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審決分類 審判 全部無効 特123条1項6号非発明者無承継の特許 訂正を認めない。無効とする(申立て一部成立) E04G
審判 全部無効 1項1号公知 訂正を認めない。無効とする(申立て一部成立) E04G
審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認めない。無効とする(申立て一部成立) E04G
管理番号 1009122
審判番号 審判1996-12808  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2000-08-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 1996-08-02 
確定日 1999-02-22 
事件の表示 上記当事者間の登録第2125024号実用新案「木造住宅基礎構築用鉄筋枠」の登録無効審判事件について、併合のうえ、次の通り審決する。   
結論 登録第2125024号実用新案の明細書の請求項第1項、第3項、第4項に記載された考案についての登録を無効とする。登録第2125024号実用新案の明細書の請求項第2項、第5項に記載された考案についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、その5分の2を請求人の負担とし、5分の3を被請求人の負担とする。
理由 I.手続の経緯
本件実用新案登録第2125024号考案は、平成4年7月18日に出願され、平成7年11月8日に実公平7-48881号公報として出願公告された後、平成8年7月1日に設定登録されたものである。その後、林精工株式会社及び株式会社シラコからそれぞれ登録無効の審判請求(平成8年審判第12808号及び平成8年審判第18194号)がなされ、当審においてこれら審判請求を併合審理する旨通知すると共に、実用新案登録無効の理由を通知したところ、その指定期間内である平成9年12月26日付で訂正請求がなされ、これに対して訂正拒絶理由が通知され、平成10年5月21日付で再度実用新案登録無効の理由が通知されたものである。
II.訂正の適否の判断
1)訂正事項
上記訂正請求書において、訂正事項▲1▼乃至▲4▼について訂正請求されているところ、その訂正事項の請求項1について検討すると、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、請求項1に係る考案を「第1および第2の鉄筋枠ユニットを有し、各鉄筋枠ユニットは、平行に延びる複数本の縦筋が所定の間隔毎に複数本の横筋によって接合された構成のベース部と、平行に延びる複数本の縦筋が所定の間隔毎に複数本の横筋によって接合された構成の立ち上がり部とから構成され、この立ち上がり部が前記ベース部の側に折り畳まれた状態からほぼ垂直に起立した状態となるように、この立ち上がり部の下端が前記ベース部のほぼ中央部に対して回転可能に支持されており、前記第1および第2の鉄筋枠ユニットのうち、少なくとも第1の鉄筋枠ユニットの端部が継手部分として用いられて、当該第1および第2の鉄筋枠ユニット同志がほぼ直角に配置される木造住宅基礎構築用鉄筋枠において、前記第1の鉄筋枠ユニットの長手方向の両端部のうち、少なくとも前記継手部分とされる側の端部では、前記立ち上がり部の縦筋に対して、前記ベース部の縦筋が当該ベース部の幅のほぼ1/2の長さだけ突出しており、前記第1の鉄筋枠ユニットの前記継手部分とされる側の端部における前記立ち上がり部の端が前記第2の鉄筋枠ユニットの立ち上がり部に対して突き当たっており、添え筋によって、双方の鉄筋枠ユニットが連結されていることを特徴とする木造住宅基礎構築用鉄筋枠。」とすべく訂正請求されている。
2)訂正の目的の適否及び拡張・変更の存否
しかし、訂正前の請求項1に係る考案である「鉄筋枠」は、「立ち上がり部をベース部の側に折り畳まれた状態からほぼ垂直に起立した状態となる」(明細書段落番号【0038】)効果を奏するのに対し、訂正後の考案である「鉄筋枠」は、第1の鉄筋枠ユニットの端部が第2の鉄筋枠ユニットの立ち上がり部に対して突き当たって添え筋によって双方の鉄筋ユニットが連結された構成であって、上記の効果を奏さず、かつ訂正前の「鉄筋枠」に相当する第1の鉄筋ユニットに第2の鉄筋ユニット更に添え筋を連結したものとなり訂正前の請求項1に係る考案とは別異の考案となるものである。したがって、上記訂正は実質上実用新案登録請求の範囲を変更するものである。
