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審決分類 |
審判 全部申し立て B41F |
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管理番号 | 1004108 |
異議申立番号 | 異議1998-74004 |
総通号数 | 4 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2000-04-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1998-08-10 |
確定日 | 1999-07-03 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 実用新案登録第2562487号「枚葉印刷機の排紙装置」の実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 実用新案登録第2562487号の実用新案登録を維持する。 |
理由 |
I.手続の経緯 実用新案登録第2562487号の請求項1に係る考案は、平成3年6月19日に実用新案登録出願され、平成9年10月31日にその考案について実用新案登録の設定登録がなされ、その後、実用新案異議申立人ハイデルベルガードルツクマシーネンアクチエンゲゼルシャフトにより実用新案登録異議の申立てがなされ、平成10年11月4日付けで取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年1月29日に訂正請求がなされたものである。 II.訂正の適否についての判断 1.訂正の内容 実用新案権者が求めている訂正の内容は、実用新案登録請求の範囲の請求項1の「印刷速度を検出する検出手段を設けるとともに、検出された印刷速度にもとづいて前記駆動部を制御する制御手段を備えることにより、印刷速度に応じて」を「印刷速度を検出する検出手段と前記紙放しカムの現在の係合位置を検出する検出手段とを設けると共に、検出された印刷速度と現在の係合位置とにもとづいて前記駆動部を制御する制御手段を備え、該制御手段は、前記検出された印刷速度から前記紙放し位置の最適な係合位置を求め、求められた最適な係合位置と前記検出された現在の係合位置とのずれ量に応じて」と訂正しようとするとともに考案の詳細な説明中の【0015】欄の記載を請求項1の訂正と同様に訂正しようとするものである。 2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 請求項1の訂正事項に関し、願書に添付した明細書(以下「実用新案登録明細書」という。)には、「マイクロコンピュータ142は、ポテンショメータ131からの信号で現在の係合位置PPを知ると共に、タコジェネレータ133からの信号で最適な係合位置PEを知り、位置PEと位置PPとのずれ量を算出してこのずれ量を0とするような駆動制御信号をモータ120に送出する。」(明細書【0025】)と記載されている。 したがって、「印刷速度を検出する検出手段と前記紙放しカムの現在の係合位置を検出する検出手段を設けると共に、検出された印刷速度と現在の係合位置とにもとづいて前記駆動部を制御する制御手段を備え、該制御手段は、前記検出された印刷速度から前記紙放し位置の最適な係合位置を求め、求められた最適な係合位置と前記検出された現在の係合位置とのずれ量に応じて」は、実用新案登録明細書に記載されていたことと認めらる。 そして、この訂正は実用新案登録明細書に記載された事項の範囲内において、「検出手段」及び「制御手段」を限定したものといえるから、実用新案登録請求の範囲の減縮に相当するものである。 また、考案の詳細な説明の訂正事項は、請求項1の訂正に伴い、それとの整合性を保つためになされたものであり、明りょうでない記載の釈明に相当するものである。 そして、これらの訂正は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3.独立特許要件 (1)訂正考案 訂正明細書の請求項1に係る考案(以下、「訂正考案」という。)は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。