• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て   F16H
審判 全部申し立て   F16H
管理番号 1009223
異議申立番号 異議1999-70677  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-08-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-02-19 
確定日 1999-12-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 実用新案登録第2579380号「ボールねじのシール装置」の請求項1ないし2に係る実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 実用新案登録第2579380号の請求項1ないし2に係る実用新案登録を維持する。
理由 1.手続の経緯
本件実用新案登録第2579380号考案は、平成4年6月30日に出願され、平成10年6月5日に設定登録がなされ、その後、その実用新案登録に対して、実用新案登録異議申立人(以下、申立人という)・廣原 守より実用新案登録異議の申立てがなされ、当審において取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年7月26日に訂正請求がなされたものである。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
訂正請求書における訂正の内容は、以下の訂正事項のとおりである。
訂正事項
a.実用新案登録請求の範囲の請求項1、第3行の「この分割した部分」を「これら分割部分」と訂正する。これに伴い、実用新案登録請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との整合をとるため、明細書第2ぺージ第14行の「この分割した部分」を「これら分割部分」と訂正する。
b.実用新案登録請求の範囲の請求項1、第5行?6行の「するようにした」を「し、前記突部は、前記螺旋溝に対応した形状及び寸法を有し、前記螺溝溝に密着してボールナツト内をシールし、前記分割部分の分割面は、前記螺旋溝の表面に付着した異物を掻き取り、前記補助リングは、前記掻き取られた異物が前記分割面を通ってボールナット内に侵入するのを防止する」と訂正する。
c.実用新案登録請求の範囲の請求項2、第4行の「この分割した部分」を「これら分割部分」と訂正する。これに伴い、実用新案登録請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との整合をとるため、明細書第2ページ第19?20行の「この分割した部分」を「これら分割部分」と訂正する。
d.実用新案登録請求の範囲の請求項2、第5行の「するようにした」を「し、前記突部は、前記螺旋溝に対応した形状及び寸法を有し、前記螺旋溝に密着してボールナット内をシールし、前記分割部分の分割面は、前記螺旋溝の表面に付着した異物を掻き取り、前記シール部材の分割されていないリング部分は、前記掻き取られた異物が前記分割面を通ってボールナット内に侵入するのを防止する」と訂正する。
e.明細書第2ページ第6行の「そのため、」と「突部25a」との間に「シール部材25とねじ軸21の寸法誤差によって」を挿入する。
f.明細書第2ページ第9行の「本考案の目的は、」と「ボールねじ」との間に「上記のような従来技術上の問題点を解決し、」を挿入する。
g.明細書第4ページ第14行?17行の「本考案によれば、シール部材の突部がねじ軸の螺旋溝にゼロ以下の嵌合すきまをもって密着し、しかも、螺旋溝の表面に付着した異物がシール部材の分割面によって掻き取られるので、従来のものに比べ、シール性を著しく向上させることができる。」を「本考案によれば、以下に示す効果が得られる。(1)シール部材及びねじ軸の寸法誤差に関係なく、シール部材の突部が常にねじ軸の螺旋溝にゼロ以下の嵌合すきまをもって密着するので、ボールナット内の潤滑剤が外部に洩れにくく、また外部から異物が侵入しにくい。(2)ねじ軸の螺旋溝の表面に付着した異物がシール部材の分割面によって掻き取られるのでボールナット内に異物が侵入しにくい。(3)螺旋溝の表面か掻き取られた異物が分割面を通ってボールナット内に侵入しようとするのが補助リング又はシール部材の分割されていないリング部分によって防止されるので、ボールナット内に異物が侵入しにくい。(4)以上の効果により、従来のシール装置に比べ、シール性を著しく向上させることができる。」
と訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び実用新案登録請求の範囲の拡張又は変更の存否
