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審決分類 審判 全部申し立て   B60H
管理番号 1009177
異議申立番号 異議1998-71143  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-08-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-02-27 
確定日 1999-11-19 
異議申立件数
事件の表示 実用新案登録第2546375号「車両用空調制御装置」の請求項1ないし2に係る実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 実用新案登録第2546375号の請求項1ないし2に係る実用新案登録を取り消す。
理由 (1)手続の経緯
実用新案登録第2546375号の請求項1および請求項2に係る考案についての出願は、平成3年2月13日に実用新案登録出願され、平成9年5月9日にその請求項1および請求項2に係る考案について実用新案登録の設定登録がなされ、その後、その請求項1および請求項2に係る考案についての実用新案登録に対して、平成10年2月27日付けで異議申立人株式会社ゼクセルから実用新案登録異議の申立がなされ、また、平成10年2月27日付けで異議申立人株式会社デンソーから実用新案登録異議の申立がなされ、平成10年6月9日付けで取消理由の通知がなされ、その指定期間内である平成10年8月21日付けで実用新案登録異議意見書を提出すると同時に、訂正請求がなされたが、平成11年4月13日付けで訂正拒絶の理由の通知がなされ、その指定期間内である平成11年7月6日付けで意見書を提出すると同時に、訂正請求の補正がなされたものである。
(2)訂正請求に対する補正の適否
平成11年7月6日付けの手続補正は、訂正請求書に添付された訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された「ブロアのオン・オフを切り替えるブロアスイッチと、車室内温度を目標値に追従するように制御するマイクロコンピュータを備えた温度制御手段と、上記目標値を任意に設定することができる目標温度設定手段と、設定値を表示する電光式の表示部とが設けられた車両用空調制御装置において、ブロアオフ時に目標温度設定手段の目標値の変更を可能とする一方、ブロアオフ時に目標値が変更されこの後ブロアがオンに切り替えられた場合には、目標温度設定手段にブロアオフ時における変更後の目標値をそのまま保持させるようにしたことを特徴とする車両用空調制御装置。」を「ブロアのオン・オフを切り替えるブロアスイッチと、車室内温度を目標値に追従するように制御するマイクロコンピュータを備えた温度制御手段と、スイッチを左右に回転させることにより上記目標値を任意に設定することができる目標温度設定手段と、設定値を表示する電光式の表示部とが設けられた車両用空調制御装置において、ブロアオフ時に目標温度設定手段の目標値の変更を可能とする一方、ブロアオフ時に目標値が変更されこの後ブロアがオンに切り替えられた場合には、目標温度設定手段にブロアオフ時における変更後の目標値をそのまま保持させるようにしたことを特徴とする車両用空調制御装置。」と補正し、それに合わせて、訂正明細書の第8段の「課題を解決するための手段の項」の記載を補正し、訂正請求書の訂正事項a、bの記載と訂正の原因の記載を補正することを求めるものである。
そして、この手続補正は、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されている「目標温度設定手段」を減縮する補正であって、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された「車両用空調制御装置」と実質的同一性を失わない範囲の補正であるから、上記補正は、特許法第120条の4第3項において準用する同法第131条第2項の規定に適合するものと認める。
(3)訂正の適否
補正された訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案および請求項2に係る考案は、その補正された訂正明細書及び図面の記載からみて、それぞれ、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項および請求項2に記載された事項によって特定される次の通りのものにあると認める。
