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審決分類 審判 全部申し立て   F15B
管理番号 1009187
異議申立番号 異議1998-70151  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-08-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-01-06 
確定日 1999-10-13 
異議申立件数
事件の表示 実用新案登録第2540597号「アクチュエータ」の実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 実用新案登録第2540597号の実用新案登録を取り消す。
理由 【1】手続きの経緯
本件実用新案登録第2540597号の考案についての出願は、昭和63年8月23日に実用新案登録出願されたものであって、平成9年4月18日にその実用新案権の設定登録がなされ、その後、本件の請求項1に係る実用新案登録に対して、羽村行彦および小林数夫より登録異議の申立てがなされ、そして、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成10年6月18日に訂正請求がなされ、さらに訂正拒絶理由通知がなされ、この訂正拒絶理由に対して、平成10年12月22日付けで手続補正書が提出されたものである。
【2】訂正の適否についての判断
ア.訂正明細書の請求項1に係る考案
訂正明細書の請求項1に係る考案は、平成10年12月22日付け手続補正書によって補正された訂正明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「流体圧力によって作動する1個のピストン(4)を移動可能に内在するシリンダ本体(1)と、前記ピストン(4)に連結され前記シリンダ本体(1)の側部から突出するロッド(7)と、前記シリンダ本体(1)の上部の取付面に一方が装着されて前記ロッド(7)の移動方向に他方が相対移動する一対のリニアガイド(12)と、前記リニアガイド(12)の他方に装着されて前記ロッド(7)と略直交する方向に突出した連結部(13a)を有するテーブル(13)と、を備えるアクチュエータであって、前記テーブル(13)の連結部(13a)は、前記テーブル(13)と略同一幅で、前記シリンダ本体(1)の前記連結部(13a)側端面の下部近傍まで延びているとともに、前記ロッド(7)との結合が、前記連結部(13a)より突出していない状態で、径方向に遊嵌合にして固定されていることを特徴とするアクチュエータ。」
イ.引用刊行物に記載された考案
訂正明細書の請求項1に係る考案(以下、「本件訂正考案」という。)に対して、当審が通知した訂正拒絶理由通知で引用した刊行物1(実願昭61-12530号(実開昭62-126604号)のマイクロフィルム)には、「図面で(1)は基台(2)上に横設したシリンダ、(3)は該シリンダ(1)の上側に設けた軸方向に長手のスライダを示し、該スライダ(3)の一端に該シリンダ(1)のピストンロッド(4)を連結子(5)を介して連結して、該シリンダ(1)の作動による該ピストンロッド(4)の進退動により該スライダを進退動作し得るようにした。/尚、図示のものでは、該スライダ(3)の上部にV溝を形成した載置具(6)を左右1対に固設して、該両載置具(6)(6)上にピン形状の被移動物Aを載置し、これを第2図に示す如く横方向前後に移動するようにした。/ここで本考案によれば、スライダ(3)をシリンダ(1)の両端のエンドカバー(7)(7)を締付けるタイロッドボルト(8)に摺動自在に支持させるもので、これを詳述するに、図示のものでは、該両エンドカバー(7)(7)を締付ける該シリンダ(1)の外周の上側の左右と下側の左右との計4本のタイロッドボルト(8)のうち上側の2本のタイロッドボルト(8)(8)に、該スライダ(3)をこれの端部下側にねじ止めした摺動子(3a)に形成する前後の各ガイド孔(3b)においてガイドブッシュ(3c)を介して嵌挿し,該スライダ(3)を該両タイロッドボルト(8)(8)に沿って移動自在とした。/(作用)スライダ(3)をシリンダ(1)の両端のエンドカバー(7)(7)を締付けるタイロッドボルト(8)に摺動自在に支持させることにより、該タイロッドボルト(8)が該スライダ(3)をガイドするガイド部材として機能し、従って専用のガイド部材が不要となる。」(明細書第3頁第1行?