上記訂正請求における訂正事項a、b、c、dは、実用新案登録請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に実用新案登録請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
また、訂正事項e、gは、明りょうでない記載の釈明に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に実用新案登録請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(3)独立実用新案登録要件の判断
(3-1)訂正明細書の請求項1、2に係る考案
訂正明細書の請求項1、2に係る考案は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】
ねじ軸の螺旋溝に嵌合する突部を有するリング状のシール部材を、ボールナットの端部に装着してボールナット内をシールするものにおいて、
前記シール部材を複数部分に軸方向に分割すると共に、これら分割部分を内径方向に弾圧することにより、前記突部と前記螺旋溝との嵌合すきまをゼロ以下にし、かつ、前記シール部材よりもボールナットの内方側に補助リングを装着し、
前記突部は、前記螺旋溝に対応した形状及び寸法を有し、前記螺旋溝に密着してボールナット内をシールし、
前記分割部分の分割面は、前記螺旋溝の表面に付着した異物を掻き取り、
前記補助リングは、前記掻き取られた異物が前記分割面を通ってボールナット内に侵入するのを防止することを特徴とするボールねじのシール装置。
【請求項2】
ねじ軸の螺旋溝に嵌合する突部を有するリング状のシール部材を、ボールナットの端部に装着してボールナット内をシールするものにおいて、
前記シール部材の、ボールナットの外方側に向いた端面から途中部分までを複数の軸方向スリットで分割すると共に、これら分割部分を内径側に弾圧することにより、前記突部と前記螺旋溝との嵌合すきまをゼロ以下にし、
前記突部は、前記螺旋溝に対応した形状及び寸法を有し、前記螺旋溝に密着してボールナット内をシールし、
前記分割部分の分割面は、前記螺旋溝の表面に付着した異物を掻き取り、
前記シール部材の分割されていないリング部分は、前記掻き取られた異物が前記分割面を通ってボールナット内に侵入するのを防止することを特徴とするボールねじのシール装置。
(3-2)引用例の考案
これに対して、当審における取消理由通知で引用した米国特許第2,818,745号明細書(以下、「引用例1」という)には、「ねじ掃除装置」について、
「掃除セグメントの製作では、・・・円筒25の内面には、ねじ10の表面に密着する螺旋状の隆起内面29が機械加工される。その後、個々のワッシャー26は分離される。そして、その端部が環状ワイパー面32で終結すると共に各側面に比較的鋭いスクレーパエッジ33が形成された半径方向に延びるフィン31を除いて、内面に隣接する側面部分は機械加工で除去される。従って、フィン31に隣接する凹部35は、ねじから取り除かれた異物のためのスクレーパ面に直ちに隣接する空間になる。・・・環状ワイパー面32はねじ溝11に密着するように形成された内面29の一部分なので、環状ワイパー面32はねじ表面の相応若しくは対応する環状部分と密着する。その後、各ワッシャー26は二分割され、協同してワイパーユニットを形成する二つの半円釣合掃除セグメントが形成される。全ての掃除セグメント24が軸方向の隣接する掃除部材の各々から90°置き換えられるように、交互のワッシャーの切断は中間のワッシャーから90°置き換えられる。」(第2欄17?48行)、
「ワイパー組立体19を通過する異物は、掃除セグメント24の環状ワイパー面32とかみ合う。・・・概して言えば、異物のより大きな粒子がワイパー組立体19によって除去され、異物の細かい粒子だけがワイパー組立体18の領域内へ通過する。これらの粒子は、ねじから除去されると、フィン31の各々と隣接する凹部35に収容される。」(第3欄21?36行)と記載されている。
同じく米国特許第2,793,538号明細書(以下、「引用例2」という)には、「ねじ筋のワイパー」について、「本発明のワイパーは一般に18で示され、外側スリーブ20とこの外側20に嵌め込んだ内側スリーブ22とから成る。」(第2欄14?17行)、
「さて、図11及び図面12を参照すると、スリーブ20の外方即ち全面端部に、一連の円周に一定間隔を保って軸方向に延びるフィンガー30が形成されていることが分かる。フィンガー30は、夫々、その内面上にアーチ形ボタンすなわち歯状突起32を備えている。」(第2欄22?26行)、
「フィンガー30は幾分弾性があり、歯状突起32の半径方向最内部の表面によって形成された円の直径はねじ溝14の谷底径よりやや小さい。従って、歯状突起32は圧力を受けて溝14の表面に接触する。その結果、歯状突起32は溝14を効果的に払拭するため、その表面上の塵挨または砂が皆無になる。」(第2欄62?68行)
と記載されている。
(3-3)対比・判断
