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審決分類 |
審判 B42D 審判 B42D 審判 B42D |
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管理番号 | 1012665 |
審判番号 | 審判1998-2419 |
総通号数 | 10 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2000-10-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1998-02-12 |
確定日 | 2000-01-31 |
事件の表示 | 平成 6年実用新案登録願第 5675号「テレホンカード」拒絶査定に対する審判事件〔平成 8年 2月21日出願公告実公平 8- 5827 平成 7年 5月16日出願公開、実開平 7- 26163 請求項の数1〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の考案は、実用新案登録すべきものとする。 |
理由 |
1.手続きの経緯・本願考案の要旨 本願は、昭和59年9月5日に出願した実願昭59-134611号の一部を平成6年5月24日に新たな実用新案登録出願としたものであり、その考案の要旨は、平成10年3月12日付で補正された出願公告された明細書と図面の記載からみて、実用新案登録請求の範囲に記載されたとおりの 「電話機に差し込むことにより電話がかけられるテレホンカードにおいて、このカード本体の一部に、電話に差し込む方向を指示するための押形部からなる指示部を設けて成り、該指示部は、カード本体の外周縁からカード本体の内方向にくぼんでいると共にカード本体の直交する2つの中心軸線の夫々から一側にずれてカード本体に配置されており、且つ、該指示部は目の不自由な者がカード本体を電話機に差し込む際、目の不自由な者の指がふれる位置に配置されていることを特徴とするテレホンカード。」 にあるものと認められる。 なお本願について、平成11年10月28日及び平成11年12月6日付で手続き補正書が提出されたが、これによる手続き補正は却下されたので、上記のように要旨認定した。 2.原査定の理由 これに対して原査定の拒絶の理由となった登録異議の決定に記載した理由の概要は、本願考案は、本願出願前に頒布された米国特許第4031640号明細書(1977年6月28 日発行、以下「引用例1」という。)、実願昭56-48368号(実開昭57-161131号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム(昭和57年10月9日発行、以下「引用例2」という。)、昭和58年7月3日の朝日新聞の5ページ、声欄(以下「引用例3」という)、トミー工業(株)T.H研究室、「ゲームガイドブック、弱視者用大型活字本シリーズ3」、株式会社小学館、昭和58年12月19日発行(以下「引用例4」という)に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない、というものである。 3.引用例の記載事項 (引用例1) (1)この発明の目的は個人を識別するシステムの改良にあり、その識別システムにはレントゲン写真が挿入されていて、大災害時の死体を識別するのに使用される。(第2欄9行~17行) (2)この発明の識別カードは、ベースを含み、個人データを収容する区域と、少なくとも一つのレントゲン写真を有し、レントゲン写真はカードの所持者個人のものである。ベースとレントゲン写真は薄膜でカバーされ一体的に成形される。(第2欄21行~27行) (3)レントゲン写真として歯のX線写真を用いるのが望ましく、それをカードの所持者を識別する手段として用いる。(第2欄31行~33行) (4)付加的に識別カードはその上に触知できる手段を有し、レントゲン写真識別手段を読むに際しての簡単な方向付けを可能にしている。(第2欄52行~54行) (5)発明を更に具体化した例が図3および図5に示されている。(中略)カード110には触覚(tactile)による方向手段が備えられている。カード110の一面上には突起140が形成されている。カードのreaderが指で触ることにより、読むために正しい方向にカードを方向付けることができる。その場合、小さいくぼみ(dimple)、突起(protrusion)、へこみ(depression)等140を方向指示のために設けることができる。