「紙端をくわえる排紙爪を有し該排紙爪のくわえた紙を走行により搬送する排紙チェーンと、排紙積載装置の上方に位置して前記排紙チェーンの走行経路内に設けられ、前記排紙爪に係合してこれを開閉させる紙放しカムと、前記排紙爪に対する前記紙放しカムの係合位置を調整する調整機構とを備えた枚葉印刷機の排紙装置において、前記調整機構を電動あるいは油圧駆動部により駆動するようになし、印刷速度を検出する検出手段と前記紙放しカムの現在の係合位置を検出する検出手段とを設けると共に、検出された印刷速度と現在の係合位置とにもとづいて前記駆動部を制御する制御手段を備え、該制御手段は、前記検出された印刷速度から前記紙放し位置の最適な係合位置を求め、求められた最適な係合位置と前記検出された現在の係合位置とのずれ量に応じて前記紙放しカムの紙放し位置を自動調整可能としたことを特徴とする枚葉印刷機の排紙装置。」 (2)引用文献 当審が通知した取消理由で引用した刊行物1である実願昭62-139356号(実開昭64-45645号)のマイクロフィルム(異議申立人が提出した甲第1号証))には、「一般に枚葉印刷機の排紙装置は印刷後の紙を搬送する排紙チェーンと、搬送された紙を積載する紙積台とを備えていて、このうちの排紙チェーンは、左右のチェーンとその間に一定間隔で支架された複数組の爪軸および爪台軸とからなる爪竿を備えていて、各爪軸および爪台軸上には、互いに対向する各複数個の爪と爪台とが並列されて複数組のくわえ爪装置(以下爪という)が構成されている。そして印刷後、排紙チェーンの爪でくわえられた紙は紙積台の上方で爪のくわえから解放されて落下したのち、紙積台上に板等を介して積載される。」(明細書第2頁3?14行)、「28はカムホルダ24の前半部にボルト29で固定された紙放しカムであって下端から前端に及ぶ円弧状のカム面28aを備えており、このカム面28aを排紙チェーン5の周回径路始端部に臨ませている。そして前記爪開きころ15が走行してカム面28aに摺接すると、前述したように爪10が開いて紙13が爪10のくわえから解放される。」(明細書第7頁9?16行)、「カムホルダ24の後端下半部と排紙フレーム2との間には、横長直方形状に形成されたブラケット30が・・・支持されており・・・ブラケット30の下端面に固定されたL字状の支持金具33には、1駆動装置としてのエアシリンダ34が水平状に支持されていて、・・・ピストンロッド35が進退することにより・・・カムホルダ24と紙放しカム28が前後方向に進退するように構成されている。ピストンロッド35を進退させるエアシリンダ34には、エア通路をエアシリンダ34のヘッドエンド側とロッドエンド側とへ切替える図示しない電磁弁が設けられており、印刷機の回転数を検出して作動することによりピストンロッド35の進退方向を前進方向と後退方向とにそれぞれ切替えるように構成されている。すなわち、・・・印刷機の回転数が・・・高速側へ越えると、電磁弁が作動してエア通路がエアシリンダ34のロッドエンド側に切替わるので、ピストンロッド35が後退する。したがって。紙放しカム28が後退し、紙放し時期が早まる。また、印刷機の速度が・・・低速側へ越えると、電磁弁が作動してエア通路がエアシリンダ34のヘッドエンド側に切替わるので、ピストンロッド35が前進する。したがって、紙放しカム28が前進し、紙放し時期が遅れる。」(明細書第7頁20行?第9頁16行)、「紙放しカム28の移動調節用駆動装置として・・・油圧シリンダやモータ等でもよい。」(明細書台12頁9?11行)、「本校案によれば枝葉印刷機の排紙紙放し装置において、設定された印刷機の所定回転速度を検出して作動する駆動装置を設け、これを紙放しカムに直結して回転速度が設定回転速度を高速側と低速側とへそれぞれ越えたときに紙放しカムを前進させたり後退させたりして紙放し時期を早めたり遅らせたりするように構成したことにより、紙放し時期を印刷機の回転速度に対応して自動的に最適の時期に調節することができる」(明細書第12頁16行?第13頁5行)と記載されており、また、第3図には紙放しカムが紙積台の上方に位置していることが示されており、これらの記載を含む明細書及び図面の記載より、刊行物1には以下の考案が記載されているものと認める。 