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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 無効としない A01K |
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管理番号 | 1010451 |
審判番号 | 審判1998-35574 |
総通号数 | 9 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2000-09-29 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1998-11-19 |
確定日 | 2000-01-14 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2570549号実用新案「中通し釣竿」の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
I.手続の経緯・本件考案 本件登録第2570549号の請求項1ないし3に係る考案(平成5年6月19日出願、平成10年2月13日設定登録)は、明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 穂先竿を保持する保持竿に振出継合した前記穂先竿の先端部外周に固定され、前記保持竿先端部内径より小径の外径を有し固定管と、 釣糸案内用の内径を有し、前記保持竿の先端部内径より大径の外径を有するトップガイドと、 該トップガイドと前記固定管とに形成されて、互いに螺合するねじ部と を具備することを特徴とする中通し釣竿。 【請求項2】 前記トップガイドの外郭形状がその最大外径を有する位置まで前方に向って殆ど縮小することの無い略ラッパの形状に形成されてなる請求項1記載の中通し釣竿。 【請求項3】 穂先竿を保持する保持竿に振出継合した前記穂先竿の先端部外周に固定され、前記保持竿先端部内径より小径の外径を有する固定管と、 前記保持竿の先端部内径よりも大径の外径を有するトップガイドと、 該トップガイドの内周に設けられた雌ねじ部と、 前記固定管の外周に設けられ、該雌ねじ部の螺合する雄ねじ部とを具備し、 前記穂先竿はその先端が前記雄ねじ部の領域内にまで至るように前記固定管内に挿入された ことを特徴とする中通し釣竿。」 II.請求人の主張 請求人は、下記の甲第1ないし6号証を提示し、本件請求項1ないし3に係る考案は、甲第1ないし6号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件請求項1ないし3に係る考案の実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第37条第1項第2号の規定により無効とされるべきである旨主張する。 記 甲第1号証:特開昭59-42827号公報 甲第2号証:特開昭56-127032号公報 甲第3号証:富士工業’74/75年カタログ「富士の釣具」 甲第4号証:実公昭31-13268号公報 甲第5号証:実願昭51-91356号(実開昭53-9291号)のマイクロフイルム 甲第6号証:米国特許第2735208号明細書 III.当審の判断 1、甲号証記載の考案 甲第1号証には、穂先竿(1)を保持する保持竿に振出継合した前記穂先竿(1)の先端部外周に、釣糸案内用の内径を有する案内管(4)を設けた振り出し式の中通し釣竿が記載されていると認められる。 なお、請求人は、甲第1号証には、「穂先竿(1)の先端部(2)に、穂先竿(1)を保持する保持竿の先端内径より大径な案内管(4)を冠着した」構成が記載されていると主張するが、甲第1号証には、案内管(4)の外径が穂先竿(1)を保持する保持竿の先端内径より大きいことを直接示す記載はなく、しかも、第1図は、手元竿(A)の外径と長さの割合からも明らかなように設計図のように正確に記載されたものではないから、前記請求人の主張は認められない。 甲第2号証の第4頁左下欄12行?右下欄15行には、「軸部分3の先には(第12図)、固定されたスリーヴ27(部分3の先における力嵌め)、およびスリーヴ27にねじ山で噛み合わされている取替可能の糸を引出す部分28(29に、硬質の心が備えられている)により構成された末端キャップ26がある。部分28はアダプタ用部品30(第13図)を受け入れるために取外すことができ、そのとき第14図に描かれているように、アダプタ用部品30をその場所にしつかり保持するため再びもとに戻すことができる。・・・ もう一つの補助器具は、第15図に示されているように、中空のチューブ35の形をした首振り先端仕掛から成立ち、柔軟なスリーブ37により取付片36に取付けられる。この場合、取付片36は糸9を支えるようにスリーヴ27の上にねじ込まれる。」と記載されており、同甲号証には、穂先竿の先端部外周に力嵌めしたスリーヴ27に、糸を引出す部分28、アダプタ用部品30や中空のチューブ35の補助器具を、スリーヴ27のねじ山を用いて取付けるようにした構成が開示されている。 甲第3号証のカラーガイド「NT」の説明部分には、「・振り出し竿。 ・パイプ状の部分がネジ式になっているのでトップの取りはづしが出来る。振り出し竿の穂先の交換が出来、竿の調子が変えられる。」と記載されており、同甲号証には、穂先竿の先端部外周に固定されるパイプ状の部分とトップガイドの部分とが互いにねじによって着脱可能とされていて、トップガイドを取外すことにより、振り出し竿の穂先竿が交換できることが開示されている。 甲第4号証には、中通し釣竿の先端に喇叭状の接続管の一端を外装し、その喇叭口に表面が滑らかで且つ硬度が大きいリングを嵌め込んだトップガイドが記載されている。 甲第5号証には、伸縮自在に構成された竿体(7)において、先端部を構成する分割片(7b)の先端に挿出孔(9)を開口し、この挿出孔(9)に、先端が拡開状となる滑り部(11)を備えたブッシュ(10)を挿着した構成が記載されている。 甲第6号証には、振り出し式の中通し釣竿において、穂先ロッド7の先端に拡径部20を形成し、この拡径部20に釣糸10が貫通されるキャップ23をねじ止めする構成が記載されている。 