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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効としない E02D
管理番号 1010445
審判番号 審判1998-35248  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2000-09-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-06-03 
確定日 2000-01-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第1944471号実用新案「マンホール等用足掛具」の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第一 本件考案
本件登録第1944471号実用新案は、昭和58年10月14日に実用新案登録出願され、平成4年2月6日に実公平4-4040号公報として出願公告され、平成4年12月24日に設定登録がなされたものである。その登録実用新案の要旨は、明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。
「合成樹脂で被覆された、足踏部とその両側に位置する側部とを有する足掛具において、前記合成樹脂被覆部の上面で前記足踏部の両端近傍に表面が突出し且つ前記足踏部の限界を表示する反射板を設け、該反射板の裏面にプリズム状の凸面を形成したことを特徴とするマンホール等用足掛具。」
第二 当事者の主張
一 請求人の主張
請求人は、甲第1?4号証を提出して、本件登録実用新案は、甲第1?4号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法3条2項の規定により実用新案登録を受けることができないものである、と主張している。
すなわち、本件考案の「合成樹脂で被覆された、足踏部とその両側に位置する側部とを有する足掛具において、前記合成樹脂被覆部の上面で前記足踏部に反射板を設け、」の部分は、甲第4号証と一致する。そして、本件考案の(a)「表面が突出し」、(b)「両端近傍に」、(c)「反射板の裏面にプリズム状の凸面を形成したこと」の点で相違する。
本件考案の(a)「表面が突出し」は、甲第4号証に示唆されていると言える。第4図において、被覆材4の周囲には下面を除いて、芯金3に沿って数条の凸起7,7が設けてある(ロ-ロ断面参照)。そして、ハ-ハ断面では、丸い芯金3が被覆材4で覆われ、そこに円周方向に溝となった広く浅い環状切欠凹部5を形成し、テープ状認識表示6を円周方向に巻き付けたところが示されている。従って、認識表示6の表面は、凸起7,7の表面より突出しているか、少なくとも同一面上にあり、金具2の下面では明らかに突出している。また、芯金3に直接認識標示6を付設したものでは、突出は明白である。
本件考案の(b)「両端近傍に」およびこれによる効果は、甲第4号証に示唆されていると言える。腕部3bと足掛部3aの存在を知らしめるため、認識表示6は、第4図では一方の腕部に、第5図では両方の腕部に、第6図では両方の腕部3bと足掛部3aに設けられている。そして、図では腕部3bと足掛部3aの各々のほぼ中央に位置しているが、腕部と足掛部との境界部に近く位置するものも、当然に本考案は含んでいる。腕部と足掛部との両方の存在を最少個数の表示で知らしめるには、境界部(両端近傍)に各々1個、合計2個のものも当然に含まれ、または、示唆している。しかも、反射板を設けるには、面積が広い境界部(両端近傍・隅角部)を選ぶことは、設計上で当然になされることである。
甲第4号証に示す(c)「再帰反射テープ、蛍光テープ等の認識標示」に代えて、甲第3号証に示す「標識用反射器」を含んだ「反射板の裏面にプリズム状の凸面を形成したこと」を採用することは、極めて容易なことであり、それによる効果も当然に予想されるものである。
なお、「合成樹脂で被覆された、足踏部とその両側に位置する側部とを有する足掛具」は甲第1号証、「蛍光塗料、反射性塗料等を併用してもよい。」は甲第2号証にも示されている。