そこで、訂正明細書の請求項1に係る考案と引用例1に記載された考案とを比較すると、引用例1に記載された「掃除セグメント24」は訂正明細書の請求項1に係る考案の「シール部材」に相当するから、引用例1には
「ねじ軸の螺旋溝に嵌合する突部を有するリング状のシール部材を、ボールナットの端部に装着してボールナット内をシールするものにおいて、
前記シール部材を複数部分に軸方向に分割すると共に、これら分割部分を内径方向に弾圧することにより、前記突部と前記螺旋溝との嵌合すきまをゼロ以下にし、かつ、前記シール部材は隣接するシール部材の各々から90°置き換えられ、
前記突部は、その端部が環状ワイパー面32で終結すると共に各側面に比較的鋭いスクレーパエッジ33が形成された半径方向に延びるフィン31であって、前記螺旋溝に密着してボールナット内をシールし、
前記シール部材のワイパー面32は、前記螺旋溝の表面に付着した異物を掻き取り、
前記シール部材の隣接するシール部材の各々から90°置き換えにより、前記掻き取られた異物が前記分割面を通ってボールナット内に侵入するのを防止するボールねじのシール装置。」が記載されている。
してみると、両者は、
「ねじ軸の螺旋溝に嵌合する突部を有するリング状のシール部材を、ボールナットの端部に装着してボールナット内をシールするものにおいて、
前記シール部材を複数部分に軸方向に分割すると共に、これら分割部分を内径方向に弾圧することにより、前記突部と前記螺旋溝との嵌合すきまをゼロ以下にし、
前記突部は、前記螺旋溝に密着してボールナット内をシールし、
シール部材は、前記螺旋溝の表面に付着した異物を掻き取り、
前記掻き取られた異物が前記分割面を通ってボールナット内に侵入するのを防止するボールねじのシール装置。」の点で一致し、
訂正明細書の請求項1に係る考案は、
「前記突部は、前記螺旋溝に対応した形状及び寸法を有し、前記螺旋溝に密着してボールナット内をシールし、
前記分割部分の分割面は、前記螺旋溝の表面に付着した異物を掻き取り」であるのに対して、引用例1に記載された考案において、これに対応するものは、
「前記突部は、その端部が環状ワイパー面32で終結すると共に各側面に比較的鋭いスクレーパエッジ33が形成された半径方向に延びるフィン31であって、前記螺旋溝に密着してボールナット内をシールし、
前記シール部材のワイパー面32は、前記螺旋溝の表面に付着した異物を掻き取り」である点で少なくとも相違する。
以下、上記相違点について検討する。
引用例2に記載された「フィンガー30の内面上の歯状突起32」は、フィンガーの分割部分であり、「その分割面は、螺旋溝の表面に付着した異物を掻き取る」から、訂正明細書の請求項1に係る考案の「前記分割部分」に「前記螺旋溝の表面に付着した異物を掻き取り」の点では一致するが、訂正明細書の請求項1に係る考案のように「これら分割部分を内径方向に弾圧することにより、前記突部と前記螺旋溝との嵌合すきまをゼロ以下にし」、「前記突部は、前記螺旋溝に対応した形状及び寸法を有し、前記螺旋溝に密着してボールナット内をシールする」ものではない。
また、「ねじ軸の螺旋溝に嵌合する突部を有するリング状のシール部材を、ボールナットの端部に装着してボールナット内をシールするものにおいて、
前記シール部材を内径方向に弾圧することにより、前記突部と前記螺旋溝との嵌合すきまをゼロ以下にし、
前記突部は、前記螺旋溝に対応した形状及び寸法を有し、前記螺旋溝に密着してボールナット内をシールするもの」は周知技術(例えば、取消理由通知でも引用した実願昭57-75698号(実開昭58-178553号)のマイクロフィルムの第1図?第3図に記載の「従来のボールねじのシール装置」を参照されたい)であるが、該周知技術は、訂正明細書の請求項1に係る考案のような「前記シール部材を複数部分に軸方向に分割すると共に、これら分割部分を内径方向に弾圧することにより、前記突部と前記螺旋溝との嵌合すきまをゼロ以下にした」ものではない。
しかも、引用例1に記載された考案の「前記突部」に引用例2に記載された歯状突起32及び周知技術のを適用しようとすると、引用例1の「これらの粒子は、ねじから除去されると、フィン31の各々と隣接する凹部35に収容される。」という記載からみて該適用により異物の収容に必要な凹部35も除かれてしまい、凹部35の存在が適用の阻害要因になる。
してみると、訂正明細書の請求項1に係る考案の上記相違点に係る構成が引用例1、2に記載された考案及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に考案をすることができたものとすることはできない。
また、引用例1、2に記載された考案及び上記周知技術をどのように組み合わせてみても、訂正明細書の請求項1に係る考案が引用例1、2に記載された考案及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に考案をすることができたものとすることはできない。
