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審決分類 審判 全部申し立て   B60H
管理番号 1004056
異議申立番号 異議1998-70647  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-02-06 
確定日 1999-06-09 
異議申立件数
事件の表示 実用新案登録第2543064号「車両用空調装置」の登録について、次のとおり決定する。   
結論 実用新案登録第2543064号の実用新案登録を取り消す。
理由 (1)手続の経緯
実用新案登録第2543064号に係る考案についての出願は、平成3年4月11日に実用新案登録出願され、平成9年4月25日にその考案について実用新案登録の設定登録がなされ、その後、その実用新案登録について、異議申立人株式会社ゼクセルより実用新案登録異議の申立がなされ、平成10年5月13日付けで取消理由の通知がなされ、その指定期間内である平成10年7月23日付けで訂正請求がなされた後、平成10年8月27日付けで訂正拒絶の理由の通知がなされ、その指定期間内である平成10年11月17日付けで訂正拒絶の理由の通知に対して手続補正がなされたものである。
(2)訂正請求に対する補正の適否について、
平成10年11月17日付けの手続補正は、訂正請求書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された「送風通路内に配置されるエバポレータを備えたクーリングユニットと、エバポレータ温度を所定値に固定するエアコンモードと外気温等に応じてエバポレータ温度を変えるエコノミモードとを切り替えることができるエバポレータ制御手段と、夫々送風通路内に配置されるヒータコアとエアミックスダンパとを備えエアミックスダンパの開度によってエア吹出温度を制御するヒータユニットと、エアミックスダンパの外気温等に対する開度特性をエアコンモード時とエコノミモード時とオフモード時とで切り替えるエアミックスダンパ制御手段とが設けられた車両用空調装置において、エコノミモード時におけるエアミックスダンパの開度特性を、エアミックスダンパ開度Mecoが、オフモードでのエバポレータ温度Toffと、エコノミモードでのエバポレータ温度Tecoと、エアコンモードでのエバポレータ温度Tacと、オフモードでのエアミックスダンパ開度Moffと、エアコンモードでのエアミックス開度Macとに基づいて、次の式
Meco=Macー(MacーMoff)×(TecoーTac)/(ToffーTac)
により設定されるよう、エバポレータ温度に応じて変更するエコノミモード開度特性変更手段を設けたことを特徴とする車両用空調装置。」を、「送風通路内に配置されるエバポレータを備えたクーリングユニットと、エバポレータ温度を所定値に固定するエアコンモードと外気温等に応じてエバポレータ温度を変えるエコノミモードとを切り替えることができるエバポレータ制御手段と、夫々送風通路内に配置されるヒータコアとエアミックスダンパとを備えエアミックスダンパの開度によってエア吹出温度を制御するヒータユニットと、エアミックスダンパの外気温等に対する開度特性をエアコンモード時とエコノミモード時とで切り替えるエアミックスダンパ制御手段とが設けられた車両用空調装置において、エコノミモード時におけるエアミックスダンパの開度特性を、エアミックスダンパ開度Mecoが、オフ時でのエバポレータ温度Toffと、エコノミモードでのエバポレータ温度Tecoと、エアコンモードでのエバポレータ温度Tacと、オフ時でのエアミックスダンパ開度Moffと、エアコンモードでのエアミックス開度Macとに基づいて、次の式
Meco=Macー(MacーMoff)×(TecoーTac)/(ToffーTac)
により設定されるよう、エバポレータ温度に応じて変更するエコノミモード開度特性変更手段を設けたことを特徴とする車両用空調装置。」とする補正を求めるものである。
よって、この手続補正について検討する。
上記の手続補正によれば、実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された「エアミックスダンパ制御手段」は、この補正前の、エアミックスダンパの外気温等に対する開度特性をエアコンモード時とエコノミモード時とオフモード時とで切り替えるもの(前者)から、この補正後の、エアミックスダンパの外気温等に対する開度特性をエアコンモード時とエコノミモード時とで切り替えるもの(後者)に変わることになるが、前者は、エアコンモード時のエアミックスダンパ開度特性とエコノミモード時のエアミックスダンパ開度特性とオフモード時のエアミックスダンパ開度特性の3つのエアミックスダンパ開度特性を切り替えるものであると認められるのに対して、後者は、エアコンモード時のエアミックスダンパ開度特性とエコノミモード時のエアミックスダンパ開度特性の2つのエアミックスダンパ開度特性を切り替えるものであると認められるから、前者と後者は、全く異なるものであると言う外ない。