よって、本件考案の実用新案登録は、同法37条1項1号の規定により無効とすべきである。
甲第1号証:実開昭53-38152号公報
甲第2号証:実公昭57-60640号公報
甲第3号証:実公昭44-13396号公報
甲第4号証:特開昭54-82838号公報
二 被請求人の主張
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、以下のとおり、反論している。
請求人が提示した甲各号証には「合成樹脂被覆部の上面で前記足踏部の両端近傍に表面が突出し且つ前記足踏部の限界を表示する反射板を設けた」構成を示唆するものがなく、また、この構成によって期待される効果は提示された甲各号証からは予測できない。本件登録実用新案は提示された甲各号証には示唆されていない構成を具有し、その結果、甲各号証では予測できない効果を期待できるものであるから、本件登録実用新案は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された考案に基いてきわめて容易になし得た考案ではないので、実用新案法3条2項の規定に該当するものではない。
第三 当審の判断
一 甲各号証の記載事項
1 甲第1号証には、
(1)「棒鋼その他によりコ字形足掛金具素材を設け、その先端適宜長さをネジ部に形成してナツトを螺合し、前記ネジ部を除く残部分に合成樹脂材を被覆すると共に、その被覆脚部の中間外周に環状突部を設け、マンホール構築用側塊の壁面に脚部を先端より貫通し、その壁面の内外を環状突部とナツトとで挟持し、足掛金具を水密に取付けることを特徴とするマンホール用足掛金具。」(実用新案登録請求の範囲)、
(2)第1?3図、
の記載があり、これら記載からみて、
「合成樹脂材で被覆された、足掛部分とその両側に位置する脚部とを有するマンホール用足掛金具」
が記載されているものと認められる。
2 甲第2号証には、
(1)「コ字状足場金具本体の断面形状を上下に条溝をそれぞれ有する略H型形状となし、該条溝内にはそれぞれ有色体を塗布若しくは充填したことを特徴とする足場金具。」(実用新案登録請求の範囲)
(2)「又、図中5,5’は条溝3,3’内に塗布若しくは充填した有色体であり、この有色体としては有色の樹脂モルタル、又はレヂンコンクリートが用いられる他、単なる樹脂塗料であってもよく、樹脂モルタル、又はレヂンコンクリート等の有色体5,5’を条溝3,3’内に充填させる場合は条溝の両開口縁よりは僅かに低くなる様に段差を設けて充填しておけば、条溝3,3’の両開口縁が滑り止め用突起の役目をなすことができる。又有色体5,5’の色彩としては暗所においても目立ち易いように黄色又は白色等が用いられ、場合によっては蛍光塗料、反射性塗料等を併用してもよい。」(同公報2欄5?16行)、
(3)「有色体は条溝の凹所内にあるため使用中に摩耗、破損等を生ずる虞れが全くなく、上記効果を長期間に渡って維持せしめることができる等の優れた効果を発揮する。」(同2欄29?32行)、
(4)第1?5図、
の記載があり、これら記載からみて、
「足掛部とその両側に位置する両腕部とを有する足場金具において、足場金具本体の断面形状を上下に条溝を有する略H型形状となし、条溝内にはそれぞれ有色体を塗布若しくは充填したマンホール等用足場金具」
が記載されているものと認められる。
3 甲第3号証には、
(1)「頂点aを有する直角三角錐体の反射素子1の平面図形が頂点aを中心とする正方形となるべく形成し、この反射素子1四個を夫々90°宛回転した位置で相互に結合した1組の反射素子体の適宜数を一体的な裏面部とした標識用反射器。」(実用新案登録請求の範囲)、
(2)第1?5図、
の記載があり、これら記載からみて、
「反射器の裏面に直角三角錐体の反射素子を形成した標識用反射器」
が記載されているものと認められる。
4 甲第4号証には、