「【請求項1】ブロアのオン・オフを切り替えるブロアスイッチと、車室内温度を目標値に追従するように制御するマイクロコンピュータを備えた温度制御手段と、スイッチを左右に回転させることにより上記目標値を任意に設定することができる目標温度設定手段と、設定値を表示する電光式の表示部とが設けられた車両用空調制御装置において、ブロアオフ時に目標温度設定手段の目標値の変更を可能とする一方、ブロアオフ時に目標値が変更されこの後ブロアがオンに切り替えられた場合には、目標温度設定手段にブロアオフ時における変更後の目標値をそのまま保持させるようにしたことを特徴とする車両用空調制御装置。」
「【請求項2】請求項1に記載された車両用空調制御装置において、ブロアオフ時に、車室内温度の目標値が変更されたときには、該目標値を上記表示部に電光表示するようにしたことを特徴とする車両用空調制御装置。」
これに対して、当審が上記の訂正拒絶の理由の通知において示した特開平2-28014号公報(以下、第1引用例という。)には、「車室内の温度を設定するために設けられ、設定温度を表示する表示手段と設定温度の変更を指令するスイッチ手段とを有する温度設定器と、車室内の温度が前記温度設定器で設定された温度になるように空調機器を制御する制御手段と、前記空調機器の少なくとも送風機とコンプレッサの制御を停止する停止モードの指令が出された時に前記温度設定器の表示手段を点灯させると共に、スイッチ手段による設定温度の変更機能を停止する温度設定停止手段とを有する車両用空調装置の制御装置において、前記停止モードで前記温度設定器のスイッチ手段が操作された時に、前記表示手段が消灯している場合には消灯直前に設定されていた温度を表示し、既に表示されている場合には設定を変更する表示・変更手段と、前記スイッチ手段の出力を受けるたびに計時を開始し、所定時間を経過したか否かを判定するタイマ手段と、前記タイマ手段により所定時間を経過したことが判定された場合に前記表示手段を消灯させる消灯手段とを設けたことを特徴とする車両用空調装置の制御装置。」が記載されており、この「車両用空調装置の制御装置」に関して、上記第1引用例には、「この発明においては、停止モード時に設定温度を乗員が確認し、あるいは変更できるようにし、ラム圧制御の操作性を向上させた車両用空調装置の制御装置を提供することを課題としている。」(第2頁左上欄第13?17行)こと、「ここで停止モードとは、送風機7とコンプレッサ10は停止させ、インテークドア5は内外気切換スイッチ33でマニュアル制御できるようにするか外気吸入位置に固定し、モードドア22a,22bは後述するモードスイッチ42でマニュアル制御できるようにするかオート制御にし、エアミックスドア16はオート制御にすることを言う。」(第3頁右上欄第9?16行)こと、「温度設定器35は、アップスイッチ38a及びダウンスイッチ38bと、設定温度をデジタル表示する温度表示部39とから成り、温度表示部39が点灯している通常の状態では、アップスイッチ38a又はダウンスイッチ38bの操作で設定温度が変更してその結果が温度表示部39に表示され、OFFスイッチ32が押された場合には温度表示部39が消灯するようになっている。」(第3頁右上欄第17行?左下欄第4行)こと、及び、「第3図において、前述したマイクロコンピュータ26による温度設定に関する制御のうち、特に乗員がOFFスイッチ32を操作して停止モードが選択され、温度表示部39が消灯している場合の制御例がフローチャートとして示されている。以下、このフローチャートに従って説明すると、マイクロコンピュータ26は、OFFスイッチ32が押されることによりステップ40からプログラムの実行を開始し、ステップ52において、後に用いる変数KやタイマフラグFを“0”に設定する等の初期設定を行なう。そして、次のステップ54において、アップスイッチ38a又はダウンスイッチ38bが押された(ON)か否かを判定し、押されなければステップ56へ進んで後述するタイマフラグFが“1”に設定されているか否かを判定する。アップスイッチ38a又はダウンスイッチ38bが一度も押されない限りフラグFは“0”であり、この場合にはステップ58へ進み、停止モードを解除する操作が行なわれたか否かを判定する。ここで、停止モードを解除する操作とは、例えば停止モードからオート制御モードに戻すためにAUTOスイッチ31を押した場合等を言う。このステップ58において、停止モードを解除する操作がなされたと判定された場合(有)は、ステップ60を介して他の制御ルーチンへ移行し、解除操作が行われていないと判定された場合(無)は、ステップ54に戻る。