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審決分類 |
審判 G07D |
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管理番号 | 1012764 |
異議申立番号 | 異議1999-70821 |
総通号数 | 10 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2000-10-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-03-03 |
確定日 | 2000-03-27 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 実用新案登録第2585917号「硬貨処理装置」の実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 実用新案登録第2585917号の実用新案登録を維持する。 |
理由 |
(1)本件考案 実用新案登録第2585917号(平成5年5月21日出願、平成10年9月18日設定登録)の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものにあると認められる。 「投入された硬貨の判別信号に基づいて、正貨および偽貨を振り分けると共に、更に正貨を各種金種別に振り分ける複数のゲートと、各ゲートに、該当する硬貨を導く複数の通路とを備え、これら複数のゲートおよび複数の通路を、平面的に構成すると共に外側からカバーで覆った硬貨処理装置において、 前記カバーを透明な材料で構成し、前記ゲートおよび前記通路に対応して当該カバーに、および/または、当該ゲートおよび当該通路に、当該ゲートおよび当該通路を表示する指標を付したことを特徴とする硬貨処理装置。」 ここで、考案の詳細な説明によれば、本件考案は、従来の硬貨処理装置の「各部の構造が複雑であり、その異常箇所や異常状態を言葉や文字を通して的確にサービスマンに伝達すること意外に難しく、いたずらに時間を費やしたり、適切な処理ができなかったりする不具合」(第2頁左欄21行ないし25行)を解消することを目的とし、「各ゲートおよび各通路を特定する指標」(第2頁右欄2行ないし3行)を用いることで、「いずれの箇所に硬貨の詰まりなどの異常が発生しても、異常の箇所が外部から確認でき、これをオペレータがサービスマンに指標を用いて(媒介として)伝達することができる。これを受けて、サービスマンは、指標の箇所に絞ってその状況についてオペレータと意見交換でき、原因および処理方法を究明することができる。」(第2頁右欄4行ないし10行)という作用を奏するもので、その実施例には、「硬貨判別部3および硬貨振分け部4の各ゲート31?35および判別部硬貨通路21に、それぞれ対応して、指標となるアルファベット(文字)45が付されている」(第3頁右欄17行ないし20行)から、「これらのアルファベット45により、各ゲート31?35および判別部硬貨通路21が特定できる」(第3頁右欄27行ないし29行)、また、別の箇所に、「判別部カバー8および振分け部カバー9の表面に、硬貨判別部3および硬貨振分け部4の各ゲート31?35および判別部硬貨通路21に(硬貨振分け部4の各通路36?44には間接的に)、それぞれ対応させて、アルファベット45が付され」(第4頁左欄43行ないし48行)ているから、「硬貨の詰まりなどの異常箇所をアルファベット45により特定することができる」(第4頁左欄49行ないし50行)ことが記載されてる。また、指標について、「指標としてアルファベットを用いるようにしているが、他の文字やマークなどの図形を用いるようにしてもよい。」(第4頁右欄28行ないし30行)との記載がある。 これらの記載からすると、本件考案の「指標」は、各通路や各ゲートを、それぞれ特定し、かつ伝達の媒介に用いる文字や図形と解することができる。 (2)申立ての理由の概要 申立人吉田春男は、本件考案は、甲第1号証(特開平1-150994号公報)に記載された考案と認められるから、実用新案法第3条第1項第3号に該当し、又は甲第1号証及び甲第2号証(特開平1-119892号公報)に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められるから、同第2項の規定により、実用新案登録を受けることができないものである。よって、本件考案の登録を取り消すべきものである旨主張する。 (3)甲第1号証記載の考案 甲第1号証には、従来、「この種の硬貨選別装置の内部直視機構は、コインメック内の硬貨選別装置1箇所で、第3図に示すような構成であった。同図において、4は透明材料からなるカバーであり、硬貨選別装置部分を覆うもので、表面にはシボ加工により、凹凸を付けることによって透明を半透明の透過性にし、硬貨選別装置の内部を見えなくすることによって、外観部に品位を有したものにしていた」(第1頁右下欄16行ないし第2頁左上欄4行)が、「従来の構成では、硬貨選別装置の内部で硬貨が詰まった場合、硬貨選別装置の内部か、他の部分か見極めが難しく、その場で詰まり除去という修理がなされず良品と交換することが多い。したがって、交換に日数を要したり、交換費用がかかったりする欠点があった。」