ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て G03B 審判 全部申し立て G03B |
---|---|
管理番号 | 1009208 |
異議申立番号 | 異議1998-76070 |
総通号数 | 8 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2000-08-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1998-12-04 |
確定日 | 1999-12-13 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 実用新案登録第2573997号「カメラ用シャッタの開閉機構」の実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 実用新案登録第2573997号の実用新案登録を維持する。 |
理由 |
(1)手続きの経緯 本件実用新案登録第2573997号考案は、平成3年12月27日に実用新案登録出願され、平成10年3月27日にその考案の実用新案登録がなされ、その後、セイコープレシジョン 株式会社より実用新案登録異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年4月23日に訂正請求がなされ、訂正拒絶理由通知がなされ、これに対して、手続補正書が提出されたものである。 (2)訂正の適否についての判断 ア、訂正請求に対する補正の適否について 実用新案権者は、平成11年8月30日付け手続き補正書を提出し、明瞭でない記載の釈明を目的として、平成11年4月23日付け訂正請求書に添付の明細書の実用新案登録請求の範囲における「最後の信号を、他のパルス信号より1.5倍未満の範囲でパルス幅が長くなるように設定」を「最後の信号のパルス幅xを、他のパルス信号のパルス幅tとの関係がt<x<1.5tとなるように長く設定」とする補正、及び、これに併せて、考案の詳細な説明の欄段落【0010】第5行における「パルス幅を、その前の信号のパルス幅より1.5倍未満の範囲で長くする」との記載を「パルス幅xを、その前の信号のパルス幅tとの関係がt<x<1.5tとなるようにする」とする補正、同欄段落【0012】第10?11行における「1.5倍未満に設定するのが好ましい。1.5倍以上にすると、」との記載を「1倍より長く1.5倍より短い範囲内に設定するのが好ましい。1.5倍以上にすると、」とする補正、同欄段落【0012】第14行における「の範囲内」との記載を「すなわちt<x<1.5tの範囲内」とする補正、及び同欄段落【0017】第3?4行における「パルス幅を、他のパルス信号のパルス幅の1.5倍未満の範囲で長く」との記載を「パルス幅xを、他のパルス信号のパルス幅tとの関係がt<x<1.5tとなるように」とする補正を求めているので、まず、この補正の適否について検討すると、上記補正は、訂正明細書の記載事項の範囲内において、訂正明細書に記載された実用新案登録請求の範囲の減縮ないし明瞭でない記載の釈明をするものであり、又、上記考案の詳細な説明の項の補正は、訂正明細書の記載事項の範囲内において、上記実用新案登録請求の範囲の補正に伴う明瞭でない記載の釈明と認められる。 さらに、これらの補正により、訂正明細書に記載の実用新案登録請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものとは認められないので、上記補正は認められる。 イ、訂正の内容 そうすると、当該訂正請求に係る訂正の要旨は、平成11年8月30日付けの手続補正書により補正された次のa?fのとおりのものと認められる。 a、実用新案登録請求の範囲を次のとおり訂正する。 「【請求項1】ステッピングモータを駆動源として、それに連動する開閉部材を往復動させて、シャッタ羽根を開閉作動させるようにしたカメラ用シャッタの開閉機構において、シャッタ開放作動のための前記ステッピングモータ駆動用パルス信号の最後の信号のパルス幅xを、他のパルス信号のパルス幅tとの関係がt<x<1.5tとなるように長く設定したことを特徴とするカメラ用シャッタの開閉機構。」 b、考案の詳細な説明段落番号【0010】第5行の「最後の信号を、他のパルス信号より若干パルス幅が長くなるように」を「最後の信号のパルス幅xを、その前の信号のパルス幅tとの関係がt<x<1.5tとなるように長く」と訂正する。 