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審決分類 審判 全部申し立て   B62D
審判 全部申し立て   B62D
管理番号 1005279
異議申立番号 異議1998-72186  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-05-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-04-24 
確定日 1999-09-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 実用新案登録第2551937号「ゴムクローラ用芯金及びゴムクローラ」の請求項1ないし3に係る実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 実用新案登録第2551937号の請求項1ないし3に係る実用新案登録を維持する。
理由 1. [手続の経緯]
本件実用新案登録第2551937号(請求項の数3、以下、「本件登録」という)は、平成2年10月18日の出願に係り、平成9年7月4日にその設定登録がなされ、その後、全請求項について実用新案登録異議の申立がオーツタイヤ株式会社よりなされて、当審より第1回目の登録取消理由を通知し、これに対して平成10年9月9日付で訂正請求がされたが、その後、当審より第2回目の登録取消理由を通知し、その通知書で指定した期間内の平成11年3月23日付で、上記平成10年9月9日付の訂正請求に代えて、新たな訂正請求(以下、単に「訂正請求」という)がされたものである。
2. [登録異議申立人の主張]
登録異議申立人は、甲第1号証として実願昭54-82873号(実開昭56-1890号)のマイクロフィルム(以下,「引用例1」という)、甲第2号証として特開平1-240384号公報(以下,「引用例2」という)、甲第3号証として実願昭63-70793号(実開平1-173091号)のマイクロフィルム(以下,「引用例3」という)、甲第4号証として特開昭62-253567号公報(以下,「引用例4」という)、甲第5号証として特開昭57-95273号公報(以下,「引用例5」という)、甲第6号証として実公昭61-8909号公報(以下,「引用例6」という)、甲第7号証として実公昭63-18555号公報(以下,「引用例7」という)及び甲第8号証として実開平2-40683号公報(以下,「引用例8」という)を提出して、
(1)本件請求項1に係る考案は、引用例1に記載された考案であり、又は引用例1に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、
(2)本件請求項2に係る考案は、引用例2に記載された考案であり、又は引用例2に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、
(3)本件請求項3に係る考案は、引用例3乃至8に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるので、本件登録は、実用新案法第3条の規定に違反して
3.[訂正の要旨]
上記訂正請求における訂正の要旨は、次の(1)?(5)のとおりである。
(1)請求項1において、
イ 実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、本件登録明細書の実用新案登録請求の範囲、請求項1の、突起を有する芯金であって」という記載を、「突起を有し、複数個をゴムクローラ本体内部の周方向に等間隔で埋設して使用する芯金であって」という記載に訂正し、
ロ 誤記の訂正を目的として、同じく、請求項1中の、「直行」を、「直交」と訂正し、
ハ 明瞭でない記載の釈明を目的として、同じく、請求項1中の、「芯金底面」を、「芯金翼部の底面」に訂正し、
ニ 実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、同じく、請求項1の、「突出形成させたことを特徴とする」という記載を、「突出形成させ、前記水平突起体の突出長さは、ゴムクローラへの埋設状態において、隣接する芯金から突出する水平突起体に対してゴムクローラ周方向視で互いに重複する長さとしたことを特徴とする」という記載に訂正し、
(2)請求項2において、
誤記の訂正を目的として、本件登録明細書の実用新案登録請求の範囲、請求項2中の、「直行」を、「直交」と訂正し、
(3)請求項3において、
