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審決分類 審判 全部申し立て   F16C
審判 全部申し立て   F16C
管理番号 1006257
異議申立番号 異議1998-73908  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-06-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-08-04 
確定日 1999-11-01 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 実用新案登録第2561775号「転がり軸受の保持器」の請求項1ないし4に係る実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 実用新案登録第2561775号の請求項1ないし3に係る実用新案登録を維持する。
理由 1.手続の経緯
本件実用新案登録第2561775号考案は、平成4年3月31日に出願され、平成9年10月17日に設定登録がなされ、その後、実用新案登録異議申立人(以下、申立人という)・杉山 元より実用新案登録異議の申立てがなされ、当審において取消理由通知及び審尋がなされ、その指定期間内である平成11年1月19日に訂正請求が、同じく平成11年1月20日に回答書の提出が各々なされ、訂正拒絶理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年8月3日に意見書の提出がなされたものである。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
訂正請求書における訂正の内容は、
訂正事項aとして 【実用新案登録請求の範囲】の欄の請求項1?4の記載を
【請求項1】保持器ポケットの中心を楕円のピッチ曲線上に位置させると共に、転動体とポケット内面との間に最小隙間を確保してなる転がり軸受の保持器。
【請求項2】前記楕円の長径が転動体の中心が通る公転軌道円の直径よりも長く、前記楕円の短径が前記公転軌道円の直径よりも短い請求項1記載の転がり軸受の保持器。
【請求項3】等間隔で形成した複数のポケットを有し、その内2つのポケットの中心を前記楕円とその長径軸との交点に配置し、別の2つのポケットの中心を前記楕円とその短径軸との交点に配置してなる請求項2記載の転がり軸受の保持器。
のように訂正し、
訂正事項aに合わせて、【考案の詳細な説明】の欄を訂正事項b、訂正事項c及び訂正事項dのように訂正するものである。
(3)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び実用新案登録請求の範囲の拡張又は変更の存否
上記訂正請求における訂正事項aは、実用新案登録請求の範囲の減縮に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に実用新案登録請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
また、訂正事項b、c及びdは上記訂正事項aに合致するように明細書を訂正したものであって、明りょうでない記載の釈明に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に実用新案登録請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(4)独立実用新案登録要件の判断
訂正明細書の請求項1?3に係る考案は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものである。
これに対して、当審における取消理由通知及び訂正拒絶理由通知で引用した実願平2-76775号(実開平4-34512号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という)には、
「第2図は第2実施例を示している。ここで、ポケットには次に説明する3種類がある。すなわち、転動体a?hのピッチ円径Aと同一のピッチ円径を有するポケット4aと、前記ピッチ円径Aよりも小さいピッチ円径Bのポケット4bと、前記ピッチ円径Aよりも大きいピッチ円径Cのポケット4cである。ここで、ポケット4aには転動体b,d,f,hが保持され、ポケット4bには転動体a,eが保持され,さらにポケット4cには転動体c,gが保持されている。
これにより、ポケット4aの内面と転動体b,d,f,hとの隙間は、半径方向両側において同一寸法を有しており、またポケット4bの内面と転動体a,eとの隙間は、半径方向内側において大きくかつ同外側においてゼロになっている。さらにポケット4cの内面と転動体c,gとの隙間は、半径方向内側においてゼロでありかつ同外側において大きくなっている。
このため、ポケット4bの位置においては、転動体a,eは矢印のように保持器3を径方向外側に付勢する作用をし、ポケット4cの位置においては、転動体c,gは矢印のように保持器3を径方向内側に付勢する作用をする。一方、ポケット4aの位置においては、転動体b,d,f,hによっては保持器3は径方向の内外いずれにも付勢されない。その結果、保持器3の遊び量がゼロになり前記第1実施例と同じ作用効果を奏する。」(第5頁末行?第7頁6行)と記載されている。
そこで、訂正明細書の各請求項に係る考案と引用例に記載された考案とを比較すると、訂正明細書の各請求項に係る考案は「転動体とポケット内面との間に最小隙間を確保してなる」のに対して、引用例に記載された考案は「転動体とポケット内面との間に隙間がゼロの部分がある」点で少なくとも相違する。
上記相違点について検討すると、引用例の「転動体は矢印のように保持器を径方向に付勢する」旨の記載からみて、引用例に記載された考案の「隙間がゼロの部分」に「最小隙間」を許容させることはできない。