第4頁第11行)との記載があり、また、当該刊行物1に記載された「スライド装置」のシリンダ内部にピストンが移動可能に内在していることは、当業者にとって技術常識であるから、前記記載、及び、第1?4図の記載からみて、刊行物1には、流体圧力によって作動する1個のピストンを移動可能に内在する〔シリンダ及びエンドカバーからなる〕シリンダ本体(1;7,7)と、前記ピストンに連結され前記シリンダ本体の側部から突出するピストンロッド(4)と、前記シリンダ本体の上部に装着されたタイロッドボルト(8)及び前記ピストンロッドの移動方向に移動する摺動子(3a)からなるリニアガイドと、前記摺動子(3a)に装着されて前記ピストンロッド(4)と略直交する方向に突出した連結子(5)を有するスライダ(3)と、スライダ(3)に装着された載置具(6)とを備えるスライド装置であって、前記スライダ(3)の連結子(5)は、前記シリンダ本体の前記連結子側端面の下部近傍まで延びているとともに、前記ピストンロッド(4)と結合固定されているスライド装置、が記載されているものと認められる。
また、同じく引用した刊行物2(実願昭55-176024号(実開昭57-98303号)のマイクロフィルム)には、「第1図は円筒状本体1に摺動自在に套嵌した摺動カム2をエアシリンダ3により往復動させるようにした装置を示している。エアシリンダ3はその後端部が本体1に突設したピン4にボルト5で連結され、ピストンロッド6の先端に摺動カム2に固着した作動杆7の屈曲連結部7aを連結して摺動カム2を本体1に沿って往復運動させるようになっており、この場合ピストンロッド6と作動杆7との連結部分にこじり力が作用するので、これを防止するため次のような連結構造にしてある。第2図及び第3図に示すように、ピストンロッド6の先端に設けられたねじ部8に螺着するナットを相対する1組のスリーブ付ナット9とし、該ナット9のスリーブ部分10の外径Dを作動杆7の屈曲連結部7aに設けた連結孔11の孔径dより若干小さくすると共に、スリーブ部分10の長さLを連結孔11の長さ1の1/2より若干大きくし、両ナット9,9で屈曲連結部7aを両側から挟み付けるようにしてそのスリーブ部分10を連結孔11に嵌入させ、かつ両ナット9,9をピストンロッド6のねじ部8に螺着し、相対したスリーブ部分10,10が当接するまで締付けた連結構造である。この締付け状態において、連結孔11の両側面及び孔周面と両ナット9,9との間に若干の間隙ができ、連結部分に適度の遊びが得られる。したがって、ピストンロッド6と作動杆7との連結部分に作用するこじりや曲げは上記連結孔11と両ナット9.9との遊びの間隙により吸収され、シリンダ3に作用するのが避けられる。」(明細書第2頁第4行?第3頁第12行)との記載があり、また、当該刊行物2に記載された「シリンダ装置」のシリンダ内部にピストンが移動可能に内在していることは、当業者にとって技術常識であるから、この記載、及び、第1?3図の記載からみて、刊行物2には、流体圧力によって作動する1個のピストンを移動可能に内在するシリンダ(3)と、前記ピストンに連結され前記シリンダ(3)の側部から突出するピストンロッド(6)と、前記ピストンロッド(6)の移動方向に移動する前記ピストンロッド(6)と略直交する方向に突出した屈曲連結部(7a)を有する作動杆(7)とを備えるシリンダ装置において、前記作動杆(7)の屈曲連結部(7a)は、前記ピストンロッド(6)との結合が径方向に遊嵌合に固定されていることが記載されているものと認められる。
ウ.対比・判断
そこで、本件訂正考案と刊行物1に記載された考案とを対比すると、刊行物1に記載された「ピストンロッド」、「連結子」、「スライド装置」は、それぞれ、本件訂正考案の「ロッド」、「連結部」、「アクチュエータ」に相当し、刊行物1に記載された「タイロッドボルトと摺動子からなるリニアガイド」は、本件訂正考案の「一対のリニアガイド」に相当し、刊行物1に記載された「スライダ」も本件訂正考案の「テーブル」も、共に、上部にワークを載置できて移動する「被駆動移動体」であることに変わりはないので、両者は、流体圧力によって作動する1個のピストンを移動可能に内在するシリンダ本体と、前記ピストンに連結され前記シリンダ本体の側部から突出するロッドと、前記シリンダ本体の上部に一方が装着されて前記ロッドの移動方向に他方が相対移動する一対のリニアガイドと、前記リニアガイドの他方に装着されて前記ロッドと略直交する方向に突出した連結部を有する被駆動移動体とを備えるアクチュエータであって、前記被駆動移動体の連結部は、前記シリンダ本体の前記連結部側端面の下部近傍まで延びているとともに、前記ロッドと固定されているアクチュエータ、の点で一致するが、以下の各点(イ)?(ハ)で相違するものと認められる。
相違点;