誤記の訂正を目的として、本件登録明細書の実用新案登録請求の範囲、請求項3中の、「直行」を、「直交」と訂正し、
(4)考案の詳細な説明において、
「(課題を解決するための手段)」(実用新案登録公報第2頁第4欄第7行?第16行)の記載を、上記請求項1の訂正に合わせて、上記
(1)イ?ニと同様な訂正をし、
(5)考案の詳細な説明において、
「(作用)」 (実用新案登録公報第2頁第4欄第32行?第33行)の記載中、「また芯金の水平突起体が芯金翼部と並ぶ平面上に設けてあるため」を、「また芯金の水平突起体が芯金翼部と並ぶ平面上もしくはその下方となる位置に設けてあるため]に訂正しようとするものである。
4.[訂正の適否]
そこで、上記訂正が適法であるか否かを検討する。
(1)訂正の目的
上記(1)イ、二の訂正は、実用新案登録請求の範囲の記載をより限定してその内容を詳しく規定するもので、明らかに、実用新案登録請求の範囲の減縮とみることができるし、上記(1)ロ、(2)、(3)の訂正は、明らかに、誤記の訂正とみることができるし、上記(1)ハの訂正は、「水平突起体」の位置についての記載を明確にしようとするものであるから、明瞭でない記載の釈明とみることができるし、上記(4)の訂正は、上記請求項1の訂正に合わせて考案の詳細な説明を訂正しようとするものであるから、明瞭でない記載の釈明とみることができるし、上記(5)の訂正は、請求項3の記載に合わせて考案の詳細な説明の作用についての記載を訂正しようとするものであるから、明瞭でない記載の釈明とみることができる。
(2)新規事項の有無
本件登録に係る、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、上記の訂正の内容は、当該明細書または図面に記載されていない新規事項を含むものではない。
(3)拡張、変更の有無
訂正後の請求項1乃至3に係る考案も、訂正前と同じく、「ゴムクローラを局部的な横ずれが生じないものとして脱輪を防止し、クローラ外れを防止」する[ゴムクローラ用芯金」及び「ゴムクローラ」の提供を目的としているもので、実用新案登録請求の範囲を実質的に拡張したり、変更したりするものではない。
(4) 独立登録要件の適否
イ(訂正考案)
訂正後の請求項1乃至3の記載は以下のとおりである。
(i)請求項1
「左右両翼部間の中央に駆動輸との係合部及び該係合部の両側に内周側へ突出する一対の脱輪防止用の突起を有し、複数個゛をゴムクローラ本体内部の周方向に等間隔で埋設して使用する芯金であって、該係合部の両脇の少なくとも一方で、芯金の巾方向両側面のそれぞれに水平突起を芯金側面と直交する方向で且つその先端部が芯金翼部の底面と並ぶ平面上に位置するよう突出形成させ、前記水平突起体の突出長さは、ゴムクローラへの埋設状態において、隣接する芯金から突出する水平突起体に対してゴムクローラ周方向視で互いに重複する長さとしたことを特徴とするゴムクローラ用芯金。」 (以下、「訂正考案1」という)
(ii)請求項2
「左右両翼部間の中央に1駆動輪との係合部及び該係合部の両側に内周側へ突出する一対の脱輪防止用の突起を有する芯金であって、該芯金の巾方向両側面のそれぞれに於ける係合部の両脇で芯金翼部の底面側位置に肉厚部分を張出して形成し、該肉厚部に水平方向突起体を芯金側面と直交する方向に突出形成させたことを特徴とするゴムクローラ用芯金。」 (以下、「訂正考案2」という)
(iii)請求項3
「左右両翼部間の中央に1駆動輪との係合部及び該係合部の両側に内周側へ突出する一対の脱輪防止用の突起を有すると共に、該係合部の両脇の少なくとも一方で、芯金の巾方向両側面のそれぞれに芯金翼部と並ぶ平面上もしくはその下方となる位置に水平突起体を芯金側面と直交する方向へ突出させたゴムクローラ用芯金をクローラ本体内部の周方向へ等間隔に埋設すると共に、芯金翼部の外周側に多数のスチールコードを周方向へ引き揃えて埋設するほか、該芯金の埋設間隔は芯金間に於けるクローラ周方向視に於いてそれぞれの水平突起体が重複するものとしてあり、該水平突起体はクローラ本体内に埋設してあることを特徴とするゴムクローラ。」 (以下、「訂正考案3」という)
ロ(引用例の記載)
これに対して、引用例1乃至8には、それぞれ次の事項が記載されている。
(i)引用例1について