「紙をくわえる爪を有し爪でくわえられた紙を搬送する排紙チェーンと、紙積台の上方に位置して前記排紙チェーンの周回経路始端部に臨ませ、爪の爪開きころに摺接してこれを開く紙放しカムと、紙放しカムを前進させたり後退させるようにして紙放し時期を早めたり遅らせたりするように構成した手段とを備えた枚葉印刷機の排紙紙放し装置において、紙放しカムの移動調節用駆動装置は油圧シリンダやモータであり、印刷機の回転数を検出し、紙放しカムを前進させたり後退させるようにして紙放し時期を早めたり遅らせたりするように構成したことにより、紙放し時期を印刷機の回転速度に対応して自動的に最適の時期に調節することができるようにしたことを特徴とする枚葉印刷機の排紙紙放し装置。」 (3)対比・判断 訂正考案と、刊行物1に記載された考案とを比較すると、刊行物1に記載された考案の「紙」、「爪」、「周回経路始端部に臨ませ」、「爪の爪開きころに摺接してころを開く」、「紙放しカムを前進させたり後退させるようにして紙放し時期を早めたり遅らせたりするように構成した手段」、「排紙紙放し装置」、「紙放しカムの移動調節用駆動装置は油圧シリンダやモータであり」、「印刷機の回転数を検出し」、「紙放し時期を印刷機の回転速度に対応して自動的に最適の時期に調節することができるようにしたこと」は、訂正考案の「紙端」、「排紙爪」、「走行経路内に設けられ」、「排紙爪に係合してこれを開閉させる」、「前記排紙爪に対する前記紙放しカムの係合位置を調整する調整機構」、「排紙装置」、「調整機構を電動あるいは油圧駆動部により駆動するようになし」、「印刷速度を検出する検出手段」、「紙放しカムの紙放し位置を自動調整可能としたこと」に相当することから、両者は、「紙端をくわえる排紙爪を有し該排紙爪のくわえた紙を走行により搬送する排紙チェーンと、排紙積載装置の上方に位置して前記排紙チェーンの走行経路内に設けられ、前記排紙爪に係合してこれを開閉させる紙放しカムと、前記排紙爪に対する前記紙放しカムの係合位置を調整する調整機構とを備えた枚葉印刷機の排紙装置において、前記調整機構を電動あるいは油圧駆動部により駆動するようになし、印刷速度を検出する検出手段を設け、前記紙放しカムの紙放し位置を自動調整可能としたことを特徴とする枚葉印刷機の排紙装置。」である点で一致する。 しかしながら、刊行物1には、訂正考案を特定する事項である「紙放しカムの現在の係合位置を検出する検出手段」を設けること、「検出された印刷速度と現在の係合位置とにもとづいて駆動部を制御する制御手段を備え」ていること、「制御手段は、求められた最適な係合位置と検出された現在の係合位置とのずれ量に応じて前記紙放しカムの紙放し位置を自動調整可能としたこと」について記載されておらず、また示唆もされていない。 そして、当該事項によって、訂正考案は、「印刷速度に応じて紙放しカムと排紙爪を開閉するためのころとの係合位置を最適な値に自動調整できるようにした」という明細書記載の効果を奏するものであり、訂正考案は刊行物1に記載された考案からきわめて容易に考案することができたものであるとすることはできない。 また、他に訂正考案を拒絶すべき理由を発見しないから、結局、訂正考案は実用新案登録の際独立して実用新案登録を受けることができるものである。 4.むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用される、同附則第10条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法120条の4第2項及び同条第3項において準用する同法第126条第2?4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 III.特許異議申立について 1.本件考案 II.に示したように、平成11年1月29日付けの訂正請求を認めるので、本件請求項1に係る考案(以下「本件考案」という。)は、II.3.(1)訂正考案に記載したとおりのものである。 2.申立の理由の概要 実用新案登録異議申立人ハイデルベルガードルツクマシーネンアクチエンゲゼルシャフトは、甲第1号証(実願昭62-139356号(実開昭64-45645号)のマイクロフィルム)(II.