(イ)本件訂正考案の被駆動移動体はテーブルであり、しかもこのテーブルの連結部は、テーブルと略同一幅であるのに対し、刊行物1に記載された考案は、被駆動移動体が平板状の形状ではなく、丸棒状のものに載置具6を固設し、しかも、該丸棒状の先端に平板状の連結部を固定したものであって、この平板状の連結部は、載置具6を固設した丸棒状のものと略同一幅でない点。
(ロ)本件訂正考案の被駆動移動体の連結部とロッドとの結合が、前記連結部より突出していない状態で、しかも、径方向に遊嵌合にして固定されているのに対し、刊行物1に記載された考案は、ロッドが連結部より突出した状態のまま固定されており、しかも、その結合が径方向に遊嵌合にして固定されているのか、不明である点。
(ハ)本件訂正考案の一対のリニアガイドの一方がシリンダ本体1の上部の取付面に装着されるものであるのに対し、刊行物1に記載された考案は、一対のリニアガイドの一方がシリンダ本体(エンドカバー7)の上部を締付ける2本のタイロッドボルト8であって、シリンダ本体の上部の取付面に装着されたものではない点。
そこで、上記相違点について検討する。
・相違点(イ)について、
アクチュエータの被駆動移動体を一枚の平板状のテーブルに形成することは、例えば、「機械設計」第26巻第14号(1982年11月臨時増刊号)P93、‥‥等に記載されるように、本件実用新案登録の出願前、当業者にとって周知の事項にすぎず、また、上記平板状のテーブルにおいて、テーブルの連結部をテーブルと略同一幅とすることは、当業者が必要に応じて適宜選択し得る程度の設計事項にすぎないので、相違点(イ)は、当業者が必要に応じて適宜変更し得る程度の差異にすぎないものというべきである。
・相違点(ロ)について、
刊行物2に記載される「ピストンロッド6」、「屈曲連結部7a」、「シリンダ装置」は、それぞれ、本件訂正考案の「ピストン」、「連結部」、「アクチュエータ」に相当し、また、刊行物2に記載された「作動杆」も本件訂正考案の「テーブル」も共に被駆動移動体であることに変わりはないから、アクチュエータにおいて、被駆動移動部材の連結部とロッドとの結合を、径方向に遊嵌合にして固定することは、上記刊行物2に記載されているといえる。したがって、刊行物1に記載された考案の被駆動移動体の連結部とロッドとの結合に、上記刊行物2記載の事項を適用し、もって、刊行物1に記載された考案の被駆動移動体の連結部とロッドとの結合を、径方向に遊嵌合にして固定することは、刊行物1及び2に記載された考案が、共に、テーブルや作動杆等の被駆動部材を移動させるアクチュエータという同一の技術分野に属するものである以上、当業者がきわめて容易になし得るものである。
また、棒状部材の先端に板状部材を突き合わせ、ボルトやナット等の固定手段で棒状部材の端部に板状部材を固定する際、板状部材の板厚が十分厚くとれ、しかも、ボルト頭部やナット等の固定手段を板状部材の表面より突出させたくない場合には、板状部材に座ぐり穴を形成し、ボルト頭部やナット等の固定手段を板状部材の表面より沈み込ませて、棒状部材の端部に板状部材を結合、固定することは、当業者が必要に応じてごく普通におこなう程度の慣用手段である(例えば、実開昭62-87202号公報、実開昭62-185916号公報、実開昭63-56319号公報参照)ことを考慮すれば、上記適用に当たり、被駆動移動体の連結部とロッドとの結合を、連結部より突出していない状態で固定する程度のことは、当業者が必要に応じて適宜選択し得る程度の設計事項にすぎないものと認められる。
・相違点(ハ)について、
刊行物1には、「スライダ(3)をシリンダ(1)の両端のエンドカバー(7)(7)を締付けるタイロッドボルト(8)に摺動自在に支持させることにより、該タイロッドボルト(8)が該スライダ(3)をガイドするガイド部材として機能し、従って専用のガイド部材が不要となる。」(第4頁第6?11行)と記載されていることから、該タイロッドボルトに替えて、専用のガイド部材を設けることも可能であると示唆しているものと認められる。そして、刊行物1に記載された考案において、タイロッドボルトとは別に専用ガイド部材を設けるとすれば、被駆動移動体であるスライダ3はシリンダ本体の上部に設けられているのであるから、その結果、一対のリニアガイドの一方である専用ガイド部材は、必然的にシリンダ本体の上部のいづれかの箇所を取付面として装着されるものとなることは明らかである以上、相違点(ハ)は、当業者が必要に応じて適宜変更し得る程度の差異にすぎないものと認められる。
そして、本件訂正考案の構成によってもたらされる効果も、刊行物1及び2に記載された考案から、当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。
したがって、本件訂正考案は、刊行物1及び2に記載された考案から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。
エ.結論
以上のとおりであるから、訂正明細書の請求項1に係る考案は、旧実用新案法第3条第2項の規定に違反し、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができない。
したがって、上記訂正は、平成6年法律第116号附則第9条第2項によって準用する特許法第120条の4第3項で準用する同法第126条第4項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。
【3】登録異議の申立てについての判断
ア.本件実用新案登録の請求項1係る考案
前記【2】エ.で述べたように、訂正請求の訂正が認められないので、本件実用新案登録の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「流体圧力によって作動する1個のピストン(4)を移動可能に内在するシリンダ本体(1)、前記ピストン(4)に連結され前記シリンダ本体(1)の側部から突出するロッド(7)、前記シリンダ本体(1)の上部の取付面に一方が装着されて前記ロッド(7)の移動方向に他方が相対移動する一対のリニアガイド(12)および前記リニアガイド(12)の他方に装着されて前記ロッド(7)と略直交する方向に突出した連結部(13a)を有するテーブル(13)を具備し、前記テーブル(13)の連結部(13a)と前記ロッド(7)との結合が径方向に遊嵌合にして固定されていることを特徴とするアクチュエータ。」
イ.取消理由に引用した考案
当審が通知した取消理由で引用した実願昭61-12530号(実開昭62-126604号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)、実願昭55-176024号(実開昭57-98303号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)には、すでに上記【2】イ.で示したように、以下の技術的事項が記載されているものと認められる。
・引用例1;流体圧力によって作動する1個のピストンを移動可能に内在する〔シリンダ及びエンドカバーからなる〕シリンダ本体(1;7,7)と、前記ピストンに連結され前記シリンダ本体の側部から突出するピストンロッド(4)と、前記シリンダ本体の上部に装着されたタイロッドボルト(8)及び前記ピストンロッドの移動方向に移動する摺動子(3a)からなるリニアガイドと、前記摺動子(3a)に装着されて前記ピストンロッド(4)と略直交する方向に突出した連結子(5)を有するスライダ(3)と、スライダ(3)に装着された載置具(6)とを備えるスライド装置であって、前記スライダ(3)の連結子(5)は、前記ピストンロッド(4)と固定されているスライド装置。
・引用例2;流体圧力によって作動する1個のピストンを移動可能に内在するシリンダ(3)と、前記ピストンに連結され前記シリンダ(3)の側部から突出するピストンロッド(6)と、前記ピストンロッド(6)の移動方向に移動する前記ピストンロッド(6)と略直交する方向に突出した屈曲連結部(7a)を有する作動杆(7)とを備えるシリンダ装置において、前記作動杆(7)の屈曲連結部(7a)は、前記ピストンロッド(6)との結合が径方向に遊嵌合にして固定されているシリンダ装置。
ウ.対比・判断
そこで、本件考案と上記引用例1に記載された考案とを対比すると、引用例1に記載された「ピストンロッド」、「連結子」、「スライド装置」は、それぞれ、本件考案の「ロッド」、「連結部」、「アクチュエータ」に相当し、引用例1に記載された「タイロッドボルト及び摺動子からなるリニアガイド」は、本件考案の「一対のリニアガイド」に相当し、引用例1に記載された「スライダ」も本件考案の「テーブル」も、共に、上部にワークを載置できて移動する「被駆動移動体」であることに変わりはないので、両者は、流体圧力によって作動する1個のピストンを移動可能に内在するシリンダ本体と、前記ピストンに連結され前記シリンダ本体の側部から突出するロッドと、前記シリンダ本体の上部に一方が装着されて前記ロッドの移動方向に他方が相対移動する一対のリニアガイドと、前記リニアガイドの他方に装着されて前記ロッドと略直交する方向に突出した連結部を有する被駆動移動体とを備えるアクチュエータであって、前記被駆動移動体の連結部は、前記ロッドと結合固定されているアクチュエータ、の点で一致するが、以下の各点(イ)?(ハ)で相違するものと認められる。
相違点;