引用例1には、その図面第1図乃至第3図と共に、明細書第2頁第10行?第3頁第4行に「1はゴム製のクローラ本体で、その左右ほぼ中間位置には駆動スプロケット(図示せず)の歯が嵌入する噛合孔2・・・が列設されている。3はクローラ本体1内に埋設した芯金で、上面の左右に内転輪(図示省略)のガイド用突片4、4が形成されている。この左右両突片4、4間の間隔dは、スプロケット噛合孔2の横幅Wより広幅に設定してある(d>w)。図示の例では間隔dは横幅Wの約4倍に設定されている。5...は駆動スプロケットの位置決め用凸部で、芯金3の前後両縁にそれぞれ2個ずつ連成してある。一対の凸部5,5の間隔は噛合孔2の横幅Wとほぼ同じで、且つ噛合孔2の左右両側に位置するようになっている。」と記載され、同明細書第3頁第17行?第4頁第1行に「また駆動スプロケットは噛合孔2に噛合するとともに、凸部5,5で左右の位置決めがされるから、互いに左右に位置ずれすることがない。」と記載され、同明細書第4頁第9行?第14行に「更に芯金には位置決め用凸部が形成されていて、これが1駆動スプロケットの左右のずれを抑止するから、スプロケットによる駆動が確実になされ、強力な走行が可能となるばかりか、スプロケット噛合孔が左右に拡がることがなくクローラ本体の傷みを最少限に抑えられる。」と記載され、同明細書第4頁第16行?第17行に「第1図はこの考案によるクローラの断面図、第2図はその平面図、第3図は芯金の斜視図である。」と記載されている。
(ii)引用例2について
引用例2には、その図面第2図、第4図と共に、第2頁左上欄第8行?第10行に「本図面で6は芯金、7はゴムクローラ本体内でその長さ方向に埋設してなるスチールコードである。」と記載され、同第2頁左下欄第14行?右下欄第6行に「第4図は本発明に係るゴムクローラ用芯金10を示すものであって、10e及び10e’は左右翼部、10a及び10a’は中央部位置で一定対向間隔に立設させた角部であり、該構成は従来のものと変わりがないが、本発明では各角部10a、10a’の外側壁面の凡そ中間部位置に肩段10b、10b’を一体形成し、該肩段10b、10b’は角部10a、10a’頂面長さより長くなして角部側面より前後に一定長の張り出し部p、p’が形成されるようになされる。ここに肩段10b、10b’及びその張り出し部p.p’上面はほぼ平坦で且つ左右翼部10e及び10e’位置より一段高くなさしめてある。」と記載され、同第2頁右下欄第8行?第11行に「しかして、該構成の芯金10は第5図A.Bに示すごとく肩段10b、10b’及びその張り出し部p.p’がゴムクローラ4内周面より一定高さ突出するようにして埋設する。」と記載され、同3頁右上欄第11行?第16行に「しかして、転輸3が肩段 10b、10b’の前後張り出し部p、p’に位置する時は転輪下底面3cが肩段10b、10b’と当接する。従って、隣り合う角部間においても肩段10b、10b’の張り出し部p.p’があるため転輪の落ち込みが減少し安定走行と振動の減少するものとなる。」と記載され、同第4頁左下欄第10行?第11行に「第2図A、Bは従来装置を示すもの、」と記載されて、同第4頁左下欄第12行?第14行に1第4図は本発明に係るゴムクローラ用芯金を示すもの、」と記載されている。
(iii)引用例3について
引用例3には、その図面第2図及び第3図と共に、明細書第5頁第15行?第6頁第11行に「また、履体9)は、第2図及び第3図に示すように、前後に一定間隔を開けて多数配列し、同芯金(11)を弾性ゴム体(12)により被着して無端帯状としている。(14)は履帯(9)の中央部に設け、駆動輸(7)の歯が係合する係合孔である。芯金(11)は、芯金本体(11a)と、同芯金本体(11a)の中央部より左右に対向させて上方へ立上げた履体案内突起(11b)(11b)とを一体成形してなり、芯金本体(11a)の左右側中途部に前後方向に突出状の前後左右突出部(11c)(11c)(11’c)(11’c)を形成し、前左右突出部(11c)(11c)に平面視半円弧凸状の凸部(11d)(11d)を形成すると共に、後左右突出部(11’c)(11’c)に平面視半円弧状の凹部(11’d)(11’d)を形成している。そして、前後に隣接する各芯金(11)の凹部(11d)(11’d)と凸部(11d)(11d)とを嵌合させて、全ての芯金(11)を前後方向に接続している。」と記載され、同明細書第7頁第16行?第17行に「第2図は、同履体構造を示す一部平面図。第3図は、同履帯構造を示す一側面図。」と記載されている。
(iv)引用例4乃至6について
引用例4乃至6には、ゴムクローラにおいて「スチールコード」を埋設すること、また、そのスチールコードが屈曲中心になることが記載されている。
(v)引用例7及び8について
引用例7及び8には、芯金の転動輪転動部を、互いに重複させて横ずれを防止する技術が記載されている。
ハ(対比.判断)
(i)訂正考案1について