さらに、訂正明細書の請求項2に係る考案についても、各引用例に記載された考案及び周知技術と比較して、少なくとも上記と同じ相違点が有るので、同様な理由で前記各引用例に記載された考案に及び上記周知技術基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるとはいえない。
よって、訂正明細書の各請求項に係る考案は、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができない考案とすることはできない。
(4)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第10条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第2項及び同条第3項でさらに準用する同法第126条第2?4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.実用新案登録異議の申立てについての判断
申立人は、証拠方法として、甲第1号証(引用例1)、甲第2号証(特開昭55-47045号公報)及び甲第3号証(引用例2)を提示して、本件請求項1に係る考案は、甲第1号証に記載された考案と同一であるか甲第1号証及び甲第2号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第1項第3号又は同法第2項の規定に違反してなされたものであり、本件請求項2に係る考案は、甲第3号証に記載された考案と同一であるから、実用新案法第3条第1項第3号の規定に違反してなされたものでるから、その実用新案登録は取り消されるべきである旨主張している。
しかしながら、甲第2号証に記載された考案は、技術的にみて上記周知技術と同一である。
してみると、前記独立実用新案登録要件の判断に記載したのと同様な理由で、上記訂正明細書のとおり訂正された本件請求項1に係る考案は、甲第1号証に記載された考案と同一であるといえないばかりでなく甲第1号証及び甲第2号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるともいえない。同じく、上記訂正明細書のとおり訂正された本件請求項2に係る考案は、甲第3号証に記載された考案と同一であるといえない。
したがって、実用新案登録異議申立ての理由および証拠方法によっては、本件実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
ボールねじのシール装置
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】
ねじ軸の螺旋溝に嵌合する突部を有するリング状のシール部材を、ボールナットの端部に装着してボールナット内をシールするものにおいて、
前記シール部材を複数部分に軸方向に分割すると共に、これら分割部分を内径方向に弾圧することにより、前記突部と前記螺旋溝との嵌合すきまをゼロ以下にし、かつ、前記シール部材よりもボールナットの内方側に補助リングを装着し、
前記突部は、前記螺旋溝に対応した形状及び寸法を有し、前記螺旋溝に密着してボールナット内をシールし、
前記分割部分の分割面は、前記螺旋溝の表面に付着した異物を掻き取り、
前記補助リングは、前記掻き取られた異物が前記分割面を通ってボールナット内に侵入するのを防止することを特徴とするボールねじのシール装置。
【請求項2】
ねじ軸の螺旋溝に嵌合する突部を有するリング状のシール部材を、ボールナットの端部に装着してボールナット内をシールするものにおいて、
前記シール部材の、ボールナットの外方側に向いた端面から途中部分までを複数の軸方向スリットで分割すると共に、これら分割部分を内径側に弾圧することにより、前記突部と前記螺旋溝との嵌合すきまをゼロ以下にし、
前記突部は、前記螺旋溝に対応した形状及び寸法を有し、前記螺旋溝に密着してボールナット内をシールし、
前記分割部分の分割面は、前記螺旋溝の表面に付着した異物を掻き取り、
前記シール部材の分割されていないリング部分は、前記掻き取られた異物が前記分割面を通ってボールナット内に侵入するのを防止することを特徴とするボールねじのシール装置。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、ボールねじのシール装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ボールねじは、ねじ軸の外周面に設けた螺旋溝と、ボールナットの内周面に設けた螺旋溝との間に複数のボールを配し、ねじ軸の回転動力をボールを介してボールナットの推力に変換するものであるが、ボールナットの内部に充填した潤滑剤の洩出および外部からの異物の侵入を防止するため、図5に示すように、ねじ軸21の螺旋溝21aに嵌合する突部25aを有するリング状のラビリンスシール部材25を、ボールナット22の両端部に装着するようにしている。シール部材25は、ボールナット22のねじ穴22bに螺着した止めねじ29等で固定される。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