してみると、この補正後の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された「車両用空調装置」とこの補正前の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された「車両用空調装置」とは異なるものとなるから、この手続補正は、訂正請求書の要旨を変更するものと言う外なく、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第10条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する特許法第131条第2項の規定に違反するものであり、採用することができない。
(3)訂正請求の適否について、
平成10年7月23日付けの訂正請求は、この訂正前の実用新案登録明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された「送風通路内に配置されるエバポレータを備えたクーリングユニットと、エバポレータ温度を所定値に固定するエアコンモードと外気温等に応じてエバポレータ温度を変えるエコノミモードとを切り替えることができるエバポレータ制御手段と、夫々送風通路内に配置されるヒータコアとエアミックスダンパとを備えエアミックスダンパの開度によってエア吹出温度を制御するヒータユニットと、エアミックスダンパの外気温等に対する開度特性をエアコンモード時とエコノミモード時とで切り替えるエアミックスダンパ制御手段とが設けられた車両用空調装置において、エコノミモード時におけるエアミックスダンパの開度特性を、エバポレータ温度に応じて変更するエコノミモード開度特性変更手段を設けたことを特徴とする車両用空調装置。」を、「送風通路内に配置されるエバポレータを備えたクーリングユニットと、エバポレータ温度を所定値に固定するエアコンモードと外気温等に応じてエバポレータ温度を変えるエコノミモードとを切り替えることができるエバポレータ制御手段と、夫々送風通路内に配置されるヒータコアとエアミックスダンパとを備えエアミックスダンパの開度によってエア吹出温度を制御するヒータユニットと、エアミックスダンパの外気温等に対する開度特性をエアコンモード時とエコノミモード時とオフモード時とで切り替えるエアミックスダンパ制御手段とが設けられた車両用空調装置において、エコノミモード時におけるエアミックスダンパの開度特性を、エアミックスダンパ開度Mecoが、オフモードでのエバポレータ温度Toffと、エコノミモードでのエバポレータ温度Tecoと、エアコンモードでのエバポレータ温度Tacと、オフモードでのエアミックスダンパ開度Moffと、エアコンモードでのエアミックス開度Macとに基づいて、次の式
Meco=Macー(MacーMoff)×(TecoーTac)/(ToffーTac)
により設定されるよう、エバポレータ温度に応じて変更するエコノミモード開度特性変更手段を設けたことを特徴とする車両用空調装置。」と訂正することを求めるものである。
よって、この訂正請求について検討する。
上記の訂正によれば、実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された「エアミックスダンパ制御手段」は、訂正前の、エアミックスダンパの外気温等に対する開度特性をエアコンモード時とエコノミモード時とで切り替えるもの(前者)から、訂正後の、エアミックスダンパの外気温等に対する開度特性をエアコンモード時とエコノミモード時とオフモード時とで切り替えるもの(後者)に変わることになるが、前者は、エアコンモード時のエアミックスダンパ開度特性とエコノミモード時のエアミックスダンパ開度特性の2つのエアミックスダンパ開度特性を切り替えるものであると認められるのに対して、後者は、エアコンモード時のエアミックスダンパ開度特性とエコノミモード時のエアミックスダンパ開度特性とオフモード時のエアミックスダンパ開度特性の3つのエアミックスダンパ開度特性を切り替えるものであると認められるから、前者と後者は、全く異なるものであると言う外ない。
