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審決分類 審判    A23L
管理番号 1005270
審判番号 実用新案無効審判1998-40018  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2000-05-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-09-25 
確定日 1999-11-24 
事件の表示 上記当事者間の登録第3034514号実用新案「みたらし団子」の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 登録第3034514号実用新案の登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 I.手続の経緯・本件考案
本件登録第3034514号実用新案(以下、「本件考案」という。)は、平成8年8月8日に実用新案登録出願され、平成8年11月27日に設定の登録がなされたもので、本件考案は、その明細書及び図面の記載からみて、実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】団子本体(1)の内部に、液状のタレ(2)を注入したことを特徴とするみたらし団子。」
II.当事者の主張
(1)請求人の主張
請求人は、「実用新案登録第3034514号の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、証拠方法として下記の甲第1号証乃至甲第10号証を提出して、本件考案は、▲1▼甲第1号証に記載された考案と同一であり、実用新案法3条1項3号の規定に該当し、或いは▲2▼甲第1、6?9号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから同条2項の規定に違反してなされたものである、若しくは▲3▼本件明細書は、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないので、同法5条4項に規定する要件を具備しない実用新案登録出願に対してなされたものであるから、本件考案は、同法37条1項2号若しくは4号によって無効とすべきである旨主張している。

甲第1号証:特開平3-4748号公報
甲第2号証:被請求人側が請求人側に送付した平成9年9月19日付「申入書」
甲第3号証:請求人側が被請求人側に送付した平成9年9月29日付「回答書」
甲第4号証:被請求人側が請求人側に送付した平成10年8月28日付「申入書」
甲第5号証:請求人側が被請求人側に送付した平成10年9月8日付「回答書」
甲第6号証:特開平3-10642号公報
甲第7号証:特開昭64-5454号公報
甲第8号証:特開平3-155751号公報
甲第9号証:特開平5-184301号公報
甲第10号証:請求人の陳述書
(なお、甲第2号証乃至甲第5号証、及び甲第10号証は、審判請求の理由▲1▼に関する甲第1号証の事情説明のため提出したものである。)
(2)被請求人の主張
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め本件考案は、実用新案法3条1項3号の規定及び同条2項の規定に違反せず、また、同法5条4項に規定する要件を具備するものである旨主張している。
III.当審の判断
▲1▼実用新案法3条1項3号について
請求人が提出した本件考案の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第1号証には、その特許請求の範囲の項に、
「1 餅粉、米粉、糖分、水を主材料として成る皮の内側に、糖分を含む液状の蜜を包み込んだことを特徴とする、蜜を包んだ菓子。
2 液状の蜜が、上白糖、蜂蜜、みりん、醤油、水、澱粉を主材料としている請求項1記載の蜜を含んだ菓子。
3 液状の蜜が、妙り黒胡麻、上白糖、水、澱粉を主材料としている請求項1記載の蜜を含んだ菓子。
4餅粉、米粉、糖分、水を主原料として成る皮と、糖分及び水分を含み定形を保つ固さであると共に、糖分を皮の糖度より高くした蜜を作り、前記の蜜を前記の皮によって包み込んだ後、適宜時間放置し、糖度差によって皮の水分を蜜に浸透させて蜜を液状にすることを特徴とする、蜜を包んだ菓子の製造方法。」が、また、詳細な説明中には、
「従来より皮の中に糖分を多く含んだ餡を包んだ菓子や、米粉より成る団子の外に蜜を着けた菓子は周知であった。」(1頁右下欄6?8行)、
「液状の蜜は、たとえば、胡麻たれ状、みたらしたれ状などのように、種々の味付けとして実施できる。」(2頁左下欄1?3行)がそれぞれ記載されている。
