを有しない開口3としても形成できる。なお図4(B)には、ヘッド内部に向けて広がるテーパ状をなしかつフェース板2の裏面を支持可能な嵌合用の凹部4が示されている。このものは、ヘッド内部へ貫通する嵌合用の開口を具えてはいない。」

IV. 被請求人の対応
平成20年4月24日付けで審判請求書を送付し、答弁書提出の機会を与えたが、被請求人は何ら応答しなかった。

V.当審の判断
請求人が主張する上記無効理由について以下に検討する。

A.無効理由1について
(1)本件考案1について
本件考案1に係る「厚さは0.7mm以下」という構成要件は、下限を示していない以上、必須の構成要件である筈の「薄型頂部カバー」が存在しない場合をも含むとの疑義が生じることは必然である。他方、「硬度はHRC35以上」という構成要件は、下限を明記したものであって、この記載が明りようでないと解することはできない。
しかしながら、本件明細書中においては、段落【0009】で、「薄型頂部カバー」を製造するに際して、これら「厚さは0.7mm以下」、「硬度はHRC35以上」という構成要件を備えるとされるのみであって、何故に、これらの構成要件を与えるかについての詳細の記載はない。
なるほど、段落【0011】には、「これにより、頂部カバーの厚さを0.7mm以下に至るまで有効に減らし、尚且つ、一定の硬度(HRC)35)以上を維持することができ、クラブヘッドを一定の強度に保つ前提の下、クラブヘッド全体の重心を有効に下げ、クラブヘッドの打球効率を向上させる。」との記載はあるものの、当該段落の記載も、単に、これらの構成要件を備えることをいうに過ぎず、技術的意味を解説するところはない。
よって、本件考案1に係る「厚さは0.7mm以下」、「硬度はHRC35以上」という構成要件記載について、本件考案1は、登録実用新案の範囲が明確でなく、実用新案法第5条第6項第1号又は第2号の規定に違反するものといわざるを得ない。

(2)本件考案2について
本件考案2に係る「比重は7g/cm^(2)以上」という構成要件については、厳密な「比重」をいうのか厳密な「比重量」をいうのかが当該記載のみから明らかといえないものの、通常、「比重」と「比重量」を区別せずに同じ概念であるとして用いる場合も多いことから、その区別が明示されていないとしても、直ちに、明りようでないと判断することはできない。むしろ、「g/cm^(2)」なる単位が基準面積当たりのものであることを示していることからすれば、厳密な意味における「比重量」を指すものと解するのが自然といえる。また、通常「比重量」は25℃の純水に対する重量比であることから、単位は「g/cm^(3)」である筈ともいえるが、基準面積当たりとして記載することもあり得ることであるから、当該「比重は7g/cm^(2)以上」なる構成要件について、当業者に理解できないとまではいえない。
さらに、本件考案2に係る「金属材料により製造」とする構成要件については、なるほど、本件明細書中に、すべての金属材料に適用できるとの記載はないものの、金属材料を用いて製造すること自体は明確であり、構成要件として明りようでないとする解釈は妥当でない。
しかし、本件考案2に係る「厚さは0.5mm以下」という構成要件については、下限を示していないことから、前記本件考案1で指摘したように、必須の構成要件である筈の「薄型頂部カバー」が存在しない場合をも含むとの疑義が生じることは必然である。
よって、本件考案2に係る「厚さは0.5mm以下」という構成要件記載について、また、本件考案2は前記本件考案1を引用するものであることからして、本件考案2は、登録実用新案の範囲が明確でなく、実用新案法第5条第6項第1号又は第2号の規定に違反するものといわざるを得ない。

(3)本件考案3について
本件考案3に係る「非鉄金属材料により製造」とする構成要件については、前記本件考案2に係る「金属材料により製造」とする構成要件同様に、単にすべての非鉄金属材料に適用できるとの記載がないことをもって、明りようでないとする解釈は妥当でない。
また、本件考案3に係る「比重は5g/cm^(2)以上」という構成要件についても、本件考案2に係る「比重は7g/cm^(2)以上」とする構成要件同様に、明りようでないとする解釈は妥当でない。
しかしながら、本件考案3に係る「厚さは0.7mm以下」という構成要件については、前記本件考案1で指摘したと同様に、この構成要件を備えることをいうに過ぎず、技術的意味を解説するところはない。
よって、本件考案3に係る「厚さは0.7mm以下」という構成要件について、また、本件考案3は前記本件考案1を引用するものであることからして、本件考案3は、登録実用新案の範囲が明確でなく、実用新案法第5条第6項第1号又は第2号の規定に違反するものといわざるを得ない。