してみると、この訂正後の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された「車両用空調装置」とこの訂正前の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された「車両用空調装置」とは異なるものとなるから、この訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第10条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第2項各号に定めたいずれの事項をも目的としないものであると言う外く、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第10条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第2項の規定に適合しないものであり、認めることができない。
(4)取消理由について、
本件実用新案登録第2543064号の実用新案登録請求の範囲の請求項(1)に係る考案は、その実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項(1)に記載された事項によって特定される次の通りのものにある。
「送風通路内に配置されるエバポレータを備えたクーリングユニットと、エバポレータ温度を所定値に固定するエアコンモードと外気温等に応じてエバポレータ温度を変えるエコノミモードとを切り替えることができるエバポレータ制御手段と、夫々送風通路内に配置されるヒータコアとエアミックスダンパとを備えエアミックスダンパの開度によってエア吹出温度を制御するヒータユニットと、エアミックスダンパの外気温等に対する開度特性をエアコンモード時とエコノミモード時とで切り替えるエアミックスダンパ制御手段とが設けられた車両用空調装置において、エコノミモード時におけるエアミックスダンパの開度特性を、エバポレータ温度に応じて変更するエコノミモード開度特性変更手段を設けたことを特徴とする車両用空調装置。」
これに対して、当審が平成10年5月13日付けで通知した取消理由において引用した特開昭62-261516号公報(実用新案登録異議申立人である株式会社ゼクセルが証拠方法甲第1号証として提出したものである。以下、第1引用例という。)には、「車室内に開口する吹出口を有する空調ダクトと、該空調ダクト内に配置されたエバポレータ及び該エバポレータで蒸発した冷媒を圧縮するコンプレッサを含む冷凍サイクルと、前記空調ダクト内に配置されたヒータコアと、該ヒータコアを通過する空気と該ヒータコアをバイパスする空気との割合を調節するエアミックスドアと、前記コンプレッサの稼働率を切り換える切換手段と、前記車室を空調するための信号を発生する信号発生手段と、該信号発生手段の出力に応じて前記エアミックスドアの開度を演算する開度演算手段と、該開度演算手段によって演算された値を前記切換手段の状態に応じて補正する補正手段と、この補正手段により補正された結果に応じて前記エアミックスドアの開度を調節する開度調節手段とを具備することを特徴とする自動車用空調装置。」が記載されており、この「自動車用空調装置」に関して、上記第1引用例には、「A-D変換器25は、車室19内の温度検出する車内センサ26(検出温度をtrとする。)、エアミックスドア14の開度を検出する開度センサ27、車室19内に入る日射量を検出する日射センサ28(検出温度をtsとする。)、外気温度を検出する外気センサ29(検出温度をtaとする。)、エバポレータ6の温度を検出するモードセンサ30(検出温度をtmとする。)及び車室19内の温度を設定する温度設定器31(設定温度をT/Dとする。)が接続され、これらから入力されるアナログ信号をデジタル信号に変えてマイクロコンピュータ23に送る。また、マイクロコンピュータ23には送風機5に回転数を指令するファンスイッチ32,コンプレッサ7の経済的な運転を指令するエコノミースイッチ33及びコンプレッサ7の稼働率を最高とするエアコンマックススイッチ34からの信号が入力される。」(第3頁右上欄第19行?左下欄第16行)こと、「第3図において、マイクロコンピュータ23は、電源を投入することによりステップ50から処理の実行を開始し、次のステップ60によりCPUをリセットする等の初期設定を行い、次のステップ70へ進む。このステップ70においては、熱負荷の対応する総合信号Tを次の式に従って演算する。
T=(tr-25)+K1(ts-25)+K2(ta-25)+K3(tm-12)-K4(T/D-25)
………次のステップ80?120においては、上記総合信号Tに基づいて、エアミックスドア14,送風機5,モードドア20a,20b、内外気切換ドア4及びコンプレッサ7を順次制御する。」(第3頁右下欄第6行?第4頁左上欄第2行)こと、「第4図において、上記ステップ120における処理の具体例が示され、………ステップ121において、ファンスイッチ32がオンであると判定されると、ステップ122に進み、前述したエコノミースイッチ33がオンであるか否かを判定する。このステップ122において、エコノミースイッチ33がオンと判定されると、ステップ125へ進み、該ステップ125において、可変サーモ制御を行う。