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審決分類 審判 全部申し立て   F04D
審判 全部申し立て   F04D
管理番号 1010547
異議申立番号 異議1999-71776  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-04-27 
確定日 1999-11-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 実用新案登録第2584691号「遠隔制御式電気機器」の実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 実用新案登録第2584691号の実用新案登録を維持する。
理由 第1.手続の経緯
本件実用新案登録第2584691号は、平成4年10月30日に実用新案登録出願され、平成10年8月28日に設定登録されたものであり、その後、請求項1(全請求項)に係る考案について登録異議の申立てがなされ、取消理由の通知がなされ、その指定期間内である平成11年10月8日付けで願書に添付した明細書について訂正請求がなされたものと認める。
第2.訂正請求の要旨
上記訂正請求は、願書に添付した明細書を、訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるものであるが、その要旨は次のとおりのものと認める。
1.訂正事項a
実用新案登録請求の範囲を以下のとおり訂正する。
「【請求項1】
機器本体のほぼ水平な上面に収納凹部が形成され、この収納凹部内にその機器に対する遠隔操作用のリモートコントローラーが挿脱可能に収納されている遠隔制御式電気機器において、
前記リモートコントローラーの一端部および他端部は断面がほぼ半円状をなし、このリモートコントローラーの他端部の上面に複数の操作ボタンを配設し、さらにこのリモートコントローラーの一端部の下面に、リモートコントローラーの軸方向に対して傾斜する傾斜面を形成し、この傾斜面と収納凹部の内面との間に、その傾斜に基づく空間を形成したことを特徴とする遠隔制御式電気機器。」
2.訂正事項b
明細書の段落【0009】を以下のとおり訂正する。
「【0009】
【課題を解決するための手段】
この考案はこのような目的を達成するために、機器本体のほぼ水平な上面に収納凹部が形成され、この収納凹部内にその機器に対する遠隔操作用のリモートコントローラーが挿脱可能に収納されている遠隔制御式電気機器において、前記リモートコントローラーの一端部および他端部は断面がほぼ半円状をなし、このリモートコントローラーの他端部の上面に複数の操作ボタンを配設し、さらにこのリモートコントローラーの一端部の下面に、リモートコントローラーの軸方向に対して傾斜する傾斜面を形成し、この傾斜面と収納凹部の内面との間に、その傾斜に基づく空間を形成するようにしたものである。」
第3.訂正の適否
1.訂正の目的、新規事項及び拡張又は変更の存否
(1)訂正事項aについて
上記訂正事項aは、明細書の訂正請求前の実用新案登録請求の範囲に記載された「リモートコントローラー」を、「リモートコントローラーの一端部および他端部は断面がほぼ半円状をなし」、また、「リモートコントローラーの他端部の上面に複数の操作ボタンを配設し」と限定しようとするものであり、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものと認める。
当該「リモートコントローラー」を「リモートコントローラーの一端部および他端部は断面がほぼ半円状をなし」とする訂正は、段落【0016】の「リモートコントローラー5の先端部および後端部は断面がほぼ半円状をなし」という記載、図1に示されているリモートコントローラー5の一端部および他端部の形状から導き出せる事項と認める。また、「リモートコントローラー」を「リモートコントローラーの他端部の上面に複数の操作ボタンを配設し」とする訂正は、段落【0016】の「リモートコントローラー5の先端部および後端部は断面がほぼ半円状をなし、その先端部の…また先端側の上面に複数の操作ボタン7…が配設されている。」という記載、図1及び図2に示されているリモートコントローラー5の端部の上面に複数の操作ボタン7が配設されている構造から導き出せる事項と認める。したがって、これらの訂正は、訂正請求前の願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正と認められる。