で示した刊行物1)を提出し、本件考案は、甲第1号証に記載された考案に基づいて極めて容易に考案をすることができたものであり、本件考案に係る実用新案登録は実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであることから、本件考案に係る実用新案登録を取り消すべきである旨主張している。 3.実用新案法第3条第2項違反について 異議申立人が提出した甲第1号証にはII.3.(2)引用文献に示した考案が記載されているが、II.3.(3)に示した理由により、本件考案は甲第1号証に記載された考案から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることはできない。 4.むすび 以上のとおりであるから、実用新案登録異議申立ての理由及び証拠によっては、本件考案の実用新案登録を取り消すことはできない。 また、他に本件考案の実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する |
発明の名称 |
(54)【考案の名称】 枚葉印刷機の排紙装置 (57)【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】 紙端をくわえる排紙爪を有し該排紙爪のくわえた紙を走行により搬送する排紙チェーンと、排紙積載装置の上方に位置して前記排紙チェーンの走行経路内に設けられ、前記排紙爪に係合してこれを開閉させる紙放しカムと、前記排紙爪に対する前記紙放しカムの係合位置を調整する調整機構とを備えた枚葉印刷機の排紙装置において、前記調整機構を電動あるいは油圧駆動部により駆動するようになし、印刷速度を検出する検出手段と前記紙放しカムの現在の係合位置を検出する検出手段とを設けると共に、検出された印刷速度と現在の係合位置とにもとづいて前記駆動部を制御する制御手段を備え、該制御手段は、前記検出された印刷速度から前記紙放し位置の最適な係合位置を求め、求められた最適な係合位置と前記検出された現在の係合位置とのずれ量に応じて前記紙放しカムの紙放し位置を自動調整可能としたことを特徴とする枚葉印刷機の排紙装置。 【考案の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本考案は枚葉印刷機において印刷後搬送された紙を、排紙積載装置へ排出するための排紙装置の改良に関する。 【0002】 【従来の技術】 枚葉印刷機において、印刷装置で印刷された紙は、印刷胴の爪から排紙チェーンの排紙爪にくわえ替えられ、排紙チェーンの走行とともに搬送されたのち、搬送終端部の紙放しカムに対向することによって開く排紙爪から解放され、排紙積載装置(以下、パイルと呼ぶ)上へ落下、積載される。 【0003】 図10?図12を参照して従来の排紙装置について説明する。 この装置は、パイルが2箇所にあり、紙放しカムを各パイルの上方にそれぞれ揺動自在に設け、紙搬送上流側の紙放しカムを揺動させてカム面を変位させることにより、上流側排紙部へ排紙させたり、あるいはここを通過させて下流側排紙部の紙放しカムで排紙させたりして、片方の排紙部への排紙中に他方の排紙部の紙積準備をするようにしたものである。なお、パイル数は3組の場合もある。 【0004】 図において、排紙装置1の左右のフレーム2間には、図に矢印Aで示す方向に走行する一対の排紙チェーン3がフレーム2に近接して張架されており、この排紙チェーン3には、互いに平行する爪軸4と爪台軸5およびその両端同士を連結するブラケット6からなる複数組の爪竿7が一定間隔で支架されている。 【0005】 爪軸4と爪台軸5上とには、複数個ずつの爪8と爪台9とが互いに対向して配設されており、爪軸4の片側の端部には、ころ10が遊端部に枢着されたころレバー11が固定されている。そして、爪8は、図示しない印刷部側のカムと、後述する紙放しカム23とのカム面にころ10が対向して通過することにより開閉し、紙12を爪台9との間でくわえたり放したりするように構成されている。すなわち、印刷部で紙12をくわえた爪8は、排紙チェーン3の走行とともにこれを搬送し、排紙装置1においてこれを放すように構成されている。 【0006】 図10に符号13A,13Bを付して示すものは、紙12の搬送方向に並設された2組のパイルである。