(第2頁左上欄18行ないし同頁右上欄3行) そこで、「従来の欠点を解消し、硬貨選別装置の内部で発生した硬貨の詰まりに対し、外部から詰まりの状況を判別しやすくすることによって、詰まりの発生現場で直ちに修理できる内部直視機構を設けた硬貨選別装置を提供する」(第2頁右上欄4行ないし8行)ために、「内部直視機構を設けた硬貨選別装置は、硬貨詰まりおよび硬貨の軌跡を、外部より直視する手段を設けた硬貨選別装置で、硬貨選別装置を覆うカバーに透明材料を用い、硬貨選別装置内の硬貨通路でない部分に相当するカバーの表面をぼかし、半透明にすると共に、硬貨通路に相当するカバーの表面を透明にし」(第2頁右上欄11行ないし17行)、これにより、「硬貨選別装置内に詰まった硬貨を外部から直視できることによって、市場においては、硬貨選別装置内か、硬貨選別装置以外かの判別を容易にすることができる」(第2頁右上欄19行ないし同頁左下欄2行)とし、その実施例として、「第1図は本発明の硬貨選別装置の内部直視機構の構成図であり、同図において、5は透明材料からなるカバー(一部透明)であり、硬貨選別装置を覆うものである。カバーの表面はシボ加工が施された半透明部分とシボ加工を施さない透明部分に区別され、透明部分においては、硬貨選別装置内の硬貨通路部分に沿わせたものになっている。 したがって、自販機投入口(図示せず)より投入された硬貨は、自販機シュ-ト(図示せず)で導かれて、第1図に示す硬貨選別装置1に入り、正貨か偽貨の識別と収納部に導くための金種の振り分けが行われる。硬貨の識別と金種の振り分けは、硬貨通路を通ることになり、硬貨通路で硬貨が詰まったときは、外部より直視でき、詰まり発生が硬貨選別装置内であることを素早く見極めることができ、カバ-5を取外して詰まりを排除することができる。」(第2頁左下欄11行ないし同頁右下欄7行)との記載が、図面とともにあると認められる。 これらの記載からみて、甲第1号証に記載の考案の「シボ加工を施さない透明部分」は、硬貨通路に相当するカバーの表面を透明にすることで、硬貨の詰まりを判別しやするするためものであり、また、同「シボ加工が施された半透明部分」は、従来の硬貨選別装置と同様、外観的に品位を有するためのものと解することができる。 (4)甲第2号証記載の考案 甲第2号証には、図面とともに、次のものが記載されていると認められる。 投入された硬貨の判別信号に基づいて、正貨および偽貨を振り分けると共に、更に正貨を各種金種別に振り分ける複数のゲートと、各ゲートに、該当する硬貨を導く複数の通路とを備え、これら複数のゲートおよび複数の通路を、平面的に構成すると共に外側からカバーで覆った硬貨選別機。 (5)対比・判断 そこで、本願考案と甲第1号証に記載の考案とを対比すると、本願考案の「指標」は、各通路や各ゲートを、それぞれ特定し、かつ伝達の媒介に用いる文字や図形であるのに対して、甲第1号証に記載の考案の「シボ加工を施さない透明部分」、或いは、同「シボ加工が施された半透明部分」は、硬貨通路に相当するカバーの表面を透明にすることで、硬貨の詰まりを判別し易くするためもの、或いは、従来の硬貨選別装置と同様、外観的に品位を有するためのものと認められる。 よって、本願考案の「指標」と甲第1号証に記載の考案の「シボ加工を施さない透明部分」、或いは、同「シボ加工が施された半透明部分」とは異なるものであるから、本願考案と甲第1号証に記載の考案とは、同一ではない。 また、甲第1号証に、「シボ加工を施さない透明部分」や「シボ加工が施された半透明部分」を、各通路や各ゲートを、それぞれ特定し、かつ伝達の媒介に用いることを示唆する記載がないから、甲第1号証に記載の考案の「シボ加工を施さない透明部分」や「シボ加工が施された半透明部分」を、本願考案の指標のように用いることは、当業者であっても、きわめて容易に想到することはできるとはいえない。 仮に、異議申立人の主張のように、「この半透明部分は、ゲート部分を含む硬貨通路をカバー5に表示する指標」(異議申立書第5頁5行ないし同頁6行)であるとしても、この半透明部分を、伝達の媒介に用いることを目的とすることまでは、当業者であっても、きわめて容易に想到することができたとはいえない。 よって、本願考案は、甲第1号証に記載の考案から、当業者がきわめて容易に考案をすることができたとはいえない。 次に、本願考案と甲第2号証に記載の考案とを対比すると、甲第2号証には、指標に関する記載がなく、それを示唆する記載もない。 よって、本願考案は、甲第2号証に記載の考案と同一ではなく、かつ、甲第2号証に記載の考案から当業者がきわめて容易に考案することができたと認められない。 さらに、甲第1号証に記載の考案と甲第2号証に記載の考案とを組み合わせた場合について検討しても、甲第2号証に指標に関する記載や示唆がないから、甲第1号証に記載の考案の「シボ加工を施さない透明部分」や「シボ加工が施された半透明部分」を、本願考案の指標のように、各通路や各ゲートを、それぞれ特定し、かつ伝達の媒介に用いることは、当業者であっても、きわめて容易に想到することができたとすることができない。 よって、本願考案は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものと認められない。 (6)むすび 以上のとおりであるから、実用新案登録異議申立の理由及び証拠によっては、本件考案についての登録を取り消すことはできない。 また、他に本件考案についての登録を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2000-02-14 |
出願番号 | 実願平5-31567 |
審決分類 |
U
1
65・
121-
Y
(G07D)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 遠藤 秀明 |
特許庁審判長 |
寺尾 俊 |
特許庁審判官 |
岡本 昌直 冨岡 和人 |
登録日 | 1998-09-18 |
登録番号 | 実用新案登録第2585917号(U2585917) |
権利者 |
三洋電機株式会社 大阪府守口市京阪本通2丁目5番5号 |
考案の名称 | 硬貨処理装置 |