そして、これらの「リモートコントローラーの一端部および他端部は断面がほぼ半円状をなし」、「リモートコントローラーの他端部の上面に複数の操作ボタンを配設し」と限定した構成は、「リモートコントローラーを収納凹部内にがたつきなく安定した状態に収納することができる遠隔制御式電気機器を提供する」という、訂正請求前の請求項1に係る考案の課題を達成するための構成であり、これらの訂正事項は、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものとは認められない。
(2)訂正事項bについて
訂正事項bは、上記訂正事項aの実用新案登録請求の範囲の訂正に伴って、考案の詳細な説明の記載を整合させるものであり、明瞭でない記載の釈明に相当し、訂正事項aと同様の理由により、訂正請求前の願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正と認められ、また、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものとは認められない。
2.独立登録要件
(1)訂正明細書の考案
訂正請求書に添付された訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案は、同請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
機器本体のほぼ水平な上面に収納凹部が形成され、この収納凹部内にその機器に対する遠隔操作用のリモートコントローラーが挿脱可能に収納されている遠隔制御式電気機器において、
前記リモートコントローラーの一端部および他端部は断面がほぼ半円状をなし、このリモートコントローラーの他端部の上面に複数の操作ボタンを配設し、さらにこのリモートコントローラーの一端部の下面に、リモートコントローラーの軸方向に対して傾斜する傾斜面を形成し、この傾斜面と収納凹部の内面との間に、その傾斜に基づく空間を形成したことを特徴とする遠隔制御式電気機器。」
(2)引用例
前記取消理由の通知に引用した刊行物実公昭63ー34385号公報(登録異議申立人が提出した甲第1号証、以下「刊行物1」という。)及び、実願昭61ー51304号(実開昭62ー164481号)のマイクロフィルム(登録異議申立人が提出した甲第2号証、以下「刊行物2」という。)には、それぞれ、以下の事項が記載されているものと認める。
▲1▼刊行物1
「この考案は上記問題点を解決するため電子機器本体に設けられる収納部とワイヤレスリモートコントロール機器の相対する一部に回動空間を設けて、この回動空間を利用して前記ワイヤレスリモートコントロール機器を回動させ、指のかかる部分を作ることで取外し操作を容易に行い得、かつ外観的に見苦しい隙間をなくし、デザイン的に自由度を大きくしたワイヤレスリモートコントロール機器の着脱装置を提供することを目的とする。以下、図面を参照にして、この考案の一実施例を詳細に説明する。即ち第3図及び第4図及び第5図に示す様にステレオカセットデッキ11の一部には凹状をした収納部12を設け、この収納部12の装着面121には磁石13が設けられる。前記収納部12にはワイヤレスリモートコントロール機器14が装着される。このワイヤレスリモートコントロール機器14の裏面には前記磁石13と対向する位置に磁性体15を設け、前記ワイヤレスリモートコントロール機器14は裏面の下端の角を斜めに切欠するように形成した傾斜部141を設ける。この傾斜部141を設けることで装着時に前記装着面121と前記ワイヤレスリモートコントロール機器14の傾斜部141との間に回動空間16が設けられる。又、前記ワイヤレスリモートコントロール機器14の正面の下部には断面波状をした滑り止めを有する押圧部17を設け、前記ワイヤレスリモートコントロール機器14の上面には凹状をした指掛け部18を設ける。以上の様に構成されたワイヤレスリモートコントロール機器の着脱装置においてステレオカセットデッキ本体11にワイヤレスリモートコントロール機器14を装着する場合には、収納部12に設けられた磁石13の磁力が前記ワイヤレスリモートコントロール機器14に設けられた磁性体15に働き前記収納部12に容易に装着固定が行ない得る。又、逆に前記ステレオカセットデッキ本体11に固定された前記ワイヤレスリモートコントロール機器14を取外す場合には、このワイヤレスリモートコントロール機器14の押圧部17を回動空間16に対して矢印B方向に押圧することで前記ワイヤレスリモートコントロール機器14は傾斜部141の一端を支点に反時計方向に回動して指掛け部18が隆起することで指を掛けやすくなり容易に取外し得る。」(第2欄第20行?第3欄36行参照)との記載があり、これらの記載、図面等を参照すると、刊行物1には、