引用例1に記載された考案も芯金3に凸部5,5を形成した点では訂正考案1と一致しているが、この引用例1に示されている芯金3に形成された凸部5,5の先端部は、図面第1図及び第3図の記載からみて、明らかに、芯金3の翼部の底面の上方に位置するように形成されているので、この引用例1には、訂正考案1における水平突起体の「先端部が芯金翼部の底面と並ぶ平面上に位置するよう突出形成させ」た点が記載されているとはいえない。また、この点については他の引用例にも記載されていないし、この点を示唆するものもない。
そして、訂正考案1は、上記の点の構成としたことによって、訂正考案1のゴムクローラ用芯金をスチールコード層を有するゴムクローラに埋設した場合に、水平突起体をスチールコード層に近い位置とすることができ、ゴムクローラが内周側又は外周側へ湾曲した場合においても水平突起体の重複間隔に大巾な変動が生じないものとなり、このためゴムクローラの走行及び作業に支障を生じない、また、水平突起体が大きな変動を起こさないことから、ゴムへの疲労、亀裂等の発生が防止され耐久性も良好なゴムクローラとなる、という顕著な効果を奏するものである。
よって、訂正考案1は、引用例1に記載された考案であるとも、引用例1に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるともいえない。
(ii)訂正考案2について
引用例2に記載された考案もゴムクローラ用芯金10に張り出し部p、p’を形成した点では訂正考案2と一致しているが、この引用例2に示されているゴムクローラ用芯金10に形成された張り出し部p.p’は、第2頁左下欄第14行?右下欄第6行の特に[その張り出し部p、p’上面はほぼ平坦で且つ左右翼部10e及び10e’位置より一段高くなさしめてある。」、同第2頁右下欄第8行?第11行の特に「その張り出し部p、p’がゴムクローラ4内周面より一定高さ突出するようにして埋設する。」、同3頁右上欄第111行?第16行及び図面第4図の記載からみて、明らかに、ゴムクローラ用芯金10の左右翼部10e及び10e’の上方に形成されており、しかも第2頁左上欄第8行?第10行及び図面第2図に従来装置として記載された芯金6の翼部の底面側位置に張出して形成された肉厚部に上記張り出し部p、p’を突出形成することを示唆する記載もないので、この引用例2には、訂正考案2における「芯金翼部の底面側位置に肉厚部分を張出して形成し、該肉厚部に水平方向突起体を芯金側面と直交する方向に突出形成させた」点が記載されているとはいえない。また、この点の構成は他の引用例にも記載されていないし、他に示唆するものもない。
そして、訂正考案2は、上記の点の構成としたことによって、訂正考案2のゴムクローラ用芯金をスチールコード層を有するゴムクローラに埋設した場合に、水平突起体をスチールコード層に近い位置とすることができ、ゴムクローラが内周側又は外周側へ湾曲した場合においても水平突起体の重複間隔に大巾な変動が生じないものとなり、このためゴムクローラの走行及び作業に支障を生じない、又、水平突起体が大きな変動を起こさないことから、ゴムへの疲労、亀裂等の発生が防止され耐久性も良好なゴムクローラとなる、という顕著な効果を奏するものである。
よって、訂正考案2は、引用例2に記載された考案であるとも、引用例2に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるともいえない。
(iii)訂正考案3について
引用例3に記載された考案も芯金本体(11a)に前後左右突出部(11c)(11c)(11’c)(11’c)を形成した点では訂正考案3と一致しているが、この引用例3に示されている前後左右突出部(11c)(11c)(11’c)(11’c)は、図面第2図及び第3図の記載からみて、明らかに、芯金本体(11a)の翼部の上方となる位置に突出させているので、この引用例3には、訂正考案3における「芯金翼部と並ぶ平面上もしくはその下方となる位置に水平突起体を芯金側面と直交する方向へ突出させた」点が記載されているとはいえない。
また、引用例4乃至8をはじめ、他の引用例にも上記の点は記載されていない。
そして、訂正考案3は、上記の点の構成としたことによって、水平突起体をクローラ本体埋設区域内に設けてスチールコード層に近い位置としてあるため、ゴムクローラが内周側又は外周側へ湾曲した場合においても水平突起体の重複間隔に大巾な変動が生じないものとなり、このためゴムクローラの走行及び作業に支障を生じない、又、水平突起体が大きな変動を起こさないことから、ゴムへの疲労、亀裂等の発生が防止され耐久性も良好なゴムクローラとなる、という顕著な効果を奏するものである。
