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審決分類 審判 全部申し立て   B65D
管理番号 1012742
異議申立番号 異議1998-72414  
総通号数 10 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-10-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-05-11 
確定日 1998-02-25 
異議申立件数
事件の表示 実用新案登録第2554840号「電子部品包装用導電性キャリアテープ」の請求項1ないし3に係る実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 実用新案登録第2554840号の請求項1ないし3に係る実用新案登録を取り消す。
理由 (1)手続きの経緯
本件実用新案登録第2554840号考案は、平成4年5月25日に出願され、平成9年8月1日にその実用新案登録の設定登録がなされ、その後、野瀬博子より実用新案登録異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年1月18日に訂正請求がなされ、訂正拒絶理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年4月23日付け手続補正書により補正がなされたものである。
(2)訂正の適否についての判断
(i)訂正明細書の実用新案登録請求の範囲に記載される考案
平成11年1月18日付けで提出された訂正明細書の実用新案登録請求の範囲に記載される考案は、平成11年4月23日付け手続補正書に添付された全文訂正明細書の実用新案登録請求の範囲に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「プラスチックのテープに電子部品を収納するための収納ポケットが設けられたプラスチックキャリアテープであって、上記収納ポケットを有するキャリアテープは、少なくとも片面に、プラスチックシートの伸びに追随し、光散乱の損失が生じ難いπ電子共役系導電性ポリマー層を有するプラスチックシートが、熱プレス成形、真空成形、圧空成形または圧空-真空成形によって成形加工されて形成されたものであり、該キャリアテープの表面抵抗率が10^(2)?10^(9)Ω/□で、収納ポケット部の表面抵抗率を10^(9)Ω/□以下、カバーテープを貼着する平面部の表面抵抗率を10^(6)Ω/□以下とし、収納ポケット部と平面部の表面抵抗率の差が10^(3)オーダー以内として、且つ可視光線透過率が40%以上であることを特徴とする電子部品包装用導電性キャリアテープ。」
(ii)引用刊行物記載の考案
訂正明細書に係る考案に対し、当審が平成11年2月15日付け訂正拒絶理由通知において示した刊行物1(特公平3-76010号公報)には、「一定間隔を保持して収納凹部を形成したベーステープと、該収納凹部に電子部品を収納した後シールするためのカバーテープとを備えた電子部品様キャリヤーテープにおいて、少なくとも該ベーステープに透光性の平板状物質の表面を導電性物質で被膜してなる導電性素材を主成分とする導電層を設けたことを特徴とする電子部品用キャリヤーテープ。」(特許請求の範囲)、「この発明は、上記の欠点を除去するもので、キャリヤテープの中身である電子部品が透視できると同時に、静電気から電子部品を保護するのに十分な、導電性を有する電子部品用キャリヤーテープを提供するものである。」(第2頁第3欄第2?6行)、「また、導電層は透光性の平板状物質の表面を導電性物質で被覆してなる導電性素材を結着剤樹脂に分散した塗液を透明プラスチックフィルムに塗布することにより得られる。」(第2頁第4欄第5?8行、)、「又、ベーステープに導電層を設けるに際しその塗布面はベーステープの片面のみに設けても効果があるが、好ましくは両面に塗布量5g/m^(2)(片面につき)を目標に設けるとよい。このような導電層を設けることにより表面抵抗が10^(8)Ω以下に保持され本発明に所望の導電性が付与される。」(第3頁第5欄第17?22行)と記載されている。また、実施例1?3には、その全ての実施例において、その全光線透過率が85%以上であることが開示されている。
刊行物2(特開昭59-18726号公報)、
刊行物3(特開昭63-39916号公報)及び刊行物4(特開昭63-65093号公報)には、π電子共役系導電性ポリマーが開示されている。
刊行物5(特開昭63-218081号公報)には、「表面固有抵抗値が10^(4)?10^(6)Ω/□、かつ、波長550nmにおける光線透過率が50%以上であることを特徴とする導電性容器。」(特許請求の範囲)、「電子機器製品が高度化、精密化するに伴ない、集積回路(IC)や大規模集積回路(LSI)等が利用される様になったが、これらは微量の静電気により静電気破壊を起しやすい。従来、この種のトラブルを防止する目的で、導電性を有する容器(トレー等)にICやLSI等を入れ、輸送、搬送する方法がとられていた。」(第1頁左下欄第13?19行)、「具体的には、透明なプラスチック容器の内側に塗工した塩化第二鉄触媒を含有したバインダー層上に、ポリピロール層を形成させたことを特徴としたものである。透明なプラスチック容器(トレー等)としては、硬質塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエステル等の樹脂より成るものである。トレー等容器の成型方法については、プラスチックシートからの真空成形、圧空成形、真空圧空成形などがあり、これらの成型方法をとる場合には、あらかじめ上述のプラスチックシートに、塩化第二鉄を触媒として含有するバインダー樹脂を、通常のグラビアコート、ロールコート、ブレードコートなどで塗工しておき、ピロールの気相中に放置したポリピロール層を形成させる。その後、上述の成型方法により容器を成形する。また、塩化第二鉄等の触媒を含むバインダー樹脂を塗工したプラスチックシートを上述の成型方法により容器に成形後、ピロールの気相中に放置してポリピロール層を形成させることでも表面抵抗値10^(4)?10^(6)Ω/□、光線透過率50%以上の導電性容器を得ることができる。」(第2頁左上欄第14行?同頁右上欄第14行)と記載されている。
