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審決分類 審判 全部申し立て   F01L
審判 全部申し立て   F01L
審判 全部申し立て   F01L
管理番号 1010546
異議申立番号 審判1998-75312  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-10-28 
確定日 1999-10-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 実用新案登録第2570020号「動弁用バルブリフタ」の請求項1ないし3に係る実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 実用新案登録第2570020号の請求項1に係る実用新案登録を維持する。
理由 第1.手続の経緯
本件実用新案登録第2570020号は、平成4年6月15日に実用新案登録出願され、平成10年2月6日に設定登録され、その後請求項1?3(全請求項)に係る考案について登録異議の申立てが成され、取消理由の通知の指定期間内である平成11年4月20日付けで願書に添付した明細書について訂正請求がなされ、その訂正請求に対する訂正拒絶理由の通知の指定期間内である平成11年9月2日付けで前記訂正請求について手続補正がなされたものと認める。
第2.訂正請求の要旨
前記手続補正は、
イ)実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、訂正請求書に添付した訂正明細書の実用新案登録請求の範囲に記載された請求項1,2を、次のとおりに補正して、請求項2を削除する、
「【請求項1】 バルブリフタボディの冠面部の裏面に凹部を形成し、前記凹部に、吸排気弁のバルブステムと表面部が接触するインナーシムを加締め固定するように構成した動弁用バルブリフタにおいて、
前記凹部を有底の円形状に形成すると共に、前記インナーシムを円形状に形成し、
且つ、前記インナーシムの前記バルブステム側の外周部に、一端が前記インナーシムの表面部に、他端が前記インナーシムの側面部にそれぞれ連設する面取り部を形成し、
前記インナーシムを前記凹部に嵌合し、前記凹部の側壁部に形成された加締め部を前記インナーシムの面取り部に沿って内方側に向かって係合させると共に、前記加締め部を前記インナーシムの表面部に係合させたたことを特徴とする動弁用バルブリフタ。」
ロ)明瞭でない記載の釈明を目的として、訂正請求書に添付した訂正明細書の考案の詳細な説明の段落【0005】、【0006】及び【0007】の「【0005】・・・面取り部を形成し、前記インナーシムを前記凹部に嵌合し、前記凹部の側壁部に形成された加締め部を前記インナーシムの面取り部に沿って内方側に向かって係合させたものである。【0006】また、請求項2においては、・・・前記加締め部を前記インナーシムの表面部に係合させたものである。【0007】【作用】上記請求項1及び2の構成により・・・」を、
「【0005】・・・面取り部を形成している。【0006】そして、本発明は、更に、前記インナーシムを前記凹部に嵌合し、前記凹部の側壁部に形成された加締め部を前記インナーシムの面取り部に沿って内方側に向かって係合させると共に、前記加締め部を前記インナーシムの表面部に係合させたものである。【0007】【作用】上記の構成により・・・」と補正する、
ハ)明瞭でない記載の釈明を目的として、訂正請求書に添付した訂正明細書の考案の詳細な説明の段落【0017】の「一方、前記凹部10の側壁部の複数箇所(実施例では4箇所)には加締め部13が形成されており、該加締め部13は前記面取り部12に係合している。」を、
「一方、前記凹部10の側壁部の複数箇所(実施例では4箇所)には加締め部13が形成されており、該加締め部13は前記面取り部12に係合している。更に、図1(2)に示すように、インナーシム81の表面部8aに達している。」と補正する、
ニ)明瞭でない記載の釈明を目的として、訂正請求書に添付した訂正明細書の考案の詳細な説明の段落【0023】の「【考案の効果】・・・該面取り部に、前記凹部の側壁部に形成された加締め部を係合させており、また、前記加締め部をインナーシムの表面部に係合させた結果、インナーシムの回止め及び抜け止めが確実に行える・・・バルブリフタの耐摩耗性の向上が図れる。」を、
「【考案の効果】・・・該面取り部に、前記凹部の側壁部に形成された加締め部を係合させると共に、前記加締め部をインナーシムの表面部に係合させた結果、インナーシムの回止め及び抜け止めが確実に行える・・・バルブリフタの耐摩耗性の向上が図れる。」と補正する、
ものと認める。
上記イ)?ニ)の補正は、実用新案登録請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、訂正明細書に記載された事項の範囲内で行う補正であり、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものとは認められないから、前記手続補正は訂正請求書の要旨を変更するものとは認められない。
したがって、上記平成11年4月20日付け訂正請求は、願書に添付した明細書を上記手続補正により補正された訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるものであるが、その要旨は次の1.?7.のとおりのものと認める。
1.訂正事項a
実用新案登録請求の範囲を、
「【請求項1】 バルブリフタボディの冠面部の裏面に凹部を形成し、前記凹部に、吸排気弁のバルブステムと表面部が接触するインナーシムを加締め固定するように構成した動弁用バルブリフタにおいて、
前記凹部を有底の円形状に形成すると共に、前記インナーシムを円形状に形成し、
且つ、前記インナーシムの前記バルブステム側の外周部に、一端が前記インナーシムの表面部に、他端が前記インナーシムの側面部にそれぞれ連設する面取り部を形成し、