“ステレオカセットデッキ本体11の収納面に凹状をした収納部12が形成され、この収納部12内にそのステレオカセットデッキ11に対する遠隔操作用のワイヤレスリモートコントロール機器14が挿脱可能に収納されている遠隔制御式ステレオカセットデッキ11において、前記ワイヤレスリモートコントロール機器14の一端部の裏面に、ワイヤレスリモートコントロール機器14の軸方向に対して傾斜する傾斜部141を形成し、この傾斜部141と収納部12の内面121との間に、その傾斜に基づく回動空間を形成した遠隔制御式ステレオカセットデッキ、”
が記載されているものと認める。
▲2▼刊行物2
「(ニ)問題点を解決するための手段
本考案は電気機器に形成した収納部に遠隔制御装置を収納し、該遠隔制御装置を押圧することで、収納部に対する一端部の押し出しと収納を行う着脱操作体とを備え、前記遠隔制御装置の操作ボタン部を他端部寄りに形成し、収納部の支持面と遠隔制御装置の操作ボタン部を形成しない一端部側との間に隙間部を形成する手段でもって問題点を解決するものである。
(ホ)作用
本考案は、操作ボタンを形成した遠隔制御装置部分と収納部支持面との間には隙間部がないことで着脱操作体を移動しうるだけ遠隔制御部が押し込まれることがなく」(明細書第3頁第6?19行参照)との記載があるものと認める。
(3)対比・判断
本件訂正明細書の請求項1に係る考案と上記刊行物1に記載されたものとを対比すると、
両者は、
機器本体の面に収納凹部が形成され、この収納凹部内にその機器に対する遠隔操作用のリモートコントローラーが挿脱可能に収納されている遠隔制御式電気機器において、前記リモートコントローラーの一端部の裏面に、リモートコントローラーの軸方向に対して傾斜する傾斜面を形成し、この傾斜面と収納凹部の内面との間に、その傾斜に基づく空間を形成した遠隔制御式電気機器、
である点で一致し、
(a)上記収納凹部が形成される機器本体の面が、本件訂正明細書の請求項1に係る考案は「ほぼ水平な上面に」であるのに対して、上記刊行物1に記載されたものは、当該「面」の向きが明瞭に示されていない点、
(b)上記傾斜面が形成されるリモートコントローラーの裏面が、本件訂正明細書の請求項1に係る考案は「下面」であるのに対して、上記刊行物1に記載されたものは、収納凹部が形成される機器本体の面の向きが明瞭でないことから、リモートコントローラーの裏面が「下面」かどうか明瞭でない点、
(c)本件訂正明細書の請求項1に係る考案は、上記リモートコントローラーの一端部および他端部は断面がほぼ半円状をなしているのに対して、上記刊行物1に記載されたものは、このような構成を備えていない点、
(d)本件訂正明細書の請求項1に係る考案は、上記リモートコントローラーの他端部の上面に複数の操作ボタンを配設しているのに対して、上記刊行物1に記載されたものは、操作ボタンの配設位置が定かでない点、
で相違する。
そこで、上記刊行物2を検討すると、遠隔制御装置と収納部支持面との間に隙間部がない遠隔制御装置部分に操作ボタンを形成した構成が記載されているものと認められるので、下面に傾斜面を形成していない側の上面に操作ボタンを形成することは、当業者がきわめて容易に想到し得るものと判断されるから、「リモートコントローラーの他端部の上面に複数の操作ボタンを配設し」た点は、当業者がきわめて容易に想到し得たものとするのが相当である。
しかしながら、刊行物2には、上記相違点(c)における本件訂正明細書の請求項1に係る考案の構成要件である「リモートコントローラーの一端部および他端部は断面がほぼ半円状をなし」とした構成は示されてなく、また、この構成が本件実用新案登録の出願前周知の事項とも認められず、本件訂正明細書の請求項1に係る考案は、この構成を備えることによって、収納凹部内に収納されているリモートコントローラーの一端部の上面を指先で下方に押し込み、他端側を上方に起こして取り出す際に、一端部および他端部が収納凹部の一端部および他端部の立上りの壁面と引っ掛かりなく円滑に摺接してその起き上がりがスムーズに達成されるので、収納凹部の壁面との間に過大な隙間を設けることなく、リモートコントローラーを円滑に起き上がらせることができるという刊行物1又は2に記載されたものに比べて格別の作用効果を奏するものと認められるから、本件訂正明細書の請求項1に係る考案は、刊行物1及び2にそれぞれ記載されたものと同一の考案とすることはできず、また、これらに記載されたものに基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたとすることもできない。