c、考案の詳細な説明段落番号【0011】第2行の「羽根開放作動に」を「羽根開放作動の」と訂正する。 d、考案の詳細な説明段落番号【0012】第10?11行の「約1.5倍程度以内に設定するのが好ましい。1.5倍程度を越えると、」を「1倍より長く1.5倍より短い範囲内に設定するのが好ましい。1.5倍以上にすると、」と訂正する。 e、考案の詳細な説明段落番号【0012】第14?15行の「程度の範囲内」を「すなわちt<x<1.5tの範囲内」と訂正する。 f、考案の詳細な説明段落番号【0017】第3行の「パルス幅を長く」を「パルス幅xを、他のパルス信号のパルス幅tとの関係がt<x<1.5tとなるように」と訂正する。 ウ、訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記訂正aは、実用新案登録請求の範囲の減縮ないし明瞭でない記載の釈明に該当し、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、実質的に実用新案登録請求の範囲を拡張又は変更するものではなく、新規事項の追加もない。また、上記訂正b?fは、考案の詳細な説明の欄の明瞭でない記載の釈明ないし誤記の訂正を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、新規事項の追加もない。 エ、独立登録要件 そこで、上記訂正に係る請求項1の考案が本件出願の際独立して実用新案登録を受けることができるかどうか検討する。 当審が平成11年6月10日付け訂正拒絶理由通知において引用した刊行物1(特開平3-288832号公報)には、「このような2相励磁でステップモータ24を駆動することにより、第4図のフローチャートの「モータ正転」の処理ステップで、第7図(h)に示すように、ステップモータ24が正転され、上述のようにピニオンギア29,駆動ギア23,レバー22、絞り兼用のシャッタ羽根21a、21bを主体とするメカニカル部28が作動して、絞り兼用シャッタ羽根21a、21bが開き始めると、」(第6頁右下欄第6行乃至第14行)、及び「パルス数のカウント値がフローチャートの「X-1パルス?」にて、(X-1)パルスをカウントすると、すなわち、第7図(a)に示すように、設定絞り値Fの手前F-1まで絞り兼用シャッタ羽根21a,21bが開くと、フローチャートの「パルス幅を長くして1パルスを送る」の処理ステップに移行する。この結果、CPU12内の制御回路25から第6図(a)に示すように、パルス間隔の広い、1パルスが駆動回路26に送られ、その結果、第6図(b)?第6図(e)に示すように、A相からB相のいずれもがパルス幅の大きいパルスが駆動回路26よりステップモータ24に供給される。ステップモータ24に供給するパルス幅と絞り兼用シャッタ羽根21a,21bの開口波形は、第8図に示すように、パルス幅によって異なる。たとえば、1msのパルス幅のパルスを、10パルス分ステップモータ24に供給してステップモータ24を停止した場合には、第8図の実線aの開口波形になり、また、3msのパルス幅のパルスを、10パルス分供給して停止した場合には、第8図の破線bのような開口波形になる。この第8図より明らかなように、ステップモータ24に供給されるパルスのパルス幅が大きい方が、ステップモータ24の回転速度と絞り兼用のシャッタ羽根21a,21bなどのメカニカル部28の作動速度が遅く、慣性力が小さく、オーバシュートは、実線のa1より破線b1の方が小さい。したがって、開口波形の誤差ΔL、ひいては、絞り値の誤差が小さくなる。ところが、カメラとしては、シャッタ秒時を速くしたい場合があるので、シャッタ開閉のスピードが遅くできず、ステップモータ24への供給パルス幅を大きくできない場合がある。この実施例は、この点に着目しているものであり、第7図(a)の設定絞り値Fの手前の絞り値(F-1)の時点tZまでは短いパルス間隔でステップモータ24を駆動し、絞り値(F-1)に達した後は、第6図(b)?第6図(e)に示すように、長いパルス幅でステップモータ24を駆動するようにしている。」