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審決分類 |
審判 全部申し立て E02F |
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管理番号 | 1009186 |
異議申立番号 | 異議1997-75021 |
総通号数 | 8 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2000-08-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1997-10-17 |
確定日 | 1999-12-22 |
異議申立件数 | 3 |
事件の表示 | 実用新案登録第2534317号「全旋回型バックホー」の実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 実用新案登録第2534317号の実用新案登録を取り消す。 |
理由 |
I.手続の経緯 本件は、平成2年10月2日に出願された実願平2-104276号の一部を、実用新案法第9条第1項により準用する特許法第44条第1項の規定により分割して新たな実用新案登録出願として、平成6年9月26日に実用新案登録出願され、平成9年2月13日に実用新案登録第2534317号として登録され、その後、株式会社小松製作所、小松ゼノア株式会社、油谷重工株式会社より実用新案登録異議の申立てがなされ、次いで取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成10年8月31日に訂正請求がなされ、更にその後訂正拒絶理由通知がなされ、それに対して平成11年7月19日付けで手続き補正書が、提出されたものである。 II.訂正請求及び補正について 1.訂正請求に対する補正について 訂正請求に対する補正は、訂正請求書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲をさらに減縮するものであり、かつ減縮された実用新案登録請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との不整合を回避するためのもので、明りょうでない記載の釈明をしたものである。そして、これらの補正は、訂正請求書に添付した明細書に記載された事項の範囲内であり、しかも訂正請求書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものでないから、訂正請求書の要旨を変更するものではなく、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則9条2項において準用する特許法120条の4第3項において更に準用する同法131条2項の規定に適合する。 2.訂正後の考案について 訂正明細書の請求項1に係る考案(以下、「訂正後の考案」という)は、補正された訂正請求書に添付された訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される次のとおりである。 「【請求項1】旋回台(3)に操縦部(4)とバックホー装置(5)とを左右に並べて配置し、前記操縦部(4)とバックホー装置(5)との間に前記操縦部(4)とバックホー装置(5)とを仕切るもので前記バックホー装置(5)のブーム(8)の上下揺動軌跡に沿った隔壁(14)を備え、前記バックホー装置(5)側を透視可能な透視部(15)を前記隔壁(14)に備えると共に、前記隔壁(14)の上端に屋根(21)を片持ち状に支持して前記操縦部(4)側に延出し、平面視で前記屋根(21)の外周部を前記旋回台(3)の外周部から外側に出ないように前記旋回台(2)の旋回範囲の内側に位置させて、平面視で前記屋根(21)の外周部を前記旋回台(3)の外周部に略沿わせてある全旋回型バックホー。」 3.引用刊行物記載の考案 これに対して、当審が先に通知した訂正拒絶理由において引用した、本件登録実用新案の出願前に頒布された、「ヤンマークローラバックホーB3」カタログ、ヤンマーディーゼル株式会社発行(異議申立人油谷重工株式会社提出の甲第4号証)(以下「刊行物1」という。)、又は「IHI UX超小旋回ミニシリーズis28ux is55ux」カタログ、石川島建機株式会社発行(異議申立人油谷重工株式会社提出の甲第3号証)(以下「刊行物2」という。)