(1)「足掛部及び両腕部でコ字状を形成し両腕部の先端に抜止部を有する足場金具を上下に複数個配設してなる昇降装置において、前記足場金具が、足掛部及び両腕部でコ字状を形成し両腕部の先端に抜止部を有する芯金に、少なくとも足掛部及び両腕部にわたってゴム、合成樹脂等の被覆材を設け、被覆材の足掛面の少なくとも一部を扁平面となし、該扁平面に帯状切欠凹部を形成し、その凹部に認識表示を付設したものからなることを特徴とする認識表示付足場金具よりなる昇降装置。」(特許請求の範囲第3項)、
(2)「第2図の実施例の足場金具2において、足掛部3a、両腕部3b、3b’で全体としてコ字状を形成し、両腕部3b、3b’の先端に抜止部3c、3c’を有する芯金3に、少なくとも足掛部3a、両腕部3b、3bの部分にゴム、合成樹脂等の被覆材4が設けてある。足掛部被覆材4a及び両腕部3b、3b’の被覆材4b、4b’の一部は、足掛正面を平滑面に背面をU字形に形成してあり、平滑面には帯状の切欠凹部5が設けてある。そして、切欠凹部5には再帰反射テープ、反射テープ、蛍光テープ等の認識標示6が付設してある。」(同公報2頁左上欄19行?右上欄10行)、
(3)「第6図の足場金具2は、足掛部3a及び両腕部3b、3b’の被覆材4に環状切欠凹部5を設け、その上に認識表示6を付設したものから成っている。」(同左下欄6?9行)、
(4)第1?3図及び第6図、
の記載があり、これら記載からみて、
「合成樹脂等で被覆された、足掛部とその両側に位置する両腕部とを有する足場金具において、合成樹脂等の被覆材の上面で足掛部及び両腕部に切欠凹部を形成し、その切欠凹部に再帰反射テープ、反射テープ、蛍光テープ等の認識標示を設けたマンホール等用足場金具」
が記載されているものと認められる。
二 本件考案と甲各号証に記載されたものとの対比、検討
1 対比
本件考案と甲第4号証に記載された考案とを対比すると、甲第4号証に記載された考案の「足掛部」、「両腕部」、「足場金具」、「被覆材」、「認識表示」は、本件考案の「足踏部」、「側部」、「足掛具」、「被覆部」、「反射板」にそれぞれ相当し、両者は、
「合成樹脂で被覆された、足踏部とその両側に位置する側部とを有する足掛具において、合成樹脂被覆部の上面で足踏部に反射板を設けたマンホール等用足掛具」、
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1
本件考案の反射板は、「足踏部の両端近傍に、足踏部の限界を表示する」ように設けるのに対し、甲第4号証の認識表示(反射板)は、足掛部(足踏部)に設けられるものの、本件考案におけるような構成を有しない点。
相違点2
上記相違点1に関連して、本件考案の反射板は、その「表面が突出し」て設けられるのに対し、甲第4号証の認識表示(反射板)は、そのような構成を有しない点。
相違点3
本件考案は、「反射板の裏面にプリズム状の凸面を形成」するのに対し、甲第4号証では、再帰反射テープ、蛍光テープ等の認識表示を用い、そのような構成を有しない点。
2 相違点1?3に対する検討
まず相違点3について検討すると、甲第3号証には、「反射器の裏面に直角三角錐体の反射素子を形成した標識用反射器」との点が記載されており、甲第4号証に記載された足場金具における、再帰反射テープ、蛍光テープ等の認識表示に代えて、甲第3号証に記載された反射器の構成を採用し、本件考案におけるように、「反射板の裏面にプリズム状の凸面を形成」するようなことは、当業者であれば格別の困難性を伴うことなく、きわめて容易になし得た程度のことにすぎない。
次に、相違点1及び2について検討すると、甲第1号証には、「合成樹脂材で被覆された、足掛部分とその両側に位置する脚部とを有するマンホール用足掛金具」との点が、さらに、甲第2号証には、「足掛部とその両側に位置する両腕部とを有する足場金具において、足場金具本体の断面形状を上下に条溝を有する略H型形状となし、条溝内にはそれぞれ有色体を塗布若しくは充填したマンホール等用足場金具」との点がそれぞれ記載されており、これら甲第1号証及び甲第2号証において、断片的には、本件考案の一部の内容についての記載がされている。しかしながら、本件考案の構成のうち、相違点1及び2に関する、「足踏部の両端近傍に表面が突出し且つ足踏部の限界を表示する反射板を設け」る点については、何れにも記載がなく、示唆すらもされていない。