ステップ54において、アップスイッチ38a又はダウンスイッチ38bが押されたと判定された場合は、ステップ62へ進み、温度表示部39が消灯した時からアップスイッチ38aやダウンスイッチ38bを何回押したかをカウントし、次のステップ64において二回以上押したか否かを判定する。スイッチ38a、38bを温度表示部39の消灯後に初めて押したのであれば、ステップ66へ進んで温度表示部39に消灯直前の設定温度を表示し、その後、ステップ68へ進んでタイマTをスタートさせ、次のステップ70でタイマが作動状態にあることを示すためにタイマフラグFを“1”にセットし、ステップ54へ戻る。その後は、タイマフラグFが“1”であるため、タイマをスタートさせてから所定時間t_(1)を経過したか否かを判定し、経過していなければステップ58へ進む。そして、所定時間t_(1)を経過する時までにスイッチ38a、38bが押されることがなければ、ステップ72からステップ74へ進んで温度表示部39を消灯させ、次のステップ76で変数KとタイマフラグFを“0”にセットした後ステップ58へ進む。これに対して、所定時間t_(1)内にスイッチ38a、38bが再び押されると、ステップ62でKの値が加算され、ステップ64から78へ進み、このステップ78において、アップスイッチ38a又はダウンスイッチ38bのいずれが押されかを判定する。アップスイッチ38aが押されたと判定された場合は、ステップ80へ進んで、設定温度を例えば0.5度高く(UP)し、その値を温度表示部39に表示する。一方、ダウンスイッチ38bが押されたと判定された場合は、ステップ82へ進んで、設定温度を同様の割合で低く(DOWN)し、その値を温度表示部39に表示する。そして、いずれの場合も、ステップ68へ進んでタイマを再び零からスタートさせる。」(第3頁右下欄第5行?第4頁左下欄第8行)ことが記載されている。
しかしながら、上記第1引用例には、停止モード中に設定温度が変更され、その後停止モードを解除する操作がなされた時に、温度設定器35が、停止モード中に変更された設定温度の値を保持して温度表示部39にこの変更された設定温度を表示するようにしているのか否かについては、記載されていない。
また、当審が上記の訂正拒絶の理由の通知において示した「トヨタ セリカ 新型車解説書」、昭和60年8月20日、トヨタ自動車株式会社サービス部発行(実用新案登録異議申立人株式会社デンソーが証拠方法、甲第1号証として提出したもの。以下、第2引用例という。)の6-63頁には、「空調システム」の「ヒータコントロール」が図示されており、この図の記載からみて、このヒータコントロールパネルには、「温度コントロールノブ」および「ブロアスイッチ」が設けられていること、そしてこの温度コントロールノブの上部には、設定温度表示をするためのシートを貼り付けることができることが窺え、上記第2引用例の6-65頁には、そのシートを貼り付けた状態の図が記載されている。
そして、上記第2引用例の6-63頁には、「温度コントロールノブ」について、「好みの温度に設定することにより常に快適になるよう自動温度コントロールします。」ということが記載されており、「ブロアスイッチOFF時」について、「ブロアスイッチOFFでもモード切り替えスイッチ、内外気切り替えスイッチ、温度コントロールノブは作動し、動圧換気も可能です。」ということが記載されている。
更に、上記第2引用例の6-65頁には、「温度コントロールノブ(温度設定抵抗)」について、「温度コントロールノブは平行スライドを採用し、設定温度25℃の中央部にノブの節度感をもたせ使用性を向上しました。温度コントロールノブをスライドすることにより、設定温度を抵抗値としてシステムアンプリファイアに伝えます。」ということが記載されている。
更にまた、上記第2引用例の6-66頁?6-67頁には、「コントロールシステム」について、「温度設定ノブ(温度コントロールノブ)により決定された設定温度信号と、同時に車室内温度を内気センサで、日射量を日射センサで、外気温度を外気センサでそれぞれ検知した信号をシステムアンプリファイアに入力します。これらの情報を基にエアミックスダンパ切り替え用サーボモータを駆動し、エアミックスダンパ、ウオータバルブの開閉度合およびブロアスピードを制御します。サーボモータの駆動量はポテンショメータを通じて再びシステムアンプリファイアに入力され、設定温度に対する差をシステムアンプリファイアが補正しオートエアコンの作動が決定されます。」ということがコントロールシステム図と共に記載されている。
