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審決分類 審判 全部申し立て   A63F
管理番号 1012743
異議申立番号 異議1998-74138  
総通号数 10 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-10-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-08-19 
確定日 2000-01-04 
異議申立件数
事件の表示 実用新案登録第2564001号「パチンコ機」の実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 実用新案登録第2564001号の実用新案登録を取り消す。
理由 (1)手続きの経緯
本件実用新案登録第2564001号考案は、昭和60年3月28日に出願した実願昭60-45679号の一部を平成1年9月4日に新たな実用新案登録出願としたものであって、平成9年11月21日にその実用新案登録の設定登録がなされ、その後、済藤隆義より実用新案登録異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年1月18日に訂正請求がなされ、訂正拒絶理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年4月20日付け手続補正書により補正がなされたものである。
(2)訂正の適否についての判断
(i)訂正明細書の実用新案登録請求の範囲に記載される考案
平成11年1月18日付けで提出された訂正明細書の実用新案登録請求の範囲に記載される考案は、平成11年4月20日付け手続補正書に添付された全文訂正明細書の実用新案登録請求の範囲に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「遊技領域の外周辺に飾り枠を備えた遊技盤をパチンコ機本体に着脱自在に取り付けたパチンコ機において、
下方部が開放され且つその外周辺縁が前記遊技盤の外周辺縁から外側に突出しない飾り枠に、遊技領域ヘパチンコ球を誘導する誘導レールを固着して一体化し、前記飾り枠を前方から取着する取着手段によって前記遊技盤の表面に取着したときに飾り枠に固着された誘導レールと遊技盤の表面に植立された区画レールとによってパチンコ球が走行して遊技領域に到達するようにしたことを特徴とするパチンコ機。」
(ii)引用刊行物記載の考案
訂正明細書に係る考案に対し、当審が平成11年2月4日付け訂正拒絶理由通知において示した刊行物1(実公昭55-15882号公報)には、「遊技盤をパチンコ機の前枠に着脱自在に取付ける分離式パチンコ機において、前記遊技盤の前面を覆う機構枠本体の裏側端縁部に鍔縁を一体に突出形成し、該鍔縁の内側に前記遊技盤を着脱自在に嵌合し、前記機構枠本体に、遊技盤の遊技面を現す開口と該遊技面への打球誘導通路を現す開口とを連続させて設け、更に、レール取付具、不正防止壁などの部材を前記機構枠本体に設けたことを特徴とする分離式パチンコ機の機構枠。」(実用新案登録請求の範囲)、「第1図は、遊技盤の盤面に装着する本案の機構枠本体1を示すものである。該機構枠本体1は、盤面中央に、第3図に示す遊技盤2の遊技面を臨ませる開口3と打球誘導通路を現す開口12とが連続してあけられ、両開口3、12の開口縁に沿ってその表面に突出する遊技面のふちどりとなるレールの取付部4A及び遊技面に打球を導入させるレールの取付部4B更に上縁及び両縁にわたって突出する不正防止壁5並びに装飾板取付けのための留具6及び支持縁7を設け、又本体1の端縁より裏面に突出して遊技盤2に係止させる鍔縁8を設け、これらを合成樹脂で一体成形したものである。・・・第2図は機構枠本体1に着脱可能な飾り板9を取付けた状態を示すものである。・・・又この機構枠本体1の鍔縁8に遊技盤2を嵌合させて一体に組合せ、これを図示を略すパチンコ機の前枠に装着するのであるが、これに先立ち、機構枠1の裏面側から開口3、12を通して、前記レールの取付具4A、4Bにレール11をその頂部を押さえてはめこみ、レール11の端縁に突設した耳部11Aを取付具4A、4Bの上面に開口した透溝4C内に係止してレール11を保持させるものである。」(第2頁第3欄第5?31行、第1?4図)、「▲1▼・・・本考案は特に、遊技盤と機構枠本体とを着脱自在に嵌合させて両者を一体物とするから、両者と同時に前枠から取外すことができる。従って、汚損等により遊技盤を取替える際には、前記両者を同時に前枠から取外した後、該両者を互いに分離させ、機構枠本体の打球誘導面等汚損個所を容易に清掃することができ、遊技盤の改装と機構枠の清掃とを能率良く行うことができるようになる。
