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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 無効としない A63B 審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備 無効としない A63B 審判 全部無効 4項(5項) 請求の範囲の記載不備 無効としない A63B |
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管理番号 | 1010449 |
審判番号 | 審判1998-35445 |
総通号数 | 9 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2000-09-29 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1998-09-16 |
確定日 | 2000-01-14 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2010415号実用新案「ゴルフクラブのヘッド」の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯・本件考案 本件登録第2010415号実用新案に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、昭和56年7月4日に出願された実願昭56年-100004号の出願を、昭和60年9月12日に実用新案法第9条第1項において準用する特許法第44条第1項の規定により分割して新たな実用新案登録出願(実願昭60-138672号)としたのであり、昭和63年5月18日に出願公告(実公昭63-17403号)されたところ、実用新案登録異議の申立てがなされ、平成1年4月1日付で明細書の一部を補正する手続補正書が提出された。しかし、この補正は、明細書の実用新案登録請求の範囲を実質上変更するものとして、平成3年4月8日付で補正の却下の決定がなされるとともに、実用新案登録異議申立てを理由あるものとする決定がなされ、この決定に記載した理由により拒絶査定がなされた。 その後、平成3年8月29日に審判請求がなされ、上記補正却下は失当であるとして取消し、拒絶査定を取消す旨の審決が出されるとともに、平成6年3月23日に設定登録されたものである。 以上の経緯から、本件考案の要旨は、出願公告後の手続補正書により補正された明細書と図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載されたとおりの 「ソール部を開口し、シャフトを取付けるためのネックボスを一端に有する中空のヘッド本体を、金属にて一体に形成し、前記ネックボスの下端をヘッド本体の中空部内に突出させ、この突出させた分だけ、ネックボスのヘッド本体外部への突出長さを短くしたことを特徴とするゴルフクラブのヘッド」 にあるものと認める。 2.請求人の主張 (1)本件実用新案登録に係る実用新案出願の平成元年4月1日付け手続補正書により補正された明細書の、考案の詳細な説明は、本件実用新案の構成を特定することができないため、当業者が容易にその実施をできる程度に本件実用新案の構成を記載したものではなく、また、実用新案登録請求の範囲は、考案の詳細な説明に記載した考案の構成に欠くことができない事項のみを記載したものではないから、本件実用新案登録は、実用新案法第5条第3項及び第4項に規定する要件を満たしていないので、実用新案法第37条第1項第3号の規定により、その実用新案登録を無効とすべきである旨主張(以下、「第1の主張」という。)している。 (2)また、本件考案は、本件出願前に頒布された刊行物に記載された考案と同一または該考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第1項第3号、または第2項の規定に違反してなされたものであり、その実用新案登録を無効とすべきであると主張(以下、「第2の主張」という。)し、証拠方法として、甲第1号証刊行物(実願昭50-179755号(実開昭52-92857号)のマイクロフィルム)を提出している。 3.証拠方法 上記刊行物には、以下の事項が記載されている。「軽合金・・・等よりなる・・・中空内殻ヘッドに・・・を一体に固着成形してなることを特徴とするゴルフクラブのヘッド」(実用新案登録請求の範囲)が記載され、このゴルフクラブのヘッドに関し、「シャフト取付部(9)は、あらかじめ上記内殻ヘッド(1)に構成し、各部の角度や形状も設計時に決定してオーバーウエイトと重心偏位を生じないようにするのである」(第2頁第11行?14行)との記載が第3図とともに示されている。 4.第1の主張についての検討 (1)考案の詳細な説明の不備について、 請求人は、本件の考案の詳細な説明の欄における記載では、本件考案の実用新案登録請求の範囲に記載された「この突出させた分だけ、ネックボスのヘッド本体外部への突出長さを短くした」の構成について、これに対応する比較基準となるような記載がなく、考案の詳細な説明によっては、本件考案の内容が正しく理解できず、当業者が容易にこの考案を実施することができない旨主張している。 しかしながら、本件明細書第5頁第6行?第17行(本件考案に係る実用新案公告公報第3欄第27行?第39行)の「また、ヘッド本体Aのヒール部5上部にはシャフトを挿入するネックボス10を一体形成にて突設し、またネックボス10の下端部10aを中空部7内のソール部1方向にも突出させており、ヘッド本体Aより外部に突出するネックボス10を短くできると共に、ネックボス10が中空部7内に突出するため、その重量分だけヘッド本体Aの重心がソール部1側に下がる。