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審決分類 審判 全部申し立て   F01N
管理番号 1004085
異議申立番号 異議1999-72805  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-07-16 
確定日 1999-11-08 
異議申立件数
事件の表示 実用新案登録第2588980号「2行程機関の触媒マフラ構造」の実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 実用新案登録第2588980号の実用新案登録を維持する。
理由 1.本件考案
本件実用新案登録第2588980号は、平成4年8月11日に出願され、平成10年11月13日に設定登録がなされたもので、その請求項1に係る考案は、実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「箱型のマフラの内壁全面にクロス触媒を装着した2行程機関の触媒マフラにおいて、マフラを本ケースと蓋ケースとに2分割し、セラミックス織布とクロス触媒とステンレス金網とを重ね合せたうえ、各ケースの内壁面の形状に倣って成形するとともに補強梁を貫通させる通孔を設け、各ケースの内壁全面にセラミックス織布とクロス触媒とステンレス金網とを順に重ね合せ、本ケースの内壁に固定支持した複数の管状の補強梁をセラミツクス織布とクロス触媒とステンレス金網の前記通孔を貫通して蓋ケースの内壁へ当接し、前記蓋ケースから前記補強梁へ挿通したボルトを機関本体へ締結したことを特徴とする、2行程機関の触媒マフラ構造。」
2.登録異議申立の理由・証拠方法
これに対して、登録異議申立人株式会社共立は、甲第1号証(特開平5-141233号公報)、甲第2号証(中小企業事業団・中小企業大学校中小企業研究所編「新素材(ファインセラミックス)利用技術に関する研究」(昭58-3))、甲第3号証(特開平1-110824号公報)、甲第4号証(実願平2-1092号(実開平3-92517号)のマイクロフイルム)を提出し、本件請求項1に係る考案は、甲第2?4号証に記載された周知技術を考慮すれば、甲第1号証として引用した、本件の出願日前に出願され、本件の出願後に公開された特願平3-306244号の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であるから、実用新案法第3条の2の規定により実用新案登録を受けることができない旨の主張をしている。
3.甲第1?4号証に記載された考案
甲第1号証で引用する特願平3-306244号の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「先願明細書」という。)には、「本発明は内燃機関の排気音を消音するためのマフラーに関するものである。」(段落【0001】)、「エンジンの排気口1に連通する開口部3を備えた本体ケース5と、この本体ケースと係合して、大気と連通する排気口7を備えた蓋ケース9とよりなるマフラーケース11が補強管12,12を貫通するボルト13,13によって排気口1に固着している。」(段落【0008】)、「本体ケース5及び蓋ケース9の内面には、触媒担体23が枠(図示せず)等によって固着されている。触媒担体23はフェライト系ステンレス鋼をファイバーウール状に繊維化し、粒状の白金の触媒体を焼結して、布状に成形したものである」(段落【0009】)と記載され、上記各記載及び第2図を併せてみると、先願明細書には、「箱型のマフラーの内壁全面に布状に成形した触媒担体23を装着したエンジンのマフラーにおいて、マフラーを本体ケース5と蓋ケース9とに2分割し、布状に成形した触媒担体23を、各ケースの内壁面の形状に倣って成形するとともに補強管12を貫通させる通孔を設け、各ケースの内壁全面に布状に成形した触媒担体23を固着し、複数の管状の補強管12を布状に成形した触媒担体23の前記通孔を貫通して蓋ケース9の内壁へ当接し、前記蓋ケース9から前記補強管12へ挿通したボルト13をエンジンへ締結したことを特徴とする、エンジンのマフラー構造。」(以下「先願発明」という。)が記載されている。
甲第2号証には、「繊維材料では、繊維間に含まれる空気の熱伝導率が繊維自体のそれよりもはるかに低いため、その成形体は有効な断熱材となる。セラミックファイバーは狭義ではAl_(2)0_(3)-Si0_(2)系のガラス状繊維であるが、現在、多量生産され、バルク、ブランケット、ペーパー、成形品等として各種の高温断熱材に使用されている。更に高温に耐える繊維として、アルミナ、ジルコニア系繊維があり、またチタン酸カリ繊維は石綿の代替品として市販され始めた。」(第46頁第20?26行)と記載されている。
甲第3号証には、「パワーチェーンソーのような可搬式作業機械の2サイクルエンジンの排ガス消音器に関する」(第1頁右下欄第8?10行)、「排ガス消音器8のハウジングシェル19は、少なくとも触媒体24のガス排出側27に対向する側に二重壁29を有することができる。この二重壁29は、触媒体24側の内壁30と、この内壁30に対して間隔をもって配置される外壁31とから成っている。内壁30と外壁31との間に高温度に耐えうる絶縁材料32を設けるのが合目的である。絶縁材料32は例えばアルミニウムケイ酸塩である。この絶縁材料32によって排ガス消音器の表面温度はかなりの程度低下し、1000℃から500℃まで降下する。これはアルミニウムケイ酸塩の繊維マットの熱伝導率が悪く、外壁31に触れる外気によって外部から冷却されるからである。さらに排ガスの熱気は二重壁のハウジングシェル19の比較的面積が大きな内壁30へ分散され、その結果すでに内壁30で排ガスの温度を200乃至300℃だけ降下させることができ、その後絶縁材料32と外気に直接曝されている外壁31によってさらに降下する。」(第3頁左下欄第11?右下欄第9行)と記載されている。