3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は他の訂正事項の要件を検討するまでもなく、特許法等の一部を改正する法律(平成5年4月23日法律第26号)付則第4条第2項における旧実用新案法第40条第2項及び5項の規定に違反するので、上記訂正請求は認められない。
III.本件考案
この結果、本件考案は出願公告された実用新案登録公報に記載された下記請求項1乃至5に特定されるとおりのものと認める。
【請求項1】
平行に延びる複数本の縦筋が所定の間隔毎に複数本の横筋によって接合された構成の鉄筋枠のベース部と、平行に延びる複数本の縦筋が所定の問隔毎に複数本の横筋によって接合された構成の鉄筋枠の立ち上がり部とから構成され、この立ち上がり部が前記ベース部の側に折り畳まれた状態からほぼ垂直に起立した状態となるように、この立ち上がり部の下端が前記ベース部のほぼ中央部に対して回転可能に支持され、端部を鉄筋枠相互の継手部分として鉄筋枠同士がほぼ直角に配置される木造住宅基礎構築用鉄筋枠において、この鉄筋枠の長手方向の両端部のうち、少なくとも前記継手部分とされる側の端部は、前記立ち上がり部の縦筋に対して、前記ベース部の縦筋が当該ベース部の幅のほぼ1/2の長さだけ突出していることを特徴とする木造住宅基礎構築用鉄筋枠。
【請求項2】
請求項1において、鉄筋枠の長手方向の両端部のうちの一方の端部は、前記ベース部の縦筋に対して、前記立ち上がり部の縦筋が当該ベース部の幅のほぼ1/2の長さだけ突出しており、他方の端部は、前記立ち上がり部の縦筋に対して、前記ベース部の縦筋が当該ベース部の幅のほぼ1/2の長さだけ突出していることを特徴とする木造住宅基礎構築用鉄筋枠。
【請求項3】
請求項1において、前記ベース部の縦筋は一対の平行に延びる両側筋であり、これら両側筋が一定の間隔毎に複数本の横筋によって溶接されており、前記立ち上がり部の縦筋は、前記両側筋のほぼ中央部において軸心を中心に回転可能な状態で横筋によって支持された軸筋と、この軸筋と平行に延びる中間筋および上端筋であり、これらの軸筋、中間筋および上端筋が一定の間隔で横筋によって溶接されており、前記鉄筋枠の長手方向における両端部のうち、少なくとも前記継手部分とされる側の端部は、前記立ち上がり部の軸筋、中間筋および上端筋に対して、前記ベース部の両側筋が、当該ベース部の幅のほぼ1/2の長さだけ突出していることを特徴とする木造住宅基礎構築用鉄筋枠。
【請求項4】
請求項1において、前記ベース部の縦筋は一対の平行に延びる両側筋であり、これら両側筋が一定の間隔毎に複数本の横筋によって溶接されており、前記立ち上がり部の縦筋は、前記両側筋のほぼ中央部において軸心を中心に回転可能な状態で横筋によって支持された軸筋と、この軸筋と平行に延びる中間筋および上端筋であり、これらの軸筋、中間筋および上端筋が一定の間隔で横筋によって溶接されており、前記鉄筋枠の長手方向における両端部のうち、少なくとも前記継手部分とされる側の端部は、前記立ち上がり部の軸筋、中間筋および上端筋が当該立ち上がり部の横筋に対して当該横筋のほぼ1間隔分だけ突出し、該立ち上がり部の軸筋、中間筋および上端筋に対して、前記ベース部の両側筋が、当該ベース部の幅のほぼ1/2の長さだけ突出していることを特徴とする木造住宅基礎構築用鉄筋枠。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかの項において、前記立ち上がり部を構成している横筋の上端は、当該立ち上がり部の上端に位置する縦筋から所定の長さだけ突出していることを特徴とする木造住宅基礎構築用鉄筋枠。
(以下、それぞれ本件考案1乃至5という)
IV.引用例
