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審決分類 |
審判 全部申し立て H05K |
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管理番号 | 1009221 |
異議申立番号 | 異議1999-70207 |
総通号数 | 8 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2000-08-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-01-18 |
確定日 | 1999-11-27 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 実用新案登録第2576687号「積層集積部品の実装構造」の実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 実用新案登録第2576687号の実用新案登録を維持する。 |
理由 |
一.[手続の経緯] 本件実用新案登録第2576687号(以下、「本件登録」という)は、平成4年3月20日出願の実願平4-23867号に係り、平成10年4月24日に設定登録され、その後、これに対して、東光株式会社より、実用新案登録異議の申立があったので、当審より登録取消理由を通知し、この通知に対して、指定期間内の平成11年9月14日付で、実用新案登録異議意見書と共に、訂正請求書が提出され、この訂正請求について、当審より更に訂正拒絶理由を通知したが、その通知書で指定した期間内の平成11年10月28日付で、上記訂正請求についての手続補正がされたものである。 二.[訂正請求について] 1.訂正請求の補正について 上記手続補正の概要は、次の▲1▼、▲2▼のとおりである。 ▲1▼全文訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1における第2段落「前記積層集積部品の1側面における電極の配置を、入力端子電極と出力端子電極との間に接地端子電極をそれぞれ被着して設ける構造とし、」という記載を、「実質的に前記積層集積部品の1側面にのみ、入力端子電極と出力端子電極とを被着して設けると共に、該1側面における入力端子電極と出力端子電極との間に接地端子電極を被着して設け、」と補正する。 ▲2▼同じく、発明の詳細な説明中の、段落番号【0006】(課題を解決するための手段)、【0008】(実施例)及び【0013】(考案の効果)の記載を、上記▲1▼の補正事項と対応するように補正する。 上記▲1▼及び▲2▼の手続補正の適法性について検討すると、上記▲1▼の補正事項は、登録明細書及び訂正明細書記載の考案の目的及び構成事項の範囲内において、登録明細書を訂正して、登録考案を当該手続補正前よりも更に限定して明確にしようとするもので、訂正請求書の要旨を変更するものとはいえない。また、▲2▼の補正も、▲1▼と同趣旨の補正をすることにより、明細書の前後における記載の齟齬を回避しようとするものである。 したがって、上記手続補正は、平成6年法律第116号附則第9条の規定により準用される、特許法120条の4第3項で更に準用する同第131条第2項の規定に適合する適法なものといえる。 2.訂正の要旨 前述のとおり、適法な補正がされた、本件登録 異議申立に係る訂正請求における訂正の要旨は、 次のイ?ニのとおりである。 イ 実用新案登録請求の範囲の請求項1中、その第2段落について、「前記積層集積部品の1側面における電極の配置を、入力端子電極と出力端子電極との間に接地端子電極をそれぞれ被着して設けた構造とし、」という記載を、「実質的に前記積層集積部品の1側面にのみ、入力端子電極と出力端子電極とを被着して設けると共に、該1側面における入力端子電極と出力端子電極との間に接地端子電極を被着して設け、」と訂正し、同じく第4段落の「前記入出力端子電極および接地端子電極を設けた面を前記印刷配線基板に対面させて前記導電性固着剤により固定したことを特徴とする」という記載を、「前記印刷配線基板上に接地用ランドを入力用ランドと出力用ランドとの間を遮断するように介在させて形成し、 前記入出力端子電極および接地端子電極を設けた面を前記印刷配線基板に対面させ、前記入力端子電極と前記出力端子電極とで前記接地用ランドを跨ぐように、前記入力端子電極、出力端子電極および接地端子電極をそれぞれ対応する入力用ランド、出力用ランドおよび接地用ランドに前記導電性固着剤により固定したことを特徴とする」と訂正する。 