そこで、先ず、補正された訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたものについて検討する。
補正された訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたもの(前者)と、上記第1引用例に記載されたもの(後者)とを比較検討すると、上記の第1引用例の記載からみて、後者のAUTOスイッチ31とOFFスイッチ32は送風機7のオン・オフを切り替えるスイッチであり、後者のマイクロコンピュータ26は車室内の温度を設定された温度、即ち、目標温度になるように制御するものであり、後者のアップスイッチ38a又はダウンスイッチ38bは設定温度、即ち、目標温度を任意に設定することができる目標温度設定手段であり、後者の温度表示部39は設定温度、即ち、目標温度を表示する電光式の表示部であるということができるから、前者と後者は、ブロアのオン・オフを切り替えるブロアスイッチと、車室内温度を目標値に追従するように制御するマイクロコンピュータを備えた温度制御手段と、上記目標値を任意に設定することができる目標温度設定手段と、設定値を表示する電光式の表示部とが設けられた車両用空調制御装置であって、ブロアオフ時に目標温度設定手段の目標値の変更を可能とする車両用空調制御装置である点において一致し、(1)前者の目標温度設定手段が、スイッチを左右に回転させることにより目標値を任意に設定することができるものであるのに対して、後者の目標温度設定手段が、プッシュ式のアップスイッチ又はダウンスイッチを押すことにより目標値を任意に設定することができるものである点、および(2)前者が、ブロアオフ時に目標値が変更されこの後ブロアがオンに切り替えられた場合は、目標温度設定手段にブロアオフ時における変更後の目標値をそのまま保持させるようにしているのに対して、後者は、ブロアオフ時に目標値が変更されこの後ブロアがオンに切り替えられた場合は、目標温度設定手段にブロアオフ時における変更後の目標値をそのまま保持させるようにしているのか否かが格別記載されていない点において両者は相違している。
よって、上記相違点(1)について検討すると、一般に、設定スイッチには、プッシュ式のアップスイッチとダウンスイッチを組み合わせたものや左右に回転させる回転式スイッチ等があり、適用対象、操作性、配置場所等々を勘案してそのいずれを用いるか選択されることは、この出願前より周知のことであるから、車両用空調制御装置の目標温度設定手段として、後者のようにプッシュ式のアップスイッチ又はダウンスイッチを組み合わせたものを用いる代わりに、前者のように左右に回転させるスイッチを用いるようにすることは、当業者が適宜為し得る程度の構成の変更に過ぎないものであるということができる。
次に、上記相違点(2)について検討する。
上記の第2引用例の記載からみて、上記第2引用例に記載された空調システムのブロアスイッチは、ブロアのオン・オフをも切り替えるスイッチであり、そのコントロールシステムは、車室内温度を目標値に追従するように制御する温度制御を行う手段であり、その温度コントロールノブは、目標温度を任意に設定することができる手段であるということができる。
そして、上記第2引用例の「ブロアスイッチOFFでもモード切り替えスイッチ、内外気切り替えスイッチ、温度コントロールノブは作動し、動圧換気も可能です。」という記載とコントロールシステム図の記載からみて、上記第2引用例に記載された空調システムは、ブロアスイッチOFFでも走行動圧を利用して(いわゆるラム圧風を利用して)空調を行い、車室内温度を目標値に追従するように制御しているということができる。
また、上記の第2引用例の記載からみて、上記第2引用例に記載された空調システムの温度コントロールノブは、手動操作のスライド式であるから、ブロアスイッチのオン・オフ状態の切り替えによって移動するものではなく、ブロアオフ時に温度コントロールノブの位置を変更したときは、ブロア再起動時のノブの位置は、ブロアオフ時での変更後の位置となると解されることから、この温度コントロールノブは、ブロアオフ時に目標温度の変更を可能とする一方、ブロアオフ時に目標温度が変更されこの後ブロアがオンに切り替えられた場合には、ブロアオフ時における変更後の目標温度をそのまま保持しうるものであるということができる。