しかも、機構枠本体の裏側に突出形成した鍔縁の内側に遊技盤を嵌合させるから、両者の位置決めを正確かつ容易に行うことができる。
▲2▼分離式パチンコ機の遊技盤の構造を簡略化してコストダウンを図ることができる。
▲3▼不正防止壁、レールその他の部材の単品を遊技盤に取付ける場合に比して、これらの部材を機構盤に一体に設けるため、組立ての工数を低減できる。
▲4▼又機構枠に各種部材を一体に設けるため組立て寸法のばらつきがなく、規格製品として品質の均一化、品質の向上を図ることができる。
▲5▼機構枠本体に、遊技盤の遊技面を現す開口と打球誘導通路を現す開口とを連続させて設けるから、両開口に遊技盤の同一盤面が現れることとなり、打球誘導路と遊技面とを継目の全くない同一平面とすることができる。従って、継目部に段差が生じて打球の障害となる虞や、外観上の不具合を回避することができる。」(第2頁第3欄第39行?同頁第4欄第29行)と記載されている。
刊行物2(特開昭52-68538号公報)には、「パチンコ機の遊技盤を中央遊技部で円形に裁断して遊技部板と遊技基板の二部材に分離形成し、遊技基盤をパチンコ機の内枠裏面に固定して表面に打球発射レールとこれに連なる誘導レールを固設すると共に遊技部板の外周縁には誘導レールと連なる外レール及び内レールを備えた縁枠を取り付けして、この遊技部板を遊技基盤に対して交換自在に取着したことを特徴とするパチンコ機用遊技盤。」(特許請求の範囲)、「その目的とするところは遊技盤のうち実質的に交換を必要とする遊技部のみを交換するようになしてより経済的効果を増大すると共に打球誘導用レールの敷設作業の簡略化を図るようになしたものである。」(第2頁左上欄第7?11行)、「本発明の要旨とする点は、遊技盤9の中央部を円形に裁断して遊技部板9aと遊技基盤9bの二部材に分離形成し、遊技基盤9bに対して遊戯部板9aを交換自在に取付ける様になしたことにある。
本実施例によれば、内枠2に取付けられる遊技基盤9bには打球発射レール10とこれに連なる誘導レール11が設けられ、また遊技部板9aには外周縁に沿って合成樹脂の一体成形で形成される縁枠12が取付けられる。この縁枠12は第5図に示すように遊技部板9aの外周縁を囲繞する周片12aとこの周片12a上縁を上方に延長して遊技基盤9bの誘導レール11と連なる外レール12b及び内レール12cを形成し、この内外両面には遊技部板9aと遊技基盤9bの境界を表面で隠蔽するように飾り片12dを庇状に突設して構成される。尚縁枠12は周片12aを遊技部板9aの外周縁に沿わせて当てがい適当間隔でビス13´を螺締して遊技部板9aと一体に固着する。
而して遊技基盤9bに設けられている誘導レール11の先端は縁枠12の飾り片12dに切り欠きされた溝12eに嵌め合わされ外レール12bの始端内面に重合して一連に連なり、この状態で遊技部板9aは裏面で適宜締付金具によって遊技基盤9bに対して着脱自在に固定される。また誘導レール11と内レール12c間の飛送路表面は飾り片12dで覆われ、この飾り片12d表面と同一平面で連なるように遊技基盤9bの発射レール10に沿って当片13を張設して、打球の飛送に支障が生じないように保証されている。」(第2頁右上欄第5行?同頁左下欄第14行、第1?6図)と記載されている。
(iii)対比・判断
本件訂正後の実用新案登録請求の範囲に記載される考案(以下「本件訂正考案」という。)と、刊行物1に記載される考案(以下「引用考案」という。)とを比較すると、引用考案における機構枠本体1は、パチンコ機の前枠に着脱自在に取付けられていること、飾り板9が留具6を介して取付けられるように構成されていることから見て、本件訂正考案の飾り枠に相当することは明白である。また、引用考案におけるレールの取付具4A、4Bに係止されたレール11が、本件訂正考案における誘導レール、区画レールに相当することも明白である。さらに、引用考案における鍔縁8は、機構枠本体1を遊技盤2に嵌合させて一体に組合せるためのものであることから、引用考案における鍔縁8を設けることは、本件訂正考案における飾り枠を遊技盤の表面に取着することに相当することも明白である。