前記インナーシムを前記凹部に嵌合し、前記凹部の側壁部に形成された加締め部を前記インナーシムの面取り部に沿って内方側に向かって係合させると共に、前記加締め部を前記インナーシムの表面部に係合させたたことを特徴とする動弁用バルブリフタ。」
と訂正する。
2.訂正事項b
段落【0005】を、
「【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、この考案の動弁用バルブリフタは、バルブリフタボディの冠面部の裏面に凹部を形成し、前記凹部に、吸排気弁のバルブステムと表面部が接触するインナーシムを加締め固定するように構成した動弁用バルブリフタにおいて、前記凹部を有底の円形状に形成すると共に、前記インナーシムを円形状に形成し、且つ、前記インナーシムの前記バルブステム側の外周部に、一端が前記インナーシムの表面部に、他端が前記インナーシムの側面部にそれぞれ連設する面取り部を形成している。」と訂正する。
3.訂正事項c
段落【0006】を
「【0006】
そして、本発明は、更に、前記インナーシムを前記凹部に嵌合し、前記凹部の側壁部に形成された加締め部を前記インナーシムの面取り部に沿って内方側に向かって係合させると共に、前記加締め部を前記インナーシムの表面部に係合させたものである。」と訂正する、
4.訂正事項d
段落【0007】、【0011】、【0027】を削除し、段落【0008】以降の段落番号を順次繰り上げて連続する段落番号とする。
5.訂正事項e
訂正事項dによる新たな段落【0007】を
「【0007】
【作用】
上記の構成により、インナーシムの組込みは、凹部内にインナーシムを嵌合させた後、該インナーシムの面取り部に対して凹部の側壁部を加締めることで行う。」
と訂正する。
6.訂正事項f
訂正事項dによる新たな段落【0017】を
「【0017】
一方、前記凹部10の側壁部の複数箇所(実施例では4個所)には加締め部13が形成されており、該加締め部13は前記面取り部12に係合している。更に、図1(2)に示すように、インナーシム81の表面部8aに達している。」
と訂正する。
7.訂正事項g
訂正事項dによる新たな段落【0023】を
「【0023】
【考案の効果】
以上の通りこの考案は、バルブリフタボディの冠面部の裏面に凹部を形成し、該凹部内に、吸排気弁のバルブステムと表面部が接触する円板状のインナーシムを嵌合させ、該インナーシムの前記バルブステム側の外周部に、一端が前記インナーシムの表面部に、他端が該インナーシムの側面部にそれぞれ連設された面取り部を形成し、該面取り部に、前記凹部の側壁部に形成された加締め部を係合させると共に、前記加締め部をインナーシムの表面部に係合させた結果、インナーシムの回止め及び抜け止めが確実に行えると共に、インナーシムの側面部と凹部の側壁部との間に生じる摩擦抵抗によりインナーシムの回止めを強化できる。従って、使用中におけるインナーシムの回転、がた付き及び抜け出しを確実に防止できるから、弁間隙の調整機能を損なうことなくバルブリフタの耐摩耗性の向上が図れる。」
と訂正する。
第3.訂正の適否
1.訂正の目的の適否、新規事項・拡張又は変更の存否
(1)訂正事項a
実用新案登録請求の範囲の請求項数を3から1に減少するとともに、請求項1において、「前記凹部に、吸排気弁のバルブステムと表面部が接触するインナーシムを加締め固定するように構成した動弁用バルブリフタにおいて、前記凹部を有底の円形状に形成すると共に、前記インナーシムを円形状に形成し」、「前記インナーシムの面取り部に沿って内方側に向かって係合させると共に、前記加締め部を前記インナーシムの表面部に係合させた」との構成要件を付加して構成を限定するものであり、実用新案登録請求の範囲を減縮するものと認められる。
そして、上記の付加した構成要件は、訂正請求前の明細書の段落【0014】に「図1において・・・中略・・・6はアルミニウム合金等軽金属材料よりなるバルブリフタボディ、7,8_(1)は弁間隙を調整するためにカムシャフト1とバルブリフタボディ6との間に装着された鉄系の金属材料からなる円形シムである」と記載された事項、図1におけるバルブリフタボディ6が有底に描画されている事項の範囲内におけるものと認められる。また、訂正明細書の請求項1に係る考案は、組み立て易くできると共に、使用中におけるインナーシムの回転、がた付き及び抜け出しを確実に防止するという、訂正請求前の願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲に記載された考案と同様の技術課題を解決するものであり、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものではないものと認められる。
(2)訂正事項b?g
これらの訂正事項b?gは、訂正事項aによる実用新案登録請求の範囲の訂正に伴って、考案の詳細な説明の記載を実用新案登録請求の範囲の記載に整合させるものであり、明瞭でない記載の釈明に相当し、訂正請求前の願書に添付した明細書に記載された事項の範囲における訂正であり、また、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
2.独立登録要件
(1)訂正明細書の請求項1に係る考案
訂正明細書の請求項1に係る考案は、前記手続補正書により補正された訂正明細書の請求項1に記載された、上記「第2.訂正の要旨」の「1.訂正事項a」に記載した、とおりのものと認める。
(2)引用例
▲1▼前記取消理由の通知及び訂正拒絶理由の通知に引用した刊行物である実願昭62-185870(実開平1-103703)のマイクロフィルム)(登録異議申立人が提出した甲第1号証、以下「刊行物1」という。)には、