(4)本件考案4について
本件考案4に係る「厚さは0.35mm以下」という構成要件については、前記本件考案1で指摘したと同様に、この構成要件を備えることをいうに過ぎず、技術的意味を解説するところはない。
よって、本件考案4に係る「厚さは0.35mm以下」という構成要件について、また、本件考案4は前記本件考案2を引用するものであることからして、本件考案4は、登録実用新案の範囲が明確でなく、実用新案法第5条第6項第1号又は第2号の規定に違反するものといわざるを得ない。

(5)本件考案5について
本件考案5に係る「厚さは0.5mm以下」という構成要件については、前記本件考案1で指摘したと同様に、この構成要件を備えることをいうに過ぎず、技術的意味を解説するところはない。
よって、本件考案5に係る「厚さは0.5mm以下」という構成要件について、また、本件考案5は前記本件考案3を引用するものであることからして、本件考案5は、登録実用新案の範囲が明確でなく、実用新案法第5条第6項第1号又は第2号の規定に違反するものといわざるを得ない。

B.無効理由2について
(1)本件考案1について
甲1考案と本件考案1とは、いずれもゴルフクラブヘッドである点で共通する。
甲1考案の「ソール部をなすソール壁部に、トウ側からヒール側を連ねるサイド壁部とホーゼル部とを設け」た「ヘッド主部」は、本件考案1の「概ねゴルフクラブヘッド形状を呈しており、一つの正面、一つの底面および一つの背面を有し」た「クラブヘッド本体」に相当する。
そして、甲1考案の「ヘッド主部」の有する「クラウン部側のクラウン開口部」及び「クラウン開口部に取り付けられることによりクラウン部を形成するクラウン部材」は、本件考案1の「クラブヘッド本体」が有する「一つの頂面」にある「一つの穴」及び「クラブヘッド本体の頂面の穴をカバーして合わされ」る「一つの頂部カバー」に相当する。
また、甲1考案の「前記フェース開口部に取り付けられるフェース部材」は、本件考案1の「クラブヘッド本体」の正面に有する「打球プレート」に相当する。

すると、甲1考案と本件考案1とは、
「クラブヘッド本体があり、概ねゴルフクラブヘッド形状を呈しており、一つの正面、一つの底面および一つの背面を有し、正面に一つの打球プレートを有し、クラブヘッド本体は一つの頂面を有し、頂面に一つの穴を有し、
一つの頂部カバーがあり、クラブヘッド本体の頂面の穴をカバーして合わされるゴルフクラブヘッド。」である点で一致する一方、以下の点で相違している。

<相違点>
「クラブヘッド本体の頂面の穴をカバーして合わされ」る「頂部カバー」に関して、
本件考案1では、当該「頂部カバー」が「薄型頂部カバー」と呼称され、「薄型頂部カバーの厚さは0.7mm以下であり、硬度はHRC35以上である」と特定されているのに対して、
甲1考案では、「頂部カバー」を有するものの、前記のような特定を有するか定かでない点。

【本件考案1】
クラブヘッド本体があり、概ねゴルフクラブヘッド形状を呈しており、一つの正面、一つの底面および一つの背面を有し、正面に一つの打球プレートを有し、クラブヘッド本体は一つの頂面を有し、頂面に一つの穴を有し、
一つの薄型頂部カバーがあり、クラブヘッド本体の頂面の穴をカバーして合わされ、薄型頂部カバーの厚さは0.7mm以下であり、硬度はHRC35以上であることを特徴とする超薄型頂部カバーのゴルフクラブヘッド。