そして、本件考案は、この構成を備えることにより、明細書に記載の「この考案に係るマンホール等用足掛具は、足踏部の両端近傍に足踏部の限界を表示する反射板が設けられているので、足踏部の位置が正確に特定表示され、急いで昇降する場合等に足踏部以外の箇所を踏み身体のバランスを崩したり足掛具を汚したり破損したりすることがなく、安全で汚れることの少ないものである。しかも、該両側の反射板によって足踏部の水平方向の取付位置の正確な確認ができ、さらには多数の足掛具を配列するとき、この各反射板が縦列の正確な配列の目安となるので、足掛具の取付けおよび配列検査が簡単・容易で正確にできる。
また、該反射板の表面が合成樹脂被覆部の上面から突出されているので、該反射板の上面に土・塵等が溜りることが少なく、仮に溜っても容易に拭い去ることができて、足掛具を常時清潔に維持することができると共に該反射板の表面に雨水或いは地下水が溜ることがなく結氷の心配もないので、安全な足掛具となる。」(本件考案の公告公報2頁4欄5?23行)という作用、効果を奏するものである。
したがって、本件考案は、甲第1?4号証に記載されたものに基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることはできない。
三 請求人の主張に対して
反射板を表面が突出して足踏部に設ける点について、請求人は、審判請求書において、甲第4号証に示唆されているとし、「第4図において、被覆材4の周囲には下面を除いて、芯金3に沿って数条の凸起7,7が設けてある(ロ-ロ断面参照)。そして、ハ-ハ断面では、丸い芯金3が被覆材4で覆われ、そこに円周方向に溝となった広く浅い環状切欠凹部5を形成し、テープ状認識表示6を円周方向に巻き付けたところが示されている。従って、認識表示6の表面は、凸起7,7の表面より突出しているか、少なくとも同一面上にあり、金具2の下面では明らかに突出している。また、芯金3に直接認識標示6を付設したものでは、突出は明白である。」(審判請求書3頁下より1行?4頁7行)、さらに、「反射テープ等の認識表示の表面は被覆材の表面に対し凹所となっているとは書いていない。従って、凹所、凸部および同一面上の3種の態様を含む。」(同5頁10?12行)と主張している。又、平成11年8月10日付け弁駁書において、「従って、ハ-ハ断面図(ハ)において、被覆材4の表面に認識表示6が全面にわたり付されており、ハ-ハ断面より目視方向後方に位置する前記凸起7が隠れている。」(同2頁10?12行)との、同様の主張を行っている。
しかしながら、甲第4号証における、「腕部の被覆材4に環状切欠凹部5を形成し、その切欠凹部5に認識表示6を付設したものである。」(同公報2頁右上欄21行?左下欄1行)等の記載、及び第4?6図の各記載(特に、各平面図の切欠凹部5と各断面図を参照のこと)を考慮すれば、請求人が主張するような、「ハ-ハ断面より目視方向後方に位置する凸起7が隠れている」とか、「認識表示6の表面は、凸起7,7の表面より突出しているか、少なくとも同一面上にあり、金具2の下面では明らかに突出している」などの主張は、根拠のない独自の見解であって、採用することはできない。
第四 むすび
以上のとおりであるから、請求人が主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件考案の実用新案登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1999-10-12 
結審通知日 1999-10-29 
審決日 1999-11-08 
出願番号 実願昭58-159154 
審決分類 U 1 112・ 121- Y (E02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木原 裕  
特許庁審判長 幸長 保次郎
特許庁審判官 鈴木 公子
小野 忠悦
登録日 1992-12-24 
登録番号 実用登録第1944471号(U1944471) 
考案の名称 マンホール等用足掛具  
代理人 西村 幹男  
代理人 犬飼 新平  
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