「1.上壁部(7)と円筒状の側壁部(6)とからなるバルブリフタ(5)において、上壁部(7)の内面(7a)のほぼ中央部に凹部(8)を設け、同凹部(8)内にはバルブステム(10)側へ突出する凸部(9b)を有するインナーシム(9)を固定したことを特徴とするバルブリフタ。2.インナーシム(9)の固定方法が、かしめ、圧入又は接着による」(実用新案登録請求の範囲)、「シリンダヘッド1の上方には吸排気バルブ開閉用のカム2が一体に・・・同ガイド孔4内には次のように構成された直打式のバルブリフタ5が摺動可能に挿入されている。」(明細書第5頁第18行?第6頁第4行)、「同インナーシム9の下面のバルブ当り面9cにバルブステム10が当たるようになっている。」(明細書第6頁第18?20行)との記載があり、図面第3図に長円形のインナーシム(9)が示されているものと認める。これらの記載及び図面等を参照すると、刊行物1には、
“バルブリフタ(5)の上壁部(7)の内面(7a)に凹部(8)を形成し、前記凹部(8)に、吸排気弁のバルブステム10と表面部が接触するインナーシム9をかしめ固定するように構成した動弁用バルブリフタにおいて、
前記凹部(8)を有底の長円形状に形成すると共に、前記インナーシム9を長円形状に形成し、前記インナーシムを前記凹部に嵌合し、前記凹部の側壁部に形成されたかしめ部を前記インナーシムの表面部に係合させた動弁用バルブリフタ。”
が記載されているものと認める。
▲2▼前記取消理由の通知及び訂正拒絶理由の通知に引用した刊行物である特開昭63-147907号公報(登録異議申立人が提出した甲第2号証、以下「刊行物2」という。)には、
「この発明は、内燃機関の動弁機構に用いられるバルブリフタに係り、詳しくは、そのチップ部内面に取り付けられるインナーシムの取付構造に関するものである。」(第1頁下左欄第19行?下右欄第2行)、「第1,3,4図に示すように、前記チップ部内面7aのほぼ中央部には後述するバルブステム16が当たる円柱状の突出部9が該チップ部7と一体に形成され、その中央部には円柱状の凹部10が形成されている。前記突出部9の凹部10より外周にはV字状溝11aを有するかしめ部11が形成されており、この部分で後述するインナーシム12をかしめ固定するようになっている。前記凹部10には全体をほぼ楕円状とした当たり部としてのインナーシム12がかしめ部11によってかしめ固定されており、次に、このインナーシム12について説明する。第2,4図に示すように、前記インナーシム12の側壁部のうち対向する2個所には円弧状に切断された係止手段としての2個の切欠部13が形成されており、その両端部13aは前記凹部10の側壁部及びかしめ部11に食い込んだ状態となっている。このため、前記切欠部13には凹部10の側壁部及びかしめ部11の一部が入り込んだ状態となっている。従って、前記インナーシム12はかしめ部11によって突出部9に対して強固に固定されるとともに、前記切欠部13に入り込んだかしめ部11及び凹部10の側壁部によって該インナーシム12が前記凹部10内で回転しないようになっている。前記シリンダヘッド1には吸気バルブ(又は排気バルブ、以下バルブと略す)17が摺動可能に挿入されており、そのバルブステム16の上端は前記バルブリフタ5のインナーシム11の下面に当接されている。」(第2頁下左欄16行?第3頁上左欄第7行)との記載があり、これらの記載及び図面等を参照すると、刊行物2には、
“バルブリフタ5のチップ部7の内面7aに凹部10を形成し、前記凹部10に、吸排気弁のバルブステム16と表面部が接触するインナーシム12をかしめ固定するように構成した動弁用バルブリフタにおいて、
前記凹部10を有底の円柱状に形成すると共に、前記インナーシム12を楕円状等非円形状に形成し、前記インナーシム12を前記凹部10に嵌合し、前記凹部10の側壁部となる突出部9に形成されたかしめ部11及び凹部10の側壁部にインナーシム12が食い込んだ状態でインナーシム12を固定した動弁用バルブリフタ。”
が記載されているものと認める。
▲3▼前記取消理由の通知及び訂正拒絶理由の通知に引用した刊行物である実公平2-16939号公報(登録異議申立人が提出した甲第3号証、以下「刊行物3」という。)には、
「スリーブ弁部材24の両端部には第3図に示すように前記円筒孔25より大径の嵌合孔29が形成され、この嵌合孔29にはブッシュ30が嵌合されている。前記ブッシュ30の円筒孔25と反対側の外縁部には第4図に示すように45度に傾斜した第1のテーパ面30aと、この第1のテーパ面30aと連続して30度に傾斜した第2のテーパ面30bとからなる面取りが形成されている。スリーブ弁部材24の両端部には、かしめ突起部32が形成されており、このかしめ突起部32を二点鎖線で示すダイス33を用いてかしめることによりかしめ突起部32の先端部がブッシュ30の第2のテーパ面30bに当接する。このテーパ面30bへのかしめによってブッシュ30は嵌合孔29の端面へ押付けられ、ブッシュ30の抜け止めが防止される。」(第3欄第21?37行)との記載があり、これらの記載及び図面等を参照すると、刊行物3には、
“スリーブ弁部材24の両端部に円筒孔25より大径の嵌合孔29を形成し、該嵌合孔29に、ブッシュ30をかしめ固定するように構成したロータリバルブにおいて、
前記ブッシュ30の円筒孔25と反対側の外縁部に、一端が前記ブッシュ30の表面部に、他端が前記ブッシュ30の側面部にそれぞれ連設するテーパ面30a,bを形成し、前記ブッシュ30を前記嵌合孔29に嵌合し、前記嵌合孔29の側壁部となるスリーブ弁部材24の両端部に形成されたかしめ突起部32を前記ブッシュ30のテーパ面30a,bに沿って内方側に向かって係合させた点。”
が記載されているものと認める。
▲4▼前記取消理由の通知及び訂正拒絶理由の通知に引用した刊行物である特開平2-75424号公報(登録異議申立人が提出した甲第4号証、以下「刊行物4」という。)には、