ロ 考案の詳細な説明中、段落【0006】(課題を解決するための手段)の記載を、上記イの訂正と対応するように、同様の訂正をする。 ハ 同じく段落【0008】(実施例)中、「図1(A)に示すように、前記積層集積部品1の側面に設ける電極の配置は、」という記載を、「図1(A)、(B)に示すように、印刷配線基板5には、入力用ランド6、出力用ランド7との間を遮断するように両者間に介在させて接地用ランド8を形成する。前記積層集積部品1の側面に設ける電極の配置は、」と訂正し、「それぞれ対応する入力用ランド6、出力用ランド7、接地用ランド8に載置し、端子2?4の全面を半田9により固定する。」という記載を、「前記入力端子電極2と前記出力端子電極3とで前記接地用ランド8を跨ぐように、前記入力端子電極2、出力端子電極3および接地端子電極4をそれぞれ対応する入力用ランド6、出力用ランド7、接地用ランド8に載置し、端子2?4の全面を半田9により固定する。」と訂正する。 ニ 同じく段落【0013】(考案の効果)中の、「第1に、入出力端子電極および接地端子電極を設けた側面を前記印刷配線基板に対面させて前記導電性固着剤により固定したので、」という記載を、「第1に、印刷配線基板上に接地用ランドを入力用ランドと出力用ランドとの間を遮断するように介在させて形成し、入出力端子電極および接地端子電極を設けた側面を前記印刷配線基板に対面させ、前記入力端子電極と前記出力端子電極とで前記接地用ランドを跨ぐように、前記入力端子電極、出力端子電極および接地端子電極をそれぞれ対応する入力用ランド、出力用ランドおよび接地用ランドに前記導電性固着剤により固定したので、」と訂正する。 3.訂正の適否 (1)訂正の目的 上記イの訂正は、本件登録に係る考案の必須の構成事項を訂正前より限定するものであるから、実用新案登録請求の範囲の減縮に相当するし、上記ロ?ニの訂正は、上記イの訂正に伴って生じる明細書の記載の齟齬を、訂正により解消しようとするもので、明瞭でない記載の釈明とみることができる。 (2)新規事項の有無 本件登録に係る、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、上記訂正の内容は、当該明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものである。 (3)拡張、変更の有無 上記各訂正の内容は、登録明細書に記載された事項の範囲内において、考案の構成を具体的に限定しようとするものであって、訂正前の実用新案登録請求の範囲を実質的に拡張したり、変更したりするものとはいえない。 (4)独立登録要件の適否 上記訂正後の実用新案登録請求の範囲に係る考案について、本件登録に係る出願の際、独立して実用新案登録を受けることができるものか否かについて検討する。 <(4-1)訂正考案> 上記訂正に係る考案は、平成11年10月28日付で提出された全文訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。 「積層、焼成工程により製造され、側面に端子電極を設けた積層集積部品を印刷配線基板に導電性固着剤により実装する構造において、 実質的に前記積層集積部品の1側面にのみ、入力端子電極と出力端子電極とを被着して設けると共に、該1側面における入力端子電極と出力端子電極との間に接地端子電極を被着して設け、 前記1側面の反対側の面に、前記積層集積部品に内蔵された素子どうしを接続する側面電極を被着して設け、 前記印刷配線基板上に接地用ランドを入力用ランドと出力用ランドとの間を遮断するように介在させて形成し、 前記入出力端子電極および接地端子電極を設けた面を前記印刷配線基板に対面させ、前記入力端子電極と前記出力端子電極とで前記接地用ランドを跨ぐように、前記入力端子電極、出力端子電極および接地端子電極をそれぞれ対応する入力用ランド、出力用ランドおよび接地用ランドに前記導電性固着剤により固定した ことを特徴とする積層集積部品の実装構造。」(以下、「本件考案」という) <(4-2)引用例とその記載事項の概要> これに対し、引用例となるものは、本件登録に係る出願前に頒布された、次の(1)及び(2)の刊行物である。 (1)実願昭57-184800号(実開昭60-180124号)のマイクロフィルム(以下、「甲第1号証」という) (2)特公昭59-24534号公報(以下、「甲第2号証」という) 上記甲第1号証には、リードレスLCフィルタを、積層焼成工程により製造すること、当該フィルタは、その側面に外部端子が配列されて、当該側面がプリント配線基板に半田付けにより接続されること、前記側面の反対側の面には電極及びコイル状導体を相互接続する外部接続導体が設けられること、前記外部端子及び外部接続導体は焼付けにより形成されることが記載されている。(第3頁第8行?第4頁最下行、第2?4図参照) また、甲第2号証には、インダクタ(コイル)とコンデンサを構成要素とするチップ形の積層複合部品に関して、第25、26及び第28図並びに当該各図の説明記載と、第29図に示された、等価回路図とを比較対照すると、前記チップ形の複合部品において、入力端子電極と出力端子電極との間に接地電極が配置される構造となっていることが示されている。 <(4-3)考案の対比> 本件考案と甲第1号証記載の考案とを対比すると、甲第1号証記載の「外部端子」は、本件考案における「端子電極」に相当するし、以下は同様に、「プリント配線基板」は「印刷配線基板」に、「半田」は「導電性固着材」に、「外部接続導体」は「側面電極」に、「焼付けにより形成」は「被着して設け」に、それぞれ相当するものであり、甲第1号証の第2図に示された回路図と技術常識からみて、上記外部端子には、入力及び出力用の端子電極と、接地用の端子電極とが含まれることは明らかである。 そうすると、本件考案と甲第1号証記載の考案との一致点と相違点は次のとおりである。 [一致点] 「積層、焼成工程により製造され、側面に端子電極を設けた積層集積部品を印刷配線基板に導電性固着剤により実装する構造において、 前記積層集積部品の側面に、入力端子電極、出力端子電極、接地端子電極、前記積層集積部品に内蔵された素子どうしを接続する側面電極を被着して設け」るようにした点。 [相違点] ▲1▼本件考案では、「実質的に前記積層集積部品の1側面にのみ、入力端子電極と出力端子電極とを被着して設けると共に、該1側面における入力端子電極と出力端子電極との間に接地端子電極を被着して設け、 前記1側面の反対側の面に、前記積層集積部品に内蔵された素子どうしを接続する側面電極を被着して設け」るという構成を備えるのに対し、甲第1号証には、積層集積部品の側面と各端子電極及び接地電極との関連構成や、これら各電極の配置関係については明確な言及がされていない点。 ▲2▼本件考案では、「印刷配線基板上に接地用ランドを入力用ランドと出力用ランドとの間を遮断するように介在させて形成し、 前記入出力端子電極および接地端子電極を設けた面を前記印刷配線基板に対面させ、前記入力端子電極と前記出力端子電極とで前記接地用ランドを跨ぐように、前記入力端子電極、出力端子電極および接地端子電極をそれぞれ対応する入力用ランド、出力用ランドおよび接地用ランドに前記導電性固着剤により固定した」という構成を備えるのに対し、上記▲1▼でも指摘したように、甲第1号証では、積層集積部品の各電極の配置関係について明確に言及されておらず、したがって、印刷配線基板上の各ランドとの対応関係についても言及されていない点。 <(4-4)相違点の検討> 上記の各相違点について検討すると、甲第2号証には、上記のとおり、チップ形の積層複合部品、即ち、積層集積部品に関して、入力端子電極と出力端子電極との間に接地電極が配置される構造となっていることが示されており、このような部品を印刷配線基板に装着する場合、「印刷配線基板上に接地用ランドを入力用ランドと出力用ランドとの間を遮断するように介在させて形成し」、部品の「入出力端子電極および接地端子電極を設けた面を前記印刷配線基板に対面させ、前記入力端子電極と前記出力端子電極とで前記接地用ランドを跨ぐように、前記入力端子電極、出力端子電極および接地端子電極をそれぞれ対応する入力用ランド、出力用ランドおよび接地用ランドに」固定する構造となるのは必然的なことである。つまり、上記の相違点▲2▼で指摘した、本件考案における、各電極の基本的な配置や、印刷配線基板上のランドとの関連構成については、甲第2号証に記載された事項に基づいて、当業者が極めて容易に想到しうる設計事項といえる。 一方、相違点▲1▼についてみると、上記のとおり、甲第2号証には、積層集積部品に関して、入力端子電極と出力端子電極との間に接地電極が配置される構造とすることは示されているが、この甲第2号証に記載されている入出力端子電極は、チップのそれぞれの端縁の5つの面にわたって形成されるもの(第28図参照)であり、入出力端子電極を「実質的に前記積層集積部品の1側面にのみ」被着して設けることについては記載されているとはいえない。 