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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01P
管理番号 1012718
審判番号 審判1998-16994  
総通号数 10 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2000-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-10-22 
確定日 2000-03-08 
事件の表示 平成8年実用新案登録願第4829号「ラジエータ装置」拒絶査定に対する審判事件(平成9年5月20日出願公開、実開平9-289)について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1.手続の経緯・本件考案
本願は、昭和62年8月27日に出願した実願昭62-131303号の一部を、平成5年改正前実用新案法第9条第1項において準用する平成5年改正前特許法第44条第1項の規定により、平成8年4月22日に分割して新たな実用新案登録出願としたものであって、その請求項1に係る考案(以下、「本件請求項1に係る考案」という)は、明細書及び図面の記載からみて、次のとおりのものと認める。
「定地的に使用する建設・作業機械に搭載の水冷式エンジンの冷却水用ラジエータと油圧作動装置用オイルクーラとを並立させて配置させた強制通風式のラジエータ装置において、
上記冷却水用ラジエータの下辺と上記油圧作動装置用オイルクーラの下辺とに固着されてこれらを連結するとともに、上記冷却水用ラジエータに対して上記油圧作動装置用オイルクーラを所定角度だけ回動可能とし、該所定角度だけ回動した開口状態で上記油圧作動装置用オイルクーラを保持する軸部材と、
上記冷却水用ラジエータと上記油圧作動装置用オイルクーラに亘ってこれらの両側部の上方よりに設けられ、上記冷却水用ラジエータと上記油圧作動装置用オイルクーラの閉口状態を保持可能な連結装置とを有することを特徴とするラジエータ装置。」
なお、請求項1には、「上記油圧作動装置用オイルクーラの開口状態を保持可能な連結装置」と記載されているが、該記載中の「開口状態」という記載は、考案の詳細な説明の記載及び図面、並びに、平成11年7月27日付手続き補正前の請求項1の記載からみて、「閉口状態」の明らかな誤記と認められるから、本件の請求項1に係る考案を上記のように認定した。
2.引用例
これに対し、当審が平成11年5月14日付けで通知した拒絶理由通知(平成11年6月1日発送)で提示した実願昭51-41584号の明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフイルム(実開昭52-133419号公報)(以下、「引用例1」という)及び実願昭52-102427号の明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム(実開昭54-31755号公報)(以下、「引用例2」という)には、それぞれ、以下の事項が記載されている。
(ア)引用例1
第1頁第5行?同第10行には「ラジエータ1に着脱可能に固定されたミッションオイルクーラ3の下部にアーム10を固設し、アーム10を車体側に傾動可能に連結し、車体側に傾動したミッションオイルクーラ3を支えるストッパ14を設けたことを特徴とする建設車両のミッションオイルクーラ支持装置。」(実用新案登録請求の範囲)と記載され、
第1頁第18行?第2頁第13行には「図面中1は建設車両のラジエータであり、このラジエータ1はラジエータガード2に固設されている。3はミッションオイルクーラである。このミッションオイルクーラ3は、上側支持体4と下側支持体5とに管体6を蛇行させて取付け、管体6に多数のフィン7が植設したものである。上・下側支持体4,5の両端部には取付座8が突設してあり、ミッションオイルクーラ3は取付座8をボルト9でラジエータ1に取付けてある。
ミッションオイルクーラ3の下側支持体5にはアーム10が固設してあり、また、車体11にはブラケット12が固設してあり、ブラケット12にアーム10がピン13で取付けてある。また、車体11にはストッパ14が固設してある。」と記載され、
第3頁第8行?同第12行には「ミッションオイルクーラ3をラジエータ1より外して、このミッションオイルクーラ3をストッパ14により傾動状態で保持することができるので、ラジエータ1のコアの清掃が容易になる」と記載されている。