には、「旋回台に操縦部とバックホー装置とを左右に並べて配置し、前記操縦部とバックホー装置との間に前記操縦部とバックホー装置とを仕切るもので前記バックホー装置のブームの上下揺動軌跡に沿った隔壁を備え、前記バックホー装置側を透視可能な透視部を前記隔壁に備えると共に、前記隔壁の上端及び運転部左側の支柱で屋根を支持して前記操縦部を覆い、平面視で前記屋根の外周部を前記旋回台の外周部から外側に出ないように前記旋回台の旋回範囲の内側に位置させて、平面視で前記屋根の外周部を前記旋回台の外周部に略沿わせてある全旋回型バックホー」に関する考案が記載されている。 また実願昭57-48654号(実開昭58-153262号)のマイクロフィルム(以下「刊行物3」という)には、「運転席後方2本の支柱のみにより覆い部材を片持状態で支持し、前方支柱を省いて運転部からの前方視界を向上できる」(明細書第2頁第12?15行)、「屈曲リブ(7)により剛性が高められたFRP製覆い部材(5)を、運転部(6)後方のボンネット(4)前端部に立設した2本の支柱(9)により片持ち支持状態で運転部(6)上方に支持してあり、運転部(6)前方の支柱を省くことにより運転部(6)からの前方視界を向上するように構成してある。」(明細書第4頁第11?16行)や「本考案による覆い構造は、バックホウ作業車・・(中略)・・に適用することができる。」(明細書第5頁第16?19行)等が記載されており、これらの記載、及び第1図、第2図から、刊行物3には、「バックホーの覆い部材を、ボンネットの前端部に立設した2本の支柱により片持ち状に支持し、運転部側に延出して、運転部からの視界の障害となる支柱を省き、視界の向上を図る」という技術的事項が開示されていると認められる。 4.対比・判断 訂正後の考案と、刊行物1又は2に記載の考案とを比較すると、両者は、以下の相違点を除いてその余の点は一致している。 (相違点) 屋根の取り付け構造において、訂正明細書の請求項1に係る考案は、隔壁の上端に片持ち状に支持したのに対し、刊行物1又は2記載の考案は、隔壁上端と運転部左側の支柱で支持した点。 この相違点について検討するため、訂正明細書の請求項1に係る考案と、刊行物3記載の考案とを比較すると、刊行物3記載の考案における「覆い部材」、「運転部」は、それぞれの機能に照らし、訂正明細書の請求項1に係る考案の「屋根」、「操縦部」に相当するものと認められ、結局刊行物3には、「屋根をボンネット前端部に立設した支柱により、片持ち状態に支持し、操縦部側に延出することにより、操縦部からの視界の障害になる支柱を省き視界の向上を図る」という、上記相違点に関する本件考案と軌を一にする技術的事項が示されているから、刊行物1又は2記載の考案において、本件考案が採用している上記相違点における構成を採るようにすることは、当業者が、必要に応じて極めて容易になし得る程度の設計的事項に過ぎない。そして訂正明細書に記載された作用効果は、刊行物1又は2及び3に記載された考案から期待でき又は予期できる程度のものである。 5.むすび したがって、訂正後の考案は、上記刊行物1又は2及び3に記載された考案に基いて当業者が容易に考案をすることができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録出願の際独立して登録を受けることができないものであるから、上記訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定において準用され、同附則第10条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において更に準用する特許法第126条第4項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。 III.実用新案登録異議申立についての判断 1.本件登録実用新案 本件請求項1に係る考案は、実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】旋回台(3)に操縦部(4)とバックホー装置(5)とを左右に並べて配置し、前記操縦部(4)とバックホー装置(5)との間に前記操縦部(4)とバックホー装置(5)とを仕切る隔壁(14)を備え、前記バックホー装置(5)側を透視可能な透視部(15)を前記隔壁(14)に備えると共に、前記隔壁(14)の上端に屋根(21)を片持ち状に支持して前記操縦部(4)側に延出し、平面視で前記屋根(21)の外周部を前記旋回台(3)の外周部から外側に出ないようにして、平面視で前記屋根(21)の外周部を前記旋回台(3)の外周部に略沿わせてある全旋回型バックホー。」 2.引用刊行物の記載内容 当審が先に通知した取消理由に引用した、本件登録実用新案の出願前に頒布された実願昭63-66678号(実開平1-168349号)のマイクロフィルム(以下「刊行物4」という。)