そうすると、上記相違点▲1▼で指摘した、本件考案の「実質的に前記積層集積部品の1側面にのみ、入力端子電極と出力端子電極とを被着して設けると共に、該1側面における入力端子電極と出力端子電極との間に接地端子電極を被着して設け、 前記1側面の反対側の面に、前記積層集積部品に内蔵された素子どうしを接続する側面電極を被着して設け」るという構成(以下、「相違点の構成」という)は、上記いずれの引用例にも記載されているとはいえないし、また、この相違点の構成を示唆するものもない。 そして、本件考案は、上記相違点の構成を備えることによって、全文訂正明細書記載のとおり、「入出力端子電極間の信号干渉が防止される上、内蔵素子を接続する側面電極が、基板の積層型電子部品取付け面の反対側に位置するため、側面電極を通してのランド間のノイズの直接的な伝播が防止されるため、ノイズ低減効果が向上する」という、いずれの引用例の記載からも予測できない格別の作用効果を奏するものである。 したがって、本件考案が、上記甲第1、2号証に記載された考案に基づいて、当業者が極めて容易に考案をすることができたものとはいえない。 更に、本件考案については、本件登録に係る出願の際、独立して実用新案登録を受けることができないとする他の理由も発見しない。 (5)訂正の適法性 上記(1)?(4)で検討したところによれば、上記訂正は、平成6年法律第116号附則第9条の規定により準用される、特許法第120条の4第2項第1、3号に掲げる事項を目的とするものであって、同条第3項で準用される、特許法第126条第2?4項の規定に適合しているといえるので、上記訂正を認める。 三.[登録異議申立について] 1.登録異議申立の理由 登録異議申立人は、上記の甲第1号証及び甲第2号証を提出して、本件請求項1に係る考案は、甲第1、2号証に記載されている考案に基づいて、当業者が極めて容易に考案をすることができたものであって、本件登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反して受けた旨の主張をしている。 2.当審の判断 本件登録に係る考案は、前記訂正が認められることにより、登録明細書である、上記補正後の全文訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された、上記二.3.(4-1)で「本件考案」としたものと認められ、当該本件登録考案について、上記1.の登録異議申立理由が採用できないものであることは、上記二.3.(4-3)及び同(4-4)における、本件考案と甲各号証記載のものとの対比の検討結果から明らかである。 四.[むすび] 以上のとおりであるから、登録異議申立に係る本件登録は、当該申立の理由および証拠によっては、取り消すことはできないし、また、他に取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【考案の名称】 積層集積部品の実装構造 (57)【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】積層、焼成工程により製造され、側面に端子電極を設けた積層集積部品を印刷配線基板に導電性固着剤により実装する構造において、 実質的に前記積層集積部品の1側面にのみ、入力端子電極と出力端子電極とを被着して設けると共に、該1側面における入力端子電極と出力端子電極との間に接地端子電極を被着して設け、 前記1側面の反対側の面に、前記積層集積部品に内蔵された素子どうしを接続する側面電極を被着して設け、 前記印刷配線基板上に接地用ランドを入力用ランドと出力用ランドとの間を遮断するように介在させて形成し、 前記入出力端子電極および接地端子電極を設けた面を前記印刷配線基板に対面させ、前記入力端子電極と前記出力端子電極とで前記接地用ランドを跨ぐように、前記入力端子電極、出力端子電極および接地端子電極をそれぞれ対応する入力用ランド、出力用ランドおよび接地用ランドに前記導電性固着剤により固定した ことを特徴とする積層集積部品の実装構造。 【考案の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本考案は、積層構造により1個以上のインダクタと1個以上のコンデンサの少なくともいずれかを内蔵したフィルタ等の積層集積部品において、この積層集積部品を印刷配線部品にはんだ付け等により固定する構造に関する。 