上記記載及び第1乃至3図等も合わせてみると、引用例1には、「建設車輌のラジエータとミッシヨンオイルクーラとを並立させて配置したラジエータ装置において、ラジエータに対して、上記オイルクーラの下方を軸としてオイルクーラを回動可能とするピンと、所定角度だけ回動した状態でオイルクーラを保持するストッパと、オイルクーラの両側部上方に設けられラジエータとオイルクーラの閉口状態を保持可能なボルトを有する建設車両のラジエータ装置」が記載されているものと認める。
(イ)引用例2
第1頁第6行?同第13行には「農機のエンジン1のラジエータ4の背方にラジエータフアン5を配置し、このラジエータ4の前側にオイルクーラ6を配置し、ラジエータ4の片方の横側部に設けたヒンジ9でオイルクーラ6の片方の横側部を水平揺動可能に支持させ、オイルクーラ6の他方の横側部をラジエータ4の他方の横側部に固定する固定装置10を他方の両横側部に亘って設け」(実用新案登録請求の範囲)と記載され、
第2頁第15行?第4頁第5行には「図面は農用油圧ミッション式トラクタを示す。これは、エンジン1の動力を、油圧ミッション2で無段変速して、駆動車輪3に伝達するものである。エンジン1の前側にラジエータ4が配置される。このラジエータ4の背面にラジエータファン5が配置され、その前面に防塵網4aが張られる。この防塵網4aの前側にオイルクーラ6が配置され、このオイルクーラ6の前面に防塵網6aが張られる。オイルクーラ6は油圧ミッション2の作動油兼トラクタの潤滑油を冷却するものである。エンジン1・ラジエータ4・ラジエータファン5及びオイルクーラ6はボンネット7内に収容される。このボンネット7は、その前下部の支点8の回りに跳上げ開放した状態では、それらの機器1・4・5・6が外部に露出する。
ラジエータ4の左側面の前部に上下一対の蝶番9が固着される。オイルクーラ6の左側面の後部が両蝶番9に固定支持される。これにより、オイルクーラ6がラジエータ4に、蝶番9を介して、扉のように左方に開閉揺動可能に支持される。
符号10は固定装置であり、これはオイルクーラ6の右側面をラジエータ4の右側面に固定するものであり、その両者間に亘って設けられる。即ち、ラジエータ4の右側面の中間高さ部に二又状に受金具11が固着される。これと同じ高さで、オイルクーラ6の右側面にボルト12が水平揺動可能に枢支され、このボルト12を受金具11に横から嵌め込んで、ボルト12に螺締する蝶ナット13で受金具11を締付けることにより、オイルクーラ6の右側面がラジエータ4の右側面に固定されるように構成される。」と記載されている。
上記記載及び第1乃至3図等も合わせてみると、引用例2には、「農機のエンジンのラジエータとオイルクーラの構造において、ラジエータとオイルクーラとを並立させて配置させるとともに、ラジエータに対して、オイルクーラの外周四辺の一辺を軸として回動可能とするようヒンジ止めするとともに、オイルクーラの上方にラジエータとオイルクーラとの閉口状態を保持可能な連結装置が設けられた強制通風式のラジエータ装置」が記載されているものと認める。
3.対比・判断
本件請求項1に係る考案と引用例1に記載されたものとを比較すると、引用例1に記載されたもののエンジンは、水冷式エンジンの記載はないものの、引用例1に記載されたものはラジエータを有することから水冷式エンジンであることは明らかであり、また、ラジエータにおいて強制通風式ラジエータは引用例2にも見られるように通常用いられるものであり、さらに、引用例1に記載されたものの「ボルト」は本件考案の「連結装置」に相当するものであるから、両者は、「水冷式エンジンの冷却水用ラジエータとオイルクーラとを並立させて配置させた強制通風式のラジエータ装置において、上記冷却水用ラジエータに対して上記オイルクーラを所定角度だけ回動可能とし、該所定角度だけ回動した開口状態で上記油圧作動装置用オイルクーラを保持する部材と、上記冷却水用ラジエータと上記油圧作動装置用オイルクーラの閉口状態を保持可能な連結装置とを有するラジエータ装置。」という点で一致するものの、以下の点で相違する。
(a)本件請求項1に係る考案が「定地的に使用する建設・作業機械に搭載のラジエータ装置」であるに対し、引用例1に記載されたものが、「建設車両のラジエータ装置」であり、この建設車両が定地的に使用する建設・作業機械と特定されていない点、
(b)本件請求項1に係る考案が「油圧作動装置用オイルクーラ」であるのに対し、引用例1に記載されたものが、「ミッションオイルクーラ」である点、
(c)本件請求項1に係る考案が「冷却水用ラジエータの下辺と油圧作動装置用オイルクーラの下辺とに固着されてこれらを連結するとともに、上記冷却水用ラジエータに対して上記油圧作動装置用オイルクーラを所定角度だけ回動可能とし、該所定角度だけ回動した開口状態で上記油圧作動装置用オイルクーラを保持する軸部材を有する」のに対し、引用例1に記載されたものが、「ラジエータに対して、上記オイルクーラの下方を軸としてオイルクーラを回動可能とするピンと、所定角度だけ回動した状態でオイルクーラを保持するストッパとを有する」点、
