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審決分類 審判 全部申し立て   F24F
管理番号 1009176
異議申立番号 異議1997-75114  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-08-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 1997-10-24 
確定日 2000-01-11 
異議申立件数
事件の表示 実用新案登録第2535444号「空気清浄装置」の請求項1ないし2に係る実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 実用新案登録第2535444号の請求項1ないし2に係る実用新案登録を取り消す。
理由 (1)手続の経緯
本件登録実用新案第2535444号は、平成3年10月21日に出願され、平成9年2月13日に設定登録がなされ、その後実用新案登録異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間である平成10年4月20日に訂正請求がされた後、訂正拒絶理由が通知され、手続補正書が提出されたものである。
(2)訂正の適否についての判断
ア、訂正請求に対する補正の適否について
訂正請求に対する補正は、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲を補正し、併せて、訂正明細書[0014]段を「以上、本考案にかかる空気清浄装置による場合には、ワイヤレスリモコン周囲の空気を該ワイヤレスリモコン内に流入させて該ワイヤレスリモコン周囲の空気の汚れを検知する汚れセンサがワイヤレスリモコン側に設けられるので、ワイヤレスリモコン周囲の汚れがリアルタイムで検知されて清浄装置本体の運転に反映させることができる。故に、ワイヤレスリモコンを操作するだけで、操作する人の周囲の空気の汚れが、清浄装置本体の運転当初から清浄装置本体の運転にリアルタイムで正確に反映され、そのため、ワイヤレスリモコンを操作する人を含む室内に居る人の周囲の空気汚れに応じた運転が、清浄装置本体で運転当初から常に行われることになる。従って、室内の人の周囲の空気汚れを基準にした空気清浄を運転当初からリアルタイムで常に行うことができ、室内の人は、別途、人の周囲の汚れを検知するための動作を行うことなく、いつも、空気清浄装置の機能をリアルタイムで最大限享受できる。」と補正するものである。
しかしながら、この補正は、訂正明細書に記載されていなかったことであり、訂正請求の要旨を変更するものと認められ、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用する特許法第120条の4第3項において準用する同法第131条第2項の規定に違反するものであり採用できない。
イ、訂正明細書の各請求項に係る考案
平成10年4月20日付で提出された訂正明細書の請求項1、請求項2に係る各考案は、それぞれ、訂正明細書の請求項1、請求項2に記載されたとおりの次のものである。
請求項1
「ファンにより吸引した空気をフィルタにより清浄化して吐出する清浄装置本体と、該清浄装置本体に操作信号をリモコン送信するワイヤレスリモコンとからなる空気清浄装置において、前記運転・停止等の操作信号をリモコン送信するワイヤレスリモコンに該ワイヤレスリモコン周囲の空気の汚れを検知する汚れセンサを搭載し、該汚れセンサにより検知した空気の汚れ具合、またはその汚れ具合に応じた運転情報を前記清浄装置本体に送信するように構成したことを特徴とする空気清浄装置。」
請求項2
「前記汚れセンサにより検知されたワイヤレスリモコン周囲の空気の汚れ具合を表示する表示装置をワイヤレスリモコンに設けたことを特徴とする請求項1に記載の空気清浄装置。」
ウ、刊行物に記載された事項
当審が通知した訂正拒絶理由に引用された刊行物1(特開平3-56115号公報)には、
「移動物体を検知したり、空気の汚れを検知するセンシング手段を備え、このセンシング手段からの信号を受けて所定のレベルに達した場合にファンを駆動する駆動清浄器において、上記センシング手段をワイヤレスによるリモート操作用の発信器内に納装し、発信器からの送出される信号を受ける空気清浄器本体に該発信器を着脱自在に装着し、発信器の空気清浄器本体への装着時は発信器と空気清浄器本体のセンシング手段等の電気接続を有線接続としたことを特徴とする空気清浄器」(1頁左欄5行?15行)、「本発明は、室内の空気中のハウスダストやタバコの煙や人体等の移動を検出してファンを駆動して除去すると共に、タバコ臭やその他室内で発生する悪臭を除去する空気清浄器に関するものである」(1頁左欄18行?