「第1,2図に例示するように、(4)は焼結部品例えば鉄系焼結機械部品であって、そのあな(7)入口部分において、円周方向に凹みを設ける(面取り省略部分と面取り部分を設けることにより凹みが形成される)ことにより(第1図参照)、ピン(又はシャフト)(5)をかしめるとピンの材料が塑性流動し凹み部分に入り(第2図参照)、回り止めの効果をもち高い回転トルクをうることが出来る。」(第2頁上左欄第13?20行)、「第3に示す従来の焼結部品通常のあな入口面取りの場合、ピンの回りトルクは第4図の様に端面(6)の部分の摩擦力のみで持つのに対し、実施例では、面取り省略部分(1)と面取り部分(2)の段差(3)がストッパーとして働き、回りトルクを測定した結果を示す第5図の様に同一のかしめ条件で約5倍の回りトルクを達成する事ができた。なお第3,4図中第1,2図と同一符号は同一部位を表わす。」(第2頁上右欄第18行?同下左欄第5行)との記載があり、これらの記載及び図面等を参照すると、刊行物4には、
“あな(7)入口部分において、円周方向に面取り省略部分と面取り部分を設け、あな(7)にピン(又はシャフト)(5)を嵌合し、ピン(又はシャフト)(5)をかしめて、ピンの材料を塑性流動させ、凹み部分に入りこませて、高い回り止めの効果を得る点、”
が記載されているものと認める。
▲5▼前記取消理由の通知及び訂正拒絶理由の通知に引用した刊行物である特開昭60-87987号公報(登録異議申立人が提出した甲第5号証、以下「刊行物5」という。)には、
「(1)は板状の一方の部材で、取付け孔(2)が設けられており、その周縁には面取り部(3)が形成されている。(4)は円柱状の他方の部材で、取付け孔(2)にはまる小径部(5)と径大な鍔部(6)が形成されている。これを図示のように組合せた後小径部(5)の端面外周部(7)にレーザ光(8)を照射する。これにより第2図に示すように小径部(5)の一部(9)が溶け、一方の部材(1)の面取り部(3)の方に流動し固化する。この流動した1部(9)と鍔部(6)により他方の部材(4)は完全に一方の部材(1)に係止され、いわゆる軸方向にかしめられたことになる。……(11)は一方の部材で板状をなし、取付け孔(12)が貫通して設けられていて、上面には取付け孔(12)の外周直径方向に2個の凹部(13)(14)が設けられている。(15)は他方の部材で第4図に示すように円柱状をなし、径小部(16)および径大の鍔(17)が形成されている。これを図示のように径小部(16)を取付け孔(12)に挿入して組立て、径小部(16)の端面外周部が凹部(13)(14)に対向した部位(18)(19)にレーザ光(20)を照射する。これにより第4図に示すように他方の部材(15)の一部(21)(21)が溶融して凹部(13)(14)に流入して固化する。これにより他方の部材(15)は一方の部材(11)に対し軸方向および回転方向の動きが阻止され両方向にかしめられたことになる。」(第2頁上左欄第1行?同上右欄第6行)との記載があり、これらの記載及び図面等を参照すると、刊行物5には、
“板状の部材(1)(11)の取付け孔(2)(12)の周縁に面取り部(3)又は凹部(13)(14)を設け、取付け孔(2)(12)に円柱状の部材(4)(15)を嵌合し、円柱状の部材(4)(15)にレーザ光(8)(20)を照射して溶融し、その材料を流動させ、面取り部(3)又は凹部(13)(14)に入りこませて、高い回り止めの効果を得る点、”
が記載されているものと認める。
(3)対比・判断
▲1▼本件訂正明細書の請求項1に係る考案と上記刊行物1に記載されたものとを、括弧内に刊行物1に記載されたものの表現を用いて対比すると、
両者は、
バルブリフタボディ(バルブリフタ(5))の冠面部(上壁部(7))の裏面(内面(7a))に凹部(凹部(8))を形成し、前記凹部(凹部(8))に、吸排気弁のバルブステム(バルブステム(10))と表面部が接触するインナーシム(インナーシム(9))を加締め(かしめ)固定するように構成した動弁用バルブリフタにおいて、
前記インナーシム(インナーシム(9))を前記凹部(凹部(8))に嵌合し、前記凹部(凹部(8))の側壁部に形成された加締め(かしめ)部を前記インナーシム(インナーシム(9))の表面部に係合させた動弁用バルブリフタ、
である点で一致するものの、
上記刊行物1に記載されたものは、本件訂正明細書の請求項1に係る考案の構成に欠くことができない事項である、
i)「凹部を有底の円形状に形成すると共に、前記インナーシムを円形状に形成し、」の点、
ii)「前記インナーシムの前記バルブステム側の外周部に、一端が前記インナーシムの表面部に、他端が前記インナーシムの側面部にそれぞれ連設する面取り部を形成し、」の点、
iii)「前記インナーシムの面取り部に沿って内方側に向かって係合させる」点
を備えていない。
▲2▼本件訂正明細書の請求項1に係る考案と上記刊行物2に記載されたものとを、括弧内に刊行物2に記載されたものの表現を用いて対比すると、
両者は、
バルブリフタボディ(バルブリフタ5)の冠面部(チップ部7)の裏面(内面7a)に凹部(凹部10)を形成し、前記凹部(凹部10)に、吸排気弁のバルブステム(バルブステム16)と表面部が接触するインナーシム(インナーシム12)を加締め(かしめ)固定するように構成した動弁用バルブリフタにおいて、
前記凹部(凹部10)を有底の円形状に形成すると共に、前記インナーシム(インナーシム12)を前記凹部(凹部10)に嵌合し、前記凹部(凹部10)の側壁部に形成された加締め部(かしめ部)を前記インナーシム(インナーシム12)に係合させた動弁用バルブリフタ、
である点で一致するものの、
刊行物2に記載されたものは本件訂正明細書の請求項1に係る考案の構成に欠くことができない事項である
i)「前記インナーシムを円形状に形成し、」の点
ii)「前記インナーシムの前記バルブステム側の外周部に、一端が前記インナーシムの表面部に、他端が前記インナーシムの側面部にそれぞれ連設する面取り部を形成し、」の点、
iii)「加締め部を前記インナーシムの面取り部に沿って内方側に向かって係合させると共に、前記加締め部を前記インナーシムの表面部に係合させた」点、
を備えていない。
▲3▼本件訂正明細書の請求項1に係る考案と上記刊行物3に記載されたものとを、括弧内に刊行物3に記載されたものの表現を用いて対比すると、
両者は、