(第7頁左上欄第4行乃至左下欄第6行)との記載があり、結局、ステップモータ24を駆動源として、それに連動するレバー22を往復動させて、シャッタ羽根21a、21bを開閉させるようにしたカメラ用シャッタの開閉機構において、シャッタ開放作動のための前記ステッピングモータ24駆動用パルス信号の最後の信号を、他のパルス信号よりパルス幅が長くなるように設定したカメラ用シャッタ、が記載されている。 次に、上記訂正に係る請求項1の考案(以下「訂正後の本件考案1」という。)と、刊行物1記載の発明とを対比すると、訂正後の本件考案1の「ステッピングモータ」、「開閉部材」、「シャッタ羽根」は、夫々刊行物1に記載の発明の「ステップモータ24」、「レバー22」、「シャッタ羽根21a、21b」に相当するから、両者は、ステッピングモータを駆動源として、それに連動する開閉部材を往復動させて、シャッタ羽根を開閉作動させるようにしたカメラ用シャッタの開閉機構において、シャッタ開放作動のための前記ステッピングモータ駆動用パルス信号の最後の信号のパルス幅を、他のパルス信号のパルス幅より長く設定したことを特徴とするカメラ用シャッタの開閉機構、で一致し、訂正後の本件考案1は、最後の信号のパルス幅xを、他のパルス信号のパルス幅tとの関係がt<x<1.5tとなるように長く設定したのに対して、刊行物1に記載の発明は、そのような記載が無い点で相違する。 そこで、当該相違点について検討すると、刊行物1第8図に記載されたものは、1msのパルス幅のパルスを10パルス分ステップモータ24に供給してステップモータ24を停止した場合と、3msのパルス幅のパルスを、10パルス分供給して停止した場合に、オーバシュートの大小と絞り値の誤差の大小を比較したものであり、「最後の信号のパルス幅xを、他のパルス信号のパルス幅tとの関係がt<x<1.5tとなるように長く設定した」ものではない。 しかも、刊行物1に記載された発明は、ステップモータ24を停止した場合のオーバーシュートを小さくし、絞り値の誤差を小さくしようとするものであり、ステップモータ24停止後からシャッタ羽根閉までについて何等考慮せず、したがって、全体のシャッタ速度についても考慮していないから、訂正後の本件考案1の「簡単な構成で特に小絞り時のシャッタ速度を速くする」という課題を有しない。 そして、上述した相違点の構成を有することによって、課題を達成でき、明細書記載の作用効果を奏するものであるから、訂正後の本件考案1が、上記刊行物1に記載された発明であるとも、上記刊行物1に基づいて当業者がきわめて容易に推考できたものとも言えない。 したがって、本件請求項1に係る考案は実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができない考案とすることはできない。 オ、むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第10条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第2項、同条第3項で準用する第126条第2-4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 (3)実用新案登録異議の申立てについての判断 ア.申立ての理由の概要 申立人セイコープレシジョン 株式会社は、証拠として甲第1号証(特開平3-288832号公報、上記刊行物1に同じ。)、参考資料(特開昭62-159130号公報)を提出し、請求項1に係る考案は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであるから、実用新案登録を取り消すべき旨主張し、また、請求項1に係る考案は、記載不備があり、実用新案法第5条第4および5項の規定に違反してなされたものであるから、実用新案登録を取り消すべき旨主張している。 イ.判断 (記載不備について) 上記訂正及び補正によって解消されるものとなった。 (刊行物) 甲第1号証については、上記(2)で述べたとおりである。 参考資料(特開昭62-159130号公報)には、「オーバーシュートがステッピングモータ15の助走期間についてはその速度を可変できるようにしてある。」(第4頁左上欄第12?16行)との記載があるが、上述した相違点及び課題が記載されていないから、当業者といえども、当該参考資料と甲第1号証とをいかように組み合わせてみても、請求項1に係る考案をきわめて容易に推考することはできない。 ウ.