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審決分類 審判 全部申し立て   F21V
管理番号 1010548
異議申立番号 異議1999-72531  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-06-30 
確定日 2000-02-16 
異議申立件数
事件の表示 実用新案登録第2588026号「可動照明装置」の請求項1に係る実用新案登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。    
結論 訂正を認める。 実用新案登録第2588026号の請求項1に係る登録を維持する。
理由 1. 本件は、実用新案登録第2588026号に関し、その受けた登録を取り消すことを請求する登録異議申立事件に存する。
2. 本件の手続きの経緯の概要は以下のとおりである。
1) 出願日:平成4年9月14日
2) 登録日:平成10年10月23日
3) 登録公報:平成11年1月6日実用新案登録公報発行
4) 異議申立:平成11年6月30日実用新案登録異議申立人東芝ライテツク 株式会社より登録異議申立書を提出
5) 取消理由:平成11年9月6日当審より取消理由の通知
6) 訂正請求等:平成11年11月12日権利者より訂正請求書と意見書を
提出
3. 訂正適否の判断
(1) 本件訂正請求の骨子とするところ即ち訂正事項aは、明細書の実用新案登録請求の範囲の欄請求項1の記載における
「請求項1 天井の下面に設置される照明器具本体と、この照明器具本体にワイヤー等で吊設され昇降自在な昇降灯具本体とからなり、スイッチの操作により上記昇降灯具本体を昇降制御する制御部を備えた可動照明装置において、昇降灯具本体を下降させて任意の位置で停止させ、その停止位置を昇降灯具本体の最下点として、昇降灯具本体を該最下点より下降させないようにした制御手段を設けたことを特徴とする可動照明装置。」を、
実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として
『請求項1 天井の下面に設置される照明器具本体と、この照明器具本体にワイヤ一等で吊設され昇降自在な昇降灯具本体とからなり、スイッチの操作により上記昇降灯具本体を昇降制御する制御部を備えた可動照明装置において、上記昇降灯具本体の昇降長を測定する昇降長センサーと、上記昇降長センサーの測定値を記憶する記憶部と、昇降灯具本体の最下点を変更する下限変更モードでは、昇降灯具本体を下降させて任意の位置で停止させ、そのときの昇降灯具本体の昇降長を上記記憶部にて記憶させ、記憶後の通常状態では、昇降灯具本体を記憶した昇降長より下降させないようにした制御手段とを設けたことを特徴とする可動照明装置。』に、
訂正しようとするものである。
この訂正事項は、元々出願当初の願書に添付した明細書及び図面に記載した範囲内のものと言うべきであるところ、新規事項の付加には当たらず、上記における昇降長センサーと記憶部の点は、構成要件の直列的付加であり、その余の部分は原実用新案登録請求の範囲に記載された制御手段の概念を限定的に修飾したもので、何れも、実用新案登録請求の範囲の減縮にあたるものというべきである。 そして、この訂正により、格別実用新案登録請求の範囲を拡張若しくは変更するものではないと捉えられる。
(2) その他の訂正部分
1) 訂正事項bについて
この訂正事項は、明細書の段落(0012)に存する課題を解決するための手段の欄における後段の記載を、
「『上記昇降灯具本体の昇降長を測定する昇降長センサーと、上記昇降長センサーの測定値を記憶する記億部と、昇降灯具本体の最下点を変更する下限変更モードでは、昇降灯具本体を下降させて任意の位置で停止させ、そのときの昇降灯具本体の昇降長を上記記憶部にて記臆させ、記憶後の通常状態では、昇降灯具本体を記憶した昇降長より下降させないようにした制御手段と』を設けたものである。」と訂正しようとするものであり、出願当初の明細書と図面の記載の範囲内のものにして、上記請求項1に係る記載の訂正に随伴し、記載相互の整合性を図って訂正するものと捉えられるところ、明りょうでない記載の釈明にあたるものというべきである。そして、この訂正により、格別実用新案登録請求の範囲を拡張若しくは変更するものでもないというべきである。
2) 訂正事項cについて
この訂正事項は、明細書の(0019)の考案の効果の欄において、主語を『請求項1に記載の考案』とする如く訂正するものであり、元来明細書及び図面に記載された範囲内の事項であるというべきところ、新規事項の付加には当たらないものであり、上記請求項1に係る記載の訂正に随伴して記載の整合性を図って訂正したものであり、明りょうでない記載の釈明に当たるものである。
勿論、これにより、格別実用新案登録請求の範囲を拡張し若しくは変更することとなるとも解せられないものというべきである。
(3) そこで本訂正請求後の実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案が、出願の際独立して実用新案登録を受けることができるか否かにつき審案する。
1) 当審の引用刊行物
(1) 第1引用例:松下電工株式会社発行
「National松下電工施設照明1990-1991」(カタログNO電機A-128 199003-19.5XX ZFCT1A128){第292?293頁オートリフターの昇降に関する点}(なお、本刊行物は、掲載物品が、平成2年4月現在のものであるところ、少なくとも、本件出願日である平成4年9月13日以前に頒布されたものと推認される。)
本引用例には、以下の事項が図面とともに記載されている。
イ) 「高天井用器具をオートリフターで昇降する際、自動的に照明器具回路のOFF信号を出し、オートリフターの接点部を保護する制御盤です。」(292頁2?5行目)
ロ) 「制御部とスイッチ部を分離することにより、体育館アリーナ部は従来の操作盤に比べ、目立たないスイッチ操作部の設置だけですみます。」 (292頁12?14行目)
ハ) 「下降停止位置設定用タイマー付制御盤について