凹部(嵌合孔29)を円形状に形成すると共に、前記凹部(嵌合孔29)へ取り付けられる部材(ブッシュ30)を円形状に形成し、前記部材(ブッシュ30)の外周部に、一端が前記部材(ブッシュ30)の表面部に、他端が前記部材(ブッシュ30)の側面部にそれぞれ連設する面取り部(テーパ面30a,b)を形成し、前記部材(ブッシュ30)を前記凹部(嵌合孔29)に嵌合し、前記凹部(嵌合孔29)の側壁部に形成された加締め部(かしめ突起部32)を前記部材(ブッシュ30)の面取り部(テーパ面30a,b)に沿って内方側に向かって係合させた点、で一致するものの、
刊行物3に記載されたものは、本件訂正明細書の請求項1に係る考案の構成に欠くことができない事項である
i)「バルブリフタボディの冠面部の裏面に凹部を形成し、前記凹部に、吸排気弁のバルブステムと表面部が接触するインナーシムを加締め固定するように構成した動弁用バルブリフタにおいて、前記凹部を有底の円形状に形成すると共に、前記インナーシムを円形状に形成し、且つ、前記インナーシムの前記バルブステム側の外周部に、一端が前記インナーシムの表面部に、他端が前記インナーシムの側面部にそれぞれ連設する面取り部を形成し、前記インナーシムを前記凹部に嵌合し、前記凹部の側壁部に形成された加締め部を前記インナーシムの面取り部に沿って内方側に向かって係合させると共に、前記加締め部を前記インナーシムの表面部に係合させた」点を備えていない。
▲4▼本件訂正明細書の請求項1に係る考案と上記刊行物4に記載されたものとを対比すると、
両者は、
加締めにより二つの部材を連結して固定する際に、一方の部材の表面部に一端が連設し、該部材の側面部に他端が連設する面取り部を形成する点、で一致するものの、
刊行物4に記載されたものは、本件訂正明細書の請求項1に係る考案の構成に欠くことができない事項である
i)「バルブリフタボディの冠面部の裏面に凹部を形成し、前記凹部に、吸排気弁のバルブステムと表面部が接触するインナーシムを加締め固定するように構成した動弁用バルブリフタにおいて、
前記凹部を有底の円形状に形成すると共に、前記インナーシムを円形状に形成し、且つ、前記インナーシムの前記バルブステム側の外周部に、一端が前記インナーシムの表面部に、他端が前記インナーシムの側面部にそれぞれ連設する面取り部を形成し、前記インナーシムを前記凹部に嵌合し、前記凹部の側壁部に形成された加締め部を前記インナーシムの面取り部に沿って内方側に向かって係合させると共に、前記加締め部を前記インナーシムの表面部に係合させた」点
を備えていない。
▲5▼本件訂正明細書の請求項1に係る考案と上記刊行物5に記載されたものとを対比すると、
両者は、
加締めにより二つの部材を連結して固定する際に、一方の部材の表面部に一端が連設し、該部材の側面部に他端が連設する面取り部を形成する点、で一致するものの、
刊行物5に記載されたものは、本件訂正明細書の請求項1に係る考案の構成に欠くことができない事項である
i)「バルブリフタボディの冠面部の裏面に凹部を形成し、前記凹部に、吸排気弁のバルブステムと表面部が接触するインナーシムを加締め固定するように構成した動弁用バルブリフタにおいて、
前記凹部を有底の円形状に形成すると共に、前記インナーシムを円形状に形成し、且つ、前記インナーシムの前記バルブステム側の外周部に、一端が前記インナーシムの表面部に、他端が前記インナーシムの側面部にそれぞれ連設する面取り部を形成し、前記インナーシムを前記凹部に嵌合し、前記凹部の側壁部に形成された加締め部を前記インナーシムの面取り部に沿って内方側に向かって係合させると共に、前記加締め部を前記インナーシムの表面部に係合させた」点
を備えていない。
▲6▼このように、上記刊行物1?5に記載されたものは、いずれも、本件訂正明細書の請求項1に係る考案の構成要件である、
a)「インナーシムを円形状に形成し、」の点
b)「インナーシムの前記バルブステム側の外周部に、一端が前記インナーシムの表面部に、他端が前記インナーシムの側面部にそれぞれ連設する面取り部を形成し、」の点、
c)「加締め部を前記インナーシム12の面取り部に沿って内方側に向かって係合させると共に、前記加締め部を前記インナーシムの表面部に係合させた」点、
を備えていない。そして、上記a?cの構成を併せ備えるものが本件実用新案登録の出願前周知の事項とも認めることはできない。なお、上記刊行物2の第2頁上左欄第6?10行には、発明が解決しようとする問題点として「内燃機関の運転中に加わる周期的な力や微振動等によって該当たり部となるインナーシムには自身を回転させようとする力が加わるため、このかしめ部位や圧入部位にゆるみが発生した場合には、前記凹部内でインナーシムが回転し」との記載があるが、この記載によっても、インナーシムの形状及び構成並びにインナーシムとかしめ部との係合部の構成は明瞭でなく、上記a?cの構成が記載あるいは示唆されているとすることはできない。
そして、本件訂正明細書の請求項1に係る考案は、「インナーシムを円形状に形成し、」の点によって、バルブリフタの軽量化が可能であり、組み立てが容易となる作用効果が期待でき、また、「インナーシムの前記バルブステム側の外周部に、一端が前記インナーシムの表面部に、他端が前記インナーシムの側面部にそれぞれ連設する面取り部を形成し、」、「加締め部を前記インナーシムの面取り部に沿って内方側に向かって係合させると共に、前記加締め部を前記インナーシムの表面部に係合させた」ことにより、インナーシムを円形状に形成したにも拘わらず、インナーシムの裏面部と凹部の底部との接触面圧を上昇させることができ、インナーシムの外周部の緊迫力に底部との接触面圧が加わって、使用中におけるインナーシムの回転、がた付き及び抜け出しを確実に防止する作用効果が期待できるものである。
したがって、本件訂正明細書の請求項1に係る考案は、刊行物1?5に記載されたものと同一の考案とすることも、これらに記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることもできないから、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものであるとすることはできない。また、他に、本件訂正明細書の請求項1に係る考案が実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものであるとする理由を発見しない。