むすび 以上のとおりであるから、実用新案登録異議申立の理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る考案の実用新案登録を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1に係る考案の実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【考案の名称】 カメラ用シャッタの開閉機構 (57)【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】ステッピングモータを駆動源として、それに連動する開閉部材を往復動させて、シャッタ羽根を開閉作動させるようにしたカメラ用シャッタの開閉機構において、シャッタ開放作動のための前記ステッピングモータ駆動用パルス信号の最後の信号のパルス幅xを、他のパルス信号のパルス幅tとの関係がt<x<1.5tとなるように長く設定したことを特徴とするカメラ用シャッタの開閉機構。 【考案の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本考案は、カメラ用シャッタの羽根開閉機構に関する。 【0002】 【従来の技術】 カメラ用シャッタの一例として、本出願人が実願平2-32788号(実開平3-125337号公報)を以て出願したものがある。 この装置の構造を図2に基づいて説明する。図中、1はカム面1aと歯部1bと折曲部1cとを有していて光軸の周りに回動可能に装架されたリング状の駆動部材、2はシャッタ基板P上に枢着されていて駆動部材1のカム面1aと当接する突起2aとフォーク部2bとを有する羽根開閉レバー、3は羽根開閉レバー2に左旋習性を付与するスプリング、4はシャッタ基板Pの裏面上に駆動部材1と同心的に回動可能に装架されていて羽根開閉レバー2のフォーク部2bに嵌合せしめられたピン4a(シャッタ基板Pに形成された図示していない長孔を貫通している)を有する羽根開閉リング、5はシャッタ基板Pの裏面上に枢着されていて羽根開閉リング4とピン-スロット連結されたシャッタ羽根であり、図では1枚しか示されていないが、通常は5枚で構成され、図示位置においてシャッタ基板Pに形成された露出開口を覆っている。 【0003】 6はシャッタ基板P上に枢着されていて駆動部材1の歯部1bに噛合せしめられたピニオン、7はピニオン6と一体のギヤ、8はシャッタ基板Pに取り付けられている駆動源であり、例えば二相構造のステッピングモータである。9はステッピングモータ8の出力軸に固着されていてギヤ7に噛合された駆動ギヤである。 又、10は駆動部材1上に枢着されていてカム面1aに臨み得る爪部10aを有していてその左旋運動が折曲部1cに抑止される爪レバー、11は爪レバー10を左旋方向に付勢するスプリングである。 【0004】 本機構は上述のような構成を備えており、次に通常の撮影モードによるシャッタ羽根の開閉作動を説明する。測光により設定された露光量に基づき、撮影時にシャッタ羽根開放用のパルス信号が所要数出力されると、このパルス信号の数に応じてステッピングモータ8が羽根開放方向に駆動させられる。 すると、開放作動時には駆動ギヤ9,ギヤ7及びピニオン6を介して駆動部材1が右旋させられ、羽根開閉レバー2の突起2aが駆動部材1のカム面1aの頂面から爪レバー10の頂部上を摺動し、その先端部を通過することでスプリング3の弾力で羽根開閉レバー2は急速に左旋する。これに連動して駆動リング4が右旋するため、シャッタ羽根5は開放作動させられる。 【0005】 そして、所定秒時経過後に行われる全開状態からの閉鎖作動時には、羽根閉鎖用のパルス信号が入力されてステッピングモータ8が逆回転するため、羽根開閉レバー2は突起2aが、左旋する駆動部材1のカム面1aに当接して押し上げられ、且つそれによって爪レバー10を右旋させることによって図2の位置に復帰するため、これに連動してシャッタ羽根5も閉鎖位置へ移動させられる。 【0006】 このシャッタ開閉作動を図3のシーケンス図で更に説明すると、ステッピングモータ8内の固定子巻線の一相MS1(A)及び二相MS2(B)に羽根全開作動まで必要な数の単位パルスが入力され、羽根開閉レバー2の係止解除によってシャッタ開口が開き始めて露光が開始され、シャッタ開口は全開状態に至る。その後、設定された所定秒時経過後に羽根閉鎖のためのパルス信号が入力されるとステッピングモータ8が逆転し、開閉機構のメカ遅れの秒時経過後にシャッタ羽根が急速に閉鎖作動せしめられる。 