してみると、訂正明細書の各請求項に係る考案は、前記各引用例に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるとはいえない。
よって、訂正明細書の各請求項に係る考案は、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができない考案とすることはできない。
(5)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第10条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第2項及び同条第3項でさらに準用する同法第126条第2?4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.実用新案登録異議の申立てについての判断
申立人は、証拠方法として、甲第1号証(上記引用例1)を提示して、本件請求項1?4に係る考案は、甲第1号証に記載された考案と同一であるか甲第1号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第1項第3号又は同法第2項の規定に違反してなされたものであり、その実用新案登録は取り消されるべきである旨主張している。
以下、上記主張について検討すると、
前記独立実用新案登録要件の判断に記載したのと同様な理由で上記訂正明細書のとおり訂正された本件請求項1?3に係る考案は、甲第1号証に記載された考案と同一であるといえないばかりでなく甲第1号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるともいえない。
したがって、実用新案登録異議申立ての理由および証拠方法によっては、本件実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
転がり軸受の保持器
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 保持器ポケットの中心を楕円のピッチ曲線上に位置させると共に、転動体とポケット内面との間に最小隙間を確保してなる転がり軸受の保持器。
【請求項2】 前記楕円の長径が転動体の中心が通る公転軌道円の直径よりも長く、前記楕円の短径が前記公転軌道円の直径よりも短い請求項1記載の転がり軸受の保持器。
【請求項3】 等間隔で形成した複数のポケットを有し、その内2つのポケットの中心を前記楕円とその長径軸との交点に配置し、別の2つのポケットの中心を前記楕円とその短径軸との交点に配置してなる請求項2記載の転がり軸受の保持器。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は転がり軸受の保持器に関する。
【0002】
【従来の技術】
転がり軸受の複数の転動体は内外輪間に挿入されたリング状の保持器のポケット内に収容され、転動体相互の間隔が保持器により規制されるようになっている。
【0003】
ところで、図5に示す如く従来の保持器1では各ポケット2の中心3が真円形に設計されたポケットピッチ円4上に等間隔で配置されている。一方ポケット2の内面と転動体との間にはポケット隙間と呼ばれる小さな隙間が形成されており、このため各転動体は完全な等配状態を維持しつつ公転するのではなく、実際はポケット隙間の範囲内である転動体は公転方向で進みを生じ、ある転動体は遅れを生じている。従って保持器は進んだ転動体と遅れた転動体とによって円周方向でごく軽く拘束された状態で公転していることになる。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
しかし、潤滑剤の消耗等が原因で保持器と転動体との摩擦係数が増大すると、保持器に大きな摩擦力が作用して保持器が転動体と衝突しながら不規則に動く現象を生ずる。このとき転動体は徐々に等配状態に近付いていき、転動体による保持器の拘束度が減少して保持器の自由度が増大する。保持器の自由度が増大すると保持器の振れ回り現象を生じて騒音を発生させる原因となる。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本考案は前記課題を有効に解決すべく創案するに至ったものであって、保持器ポケットの中心を楕円のピッチ曲線上に位置させると共に、転動体とポケット内面との間に最小隙間を確保したものである。
【0006】
【作用】
保持器ポケットの中心が真円のポケットピッチ円上にないため、ポケットとその内部に保持された転動体との間隙が従来よりも狭いポケットが所々に存在することになり、この狭いポケットの転動体に対しては保持器の自由度が限定されるため、保持器が転動体に衝突する力が弱められ、ひいては転動体を等配状態に近付ける作用が弱められて保持器騒音が有効に抑制される。
【0007】
【実施例】
以下に本考案の一実施例を図に基づき説明する。
【0008】
図1は本考案に係る転動体案内型の保持器10を示す。図示する如く保持器10は8つのポケット11(11a?11h)を45°の等間隔で有している。これらポケット11の内面は凹球面に形成され、その中心12は、長径がD1、短径がD2の楕円13の線(ピッチ曲線)上に配置されている。ここでポケット11に保持される転動体の中心が移動する軌跡を公転軌道円と呼ぶと、前記長径D1は公転軌道円の直径より長く、短径D2は公転軌道円の直径より短くされている。そしてポケット11aと11eの中心は楕円13と長径軸との交点に配置され、ポケット11cと11gの中心は楕円13と短径軸との交点に配置されている。
【0009】