【0002】 【従来の技術および考案が解決しようとする課題】 積層構造の高周波用のフィルタは、1個以上のインダクタと1個以上のコンデンサとを重ねて構成され、自動車電話等の移動用無線機器、あるいは携帯電話等の各種無線機器、またはこれらに組み込まれる電圧制御発振器等の構成部品として用いることが試みられている。従来はこのような積層集積部品を図3のようにはんだにより面付けしていた。図3において、1は積層集積部品であり、該積層集積部品1の内部にはセラミック等の誘電体と銀等のコイル導体やコンデンサの内部電極とがシート法や印刷法により積層され、焼成して製造され、側面に入力端子電極2と出力端子電極3と接地端子電極4が、積層集積部品1に内蔵するインダクタやコンデンサ等の素子の端部を側面への露出部に接続して、焼き付けや電気めっき等により被着して設けられる。 【0003】 5は該積層集積部品1を実装する印刷配線基板であり、該基板5上には、入力用ランド6と出力用ランド7と接地用ランド8とが形成されている。従来は、図示のように、この積層集積部品1の平面を下にして側面の前記入力端子電極2、出力端子電極3、接地端子電極4をそれぞれ対応するランド6、7、8に載せ、はんだ9により固定していた。 【0004】 しかしこのような積層集積部品1を高周波で使用した場合、点線10で示すように、入力端子電極2と出力端子電極3との間に信号干渉が生じ、この信号干渉が容量結合となって所望の特性が得られなくなるという問題点があった。 また、入力端子電極2、出力端子電極3、接地端子電極4をそれぞれ設けた積層集積部品1の側面の反対側の側面に、前記インダクタやコンデンサ等を接続する側面電極を設けているが、これらの側面電極は基板5の表面に近接あるいは接触する取付け構造となるため、入力端子電極2や出力端子電極3にそれぞれ接続されるランド6、7にこれらの内蔵素子接続用の側面電極が近接し、これにより、ランド6-側面電極-ランド7間でノイズが伝播し、積層集積部品1のノイズ除去作用が不十分になる場合があるという問題点があった。 また、高周波帯域になるほど、前記端子電極2?4がインダクタンス成分として作用し、目標とする特性が得難くなるという問題点があった。さらに、基板5の表面に対して積層面が平行となるので、ランド6?8と内部導体との間に容量結合を生じ、目標とする特性が得難くなるという問題点があった。 【0005】 本考案は、上記問題点に鑑み、高周波用に使用する場合であっても、入出力端子電極間の信号干渉を抑制でき、かつ所望の特性が得易い構造の積層集積部品の実装構造を提供することを目的とする。 【0006】 【課題を解決するための手段】 この目的を達成するため、本考案は、積層、焼成工程により製造され、側面に端子電極を設けた積層集積部品を印刷配線基板に導電性固着剤により実装する構造において、 実質的に前記積層集積部品の1側面にのみ、入力端子電極と出力端子電極とを被着して設けると共に、該1側面における入力端子電極と出力端子電極との間に接地端子電極を被着して設け、 前記1側面の反対側の面に、前記積層集積部品に内蔵された素子どうしを接続する側面電極を被着して設け、 前記印刷配線基板上に接地用ランドを入力用ランドと出力用ランドとの間を遮断するように介在させて形成し、 前記入出力端子電極および接地端子電極を設けた面を前記印刷配線基板に対面させ、前記入力端子電極と前記出力端子電極とで前記接地用ランドを跨ぐように、前記入力端子電極、出力端子電極および接地端子電極をそれぞれ対応する入力用ランド、出力用ランドおよび接地用ランドに前記導電性固着剤により固定した ことを特徴とする。 【0007】 【作用】 本考案においては、上述の実装構造としたので、接地端子電極のはんだ等の導電性固着剤および接地用ランド部分がシールドとなり、入力端子電極と出力端子電極との間の信号干渉が抑制される。 また、積層集積部品の内蔵素子どうしを接続する側面電極が基板の積層型電子部品取付け面の反対側に位置するため、ランドから側面までの距離が大となり、内蔵素子を通さず側面電極のみを通してのノイズの伝播が防止される。 また、積層集積部品の入力端子電極、出力端子電極、接地端子電極を設けた側面が基板の面に対面し、これらの電極が各対応ランドに積層型電子部品取付け面で固着するため、これらの電極がインダクタンス成分として作用することがない。 