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審決分類 |
審判 全部申し立て F02M |
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管理番号 | 1009183 |
異議申立番号 | 異議1999-72414 |
総通号数 | 8 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2000-08-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-06-12 |
確定日 | 1999-12-18 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 実用新案登録第2586875号「燃料噴射ポンプ用のトーショナルビスカスダンパ取付構造」の実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 実用新案登録第2586875号の実用新案登録を維持する。 |
理由 |
1.手続きの経緯・本件考案 本件実用新案登録第2586875号は、平成4年8月25日に実用新案登録出願され、平成10年10月9日に設定登録されたものであり、その後、登録異議の申立て及び取消し理由の通知がなされ、その指定期間内に意見書が提出されたものであり、その請求項1に係る考案(以下「本件考案」という。)は、願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項1】ケースとカバーによって円筒状の密閉された空間を形成し、この密閉空間内部にスラスト及びジャーナルベアリングによって位置決めされ、回転自在な状態で支持された慣性リングを収納すると共に、密閉空間内部に高粘度液体を満たしてなるトーショナルビスカスダンパを、燃料噴射ポンプのカムシャフトとエンジン駆動力が伝達されるドライブシャフトとの連結部に介装して取り付ける構造であって、前記トーショナルビスカスダンパのケースを前記円筒状密閉空間を形成する内筒部と外筒部とから構成し、前記ケースの一方の端部の内筒部内周面に連接し該内筒部の開放部を閉塞する如く設けられた第1の連結部と、ケースの他方の端部の直径方向に相対向する位置から夫々軸方向に突出して設けられた一対の第2の連結部と、を設ける一方、複数の薄板を重合して形成され前記ドライブシャフトに締結される第1のラミネート式カップリングと、該第1のラミネート式カップリングが締結されるアームジョイントと、該アームジョイントが締結される第2のラミネート式カップリングとを設け、前記第1の連結部をカムシャフトに固定取付すると共に、前記第2の連結部を第2のラミネート式カップリングに締結したことを特徴とする燃料噴射ポンプ用のトーショナルビスカスダンパ取付構造。」 2.登録異議申立ての理由及び取消し理由の概要 これに対して、上記登録異議申立ての理由及び取消し理由の概要は、本件考案は、本件実用新案登録の出願の日前の特許出願に係り本件実用新案登録の出願後に出願公開された特願平4-167901号(特開平6-42425号)(以下「先願」という。)の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「先願明細書等」という。)に記載された発明と同一であるから、本件実用新案登録は、実用新案法第3条の2の規定により拒絶されるべき出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである、というものである。 3.引用例 上記先願明細書等には、以下の事項が記載されているものと認める。 すなわち、 「本発明は、ディーゼルエンジンに備えられる燃料噴射ポンプの振動防止装置に関するものである。」(出願公開公報段落【0001】参照)、「この振動防止装置は、燃料噴射ポンプ1のカム軸5にフライホイール機能を有した回転部材21が設けられ、この回転部材21に所定の間隙を以て周方向に摺動自在に嵌合する環状質量体22が設けられていると共に、その間隙に高粘性の流体たるシリコンオイル23が充填されて構成されている。」(同段落【0013】参照)、「回転部材21は、充分大きな質量を有した短円柱体で成り、軸中央に形成された凹部24にカム軸5の端部が貫通してナット25により締結されている。また反対側の端面には、駆動シャフト8に接続されたカップリング10がボルト26により連結されている。」(同段落【0014】参照)、「このほか駆動シャフト8には従来同様に駆動ギア9が取り付けられ、軸受箱7によって回転自在に支持されている。」(同段落【0016】参照)、「燃料噴射ポンプ1は、駆動シャフト8から伝達された回転駆動力によりカム軸5が回転されて、これに係合するプランジャ(図示略)が上下動することにより燃料噴射を行う。この際の軸トルクは、回転部材21のフライホイール機能により均一化される。そして駆動系には、駆動トルクを加振源とし回転部材21を慣性マスとしたねじり振動が発生するが、回転部材21と環状質量体22との間の周方向の相対変位が、シリコンオイル23の粘性(剪断抵抗力)により速やかに吸収され、減衰される。」(同段落【0018】参照)、「このように、フライホイールとなる回転部材21に、シリコンオイル23を介して環状質量体22を設けてビスカスダンパとして構成したので、カム軸5のトルク変動が抑えられると共に、有害なねじり振動が減衰され、共振の発生が防止される。」(同段落【0019】参照)、「カム軸にフライホイール機能を有した回転部材を設け、所定の間隙を以て嵌合する環状質量体を設けると共に、間隙に高粘性の流体を充填させたので、トルク変動が抑えられると共に、有害なねじり振動が速やかに減衰されて、共振の発生が抑制される。」(同段落【0026】参照)等の記載があり、また、先願明細書等の図1、図5、燃料噴射ポンプのカム軸と駆動軸をラミネートカップリングにより連結することが上記先願の出願前より周知の事項である(実公昭55-12587号公報、実願平1-143104号(実開平3-85727号)のマイクロフィルム、実公昭55-37729号公報、特開平3-18661号公報等参照)ことから、先願明細書等には、複数の薄板を重合して形成され前記駆動シャフト8に締結される第1のラミネート式カップリングと、該第1のラミネート式カップリングが締結されるアームジョイントと、該アームジョイントが締結される第2のラミネート式カップリングとを設けた点が記載されていることも明らかと認められる。