(4)明細書の記載要件
登録異議申立人は、「『傾斜面』の長さが特定されていない」、「『リモートコントローラーを収納凹部内にがたつきなく安定した状態に収納する』のは、リモートコントローラーを収納凹部内に収納した状態で、操作を可能とするためと思慮されるが、その為の構成も実用新案登録請求の範囲に記載されていない」旨主張しているが、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲に、「他端部の上面に複数の操作ボタンを配設」する点、「一端部の下面に、リモートコントローラーの軸方向に対して傾斜する傾斜面を形成」する点が記載されているから、リモートコントローラーを収納凹部内に収納した状態でがたつきなく操作可能とする構成が記載されているものと認められるので、明細書の記載が不備であるとすることもできない。
(5)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律・平成6年法律第116号附則第9条第2項の規定により準用する特許法第120条の4第2項の規定、及び同条第3項の規定により準用する同法第126条第2?4項の規定に適合し、当該訂正は認められるべきものである。
第4.登録異議の申立てについて
1.登録異議の申立ての理由
(1)理由1
登録異議申立人は、本件実用新案登録の請求項1に係る考案は、本件の実用新案登録出願前に頒布された刊行物に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反して登録されたものであり、取り消されるべきものである旨主張し、前記刊行物1及び2をそれぞれ甲第1、2号証として提出している。
(2)理由2
登録異議申立人は、「『傾斜面』の長さが特定されていない」、「『リモートコントローラーを収納凹部内にがたつきなく安定した状態に収納する』のは、リモートコントローラーを収納凹部内に収納した状態で、操作を可能とするためと思慮されるが、その為の構成も実用新案登録請求の範囲に記載されていない」ので、本件実用新案登録は、実用新案法第5条第5項の規定に違反して登録されたものであるから、取り消されるべきものである旨主張している。
2.当審の判断
(1)本件実用新案登録の請求項1に係る考案
上記「第3.訂正の適否」に記載したように、平成11年10月8日付け訂正請求は認められるべきものであるから、本件実用新案登録の請求項1に係る考案は、訂正明細書の実用新案請求の範囲に記載されたとおりのものと認める。
(2)理由1について
上記「第3.訂正の適否」の「2.独立登録要件」の(1)?(3)で記載した理由と同様の理由により、本件実用新案登録の請求項1に係る考案は、登録異議申立人が提出した甲第1号証、甲第2号証に記載された考案と同一であるとも、これらに記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとすることもできない。
(3)理由2について
上記「第3.訂正の適否」の「2.独立登録要件」の「(4)明細書の記載要件」で記載して理由と同様の理由により、明細書の記載が不備であるとすることはできない。
第5.むすび
以上のとおりであるから、本件実用新案登録は、登録異議申立人が主張する理由及び提出した証拠によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
遠隔制御式電気機器
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】
機器本体のほぼ水平な上面に収納凹部が形成され、この収納凹部内にその機器に対する遠隔操作用のリモートコントローラーが挿脱可能に収納されている遠隔制御式電気機器において、
前記リモートコントローラーの一端部および他端部は断面がほぼ半円状をなし、このリモートコントローラーの他端部の上面に複数の操作ボタンを配設し、さらにこのリモートコントローラーの一端部の下面に、リモートコントローラーの軸方向に対して傾斜する傾斜面を形成し、この傾斜面と収納凹部の内面との間に、その傾斜に基づく空間を形成したことを特徴とする遠隔制御式電気機器。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この考案は、機器本体のほぼ水平な上面に収納凹部が形成され、この収納凹部内にその機器に対する遠隔操作用のリモートコントローラーが挿脱可能に収納されている遠隔制御式電気機器に関する。
