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審決分類 審判 全部申し立て   A01D
管理番号 1002413
異議申立番号 異議1999-70921  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-03-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-03-10 
確定日 1999-07-26 
異議申立件数
事件の表示 実用新案登録第2580833号「ナイロンコード型刈払機におけるリールケース」の実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 実用新案登録第2580833号の実用新案登録を維持する。
理由 1.手続の経緯
実用新案登録第2580833号に係る考案についての出願は、平成5年4月15日に実用新案登録出願され、平成10年7月3日にその考案についての登録設定がなされた後、その実用新案登録について、異議申立人株式会社共立より実用新案登録異議の申立てがなされたものである。
2.本件考案
実用新案登録第2580833号の請求項1に係る考案(以下「本件考案」という。)は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された以下の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】側壁にナイロンコードの繰出口を開設すると共に、側壁の内側にナイロンコードの巻装部を設けたケース本体の前記巻装部の開口面に鍔部材を設け、巻装部にナイロンコードを巻装したリールケースであって、前記ナイロンコードの繰出口と側壁の開口縁部とを軸方向に延在するスリットを介して連通すると共に、前記繰出口をスリットを中心としてケース本体の周方向に延設される長円形状に形成し、さらに繰出口とスリットとの境界部にナイロンコードの係止用突起を形成することを特徴とするナイロンコード型刈払機におけるリールケース。」
3.申立ての理由の概要
申立人は、証拠として甲第1号証(特公昭53-29609号公報)、甲第2号証(特開昭53-75019号公報)を提出し、本件考案の実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであるから、取り消すべき旨主張している。
4.申立人が提出した甲号各証記載の考案
申立人が提出した甲号各証には、以下の事項が記載されている。
(甲第1号証)
「 第1図及び第3図に示ように、段付軸20の中軸部22に回動自在にカバー40のボス部42をはめ込む。カバー40の外周縁44を本体30の折曲げた周縁34のすぐ内側において上円板部32に内接するように形成すると共に、そのピン孔35に入るピン45を突設する。第5図に示すようにカバーの外周壁46にひも14を引出すための切欠き47を設け、その切欠きに高分子材料製又は金属製のガイド48を挿着する。ガイド48の位置は本体30の胴巻部36に設けた2等辺3角形孔37とほゞ同じ高さに位置することが望ましい。ガイド48は開口部49を狭くしたU字形であり、その開口部49の幅はひも14の太さよりやゝ広い程度にしてあるので、切欠き47とガイド48は上と中のあいた8字形の開口になる。カバー40のボス部42の外周にばね受座43を形成する。カバー40も高分子材料製であることが望ましい。」(第2頁第4欄第23?40行)、
「次に、本発明の装置の操作を第1図ないし第5図に示す実施例に基づいて説明する。ひも14を本体30の胴巻部36に巻付けるには、先ず、ばね受け50を指先でコイルばね60の反発力に抗して止めピン25が溝51から外れるまで押下げて90度回わすと、止めピン25は貫通溝52にはまり、ばね受け50及びコイルばね60並びにカバー40はワンタッチで簡単に取外すことができる。・・・・その後、カバー40のボス部42を段付軸20の中軸部22にはめ込んでカバー40を取付けながら、ひも14の自由後端部をカバー40の切欠き47からガイド48の開口49を経て出口ガイドの中に引入れ、カバー40の外に引出す。さらに、本体30のピン孔35にカバー40のピン45を挿入し、最後に、コイルばね60とばね受け50を取外した時と逆の操作で取付ける。」(第3頁第5欄第27行?第6欄第6行)、
「又、使用中に刈払具として作用するひも14の自由後端部が消耗し、カバー40から外に出ている長さが短かくなりすぎた場合には、コイルばね60の反発力に抗してカバー40のピン45が本体30のピン孔35から抜ける程度にカバー40を引下げ、次に、ひも14を引出す方向にカバー40を回わして所要の長さだけひも14の自由端を引出し、その近くのピン孔35にピン45をはめ込む。」(第3頁第6欄第7?15行)、
「ひもの装てん並びに使用中の引出しは、上述したように、すべてワンタッチで非常に簡単に行うことができる。又、ひもの巻始めの先端部も巻き方向に頂点を持つ2等辺3角形孔に挿通することにより、簡便かつ確実に胴巻部に係止することが可能である。さらに、カバーに設けた切欠きとガイドによりひもの出口を上と中の開いた8字形にしたので、ひもは出口に通しやすく、しかも使用時の位置が確実に決まる。したがって、回転使用時にひもが本体の外周縁に接触して相互に損傷するような事故は全く発生し得ないといえる。」(第3頁第6欄第24?34行)
(甲第2号証)