即ち、第6図の実線で示すように、総合信号Tに基づきコンプレッサ7のオンオフ温度を変えるように制御するものである。一方、ステップ122において、エコノミースイッチ33がオフであると判定されると、ステップ123へ進み、該ステップ123において、前述したエアコンマックススイッチ34がオンであるか否かが判定される。………該ステップ123において、エアコンマックススイッチ34がオンであると判定されると、ステップ126へ進み、コンプレッサ7を連続運転し、圧力制御弁11によりエバポレータ6の温度を凍結温度付近となるようその蒸発圧力を制御する(第6図点線で示す。)」(第4頁左上欄第3行?右上欄第13行)こと、「第5図において、前述したステップ80のエアコンミックスドア制御の具体例が示されている。マイクロコンピュータ23には予め演算パターン(1)と補正パターン(2)とが記憶されている。演算パターン(1)は、第1図に示した開度演算手段300を構成するもので、コンプレッサ7がサーモ制御される場合に用いられ、総合信号Tが大きくなるのに従って開度Θが直線的に小さくなる(クール側へ移動する)ように設定されている。ただし、総合信号Tの所定値Tcの前後でその変化勾配が異なる折れ線の特性となっており、所定値Tcの前(ヒート側)の方が緩やかに変化するようになっている。………一方、補正パターン(2)は、第1図に示した補正手段400を構成するもので、コンプレッサ7が連続制御される場合に用いられる。該補正パターンの値は演算パターン(1)から所定の補正量を加算して求められるが、その補正量はエアミックスドア14の開度Θが大きくなる(ヒータ側へ移動する)のに従って小さくなるように設定されている。」(第4頁左下欄第2行?右下欄第7行)こと、及び、「ステップ120の処理、並びに前述したエコノミースイッチ33,エアコンマックススイッチ34,駆動回路22e及び電磁クラッチ13により第1図に示した切換手段100が構成される。」(第4頁右上欄第17行?左下欄第1行)ことが記載されている。
そして、上記第1引用例の第5図には、「総合信号に対するエアミックスドアの開度特性」(第5頁左下欄第19?20行)が示されている。
また、当審が平成10年5月13日付けで通知した取消理由において引用した特開昭57-44512号公報(以下、第2引用例という。)には、「通風ダクトと、前記通風ダクトの送風を行なう送風ファンと、前記通風ダクトの一つの断面部にその断面の全てを横切って設けられた空気冷却用熱交換器と、前記空気冷却用熱交換器より下流側の前記通風ダクトの一つの断面部にその断面の一部を横切って設けられた空気加熱用熱交換器と、前記通風ダクトを通って流れる空気流を前記空気加熱用熱交換器を通って流れる第一の空気流と前記空気加熱用熱交換器をバイパスして流れる第二の空気流とに可変分配する温度調節ダンパと、温度設定装置と、外気温度を検出する外気温度センサと、車室内温度を検出する車室内温度センサと前記空気冷却用熱交換器を通過した空気の温度を検出する送気温度センサと、前記温度設定装置により設定された温度と前記外気温度センサにより検出された外気温度と前記者室内温度センサにより検出された車室内温度と前記送気温度センサにより検出された空気温度と、該空気温度を基に算出された前記空気加熱用熱交換器を通過した空気の推定温度に基き温度調節ダンパの開度を制御する制御装置とを有していることを特徴とする車輌用空調装置。」が記載されており、この「車輌用空調装置」に関して、上記第2引用例には、「24はマイクロコンピュータを、25は運転者等の乗員によって操作される温度設定装置を、26は外気温度を検出する外気温度センサを、27は車室内温度を検出する車室内温度センサを、28は車室内への日射量を検出する日射センサを、29はエバポレータを通過した空気の温度を検出する送気温度センサを各々示している。マイクロコンピュータ24は温度設定装置25より定められた設定温度Tsetと、外気温度センサ26が検出した外気温度Toと、車室内温度センサ27が検出した車室内温度Trと、日射センサ28が検出した日射量Stとの基き次に示す数式に従って目標吹出空気温度Ttを演算するようになっている。
Tt=K1・Tset-K2・To-K3・Tr-K4・St-K5(1)
K1?K5は各々定数
またマイクロコンピュータ24は送風温度センサ21が検出する空気温度Teを入力され、これに基き次に示す数式に従ってヒータコア20を通過した空気の温度Thを推定算出する。
Th=Td+K6・Te(2)
TdはTeが0℃の時のヒータコア通過後の空気温度、K6は定数で、例えば0.6程度である。
そしてマイクロコンピュータ24は、前記目標吹出空気温度Ttと、前記空気温度Te、Thに基き次に示す数式に従って最適空気配分比(第一の空気流の流量/全空気流量)Mhを演算する。
Mh=(Tt-Te)/(Th-Te)(3)
Tt=(1-Mh)Te+MhTh(4)