【0007】 このようなシャッタ羽根の開閉機構において、羽根開放作動時にステッピングモータ8に入力される複数のパルス信号のパルス幅は1パルス毎に同一のパルス時間であるか、或いはパルス時間が短縮された加速タイプのものが用いられている。そのため、特に小絞り領域では単位パルスが開口波形に応じた数だけ出力され、そして所定秒時経過後に羽根閉鎖用のパルス信号が出力され、ステッピングモータ8が逆回転することになる。 【0008】 【考案が解決しようとする課題】 しかしながら、この場合、羽根開放作動時のステッピングモータ8の駆動速度が速いため、反転させて閉鎖作動を行う時にステッピングモータ8或いは駆動部材1の開放方向の慣性が小絞り時のメカ遅れの大きな要因となり、閉鎖作動の開始が遅れるため、シャッタ速度が低下し、高速化が困難であるという問題があった。 開放作動時のパルス時間を短くする加速タイプの場合には慣性も大きくなり、この問題は特に重大であった。 【0009】 本考案は、このような課題に鑑みて、簡単な構成で特に小絞り時のシャッタ速度を速くすることができるようにしたカメラ用シャッタの開閉機構を提供することを目的とする。 【0010】 【課題を解決するための手段】 本考案は、ステッピングモータを駆動源として、それに連動する開閉部材を往復作動させて、シャッタ羽根を開閉作動させるようにしたカメラ用シャッタの開閉機構において、シャッタ開放作動のためのモータ駆動用パルス信号の最後の信号のパルス幅xを、その前の信号のパルス幅tとの関係がt<x<1.5tとなるようにすることにより、シャッタ速度を高速化するようにしたことを特徴とするものである。 【0011】 【作用】 撮影時に設定された開口波形が小絞りの場合、羽根開放作動のためにステッピングモータに入力される最後のパルス信号のパルス幅を長くすることで、その部分のステッピングモータの駆動速度が遅くなり、駆動部材の開放作動速度も遅くなるため、開放方向のシャッタ羽根の作動速度は遅くなるが、作動方向が閉鎖方向に反転された時に開放方向に働く慣性がその分小さくなり、閉鎖作動の起点が早くなるため、全体のシャッタ速度は高速化される。 【0012】 【実施例】 以下、本考案の一実施例を図1に基づいて説明するが、シャッタの開閉機構は図2に示す先行技術と同じである。そのため、詳しい説明は省略する。 図1のシーケンス図には、ステッピングモータ8のコイルの一相MS1(A)と二相MS2(B)に入力される羽根開閉作動用の駆動パルス信号が示されている。このパルス信号のパルス幅である単位時間をt〔ms〕とすると、測光により設定された開口波形が小絞り領域の場合、二相MS2(B)に入力される開放作動のための複数のパルス信号のうちの最後のパルス信号のパルス時間(パルス幅)をtより大きいx〔ms〕とする。 ここで、パルス時間xは(シャッタ機構の構成によるが)パルス時間tの1倍より長く1.5倍より短い範囲内に設定するのが好ましい。1.5倍以上にすると、羽根開放作動時間が長くなりすぎて、全体のシャッタ速度は従来のシャッタ速度より遅くなるか、或いはシャッタの切りムラが大きくなってしまう。例えば通常のパルス時間t=3〔ms〕に設定した場合、パルス時間xは、3<x<4.5〔ms〕すなわちt<x<1.5tの範囲内に設定すればよい。 【0013】 本実施例は上述のように構成されているから、小絞りによる撮影時に羽根開放作動のためにステッピングモータ8に入力されるパルス信号に関し、二相MS2(B)に入力される最後のパルス信号が、他のパルス信号の時間tより長い時間xになっているから、開口波形の頂点付近でこのパルス領域だけステッピングモータ8の回転速度が遅くなる。そのため、ギヤ9,7,6を介して連動する駆動部材1も減速される。 【0014】 そして、所定秒時(図1におけるTAEであって、シャッタ速度に対応して決められる電気制御時間。通常、シャッタ速度(露光時間)と区別するために電気秒時ともいわれている。)経過後に、羽根閉鎖作動のためのパルス信号がステッピングモータ8に入力されると、モータ8が逆転するため駆動部材1や羽根開閉レバー2等の各部材も開放作動から閉鎖作動にその作動方向が反転するが、このときの開放作動方向の慣性が小さくなるため、メカ遅れは小さく、シャッタ羽根5は急速に閉鎖作動することになる。 