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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A41C
管理番号 1012676
審判番号 審判1998-8662  
総通号数 10 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2000-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-05-27 
確定日 2000-03-21 
事件の表示 平成 4年実用新案登録願第 65788号「ショートガードル」拒絶査定に対する審判事件〔平成 6年 4月 5日出願公開、実開平 6- 25308、平成 7年12月18日出願公告、実公平 7- 54246、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。   
結論 原査定を取り消す。 本願の考案は、実用新案登録すべきものとする。
理由 <1>手続の経緯・本願の考案
本願は、平成4年8月26日の出願であって、原審において、平成7年12月18日に出願公告(実公平7-54246号公報)されたところ、登録異議申立てがあり、その登録異議決定の理由により拒絶されたものであって、その請求項1に係る考案は、出願公告後の平成11年10月30日付けの手続補正書により適正に補正された明細書および図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】
ガードル本体の脇部分と裾廻り部分を形成する側腹部片が、スパンデックス糸を多く編み込んだ伸度を押さえた伸度の小さい伸張特性部分と、伸度の大きい伸張特性部分とに一体的に編別けられた一枚の編物片によって構成されており、裾廻り部分をその最大幅部分の幅が5乃至9cmである広幅とし、面状に緊締される伸度を押さえたスパンデックスを含む交編素材、複合素材および収縮加工糸素材で裾充当部片を形成して、裾廻り部分が二重使いでなく、平滑で段差を少なくしたことを特徴とするショートガードル。」
(以下、「本願の考案」という)

<2>引用例
当審において通知された拒絶理由では、次の刊行物が引用された。
引用例1:実願昭62ー107422号(実開昭64ー14108号)のマイクロフィルム
引用例2:特開昭61ー239002号公報

上記引用例には、概略、以下のようなことが記載されている。

<引用例1>実願昭62ー107422号(実開昭64ー14108号)のマイクロフィルム
(a)
「腹部片1を、その前中心下方部から股部へ向かって舌状に延長させてその延長片を以って股部片6と成し、腹部片1の両側に接合する側腹部片2から臀部片3にかけての両裾部分を、側腹部片2の前中心下方部から鼠径溝に沿うように斜上方に延びて脇中心に至る切替線a、脇中心から臀部側部の下方部を通るように斜下方に延びて臀部片3の後中心下方部に至る切替線bで切替えて、その各裾部分に、脇中心の接ぎ線cを境にして側腹部寄りと臀部寄りとに区分され且生地を2つ折りに成した2つの裾部片4,5を、夫々の折り目側の辺が裾線を形成し、互いに重なり合う側の辺が縫合片と成すように配して、側腹部寄りの裾部辺4と側腹部片2とを、夫々緩やかに円弧状に陥んだ形状に形成した縫合片14,15で以って縫合し、臀部寄りの裾部片5と臀部片3とを、夫々緩やかに円弧状に膨らんだ形状に形成した縫合片12,13で縫合し、且側腹部寄りの裾部片4を、その前中心下方部から股部へ向って2つ折りのまま延長させてその延長片を以って股部片6の縁片6aと成したことを特徴とするショートガードルまたはボデイスーツ。」(実用新案登録請求の範囲)
(b)
「ショートガードルAは、腹部片1,側腹部片2,臀部片3,裾部片4,5,股部片6及び股部片6の縁片6aの各部片により構成されている。
それらの各部片は縦横伸縮性生地を素材とし、特に腹部片1は他の部片より太い伸縮性糸を用いた伸縮性生地を素材としている。例えば腹部片1は420デニール、他の部片は280デニールである。・・・そして臀部片3は側腹部片2に一連一体になって続いている。」(第4頁第20行?第5頁 第16行)
(c)
「この考案によれば、側腹部片2,臀部片3と同じ生地を2つ折りにして2重生地にした裾部片4,5及び裾部片4をその2つ折りのまま延長させて形成した、股部片6の縁片6aによって囲まれた裾口を形成し、その2重生地で以って一定の締付力が得られるようにして裾線の安定を計っている。
従って従来の伸縮性テープの裏打ちのように裾部分が分厚くならないから裾線の太股への当たりが柔らかく、よって太股への食い込みのない、違和感を感じさせない着用が得ることができる。」(第7頁第2?11行)
(d)
「また、夫々緩やかに円弧状に膨らんだ形状に形成された裾部片5の縫合辺12と臀部片(「辺」は誤字)3の縫合辺13との縫合による切替線bに沿う部分は膨らみに対応でき、従って切替線bに沿う、臀部片3と裾部片6の部分が臀部の膨らみに適切に対応し、臀部側部の下方部に充当する裾部片5がその2重生地による伸張力を以ってヒップアップ機能を発揮し、臀部整容を計ることができる。」(第7頁第20行?第8頁第7行)
( e)
第1?5図には、上記記載a?dにおいて引用するガードルの図が記載されており、特に、第7図の従来のものと比べ、裾部片4,5は最大幅部分がある広幅であることが分かる。
(以下、「引用例1記載の考案」という)