そこで、上記相違点について検討する。
相違点1について
甲1考案を認定した甲第1号証の【請求項2】には、「前記クラウン部材は、厚さが0.3?1.5mmをなし」との記載があり、ひとまず、本件考案1の「頂部カバーの厚さは0.7mm以下」なる条件をも包含したものが想定されている。
また、同甲第1号証の段落【0027】に「このクラウン部材13の厚さtcは、0.3?1.5mm、より好ましくは0.3?0.8mm、さらに好ましくは0.5?0.8mmとするのが望ましい。このように、クラウン部材13を薄肉化することによって、ヘッドの上部の重量を削減でき、低重心化を図りうる他、軽量化、大型化などにも役立つ。」との記載があることからして、甲1考案の「クラウン部材」は本件考案1にいう「薄型頂部カバー」と呼称し得ると共に、「頂部カバーの厚さは0.7mm以下」と同様に可能な限り厚みを薄くすることを条件としているものといえる。
また、甲第2号証には、甲1考案の「ヘッド主部」、「クラウン部」及び「フェース部材」からなる構成と同様に「主ヘッド本体」、「フェイス」及び「クラウン」とからなるスリー・ピース構造を有するゴルフクラブヘッドであって、この「クラウン」を0.6mm厚さとすることが3欄55?57行に開示されている。
すると、本件考案1の「薄型頂部カバーの厚さは0.7mm以下」とする特定は、薄型頂部カバーとして格別なものであるとはいえない。
次に、甲第3号証は、甲1考案と同様にゴルフクラブに係るものであって、前記2欄7?9行には、HRC46-53の硬度を備える鋼合金が上げられ、続く2欄13?19行には、当該鋼合金をゴルフクラブヘッド本体にも使用することが記載されている。
すると、相違点に係る本件考案1の「硬度はHRC35以上」なる特定は格別なものであるとはいえない。

以上のとおりであるから、相違点に係る本件考案1の特定は、いずれも格別なものではなく、当業者であれば適宜に採用し得た程度のものである。
また、本件考案1の作用効果は、甲第1号証?甲第3号証記載の考案から当業者が予測できる範囲のものである。
よって、本件考案1は、甲第1号証?甲第3号証記載の考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

(2)本件考案2について
本件考案2は、本件考案1を引用し、これに「薄型頂部カバーは、金属材料により製造され、比重は7g/cm^(2)以上であり、厚さは0.5mm以下である」点をさらに特定したものである。
しかし、甲第1号証には、前記段落【0027】に「「前記クラウン部材13は、本実施形態では、圧延材などの金属板材を所定形状に打ち抜き、これをプレス加工することにより形成された塑性加工品21から形成され、」との記載がある。
また、甲第2号証には、前記に摘示のごとく3欄55?57行に、「クラウン13はマルテンサイト鍍金硬化型ステンレス鋼(17-4PH,比重:7.9)からキャスティングにより形成される。クラウン13は0.6mmの厚さ(t3)を有する。」とあり、クラウン部材を金属から製造し、その厚みを0.6mmすなわち0.7mm以下とすること、さらには、比重を7.9すなわち7g/cm^(2)以上とすることも開示されている。
すると、本件考案2に係るいずれの特定も格別なものではなく、当業者であれば適宜に採用し得た程度のものである。
また、本件考案2の作用効果は、甲第1号証?甲第3号証記載の考案から当業者が予測できる範囲のものである。
よって、本件考案2は、甲第1号証?甲第3号証記載の考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

(3)本件考案3について
本件考案3は、本件考案1を引用し、これに「薄型頂部カバーは、非鉄金属材料により製造され、比重は5g/cm^(2)以下であり、厚さは0.7mm以下である」点をさらに特定したものである。
しかし、甲第1号証の前記段落【0047】にはクラウン部材を非鉄金属材料である材料B、Cにより製造する実施例5、6が開示されている。
ここで、材料Bとされる「Ti-6Al-4V」について、インターネット検索してみるに、直ちに「密度 4.45g/cm^(3)」なる情報が得られる。
この点に、請求人は、請求書15頁下から7?2行において、「甲第1号証、0048段の表3に記載された実施例6の材料、「Ti-6Al-4V」や「Ti-15V-3Al-3Sn-3Cr」は公知公用のチタン合金であり、その比重は、前者が「4.43±0.02」、後者が「4.74±0.02」であることは当業者であれば自明である」と主張していることが裏付けられるといえる。
してみるに、前記公知公用のチタン合金は、本件考案3に係る「比重は5g/cm^(2)以下」の特定を充足すると推認できる。
また、これら実施例5、6のクラウン部材の厚みは0.8mmであるものの、甲第1号証の段落【0027】に「このクラウン部材13の厚さtcは、0.3?1.5mm、より好ましくは0.3?0.8mm、さらに好ましくは0.5?0.8mmとするのが望ましい。」とあるように、0.7mm以下とすることも十分に想定されている。
すると、本件考案3に係るいずれの特定も格別なものではなく、当業者であれば適宜に採用し得た程度のものである。
また、本件考案3の作用効果は、甲第1号証?甲第3号証記載の考案から当業者が予測できる範囲のものである。
よって、本件考案3は、甲第1号証?甲第3号証記載の考案及び技術常識に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