下降停止位置がタイマー制御により、任意に設定できますので、床上に障害物(設備類)などがある場合に便利です。またランプ交換なども楽な位置で行えます。」(第292頁右側最上段部のコラム)
ニ) 「高天井用にあるオートリフターが照明器具を昇降します。ビルのホール、ホテルのロビー・宴会場、体育館など天井の高い場所の照明器具を、オートリフター制御盤のスイッチ操作で手元まで降ろせる昇降装置です。容易に器具を昇降でき、定期点検、ランプ交換などのメンテナンスが安全・確実に行えます。」(第293頁3?7行目)
(2) 第2引用例群
イ) その1:「特開平4-245193号公報」(平成4年9月1日発行);ワイヤで昇降灯具を昇降させる点{(0010?0011)の段落と第1,2図参照}
ロ) その2:「実願平2-20397号(実開平3-110715号)のマイクロフィルム」;昇降灯具をワイヤで昇降自在に吊り下げる点(実用新案登録請求の範囲、第1,第3図参照)
2) 対比・判断
第1引用例には、本件請求項1に係る考案と同様の可動照明装置が開示されており(なお、ワイヤで吊設することは、第2引用例(群)の記載にみるとおり周知である)、このものの「下降停止位置設定用タイマー付制御盤」は、その機能と構成に鑑み、本件請求項1に係る考案に関連する「昇降灯具本体を下降させて任意の位置で停止させ、」と「その停止位置を昇降灯具本体の最下点として、昇降灯具本体を該最下点より下降させないようにした制御手段」を実現していると解せられる。
しかしながら、右第1引用例に記載の考案は、本件訂正後の請求項1に係る考案が、構成要件として具有する「昇降長センサー」と右センサーの測定値を記憶する「記憶部」は、一切欠如しており、更に、
「昇降灯具本体の最下点を変更する下限変更モードでは、昇降灯具本体を下降させて任意の位置で停止させ、そのときの昇降灯具本体の昇降長を上記記憶部にて記憶させ、記憶後の通常状態では、昇降灯具本体を記憶した昇降長より下降させないようにした制御手段」を、
一切包括しないものである。
また、前掲第2引用例群に記載の考案は、主として『照明器具本体がワイヤ一で吊設される昇降自在な昇降灯具本体』の点を、引証したものであるところ、右構成部分を包括しないことは明らかである。
本件【請求項1】の係る考案は、上記第1引用例並びに第2引用例群に記載の考案が具備しない事項を含む本件【請求項1】に係る考案の構成要件により明細書に記載されたとおりの効果を奏するものと認められる。
他方、第1引用例並びに第2引用例群に記載の考案からは斯かる効用は期待することができないというべきである。
してみれば、本件【請求項1】に係る考案は、前掲第1引用例に記載された考案であるとは認められないのみならず、このものに基づいて当業者
がきわめて容易に推考し得た限りでもなく、
さらに、第1引用例並びに第2引用例群に記載の考案を総合考量して当業者においてきわめて容易に推考することを得た限りでもないというべきである。
3) それ故、訂正後の請求項1に係る考案は、出願の際、独立して実用新案登録を受けることを得るものという外はない。
(4) 上記のとおりであるところ、本件訂正請求は、それぞれの法趣意に悖るものではないから、附則(平成6年法律第116号)第9条第2項の規定において準用する特許法第120条の4第2項の規定並びに同条第3項の規定において準用する同法第126条第2項乃至第4項の規定に適合するものとして認容する外はない。
それ故、本件は、訂正請求後の実用新案登録請求の範囲の請求項1によって特定される考案に係るものというべきである。
4. 異議申立人の主張
異議申立人は、
1) 甲第1号証刊行物(第1引用例に同じ)、
を提出し、
右甲第1号証即ち第1引用例には、照明器具の下降停止位置を昇降制御部のタイマー制御により、任意に設定できるので、床上に障害物(設備類)がある場合に便利である旨の記載があり、昇降灯具本体を下降させて任意の位置で停止させ、その停止位置を昇降灯具本体の最下点として、昇降灯具本体を該最下点より下降させないようにすることは、当業者であれば極めて容易になし得たものであるところ、本件請求項1に係る考案は、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることを得なかったものというべきであるから、これにつき受けた登録は、取り消しを免れない旨主張する。
5. 当審の判断
ところで、本件請求項1に係る考案は、前記にみたとおり適法に訂正請求がされ、その結果別途
「上記昇降灯具本体の昇降長を測定する昇降長センサーと、上記昇降長センサーの測定値を記憶する記憶部と、昇降灯具本体の最下点を変更する下限変更モードでは、昇降灯具本体を下降させて任意の位置で停止させ、そのときの昇降灯具本体の昇降長を上記記憶部にて記憶させ、記憶後の通常状態では、昇降灯具本体を記憶した昇降長より下降させないようにした制御手段とを設けた」を、
請求項1に介入したものである。
右構成部分は、上記第1引用例には開示されていず、又この構成部分につき第1引用例に記載された技術的事項から当業者がきわめて容易に推考し得た限りでないことは、既に本件訂正後の請求項1に係る考案の独立登録要件性の審理過程で審案したとおりである。
なお、外に、本件請求項1に係る考案につき、受けた登録を取り消すべき理由を発見しない。
6. 結語
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2000-01-27 
出願番号 実願平4-63809 
審決分類 U 1 651・ 121- YA (F21V)
最終処分 維持    
前審関与審査官 丸山 英行  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 藤原 稲治郎
長崎 洋一
登録日 1998-10-23 
登録番号 実用新案登録第2588026号(U2588026) 
権利者 松下電工株式会社
大阪府門真市大字門真1048番地
考案の名称 可動照明装置  
代理人 和泉 順一  
代理人 安藤 淳二  
代理人 井澤 眞樹子  

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