これに対して、当審が平成10年5月21日付で通知した実用新案登録無効理由にて引用した本件出願前に頒布された刊行物である「ビルディングレター」日本建築センター編集発行、1991.9、第96?97頁(以下引用例1という)には、住宅基礎鉄筋ユニットユニベースに関して開示されており、第96頁1「開発の趣旨」の項には「木造建築物についても、構造体の一本化にあたっては、鉄筋コンクリート造布基礎の採用が望ましいことを示している。・・・そこで、株式会社シラコでは、利用者が特別な構造技術をもちあわせていなくても、システム化により、期待する鉄筋コンクリート造布基礎が設計できる鉄筋コンクリート造布基礎用組立鉄筋(ユニベース)を開発した。」と、同頁2「特徴」の項には「○施工が容易 工場生産された組立鉄器入ニットを継手鉄筋で結束するだけの非常に簡易な配筋工事である。」と、同頁3「工法の概要」の項には「○製品ストック 折りたたみ可能(写真-3)」と記載され、さらに、図-2「組立鉄筋姿図(例:立上りユニット)」には、平行に延びる2本のベース筋がほぼ一定の間隔毎に複数本の補助筋によって接合されたベース部分と、平行に延びる2本の主筋及び腹筋がほぼ一定の間隔毎に複数本のあばら筋によって接合された構成の鉄筋枠の立ち上がり部分とからなり、ベース筋の間隔は280mmであり、あばら筋又は補助筋の間隔は285mm及び300mmであり、一方の端部はベース筋が主筋、腹筋の端部より140mm突出し、立ち上がり部分のあばら筋に対して300mm突出している立上りユニットが記載されている。また、第97頁図-3には主筋(腹筋)と継手鉄筋を用いたL字部分、T字部分及び十字部分の継手部分が記載されている。
V.対比・判断
そこで、引用例記載のものと考案1乃至5とを順次比較検討する。
1)本件考案1との対比・判断
引用例における「補助筋」及び「ベース筋、主筋及び腹筋」は本件考案1における「横筋」及び「縦筋」にそれぞれ相当する。さらに、引用例「開発の趣旨」の項における記載からみて「立上りユニット」は「木造住宅基礎構築用鉄筋枠」に相当する。
引用例記載の「立上りユニット」は、図-2の溶接部分、「工法の概要」の項における「折りたたみ可能」の記載及び写真-3からみて「立上り部はベース部の側に折り畳まれた状態からほぼ垂直に起立した状態となるように、この立上り部の下端がベース部のほぼ中央部に対して回転可能に支持されている」と解される。
してみれば、引用例には、
「平行に延びる2本の縦筋が所定の間隔毎に複数本の横筋によって溶接によって接合された構成の鉄筋枠のベース部と、平行に延びる3本の縦筋が所定の間隔毎に複数本の横筋によって溶接によって接合された構成の鉄筋枠の立ち上がり部とから構成され、この立ち上がり部が前記ベース部の側に折り畳まれた状態からほぼ垂直に起立した状態となるように、この立ち上がり部の下端が前記ベース部のほぼ中央部に対して回転可能に支持され、端部を鉄筋枠相互の継手部分として鉄筋枠同士がほぼ直角に配置される木造住宅基礎構築用鉄筋枠において、この鉄筋枠の長手方向の両端部のうち、少なくとも一方の端部は、前記立ち上がり部の縦筋に対して、前記ベース部の縦筋が当該ベース部の幅のほぼ1/2の長さだけ突出していることを特徴とする木造住宅基礎構築用鉄筋枠。」
が記載されていると認める。
本件考案1と比較すると、本件考案1がベース部の縦筋がベース部の幅の1/2の長さだけ突出している端部が継手部分であるのに対し、引用例にはいずれの端部が継手部分であるかは明記されていない点で相違し、その余の点で一致する。
そこでこの相違点について検討すると、図-3にはL字部分、T字部分、十字部分、即ち鉄筋枠同士がほぼ直角に配置される継手部分の平面図が描かれ、そこには継手鉄筋が主筋(腹筋)に取り付けられること、即ち他に該当するユニットが開示されていない以上、図-2における立上りユニットの主筋あるいは腹筋(本件考案1における立上り部の縦筋)の端部がL字部分、T字部分、十字部分に使用されているとみるべきである。
そして、継手部分には1つのユニットの両端部のいずれかを用いるものであること、及びベース部の縦筋がベース部の幅の1/2の長さだけ突出している端部を継手部分に使用できないとする理由もなく、ベース部の縦筋がベース部の幅の1/2の長さだけ突出している端部をL字部分、T字部分又は十字部分の継手部分に使用可能と解するのが相当である。
したがって、上記の相違点である「ベース部の縦筋がベース部の幅の1/2の長さだけ突出している端部が継手部分である」とする点は引用例に実質的に開示されており、本件考案1は引用例に記載された考案と同一であると認める。
2)本件考案2との対比・判断
本件考案2と引用例記載のものと比較すると、本件考案2は「一方の端部は、前記ベース部の縦筋に対して、前記立ち上がり部の縦筋が当該ベース部の幅のほぼ1/2の長さだけ突出しており、他方の端部は、前記立ち上がり部の縦筋に対して、前記ベース部の縦筋が当該ベース部の幅のほぼ1/2の長さだけ突出している」点を必須の構成要件としているのに対し、引用例における一方の端部の立上り部の鉄筋はベース部の鉄筋に対して突出していない点で相違する。