(iii)対比・判断
本件訂正後の実用新案登録請求の範囲に記載される考案(以下「本件訂正考案」という。)と、刊行物1に記載される考案(以下「引用考案」という。)とを比較すると、引用考案における「収納凹部」、「ベーステープ」が、本件訂正考案における「収納ポケット」、「プラスチックキャリアテープ」に相当することは明白である。また、引用考案における導電層は、収納凹部を形成したベーステープの片面又は両面に形成されていることから、本件訂正考案における収納ポケットを有するキャリアテープの少なくとも片面に形成される導電性層に相当することも明白である。したがって、両者は、プラスチックのテープに電子部品を収納するための収納ポケットが設けられたプラスチックキャリアであって、上記収納ポケットを有するキャリアテープは、少なくとも片面に、導電性層を有し、該キャリアテープの表面抵抗率が10^(8)Ω/□以下で、且つ可視光線透過率が85%以上である点で一致し、(1)導電性層に関し、本件訂正考案は、プラスチックシートの伸びに追随し、光散乱の損失が生じ難いπ電子共役系導電性ポリマー層であるのに対して、引用考案は、透光性の平板状物質の表面を導電性物質で被覆してなる導電性素材を主成分とする導電層である点、(2)キャリアテープの成形方法に関し、本件訂正考案は、π電子共役系導電性ポリマー層を有するプラスチックシートが、熱プレート成形、真空成形、圧空成形または圧空-真空成形(「型」は「形」の誤記と認められる。)によって成形加工されて形成されたものであるのに対して、引用考案は、導電層を形成されたベーステープ原反が、テープ状にスリット加工され、さらにエンボス加工による収納凹部の形成およびスプロケット加工によるテープ送り孔の穿孔により形成されている点、(3)本件訂正考案は、収納ポケット部の表面抵抗率を10^(9)Ω/□以下、カバーテープを貼着する平面部の表面抵抗率を10^(6)Ω/□以下とし、収納ポケット部と平面部の表面抵抗率の差が10^(3)オーダー以内としているのに対して、引用考案は、この構成について何等記載されていない点で相違する。
上記相違点について検討する。相違点(1)、(2)については、刊行物2乃至4に開示されるように、π電子共役系導電性ポリマーは、本件出願前周知のものであり、また、この種の導電性ポリマー層を有するプラスチックシートを熱プレート成形、真空成形、圧空成形または圧空-真空成形によって容器等に成形加工することは、刊行物5に開示されている。してみれば、引用考案において、導電性物質としてπ電子共役系導電性ポリマーを採用し、成形方法として熱プレート成形、真空成形、圧空成形または圧空-真空成形のいずれかを採用することは、当業者であればきわめて容易に想到し得るものと認められる。本件訂正考案において、π電子共役系導電性ポリマーにつき、プラスチックシートの伸びに追随し、光散乱の損失が生じ難いポリマーであるとしているが、このプラスチックシートの伸びに追随し、光散乱の損失が生じ難いとする点は、本来π電子共役系導電性ポリマーが備える物性にすぎず、これを限定した点に格別のものは認められない。
次に、相違点(3)については、引用発明においても、発生する静電気から電子部品を保護するために、ベーステープの表面抵抗を10^(8)Ω以下にすることが開示されており、さらに刊行物5にも、同様のことを目的としてプラスチックシートの表面抵抗値を10^(4)?10^(6)Ω/□とすることが開示されている。これら公知の数値を勘案しつつ、本件訂正考案のように、収納ポケット部の表面抵抗率を10^(9)Ω/□以下とし、静電気の発生率の高い部分であるカバーテープを貼着する平面部を10^(6)Ω/□以下とすることは、当業者であれば実験等によりきわめて容易に予測し得るものと認められる。このとき、収納ポケット部と平面部の表面抵抗率の差を、10^(3)オーダー以内とすることも、本来これらの間に差のないことが望ましいことは、当業者であれば技術常識からみても当然に予想できることである。したがって、仮に、成形上、収納ポケット部と平面部との間に表面抵抗率に差ができることが必然であるとしても、収納ポケット部と平面部の表面抵抗率の差につき、このように数値限定した点も、実験等により、当業者であればきわめて容易に予測し得るものと認められる。
そしてその奏する作用効果も、引用考案および刊行物2乃至5に記載される考案の作用効果から予測し得る範囲を越えるものとも認められない。
よって、本件訂正考案は、刊行物1乃至5に記載された考案から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができない。
(iv)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、平成6年法律第116号附則第9条第2項の規定により準用される、同附則第10条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項の規定によりさらに準用される特許法第126条第4項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。
(3)実用新案登録異議の申立についての判断