【0002】
【従来の技術】
このような遠隔制御式電気機器の構造が実開昭63-24792号に開示されている。この電気機器は床置き形の扇風機であり、機器本体としてのベース部の上面に収納凹部が形成され、この収納凹部内にリモートコントローラーが挿脱可能に収納されている。
【0003】
そして収納凹部内からリモートコントローラーを取り出し、このリモートコントローラーを用いて扇風機の動作を遠隔操作により制御する場合と、前記収納凹部内にリモートコントローラーを収納した状態のまま、そのリモートコントローラーを操作して扇風機の動作を制御する場合とに使い分けることができるようになっている。
【0004】
収納凹部の内底部には、そのほぼ中間部から一端側に向かって傾斜する長い傾斜部が形成されていて、この傾斜により収納凹部内にリモートコントローラーが収納されている状態のときに、そのリモートコントローラーの下面と収納凹部の内底面との間に、リモートコントローラーの一端側に向かって漸次深さが増大する空間が生じるように構成されている。
【0005】
そしてリモートコントローラーの一端部の上面を下方に押し込むと、その一端部が前記空間を介して下方に沈み込み、この沈み込みでリモートコントローラーの他端側が上方に起き上がって収納凹部から突出し、したがってこの突出部を手で摘み上げてリモートコントローラーを収納凹部内から容易に取り出すことができるものである。
【0006】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の構成においては、収納凹部の内底面がその中間部分から一端部に亘る比較的長い区間で傾斜しているため、この収納凹部内に収納されたリモートコントローラーの安定性が悪く、リモートコントローラーの上面の操作ボタンを指先で操作する際にリモートコントローラーが上下に揺れるようにがたついて操作がしずらくなり、また機器本体を持ち運ぶような場合にリモートコントローラーが収納凹部内で上下に振動して不快な当接音が生じてしまう。
【0007】
そこで、収納凹部の内底面の一部、すなわちリモートコントローラーの一端部に対向する一部分に段落窪みを形成し、この段落窪みにリモートコントローラーの一端部を沈み込ませて他端側を起き上がらせるようにしたものもあるが、しかしこのような手段であると、収納凹部からリモートコントローラーを取り出した際に、前記段落窪みが露出して外観が低下し、また段落窪み内に塵埃等の異物が徐々に詰まってその清掃がしずらくなり、また収納凹部の内底面の一部にさらにその下方に凹む段落窪みが配置する複雑な構造となるから、機器本体を合成樹脂で成形するときに、その成形性が悪くなる難点がある。
【0008】
この考案はこのような点に着目してなされたもので、その目的とするところは、簡単な構造で、かつリモートコントローラーを収納凹部内にがたつきなく安定した状態に収納することができる遠隔制御式電気機器を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この考案はこのような目的を達成するために、機器本体のほぼ水平な上面に収納凹部が形成され、この収納凹部内にその機器に対する遠隔操作用のリモートコントローラーが挿脱可能に収納されている遠隔制御式電気機器において、前記リモートコントローラーの一端部および他端部は断面がほぼ半円状をなし、このリモートコントローラーの他端部の上面に複数の操作ボタンを配設し、さらにこのリモートコントローラーの一端部の下面に、リモートコントローラーの軸方向に対して傾斜する傾斜面を形成し、この傾斜面と収納凹部の内面との間に、その傾斜に基づく空間を形成するようにしたものである。
【0010】
【作用】
収納凹部内に収納されているリモートコントローラーを取り出す場合には、リモートコントローラーの一端部の上面を指先で下方に押し込む。リモートコントローラーの一端部の下面には傾斜面が形成され、この下面と収納凹部の内面との間に空間が介在しており、このためリモートコントローラーの一端部の上面を下方に押し込むと、リモートコントローラーの傾斜面が収納凹部の内底面に接してリモートコントローラーの他端側が上方に起き上がって収納凹部から突出し、したがってこの突出部を手で摘んでリモートコントローラーを収納凹部から容易に取り出すことができる。
【0011】