上記シール装置は、シール部材25をねじ軸21に嵌合した後、ボールナット22に螺着した止めねじ29で固定するものであり、突部25aと螺旋溝21aとの間の嵌合すきまはシール部材25とねじ軸21の寸法関係に依存している。そのため、シール部材25とねじ軸21の寸法誤差によって突部25aと螺旋溝21aとの間に大きなすきまが生じ、使用条件によっては、シール性に不足をきたす場合がある。
【0004】
本考案の目的は、上記のような従来技術上の問題点を解決し、ボールねじにおけるシール装置のシール性を向上させることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係わるシール装置では、リング状のシール部材を複数部分に軸方向に分割すると共に、これら分割部分を内径方向に弾圧することにより、シール部材の突部とねじ軸の螺旋溝との嵌合すきまをゼロ以下にし、かつ、シール部材よりもボールナットの内方側に補助リングを装着するようにした。
【0006】
請求項2に係わるシール装置では、シール部材の、ボールナットの外方側に向いた端面から途中部分までを複数の軸方向スリットで分割すると共に、これら分割部分を内径側に弾圧することにより、突部と螺旋溝との嵌合すきまをゼロ以下にするようにした。
【0007】
請求項1はシール部材自体を分割したもの、請求項2はシール部材を部分的に分割したものである。嵌合すきまがゼロ以下とは、嵌合すきまがゼロの状態あるいは締代をもった状態(マイナスすきま)を言う。
【0008】
【作用】
シール部材を複数部分に分割し、この分割した部分を内径方向に弾圧することにより、突部をねじ軸の螺旋溝に密着させることができる。
【0009】
ねじ軸の螺旋溝の表面に付着した異物は、シール部材の分割面よって掻き取られる。補助リング又はシール部材の分割されていないリング部分は、この掻き取られた異物が分割面を通ってボールナット内に侵入しようとするのを防止する。
【0010】
【実施例】
以下、本考案の実施例を図面に従って説明する。
【0011】
図1に示すように、ねじ軸1の外周面に設けた螺旋溝1aと、ボールナット2の内周面に設けた螺旋溝2aとの間に複数のボール3が配されている。ねじ軸1が回転すると、その回転動力がボール3を介してボールナット2に伝達され、ボールナット2が軸方向に移動する。ボールナット2の両端部には、シール部材5と補助リング6とが装着されている。
【0012】
シール部材5は、図2に示すように、樹脂材あるいはフッ素ゴム等のゴム材をリング状に成形したのち、これを円周等配位置の3箇所で軸方向に分割して形成したものである。シール部材5は、内径方向に突出した突部5aを有し、この突部5aは、ねじ軸1の螺旋溝1aに対応した形状・寸法を有する。
【0013】
シール部材5の3つの分割部分は、それぞれ、ボールナット2のねじ穴2bに螺着したボールプランジャ8によって内径方向に弾圧される。そのため、図1bに拡大して示すように、突部5aと螺旋溝1aの嵌合すきまは、ゼロあるいは僅かにマイナス(締代をもった状態)になっている。尚、シール部材5の各分割部分間には僅かなすきまがある。このように、突部5aが螺旋溝1aに密着するので、ボールナット2内の潤滑剤が外部に洩れにくく、また外部から異物が侵入しにくい。さらに、シール部材5の各分割面5bが、螺旋溝1aの表面に付着した異物を掻き取るので、従来のものに比べ、シール性は極めて高い。補助リング6は、この掻き取られた異物が分割面5bを通ってボールナット2内に侵入しようとするのを防止する。
【0014】
図3および図4に示す実施例は、シール部材5の、ボールナット2の外方側に向いた端面5cから途中部分までを複数の軸方向スリット5dで分割すると共に、この分割した部分をガータスプリング10で内径側に弾圧するようにしたものである。上述したシール装置と同様の作用効果を奏する。尚、この実施例において、シール部材5の各分割面5bによって螺旋溝1aの表面から掻き取られた異物は、シール部材5の分割されていないリング部分5eによってボールナット2内への侵入を阻止される。したがって、上述した補助リング6は配置されていない。
【0015】
尚、図1に示す構成と図3に示す構成とを併用するようにしても良い。
【0016】
【考案の効果】
本考案によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)シール部材及びねじ軸の寸法誤差に関係なく、シール部材の突部が常にねじ軸の螺旋溝にゼロ以下の嵌合すきまをもって密着するので、ボールナット内の潤滑剤が外部に洩れにくく、また外部から異物が侵入しにくい。
(2)ねじ軸の螺旋溝の表面に付着した異物がシール部材の分割面によって掻き取られるので、ボールナット内に異物が侵入しにくい。