よって、訂正考案3は、引用例3乃至8に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるとはいえない。
更に、訂正考案1乃至3について、本件登録に係る出願の際、独立して実用新案登録を受けることができないとする、登録異議申立人の主張とは異なる他の理由も発見しない。
(5)訂正の適法性
上記(1)?(4)で検討したところによれば、上記訂正は、平成6年法律第116号附則第9条第2項により準用する、特許法第120条の4第2項第1号乃至第3号に掲げる事項を目的とするものであり、また同じく特許法第120条の4第3項で更に準用され、平成6年法律第116号附則第6条第1項の規定により適用される、同法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するものである。
5. 「むすび]
上記4.(5)で述べたとおり、上記訂正請求は適法なものであるので、本件請求項1乃至3に係る考案は、訂正後の請求項1乃至3に記載された事項によって特定されるものと認める。
そして、上記4.(4)で述べたように、訂正後の請求項1乃至3の考案に係る登録は、登録異議申立の理由および証拠によっては、取り消すことはできないし、また、他に取り消すべき理由を発見しないものである。
よって、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
ゴムクローラ用芯金及びゴムクローラ
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 左右両翼部間の中央に駆動輸との係合部及び該係合部の両側に内周側へ突出する一対の脱輪防止用の突起を有し、複数個をゴムクローラ本体内部の周方向に等間隔で埋設して使用する芯金であって、該係合部の両脇の少なくとも一方で、芯合の巾方向両側面のそれぞれに水平突起体を芯金側面と直交する方向で且つその先端部が芯金翼部の底面と並ぶ平面上に位置するよう突出形成させ、前記水平突起体の突出長さは、ゴムクローラへの埋設状態において、隣接する芯金から突出する水平突起体に対してゴムクローラ周方向視で互いに重複する長さとしたことを特徴とするゴムクローラ用芯金。
【請求項2】 左右両翼部間の中夫に駆動輸との係合部及び該係合部の両側に内周側へ突出する一対の脱輪防止用の突起を有する芯金であって、該芯金の巾方向両側面のそれぞれに於ける係合部の両脇で芯金翼部の底面側位置に肉厚部分を張出して形成し、該肉厚部に水平方向突起体を芯金側面と直交する方向に突出形成させたことを特徴とするゴムクローラ用芯金。
【請求項3】 左右両翼部間の中央に駆動輸との係合部及び該係合部の両側に内周側へ突出する一対の脱輪防止用の突起を有すると共に、該係合部の両脇の少なくとも一方で、芯合の巾方向両側面のそれぞれに芯金翼部と並ぶ平面上もしくはその下方となる位置に水平突起体を芯金側面と直交する方向へ突出させたゴムクローラ用芯金をクローラ本体内部の周方向へ等間隔に埋設すると共に、芯金翼部の外周側に多数のスチールコードを周方向へ引き揃えて埋設するほか、該芯金の埋設間隔は芯金間に於けるクローラ周方向視に於いてそれぞれの水平突起体が重複するものとしてあり、該水平突起体はクローラ本体内に埋設してあることを特徴とするゴムクローラ。
【考案の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
本考案は、移動式作業機械の足回りに装着するゴムクローラに関する。
(従来の技術)
従来、移動式作業機械の足回りには専ら鉄クローラが使用されていたが、近年ゴムクローラも使用されるようになった。
第9図は従来のゴムクローラ16が遊動輪19に巻回した部分を示すものであって、11は芯金、12、13及び14は芯金11のそれぞれ翼部、脱輪防止用の突起、及び駆動輸との係合部であり、17はスチールコード、18は係合孔、19cは遊動輸19の中央輪部であって、図に示すように、中央輪部19cが突起13、13間を進行して脱輪が防止される構成としてある。
(考案が解決しようとする課題)
従来のゴムクローラは鉄クローラと比較してクローラ外れを生じやすいことが欠点であり、この原因は主として段差のある路面作業場で旋回する時にゴムクローラに局部的な捩れが生じて脱輪するためである。第10図は脱輪の状態を示すものであって、隣接する芯金11、11間で横ずれが生じて遊動輪19の中央輪部19cが角部13に乗り上げて脱輪してクローラ外れとなるのである。