また、積層面が基板の面に対して垂直となるので、基板のランドと内蔵素子の導体との間の対向面積が大幅に減少し、容量結合が低減する。 【0008】 【実施例】 図1(A)は本考案による積層集積部品の実装構造の一実施例を示す斜視図、(B)はその拡大縦断面図、(C)は積層集積部品の内部回路の一例図である。図1(A)、(B)において、図3と同じ符号は同じ構成部材を示す。図1(A)、(B)に示すように、印刷配線基板5には、入力用ランド6、出力用ランド7との間を遮断するように両者間に介在させて接地用ランド8を形成する。前記積層集積部品1の側面に設ける電極の配置は、入力端子電極2と出力端子電極3との間に接地端子電極4を設けた構造とし、該入出力端子電極2、3および接地端子電極4を設けた側面を前記印刷配線基板5に対面させ、前記入力端子電極2と前記出力端子電極3とで前記接地用ランド8を跨ぐように、前記入力端子電極2、出力端子電極3および接地端子電極4をそれぞれ対応する入力用ランド6、出力用ランド7、接地用ランド8に載置し、端子2?4の全面を半田9により固定する。 【0009】 図1(B)、(C)に示すように、積層集積部品1は、その内部にインダクタL2、L4およびコンデンサC1?C5からなるフィルタを構成するもので、誘電体13とコイル導体14あるいは内部電極15とを積層構造で内蔵してなるものである。図1(A)に示す側面電極11は、それぞれ図1(C)で示すコンデンサC1、C3、C5の接地側の電極を介して接地端子電極4と接続する。側面電極12は内蔵素子間を接続する側面電極であり、図1(C)のインダクタL2とL4、コンデンサC2とC4間を接続する。 【0010】 このように、接地端子電極4を入出力端子電極2、3間に設け、かつこれらの端子電極2?4を設けた側面を基板5に対面させてこれらの端子電極2?4のほぼ全面をはんだ付けすることにより、入力端子電極2から出力端子電極3への信号干渉が接地端子電極4およびその周囲のはだ9や接地用ランド8に阻まれ、シールドされるため、フィルタとしての特性が損なわれない。 また、積層集積部品1の内蔵素子であるインダクタL2、L4やコンデンサC2?C4どうしを接続する側面電極12が基板5の積層型電子部品取付け面の反対側に位置するため、ランド6、7、8から側面電極12までの距離が大となり、側面電極12を通してのランド6、7間のノイズの直接的な伝播が防止される。 また、積層集積部品1の入力端子電極2、出力端子電極3、接地端子電極4を設けた側面が基板5の積層型電子部品取付け面に対面し、これらの電極2?4が各対応ランド6、7、8に前記取付け面で固着するため、これらの電極がインダクタンス成分として作用することがない。 また、積層型電子部品1の積層面が基板5の積層型電子部品取付け面に対して垂直となるので、基板のランド6?8と内部素子の導体14、15との間の対向面積が大幅に減少し、容量結合が大幅に低減される。 【0011】 図2(A)は本実施例のように接地端子電極4を基板5側に対面させてはんだ付けした場合の周波数と減衰量との関係を示す特性図、図2(B)は図3に示した実装構造における特性図であり、図から明白なように、本考案によると、従来構造に比較してはるかに減衰量が大となる。 【0012】 上記実施例においては、端子電極2?4の基板5への導電性固着剤としてはんだを用いたが、他の導電性接着剤を用いる場合にも本考案を適用できる。また、上記実施例で示したインダクタとコンデンサの積層構造の表面およびまたは裏面に配線パターンや抵抗ネットワークを構成し、ICやトランジスタをその上に搭載して混成集積回路素子として応用することも可能である。 【0013】 【考案の効果】 本考案によれば、高周波用に使用する積層集積部品であっても、第1に、印刷配線基板上に接地用ランドを入力用ランドと出力用ランドとの間を遮断するように介在させて形成し、入出力端子電極および接地端子電極を設けた側面を前記印刷配線基板に対面させ、前記入力端子電極と前記出力端子電極とで前記接地用ランドを跨ぐように、前記入力端子電極、出力端子電極および接地端子電極をそれぞれ対応する入力用ランド、出力用ランドおよび接地用ランドに前記導電性固着剤により固定したので、入出力端子電極間の信号干渉を抑制でき、第2に、入出力端子電極や接地端子電極が基板の取付け面に導電性固着剤によって固着されているので、これらの端子電極がインダクタンス成分として作用せず、第3に、積層型電子部品の積層面が基板に垂直となるので、基板のランドと内蔵素子の導体との間の容量結合が低減されることにより、本来の特性が実装後においても容易に得られる。 