甲第4号証には、「排気ガス導入筒(13)は、前記エンジンの本体(A)側の内側排気マフラー片(12a)の内側に固着された内側補強板(16)に固着されている。」(第7頁第7?9行)、「また、前記支持柱(14),(15)も前記内側補強板(16)に固着されている。」(第7頁第17?18行)、「(27)は略円筒状の筒状部材であり、該略円筒状部材(27)は、ステンレス鋼網等の保持網(28)間にクロス触媒(29)を挟持した構成とされている。すなわち、図面実施例の場合には、一枚の金網(28)を渦巻状に二重にまるめ、その際、一重目と二重目との間にクロス触媒(29)を挟み、全体を略円筒状とし、第4図に示すように該金網(28)の端部の重合部(31)を接合した構成とされている。該重合部(31)の接合はスポット溶接により行われているが、止め金具等他の手段により接合してもよい。なお、前記保持網(28)としては、例えばステンレス金網等を用いることができ、線径やメッシュ等は適宜選定することができる。」(第9頁第16行?第10頁第10行)と記載されている。
4.対比・判断
そこで、本件請求項1に係る考案と上記先願発明とを対比すると、後者における「マフラー」、「布状に成形した触媒担体23」、「エンジン」、「本体ケース5」、「蓋ケース9」、「補強管12」、「ボルト13」は、各々前者における「マフラ」、「クロス触媒」、「機関」、「本ケース」、「蓋ケース」、「補強梁」、「ボルト」に相当することから、両者は、「箱型のマフラの内壁全面にクロス触媒を装着した機関の触媒マフラにおいて、マフラを本ケースと蓋ケースとに2分割し、クロス触媒を各ケースの内壁面の形状に倣って成形するとともに補強梁を貫通させる通孔を設け、複数の管状の補強梁をクロス触媒の前記通孔を貫通して蓋ケースの内壁へ当接し、前記蓋ケースから前記補強梁へ挿通したボルトを機関本体へ締結した」点で一致するものの、次の3点で相違する。
▲1▼本件請求項1に係る考案が2行程機関に関するものであるのに対し、先願発明においてはエンジンの行程数が明確でない点。
▲2▼本件請求項1に係る考案が「セラミックス織布とクロス触媒とステンレス金網とを重ね合せたうえ、各ケースの内壁面の形状に倣って成形するとともに補強梁を貫通させる通孔を設け、各ケースの内壁全面にセラミックス織布とクロス触媒とステンレス金網とを順に重ね合せ」た構成を有するのに対し、先願発明はこの構成を有していない点。
▲3▼本件請求項1に係る考案における補強梁は、本ケースの内壁に固定支持されているのに対し、先願発明においては、補強梁が本ケースに対し、どのように支持されているのか明確でない点。
そして、甲第2?4号証を検討しても、上記相違点▲2▼における本件請求項1に係る考案の構成が、本件の出願前に周知の技術事項であったものとは認められず、しかも、本件請求項1に係る考案は、上記相違点▲2▼の構成を備えることにより、「【0015】排気とクロス触媒35との反応により排気温度が高くなつても、各ケース23a,23bの内壁面はセラミック織布34で覆われているので、各ケース23a,23bが焼損する恐れはない。クロス触媒35はステンレス金網36により覆われ、かつ各ケース23a,23bの内壁へ弾性的に押し付けられているので、クロス触媒35が熱変形し、各ケース23a,23bの内壁から剥離することもない。また、クロス触媒35が各ケース23a,23bの内壁から若干剥離したとしても、クロス触媒35を貫通する補強梁32,33によりばらばらになるのを抑えられるから、クロス触媒35の機能が損わるものではない。」、「【0017】本ケースの内壁に支持した複数の管状の補強梁を、セラミックス織布とクロス触媒とステンレス金網の各通孔を貫通して蓋ケースの内壁へ当接し、蓋ケースから補強梁へ挿通したボルトを機関本体へ締結したから、本ケースと蓋ケースの分解・清掃・組立に際して、クロス触媒などの位置決めと組立が容易であり、クロス触媒などがマフラケースから剥離しても補強梁により支持されるので、排気浄化作用に変化はなく、補強梁により外部の障害物との接触によるマフラケースの変形が抑えられる。」という、先願発明によっては奏し得ない、明細書記載の作用効果を期待できるものである。
したがって、本件請求項1に係る考案が上記先願明細書に記載された発明と同一であるとは認められない。
5.むすび
以上のとおりであるから、本件実用新案登録異議申立人が主張する理由及び提出した証拠によっては、本件請求項1に係る考案についての実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る考案についての実用新案登録を取り消すべき理由も発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 1999-10-22 
出願番号 実願平4-61993 
審決分類 U 1 651・ 161- Y (F01N)
最終処分 維持    
前審関与審査官 高木 進  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 林 晴男
関谷 一夫
登録日 1998-11-13 
登録番号 実用登録第2588980号(U2588980) 
権利者 株式会社日本ウォルブロー
東京都港区芝公園2丁目3番3号
考案の名称 2行程機関の触媒マフラ構造  
代理人 山本 俊夫  

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