この問題を解決するため、ゴムクローラの巾方向の剛性を増大させる手段として、(イ)芯金巾を大としてゴムクローラ内部における芯金の埋設間隔を小とすると、巻回部において芯金巾端位置が角となってゴムクローラが多角形状を呈するものとなり、屈曲疲労大となって耐久性の低いものとなるのであり、(ロ)ショートピッチのゴムクローラ(芯金間隔を従来のゴムクローラのそれの半分として、これに適合するように設計した仲狭の芯金を埋設したゴムクローラ)とすると、これは従来のゴムクローラよりも芯金の埋設間隔が小となって脱輪防止に優れたものとなり、しかも耐久性の問題のないものとなるのであるが、まだ完全な手段とは言えないのであって、大型建設機械においてはなおクローラ外れが生じるのである。
ところで実願昭63-70793号(実開平1-173091号)の考案は、芯金(11)の覆帯案内突起(11b)の外側に芯金本体(11a)よりも一段高く形成した前後左右突出部(11c、11’c)に凸部(11d)及び凹部(11’d)を設け、覆帯(9)内の前後に隣接する各芯金(11)の凹部(11’d)と凸部(11d)を嵌合させて、芯金相互の横ずれを規制して脱輪を防止するものである。
しかしながら該考案によると、上記凹部及び凸部の嵌合部分が覆帯の内周面付近に位置するために、覆帯が駆動輪や従動輪へ巻回する部分ではかなり圧縮されるものとなり、このため該嵌合部分に於ける凹部及び凸部の重複間隔が履帯の平坦部(駆動輪と従動輪間の部分)と巻回部でかなり変動ずるものとなること、また上記横ずれが生じる際には芯金相互の捩れによる上下方向のずれも生じており、且つ該上下ずれは芯金中央では零であるが左右端部へ離れるほど大となるため、上記嵌合部分位置でばかなり大きく上下にずれるものとなること、等の問題がある。
本考案は上記課題を解決しようとするものであって、ゴムクローラを局部的な横ずれが生じないものとして脱輪を防止し、クローラ外れを防止するものである。
(課題を解決するための手段)
本考案の特徴とする芯金は、左右両翼部間の中央に駆動輪との係合部及び該係合部の両側に内周側へ突出する一対の脱輪防止用の突起を有し、複数個をゴムクローラ本体内部の周方向に等間隔で埋設して使用する芯金であって、該係合部の両脇の少なくとも一方で、芯金の巾方向両側面のそれぞれに水平突起体を芯金側面と直交する方向で且つその先端部が芯金翼部の底面と並ぶ平面上に位置するよう突出形成させ、前記水平奨起体の突出長さは、ゴムクローラへの埋設状態において、隣接する芯金から突出する水平突起体に対してゴムクローラ周方向視で互いに重複する長さとすることであり、この際上記水平突起体を係合部両脇位置の芯金翼部底面側に肉厚部分を張出して形成し、該肉厚部に水平突起体を上記同様に突出形成させることができる。また、本考案は上記構成の芯金をゴムクローラ本体内部の周方向へ等間隔に埋設するに際し、芯金翼部の外周側に多数のスチールコードを周方向へ引き揃えるほか、上記芯金の埋設間隔を埋設芯金間に於けるクローラ周方向視に於いてそれぞれの水平突起体が重複するものとなる関係にゴムクローラ本体内に埋設するものとなすゴムクローラを提供することにある。
このさい上記芯金の巾方向両側面のそれぞれにおける該係合部の両脇で芯金翼部の少し下方となる底面側位置に肉厚部分を形成し、上記水平突起体は該肉厚部分に取り付けしめた構成をとても良い。
(作用)
本考案によるゴムクローラは、前記のような横ずれが生じる状態となっても、クローラ本体内部において隣接する芯金のそれぞれの水平突起体が巾方向に衝突して横ずれが生じないため、脱輪が生じない。
また芯金の水平突起体が芯金翼部と並ぶ平面上もしくはその下方となる位置に設けてあるため、水平突起体の埋設位置がスチールコード層に近いものとなり、ゴムクローラが内周層又は外周層へ湾曲した場合に於いても水平突起体は好適な重複間隔を保持するほか、水平突起体周囲のゴムの変形もないため、ゴムへの亀裂などが発生ぜず、このため走行及び作業に問題を生じない。
また、芯金翼部の少し下方となる底面側位置に肉厚部分を形成し、水平突起体を該肉厚部分に取り付けしめると、よりスチールコードに近づくこととなって上記作用が一層増す。
(実施例)
第1図は本考案の芯金の第1実施例の斜視図であって、1は芯金、2は脱輪防止用の突起、3は駆動輪との係合部、4は翼部、5は水平突起体であり、図に示すように芯金長さ方向中央に設けた係合部3の両側面の両脇に、水平突起体5、5...を芯金巾方向に突設してある。