収納凹部内にリモートコントローラーが収納されている状態のときには、リモートコントローラーの下面の大部分が収納凹部の内底面に接触して密着し、したがってリモートコントローラーの収納状態が安定し、リモートコントローラーの操作時にがたつくようなことなく能率よく操作することができ、また機器本体を持ち運ぶような場合にもリモートコントローラーが収納凹部内で上下に振動するようなことがなく、このため不快な当接音が発生するようなことがない。
【0012】
さらに、収納凹部の内底面の全体がフラットな状態にあり、したがってリモートコントローラーを取り出した際の外観がよく、またその内底面に異物が付着してもそれを容易に清掃して除去することができ、かっ収納凹部の形状がシンプルであるから、機器本体を合成樹脂で成形するときの成形性が良く、能率的に製造することができる。
【0013】
【実施例】
以下、この考案の一実施例について図面を参照して説明する。
【0014】
この実施例は扇風機に適用した例であり、図に示す符号1が機器本体で、この機器本体1はベース部2と、このベース部2から起立する支柱部3とで構成されている。
【0015】
ベース部2の上面のほぼ水平な部分には、その前後方向に沿って長い収納凹部4が形成されている。そしてこの収納凹部4内にリモートコントローラー5を挿脱可能に収納することができるようになっている。図1(A)には、収納凹部4内にリモートコントローラー5を収納した状態を、図1(B)には、その収納凹部4内からリモートコントローラー5を取り出した状態をそれぞれ示している。
【0016】
リモートコントローラー5の先端部および後端部は断面がほぼ半円状をなし、その先端部の内側に例えば赤外線を出射する発光素子6が設けられ、また先端側の上面に複数の操作ボタン7…が配設されている。
【0017】
収納凹部4の先端側の壁面には透孔8が形成されているとともに、この透孔8を覆うように収納凹部4の内面に赤外線フィルタ9が取り付けられ、またベース部2の内部には前記透孔8に対向して受光素子10が配設されている。
【0018】
収納凹部4の先端側および後端側の内面は、リモートコントローラー5の先端部および後端部の断面形状に対応する円弧状をなし、この収納凹部4内にリモートコントローラー5が収納された状態において、前記発光素子6が前記赤外線フィルタ9および透孔8を介して前記受光素子10に対向するようになっている。
【0019】
リモートコントローラー5の後端部の下面には、リモートコントローラー5の軸方向に対して傾斜する平面状の傾斜部11が形成され、この傾斜部11にリモートコントローラー5の後端部の下面と収納凹部4の内面との間に空間Hが形成されている。なお、リモートコントローラー5の後端部の内部は、電池収納部として比較的広いスペースがあり、このため前記傾斜部11は支障なく形成することが可能である。
【0020】
ベース部2の上面には、図2に示すように、収納凹部4の先端側に隣接して操作部12が設けられ、この操作部12に複数の操作ボタン13…が設けられ、これら操作ボタン13…を介してリモートコントローラー5とは別に扇風機の動作を制御することができるようになっている。
【0021】
このように構成された扇風機においては、収納凹部4内にリモートコントローラー5が収納された状態で、リモートコントローラー5の操作ボタン7…を操作し、発光素子6から出射する赤外線を赤外線フィルタ9および透孔8を通して受光素子10に入射させて扇風機の動作を制御する場合と、収納凹部4内からリモートコントローラー5を取り出し、機器本体1の遠方から赤外線フィルタ9および透孔8を通して受光素子10に赤外線を入射させて扇風機の動作を制御する場合と、リモートコントローラー5とは別に、機器本体1の操作部12の操作ボタン13…を介して扇風機の動作を制御する場合とに使い分けることができる。
【0022】
収納凹部4内に収納されているリモートコントローラー5を取り出す場合には、リモートコントローラー5の後端部の上面を指先で下方に押し込む。リモートコントローラー5の後端部の下面には傾斜面11が形成され、この傾斜面11と収納凹部4の内面との間に空間Hが介在しており、このためリモートコントローラー5の後端部の上面を下方に押し込むと、図1(B)に鎖線で示すように、リモートコントローラー5の傾斜面11が収納凹部4の内底面に接してリモートコントローラー5の先端側が上方に起き上がって収納凹部4から突出するように変位する。したがってその突出部を手で摘み上げてリモートコントローラー5を容易に取り出すことができる。
【0023】