(第4欄47行~56行) (引用例2) (1)例えば電話、特に公衆電話の通話に硬貨あるいはその代替物に代えて磁気カードを用い、その磁気カードに記録されている金額から通話に要した料金額を減額して記録し、硬貨などを用意せずとも通話することができる通話方式に用いられる磁気カードの場合、予め定められた金額が記録されたものを購入し、その金額がなくなるまで使用されるが、使用者側においては磁気カードの残存金額がカードを見た限りではわからないため、未使用カードと既使用カードとの判別ができないことになる。(明細書第1ページ下から7行~2ページ3行) (2)本考案はこれに鑑み、磁気カード1の特定された一部に切離可能な切除部を形成し、この切除部の欠除により既使用カードであることを表示して未使用、既使用の別を明確にし、かつこの切除部の欠如された形態の変化により電話機へのカードの挿入に方向性を与えて挿入時の差し違えを防ぎつつ(明細書2ページ12行~18行) (3)この切除部3を、第1図、2図では三角に切り離す例、第3図では角部を四角形に切り離す例、第4図ではカードの一側方に片寄った位置に円形状に切り離す例が示されている。 (4)また使用する際に前記切除部3の欠落により磁気カード1の挿入方向が示されるので、カード受入れ装直への挿入方向の誤りが事前に分り装置の不要な動作をなくすことができる(第5頁第12~15行)。 (引用例3) カード式公衆電話に使用するカード(テレホンカード)が、盲人のために、カードの差し込み方(裏表や上下の区別)が手ざわりではわからないので盲人にとって不便であるから、検討を要望する旨が記載されている。 (引用例4) 盲人は、目は見えなくても耳は健全ですし、指先の触覚は人一倍発達しています。(中略)札(ふだ)や駒(こま)に、ちょっとした工夫をして、触覚で区別がつくようにすれば、盲人も全く不自由なく遊べるゲームは、まだまだたくさんあるはずだと思っています。 4.対比 そこで本願考案を引用例1記載の考案と対比すると、次のような一致点、相違点がある。 (一致点) 「カードにおいて、カード本体の一部に、カードの方向性を指示するための押形部からなる指示部を設けて成り、該指示部は、カード本体の直交する2つの中心軸線の夫々から一側にずれてカード本体に配置されている」 (相違点) (1)カードの方向性を指示する指示部付きカードが、本願考案では電話機に差し込むことにより電話がかけられるテレホンカードであって、指示部は電話機に対するカードの差込方向を指示するものであるのに対して、引用例1記載の考案はカード所持者を識別するための個人識別カードであって、指示部がカードに収容されたレントゲン写真の上下方向を指示するためのものである点 (2)指示部の位置が、本願考案では目の不自由な者がカード本体を電話機に差し込む際、目の不自由な者の指が触れる位置に配置されているのに対して、引用例1記載の考案は特に配置に関してそのような配慮をしている旨の記載がない点 (相違点の検討) 相違点(1)については、電話機への挿入方向を指示する手段を設けたテレホンカードが引用例2に記載されているように公知であるが、引用例1記載の考案の個人識別カードはカード所持者とカードを照合するために用いられるものであって、テレホンカードのように機械に差し込んでカードに記録された情報を読みとり、その情報の内容を書き換えるものではないから、引用例2記載の考案のテレホンカードとは技術分野が共通するとはいえない。 またこの技術分野が異なるため、指示部の機能もカードの方向を指示する点で共通するとはいえ、引用例1記載の考案はカードの上に記録された情報の読みとり間違いを防止するためにカードの方向を指示するものであるのに対して、本願考案は読みとり機械の特質に合わせて読みとりが不能にならないように差し込み方向を指示するものである点で異なる。 原査定では、テレホンカードとIDカードは共に機械読みとり可能なカードであるとしているが、引用例1にはIDカードが機械読みとり可能なカードであることを明確に記載した部分はなく、この点においてもテレホンカードと引用例1記載のIDカードとの間に技術的な共通性があるとすることはできない。 さらに、引用例2記載の考案は切除部が欠如された形態の変化によりカードの挿入に方向性を与えるものであり、指示部の形態として引用例1記載のような凹凸の形態を想定することはできない。 以上のことから、引用例1記載の考案と引用例2記載の考案は技術分野が異なるし、指示部の機能も異なるし、組み合わせに当たって指示部の構成が引用例2記載の考案では想定できない構成となることから、両者を組み合わせて本願考案の相違点(1)にかかる構成とすることが当業者がきわめて容易にできたとすることはできない。 相違点(2)に関しては、引用例1記載の考案はカード保持者とカードを照合する為に用いられるものであることから、常識的にはカード所持者はともかく、カードを用いて照合する側の者、すなわちカードの使用者が目の不自由な者をも対象としたものであるとはいえない。