(4)本件考案4について
本件考案4は、本件考案2を引用し、これに「薄型頂部カバーは、金属材料により製造され、厚さは0.35mmである」点をさらに特定したものである。
ここで、「金属材料により製造され」なる特定については、既に、前記「(2)本件考案2について」で検討したとおり、格別なものではない。
そこで、残る「厚さは0.35mmである」点について検討するに、甲第1号証においては、クラウン部材の厚みを薄くする目的の下で、0.3?0.8mmとすることが想定されており、これに照らせば、「厚さは0.35mmである」とすることは、必要に応じて当業者が適宜に選択可能なことである。
よって、本件考案4に係るいずれの特定も格別なものではなく、当業者であれば適宜に採用し得た程度のものである。
また、本件考案4の作用効果は、甲第1号証?甲第3号証記載の考案から当業者が予測できる範囲のものである。
よって、本件考案4は、甲第1号証?甲第3号証記載の考案に基いて当業者がきわめて容易に考案することができたものである。

(5)本件考案5について
本件考案5は、本件考案3を引用し、これに「薄型頂部カバーは、非鉄金属材料により製造され、厚さは0.5mmである」点をさらに特定したものである。
ここで、「非鉄金属材料により製造され」なる特定については、既に、前記「(3)本件考案3について」で検討したとおり、格別なものではない。
そこで、残る「厚さは0.5mmである」点について検討するに、甲第1号証においては、クラウン部材の厚みを薄くする目的の下で、0.3?0.8mmとすることが想定されており、これに照らせば、「厚さは0.5mmである」とすることは、必要に応じて当業者が適宜に選択可能なことである。
よって、本件考案5に係るいずれの特定は格別なものではなく、当業者であれば適宜に採用し得た程度のものである。
また、本件考案5の作用効果は、甲第1号証?甲第3号証記載の考案から当業者が予測できる範囲のものである。
よって、本件考案5は、甲第1号証?甲第3号証記載の考案に基いて当業者がきわめて容易に考案することができたものである。

(6)本件考案6について
本件考案6は、本件考案1を引用し、これに「薄型頂部カバーは、硬質はんだ付け技術を使用し、クラブヘッド本体上にはんだ付けされている」なる点をさらに特定したものである。
ここで、甲第5号証には、ゴルフクラブヘッドに関して、その段落【0005】及び【0026】には、クラウン部材とヘッド本体とをロウ付けにより接合することが記載されており、さらに段落【0030】には「強度とロウ付け条件の適正化という理由により、好ましくは銀ロウ・・・を用いるのが望ましい。」との記載がある。
また、異種金属間の接合を行うに際し、「はんだ付け」はきわめて慣用されるものであって、これに用いる「はんだ」は、融点と強度によって軟ろう(軟質はんだ)と硬ろう(硬質はんだ)に分類されており、特に、硬ろうは銀と銅、亜鉛の合金(銀ろう)または銅と亜鉛の合金(ろう付け亜鉛)とされ、一般的に用いられる鉛とすずの合金は軟ろうと呼ばれることは技術常識に属する。
してみるに、前記甲第5号証に記載される銀ロウは、十分な硬度を確保すべく用いられた更新はんだ付けを指していると解されることから、本件考案5に係る前記特定は、当業者であれば必要に応じて適宜に採用し得た程度のことといわざるを得ない。
また、本件考案6の作用効果は、甲第1号証?甲第3号証及び甲第5号証記載の考案及び技術常識から当業者が予測できる範囲のものである。
よって、本件考案6は、甲第1号証?甲第3号証及び甲第5号証記載の考案及び技術常識に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

(7)本件考案7について
本件考案7は、本件考案6を引用し、これに「薄型頂部カバーは、クラブヘッド本体の頂面上にはんだ付けされていて、クラブヘッド本体の頂面の全体を覆い、クラブヘッド本体の頂面の穴に蓋をして合わされる」なる点をさらに特定したものである。
このうち、「薄型頂部カバーは、クラブヘッド本体の頂面上にはんだ付けされていて、」なる特定については、前記「(6)本件考案6について」で検討したように格別なものとはいえない。
また、甲第5号証の前記段落【0010】にみられるように、当該特定にある「薄型頂部カバーは、クラブヘッド本体の頂面上にはんだ付けされていて、クラブヘッド本体の頂面の全体を覆い、クラブヘッド本体の頂面の穴に蓋をして合わされる」を備えたゴルフクラブヘッドが開示されている。
してみるに、本件考案7に係る特定を備えることは格別なこととはいえない。
また、本件考案7の作用効果は、甲第1号証?甲第3号証及び甲第5号証記載の考案及び技術常識から当業者が予測できる範囲のものである。
よって、本件考案7は、甲第1号証?甲第3号証及び甲第5号証記載の考案及び技術常識に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

