• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 1項2号公然実施 無効としない A47K
審判 全部無効 2項進歩性 無効としない A47K
審判 全部無効 1項1号公知 無効としない A47K
管理番号 1010452
審判番号 審判1998-35609  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2000-09-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-12-07 
確定日 2000-01-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第1624979号実用新案「浴槽」の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 I.手続きの経緯
出願日:昭和54年12月3日(実願昭54-167885号)
審査請求日:昭和57年2月24日
出願公告日:昭和60年6月13日(実公昭60-19674号)
登録日:昭和61年1月31日
本権利抹消日:平成6年12月3日
無効審判請求日:平成10年12月3日
答弁書提出日:平成11年3月23日
弁駁書提出日:平成11年7月26日
II.請求人の主張及び提出した証拠方法
請求人は、「登録実用新案第1624979号実用新案権を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めている。
無効事由1:平成10年12月3日付け無効審判請求書において、本件登録考案は、その出願前に日本国内において公然知られた考案であり、実用新案法第3条第1項第1号に該当し、実用新案登録を受けることができないものであるから、その実用新案権は取り消されるべきである。
そして、請求人は、次の証拠方法を提出している。
甲第2号証:「高等学校用 家具生産」文部省著作教科書、昭和57年実教出版株式会社発行5?7頁。
甲第3号証:「図解木工の継手と仕口」鳥海義之助著作、1984年理工学社発行56頁。
甲第4号証:「(続)図解木造建築の知恵-秀れた技術者となるために-」長尾勝馬著作、理工図書株式会社、初版1982年発行、311?312頁。
甲第5号証:「図解木造建築の知恵-秀れた技術者となるために-」長尾勝馬著作、理工図書株式会社、初版1982年発行、123頁及び148頁。
人証1:甲第3号証の著者鳥海義之助の証人尋問。
さらに、平成11年7月26日付け弁駁書において、次の証拠方法を提出している。
甲第13号証の1:京都市立勧業館「みやこめっせ」のパンフレット。
甲13号証の2:「京都伝統産業ふれあい館」のパンフレット。
検甲第1号証:京都市立勧業館「みやこめっせ」地下一階、「京都伝統産業ふれあい館」展示場の継手見本。
検甲第2号証:昭和30年前後に製作されたと思われる廃仏壇の扉(山形県村山市楯陸5621-3鈴木仏壇店所有)
無効事由2:平成10年12月3日付け無効審判請求書において、本件登録考案は、その出願前に日本国内において公然実施された考案であり、実用新案法第3条第1項第2号に該当し、実用新案登録を受けることができないものであるから、その実用新案権は取り消されるべきである。
そして、請求人は、次の証拠方法を提出している。
甲第6号証:「極製衣裳盆の写真」
人証2:海野義広の証人尋問
無効事由3:平成10年12月3日付け無効審判請求書において、本件登録考案は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された考案であり、実用新案法第3条第1項第3号に該当し、実用新案登録を受けることができないものであるから、その実用新案権は取り消されるべきである。
そして、請求人は、次の証拠方法を提出している。
甲第7号証:「木材ノ工芸的利用」農商務省山林局編纂、明治45年日本山林会発行402?403頁。
甲第8号証:「津軽塗」青森県教育委員会昭和51年発行112?113頁。
甲第9号証:「津軽塗の写真」
無効事由4:平成10年12月3日付け無効審判請求書において、本件登録考案は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された考案に基づき、当業者がきわめて容易に考案することができたものであり、実用新案法第3条第2項の規定に違反しており、実用新案登録を受けることができないものであるから、その実用新案権は取り消されるべきである。
そして、請求人は、次の証拠方法を提出している。
甲第10号証:「構造用教材I」社団法人日本建築学会昭和35年発行65?66頁。
甲第11号証:「木材加工・室内計画便覧」産業図書株式会社昭和36年発行378頁及び915頁。
甲第12号証:「図集建物のおさまり」有限会社井上書院昭和39年発行84頁。
無効事由5:本件登録考案は、皆が共有すべき日本固有の伝統木工技術を独占するものであり、公序良俗に違反するものであるから、実用新案法第4条に該当し、その実用新案権を取り消すべきである。
III.被請求人の主張
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めている。