したがって引用例1記載の考案は、個人識別カードの指示部の位置を、目の不自由な者の指が触れる位置に配置する必要のないものであり、引用例3や引用例4に記載された公知技術をあわせて考えたとしても、引用例1記載の考案と引用例2記載の考案を組み合わせて本願考案の相違点(2)にかかる構成とすることが当業者がきわめて容易にできたとすることはできない。 5.まとめ したがって、本願考案は、原査定で引用した引用例1から4に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものではない。 6.当審の拒絶理由 (1)実用新案登録請求の範囲の記載において「該指示部は、カード本体の外周縁からカード本体の内方向にくぼんでいる」の構成が不明瞭であるから、本願は明細書及び図面の記載が実用新案法第5条第4及び5項に規定する要件を満たしていない。 (2)本願は分割要件を満たしていないから原出願の時に出願したものとみなすことができず、原出願の明細書及び図面のマイクロフィルムに記載された考案と同一であるから、実用新案法第3条第1項第3号に該当し、実用新案を受けることができない。 7.拒絶理由に対する検討 拒絶理由(1)については、平成10年3月12日付で補正された出願公告された明細書及び図面において、実用新案登録請求の範囲の「指示部は、カード本体の外周縁からカード本体の内方向にくぼんでいる」に対応する記載は、明細書中の「実施例」の「この指示部は、図1に示す如くカード本体の外周縁からカード本体の内方向にくぼんで形成されている」(実用新案公報の段落[0008])及び図1の記載だけであり、図1には、テレホンカードを側面からみて上下面から厚み中心部に向かう方向に押形部を形成したものが記載されている。 このことから、上記「指示部は、カード本体の外周縁からカード本体の内方向にくぼんでいる」の記載は、図1に示すような形状のものとして構成を特定することができるから、その記載が不明瞭であって構成が特定できないとはいえず、本願が明細書及び図面の記載が実用新案法第5条第4及び5項に規定する要件を満たしていないとはいえない。 ところで、平成11年10月28日付けの手続き補正書と同時に提出された意見書の[「カード本体の外周縁からカード本体の内方向にくぼんでいる」の文言上の「内方向」の意は、平面的なカードの中心方向を意味する場合と、テレホンカードを側面からみて上下面から厚み中心部に向かう方向を意味する場合とが考えられます。このため、上下面から厚み中心部に向かう方向を意味する場合を明瞭にするために手続き補正書で図2及び図3を補充し、平面的なカードの中心方向を意味する場合を明瞭にするために図4乃至図6を補充致しました]によると、図2は図1の断面図であることから、本願考案の明細書に添付された図1はカード上下面から厚み中心部に向かう方向にくぼんでいる例を示すものであるということになり、図1が本願考案に対応する構成であるとしていることから、上記のような解釈はこの出願人の主張とも合致する。 拒絶理由(2)については、本願考案は、指示部をカード本体の直交する2つの中心軸線の夫夫から一側にずれて配置されており、且つ、目の不自由な者がカード本体を電話機に差し込む際、目の不自由な者の指がふれる位置と限定した点で原出願考案と相違する。 そして、目の不自由な者を対象としてテレホンカードの上記特定の位置に指示部を設けることが、本願考案の出願時に周知技術や慣用技術であったとはいえないから両者が実質的に同一であるとすることはできず、したがって本願考案は適法な分割出願であって原出願の時に出願したものとみなすことができ、本願考案の出願日が現実の出願日であることを前提としたこの拒絶理由は理由のないものとなった。 8.結論 以上のことから、本願考案は、原査定の拒絶理由、及び当審の拒絶理由によって実用新案登録を受けることができないとすることはできないし、また、ほかに本願について拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2000-01-26 |
出願番号 | 実願平6-5675 |
審決分類 |
U
1
80・
113-
WY
(B42D)
U 1 80・ 534- WY (B42D) U 1 80・ 121- WY (B42D) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 外山 邦昭、藤井 靖子、砂川 克、國田 正久 |
特許庁審判長 |
石川 昇治 |
特許庁審判官 |
伊波 猛 小沢 和英 |
考案の名称 | テレホンカード |
代理人 | 村山 勝 |
代理人 | 安形 雄三 |
代理人 | 安形 雄三 |
代理人 | 村山 勝 |
代理人 | 安形 雄三 |
代理人 | 村山 勝 |