また、ネックボス10の外部へ突出する長さは短くとも、中空部7内に突出するため、中空部7内にネックボス10は突出しており、シャフトとの接触強度は従来のものと変らないか、それ以上にすることができる」との記載から、実用新案登録請求の範囲の「この突出させた分だけ、ネックボスのヘッド本体外部への突出長さを短くした」の記載は、「ネックボス全体がヘッド本体外部に突出している場合と比較して、ネックボスの下端がヘッド本体の中空部内に突出している正にその長さだけ、ネックボスの本体外部への突出長さが短くなっている」との解釈も可能である(東京地裁平成八年(ワ)21841号判決書」第23頁?24頁参照)ことから、上記「この突出させた分だけ、ネックボスのヘッド本体外部への突出長さを短くした」の記載によって構成を特定することができないものということはできない。 また、上記解釈を行うことにより、上記構成は、「ネックボス全体がヘッド本体外部に突出している場合と比較して、ネックボスの下端がヘッド本体の中空部内に突出している正にその長さだけ、ネックボスの本体外部への突出長さが短くなっている」ものと解されることから、考案の詳細な説明の記載によっては、当業者が容易に考案を実施することができる程度に本件実用新案の構成を記載していないということはできない。 したがって、本件実用新案登録明細書の考案の詳細な説明の記載に、実用新案法第5条第3項の規定に違反するような記載不備があるとはいえない。 (2)実用新案登録請求の範囲の不備について 請求人は、実用新案登録請求の範囲中の「この突出させた分だけ、ネックボスのヘッド本体外部への突出長さを短くした」の記載では、基準となるネックボスの長さが定っていない以上、ネックボスの外部突出長さのどれだけ短くなっているのか不明確で、考案の構成に欠くことができない事項を特定することができず、また、考案の詳細な説明に記載した考案の構成に欠くことができない事項のみを記載したものではない旨主張している。 しかしながら、上記(1)で見たように解釈すると、上記「この突出させた分だけ、ネックボスのヘッド本体外部への突出長さを短くした」の記載によって構成を特定することができないものということはできず、また、上記構成が上にみたように考案の詳細な説明の記載から把握できる以上、考案の構成に欠くことができない事項のみを記載したものではないともいえない。 したがって、本件実用新案登録請求の範囲の記載に実用新案法第5条第4項の規定に違反するような記載不備があるとはいえない。 以上のとおり、本件考案は、明細書の記載に不備があるとする請求人の第1の主張は採用することができない。 5.第2の主張についての検討 本件考案と上記刊行物に記載されたものとを以下に対比判断すると、 上記刊行物に記載されたものにおける「中空内殻ヘッド1」及び「シャフト取付部9」は、それぞれ本件考案における「中空ヘッド本体(A)」、及び「ネックボス(10)」に相当するから、両者は、「シャフトを取付けるためのネックボスを一端に有する中空のヘッド本体を、金属にて一体に形成し、前記ネックボスの下端をヘッド本体の中空部内に突出させたゴルフクラブ」の点で一致するものの、下記の点で相違する。 本件考案は、ネックボスをヘッド本体中空部内に突出させた分だけ、ネックボスのヘッド本体外部への突出長さを短くしたものであるのに対し、上記刊行物に記載のものには、上記構成について何ら記載されておらず示唆もない。 そして、上記の点により本件考案は、「ネックボスの下端を中空ヘッドの内部に突出させているのでその重量分だけヘッドの重心がソール側に下がり、それに応じて打球面のスイート・スポットの位置が下方に移行して打球面の中央に接近するため、競技者の打球確率の高い部分とスイート・スポットの位置が一致し、打球効率の向上したクラブヘッドが得られる。」という効果を奏するものである。 したがって、本件考案は、甲第1号証刊行物記載された考案と同一ではなく、またこの考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることはできないので、請求人の第2の主張は採用することができない。 6.むすび 以上のとおりであるから、請求人の第1の主張、第2の主張および証拠方法によっては、本件考案の登録を無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 1999-11-09 |
結審通知日 | 1999-11-19 |
審決日 | 1999-11-26 |
出願番号 | 実願昭60-138672 |
審決分類 |
U
1
112・
531-
Y
(A63B)
U 1 112・ 121- Y (A63B) U 1 112・ 532- Y (A63B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 砂川 克 |
特許庁審判長 |
寺尾 俊 |
特許庁審判官 |
歌門 恵 岡本 昌直 |
登録日 | 1994-03-23 |
登録番号 | 実用登録第2010415号(U2010415) |
考案の名称 | ゴルフクラブのヘッド |
代理人 | 今城 俊夫 |
代理人 | 倉澤 伊知郎 |
代理人 | 竹内 英人 |
代理人 | 島田 康男 |
代理人 | 佐々木 功 |
代理人 | 川村 恭子 |
代理人 | 大塚 文昭 |
代理人 | 宍戸 嘉一 |
代理人 | 折田 忠仁 |
代理人 | 田中 伸一郎 |
代理人 | 小川 信夫 |
代理人 | 中村 稔 |
代理人 | 村社 厚夫 |