このように、シャッタ羽根5の開放作動は従来の機構よりわずかに遅くなるが、その分メカ遅れが減少して閉鎖作動の起点は早くなるため、小絞り時のシャッタの開口波形は、図1に破線で示す従来のものと比較して実線で示すようになる。そのため、全体としてシャッタ速度は高速化される。 【0015】 上述のように本実施例は、シャッタ開放作動のために、ステッピングモータ8へ入力される最後のパルス信号を他のパルス信号よりパルス幅を長く設定することで、開放作動終了時の慣性を減少させ、シャッタ速度を従来のものより高速化させることができる。 【0016】 尚、本考案は上述のタイプのシャッタ開閉機構に限定されることなく、ステッピングモータで開閉作動される全てのシャッタ開閉機構に適用され得る。又、ステッピングモータは必ずしも二相巻線構造のものに限定されるものではないことはいうまでもない。 【0017】 【考案の効果】 上述のように、本考案に係るカメラ用シャッタの開閉機構は、シャッタ開放作動のためにステッピングモータに入力される最後のパルス信号のパルス幅xを、他のパルス信号のパルス幅tとの関係がt<x<1.5tとなるように設定したから、簡単な構成でシャッタ速度を高速化することができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本考案によるシャッタの開閉機構のシャッタ開閉作動シーケンスの要部を示す図である。 【図2】 先行技術によるカメラ用シャッタの開閉機構の概略正面図である。 【図3】 図2のシャッタ開閉機構の作動シーケンスを示す図である。 【符号の説明】 1 駆動部材 2 羽根開閉レバー 5 シャッタ羽根 8 ステッピングモータ |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 実用新案登録請求の範囲の減縮ないし明瞭でない記載の釈明を目的として、下記(1)のように実用新案登録請求の範囲を訂正する。また、実用新案登録請求の範囲の訂正に応じて、明瞭でない記載の釈明ないし誤記の訂正を目的として、考案の詳細な説明についても、適合性をもたせるように下記(2)?(6)のように訂正する。 (1)実用新案登録請求の範囲を次のとおり訂正する。 「【請求項1】ステッピングモータを駆動源として、それに連動する開閉部材を往復動させて、シャッタ羽根を開閉作動させるようにしたカメラ用シャッタの開閉機構において、シャッタ開放作動のための前記ステッピングモータ駆動用パルス信号の最後の信号のパルス幅xを、他のパルス信号のパルス幅tとの関係がt<x<1.5tとなるように長く設定したことを特徴とするカメラ用シャッタの開閉機構。」 (2)考案の詳細な説明段落番号【0010】第5行の「最後の信号を、他のパルス信号より若干パルス幅が長くなるように」を「最後の信号のパルス幅xを、他のパルス信号のパルス幅tとの関係がt<x<1.5tとなるように長く」と訂正する。 (3)考案の詳細な説明段落番号【0011】第2行の「羽根開放作動に」を「羽根開放作動の」と訂正する。 (4)考案の詳細な説明段落番号【0012】第10?11行の「約1.5倍程度以内に設定するのが好ましい。1.5倍程度を越えると、」を「1倍より長く1.5倍より短い範囲内に設定するのが好ましい。1.5倍以上にすると、」と訂正する。 (5)考案の詳細な説明段落番号【0012】第14?15行の「程度の範囲内」を「すなわちt<x<1.5tの範囲内」と訂正する。 (6)考案の詳細な説明段落番号【0017】第3行の「パルス幅を長く」を「パルス幅xを、他のパルス信号のパルス幅tとの関係がt<x<1.5tとなるように」と訂正する。 |
異議決定日 | 1999-11-10 |
出願番号 | 実願平3-107809 |
審決分類 |
U
1
651・
534-
YA
(G03B)
U 1 651・ 121- YA (G03B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 佐藤 昭喜 |
特許庁審判長 |
高橋 美実 |
特許庁審判官 |
橋本 栄和 綿貫 章 |
登録日 | 1998-03-27 |
登録番号 | 実用登録第2573997号(U2573997) |
権利者 |
株式会社コパル 東京都板橋区志村2丁目18番10号 |
考案の名称 | カメラ用シャッタの開閉機構 |
代理人 | 篠原 泰司 |
代理人 | 松田 和子 |
代理人 | 篠原 泰司 |