右欄3行)、「上述の点に鑑みて提供したものであって、その使用環境に応じて例えば汚れ検知用のセンサーの場合、汚れが発生しやすい灰皿の近く等へ、また、移動物体検知用のセンサーでは人体等の動きが多い出入口の近く等へ夫々設置でき、センシング手段による検出を早く確実にできるようにし」(2頁左上欄5行?11行)、「ファン8の外周とハウジング10の内周との間に風洞ケーシング11が配設してあり、ファンの回転により空気を吸い込んで吐出するようにしている。本体1の前面側には、グリル12、消臭フィルター13、除塵フィルター14、プレフィルター15が配設されている。消臭フィルター13と除塵フィルター14はフィルターケー16,17の間にセットされ、本体とはフィルターケース17の把手18をつかんで着脱自在としてある」(2頁左下欄3行?12行)、「第6図及び第9図において、本体1の前面の右側の下部には後述するように移動物体検知センサー22を納装した発信器61が本体1に対して着脱自在に配設されており、また、その上方にフィルター寿命サインのリセット押しボタン23と、移動物体検知センサー22の入り、切りを行うスイッチ24とが配設してある。このスイッチ24を切り替えることにより、移動物体検知センサー22をガスセンサーと併用使用したり、また、切りにしてガス式センサーのみ単独で、使用することも可能なようにしている」(2頁左下欄17行?右下欄7行)、「上記ランプ35?39の側方には室内の汚れ度の表示を行う6個のランプ41?46が配設されてある。これらのランプ41?46は、汚れ度が少ない時から汚れ度が増加していくにつれて順次点灯していき、最大汚れ度の時、6個のランプ41?46が全数点灯して表示を行う。第9図に示すように、本体1の前面の右側上部にはガスセンサー47が配設されており、CPU等を実装しているプリント基板48上に取り付けてある。このガスセンサー47の回りにはセンサーキャップ49,キャップシール50を有し、グリル12の前面一部には第6図に示すように、ガスセンサー用格子部51が設けてあり、室内の汚れた空気がガスセンサー部に侵入しやすくなっている」(3頁右上欄8行?左下欄2行)と記載されている。
同刊行物2(特開昭63-147513号公報)には、「本体1の前面には吸気口2と排気口3を設け、この間は本体内部の空気流路で連通され、流路の途中にフィルター4と電動送風機(図示せず)を配置している。フィルター4は本体に取出し自在に設けられ、電動送風機5によって吸気口から吸入された空気中の塵挨を吸着しその後の空気を排気口3より本体外に放出する」(1頁左欄末行?右欄7行)、「本体10の前面には吸気口11が設けられ、この本体10の上部に設けた配気口12と連通した空気流路中にフィルター13を本体10に着脱自在に装着し、フィルター13に対して空気流路の後方に配した電動送風機(図示せず)によって気流を発生させるものである。本体10の上部に着脱自在に取り付けたリモコン15は前記電動送風機14を制御するもので、運転スイッチ16と表示灯17、18、19及びタイマースイッチ20と表示灯21、22、23を設け、ガスセンサー24を配してなるものであり、内部には制御回路(図示せず)を有している。」(2頁右上欄11行?左下欄2行)と記載されている。
エ、訂正明細書の請求項1に係る考案と各刊行物に記載された事項との対比及び判断
訂正明細書請求項1に係る考案と刊行物1記載の事項とを対比すると、刊行物1記載の「ガスセンサー」「汚れ検知用のセンサー」「センシング手段」は、同請求項1に係る考案の「汚れセンサ」に該当し、刊行物1記載の「ワイヤレスによるリモート操作用の発信器」は同請求項1に係る考案の「ワイヤレスリモコン」に該当する。
したがって両者は、「ファンにより吸引した空気をフィルタにより清浄化して吐出する清浄装置本体と、清浄器本体に操作信号をリモコン送信するワイヤレスリモコンからなる空気清浄装置において、ワイヤレスリモコン周囲の空気の汚れを検知する汚れセンサを搭載し、汚れセンサにより検知した空気の汚れ具合を清浄装置本体に送信するように構成した空気清浄装置」である点で共通のものであり、ただ同請求項1に係る考案のリモコンが(i)清浄装置本体に運転・停止等の操作信号をも送信するものであり、(ii)汚れ具合に応じた運転情報を送信するものであるのに対し、刊行物1にはそれらの点が明確に記載されていない点で相違するものである。
前記相違点を検討すると、
(i)の点、清浄装置本体に運転・停止等の操作信号を送信するリモコンは刊行物2に記載されているように周知のものであり、刊行物1記載のリモート操作用発信器に、運転・停止等の操作信号をも送信するようにすることは適宜できることである。
(ii)の点、刊行物2には、リモコン内部に、汚れ具合からそれに応じた運転情報へ処理する制御回路を有するものが記載されており、汚れ具合から運転情報への処理を、本体でするかリモコンでするかは、適宜選択できるものである。
そして、このようにすることの効果も予測できることである。
オ、同請求項2に係る考案と各刊行物に記載された事項との対比及び判断