これらのパイルは、チェーンで吊下されて手動または自動で昇降する紙積台を備えており、片側のフレーム2に沿って走行する排紙チェーン3の走行経路上方には、全体を符号14で示す紙放し装置が各パイル13A,13Bに対応して配設されている。 各紙放し装置14は、フレーム2の内側に植設された上下一対のスタッド15を連結するレバー受け金具26を備えており、またその前方には、支点ピン17がホルダ18を介してフレーム2の内側から突設されている。支点ピン17には、くの字状に形成されたレバー19が回転自在に支持されており、このレバー19の一方の遊端部には、フレーム2側に枢支された油圧または空圧シリンダ20のピストンロッド21の作用端がピン22で枢着されている。 【0007】 23は下端に円弧状のカム面23aが形成された板状の紙放しカムであって、その前端にはレバー19の他端がピン24で枢着されている。また、紙放しカム23の後端部の長孔23b内に摺動自在に嵌合されたこま25には、後述するフレーム2側の連結軸26に割締め固定された揺動レバー27の遊端部がピン28で枢着されている。こうすることによりシリンダ20のピストンロッド21を進退させると、紙放しカム23が、こま25を長孔23b内で摺動させながら図11に実線で示す紙放し姿勢と鎖線で示す非紙放し姿勢との間で揺動するように構成されている。すなわち、実線位置にあるときにころ10が前進すると、紙放しカム23のカム面23aで押下げられて爪8が開き、紙12のくわえを解放する。 また、鎖線位置にあるときには、ころ10が押下げられずに通過する。図中の鎖線29は、押下げられないときのころ10の上端走行軌跡を示している。そして、他方のパイル13B用の紙放し装置14も同様に構成されている。 【0008】 さらにフレーム2の外側には、3個のブラケット30,31,32が固定されていて、これには駆動軸33がカラー34とべベルギア35とで軸線方向への移動を規制されて回動自在に軸支されており、また、ブラケット30には、ベベルギア35と噛合うべベルギア36が固定された操作軸37が駆動軸33と直交して軸支されている。各紙放し装置14ごとに設けられた前記連結軸26は、カラー38と自らの段部とで軸線方向への移動を規制されてフレーム2に回動自在に軸支されており、各連結軸26上にキー39で固定されたウォームホイル40は、駆動軸33上に固定された各ウオーム41とそれぞれ噛合っている。 【0009】 42はカバー43の外側に位置して操作軸37に固定されたハンドルであって、このハンドル42を回動操作することにより、べベルギア35,36とウォーム41,ウォームホイル40を介して各連結軸26が同期して回動し、揺動レバー27が揺動する。揺動レバー27の揺動により紙放しカム23は、こま25を長孔23b内で摺動させながら静止状態のピン24を中心にして揺動し、円弧カム面23aの最大径位置が前後方向へ変位して紙放し位置が変化するように構成されている。 【0010】 以上のように構成された排紙装置の動作を説明する。印刷ユニットで印刷された紙12は、爪8にくわえられ、排紙チェーン3の走行によって搬送される。このとき、上流側のパイル13A上方のシリンダ20のピストンロッド21が前進していてレバー19を介し紙放しカム23が図11の実線位置にあるので、軌跡29に沿って走行してきたころ10がカム面23aで押下げられ、紙12は爪8のくわえから解放さてパイル13Aの紙積台上に落下積載される。ころ20が紙放しカム23を通過すると、爪8側に設けたばね部材により爪8が閉じる。 【0011】 上流側のパイル13Aの紙積台12があらかじめプリセットカウンタなどにセットされた所定枚数に達すると、信号が発せられてシリンダ20が作動し、ピストンロッド21が後退するので、レバー19を介し紙放しカム23が図11の鎖線位置へ移動する。したがって軸跡29に沿って走行してくるころ10は、紙放しカム23に押下げられることなく通過し、このとき下流側の紙放しカム23が実線位置にあるので、上記と同様にして紙12は下流側パイル13Bの紙積台上に落下積載される。 【0012】 このあと、上記動作を繰返し、紙12の所定枚数ごとに排紙位置が切替えられて紙12は両方のパイル13A,13Bへ交互に積載される。そして、他方のパイル13B(13A)へ排紙が行われているうちに、排紙が休止されている側のパイル13A(13B)の紙積台を紙12積載のまま機外へ引き出してその代わりに空の紙積台を戻しておく。 