また、前述のように、入出力端子電極間の信号干渉が防止される上、内蔵素子を接続する側面電極が、基板の積層型電子部品取付け面の反対側に位置するため、側面電極を通してのランド間のノイズの直接的な伝播が防止されるため、ノイズ低減効果が向上する。 【図面の簡単な説明】 【図1】 (A)は本考案による積層集積部品の一実施例を示す斜視図、(B)はその拡大縦断面図、(C)はその等価回路図である。 【図2】 (A)、(B)はそれぞれ本実施例と従来例における周波数に対する減衰量の関係を示す特性図である。 【図3】 従来の積層集積部品の実装構造を示す斜視図である。 【符号の説明】 1積層集積部品 2入力端子電極 3出力端子電極 4接地端子電極 5印刷配線基板 6?8ランド 9はんだ 11、12側面電極 13誘電体 14コイル導体 15内部電極 |
訂正の要旨 |
訂正の要旨は、次のイ?ニのとおりである。 イ 実用新案登録請求の範囲の請求項1中、その第2段落について、「前記積層集積部品の1側面における電極の配置を、入力端子電極と出力端子電極との間に接地端子電極をそれぞれ被着して設けた構造とし、」という記載を、「実質的に前記積層集積部品の1側面にのみ、入力端子電極と出力端子電極とを被着して設けると共に、該1側面における入力端子電極と出力端子電極との間に接地端子電極を被着して設け、」と訂正し、同じく第4段落の「前記入出力端子電極および接地端子電極を設けた面を前記印刷配線基板に対面させて前記導電性固着剤により固定したことを特徴とする」という記載を、「前記印刷配線基板上に接地用ランドを入力用ランドと出力用ランドとの間を遮断するように介在させて形成し、 前記入出力端子電極および接地端子電極を設けた面を前記印刷配線基板に対面させ、前記入力端子電極と前記出力端子電極とで前記接地用ランドを跨ぐように、前記入力端子電極、出力端子電極および接地端子電極をそれぞれ対応する入力用ランド、出力用ランドおよび接地用ランドに前記導電性固着剤により固定したことを特徴とする」と訂正する。 ロ 考案の詳細な説明中、段落【0006】(課題を解決するための手段)の記載を、上記イの訂正と対応するように、同様の訂正をする。 ハ 同じく段落【0008】(実施例)中、「図1(A)に示すように、前記積層集積部品1の側面に設ける電極の配置は、」という記載を、「図1(A)、(B)に示すように、印刷配線基板5には、入力用ランド6、出力用ランド7との間を遮断するように両者間に介在させて接地用ランド8を形成する。前記積層集積部品1の側面に設ける電極の配置は、」と訂正し、「それぞれ対応する入力用ランド6、出力用ランド7、接地用ランド8に載置し、端子2?4の全面を半田9により固定する。」という記載を、「前記入力端子電極2と前記出力端子電極3とで前記接地用ランド8を跨ぐように、前記入力端子電極2、出力端子電極3および接地端子電極4をそれぞれ対応する入力用ランド6、出力用ランド7、接地用ランド8に載置し、端子2?4の全面を半田9により固定する。」と訂正する。 ニ 同じく段落【0013】(考案の効果)中の、 「第1に、入出力端子電極および接地端子電極を設けた側面を前記印刷配線基板に対面させて前記導電性固着剤により固定したので、」という記載を、「第1に、印刷配線基板上に接地用ランドを入力用ランドと出力用ランドとの間を遮断するように介在させて形成し、入出力端子電極および接地端子電極を設けた側面を前記印刷配線基板に対面させ、前記入力端子電極と前記出力端子電極とで前記接地用ランドを跨ぐように、前記入力端子電極、出力端子電極および接地端子電極をそれぞれ対応する入力用ランド、出力用ランドおよび接地用ランドに前記導電性固着剤により固定したので、」と訂正する。 |
異議決定日 | 1999-11-15 |
出願番号 | 実願平4-23867 |
審決分類 |
U
1
651・
121-
YA
(H05K)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 青木 俊明 |
特許庁審判長 |
神崎 潔 |
特許庁審判官 |
清水 英雄 大島 祥吾 |
登録日 | 1998-04-24 |
登録番号 | 実用登録第2576687号(U2576687) |
権利者 |
ティーディーケイ株式会社 東京都中央区日本橋1丁目13番1号 |
考案の名称 | 積層集積部品の実装構造 |
代理人 | 若田 勝一 |
代理人 | 若田 勝一 |