3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律・平成6年法律第116号附則第9条第2項の規定により準用する特許法第120条の4第2項の規定及び同条第3項の規定により更に準用する同法第126条第2?4項の規定に適合するので、本件訂正を認める。
第4.登録異議申立てについて
1.本件考案
上記「第3.訂正の適否」において記載したように、平成11年4月20日付け訂正請求が認められるので、本件実用新案登録の請求項1に係る考案は、訂正明細書の請求項1に記載されたとおりのものと認める。
2.登録異議申立ての理由及び証拠
登録異議申立人は、本件実用新案登録に係る考案は、本件実用新案登録の出願前頒布された刊行物に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定に違反して実用新案登録を受けたものである旨主張して、前記刊行物1?5をそれぞれ甲第1?5号証として提出している。
3.当審の判断
本件実用新案登録の請求項1に係る考案は、前記「第3.訂正の適否」の「2.独立登録要件」において記載した理由により、甲第1?5号証に記載されたものと同一の考案、あるいは甲第1?5号証に記載されたものに基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることはできない。
第5.むすび
以上とおりであるから、本件実用新案登録の請求項1に係る登録は、登録異議申立人が主張する理由及び提出した証拠によっては、取り消すことはできない。
また、他に、本件登録実用新案の請求項1に係る登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
動弁用バルブリフタ
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 バルブリフタボディの冠面部の裏面に凹部を形成し、前記凹部に、吸排気弁のバルブステムと表面部が接触するインナーシムを加締め固定するように構成した動弁用バルブリフタにおいて、
前記凹部を有底の円形状に形成すると共に、前記インナーシムを円形状に形成し、
且つ、前記インナーシムの前記バルブステム側の外周部に、一端が前記インナーシムの表面部に、他端が前記インナーシムの側面部にそれぞれ連設する面取り部を形成し、
前記インナーシムを前記凹部に嵌合し、前記凹部の側壁部に形成された加締め部を前記インナーシムの面取り部に沿って内方側に向かって係合させると共に、前記加締め部を前記インナーシムの表面部に係合させたたことを特徴とする動弁用バルブリフタ。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この考案は、例えば内燃機関において、吸排気弁のバルブステムと接触しながらカムシャフトの回転に従ってシリンダヘッドボア内を往復摺動する動弁用バルブリフタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、動弁用バルブリフタには、例えば特開昭63-147907号公報に記載されたものがある。この動弁用バルブリフタでは、図4に示すように、バルブリフタボディ20の冠面部20aの裏面には凹部21が形成され、この凹部21内には、吸排気弁のバルブステム22と接触するインナーシム23が次に述べるように装着されている。つまり、インナーシム23の側面部の互いに反対側の部位にはセグメント状の切欠部24が形成され、該切欠部24の直線部とインナーシム23の凸円弧状部との連設部に角部23aが形成されている。一方、前記切欠部24には凹部21の側壁部及び該側壁部に形成された加締め部25の一部が入り込んだ状態となって、凹部21の側壁部には、前記角部23aに係合する突出部26が形成されている。このため、凹部21の側壁部及び該側壁部に形成された加締め部25に角部23aが食い込んだ状態となっている。従って、インナーシム23は加締め部25によって前記突出部26に対して強固に固定されるから、前記切欠部24に入り込んだ加締め部25及び凹部21の側壁部によって凹部21内でのインナーシム23の回転が阻止される構成となっている。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の動弁用バルブリフタでは、シリンダヘッドボア27の上方に設けられた吸排気バルブ開閉用のカム28の回転によりバルブリフタボデイ20を回転させようとする力が加わり、バルブステム22の当たり部となるインナーシム23にも回転させようとする力が加わるから、インナーシム23の各角部23aで、凹部21の側壁部の前記角部23aと対向する突出部26に応力が集中して、該突出部26がへたるから、インナーシム23の回転を確実に防止できない。また、バルブリフタボディ20がアルミニウム合金等軽金属材料で形成され、インナーシム23が鉄系の金属材料で形成されているから、その線膨張係数の差により凹部21内でインナーシム23ががた付く。また、インナーシム23が凹部21内から抜け出すおそれもある。
【0004】
この考案は上記課題を解決するためになしたもので、組み立て易くできると共に、使用中におけるインナーシムの回転、がた付き及び抜け出しを確実に防止できる動弁用バルブリフタを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この考案の動弁用バルブリフタは、バルブリフタボディの冠面部の裏面に凹部を形成し、前記凹部に、吸排気弁のバルブステムと表面部が接触するインナーシムを加締め固定するように構成した動弁用バルブリフタにおいて、前記凹部を有底の円形状に形成すると共に、前記インナーシムを円形状に形成し、且つ、前記インナーシムの前記バルブステム側の外周部に、一端が前記インナーシムの表面部に、他端が前記インナーシムの側面部にそれぞれ連設する面取り部を形成している。