また収納凹部4内にリモートコントローラー5が収納されている状態のときには、リモートコントローラー5の下面の大部分が収納凹部4の内底面に接触して密着し、したがってリモートコントローラー5の収納状態が安定し、リモートコントローラー5の操作ボタン7…を操作する際に、リモートコントローラー5ががたつかず能率よく操作することができ、また機器本体1を持ち運ぶような場合にもリモートコントローラー5が収納凹部4内で上下に振動するようなことがなく、このため不快な当接音の発生を防止することができる。
【0024】
さらに、収納凹部4の内底面の全体がフラットな状態にあり、したがってリモートコントローラー5を取り出した際の外観がよく、またその内底面に異物が付着してもそれを容易に清掃して除去することができ、かつ収納凹部4の形状がシンプルであるから、機器本体1を合成樹脂で成形するときの成形性が良く、能率的に製造することができる利点がある。
なお、この考案は扇風機に適用する場合に限らず、例えば床置き形の電気スタンドなどの他の遠隔制御式電気機器にも適用することが可能である。
【0025】
【考案の効果】
以上説明したようにこの考案によれば、収納凹部内のリモートコントローラーを容易に取り出すことができるとともに、収納凹部内にリモートコントローラーを収納したときにこれを安定した状態に定置させてそのがたつきを確実に防止でき、また収納凹部内からリモートコントローラーを取り出した際の外観がよく、かつ収納凹部の内底面に異物が付着してもそれを容易に清掃して除去することができ、さらに収納凹部の形状がシンプルで、機器本体を合成樹脂で成形するときの成形性が良く、能率的な製造を達成することができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】
この考案の一実施例に係る遠隔制御式電気機器の断面図で、(A)は収納凹部内にリモートコントローラーを収納した状態を、(B)は収納凹部内からリモートコントローラーを取り出した状態を示す。
【図2】
その遠隔制御式電気機器の外観を示す斜視図。
【符号の説明】
1…機器本体
4…収納凹部
5…リモートコントローラー
11…傾斜部
訂正の要旨 1.訂正事項a
実用新案登録請求の範囲を、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、以下のとおり訂正する。
「【請求項1】
機器本体のほぼ水平な上面に収納凹部が形成され、この収納凹部内にその機器に対する遠隔操作用のリモートコントローラーが挿脱可能に収納されている遠隔制御式電気機器において、
前記リモートコントローラーの一端部および他端部は断面がほぼ半円状をなし、このリモートコントローラーの他端部の上面に複数の操作ボタンを配設し、さらにこのリモートコントローラーの一端部の下面に、リモートコントローラーの軸方向に対して傾斜する傾斜面を形成し、この傾斜面と収納凹部の内面との間に、その傾斜に基づく空間を形成したことを特徴とする遠隔制御式電気機器。」
2.訂正事項b
明細書の段落【0009】を、明瞭でない記載の釈明を目的として、以下のとおり訂正する。
「【0009】
【課題を解決するための手段】
この考案はこのような目的を達成するために、機器本体のほぼ水平な上面に収納凹部が形成され、この収納凹部内にその機器に対する遠隔操作用のリモートコントローラーが挿脱可能に収納されている遠隔制御式電気機器において、前記リモートコントローラーの一端部および他端部は断面がほぼ半円状をなし、このリモートコントローラーの他端部の上面に複数の操作ボタンを配設し、さらにこのリモートコントローラーの一端部の下面に、リモートコントローラーの軸方向に対して傾斜する傾斜面を形成し、この傾斜面と収納凹部の内面との間に、その傾斜に基づく空間を形成するようにしたものである。」
異議決定日 1999-11-05 
出願番号 実願平4-75398 
審決分類 U 1 651・ 534- YA (F04D)
U 1 651・ 121- YA (F04D)
最終処分 維持    
前審関与審査官 熊倉 強  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 清田 榮章
山口 直
登録日 1998-08-28 
登録番号 実用登録第2584691号(U2584691) 
権利者 東芝機器株式会社
群馬県前橋市古市町180番地
考案の名称 遠隔制御式電気機器  
代理人 坪井 淳  
代理人 橋本 良郎  
代理人 村松 貞男  
代理人 坪井 淳  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 橋本 良郎  
代理人 村松 貞男  

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