そうすると、上記の第2引用例の記載からみて、ブロアスイッチOFFでも走行動圧を利用して空調を行い、車室内温度を目標値に追従するように制御する車両用空調制御装置において、ブロアオフ時に目標温度が変更されこの後ブロアがオンに切り替えられた場合に、目標温度設定手段にブロアオフ時における変更後の目標温度をそのまま保持させるようにすることは、この出願前より行われていたことであるということができる。
一方、上記第1引用例には、停止モード中に設定温度が変更され、その後停止モードを解除する操作がなされた時に、温度設定器35が、停止モード中に変更された設定温度の値を保持して温度表示部39にこの変更された設定温度を表示するようにしているのか否かについては、記載されていないけれども、上記第1引用例の記載からは、上記第1引用例に記載されたものの温度設定器35が、停止モード中に変更された設定温度の値を保持して温度表示部39にこの変更された設定温度を表示することができないものであるとする根拠も見当たらない。
そうすると、後者に、ブロアオフ時に目標値が変更されこの後ブロアがオンに切り替えられた場合は、目標温度設定手段にブロアオフ時における変更後の目標値をそのまま保持させるようにするようなことは、上記第2引用例に記載されたものに基づいて当業者が極めて容易に考えられる程度のことである。
従って、補正された訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案は、上記第1引用例に記載されたものおよび上記第2引用例に記載されたものに基づいて、当業者が極めて容易に考案することができたものであり、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものである。
続いて、補正された訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項2に記載されたものについて、検討する。
補正された訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項2に記載されたもの(前者)と、上記第1引用例に記載されたもの(後者)とを比較検討すると、上記の第1引用例の記載からみて、前者と後者は、ブロアのオン・オフを切り替えるブロアスイッチと、車室内温度を目標値に追従するように制御するマイクロコンピュータを備えた温度制御手段と、上記目標値を任意に設定することができる目標温度設定手段と、設定値を表示する電光式の表示部とが設けられた車両用空調制御装置であって、ブロアオフ時に目標温度設定手段の目標値の変更を可能とする一方、ブロアオフ時に、車室内温度の目標値が変更されたときには、該目標値を上記表示部に電光表示するようにした車両用空調制御装置である点において一致し、(1)前者の目標温度設定手段が、スイッチを左右に回転させることにより目標値を任意に設定することができるものであるのに対して、後者の目標温度設定手段が、プッシュ式のアップスイッチ又はダウンスイッチを押すことにより目標値を任意に設定することができるものである点、および(2)前者が、ブロアオフ時に目標値が変更されこの後ブロアがオンに切り替えられた場合は、目標温度設定手段にブロアオフ時における変更後の目標値をそのまま保持させるようにしているのに対して、後者は、ブロアオフ時に目標値が変更されこの後ブロアがオンに切り替えられた場合は、目標温度設定手段にブロアオフ時における変更後の目標値をそのまま保持させるようにしているのか否かが格別記載されていない点において両者は相違しているから、既に検討したとおり、補正された訂正明細書の実用新案登録の実用新案登録請求の範囲の請求項2に係る考案も、上記第1引用例に記載されたものおよび上記第2引用例に記載されたものに基づいて、当業者が極めて容易に考案することができたものであって、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものである。