そして、次の証拠方法を提出している。
乙第1号証:被請求人の「木製風呂」のカタログ。
乙第2号証:従来の木製風呂の写真。
乙第3号証:従来の木製風呂の要部写真。
乙第4号証:本件登録考案の木製風呂の要部写真。
IV.当審の判断
1.本件考案
本件登録実用新案第1624979号の考案の要旨は、登録された実用新案登録請求の範囲の第1項に記載された次のとおりのものである。
「浴槽主体が木製で箱型のものとする浴槽の構造において、浴槽主体内側面の四つの各隅角部に、いずれも下方に向かうにしたがって細くなっている縦長いテーパ状の溝が夫々凹成されていて、これらの溝内に、該溝に適合した浸水防止用の縦長いテーパ状の木製角木が密実に打込まれていることを特徴とする浴槽。」(以下、「本件考案」という。)
2.無効事由1に対する判断
(1)甲各号証の記載事項
甲第2号証:(「高等学校用 家具生産」文部省著作教科書、昭和57年実教出版株式会社発行5?7頁。)には、木製の板材を以て箱型物品の桝組みする技術として、「突付け接ぎ」、「打付け接ぎ」、「組接ぎ」、「留め接ぎ」が紹介されている。
甲第3号証:(「図解木工の継手と仕口」鳥海義之助著作、1984年理工学社発行56頁。)には、「隅木差し大留め接ぎ:大留め接ぎの内隅に決り込みをつけ、その決りに合わせて隅木を差し、留めの接合度を大きくした大留め接ぎの一つ。」という木工継手が示されている。
甲第4号証:(「(続)図解木造建築の知恵-秀れた技術者となるために-」長尾勝馬著作、理工図書株式会社、初版1982年発行、311?312頁。)には、「枕捌きの仕口」には、大留め接ぎの接ぎ手内側隅になる箇所に栓欠きを施し、桝組みして形成された板材相互の間の栓欠きで形成される溝に、栓を打ち込む接ぎ手が示されている。
甲第5号証:(「図解木造建築の知恵-秀れた技術者となるために-」長尾勝馬著作、理工図書株式会社、初版1982年発行、123頁及び148頁。)には、「蟻継ぎ」、「大入れ蟻落し」として、一方の部材に設けた溝や穴に、他方の部材あるいは他方の部材の一部を差し込む場合に、下方側に向け、テーパ構造とする継手が示されている。
(2)対比・判断
本件考案と甲第2?5号証刊行物記載の考案を対比する。
請求人の提出した甲2?5号証刊行物記載の考案には、本件考案の「浴槽主体内側面の四つの各隅角部に、いずれも下方に向かうにしたがって細くなっている縦長いテーパ状の溝が夫々凹成されていて、これらの溝内に、該溝に適合した浸水防止用の縦長いテーパ状の木製角木が密実に打込まれている」という構成については記載されておらず、前記構成を示唆する記載もない。
本件考案の前記構成の作用・効果を検討すると、浴槽は、その内部に湯を入れて使用するものであるから、隅角部の接ぎ手部には水圧が作用する。本件考案のテーパ状の木製角木は、隅角部に凹成されたテーパ状の溝に密実に打込まれているから、その接合力は、襖作用により真直な木製角木を打ち込む場合に比較し、その接合力は大きいものとなり、隅角部の接合部の補強となるばかりでなく、接合部からの浴槽内部の水の浸水を防止し、接合部からの浸水により引き起こされる腐蝕を防止するという明細書記載の効果を奏するものであるから、本件考案の「浴槽主体内側面の四つの各隅角部に、いずれも下方に向かうにしたがって細くなっている縦長いテーパ状の溝が夫々凹成されていて、これらの溝内に、該溝に適合した浸水防止用の縦長いテーパ状の木製角木が密実に打込まれている」とは、本件考案の必須かつ本質的な構成である。
したがって、請求人の本件考案は本願出願前に国内で公然知られた考案であるという無効事由1についての主張は採用できない。
なお、請求人の提出した人証1:甲第3号証の著者鳥海義之助の証人尋問及び検甲第1及び第2号証検証物の検証については、請求人が前記証人尋問及び検証物によって立証しようとする「隅木差し大留め接ぎ」が、本願出願前に国内で公然知られていたことは認めることができるので行わない。
3.無効事由2に対する判断
請求人が、甲第6号証:「極製衣裳盆の写真」及び人証2:海野義広の証人尋問により立証しようとしている事実は、「隅木差し大留め接ぎ」が極めて伝統的な木工技術であり、板材を以て桝組みして箱型物品にする接ぎ手として、本願出願前に国内で公然実施された事実であるが、「隅木差し大留め接ぎ」が、本願出願前に国内で公然実施された事実は認めることができるが、前記無効事由1に対する判断で示した理由により、本件考案は「隅木差し大留め接ぎ」とは相違するものであり、請求人の本件考案は本願出願前に国内で公然実施された考案であるという無効事由2についての主張は採用できない。
なお、請求人の提出した人証2:海野義広の証人尋問は、請求人が、前記証人尋問によって立証しようとする「隅木差し大留め接ぎ」が本願出願前に国内で公然実施された事実は認めることができるので行わない。
4.無効事由3に対する判断
(1)甲各号証刊行物の記載事項
甲第7号証:(「木材ノ工芸的利用」農商務省山林局編纂、明治45年日本山林会発行402?403頁。)、甲第8号証:(「津軽塗」青森県教育委員会昭和51年発行112?113頁。)、甲第9号証:(「津軽塗の写真」)には、「隅木差し大留め接ぎ」を木製箱型部品の接ぎ手としたものが記載されている。
(2)対比・判断