(3)螺旋溝の表面から掻き取られた異物が分割面を通ってボールナット内に侵入しようとするのが補助リング又はシール部材の分割されていないリング部分によって防止されるので、ボールナット内に異物が侵入しにくい。
(4)以上の効果により、従来のシール装置に比べ、シール性を著しく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本考案の実施例を示す断面図(図a)、図aにおける部分拡大断面図(図b)である。
【図2】
図1におけるシール部材を示す正面図(図a)、側面図(図b)である。
【図3】
本考案の他の実施例を示す断面図である。
【図4】
図3におけるシール部材を示す正面図(図a)、側面図(図b)である。
【図5】
従来のシール装置を示す断面図である。
【符号の説明】
1 ねじ軸
1a 螺旋溝
2 ボールナット
2a 螺旋溝
5 シール部材
5a 突部
5d スリット
6 補助リング
8 ボールプランジャ
10 ガータスプリング
訂正の要旨 訂正事項
a.実用新案登録請求の範囲の請求項1、第3行の「この分割した部分」を「これら分割部分」と訂正する。
これに伴い、実用新案登録請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との整合をとるため、明細書第2ページ第14行の「この分割した部分」を「これら分割部分」と訂正する。
b.実用新案登録請求の範囲の請求項1、第5行?6行の「するようにした」を「し、前記突部は、前記螺旋溝に対応した形状及び寸法を有し、前記螺旋溝に密着してボールナット内をシールし、前記分割部分の分割面は、前記螺旋溝の表面に付着した異物を掻き取り、前記補助リングは、前記掻き取られた異物が前記分割面を通ってボールナット内に侵入するのを防止する」と訂正する。
c.実用新案登録請求の範囲の請求項2、第4行の「この分割した部分」を「これら分割部分」と訂正する。
これに伴い、実用新案登録請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との整合をとるため、明細書第2ページ第19?20行の「この分割した部分」を「これら分割部分」と訂正する。
d.実用新案登録請求の範囲の請求項2、第5行の「するようにした」を「し、前記突部は、前記螺旋溝に対応した形状及び寸法を有し、前記螺旋溝に密着してボールナット内をシールし、前記分割部分の分割面は、前記螺旋溝の表面に付着した異物を掻き取り、前記シール部材の分割されていないリング部分は、前記掻き取られた異物が前記分割面を通ってボールナット内に侵入するのを防止する」と訂正する。
e.明細書第2ページ第6行の「そのため、」と「突部25a」との間に「シール部材25とねじ軸21の寸法誤差によって」を挿入する。
f.明細書第2ページ第9行の「本考案の目的は、」と「ボールねじ」との間に「上記のような従来技術上の問題点を解決し、」を挿入する。
g.明細書第4ページ第14行?17行の「本考案によれば、シール部材の突部がねじ軸の螺旋溝にゼロ以下の嵌合すきまをもって密着し、しかも、螺旋溝の表面に付着した異物がシール部材の分割面によって掻き取られるので、従来のものに比べ、シール性を著しく向上させることができる。」を「本考案によれば、以下に示す効果が得られる。(1)シール部材及びねじ軸の寸法誤差に関係なく、シール部材の突部が常にねじ軸の螺旋溝にゼロ以下の嵌合すきまをもって密着するので、ボールナット内の潤滑剤が外部に洩れにくく、また外部から異物が侵入しにくい。(2)ねじ軸の螺旋溝の表面に付着した異物がシール部材の分割面によって掻き取られるので、ボールナット内に異物が侵入しにくい。(3)螺旋溝の表面から掻き取られた異物が分割面を通ってボールナット内に侵入しようとするのが補助リング又はシール部材の分割されていないリング部分によって防止されるので、ボールナット内に異物が侵入しにくい。(4)以上の効果により、従来のシール装置に比べ、シール性を著しく向上させることができる。」と訂正する。
異議決定日 1999-11-16 
出願番号 実願平4-45435 
審決分類 U 1 651・ 113- YA (F16H)
U 1 651・ 121- YA (F16H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 田々井 正吾  
特許庁審判長 舟木 進
特許庁審判官 鳥居 稔
西村 敏彦
登録日 1998-06-05 
登録番号 実用登録第2579380号(U2579380) 
権利者 エヌティエヌ株式会社
大阪府大阪市西区京町堀1丁目3番17号
考案の名称 ボールねじのシール装置  
代理人 江原 省吾  
代理人 江原 省吾  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社   サービスに関しての問い合わせ