には、「(A)は、バックホーを示し、左右一対のクローラ(1)を装備した走行フレーム(2)の略中央部に旋回基台(3)を立設し、同旋回基台(3)の上面に旋回フレーム(4)を旋回自在に敷設し、同旋回フレーム(4)の上面左側に運転部(5)、その後方に原動機部(6)を設け、旋回フレーム(4)の中央部に、掘削作業部(B)の基端を上下回動自在に枢着している。」(明細書第4頁第10?17行)、「運転部(5)の右側前後端と、座席(19)の左側に、それぞれ前支柱(20)、後支柱(21)、左支柱(22)を立設してキャノピー(C)の天井部(23)を支持している。」(明細書第6頁第1?4行)の記載及び第1?3図からみて、 刊行物4には、「旋回フレームの運転部とバックホー(A)とを左右に並べて配置し、前記運転部(5)とバクフォー装置(A)との間に前記運転部(5)とバックフォー装置(A)とを仕切る運転部右側に側壁体を備え、前記バックフォー装置(A)側を透視可能な窓を該側壁体に備えると供に、該側壁体の上端と運転部左側支柱(22)でキャノピー(C)の天井部(23)を支持して前記運転部(5)を覆い、平面視で前記キャノピー(C)の天井部(23)の外周部を前記旋回フレームの外周部に略沿わせてある全旋回型バックフォー」が記載されているものと認める。 また刊行物3には、上記II.3の欄で述べた技術的事項が記載されている。 3.当審の判断 (1)本件請求項1に係る考案と前記刊行物4に記載のものとを対比すると、刊行物4記載の考案における「旋回フレーム」、「運転部」、「側壁体」、「窓」及び「キャノピーの天井部」は、それぞれの機能に照らし、それぞれ本件考案の「旋回台」、「操縦部」、「隔壁」「透視部」及び「屋根」に相当すると認められるから、本件請求項1に係る考案と前記刊行物4に記載された考案は、「旋回台に操縦部とバックホー装置とを左右に並べて配置し、前記操縦部とバックホー装置との間に前記操縦部とバックホー装置とを仕切る隔壁を備え、前記バックホー装置側を透視可能な透視部を前記隔壁に備えると共に、平面視で前記屋根の外周部を前記旋回台の外周部から外側に出ないようにして、平面視で前記屋根の外周部を前記旋回台の外周部に略沿わせてある全旋回型バックホー。」である点において一致し、 屋根の取り付け構造において、本件請求項1に係る考案は、隔壁の上端に片持ち状に支持したのに対し、刊行物4に記載された考案は、隔壁の上端と運転部左側支柱で支持した点で相違している。 この相違点について検討するため、訂正明細書の請求項1に係る考案と、刊行物3記載の考案とを比較すると、II.4.で述べたように刊行物3記載の考案における「覆い部材」、「運転部」は、それぞれの機能に照らし、本件請求項1に係る考案の「屋根」、「操縦部」に相当するものと認められ、結局刊行物3には、屋根をボンネット前端部に立設した支柱により、片持ち状態に支持し、操縦部側に延出することにより、操縦部からの視界の障害になる支柱を省き視界の向上を図るという、上記相違点に関する本件考案と軌を一にする技術的事項が示されているから、刊行物4記載の考案において、本件考案が採用している上記相違点における構成を採るようにすることは、当業者が、必要に応じて極めて容易になし得る程度の設計的事項に過ぎない。そして本件考案の明細書に記載された作用効果は、刊行物3及び4に記載された考案から期待でき又は予期できる程度のものである。 4.むすび 以上、本件請求項1に係る考案は、前記引用例3及び4に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。 したがって、本件請求項1に係る考案についての実用新案登録は、拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してなされたものであり、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第1項及び第2項の規定により、取り消すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 1999-10-29 |
出願番号 | 実願平6-11842 |
審決分類 |
U
1
651・
121-
ZB
(E02F)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 安藤 勝治 |
特許庁審判長 |
佐田 洋一郎 |
特許庁審判官 |
阿部 綽勝 鈴木 公子 |
登録日 | 1997-02-13 |
登録番号 | 実用登録第2534317号(U2534317) |
権利者 |
株式会社クボタ 大阪府大阪市浪速区敷津東一丁目2番47号 |
考案の名称 | 全旋回型バックホー |
代理人 | 北村 修一郎 |
代理人 | 井上 勉 |
代理人 | 荒垣 恒輝 |