なお、実用新案登録権者は、平成11年7月6日付け意見書において、「第2引用例の考案においては、ブロアオフ時にこれがオンに切り替えられても目標温度を選択する余地はなく、必然的に変更後の目標温度となっているだけであり、したがって第2引用例の考案では目標温度をどの様に設定すべきかといった問題は生じる余地はありません。」(第7頁第24?27行)、「第1引用例及び第2引用例のいずれにも、ブロアをオンに切り替えたときに吹き出し温度の急変を防止するには目標温度をどの様に設定すべきかという本件の技術課題は記載されておらず、かつ第2引用例の考案においては目標温度を選択する余地もない以上、当業者といえども、第1引用例の考案と第2引用例の考案とに基づいて、本件第1の考案(補正された訂正明細書の実用新案登録の実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案のことと解する。)に想到することは困難であると思料します。」(第8頁第2?7行)と主張しているけれども、既に述べたように、ブロアスイッチOFFでも走行動圧を利用して空調を行い、車室内温度を目標値に追従するように制御する車両用空調制御装置において、ブロアオフ時に目標温度が変更されこの後ブロアがオンに切り替えられた場合に、目標温度設定手段にブロアオフ時における変更後の目標温度をそのまま保持させるようにすることが、上記第2引用例に示されているということができる以上、上記の実用新案登録権者の主張は採用することができない。
従って、補正された訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案および請求項2に係る考案は、いずれも、上記第1引用例に記載されたものおよび第2引用例に記載されたものに基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用する特許法第120条の4第3項の規定において更に準用する同法第126条第3項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。
(4)取消理由について
本件実用新案登録第2546375号の実用新案登録請求の範囲の請求項(1)に係る考案および請求項(2)に係る考案は、その実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、それぞれ、その実用新案登録請求の範囲の請求項(1)に記載された事項および請求項(2)に記載された事項によって特定される次の通りのものにあると認める。
「【請求項1】ブロアのオン・オフを切り替えるブロアスイッチと、車室内温度を、目標値に追従するように制御する温度制御手段と、上記目標値を任意に設定することができる目標温度設定手段とが設けられた車両用空調制御装置において、ブロアオフ時に目標温度設定手段の目標値の変更を可能とする一方、ブロアオフ時に目標値が変更されこの後ブロアがオンに切り替えられた場合には、目標温度設定手段にブロアオフ時における変更後の目標値をそのまま保持させるようにしたことを特徴とする車両用空調制御装置。」
「【請求項2】請求項1に記載された車両用空調制御装置において、ブロアオフ時に、車室内温度の目標値が変更されたときには、該目標値を表示するようにしたことを特徴とする車両用空調制御装置。」
これに対して、実用新案登録異議申立人である株式会社デンソーが証拠方法、甲第1号証として提出した「トヨタ セリカ 新型車解説書」、昭和60年8月20日、トヨタ自動車株式会社サービス部発行(以下、引用例という。)の6-63頁には、「空調システム」の「ヒータコントロール」が図示されており、この図の記載からみて、このヒータコントロールパネルには、「温度コントロールノブ」及び「ブロアスイッチ」が設けられていること、そしてこの温度コントロールノブの上部には、設定温度表示をするためのシートを貼り付けることができることが窺え、上記引用例の6-65頁には、そのシートを貼り付けた状態の図が記載されている。
また、上記引用例の6-63頁には、「温度コントロールノブ」について、「好みの温度に設定することにより常に快適になるよう自動温度コントロールします。」ということが記載されており、「ブロアスイッチ」について、「AUTO………インジケータが点灯し自動制御される吹き出し口温度に連動して、ブロアスピードを自動的に切り替えます。(COOL側5段,WARM側4段)
AUTO以外………操作したスイッチのインジケータが点灯しそのスイッチのブロアスピードに固定されます。上記以外………2重押しなどで前スイッチが解除状態になった場合はOFFになります。」ということが記載されており、「ブロアスイッチOFF時」について、「ブロアスイッチOFFでもモード切り替えスイッチ、内外気切り替えスイッチ、温度コントロールノブは作動し、動圧換気も可能です。」ということが記載されている。
更に、上記引用例の6-65頁には、「温度コントロールノブ(温度設定抵抗)」について、「温度コントロールノブは平行スライドを採用し、設定温度25℃の中央部にノブの節度感をもたせ使用性を向上しました。温度コントロールノブをスライドすることにより、設定温度を抵抗値としてシステムアンプリファイアに伝えます。また、MAX COOL、MAX WARMゾーンを設け、パネル表示温度に関係なく最大冷房、最大暖房能力を発揮するものとして快適性を向上しました。」ということが記載されている。