(i)本件考案
実用新案登録第2554840号の考案は、その登録明細書の実用新案登録請求の範囲に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】プラスチックのテープに電子部品を収納するための収納ポケットが設けられたプラスチックキャリアテープであって、上記収納ポケットを有するキャリアテープは、少なくとも片面にπ電子共役系導電性ポリマー層を有するプラスチックシートが成形加工されて形成されたものであり、該キャリアテープの表面抵抗率が10^(2)?10^(9)Ω/□で、且つ可視光線透過率が40%以上であることを特徴とする電子部品包装用導電性キャリアテープ。
【請求項2】収納ポケット部の表面抵抗率を10^(9)Ω/□以下、カバーテープを貼着する平面部の表面抵抗率を10^(6)Ω/□以下とした請求項1記載の電子部品包装用導電性キャリアテープ。
【請求項3】収納ポケット部と平面部の表面抵抗率の差を、10^(3)オーダー以内とした請求項1又は2記載の電子部品包装用導電性キャリアテープ。」
(ii)引用刊行物
当審が通知した平成10年10月30日付け取消理由に引用した刊行物1乃至4の記載事項については、上記(2)(ii)の刊行物1乃至4に記載されたとおりであるので省略する。
(iii)対比・判断
▲1▼本件請求項1に係る考案(以下「本件第1考案」という。)に関して;
本件第1考案と上記刊行物1に記載された考案(以下「引用考案」という。)とを対比すると、引用考案における「収納凹部」、「ベーステープ」が、本件第1考案における「収納ポケット」、「プラスチックキャリアテープ」に相当することは明白である。また、引用考案における導電層は、収納凹部を形成したベーステープの片面又は両面に形成されていることから、本件第1考案における収納ポケットを有するキャリアテープの少なくとも片面に形成される導電性層に相当することも明白である。したがって、両者は、プラスチックのテープに電子部品を収納するための収納ポケットが設けられたプラスチックキャリアであって、上記収納ポケットを有するキャリアテープは、少なくとも片面に、導電性層を有し、該キャリアテープの表面抵抗率が10^(8)Ω/□以下で、且つ可視光線透過率が85%以上である点で一致し、導電性層に関し、本件第1考案は、π電子共役系導電性ポリマー層であるのに対して、引用考案は、透光性の平板状物質の表面を導電性物質で被覆してなる導電性素材を主成分とする導電層である点で相違する。
上記相違点について検討する。刊行物2乃至4に記載されているように、π電子共役系導電性ポリマーは、本件出願前周知のものであり、該ポリマーが帯電防止用に適していることも知られているのであるから、引用考案の導電性層に代えて、上記周知のπ電子共役系導電性ポリマーを採用して、本件第1考案のように構成することは、当業者にとって格別困難性あるものとは認められない。また、その奏する作用効果にも、格別のものは認められない。
▲2▼請求項2に係る考案に関して;
本件請求項2に係る考案は、本件第1考案において、収納ポケット部の表面抵抗率を10^(9)Ω/□以下とし、カバーテープを貼着する平面部の表面抵抗率を10^(6)Ω/□とした電子部品包装用導電性キャリアテープである。しかしながら、静電気の発生率が高い部分をより導電性の良い表面抵抗率とすることは、当業者であれば当然に予測し得る技術常識であり、引用考案に開示される数値を勘案しつつ、本件請求項2に係る考案のように数値を限定することは、当業者であれば、実験等によりきわめて容易に想到し得るものと認められる。
▲3▼請求項3に係る考案に関して;
本件請求項3に係る考案は、本件第1考案および本件請求項2に係る考案において、収納ポケット部と平面部の表面抵抗率の差を、10^(3)オーダー以内とした電子部品包装用導電性キャリアテープである。しかしながら、収納ポケット部と平面部の表面抵抗率との間に差のないことが本来望ましいことは、当業者であれば、技術常識からみて、当然に予想できることであるから、仮に、成形上、収納ポケット部と平面部との間に表面抵抗率に差ができることが必然であるとしても、収納ポケット部と平面部の表面抵抗率の差につき、このように数値限定した点も、当業者であれば、実験等によりきわめて容易に予測し得るものと認められる。
(iv)むすび
以上のとおりであるから、本件考案は刊行物1乃至4に記載された考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められるから、本件登録実用新案は実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものである。すなわち、本件考案の実用新案登録は、拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものと認める。
したがって、本件実用新案登録は、平成6年法律第116号附則第9条第7項及び第14条の規定に基づく、平成7年政令第205号第3条第1項及び第2項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 1999-12-22 
出願番号 実願平4-41499 
審決分類 U 1 651・ 121- ZB (B65D)
最終処分 取消    
前審関与審査官 佐野 遵  
特許庁審判長 佐藤 久容
特許庁審判官 船越 巧子
西村 綾子
登録日 1997-08-01 
登録番号 実用登録第2554840号(U2554840) 
権利者 アキレス株式会社
東京都新宿区大京町22番地の5
考案の名称 電子部品包装用導電性キャリアテープ  

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