<引用例2>特開昭61ー239002号公報
(f)
「<産業上の利用分野>
この発明は、衣服構造に関するものであり、着心地がよく、動作性にすぐれ、つっぱりやたるみを生じないようにしたものである。そして、整体効果にすぐれており、各種の衣服に応用でき、特に女性用の下着、整体着等に適しているが、その他男女を問わず身体の動作量が大きい作業着、運動着、レジャー用衣服等に適している。」(第1頁左下欄下から10?3行)
(g)
「また、女性のプロポーションを矯正し、乳房や臀部の形崩れを防止するために、従来より各種の下着、整体着が考えられてきている。代表的なものとしてはブラジャー、コルセット、ガードル、ボデイスーツ等がある。」(第1頁右下欄第17行?第2頁左上欄第1行)
(h)
「そこでこの発明にかかる衣服構造は、衣服に伸縮可能な構造となっている部分を設けるとともに、この伸縮部は着用時に人体の筋肉の作用方向と合致して伸縮するように構成し、身体の動きに応じて衣服が伸縮するようにし、しかもこの伸縮部分により身体に無理なく係止されるようにしたものである。
係止とは、衣服を身体に留めることであり、係止形とはその方法である。
係止部とは、衣服と身体の密着度(装着性の具合)の強い部分であり、主に衣服が身体に止まる働きをする場所であり、面積的には広くても狭くてもよい。」(第2頁右下欄第17行?第3頁左上欄第9行)
(i)
「<実施例>
次にこの発明にかかる衣服構造を第1図乃至第6図に基づいて説明する。図面は衣服のうち伸縮構造とする部分を示したものであり、各図とも(a)は正面図、(b)は背面図、(c)は側面図である。なお、このまま衣服として使用してもよく、又この係止形を利用して衣服外形をデザインしてもよい。各図において、・・・8は外腹斜筋と合致している部分であり、・・・10は大臀筋5と合致している部分である。伸縮可能な部分をこのように構成すれば本考案の目的は達成できるのである。」(第3頁左下欄第5?18行)
(j)
「次に伸縮可能な部分の構造について説明すると、この伸縮部は伸縮可能な素材、例えば東洋紡績株式会社製造の商品名「パワーネット」、旭化成株式会社製造の商品名「ロイカ」、東レ・デユポン株式会社製造の商品名「オペロン」等によるパワーネット材又はサテンネット材などを使用し、これを帯状又は所望形状に裁断し、表地と縫い合わせ、または接合、接着すればよい。また、その他の方法としては、伸縮度の違う素材を複数組み合わせて、部分に応じて所望の伸縮度にしてもよいし、また必要に応じて伸縮素材を何枚か重ね合わせてもよい。また、場合によっては、当該部分の織り方、編み方、または刺繍法等を調整するなどして、所望部分に必要な任意の伸縮率や回復率を得て、伸縮可能な構造としてもよい。この方法は着用時に自然であるので特に下着類やパンテイストッキング等には有効である。」(第3頁左下欄第19行?右下欄第15行)
(k)
「<作用>
しかして、このような構造とした衣服を着用(「す」は誤字)して身体を動かすと、筋肉の動きに応じて伸縮可能とした部分も動くことになる。筋肉の位置及びその作用方向と係止形及び伸縮方向を合致させてあるので、身体の動きに衣服の動きが無理なくついていき、しかも常に衣服は身体に安定した状態で係止される。そして、・・・外腹斜筋合致箇所8は伸縮部の前後左右の緊張関係により腹部や脇腹を押さえシェイプアップ効果を、大殿筋合致箇所10は臀部の股間に近い部位の脂肪の付着しやすいところを含め臀部全体を上方に持ち上げようとするヒップアップ効果を、・・・呈す。」(第3頁右下欄第16行?第4頁左上欄第15行)