前記最適空気配分比が得られるエアミックスダンパ21の開度をSdとすると、
Mh=g(Sd)(5) g=関数
であるから、マイクロコンピュータ24は、
Sd=g(Mh)(6)
なる演算を行ない、この演算結果により得られる制御信号をエアミックスダンパアクチュエータ23へ出力する。これによりエアミックスダンパ21は車室内温度が温度設定装置25により定められた設定温度になるよう、その開度を調節される。」(第3頁左下欄第11行?第4頁左上欄第13行)こと、「マイクロコンピュータ24は温度設定装置25および各種センサ26?29よりデータを読込む。マイクロコンピュータ24は送風温度センサ29が検出した空気温度Teを基にヒータコア20を通過した空気の温度Thを上述した数式(2)に従って推定算出する。マイクロコンピュータ24は次に上述した数式(1)に従って目標吹出空気温度Ttを演算する。マイクロコンピュータ24は目標吹出空気温度Ttとヒータコア通過後の空気温度Thとの比較を行なう。この比較結果がTt>Thの時にはエアミックスダンパ開度100%、即ちエアミックスダンパ21が第1図にて実線で示されている如き位置に移動するようエアミックスダンパアクチュエータ23に信号を出力し、最大暖房状態とする。これに対しTt>Thでない時にはマイクロコンピュータ24には次に目標吹出空気温度Ttと空気温度(エバポレータ通過後の空気温度)Teとの比較を行なう。この比較結果がTt<Teである時にはエアミックスダンパ開度を0%、即ちエアミックスダンパ21が第1図に於て仮想線で示されている如き位置に移動するようエアミックスダンパアクチュエータ23へ信号を出力し、最大冷房状態とする。Tt<Teでない時には、マイクロコンピュータ24は上述した数式(3)に従って最適空気配分比Mhを演算し、そしてその最適空気配分比Mhを基に上述した数式(6)に従ってエアミックスダンパ開度Sdを演算し、その演算結果に基く信号をエアミックスダンパアクチュエータ23へ出力する。これによりアクチュエータ23はエアミックスダンパ21をその開度がSdとなるように駆動する。上述の如く、エアミックスダンパ開度の決定に際し、ヒータコア通過後の空気温度Thをエバポレータ通過後の空気温度Teを変数として変化させてエアミックスダンパ開度の決定が行なわれるので、冷房用コンプレッサがオン状態からオフ状態になった直後等に吹出空気温度が大きく変化することが抑えられる。」(第4頁左上欄第1611?左下欄第15行)こと、及び、「本発明は………冷風温度が変化しても吹出空気温度が大きく変化しないようにし、乗員のフィーリングを害することなく車室内の空調を行なう車輌用空調装置を提供することを目的としている。」(第2頁右上欄第12?16行)ことが記載されている。
そして、上記第2引用例には、第4図に、「本発明装置による如くヒータコア通過後の空気温度をエバポレータ通過後の空気温度を変数として変化させてエアミックスダンパ開度を決定した時の吹出口空気温度の変化を示すグラフ」(第4頁右下欄第18行?第5頁左上欄第2行)が示されており、この第4図の記載からみて、このエアミックスダンパ開度決定は、コンプレッサがオンオフの繰返し運転をしている時に行われるものであることが窺える。
そこで、本件実用新案登録第2543064号の実用新案登録請求の範囲の請求項(1)に係る考案(前者)と、上記第1引用例に記載されたもの(後者)とを対比する。
上記の第1引用例の記載からみて、後者の「マイクロコンピュータ」は、エコノミースイッチがオンの時に、総合信号に基づきコンプレッサのオンオフ温度を変える可変サーモ制御を行い、エコノミースイッチがオフの時であってエアコンマックススイッチがオンの時に、コンプレッサを連続運転し、圧力制御弁によりエバポレータの温度を凍結温度付近となるよう制御するものであり、また、その「総合信号」は、外気温度等から演算されるものであるから、後者の「マイクロコンピュータ」は、エバポレータ温度を所定値に固定するエアコンモードと、外気温度等に応じてエバポレータ温度を変えるエコノミーモードとを切り替えるエバポレータ制御手段を有するものに当たると言うことができる。
また、上記の第1引用例の記載からみて、後者の「エアミックスドア」は、送風通路に当たる空調ダクト内に配置されるものであって、コンプレッサが可変サーモ制御される時とコンプレッサが連続運転される時とで、外気温度等から演算される総合信号に対するその開度特性を演算パターン(1)と補正パターン(2)とに切り替えて、ヒータコアを通過する空気とヒータコアをバイパスする空気との割合を調節するダンパであると解することができ、一方、ヒータコアを通過する空気とヒータコアをバイパスする空気との割合を調節することによってヒータコア後方の空気吹出温度が調節されることは自明のことであるし、また、上記の第1引用例の記載からみて、叙上のコンプレッサの可変サーモ制御はエコノミースイッチがオンの時に行われる制御であり、叙上のコンプレッサが連続運転される時はエコノミースイッチがオフの時であってエアコンマックススイッチがオンの時であると言うことができるので、結局、上記の第1引用例の記載からみて、後者の「エアミックスドア」は、送風通路内に配置され、その開度によってエア吹出温度を制御するエアミックスダンパであって、外気温度等から演算される総合信号に対するエアミックスダンパの開度特性をエアコンモード時とエコノミモード時とで切り替えられるエアミックスダンパであると解することができ、また、後者の「マイクロコンピュータ」は、外気温度等から演算される総合信号に対するエアミックスダンパの開度特性をエアコンモード時とエコノミモード時とで切り替えられるエアミツクスダンパ制御手段も有するものと解することができる。
そして、上記の第1引用例の記載からみて、後者の、エコノミモード時における外気温度等から演算される総合信号に対するエアミックスダンパの開度特性に当たる「演算パターン(1)」は、総合信号が大きくなるのに従って開度が直線的に小さくなるように設定されたものであって、予めマイクロコンピュータに記憶されているものであり、また、エアコンモード時における外気温度等から演算される総合信号に対するエアミックスダンパの開度特性に当たる「補正パターン(2)」は、上記の演算パターン(1)に所定の補正量を加算して求めたものであって、予めマイクロコンピュータに記憶されているものであることから、これらのパターンは、共に、総合信号に応じて変わるものであって、総合信号の演算要素にエバポレータ温度が含まれているからと言って、これらのパターンが、必ず、エバポレータ温度に応じて変わるものであるとは解することができない。
そうすると、両者は、「送風通路内に配置されるエバポレータを備えたクーリングユニットと、エパポレータ温度を所定値に固定するエアコンモードと外気温等に応じてエバポレータ温度を変えるエコノミモードとを切り替えることができるエバポレータ制御手段と、夫々送風通路内に配置されるヒータコアとエアミックスダンパとを備えエアミックスダンパの開度によってエア吹出温度を制御するヒータユニットと、エアミックスダンパの外気温等に対する開度特性をエアコンモード時とエコノミモード時とで切り替えるエアミックスダンパ制御手段とが設けられた車両用空調装置」である点において一致し、前者が、エコノミモード時におけるエアミックスダンパの開度特性をエバポレータ温度に応じて変更するエコノミモード開度特性変更手段を設けたものであるのに対して、後者は、エコノミモード時におけるエアミックスダンパの開度特性をエバポレータ温度に応じて変更するエコノミモード開度特性変更手段を設けていないものである点において、両者は相違していると言うことができる。
よって、上記相違点について検討する。
本件実用新案登録の実用新案登録請求の範囲の請求項(1)には、前者における「エアミックスダンパの開度特性」に関して、「エアミックスダンパの外気温等に対する開度特性」と記載されており、また、前者に設けられている「エコノミモード開度特性変更手段」に関して、「エコノミーモード時におけるエアミックスダンパの開度特性をエバポレータ温度に応じて変更するエコノミモード開度特性変更手段」と記載されているけれども、エコノミーモード時におけるエアミックスダンパの外気温等に対する開度特性とエバポレータ温度とがどのように対応し、そのエアミックスダンパの外気温等に対する開度特性がエバポレータ温度に応じてどのように変更されるのかまでは特定して記載されていないから、本件実用新案登録の実用新案登録請求の範囲の請求項(1)の記載からは、前者に設けられているエコノミモード開度特性変更手段は、エコノミーモード時におけるエアミックスダンパの外気温等に対する開度特性とエバポレータ温度とがどのように対応し、そのエアミックスダンパの外気温等に対する開度特性がエバポレータ温度に応じてどのように変更されるのかを問わず、エコノミーモード時におけるエアミックスダンパの外気温等に対する開度特性をエバポレータ温度に応じて変更するものでありさえすればよいものであると解することができる。
そして、本件実用新案登録明細書の記載からみて、前者が、エコノミモード時におけるエアミックスダンパの開度特性をエバポレータ温度に応じて変更するエコノミモード開度特性変更手段を設けるのは、「可変エコシステムを備えた車両用空調装置において、エア吹出温度の制御精度を高めることができ、快適な空調を行うことができる車両用空調装置を提供する」(第6段)という本考案の目的を達成するのに資するためであると言うことができる。