【0013】 このような排紙動作においても、前述したように、同じ位置で爪8を開いても、印刷速度、すなわち慣性力により落下する紙12の姿勢が微妙に変化して紙揃いが悪くなる。そこでこのような場合、作業者はハンドル42を把持して操作軸37を回動操作すると、ベベルギア35,36ならびにウォーム41,ウォームホイル40を介して両方の連結軸26が同期して回動する。連結軸26が回動すると、揺動レバー27が揺動するので、両方の紙放しカム23は、こま25を長孔23b内で摺動させながら、静止しているピン24を中心にして同量だけ揺動する。この結果カム面23aの最大円弧径位置が前後へ進んだり遅れたりすることになり、紙放しタイミングが両方同時に同量だけ調節される。 【0014】 【考案が解決しようとする課題】 しかしながら、上記の装置においては、作業者は印刷速度の変化に起因した紙放しタイミングの調節のために、印刷の開始時及び印刷速度の変更時にパイルの紙揃い状態を監視していなければならない。また、紙揃い状態を正常に戻すための操作についても紙揃い状態を見ながらハンドル操作を行わなければならず、容易とは言えない。 このような問題点に鑑み、本考案の課題は、印刷速度の変化に応じて紙放しタイミングの調節が自動的に行われる排紙装置を提供することにある。 【0015】 【課題を解決するための手段】 本考案は、紙端をくわえる排紙爪を有し該排紙爪のくわえた紙を走行により搬送する排紙チェーンと、排紙積載装置の上方に位置して前記排紙チェーンの走行経路内に設けられ、前記排紙爪に係合してこれを開閉させる紙放しカムと、前記排紙爪に対する前記紙放しカムの係合位置を調整する調整機構とを備えた枚葉印刷機の排紙装置において、前記調整機構を電動あるいは油圧駆動部により駆動するようになし、印刷速度を検出する検出手段と前記紙放しカムの現在の係合位置を検出する検出手段とを設けると共に、検出された印刷速度と現在の係合位置とにもとづいて前記駆動部を制御する制御手段を備え、該制御手段は、前記検出された印刷速度から前記紙放し位置の最適な係合位置を求め、求められた最適な係合位置と前記検出された現在の係合位置とのずれ量に応じて前記紙放しカムの紙放し位置を自動調整可能としたことを特徴とする。 【0016】 【作用】 本装置においては、印刷速度と紙放しカムの紙放し位置との関係があらかじめ求められている。制御手段は、検出された印刷速度と紙放しカムの現在位置とから紙放しカムの変位量を算出し、算出された値にもとづいて駆動部を制御する。 【0017】 【実施例】 以下に図面を参照して本考案の実施例について説明する。 はじめに、図1?図6を参照して本考案装置の機械的部分、すなわち紙放し機構とその駆動機構について説明する。 紙の走行経路の片側に位置したサイドフレーム100にスライドフレーム101が紙の搬送方向にスライド可能に設けられている。すなわち、図2あるいは図5に示すように、スライドフレーム101には紙の搬送方向に延びる長穴101a及び切欠き101bが設けられ、これらにはサイドフレーム100に取り付けられたガイドピン102a,102bがそれぞれ挿通されている。スライドフレーム101にはまた、長穴101aに隣接して紙の搬送方向に平行に設けられたねじ穴を通してアジャストピン103が螺挿され、このアジャストピン103の先端がガイドピン102aに係合するようにされている。このことにより、アジャストピン103の調節でスライドフレーム101がスライド可能になっている。 これは、後述するスプロケット104の位置調整のためである。 【0018】 すなわち、スライドフレーム101には、サイドフレーム100に取り付けられたスプロケット軸105を介してスプロケットホルダ106及びスプロケット104が組み付けられている。スプロケット104は、従来の技術で述べた排紙チェーンを案内するためのものであり、スプロケットホルダ106にボルトで固定されている。一方、スプロケットホルダ106は、スプロケット軸105に軸受107を介して回転自在に支持されていることで、スプロケット104と共に回転して排紙チェーンを案内する。そして、排紙チェーンにゆるみが生じたような時にアジャストピン103によりスプロケット104の位置調整を行う。 