【0006】
そして、本発明は、更に、前記インナーシムを前記凹部に嵌合し、前記凹部の側壁部に形成された加締め部を前記インナーシムの面取り部に沿って内方側に向かって係合させると共に、前記加締め部を前記インナーシムの表面部に係合させたものである。
【0007】
【作用】
上記の構成により、インナーシムの組込みは、凹部内にインナーシムを嵌合させた後、該インナーシムの面取り部に対して凹部の側壁部を加締めることで行う。
【0008】
また、インナーシムの組込み後、インナーシムの側面部が凹部の側壁部に接触して、両者間に摩擦抵抗が生じる一方、凹部の側壁部に形成された加締め部がインナーシムのバルブステム側の外周部に形成された面取り部に係合していると共に、加締め部をインナーシムの表面に係合している。このため、インナーシムの回転及び抜け出しが抑えられる。
【0009】
また、冷熱サイクルが繰り返された時、クリープによりインナーシムの側面部と凹部の側壁部との間に隙間ができても、前記面取り部と加締め部との係合状態が保持されているため、インナーシムの回転及び抜け出しは生じない。
【0010】
【実施例】
以下、この考案の一実施例を図面により説明する。
【0011】
図1(1)は動弁機構を示す断面図、同図(2)、(3)は(1)中のインナーシム装着状態の異なる例を示す拡大断面図、図2(1)、(2)、(3)は図1に示すインナーシムを示す平面図、A-A線に沿う側断面図、斜視図、図3(1)、(2)、(3)は図1に示すものとは異なるインナーシムを示す平面図、B-B線に沿う側断面図、斜視図である。
【0012】
図1において、1はカム1aが形成されたカムシャフト、2は吸排気弁のバルブステム、3はバルブスプリング、4はバルブスプリング3の上端部を抑えるリテーナ、5はリテーナ4をバルブステム2の上端部に固定するコッタ、6はアルミニウム合金等軽金属材料よりなるバルブリフタボディ、7、8_(1)は弁間隙を調整するためにカム1とバルブリフタボディ6との間に装着された鉄系の金属材料からなる円形のシムである。
【0013】
バルブリフタボディ6の冠面部6aの表面には凹部9、裏面には凹部10がそれぞれ形成されている。
【0014】
凹部9内にはアウターシム7が、凹部10内にはインナーシム8_(1)がそれぞれ嵌合されている。
【0015】
そして、バルブリフタボディ6が内燃機関のシリンダヘッドボア11内に嵌合されると共に、バルブスプリング3による付勢でインナーシム8_(1)の表面部8aにバルブステム2が接触させられ、またアウターシム7の表面部7aにカム1aが接触させられて、動弁機構が構成されている。
【0016】
インナーシム8_(1)のバルブステム2側の外周部の複数箇所(実施例では4個所)には、図2(1)、(2)、(3)に示すように面取り部12が形成され、該面取り部12は、一端がインナーシム8_(1)の表面部8aに、他端が該インナーシム8_(1)の側面部8bにそれぞれ連設されている。
【0017】
一方、前記凹部10の側壁部の複数箇所(実施例では4個所)には加締め部13が形成されており、該加締め部13は前記面取り部12に係合している。更に、図1(2)に示すように、インナーシム81の表面部8aに達している。
【0018】
以上の構成において、インナーシム8_(1)の組込みは、凹部10内にインナーシム8_(1)を嵌合させた後、該インナーシム8_(1)の面取り部12に対して、凹部10の側壁部10aを加締めて形成した加締め部13を係合させることで行う。
【0019】
また、インナーシム8_(1)の組込み後、該インナーシム8_(1)の側面部8bが凹部10の側壁部10aに接触して、両者間に摩擦抵抗が生じる一方、凹部10の側壁部10aに形成された加締め部13がインナーシム8_(1)のバルブステム2側の外周部に形成された面取り部12に係合している。このため、インナーシム8_(1)は凹部10内に抑え込まれて抜け出ることがなく、また回転することもない。
【0020】
更に、使用中の冷熱サイクルの繰返しでクリープによりインナーシム8_(1)の側面部8bと凹部10の側壁部10aとの間に隙間ができても、前記面取り部12と加締め部13との係合状態が保持されているため、インナーシム8_(1)の回転及び抜け出しは生じない。
【0021】
尚、この実施例では、面取り部12が形成されたインナーシム8_(1)を使用したが、図3(1)、(2)、(3)に示すように切欠き部14が形成されたインナーシム8_(2)を使用しても良い。前記切欠き部14の底部14aは、その両側部にそれぞれ形成された立上り面部14bには前記加締め部13が係合している。このため、切欠き部14によるインナーシム8_(2)の回止め効果は、前記面取り部12によるインナーシム8_(1)の回止め効果より大きくなる。
【0022】
また、面取り部12や切欠き部14の構成については、底部が斜面状の態様に限ることなく、任意の形状が選択可能である。
【0023】
【考案の効果】
以上の通りこの考案は、バルブリフタボディの冠面部の裏面に凹部を形成し、該凹部内に、吸排気弁のバルブステムと表面部が接触する円板状のインナーシムを嵌合させ、該インナーシムの前記バルブステム側の外周部に、一端が前記インナーシムの表面部に、他端が該インナーシムの側面部にそれぞれ連設された面取り部を形成し、該面取り部に、前記凹部の側壁部に形成された加締め部を係合させると共に、前記加締め部をインナーシムの表面部に係合させた結果、インナーシムの回止め及び抜け止めが確実に行えると共に、インナーシムの側面部と凹部の側壁部との間に生じる摩擦抵抗によりインナーシムの回止めを強化できる。従って、使用中におけるインナーシムの回転、がた付き及び抜け出しを確実に防止できるから、弁間隙の調整機能を損なうことなくバルブリフタの耐摩耗性の向上が図れる。
【0024】