そこでこの相違点について検討する。
審判請求人林精工株式会社は甲第1号証(甲第1号証の1:スーパーベースのカタログ、甲第1号証の2:「ビルディングレター」日本建築センター編集発行、1987.11、第48?49頁、甲第1号証の3:サプロン建材工業株式会社のカタログ)、甲第2号証(スーパーベースの低層建築物の構造耐力性能評価書)及び甲第7号証(ナショナル住宅産業株式会社の林精工株式会社に対する発注仕様書の図面)を提出し、本件考案2は、これらの記載内容に基づききわめて容易に考案できたものである旨主張している。これらについて検討すると、甲第1号証及び甲第2号証には、審判請求人も認めるとおり上記相違点については記載されていない。また、審判請求人は甲第7号証に上記相違点が記載されている旨主張するが、甲第7号証はこの出願前頒布された刊行物であるか不明であり、かつ同号証記載のものは、両端部ともベース部の縦筋に対して、立ち上がり部の縦筋が突出しており、上記相違点の構成を有してはいない。
したがって、上記相違点についてはいずれの証拠にも開示されておらず、この相違点によって明細書記載の優れた効果を奏するものと認められるので、上記相違点を単なる設計事項とみとめることはできず、本件考案2は、引用例、甲第1又は2号証、甲第7号証記載内容に基づき当業者がきわめて容易に考案できたものとすることはできない。
なお、審判請求人が申請している証人尋問は甲第1号証に記載されている商品名「スーパーベース」が、本件出願前に公然と実施されていたことを証明しようとするにすぎないものであるから、上述したとおり、甲第1号証記載の内容から考案2がきわめて容易に考案できたものとすることはできない以上、考案2の検討にあたっては採用するまでもない。
3)本件考案3との対比・判断
本件考案3と引用例とを比較すると、引用例における「立上り部の主筋及び腹筋」及び「ベース部のベース筋」は本件考案3の「立上り部の軸筋、中間筋及び上端筋」及び「ベース部の側筋」に相当するので、本件考案3がベース部の両側筋がベース部の幅の1/2の長さだけ突出している端部が継手部分であるのに対し、引用例にはいずれの端部が継手部分であるかは明記されていない点で相違し、その余の点で一致する。
そこでこの相違点について検討すると、上記V.1)にて述べたとおり、引用例記載のものも、ベース部の両側筋がベース部の幅の1/2の長さだけ突出している端部がL字部分やT字部分即ち継手部分に使用可能と解するのが相当である。
したがって、上記の相違点である「ベース部の両側筋がベース部の幅の1/2の長さだけ突出している端部が継手部分である」とする点は引用例に実質的に開示されており、本件考案3は引用例に記載された考案と同一であると認める。
4)本件考案4との対比・判断
本件考案4と引用例と比較すると、引用例図-2には立上りユニットの左端部は立上り部の主筋、腹筋が立上り部のあばら筋に対して300mm突出しており、該立上り部の主筋、腹筋に対してベース部の両ベース筋が当該ベース部の幅のほぼ1/2の長さだけ突出して描かれている。また、あばら筋の間隔は285mmあるいは300mmであるから上記の「300mm突出している」ことはあばら筋のほぼ1間隔分だけ突出していることに他ならない。してみれば、本件考案4が「立ち上がり部の軸筋、中間筋および上端筋が当該立ち上がり部の横筋に対して当該横筋のほぼ1間隔分だけ突出し、該立ち上がり部の軸筋、中間筋および上端筋に対して、前記ベース部の両側筋が、当該ベース部の幅のほぼ1/2の長さだけ突出している」端部が継手部分であるのに対し、引用例には該端部が継手部分であるかは明記されていない点で相違し、その余の点で一致する。
そこでこの相違点について検討すると、上記V.1)にて述べたとおり、引用例記載のものも、立ち上がり部の軸筋、中間筋および上端筋が当該立ち上がり部の横筋に対して当該横筋のほぼ1間隔分だけ突出し、該立ち上がり部の軸筋、中間筋および上端筋に対して、ベース部の両側筋が、当該ベース部の幅のほぼ1/2の長さだけ突出している端部がL字部分やT字部分即ち継手部分に使用可能と解するのが相当である。
したがって、上記の相違点である「立ち上がり部の軸筋、中間筋および上端筋が当該立ち上がり部の横筋に対して当該横筋のほぼ1間隔分だけ突出し、該立ち上がり部の軸筋、中間筋および上端筋に対して、前記ベース部の両側筋が、当該ベース部の幅のほぼ1/2の長さだけ突出している」端部が継手部分とする点は引用例に実質的に開示されており、本件考案4は引用例に記載された考案であると認める。