第2図A、B及びCは本実施例のそれぞれ底面図、巾方向側面図及び長さ方向側面図であり、同図Dは図Aに示す円aの部分拡大図であって、本実施例に於ける芯金巾方向両側面のそれぞれに設けた水平突起体のそれぞれの位置関係は、図A及びDに示すように、側面Sの水平突起体5、5のそれぞれの隣に二点鎖線で示す仮想位置5’、5’と、側面S’の水平突起体5、5とが正対称(芯金中心に対して対称の位置関係)としてあり、また図B及びCに示すごとく、係合部3及びその両脇の底面側を肉厚として、水平突起体5をなるべく底面側に位置せしめる構成としてある。
第3図A及びBは本実施例を埋設したゴムクローラ6を示すそれぞれ平面図及び断面図であり、図Aに示すごとく、隣接する芯金1、1間に於いて対向する水平突起体5、5を周方向視重複させてある(重複間隔d)。このため芯金間に巾方向の外力が加わった場合においても水平突起体5、5が衝突して横ずれが生じない。また水平突起体5は係合部の脇に設けてあり、スチールコード7層の埋設域と重複しないものとしてある。同図Bに示すごとく、水平突起体5をなるべく底面側としてあるためスチールコード7層に近い埋設位置となるのであり、このためゴムクローラが内周側又は外周側へ湾曲した場合においても水平突起体の重複間隔に大巾な変動が生じないものとなるのである。
第4図A及びBは水平突起体の重複間隔について説明するものであって、図Aは駆動輪又は遊動輪への巻回部において内周側に凹に湾曲した状態を示すものであり、湾曲部Uにおいてゴムクローラはスチールコード層を中心として内周側は圧縮され外周側は伸長されるものとなるのであり、しかもスチールコード層から内周側に離れるほど圧縮率が大となり外周側に離れるほど伸張率が大となるのであり、図において芯金突起2の頂面2’は内周側に離れているため平坦部Hにおける頂面間隔tは湾曲部Uにおいては0となるのであるが、水平突起体5はスチールコード層に近いため平坦部における重複間隔dは湾曲部ではd’となって僅かに変動するのみであり、一方図Bは路面の突起物Gを踏んでゴムクローラが部分的に外周側に凹に湾曲した現象(中折れ現象)を示すものであり、この場合も湾曲部U’における重複間隔はd”となって僅かに変動するのみで依然重複状態を保つのであり、従っていずれの場合も水平突起体の好適な重複間隔が保持されるものとなり、ゴムクローラの走行及び作業に支障を生じない。なお図に於いて、水平突起体はいずれもスチールコード層よりも内周側となっているが、本考案はこれに限定されるものではなく、水平突起体はスチールコード層の外周側に位置させることもできる。
第5図A及びBは本考案の第2及び第3実施例における水平突起体の重複状態を示すものであり、図Aに示す第2実施例においては係合部の両側面に設けた水平突起体5・・・のそれぞれは正対称となる位置としてあり、即ち両側面が同一構成としてあるため生産行程に於いて芯金の並べ方についての間違いを生じることがない。また同図において芯金1a及び1a’がそれぞれW及びW’方向へ横ずれする場合には該芯金間においては水平突起体が衝突するものとはならないが、芯金1a’及び1a”間においては衝突するのであり、このため局部的な横ずれは生じない。図Bに示す第3実施例においては、一方の水平突起体5が相対する2個の水平突起体5、5間で挟持される構成としてあるため横ずれが完全に防止される。
第6図A、B及びCはそれぞれ第4、第5及び第6の他の実施例を示すものであって、水平突起体の各先端に同一方向の鉤部5f或は対峠する鉤部5f’を設けたものであり、それぞれ図に示す如く芯金を離間する方向に外力が加わった場合には、鉤部5fまたは両鉤部5f’が引っかかって芯金の離間及び剥離を防止するため耐久性向上となる。
本考案は以上の実施例に限定されるものではなく、第7図に示すごとく、係合部の一方の脇にのみ水平突起体を設けたものでも良いのであり、更に第8図に示すごとく、2種類の芯金1g及び1hをゴムクローラ本体内に交互に埋設しても良いのである。
(考案の効果)
芯金の係合部の脇に巾方向に突出する水平突起体を設け、これをゴムクローラ本体内部に、芯金間において対向する水平突起体が重複する間隔に埋設したため、ゴムクローラに横ずれを生じさせるような外力が加わった場合でも、ゴムクローラ本体内部において重複する水平突起体が衝突して横ずれが生じないため、脱輪が生じないものとなってクローラ外れが大いに防止される。この場合、水平突起体を係合部の脇に設けてスチールコード層と重複しないものとしてあるため、ゴムクローラの走行に支障を生じない。