<4>対比・判断
本願の考案と引用例1記載の考案とを対比すると、いずれもショートガードルに関する考案であり、
引用例1記載の考案の一体に形成された「側腹部片2」と「臀部片3」が、本願考案の「脇部分」に相当し、
「裾部片4,5」が「裾廻り部分」に、
「伸縮性生地」の「素材」(記載b)が「収縮加工糸素材」に、各々相当し、
また、従来のものに比べ広幅で最大幅部分がある(記載e)二つ折りの裾部片4,5により一定の締付力を得られるようにした(記載c)構成は、
本願の考案の「裾廻り部分をその最大幅部分のある広幅とし、面状に緊締される裾充当部片を形成し」た構成に相当すると認められるので、
両者は、
「ガードル本体の裾廻り部分をその最大幅部分のある広幅とし、面状に緊締される裾充当部片を形成したことを特徴とするショートガードル」
の点で一致するが、
本願の考案の
「脇部分と裾廻り部分を形成する側腹部片が、スパンデックス糸を多く編み込んだ伸度を押さえた伸度の小さい伸張特性部分と、伸度の大きい伸張特性部分とに一体的に編別けられた一枚の編物片によって構成されており」、かつ、裾廻り部分の広幅が「その最大幅部分の幅が5乃至9cm」で「裾廻り部分が二重使いでなく平滑で段差を少なくし」た構成(以下、「構成A」という)、
および、収縮加工糸素材が「スパンデックスを含む交編素材、複合素材および収縮加工糸素材」である構成(以下、「構成B」という)を、
引用例1記載の考案は備えておらず、引用例1には上記の構成A,Bを示唆する記載もない。

一方、引用例2には、女性用の下着、整体着等に使用する「伸縮可能な素材」としてロイカ、オペロン等によるパワーネット材が例示されており(記載f、j)、
ロイカやオペロンはポリウレタン糸(スパンデックス)の商標名であり、
また、本出願前の当該技術分野において、ポリウレタン糸はその性質上、100%使いの製品はなく、他の糸の中に用途によって5?30%まで混ぜて利用されており、特にポリウレタン糸を中心にその周囲をナイロン糸などで被覆した糸(カバリング糸)から作られたパワーネットは、ガードル等のファンデーションに用いられ、強い圧迫感がなく、それでいてボデイにフィットする製品であることが周知である(必要であれば「化学せんい」日本化学繊維協会発行(平成元年11月発行)第24頁 参照)ことを勘案すれば、
引用例2には、ガードル等の「伸縮可能な素材」として「スパンデックス」を含む素材を使用することが開示され、構成Bに関する記載があるということができる。
しかしながら、構成Aについてみると、引用例2には「伸縮可能な部分の構造について・・・場合によっては、当該部分の織り方、編み方、刺繍法等を調整するなどして、所望部分に必要な任意の伸縮率や回復率を得て、伸縮可能な構造としてもよい。」(記載j)という記載はあるものの、これは「伸縮率」「回復率」「伸縮可能な構造」に関する記載であって、構成Aにいう「伸度の小さい伸張特性部分と伸度の大きい伸張特性部分」についての開示ではない。

結局、引用例1および2には、構成Aについては記載されてなく、示唆もされていない。

そして、本願の考案は、上記構成Aにより、
「ガードル本体1の側腹部片3に於ける裾充当部片5を広幅面状となすと共に、該部片5を他の部位より伸度の小さい伸張特性部分に構成したので、身体の大腿部廻りに当接される裾充当部片5が、広幅面状の基に均等化して体表面に圧接されるため、裾廻りの締付けによる苦痛感、ずり上がり、喰い込み感がなく、鼠径線に局部的な圧迫をも解消し得るものとなる。
【0013】
ガードル本体1の裾廻り部分が一枚もののフラットな外観を呈し、段差による稜線がタイトな被服外観に露呈せず、美麗なヒップシルエットを醸し出すものとなる。
【0014】
臀部下方にも裾充当部片5が広幅に配設されるため、下垂した臀部を面状に持ち上げて、ヒップアップ効果が出現し、二重使いでないにも拘わらず、二重使いと同等の作用効果が生ずるものとなる。」(欄【0012】?【0014】)、
という効果を奏するものである。

そうしてみると、本願の考案は、引用例1および2に記載のものから当業者がきわめて容易に想到することができたと言うことはできない。

<5>むすび
したがって、本願の請求項1に係る考案は、引用例1および2に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたとは言えず、実用新案法第3条2項の規定により拒絶することはできない。

さらに、前審における異議申立ての証拠として提出された他の文献(特開昭51ー68343号公報;実公昭47ー9946号公報)においても、上記構成Aは記載されてなく、示唆もされていないから、当業者がきわめて容易に考案をすることができたと言うことはできない。

また、他に拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論の通りに決定する。
審決日 2000-02-22 
出願番号 実願平4-65788 
審決分類 U 1 8・ 121- WY (A41C)
最終処分 成立    
前審関与審査官 鈴木 美知子真々田 忠博植前 津子  
特許庁審判長 佐藤 雪枝
特許庁審判官 船越 巧子
西村 綾子
考案の名称 ショートガードル  
代理人 池内 寛幸  
代理人 佐藤 公博  
代理人 松本 直己  

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