(d)本件請求項1に係る考案が「冷却水用ラジエータと油圧作動装置用オイルクーラに亘ってこれらの両側部の上方よりに設けられ、上記冷却水用ラジエータと上記油圧作動装置用オイルクーラの閉口状態を保持可能な連結装置を有する」のに対し、引用例1に記載されたものが、「オイルクーラの両側部上方に設けられラジエータとオイルクーラの閉口状態を保持可能なボルトを有する」点でそれぞれ相違する。
以下、上記各相違点について検討する。
上記(a)の相違点について、定置的に使用する建設・作業機械は例を掲げるまでもなく周知であり、また、これらの機械がエンジンやそのラジエータ装置、油圧作動装置及びオイルクーラを有することは周知の技術にすぎず、さらに、引用例1に記載された建設機械も、定置的に使用する建設・作業機械も、建設機械という同じ技術分野に属する以上、上記相違点(a)の本件請求項1に係る考案の構成は、引用例1に記載されたものを上記周知の定置的に使用する建設・作業機械に適用したにすぎず、当業者がきわめて容易に想到し得る事項と認められる。
上記(b)の相違点について、作業機械の技術において、油圧作動装置用オイルクーラとラジエータとを並立させて配置する技術は従来周知の技術(例えば、実願昭51-155257号の明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム(実開昭53-72031号公報)、実願昭54-72140号の明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム(実開昭55-172623号公報)等参照)である点を考慮すると、上記相違点(b)の本件請求項1に係る考案の構成は、引用例1に記載されたミッションオイルクーラを単に油圧作動装置用オイルクーラに替えたものにすぎず、当業者がきわめて容易に想到し得る事項と認められる。
上記(c)の相違点について、ラジエータとオイルクーラとを並立させて配置させるとともに、ラジエータに対して、オイルクーラの外周四辺の一辺を軸として回動可能とするようヒンジ止めする点は引用例2に記載されており、また、一般に、2部材を回動可能に固着する軸部材において、その回動範囲を規制する技術は周知技術(例えば、実願昭59-51052号の明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム(実開昭60-162667号公報)、特開昭61-53976号公報、実願昭59-135993号の明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム(実開昭61-52061号公報)等参照)にすぎないから、上記相違点(c)の本件請求項1に係る考案の構成は、引用例1に記載されたものに、引用例2に記載された、ラジエータに対しオイルクーラの一辺で回動可能に保持する軸部材の技術と、上記周知技術を適用することにより、当業者がきわめて容易に想到し得る事項と認められる。
上記(d)の相違点について、冷却水用ラジエータと油圧作動装置用オイルクーラとを閉口状態に保持可能にする連結装置を設ける際、その保持状態を確実に維持できる位置に設けることは当業者が普通に考慮する設計的事項にすぎず、上記相違点(d)の本件請求項1に係る考案の構成は、当業者がきわめて容易に想到し得る事項と認められる。
そして、本件考案の作用効果も、上記引用例1,2に記載されたもの及び上記各周知技術から予測しうる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものとも認められない。
4.むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1に係る考案は、上記引用例1及び引用例2に記載された考案及び周知技術に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1999-12-08 
結審通知日 1999-12-21 
審決日 1999-12-27 
出願番号 実願平8-4829 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (F01P)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 飯塚 直樹大河原 裕  
特許庁審判長 藤田 豊比古
特許庁審判官 山口 直
林 晴男
考案の名称 ラジエータ装置  

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