そうすると、前者に設けられているエコノミモード開度特性変更手段は、エコノミーモード時におけるエアミックスダンパの外気温等に対する開度特性とエバポレータ温度とがどのように対応し、そのエアミックスダンパの外気温等に対する開度特性がエバポレータ温度に応じてどのように変更されるのかを問わず、エコノミーモード時におけるエアミックスダンパの外気温等に対する開度特性をエバポレータ温度に応じて変更して、エア吹出温度の制御精度を高めて快適な空調を行なうようにするものでありさえすればよいものであると解することができる。
一方、上記の第2引用例の記載、就中、数式(1)乃至数式(6)の記載からみて、上記第2引用例に記載された車輌用空調装置のマイクロコンピュータが出力する制御信号を決定するエアミックスダンパの開度Sdは、外気温度To等から演算される目標吹出空気温度Tt>ヒータコア通過後の推定空気温度Thの時には100%、目標吹出空気温度Tt<エバポレータ通過後の空気温度Teである時には0%であり、また、上記のエアミックスダンパの開度Sdは、目標吹出空気温度Tt>ヒータコア通過後の推定空気温度Thでなく、かつ、目標吹出空気温度Tt<エバポレータ通過後の空気温度Teでない時には、エバポレータ通過後の空気温度Teと外気温度To等から演算される目標吹出空気温度Ttとを変数とする関数式で表され、ひいては、エバポレータ通過後の空気温度Teと外気温度To等とを変数とする関数式で表されることから、空気温度Teの特定の値におけるエアミックスダンパの開度Sdの外気温度To等に対する線図パターン、即ち、このエアミックスダンパの開度Sdの外気温度To等に対する特性パターンは、エバポレータ通過後の空気温度Teの値に応じて変わるものであると解することができる。
そして、上記の第2引用例の記載からみて、このエアミックスダンパの開度Sdの決定は、コンプレッサがオンオフの繰返し運転をしている時に行われるものであると解することができるし、また、このエバポレータ通過後の空気温度Teはエパボレータ温度に対応する温度であると解することができるから、結局、上記第2引用例には、コンプレッサがオンオフの繰返し運転をしている時に、エアミックスダンパの外気温度等に対する開度特性をエバポレータ温度に応じて変更する開度特性変更手段を有する車輌用空調装置が示されていると言うことができる。
また、上記の第2引用例の記載からみて、後者は、叙上の如き開度特性変更手段を有することにより、冷房用コンプレッサがオン状態からオフ状態になった直後等に吹出空気温度が大きく変化することが抑えられ、乗員のフィーリングを害することなく車室内の空調を行なおうとするものであり、冷房用コンプレッサがオン状態からオフ状態になった直後等に吹出空気温度が大きく変化することが抑えられるということは、エア吹出温度の制御精度が高められるということであると解することができる。
そうすると、エア吹出温度の制御精度を高めて快適な空調を行なうようにするために、後者のマイクロコンピュータの演算パターン(1)により構成される開度演算手段を、コンプレッサがオンオフの繰返し運転をする可変サーモ制御時、即ち、エコノミモード時に、エアミックスダンパの外気温度等に対する開度特性をエバポレータ温度に応じて変更する演算ができるようにしたものに代えるようなことは、上記第2引用例に示されたものに基づいて当業者が極めて容易に考えられる程度の変更と言うことができる。
従って、本件実用新案登録の実用新案登録請求の範囲の請求項(1)に係る考案は、その出願前日本国内において頒布された上記第1引用例に記載されたもの及び上記第2引用例に記載されたものに基づいて、その出願前にその考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者が極めて容易に考案をすることができたものであり、本件の実用新案登録の範囲の請求項(1)に係る考案についての実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものである。
(5)むすび
以上のとおりであるから、本件の実用新案登録の範囲の請求項(1)に係る考案についての実用新案登録は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用される特許法第113条第2号の該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 1999-04-12 
出願番号 実願平3-23928 
審決分類 U 1 651・ 121- ZB (B60H)
最終処分 取消  
前審関与審査官 粟津 憲一  
特許庁審判長 寺尾 俊
特許庁審判官 竹之内 秀明
歌門 恵
登録日 1997-04-25 
登録番号 実用登録第2543064号(U2543064) 
権利者 株式会社日本クライメイトシステムズ
広島県東広島市八本松町大字吉川5658番
考案の名称 車両用空調装置  
代理人 青山 葆  
代理人 河宮 治  
代理人 大貫 和保  
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