上記「米粉より成る団子の外に蜜を着けた菓子は周知であった。」との記載によると、甲第1号証に係る「菓子」は、「団子」を包含することが明らかであるから、この「菓子」は「団子」と言い換えることができる。
これを踏まえ、本件考案と甲第1号証に記載された考案とを対比すると、前者の「団子本体」は、「米粉等を主成分」(本件明細書【0005】の項)とするものであるから、後者の「餅粉、米粉、糖分、水を主材料として成る皮」に相当し、また、前者の「タレ」は、後者の「蜜」に相当するから、(a)団子本体の内部に液状のタレを、前者では「注入したこと」であるのに対し、後者では「包み込んだこと」である点、及び、(b)前者では「みたらし団子」であるのに対し、後者では「団子」である点で一応相違している。
そこで(a)について検討するに、実用新案法は、物品の形状、構造又は組合せに係る考案を保護の対象とするものであるから、請求項に記載された方法的記載は、最終的な「物品」を特定するためのものと解される。
そうすると、本件考案に係るみたらし団子は、本件明細書「図1」の(B)に図示されたところを参酌すると、液状のタレを「注入したこと」により団子本体の内部に液状のタレが存在する構造となっていると解される。
一方、甲第1号証に係る団子は、その特許請求の範囲の請求項4に記載された「餅粉、米粉、糖分、水を主原料として成る皮と、糖分及び水分を含み定形を保つ固さであると共に、糖分を皮の糖度より高くした蜜を作り、前記の蜜を前記の皮によって包み込んだ後、適宜時間放置し、糖度差によって皮の水分を蜜に浸透させて蜜を液状にすること」という製造方法を踏まえると、団子本体の内部に液状のタレが存在する構造となっていると解される。
そうすると、両者共に「団子本体の内部に液状のタレが存在する構造」になっているものであるから、上記(a)は、相違点とはならない。
次に、(b)について検討するに、本件考案に係る「みたらし団子」は、本件明細書【0010】の「本考案のみたらし団子は、串に差されておらず、任意に一個づつ食べることができ」という記載に徴し、従来のみたらし団子(本件明細書【図3】)とはその形状を異にしていること、また、甲第1号証に係る「団子」は、甲第1号証2頁右下欄15?16行の「この菓子は一口で一個食べる程度の大きさとして形成するのが望ましい。」との記載から明らかなように、任意に一個づつ食べられる大きさであると解されることから、本件考案に係る「みたらし団子」と甲第1号証に係る「団子」とは、単なる表現上の差異があるのみで実質的に相違するところはない。
そうすると、上記(b)も、相違点とはならない。
被請求人は、▲1▼の無効理由に対し次のように反論している。
(i)「皮」とは、「物の表面」をいうのであり、従って、主材料の表面の内側となり、意味不明である。
(ii)「みたらし団子」は、数個を串に刺し、かつ、これらの表面に「タレ」をかけたものであり、この「串及び表面にかけたタレ」の概念を見落としては、本件では話にならないものである。
上記(i)について検討するに、甲第1号証の特許請求の範囲請求項4の記載によると、皮の水分を蜜に浸透させて蜜を液状にするのであるから、「皮」には、蜜を液状にする十分量の水分が予め保有されている必要がある。
そうすると、「皮」は、当然、ある程度の厚さを有すると解されるから、甲第1号証に係る「皮」は主材料自体の層と考えるのが相当である。
したがって、上記(i)は採用できない。
次に(ii)について、本件考案のみたらし団子は、「串に差されておらず、任意に一個づつ食べることができ」(本件明細書【0010】)というものであって、従来のみたらし団子(本件明細書【図3】)とはその形状を異にするものである。
そうすると、本件明細書の記載と上記(ii)の主張とは矛盾することとなり、(ii)の主張は失当である。
以上のとおり、本件考案は、甲第1号証に記載された考案であるので、実用新案法3条1項3号の規定により実用新案登録を受けることができない。
IV.むすび
したがって、その余の理由及び証拠方法について検討するまでもなく、本件考案は、実用新案法37条1項に該当し、無効にすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1999-08-11 
結審通知日 1999-08-24 
審決日 1999-09-10 
出願番号 実願平8-8726 
審決分類 U 1 111・ 113- Z (A23L)
最終処分 成立    
特許庁審判長 徳廣 正道
特許庁審判官 田中 久直
郡山 順
登録日 1996-11-27 
登録番号 実用登録第3034514号(U3034514) 
考案の名称 みたらし団子  
代理人 辻本 一義  
代理人 三原 靖雄  

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