5)本件考案5との対比・判断
本件考案5と引用例と比較すると、本件考案5は「立上り部を構成している横筋の上端は、当該立上り部の上端に位置する縦筋から所定の長さだけ突出している」点を必須の構成要件としているのに対して、引用例にはこの構成について記載されていない点で相違する。
この相違点について検討すると、審判請求人株式会社シラコは甲第1号証(甲第1号証の1:商品ユニベースのカタログ、甲第1号証の2:実開平3-25633号公報)、甲第2号証(ユニベースの低層建築物の構造耐力性能評価書)及び甲第6号証(実開平2-80155号公報)を提出しこれらの記載内容から本件考案5はきわめて容易に考案できた旨主張している。また、審判請求人林精工株式会社は甲第1号証(甲第1号証の1:スーパーベースのカタログ、甲第1号証の2:「ビルディングレター」日本建築センター編集発行、1987.11、第48?49頁、甲第1号証の3:サプロン建材工業株式会社のカタログ)、甲第2号証(スーパーベースの低層建築物の構造耐力性能評価書)及び甲第6号証(実開平2-80155号公報)を提出しこれらの記載内容から本件考案5はきわめて容易に考案できた旨主張している。
これらについて検討すると、両審判請求人の提出したいずれの甲第1号証及び甲第2号証にも、両審判請求人も認めるとおり、上記相違点については記載されていない。また、両審判請求人は各甲第6号証(いずれも実開平2-80155号公報)を提出し、上記相違点が記載されている旨主張する。確かに、甲第6号証図面には立上り部の横筋の上端が縦筋より突出したものが描かれている。しかし、本件考案5における「所定の長さだけ」とは明細書の記載からみて添え筋を配筋する分の長さだけであることは明らかである。そして、甲第6号証には、横筋の上端を突出させる技術的意味について何も説明が無く、かつその図面には、横筋が添え筋の直径よりもはるかに大きい長さ分突出して描かれていることからみても、突出している長さが添え筋を配筋する分の長さだけとは到底解釈できるものでない。
したがって、本件考案5は上記相違点である構成によって明細書記載のとおりの効果を奏するものであって、この構成が本件出願前周知であるとする根拠もないので、上記相違点は単なる設計事項とすることはできない。また、提出されたいずれの証拠にも上記相違点を示唆する記載もないので両審判請求人の主張は理由がない。
なお、審判請求人林精工株式会社及び株式会社シラコが申請している証人尋問はそれぞれの甲第1号証に記載された商品名「スーパーベース」及び「ユニベース」が本件出願前に公然と実施されていたことを証明しようとするにすぎないものであるから、上述したとおり、各甲第1号証記載の内容から考案5がきわめて容易に考案できたものとすることはできない以上、考案5の検討にあたっては採用するまでもない。
VI.むすび
以上のとおりであるから、実用新案登録第2125024号考案の実用新案登録請求の範囲請求項1、3及び4に係る考案は、実用新案法第3条第1項第3号の規定に該当するものであるから、これら考案の実用新案登録は実用新案法第37条第1項の規定により無効とする。また、同請求項2及び5に係る考案は請求人が主張する理由及び証拠方法によっては、無効とすることはできない。
審判に関する費用については、実用新案法第41条にて準用する特許法第169条第2項の規定においてさらに準用する民事訴訟法第62条の規定を適用する。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1998-12-03 
結審通知日 1998-12-15 
審決日 1998-12-24 
出願番号 実願平4-56348 
審決分類 U 1 112・ 111- ZE (E04G)
U 1 112・ 152- ZE (E04G)
U 1 112・ 121- ZE (E04G)
最終処分 一部成立    
前審関与審査官 高橋 祐介  
特許庁審判長 沼澤 幸雄
特許庁審判官 高木 茂樹
藤井 俊二
登録日 1996-07-01 
登録番号 実用登録第2125024号(U2125024) 
考案の名称 木造住宅基礎構築用鉄筋枠  
代理人 横沢 志郎  
代理人 石戸 元  

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