本件考案と甲第7?9号証刊行物記載の考案を対比する。
甲第7?9号証刊行物には、本件考案の「浴槽主体内側面の四つの各隅角部に、いずれも下方に向かうにしたがって細くなっている縦長いテーパ状の溝が夫々凹成されていて、これらの溝内に、該溝に適合した浸水防止用の縦長いテーパ状の木製角木が密実に打込まれている」という構成については記載されておらず、前記構成を示唆する記載もない。そして、本件考案は、前記構成により明細書記載の効果を奏するものであるから、請求人の本件考案は本願出願前に国内で頒布された刊行物に記載された考案であるという無効事由3についての主張は採用できない。
5.無効事由4に対する判断
(1)甲各号証刊行物の記載事項
甲第10号証:(「構造用教材I」社団法人日本建築学会昭和35年発行65?66頁。)には、「留め雇いざね」という、二枚の板材の接合すべき木口を互いに45°に切り落とし、夫々の切り落とし面に対称形となる溝を凹成してから接着剤等で直角に接合し、その間に形成された穴に接着剤を塗布した「雇い核」を打ち込み、両板材に跨って接合一体化する接ぎ手が記載されている。
甲第11号証:(「木材加工・室内計画便覧」産業図書株式会社昭和36年発行378頁及び915頁。)には、上記甲第10号証刊行物に記載された「留め雇いざね」と同様な構成を有する接ぎ手が記載されている。
甲第12号証:(「図集建物のおさまり」有限会社井上書院昭和39年発行84頁。)には、二枚の板材の直角隅角部に円弧状断面の木片が、その両端を「核接ぎ手」で結合した接ぎ手が記載されている。
(2)対比・判断
本件考案と公知文献である甲7?12号証刊行物記載の考案を対比する。
甲第7?12号証刊行物には、本件考案の「浴槽主体内側面の四つの各隅角部に、いずれも下方に向かうにしたがって細くなっている縦長いテーパ状の溝が夫々凹成されていて、これらの溝内に、該溝に適合した浸水防止用の縦長いテーパ状の木製角木が密実に打込まれている」という構成については記載されておらず、前記構成を示唆する記載もない。そして、本件考案は、前記構成により明細書記載の効果を奏するものであるから、請求人の本件考案は本願出願前に頒布された刊行物記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものであるという無効事由4についての主張は採用できない。
5.無効事由5
実用新案法第4条にいう「公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生を害するおそれがある考案」とは、考案の本来の目的が公序良俗を害するおそれがないとしても、考案の目的と構成からみて、何人もきわめて容易に、公序良俗を害する目的に使用する可能性を見出すことができ、かつ、実際にそのように使用するおそれが多分にあると認められる考案をいうと考えられる。
しかるに、本件考案は木製の浴槽に係る考案であり、上記考案に該当しないことは明らかである。
請求人は、本件考案は、皆が共有すべき日本固有の伝統木工技術を独占するものであるから、公序良俗に違反すると主張するが、仮に本件考案が、そのような伝統木工技術であるとしても、そのことを理由として本件考案を公序良俗を害するおそれがある考案とすることはできない。
したがって、請求人の無効事由5についての主張は採用できない。
6.弁駁書(第2回)について
請求人は、審理終結の発送日(平成11年8月24日)の後の、平成11年9月28日付けで弁駁書(第2回)を提出し、平成11年10月6日付けで審理再開申立書を提出している。
弁駁書(第2回)の内容を検討したが、その内容は、平成10年12月3日付けで提出された無効審判請求書及び平成11年7月26日付けで提出された弁駁書(第1回)における主張と同じであり、新しい証拠方法が提出されたわけでもないので、前記弁駁書(第2回)によって、前記請求人の主張する無効事由及び提出した証拠方法に対する当審の判断を変更すべきものとは認められないので、請求人の弁駁書(第2回)の主張及び審理再開の申立は採用することができない。
V.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件考案の実用新案権を取り消すことはできない。
また、他に本件考案の実用新案権を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1999-08-12 
結審通知日 1999-08-24 
審決日 1999-10-21 
出願番号 実願昭54-167885 
審決分類 U 1 112・ 111- Y (A47K)
U 1 112・ 112- Y (A47K)
U 1 112・ 121- Y (A47K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 斉藤 利久  
特許庁審判長 片寄 武彦
特許庁審判官 鈴木 憲子
田中 弘満
登録日 1986-01-31 
登録番号 実用登録第1624979号(U1624979) 
考案の名称 浴槽  
代理人 長屋 文雄  
代理人 長屋 直樹  
代理人 佐々木 實  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社   サービスに関しての問い合わせ