「滑動玉32は、駆動アダプタ36Aと係合して該駆動アダプタ36Aを切断ヘッド42にその紬線方向の回転を提供するように関係させて結合することに加えて、第4図に示される如く切断ヘッド42内にスプール44を解放可能に結合する。」(第4頁右上欄第20行?左下欄第4行)、
「スプール44は、第3図、第5図及び第6図に示される如く、環状のハブ52によつて規定間隔だけ離された底壁48と頂壁50とを以て構成される。ハブ52の内部において底壁48には穴54が形成されており、該穴54を通じて駆動アダプタ36Aは滑動玉32内に螺合されうる。スプール44の頂壁50は差込リッジまたは差込ノブ部材56,58を有し、これら差込ノブ部材56と58は、スプール44が切断ヘッド42内に配置されるとき、該ヘッド42に形成されている開口60と62とに対応して夫々それらに差込まれる。前記ノブ部材56と58はスプール44を位置決めするとともに、開口60と62との底を閉鎖しまたは密閉し、これによつて、切断線26は、のちにさらに詳細に説明されるように、垂直方向に片寄らされることを有効に防止される。」(第4頁右下欄第6行?第5頁左上欄第1行)、
「切断線26のおのおのを繰出すには、切断線が次ぎの開口に達するまで、第4図に示される如く、単に、切断線引張り下げて進めることが要求されるにすぎない。底壁50は弾性であるから、切断線26は、それが次ぎの開口に達する迄、底壁50と切断ヘッド42の内周縁とによって画成される空隙に沿って引張られうる。他方の切断線も同じようにして延出され、または繰出されうる。」(第5頁右下欄第14行?第6頁左上欄第2行)、
「 次に第10図と第11図とを参照すると、第3図の窓即ち開口60,62は図示の如き球根形状の開口88または90、または任意のその他の同様の形状の開口を提供するように設計上変更され得ることが理解され得る。切断ヘッド42の急速な回転によつて切断線26は狭縮部分92または94内に押入れられ、これによつて、既に説明された如く、開口88または90の付近における切断線26の上下への片寄りを防止し得る。さらに、既に説明された如き支承用のインサート76,78(第3図)が好適に形づくられて球根形状の開口88または90内に差込まれ得る。第12図、第13図及び第21図に図示された切断ヘッド80の代替実施例もまたここに開示された球根形状の開口88または90を使用し得ることは理解されるであろう。」(第6頁右上欄第19行?左下欄第14行)
5.対比・判断
(3条2項違反について)
本件考案と申立人が提出した甲第1、2号証に記載された考案とを対比すると、当該刊行物に記載された考案は、いずれも本考案の必須の構成要件である「繰出口とスリットとの境界部にナイロンコードの係止用突起を形成する」事項を備えておらず、当該事項により本件考案は、「不使用時においてナイロンコード18は突起24で係止されることになり、従って、スリット22を介して外部に逸脱するなどの不都合も生じることはない」という顕著な効果を奏するものであり、本件考案は、上記甲号各証に記載された考案からきわめて容易に考案をすることができたものとはいえない。
6.申立人の主張
申立人は、甲第1号証に記載された考案における「切り欠き内方部47」、「切り欠き47」、「開口49」は、それぞれ本件考案における「繰出口20」、「スリット22」、「係止用突起24」に相当し、また、「繰出口を、下端が開放されたスリットを中心としてケース本体の周方向に延設される長円形状に形成すること」も、甲第2号証(第20頁第19行?第21頁第14行、第10,11図)に明示されているので、本件考案は、甲第1号証、甲2号証に記載された考案に基づいてきわめて容易に考案することができたものであると主張している。しかし、甲第1号証に記載に記載された考案において、開口部49は、ひも14の装てんの際にひも14を出口に通しやすくするとともに、使用時の位置が確実に決まるために設けられており、切欠き47も、ひも14の装てん時以外は、本体30の周縁34により閉そくされているので、甲第1号証に記載された考案の「開口49」は、本件考案の、不使用時にナイロンコード18が開口したスリット22を介して外部に逸脱することを防止する「係止用突起24」に相当するものではない。
また、甲第2号証に記載された考案のスプール44の差込ノブ部材56,58も、開口60,62を閉鎖するものであり、本件考案の、不使用時にナイロンコード18が開口したスリット22を介して外部に逸脱することを防止する「係止用突起24」とは相違するものである。
よって、申立人の上記主張には根拠がない。
7.むすび
したがって、実用新案登録異議申立ての理由及び証拠によっては本件考案についての実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件考案についての実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 1999-06-11 
出願番号 実願平5-24702 
審決分類 U 1 651・ 121- Y (A01D)
最終処分 維持    
前審関与審査官 関根 裕  
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 佐藤 昭喜
新井 重雄
登録日 1998-06-04 
登録番号 実用登録第2580833号(U2580833) 
権利者 タナカ工業株式会社
千葉県習志野市津田沼3丁目4番29号
考案の名称 ナイロンコード型刈払機におけるリールケース  
代理人 武田 賢市  
代理人 武田 明広  

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