(イ)本件考案の被駆動移動体はテーブルであるのに対し、引用例1に記載された考案は、被駆動移動体が平板状の形状ではなく、丸棒状のものに載置具6を固設したものである点。
(ロ)本件考案の被駆動移動体の連結部とロッドとの結合が、径方向に遊嵌合にして固定されているのに対し、引用例1に記載された考案は、径方向に遊嵌合にして固定されているのか、不明である点。
(ハ)本件考案の一対のリニアガイドの一方がシリンダ本体1の上部の取付面に装着されるものであるのに対し、引用例1に記載された考案は、一対のリニアガイドの一方がシリンダ本体(エンドカバー7)の上部を締付ける2本のタイロッドボルト8であって、シリンダ本体の上部の取付面に装着されたものではない点。
そこで、上記相違点について検討する。
・相違点(イ)について、
アクチュエータの被駆動移動体を一枚の平板状のテーブルに形成することは、例えば、「機械設計」第26巻第14号(1982年11月臨時増刊号)P93、‥‥等に記載されるように、本件実用新案登録の出願前、当業者にとって周知の事項にすぎないので、相違点(イ)は、当業者が必要に応じて適宜変更し得る程度の差異にすぎないものというべきである。
・相違点(ロ)について、
引用例2に記載される「ピストンロッド6」、「屈曲連結部7a」、「シリンダ装置」は、それぞれ、本件考案の「ピストン」、「連結部」、「アクチュエータ」に相当し、また、引用例2に記載された「作動杆」も本件訂正考案の「テーブル」も共に被駆動移動体であることに変わりはないから、アクチュエータにおいて、被駆動移動部材の連結部とロッドとの結合を、径方向に遊嵌合にして固定することは、上記引用例2に記載されているといえる。したがって、引用例1に記載された考案の被駆動移動体の連結部とロッドとの結合に、上記引用例2記載の事項を適用し、もって、引用例1に記載された考案の被駆動移動体の連結部とロッドとの結合を、径方向に遊嵌合にして固定することは、引用例1及び2に記載された考案が、共に、テーブルや作動杵等の被駆動部材を移動させるアクチュエータという同一の技術分野に属するものである以上、当業者がきわめて容易になし得るものである。
・相違点(ハ)について、
上記【2】ウ.の「相違点(ハ)について;」で述べたように、引用例1には、タイロッドボルトに替えて、専用のガイド部材を設けることも可能であるとの示唆があり、そして、引用例1に記載される考案において、タイロッドボルトとは別に専用ガイド部材を設けるとすれば、被駆動移動体であるスライダ3はシリンダ本体の上部に設けられているから、その結果、一対のリニアガイドの一方である専用ガイド部材は、必然的にシリンダ本体の上部のいづれかの箇所を取付面として装着されるものとなることは明らかである以上、相違点(ハ)は、当業者が必要に応じて適宜変更し得る程度の差異にすぎないものと認められる。
そして、本件考案の構成によってもたらされる効果も、引用例1及び2に記載された考案から、当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。
したがって、本件考案は、引用例1及び2に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものである。
【4】むすび
以上のとおりであるから、本件実用新案登録の請求項1に係る考案は、引用例1及び2に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるので、本件請求項1に係る考案の実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反して実用新案登録がなされたものである。
したがって、本件請求項1に係る考案の実用新案登録は、平成6年法律第116号附則第14条の規定に基づく、平成7年政令第205号第4条第1項及び第2項の規定により、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 1999-08-27 
出願番号 実願昭63-110226 
審決分類 U 1 651・ 121- ZB (F15B)
最終処分 取消    
前審関与審査官 窪田 治彦  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 清田 栄章
深井 弘光
登録日 1997-04-18 
登録番号 実用登録第2540597号(U2540597) 
権利者 エヌオーケー株式会社
東京都港区芝大門1丁目12番15号
考案の名称 アクチュエータ  
代理人 高塚 一郎  

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