(8)本件考案8について
本件考案8は、本件考案6を引用し、これに「薄型頂部カバーは、周縁で以って穴周縁と相対して硬質はんだ付けで繋げられ、クラブヘッド本体の頂面の穴に蓋をして合わされる」なる点をさらに特定したものである。
このうち、「薄型頂部カバーは、周縁で以って穴周縁と相対して硬質はんだ付けで繋げられ、」なる特定については、前記「(6)本件考案6について」で検討したように格別なものとはいえない。
また、「薄型頂部カバーは、クラブヘッド本体の頂面の穴に蓋をして合わされる」なる特定については、前記「(7)本件考案7について」で検討したように、これも格別なものとはいえない。
してみるに、本件考案8に係る特定を備えることは格別なこととはいえない。
また、本件考案8の作用効果は、甲第1号証?甲第3号証及び甲第5号証記載の考案及び技術常識から当業者が予測できる範囲のものである。
よって、本件考案8は、甲第1号証?甲第3号証及び甲第5号証記載の考案及び技術常識に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

(9)本件考案9について
本件考案9は、本件考案1を引用し、これに「打球プレートは、クラブヘッド本体と共に一体成型により作り出される」なる点をさらに特定したものである。
ここで、甲第3号証の2欄13?19行に、「ゴルフクラブヘッド本体は、・・・パンチ或いはプレスによる表面と共に精密鋳造法により製造される。この時に金属材料が嵌め込まれる。」なる記載があるように、ゴルフクラブヘッド本体を製造するに際して、ヘッド本体、クラウン板及び打球プレートであるフェースを一体成型により製造することは、ゴルフクラブヘッド製造において、ひろく行われていることであり、格別なこととはいえない。
してみるに、本件考案9に係る特定を備えることは格別なこととはいえない。
また、本件考案9の作用効果は、甲第1号証?甲第3号証記載の考案から当業者が予測できる範囲のものである。
よって、本件考案9は、甲第1号証?甲第3号証記載の考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。
(10)本件考案10について
本件考案10は、本件考案1を引用し、これに「打球プレートは、クラブヘッド本体上に於いてはんだ付けされる」なる点をさらに特定したものである。
ここで、甲第6号証の段落【0019】には、フェース板をヘッド本体に接合するに際して、溶接、かしめ、接着剤等により一体化されることが記載されており、前記特定は格別なものとはいえない。
してみるに、本件考案10に係る特定を備えることは格別なこととはいえない。
また、本件考案10の作用効果は、甲第1号証?甲第3号証及び甲第6号証記載の考案から当業者が予測できる範囲のものである。
よって、本件考案10は、甲第1号証?甲第3号証及び甲第6号証記載の考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。

(11)むすび
以上のとおりであるから、本件考案1?10は、実用新案法第3条第2項の規定に違反して登録されたものであり、実用新案法第37条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

VI. むすび
以上のとおりであるから、請求項1?10に係る考案は、実用新案法第3条第2項の規定に違反して登録されたものであり、実用新案法第37条第1項第2号に該当し、また、本件実用新案登録は実用新案法第5条第6項第1号に規定する要件を満たしていない実用新案登録出願に対してされたものであるから、実用新案法第37条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。

審判の費用については、実用新案法第41条で準用する特許法第169条第2項の規定によりさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2008-09-10 
結審通知日 2008-09-12 
審決日 2008-09-12 
出願番号 実願2004-4693(U2004-4693) 
審決分類 U 1 114・ 121- Z (A63B)
U 1 114・ 537- Z (A63B)
最終処分 成立    
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 大仲 雅人
上田 正樹
登録日 2004-11-17 
登録番号 実用新案登録第3107046号(U3107046) 
考案の名称 超薄型頂部カバーのゴルフクラブヘッド  
代理人 押久保 政彦  
代理人 池山 和生  
代理人 中山 俊彦  
代理人 下坂 スミ子  

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