してみれば、両者は、遊技領域の外周辺に飾り枠を備えた遊技盤をパチンコ機本体に着脱自在に取り付けたパチンコ機において、下方部が開放された飾り枠にパチンコ球を誘導するレールを固着して一体化し、飾り枠を遊技盤の表面に取着したときにパチンコ球が走行して遊技領域に到達するようにしたパチンコ機である点で一致し、(1)飾り枠に関し、本件訂正考案が、飾り枠の外周辺縁が遊技盤の外周辺縁から外側に突出していないのに対して、引用考案は、飾り枠の外周辺縁に鍔縁8が形成されている(すなわち、鍔縁8分だけ遊技盤2の外周辺縁より突出している)点、(2)飾り枠を遊技盤の表面に取着する構成に関し、本件訂正考案が、前方から取着する取着手段により取着するように構成されているのに対して、引用考案は、鍔縁8により取着している点、(3)レールに関し、本件訂正考案は、飾り枠にはパチンコ球を誘導する誘導レールを固着して一体化しており、区画レールは遊技盤の表面に植立されているのに対して、引用考案は、誘導レール、区画レールいずれも飾り枠側に設けられている点で相違する。
上記相違点について検討する。相違点(1)(2)については、引用考案において、機構枠本体1(本件訂正考案の「飾り枠」に相当する。以下同様。)の端縁(「外周辺縁」)に鍔縁8を設けているのは、機構枠本体1を遊技盤2に係止させる(「取着させる」)ためであるが、このような構成を採用しているのは、機構枠本体1と遊技盤2の位置決めを正確かつ容易に行うためのものである。ところで、一般に2つの板状部材を(前後に重ねて)前方から取着する取着手段により取着することは、本件出願前普通に行われている周知技術である。したがって、特に位置決めを正確かつ容易に行う意図がなければ、鍔縁8を捨象して、本件訂正考案のように、飾り枠と遊技盤を単に(前後に重ねて)前方から取着する取着手段により取着するように構成することは、当業者にとって格別困難性あるものとは認められない。
次に、相違点(3)については、刊行物2の「遊技部板9aの外周縁を囲繞する周片12aとこの周片12a上縁を上方に延長して遊技基盤9bの誘導レール11と連なる外レール12b及び内レール12cを形成し、この内外両面には遊技部板9aと遊技基盤9bの境界を表面で隠蔽するように飾り片12dを庇状に突設して構成される。」、「また誘導レール11と内レール12c間の飛送路表面は飾り片12dで覆われ、この飾り片12d表面と同一平面で連なるように遊技基盤9bの発射レール10に沿って当片13を張設して、打球の飛送に支障が生じないように保証されている。」との記載からみて、刊行物2には、遊技基盤9bに、遊技領域ヘパチンコ球を誘導する誘導レール11を設け、前記遊技基盤9bと交換自在な遊技部板9a(「遊技盤」)を一体に固着したとき遊技基盤9bに設けられた誘導レール11(「誘導レール」)と遊技部板9aに植立された外レール12b(「誘導レール」)及び内レール12c(「区画レール」)とによってパチンコ球が走行して遊技領域に到達するようにしてなるパチンコ機が開示されているものと認められる。すなわち、刊行物2には、パチンコ球が走行して遊技領域に到達するように設けられたレールを別部材に植立させる技術が開示されているものと認められる。そして、この開示された技術に倣って、引用考案のレール11のうちの取付具4Bに取付けられたレールを機構枠本体1側に、取付具4aに取付けられたレールを遊技盤2側にそれぞれ植立させて、本件訂正考案のように構成することは、当業者であればきわめて容易に想到し得るものと認められる。そしてその奏する作用効果も、引用考案および刊行物2に記載される考案の作用効果から予測し得る範囲を越えるものとも認められない。
したがって、本件訂正考案は、刊行物1、2に記載された考案から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができない。
(iv)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、平成6年法律第116号附則第9条第2項の規定により準用される、同附則第10条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項の規定によりさらに準用される特許法第126条第4項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。
(3)特許異議の申立についての判断
(i)本件考案