したがって、前記記載、図面の簡単な説明及び図面等を参照すると、上記先願明細書等には、 “フライホイール機能を有する回転部材21によって円筒状の密閉された空間を形成し、この密閉空間内部に位置決めされ、回転自在な状態で支持された環状質量体22を収納すると共に、密閉空間内部にシリコンオイル23を満たしてなるビスカスダンパを、燃料噴射ポンプ1のカム軸5とディーゼルエンジン駆動力が伝達される駆動シャフト8との連結部に介装して取り付ける構造であって、前記ビスカスダンパの回転部材21を前記円筒状密閉空間を形成する内筒部と外筒部とから構成し、前記回転部材21の軸中央に形成された凹部24にカム軸5の端部が貫通してナット25により締結する第1の連結部と、回転部材21の他方の端部に設けられた一対のボルト26用のねじ穴より構成される第2の連結部と、を設ける一方、複数の薄板を重合して形成され前記駆動シャフト8に締結される第1のラミネート式カップリングと、該第1のラミネート式カップリングが締結されるアームジョイントと、該アームジョイントが締結される第2のラミネート式カップリングとを設け、前記第1の連結部をカム軸5に固定取付すると共に、前記第2の連結部を第2のラミネート式カップリングに締結した燃料噴射ポンプ用のフライホイール機能を有するビスカスダンパ取付構造”(以下「先願発明」という。) が記載されているものと認められる。 4.対比・判断 本件考案と上記先願発明とを対比すると、先願発明の“環状質量体22”、“シリコンオイル23”、“ビスカスダンパ”、“燃料噴射ポンプ1”、“駆動シャフト8”、“ディーゼルエンジン”が、それぞれ、本件考案の「慣性リング」、「高粘度液体」、「トーショナルビスカスダンパ」、「燃料噴射ポンプ」、「ドライブシャフト」、「エンジン」に相当し、先願発明の“回転部材21”が本件考案の「ケースとカバー」に対応するから、 両者は、 ケースとカバーによって円筒状の密閉された空間を形成し、この密閉空間内部に位置決めされ、回転自在な状態で支持された慣性リングを収納すると共に、密閉空間内部に高粘度液体を満たしてなるトーショナルビスカスダンパを、燃料噴射ポンプのカムシャフトとエンジン駆動力が伝達されるドライブシャフトとの連結部に介装して取り付ける構造であって、前記トーショナルビスカスダンパのケースを前記円筒状密閉空間を形成する内筒部と外筒部とから構成し、前記ケースの一方の端部の内筒部内周面に連接し該内筒部の開放部を閉塞する如く設けられた第1の連結部と、ケースの他方の端部の一対の第2の連結部と、を設ける一方、複数の薄板を重合して形成され前記ドライブシャフトに締結される第1のラミネート式カップリングと、該第1のラミネート式カップリングが締結されるアームジョイントと、該アームジョイントが締結される第2のラミネート式カップリングとを設け、前記第1の連結部をカムシャフトに固定取付すると共に、前記第2の連結部を第2のラミネート式カップリングに締結した燃料噴射ポンプ用のトーショナルビスカスダンパ取付構造、である点で一致し、 ▲1▼本件考案は、慣性リングが「スラスト及びジャーナルベアリングによって位置決めされ」るのに対して、先願発明は「スラスト及びジャーナルベアリングによって位置決めされ」ると記載されたものでない点(以下「相違点1」という。)、 ▲2▼本件考案は、一対の第2の連結部が「ケースの他方の端部の直径方向に相対向する位置から夫々軸方向に突出して設けられた」ものであるのに対して、先願発明は、フライホイール機能を有する回転部材21に形成されたねじ穴である点(以下「相違点2」という。) で、相違する。 そこで、上記各相違点1,2について検討する。 (1)相違点1について トーショナルビスカスダンパにおいて、慣性リングをスラスト及びジャーナルベアリングによって位置決めすることは、本件実用新案登録の出願前に周知の事項であり(実願昭63-156011号(実開平2-76242号)のマイクロフィルム、特開昭63-57937号公報、(実願平1-149214号(実開平3-88048号)のマイクロフィルム等参照)、上記相違点1は、課題解決のための具体化手段における微差にすぎない。 (2)相違点2について 本件考案は、一対の第2の連結部が「ケースの他方の端部の直径方向に相対向する位置から夫々軸方向に突出して設けられた」ものであることから、ケースとカバーを薄肉としてもラミネート式カップリングとの連結部を形成できるものであり、そのことによって、ケースとカバーの慣性質量を小さくして、トーショナルビスカスダンパの優れたねじり振動防止効果を達成し得るものであるのに対して、先願発明は、ケースとカバーに対応する回転部材21自身がフライホイール機能を有するものであるから、比較的大きな慣性質量を有するものと認められるので、本件考案は先願発明に比較して顕著な作用効果を有し、上記相違点2を課題解決のための具体化手段における微差とすることはできない。 したがって、本件考案を先願発明と同一とすることはできない。 5.むすび 以上のとおりであるから、本件実用新案登録は、登録異議申立人が主張する理由及び提出した証拠によっては、取り消すことはできない。 また、他に本件実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 1999-12-03 |
出願番号 | 実願平4-59857 |
審決分類 |
U
1
651・
161-
Y
(F02M)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 八坂 直人 |
特許庁審判長 |
蓑輪 安夫 |
特許庁審判官 |
山口 直 清田 榮章 |
登録日 | 1998-10-08 |
登録番号 | 実用登録第2586875号(U2586875) |
権利者 |
株式会社フコク 埼玉県上尾市菅谷3丁目105番地 |
考案の名称 | 燃料噴射ポンプ用のトーショナルビスカスダンパ取付構造 |
代理人 | 椎原 英一 |
代理人 | 笹島 富二雄 |