また、インナーシムの組込みは、凹部内にインナーシムを嵌合させた後、該インナーシムの切欠き部に対して凹部の側壁部を加締めるだけで良いから、バルブリフタを容易に組み立てることができ、従って作業能率の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
(1) この考案の一実施例の動弁機構を示す断面図である。
(1)中のインナーシム装着状態の一例を示す拡大断面図である。
(1)中のインナーシム装着状態の他の例を示す拡大断面図である。
【図2】
(1) 図1のインナーシムを示す平面図である。
(2) (1)に示すインナーシムのA-A線に沿う側断面図である。
(3) (1)に示すインナーシムの斜視図である。
【図3】
(1) 図1のものと異なるインナーシムを示す平面図である。
(2) (1)に示すインナーシムのB-B線に沿う側断面図である。
(3) (1)に示すインナーシムの斜視図である。
【図4】
(1) 従来例の動弁機構を示す断面図である。
(2) (1)中のインナーシム装着状態を示す拡大底面図である。
【符号の説明】
2 吸排気弁のバルブステム
6 バルブリフタボディ
6a 冠面部
8_(1)、8_(2) インナーシム
8a 表面部
8b 側面部
10 凹部
10a 側壁部
12 面取り部
13 加締め部
14 切欠き部
訂正の要旨 1.訂正事項a
実用新案登録請求の範囲を、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、
「【請求項1】 バルブリフタボディの冠面部の裏面に凹部を形成し、前記凹部に、吸排気弁のバルブステムと表面部が接触するインナーシムを加締め固定するように構成した動弁用バルブリフタにおいて、
前記凹部を有底の円形状に形成すると共に、前記インナーシムを円形状に形成し、
且つ、前記インナーシムの前記バルブステム側の外周部に、一端が前記インナーシムの表面部に、他端が前記インナーシムの側面部にそれぞれ連設する面取り部を形成し、
前記インナーシムを前記凹部に嵌合し、前記凹部の側壁部に形成された加締め部を前記インナーシムの面取り部に沿って内方側に向かって係合させると共に、前記加締め部を前記インナーシムの表面部に係合させたたことを特徴とする動弁用バルブリフタ。」
と訂正する。
2.訂正事項b
段落【0005】を、明瞭でない記載の釈明を目的として、
「【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、この考案の動弁用バルブリフタは、バルブリフタボディの冠面部の裏面に凹部を形成し、前記凹部に、吸排気弁のバルブステムと表面部が接触するインナーシムを加締め固定するように構成した動弁用バルブリフタにおいて、前記凹部を有底の円形状に形成すると共に、前記インナーシムを円形状に形成し、且つ、前記インナーシムの前記バルブステム側の外周部に、一端が前記インナーシムの表面部に、他端が前記インナーシムの側面部にそれぞれ連設する面取り部を形成している。」と訂正する。
3.訂正事項c
段落【0006】を、明瞭でない記載の釈明を目的として、
「【0006】
そして、本発明は、更に、前記インナーシムを前記凹部に嵌合し、前記凹部の側壁部に形成された加締め部を前記インナーシムの面取り部に沿って内方側に向かって係合させると共に、前記加締め部を前記インナーシムの表面部に係合させたものである。」と訂正する、
4.訂正事項d
明瞭でない記載の釈明を目的として、段落【0007】、【0011】、【0027】を削除し、段落【0007】以降の段落番号を順次繰り上げて連続する段落番号とする。」
5.訂正事項e
段落【0007】を、明瞭でない記載の釈明を目的として、
「【0007】
【作用】
上記の構成により、インナーシムの組込みは、凹部内にインナーシムを嵌合させた後、該インナーシムの面取り部に対して凹部の側壁部を加締めることで行う。」と訂正する。
6.訂正事項f
段落【0017】を、明瞭でない記載の釈明を目的として、
「【0017】
一方、前記凹部10の側壁部の複数箇所(実施例では4個所)には加締め部13が形成されており、該加締め部13は前記面取り部12に係合している。更に、図1(2)に示すように、インナーシム81の表面部8aに達している。」
と訂正する。
7.訂正事項g
段落【0023】を、明瞭でない記載の釈明を目的として、
「【0023】
【考案の効果】
以上の通りこの考案は、バルブリフタボディの冠面部の裏面に凹部を形成し、該凹部内に、吸排気弁のバルブステムと表面部が接触する円板状のインナーシムを嵌合させ、該インナーシムの前記バルブステム側の外周部に、一端が前記インナーシムの表面部に、他端が該インナーシムの側面部にそれぞれ連設された面取り部を形成し、該面取り部に、前記凹部の側壁部に形成された加締め部を係合させると共に、前記加締め部をインナーシムの表面部に係合させた結果、インナーシムの回止め及び抜け止めが確実に行えると共に、インナーシムの側面部と凹部の側壁部との間に生じる摩擦抵抗によりインナーシムの回止めを強化できる。従って、使用中におけるインナーシムの回転、がた付き及び抜け出しを確実に防止できるから、弁間隙の調整機能を損なうことなくバルブリフタの耐摩耗性の向上が図れる。」
と訂正する。
異議決定日 1999-09-27 
出願番号 実願平4-47066 
審決分類 U 1 651・ 841- YA (F01L)
U 1 651・ 121- YA (F01L)
U 1 651・ 832- YA (F01L)
最終処分 維持    
前審関与審査官 飯塚 直樹  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 清水 信行
清田 榮章
登録日 1998-02-06 
登録番号 実用登録第2570020号(U2570020) 
権利者 株式会社ユニシアジェックス
神奈川県厚木市恩名1370番地
考案の名称 動弁用バルブリフタ  
代理人 青木 輝夫  
代理人 青木 輝夫  

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