実用新案登録第2564001号の考案(以下「本件考案」という。)は、その登録明細書の実用新案登録請求の範囲に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「遊技領域の外周辺に飾り枠を備えた遊技盤をパチンコ機本体に着脱自在に取り付けたパチンコ機において、
飾り枠に、遊技領域ヘパチンコ球を誘導する誘導レールを固着して一体化し、前記飾り枠を取着手段によって前記遊技盤の表面に取着したことを特徴とするパチンコ機。」
(ii)引用刊行物
当審が通知した平成10年11月4日付け取消理由に引用した刊行物(実公昭55-15882号公報)の記載事項については、上記(2)(ii)の刊行物1に記載されたとおりであるので省略する。
(iii)対比・判断
本件考案と上記刊行物1に記載された考案(以下「引用考案」という。)とを対比すると、引用考案における機構枠本体1は、パチンコ機の前枠に着脱自在に取付けられていること、飾り板9が留具6を介して取付けられるように構成されていることから見て、本件考案の飾り枠に相当することは明白である。また、引用考案におけるレールの取付具4Bに係止されたレール11が、本件考案における誘導レールに相当することも明白である。さらに、引用考案における鍔縁8は、機構枠本体1を遊技盤2に嵌合させて一体に組合せるためのものであることから、引用考案における鍔縁8を設けることは、本件考案における飾り枠を遊技盤の表面に取着することに相当することも明白である。してみれば、両者は、遊技領域の外周辺に飾り枠を備えた遊技盤をパチンコ機本体に着脱自在に取り付けたパチンコ機において、飾り枠に、遊技領域ヘパチンコ球を誘導する誘導レールを固着して一体化し、前記飾り枠を前記遊技盤の表面に取着したパチンコ機である点で一致し、飾り枠を遊技盤の表面に取着する構成に関し、本件考案が、取着手段により取着するように構成されているのに対して、引用考案は、鍔縁8により取着している点で相違する。
上記相違点について検討する。引用考案において、機構枠本体1(本件考案の「飾り枠」に相当する。以下同様。)の端縁(「外周辺縁」)に鍔縁8を設けているのは、機構枠本体1を遊技盤2に係止させる(「取着させる」)ためであるが、このような構成を採用しているのは、機構枠本体1と遊技盤2の位置決めを正確かつ容易に行うためのものである。ところで、一般に2つの板状部材を(前後に重ねて)取着手段により取着することは、本件出願前普通に行われている周知技術である(例えば、引用考案における飾り板9と機構枠本体1の取付け機構等参照)。したがって、特に位置決めを正確かつ容易に行う意図がなければ、鍔縁8を捨象して、本件考案のように、飾り枠と遊技盤を単に(前後に重ねて)前方から取着する取着手段により取着するように構成することは、当業者にとって格別困難性あるものとは認められない。また、その奏する作用効果にも、格別の差異は認められない。
(iv)むすび
以上のとおりであるから、本件考案は刊行物1に記載された考案及び周知技術に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められるから、本件登録実用新案は実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものである。すなわち、本件考案の実用新案登録は、拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものと認める。
したがって、本件実用新案登録は、平成6年法律第116号附則第9条第7項及び第14条の規定に基づく、平成7年政令第205号第3条第1項及び第2項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 1999-11-12 
出願番号 実願平1-103822 
審決分類 U 1 651・ 121- ZB (A63F)
最終処分 取消    
前審関与審査官 藤井 靖子  
特許庁審判長 佐藤 久容
特許庁審判官 三原 彰英
高木 彰
登録日 1997-11-21 
登録番号 実用登録第2564001号(U2564001) 
権利者 福島 征一郎
愛知県名古屋市千種区今池3丁目9番21号 株式会社三洋物産内
考案の名称 パチンコ機  
代理人 今崎 一司  

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