2、対比・判断 ▲1▼本件請求項1に係る考案について 本件請求項1に係る考案と甲第1号証に記載された考案とを対比すると、甲第1号証に記載された考案の「案内管(4)」が本件請求項1に係る考案の「トップガイド」に相当しているので、両者は、穂先竿を保持する保持竿に振出継合した前記穂先竿の先端部外周に、釣糸案内用の内径を有するトップガイドを設けた中通し釣竿である点で一致し、 本件請求項1に係る考案では、穂先竿の先端部外周に固定され、保持竿先端部内径より小径の外径を有した固定管と、保持竿の先端部内径より大径の外径を有するトップガイドと、該トップガイドと前記固定管とに形成されて、互いに螺合するねじ部とを具備する(以下、「構成A」という)のに対し、甲第1号証に記載の考案では、トップガイドが穂先竿に直接冠着されていて、固定管およびねじ部を具備していない点 で相違する。 上記相違点について検討する。 甲第2号証には、穂先竿の先端部外周に力嵌めしたスリーブ27に、糸を引出す部分28、アダプタ用部品30や中空のチューブ35の補助器具を、スリーブ27のねじ山を用いて取り付けられるようにした構成が開示されているが、その釣竿は振り出し式のものではなく、穂先竿を保持竿から後方に引き抜くことはないから、そのスリーブ27の外径が保持竿先端部内径より小径である必要はないものである。 また、甲第3号証には、穂先竿の先端部外周に固定されるパイプ状の部分とトップガイドの部分とが互いにねじによって着脱可能とされていて、トップガイドを取外すことにより、振り出し竿の穂先竿が交換できることが開示されているが、甲第3号証記載の釣竿は、中通し釣竿ではなく、穂先竿に取付けられるトップガイドは、穂先竿の中心軸心から外れた位置にしか設けることかできないので、トップガイドを取外さない限り穂先竿を交換できないものである。これに対し、甲第1号証記載の釣竿は、中通し釣竿であり、釣り糸をガイドする案内管(4)は穂先竿の中心軸心上に設けられているので、案内管(4)を取り外さなくても、案内管(4)の外径を小径にするというきわめて容易にできる構成の変更によって穂先竿を交換できるにすることができるものである。 そうすると、甲第1号証記載の考案に、甲第2及び3号証記載の考案を適用して、本件請求項1に係る考案のような構成にすることは当業者がきわめて容易にできることとはいえない。 そして、本件請求項1に係る考案は、明細書記載の効果を奏するものである。 したがって、本件請求項1に係る考案が、甲第1ないし3号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることはできない。 ▲2▼本件請求項2に係る考案について 本件請求項2は請求項1を引用して記載されており、本件請求項2に係る考案は本件請求項1に係る考案をさらに限定するものである。 そして、甲第4号証には、中通し釣竿の先端に喇叭状の接続管の一端を外装した構成が、また、甲第5号証には、竿体(7)の穂先竿である分割片(7b)の先端に挿出孔(9)を開口し、先端が拡開状となる滑り部(11)を備えたブッシュ(10)を、挿出孔(9)に挿着した構成が、それぞれ記載されているが、「▲1▼本件請求項1に係る考案について」における上記構成Aは記載されていない。 したがって、本件請求項2に係る考案は、上記「▲1▼本件請求項1に係る考案について」に記載した理由により甲第1ないし5号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることはできない。 ▲3▼本件請求項3に係る考案について 本件請求項3に係る考案と甲第1号証に記載された考案とを対比すると、甲第1号証に記載された考案の「案内管(4)」が本件請求項3に係る考案の「トップガイド」に相当しているので、両者は、穂先竿を保持する保持竿に振出継合した前記穂先竿の先端部外周に、トップガイドを具備した中通し釣竿である点で一致し、 (1)本件請求項3に係る考案では、穂先竿の先端部外周に固定され、保持竿先端部内径より小径の外径を有する固定管と、保持竿の先端部内径よりも大径の外径を有するトップガイドと、該トップガイドの内周に設けられた雌ねじ部と、前記固定管の外周に設けられ、該雌ねじ部の螺合する雄ねじ部とを具備しているのに対し、甲第1号証に記載の考案では、トップガイドに相当する案内管(4)が穂先竿に直接冠着されていて、固定管およびねじ部を具備していない点 (2)本件請求項3に係る考案では、穂先竿はその先端が前記雄ねじ部の領域内にまで至るように固定管内に挿入されているのに対し、甲第1号証に記載の考案では、前記構成を備えていない点で相違する。 上記相違点(1)及び(2)について検討する。 上記相違点(1)については、上記「▲1▼本件請求項1に係る考案について」に記載した理由により、当業者がきわめて容易に想到することできることとは認めらない。 また、上記相違点(2)については、甲第6号証には、振り出し式の中通し釣竿において、穂先ロッド7の先端に拡径部20を形成し、この拡径部20に釣糸10が貫通されるキャップ23をねじ止めした構成が記載されているが、本件請求項3に係る考案の「穂先竿はその先端が前記雄ねじ部の領域内にまで至るように前記固定管内に挿入されている」構成は、記載されておらず、且つ、示唆されてもいないから、前記構成が甲第6号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易にできるものとは認めらない。 そして、本件請求項3に係る考案は、明細書記載の効果を奏するものである。 したがって、本件請求項3に係る考案が、甲第1ないし6号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることはできない。 IV.むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件請求項1ないし3に係る考案の実用新案登録を無効とすることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 1999-11-01 |
結審通知日 | 1999-11-16 |
審決日 | 1999-11-29 |
出願番号 | 実願平5-38208 |
審決分類 |
U
1
112・
121-
Y
(A01K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 星野 浩一 |
特許庁審判長 |
藤井 俊二 |
特許庁審判官 |
鈴木 寛治 新井 重雄 |
登録日 | 1998-02-13 |
登録番号 | 実用登録第2570549号(U2570549) |
考案の名称 | 中通し釣竿 |
代理人 | 石川 泰男 |
代理人 | 越智 俊郎 |