更にまた、上記引用例の6-66頁?6-67頁には、「コントロールシステム」について、「温度設定ノブ(温度コントロールノブ)により決定された設定温度信号と、同時に車室内温度を内気センサで、日射量を日射センサで、外気温度を外気センサでそれぞれ検知した信号をシステムアンプリファイアに入力します。これらの情報を基にエアミックスダンパ切り替え用サーボモータを駆動し、エアミックスダンパ、ウオータバルブの開閉度合およびブロアスピードを制御します。サーボモータの駆動量はポテンショメータを通じて再びシステムアンプリファイアに入力され、設定温度に対する差をシステムアンプリファイアが補正しオートエアコンの作動が決定されます。」ということがコントロールシステム図と共に記載されている。
以上の上記引用例の記載からみて、上記引用例に記載された空調システムのブロアスイッチは、ブロアのオン・オフをも切り替えるスイッチであり、そのコントロールシステムは、車室内温度を目標値に追従するように制御する温度制御を行う手段であり、その温度コントロールノブは、目標温度を任意に設定することができる手段であるということができる。
そして、上記引用例の「ブロアスイッチOFFでもモード切り替えスイッチ、内外気切り替えスイッチ、温度コントロールノブは作動し、動圧換気も可能です。」という記載とコントロールシステム図の記載からみて、上記引用例に記載された空調システムは、ブロアスイッチOFFでも走行動圧を利用して(いわゆるラム圧風を利用して)空調を行い、車室内温度を目標値に追従するように制御しているということができる。
また、上記引用例の記載からみて、上記引用例に記載された空調システムの温度コントロールノブは、手動操作のスライド式であるから、ブロアスイッチのオン・オフ状態の切り替えによって移動するものではなく、ブロアオフ時に温度コントロールノブの位置を変更したときは、ブロア再起動時のノブの位置は、ブロアオフ時での変更後の位置となると解されることから、この温度コントロールノブは、ブロアオフ時に目標温度の変更を可能とする一方、ブロアオフ時に目標温度が変更されこの後ブロアがオンに切り替えられた場合には、ブロアオフ時における変更後の目標温度をそのまま保持しうるものであるということができる。
更に、上記引用例の記載からみて、上記引用例に記載された空調システムの温度コントロールノブの上部に貼り付けられたシートは、温度コントロールノブとの位置関係から設定温度を表示することになると解されるから、温度コントロールノブとシートは、ブロアオフ時に、車室内温度の目標値が変更されたときに、この変更後の目標値を表示しているものであると言うことができる。
そうすると、上記引用例に記載されたものは、実用新案登録請求の範囲の請求項(1)に記載された事項を全て備えており、また、請求項(2)に記載された事項も全て備えている。
従って、本件実用新案登録の実用新案登録請求の範囲の請求項(1)に係る考案および請求項(2)に係る考案は、いずれも、上記引用例に記載されたものであるから、そのいずれも、実用新案法第3条第1項第3号に該当し、実用新案登録を受けることができない。
(5)むすび
以上のとおりであるから、実用新案登録第2546375号の請求項(1)に係る考案および請求項(2)に係る考案についての実用新案登録は、は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用される特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 1999-09-28 
出願番号 実願平3-5600 
審決分類 U 1 651・ 113- Z (B60H)
最終処分 取消  
前審関与審査官 粟津 憲一  
特許庁審判長 寺尾 俊
特許庁審判官 高木 彰
歌門 恵
登録日 1997-05-09 
登録番号 実用登録第2546375号(U2546375) 
権利者 株式会社日本クライメイトシステムズ
広島県東広島市八本松町大字吉川5658番
考案の名称 車両用空調制御装置  
代理人 碓氷 裕彦  
代理人 大貫 和保  
代理人 河宮 治  
代理人 青山 葆  
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