【0019】 スライドフレーム101は更に、スプロケット軸105とほぼ同じ長さ及び同方向に延在するブラケット部101′を有し、このブラケット部101′の先端にガイドプレート108の一端がボルトあるいは熔接等により固定されている。ガイドプレート108の他端はスプロケット軸105の先端にボルトで固定されている。 【0020】 ブラケット部101′内には、一端にウォームホイール110を有する調整軸111が回転可能に支持され、ブラケット部101′から突出した調整軸111の他端には調整板112が固着されている。紙放しカム113は、その一部が調整板112とガイドプレート108との間に介在するように設けられる。紙放しカム113は、調整板112と対応する位置に長穴113aを有し、この長穴113aには調整板112に枢支したスライドピース114が嵌入している。紙放しカム113にはまた、スプロケット軸105の先端に近い位置に穴113bを有し、この穴113bには支点ピン115が嵌入している。支点ピン115はガイドプレート108をも貫通してナットで固定されていることにより、紙放しカム113はこの支点ピン115を中心に回動可能となる。紙放しカム113には更に、長穴113aと穴113bとの間に円弧状の長穴113cを有し、この長穴113cにはガイドプレート108に取り付けられた支持ピン116が遊嵌状態で貫通している。このことにより、紙放しカム113の支点ピン115を中心とする回動が支持ピン116で案内される。 【0021】 サイドフレーム100には更に、紙放しカム113を回動させるためのモータ120が配設されている。モータ120の出力軸はカップリング機構121を介して回転軸122の一端に連結されている。回転軸122の他端にはベベルギヤ123が設けられており、このベベルギヤ123は、スライドフレーム101のブラケット部101′に支持されたウォーム軸124に設けられたべベルギヤ125と噛み合っている。ウォーム軸124のねじ部には、前述したウォームホイール110が噛み合っている。 【0022】 このようにして、モータ120の回転は、回転軸122-ウォーム軸124-ウォームホイール110-調整軸111-調整板112の経路で紙放しカム113に伝えられ、紙放しカム113は支点ピン115を中心に回動して、図4の状態から図6の状態のように変位する。 なお、紙をつかむ排紙爪については図11と同様の機構で良く、図示説明は省略するが、図4,図6のように紙放しカム113が変位することでころ10(図11参照)と紙放しカム113との係合位置(以下、係合位置と呼ぶ)がPlからP2に変化することで紙放し位置が変化する。なお、図1では、紙の搬送方向は図10のA方向とは反対向きのC方向となる。 【0023】 次に、モータ120の制御装置について図7?図9を参照して説明する。 図7及び図8はそれぞれ、印刷速度と最適位置で紙放しを行うために必要な係合位置(基準位置からの距離)及び印刷機本体の駆動用モータの回転速度と最適位置で紙放しを行うために必要な係合位置関係を示す。 このような関係はあらかじめ実測により求められるが、いずれにおいても直線に近い関係を呈している。このことにより、印刷速度あるいは印刷機本体の駆動用モータの回転数を検出し、これらの検出値に応じ、図7,図8の特性にもとづいてモータ120を制御することで、紙放しカム113と排紙爪におけるころとの係合位置が適宜制御され、最適位置で紙放しが行われる。 【0024】 図9は制御装置の構成を示す。本制御装置140は、A/D変換器141、マイクロコンピュータ142、メモリ143及びデータ入力部144を有する。A/D変換器141は、モータ120の回転数をギヤを介して検出するためのポテンショメータ131からのアナログ検出信号及び印刷機本体の駆動用モータ132の回転数を検出するためのタコジェネレータ133からのアナログ検出信号をディジタル信号に変換する。 【0025】 メモリ143には、図8に示すような特性にもとづいて駆動用モータ132の回転数とある位置を基準値0とした係合位置との一対一の対応テーブル表が記憶されている。データ入力部144は、上述した対応テーブル表を入力したり、変更したりする場合に使用される。