同請求項2に係る考案と刊行物1記載のものとを対比すると、前記相違点(i)(ii)及び(iii)汚れ具合を表示する表示装置を、同請求項2に係る考案がリモコンに設けてあるのに対し、刊行物1記載のものは、清浄装置本体に設けてある点で相違するものである。
前記相違点(iii)を検討すると、刊行物2には、リモコンに表示装置を設けた点が記載されており、清浄装置本体に設けてある表示装置をリモコンの方に設けることは、単なる位置の変更にすぎない。
又前記した相違点(i)(ii)と相違点(iii)とによっても、その効果は、刊行物1と刊行物2に記載された事項から、予測できるものである。
カ、結論
前記各刊行物はいずれも本件実用新案登録出願の出願前に頒布されたものであり、訂正明細書の各請求項に係る考案は、いずれも前記各刊行物に記載された事項からきわめて容易に考案することができたものと認められ実用新案法第3条第2項の規定により出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものである。
したがって、この訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用する、特許法第120条の4第3項の規定より更に準用する同法第126条第4項に規定に違反するので、この訂正は認められない。
(3)特許異議申立てについて
ア、本件登録実用新案第2535444号の各考案は次のものである。
請求項1
「ファンにより吸引した空気をフィルタにより清浄化して吐出する清浄装置本体と、該清浄装置本体に操作信号をリモコン送信するワイヤレスリモコンとからなる空気清浄装置において、前記ワイヤレスリモコンに汚れセンサを搭載し、該汚れセンサにより検知した空気の汚れ具合、またはその汚れ具合に応じた運転情報を前記清浄装置本体に送信するように構成したことを特徴とする空気清浄装置。」
請求項2
「前記汚れセンサにより検知された空気の汚れ具合を表示する表示装置をワイヤレスリモコンに設けたことを特徴とする請求項1に記載の空気清浄装置。」
イ、実用新案法第3条2項違反について
当審が平成10年2月3日付で通知した取消理由において引用した、前記各刊行物には、前記点が記載されている。
請求項1に係る考案と刊行物1記載の事項とを対比すると、両者は、「ファンにより吸引した空気をフィルタにより清浄化して吐出する清浄装置本体と、ワイヤレスリモコンに汚れセンサを搭載し、汚れセンサにより検知した空気の汚れ具合を前記清浄装置本体に送信するように構成した空気清浄装置」である点で共通のものであり、ただ、請求項1に係る考案のリモコンが、(i)汚れ具合に応じた運転情報を送信するものであり、刊行物1にはその点が明確に記載されていない点で一応相違するものである。
前記相違点を検討すると
(i)の点、刊行物2には、リモコン内部に制御回路を有し、汚れ具合からそれに応じた運転情報にして送信するものが記載されており、運転情報への処理を、本体でするかリモコンでするかは、適宜選択できるものである。
又、請求項2に係る考案と刊行物1に記載された事項とを対比すると、前記相違点(i)及び(ii)汚れ具合を表示する表示装置を、請求項2に係る考案が、リモコンに設けてあり、刊行物1記載のものは、清浄装置本体に設けてある点で相違するものである。
前記相違点(ii)を検討すると、刊行物2には、リモコンに表示装置を設ける点が記載されており、清浄装置本体に設けてある表示装置をリモコン側にすることは、単なる位置の変更にすぎない。
又前記した相違点(i)(ii)による効果は予測できるものである。
以上のとおり、前記各請求項に係る考案は、いずれも前記各刊行物に記載された事項に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものと認められるから、前記各請求項に係る実用新案登録は実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
したがって、前記各請求項に係る考案についての実用新案登録は拒絶の査定をしなければならない実用新案出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第1項及び第2項の規定により、前記のとおり決定する。
異議決定日 1999-11-17 
出願番号 実願平3-94507 
審決分類 U 1 651・ 121- ZB (F24F)
最終処分 取消    
前審関与審査官 池田 佳弘  
特許庁審判長 大槻 清壽
特許庁審判官 歌門 恵
竹之内 秀明
登録日 1997-02-13 
登録番号 実用登録第2535444号(U2535444) 
権利者 シャープ株式会社
大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号
考案の名称 空気清浄装置  
代理人 津川 友士  
代理人 木下 雅晴  
代理人 小池 隆彌  

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