水平突起体をクローラ本体埋設域内に設けてスチールコード層に近い位置としてあるため、ゴムクローラが内周側又は外周側へ湾曲した場合においても水平突起体の重複間隔に大巾な変動が生じないものとなり、このためゴムクローラの走行及び作業に支障を生じない。
また、スチールコード層に近い位置では水平突起体が大きな変動を起こさないことから、ゴムへの疲労、亀裂等の発生が防止され耐久性も良好なゴムクローラとなった。
【図面の簡単な説明】
第1図は本考案による芯金の第1実施例の斜視図、第2図A、B及びCは第1実施例の芯金のそれぞれ底面図、巾方向及び長さ方向側面図であって同図Dは図Aに於げる円a部分の拡大図であり、第3図A及びBは第1実施例の芯金を埋設したゴムクローラのそれぞれ平面図及び側面図、第4図A及びBは湾曲部における水平突起体の重複間隔について説明するもの、第5図A及びBは本考案による芯金のそれぞれ第2及び第3実施例を示すもの、第6図A、B及びCは本考案による芯金のそれぞれ第4、第5、第6実施例を示すもの、第7図及び第8図は何れも本考案による芯金の更に別の実施例を示すもの、第9図及び第10図は従来例を示すものである。
16....従来のゴムクローラ、 11....芯金
12....翼部、 13....突起、 14....係合部、
17....スチールコード、 18....係合孔
19...一遊動輪、 19c....中央輪、
1....(本考案の)芯金、 2....突起、 3....係合部、
4....翼部、 5....水平突起体、
6....(本考案の芯金を埋設した)ゴムクローラ、
7....スチールコード、 8....係合孔、
訂正の要旨 「訂正の要旨」
(1)請求項1において、
イ 実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、本件登録明細書の実用新案登録請求の範囲、請求項1の、「突起を有する芯金であって」という記載を、「突起を有し、複数個をゴムクローラ本体内部の周方向に等間隔で埋設して使用する芯金であって」という記載に訂正し、
ロ 誤記の訂正を目的として、同じく、請求項1中の、「直行」を、「直交」と訂正し、
ハ 明瞭でない記載の釈明を目的として、同じく、請求項1中の、「芯金底面」を、「芯金翼部の底面」に訂正し、
ニ 実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、同じく、請求項1の、「突出形成させたことを特徴とする」という記載を、「突出形成させ、前記水平突起体の突出長さは、ゴムクローラへの埋設状態において、隣接する芯金から突出する水平突起体に対してゴムクローラ周方向視で互いに重複する長さとしたことを特徴とする」という記載に訂正し、
(2)請求項2において、
誤記の訂正を目的として、本件登録明細書の実用新案登録請求の範囲、請求項2中の、「直行」を、「直交」と訂正し、
(3)請求項3において、
誤記の訂正を目的として、本件登録明細書の実用新案登録請求の範囲、請求項3中の、「直行」を、「直交」と訂正し、
(4)考案の詳細な説明において、
「(課題を解決するための手段)」(実用新案登録公報第2頁第4欄第7行?第16行)の記載を、上記請求項1の訂正に合わせて、上記(1)イ?ニと同様な訂正をし、
(5)考案の詳細な説明において、
「(作用)」(実用新案登録公報第2頁第4欄第32行?第33行)の記載中、「また芯金の水平突起体が芯金翼部と並ぶ平面上に設けてあるため」を、「また芯金の水平突起体が芯金翼部と並ぶ平面上もしくはその下方となる位置に設けてあるため」に訂正する。
異議決定日 1999-08-16 
出願番号 実願平2-109474 
審決分類 U 1 651・ 121- YA (B62D)
U 1 651・ 113- YA (B62D)
最終処分 維持    
前審関与審査官 水谷 万司  
特許庁審判長 神崎 潔
特許庁審判官 鈴木 久雄
井口 嘉和
登録日 1997-07-04 
登録番号 実用登録第2551937号(U2551937) 
権利者 福山ゴム工業株式会社
広島県福山市松浜町3丁目1番63号
考案の名称 ゴムクローラ用芯金及ゴムクローラ  
代理人 村社 厚夫  
代理人 今城 俊夫  
代理人 中村 稔  
代理人 竹内 英人  
代理人 中村 稔  
代理人 安田 敏雄  
代理人 竹内 英人  
代理人 大塚 文昭  
代理人 今城 俊夫  
代理人 村社 厚夫  
代理人 小川 信夫  
代理人 小川 信夫  
代理人 宍戸 嘉一  
代理人 大塚 文昭  
代理人 宍戸 嘉一  

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