マイクロコンピュータ142は、ポテンショメータ131からの信号で現在の係合位置PPを知ると共に、タコジェネレータ133からの信号で最適な係合位置PEを知り、位置PEと位置PPとのずれ量を算出してこのずれ量を0とするような駆動制御信号をモータ120に送出する。なお、ずれ量が正の場合モータ120を正転させ、負の場合には逆転させるというようにする。 【0026】 なお、メモリ143に記憶させる対応テーブル表は一種類だけでなく、検出対象に応じて複数種類記憶させ、データ入力部144でどの対応テーブル表を用いるかを選択できるようにすることで汎用性を持たせることもできる。また、印刷速度は、印刷機本体の駆動用モータの回転数だけでなく、他の構成要素の速度から印刷速度を割り出すようにしても良い。 【0027】 【考案の効果】 以上説明してきたように、本考案では印刷速度に応じて紙放しカムと排紙爪を開閉するためのころとの係合位置を最適な値に自動調整できるようにしたことにより、印刷開始あるいは終了時や印刷速度に変化があった時でも紙は常に最適な位置で排紙爪から解放されるので、少なくとも印刷速度に起因する紙の積載状態の変化を監視する必要は無くなる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本考案にかかる排紙装置の主要部構成を側方から見た図。 【図2】 図1に示された装置を図1の矢印A-Aで切断した断面図。 【図3】 図1に示された装置を図1の矢印B-Bで切断した断面図。 【図4】 図1に示されたスプロケットとガイドプレート及び紙放しカムとの関係を示した図。 【図5】 図1に示されたスプロケットと紙放しカム及び調整板との関係を示した図。 【図6】 図1に示されたスライドフレームとモータの回転力を紙放しカムに伝達するための機構との関係を示した図。 【図7】 紙放しカムと排紙爪を駆動するためのころとの最適係合位置と印刷速度との関係を示した図。 【図8】 紙放しカムと排紙爪を駆動するためのころとの最適係合位置と印刷機本体の駆動用モータの回転数との関係を示した図。 【図9】 本考案によるモータの制御装置の概略構成を示した図。 【図10】 従来の排紙装置の主要構成を示した図。 【図11】 従来の排放し装置と排紙爪の構造を示した図。 【図12】 図11に示された紙放し装置を一部破断した上方から見た図。 【符号の説明】 100 サイドフレーム 101 スライドフレーム 104 スプロケット 105 スプロケット軸 108 ガイドプレート 113 紙放しカム 120 モータ |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 実用新案権者が求めている訂正の内容は以下のとおりである。 実用新案登録請求の範囲の請求項1の「印刷速度を検出する検出手段を設けるとともに、検出された印刷速度にもとづいて前記駆動部を制御する制御手段を備えることにより、印刷速度に応じて」を「印刷速度を検出する検出手段と前記紙放しカムの現在の係合位置を検出する検出手段とを設けると共に、検出された印刷速度と現在の係合位置とにもとづいて前記駆動部を制御する制御手段を備え、該制御手段は、前記検出された印刷速度から前記紙放し位置の最適な係合位置を求め、求められた最適な係合位置と前記検出された現在の係合位置とのずれ量に応じて」と訂正しようとするとともに考案の詳細な説明中の【0015】欄の記載を請求項1の訂正と同様に訂正しようとするものである。 |
異議決定日 | 1999-06-23 |
出願番号 | 実願平3-54532 |
審決分類 |
U
1
651・
121-
YA
(B41F)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 青木 和夫 |
特許庁審判長 |
小澤 和英 |
特許庁審判官 |
信田 昌男 嶋野 邦彦 |
登録日 | 1997-10-31 |
登録番号 | 実用登録第2562487号(U2562487) |
権利者 |
住友重機械工業株式会社 東京都品川区北品川五丁目9番11号 |
考案の名称 | 枚葉印刷機の排紙装置 |
代理人 | 渡辺 勝 |
代理人 | 池田 憲保 |
代理人 | 後藤 洋介 |
代理人 | 若林 忠 |
代理人 | 伊藤 克博 |
代理人 | 石橋 政幸 |
代理人 | 池田 憲保 |
代理人 | 後藤 洋介 |
代理人 | 金田 暢之 |