図2(a)?(c)はポケット11a,11bおよび11cを拡大して示したもので図2(a)ではポケット11aの中心12が公転軌道円14から半径方向外方に少し変位し、図2(b)ではポケット11bの中心12が公転軌道円14から半径方向内方にごくわずか変位し、図2(c)ではポケット11cの中心12が公転軌道円14から半径方向内方に少し変位している状態を示している。ポケット11中心12の変位量は図1で上下左右の対称位置にあるポケットで同じであるから、ポケット11aと11e、ポケット11b,11d,11fおよび11h、そしてポケット11cと11gはそれぞれ中心12が公転軌道円14から同じ量だけ変位している。なお図2で15は転動体、16は内輪、17は外輪である。
【0010】
本願考案者らは本考案の作用効果を確認すべく、次に述べる条件下で実験を行なった。
【0011】
[実験に使用した軸受]
内外輪および転動体: ラジアル玉軸受No.6204の内外輪および転動体(個数8)
保持器1 : 楕円13の半径真円度約25μm
保持器2 : 楕円13の半径真円度約50μm
軸受のグリースA : 基油粘度28cSt、稠度290
軸受のグリースB : 基油粘度125cSt、稠度205
実験の結果は図3および4に示す。図3のグリースA使用の実験はラジアル軸受の通常使用時の潤滑条件を設定したものであるが、グリースB使用の方はそれに比べると保持器騒音抑制に関してやや苛酷な潤滑条件を設定したものといえる。図3から明らかなように、楕円13の半径真円度が大きい保持器2の方が保持器騒音の抑制に有効であり、グリースB使用の苛酷な条件下でも3000rpm程度まで優秀な保持器騒音抑制効果を発揮することが分かった。また図4から明らかなように、半径真円度が大きい保持器2の方が転動体の等配を乱す作用が大きい。このことから楕円13の半径真円度を大きくして転動体の等配を乱すことが保持器騒音を抑制することに重要であることが分かる。もっとも転動体とポケット内面との最小隙間はある程度確保しないといけないので、半径真円度の大きさには一定の上限がある。
【0012】
以上、本考案の一実施例につき説明したが、本考案は前記実施例に限定されることなく種々の変形が可能である。
【0013】
【考案の効果】
本考案は前述の如く、保持器ポケットの中心を楕円のピッチ曲線上に位置させると共に、転動体とポケット内面との間に最小隙間を確保したので、転動体とポケット内面との隙間が比較的狭いポケットが所々に配置されることになり、この狭いポケットによって保持器の自由度を減少させることができるから、転動体に対する保持器の衝突カが弱められて、転動体が等配状態に近付き難くなる。従って、潤滑剤の消耗等により転動体と保持器との摩擦力が増大しても、保持器騒音を有効に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本考案に係る転がり軸受の保持器の概略正面図。
【図2】
(a),(b)および(c)はポケットの拡大図。
【図3】
本考案の保持器の騒音抑制効果の試験結果を示す図。
【図4】
本考案の保持器における転動体の等配状態を示す図。
【図5】
従来の転がり軸受の保持器の概略正面図。
【符号の説明】
10 保持器
11 ポケット
12 ポケットの中心
13 楕円(ピッチ曲線)
14 公転軌道円
15 転動体
16 内輪
17 外輪
訂正の要旨 ▲1▼訂正事項a
実用新案登録請求の範囲の請求項1乃至4に係る記載
「【請求項1】 保持器ポケットの中心を連続した非真円のピッチ曲線上に位置させてなる転がり軸受の保持器。
【請求項2】 前記ピッチ曲線が楕円である請求項1記載の転がり軸受の保持器。
【請求項3】 前記楕円の長径が転動体の中心が通る公転軌道円の直径よりも長く、前記楕円の短径が前記公転軌道円の直径よりも短い請求項2記載の転がり軸受の保持器。
【請求項4】 等間隔で形成した複数のポケットを有し、その内2つのポケットの中心を前記楕円とその長径軸との交点に配置し、別の2つのポケットの中心を前記楕円とその短径軸との交点に配置してなる請求項3記載の転がり軸受の保持器。」
を、
「【請求項1】 保持器ポケットの中心を楕円のピッチ曲線上に位置させると共に、転動体とポケット内面との間に最小隙間を確保してなる転がり軸受の保持器。
【請求項2】 前記楕円の長径が転動体の中心が通る公転軌道円の直径よりも長く、前記楕円の短径が前記公転軌道円の直径よりも短い請求項1記載の転がり軸受の保持器。
【請求項3】等間隔で形成した複数のポケットを有し、その内2つのポケットの中心を前記楕円とその長径軸との交点に配置し、別の2つのポケットの中心を前記楕円とその短径軸との交点に配置してなる請求項2記載の転がり軸受の保持器。」
と訂正する。
▲2▼ 訂正事項b
明細書第2頁第12?13行目「保持器ポケットの中心を非真円のピッチ曲線上に位置させたものである。」を、「保持器ポケットの中心を楕円のピッチ曲線上に位置させると共に、転動体とポケット内面との間に最小隙間を確保したものである。」と訂正する。
▲3▼ 訂正事項c
明細書第4頁第10?13行目「例えば前記実施例では…多角形のピッチ曲線としてもよい。」を削除する。
▲4▼ 訂正事項d
明細書第4頁第16行目「非真円のピッチ曲線上に位置させたので、」を、「楕円のピッチ曲線上に位置させると共に、転動体とポケット内面との間に最小隙間を確保したので、」と訂正する。
異議決定日 1999-10-18 
出願番号 実願平4-18509 
審決分類 U 1 651・ 121- YA (F16C)
U 1 651・ 113- YA (F16C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 秋月 均  
特許庁審判長 舟木 進
特許庁審判官 鳥居 稔
西村 敏彦
登録日 1997-10-17 
登録番号 実用登録第2561772号(U2561772) 
権利者 エヌティエヌ株式会社
大阪府大阪市西区京町堀1丁目3番17号
考案の名称 転がり軸受の保持器  
代理人 江原 省吾  
代理人 江原 省吾  
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