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審決分類 審判    A61H
審判    A61H
審判    A61H
管理番号 1014941
審判番号 審判1998-40019  
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2000-11-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-10-06 
確定日 2000-02-16 
事件の表示 上記当事者間の登録第3006088号実用新案「自動衝撃心肺蘇生器」の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 I.手続きの経緯・本件考案
本件実用新案登録第3006088号考案(以下、本件考案」という。)は、平成6年7月1日に出願され、平成6年10月26日実用新案権の設定登録がなされ、その後、平成10年12月29日付け実用新案登録訂正書により請求項1が削除された。
そして、本件請求項2乃至請求項7に係る考案の要旨は、明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項2乃至請求項7に記載されたところにあるものと認められ、その記載が、削除された請求項1を引用しているから、請求項2乃至請求項7に係る考案の要旨は、請求項1を読み込んで、以下のとおりのものと認める。
【請求項2】繰返し衝撃を付加することによって心臓マッサージを行うとともに、呼吸用の酸素ガスを供給する自動衝撃心肺蘇生器であって、衝撃槌のあらかじめ設定された回数の繰返し衝撃動作及び所定時間の休止動作とを組合せ、衝撃槌の駆動を圧縮空気によって行い、該休止動作の間に酸素ガスを供給することを特徴とする自動衝撃心肺蘇生器において、酸素ガスの圧力によって信号を圧縮空気系に送り、酸素ガスの圧力が所定値より高いときは衝撃槌を作動する圧縮空気を送気する経路を自動的に開いた状態とし、酸素ガスの圧力が所定値より低いときは衝撃槌を作動する圧縮空気を送気する経路を自動的に閉じた状態とすることを特徴とする自動衝撃心肺蘇生器。
【請求項3】衝撃槌の駆動用圧縮空気の圧力が、あらかじめ設定された圧力以下に下がった場合には、空気による衝撃槌の駆動が即座に停止する請求項2記載の自動衝撃心肺蘇生器。
【請求項4】衝撃槌の駆動用圧縮空気の圧力が、あらかじめ設定された圧力以下に下がった場合には、酸素ガスによる衝撃槌の駆動に切り換えて衝撃を継続する請求項3記載の自動衝撃心肺蘇生器。
【請求項5】往復動をする衝撃槌の外筒が透明又は半透明の合成樹脂で形成され、かつ槌の作業位置を明示する目盛りが蛍光塗料によって刻印された請求項2?4記載の自動衝撃心肺蘇生器。
【請求項6】人体及び衝撃槌を、孔開き締付け用ベルトによって背板に固定する機構を有し、背板に設置されたL型フックが締付け用ベルトの孔を貫通することによって人体及び衝撃槌を背板に固定する請求項2?5記載の自動衝撃心肺蘇生器。
【請求項7】人体及び衝撃槌を面状ファスナーによって背板に固定する機構を有し、背板の一端に取付けたトルクリングを介して締め付け、衝撃槌に結ばれた面状ファスナーを背板に取付けたトルクリングを介して締め付ける請求項2?5記載の自動衝撃心肺蘇生器。
II.請求人の主張
これに対して、請求人は、審判請求書、弁駁書を提出し、本件実用新案登録を無効とするとの審決を求め、下記第1乃至第2の無効事由を主張し、証拠方法として、
甲第1号証(米国特許第3348536号明細書)
甲第2号証(米国特許第3307504号明細書)
甲第3号証(米国特許第3511275号明細書)
甲第4号証(特開平2-63458号公報)
甲第5号証の1(「ブラウンズウィック社の自動心肺蘇生器の取扱説明書」)
甲第5号証の2(甲第5号証の1の翻訳文)
甲第5号証の3(納品書)
甲第5号証の4(取引データ)
甲第5号証の5(「CATALOGUE O.G.W.MEDICAL’94」)
甲第5号証の6(心肺蘇生器の要部写真1,2,3)
甲第5号証の1の1(ファクシミリ文書)
甲第5号証の1の2(名刺)
甲第5号証の3の1(木村忠久の署名した販売証明書)
甲第5号証の4の1(神奈川トヨタ自動車(株)の署名した販売証明書)
甲第5号証の6の1(藤沢市消防署の西山茂の署名した納品証明書)
甲第5号証の6の4(自動心肺蘇生器の要部写真4)
を提出している。
(1)第1の無効事由
本件登録実用新案の請求項1乃至7に係る考案は、甲第1?4号証に記載された考案であるか、またはこれらの記載ならびに甲第5号証の1?6の公知事実に基づいて当業者が極めて容易になし得たものであって実用新案法第3条第1項第3号または同第3条第2項に該当し実用新案登録を受けることができないものであるから無効とすべきである。
(2)第2の無効事由
本件登録実用新案の請求項2乃至4に係る考案は、その考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をする程度に明確にかつ十分に明細書に記載されておらず、実用新案法第5条第4項に規定する要件を満たしていない。
また、本件登録実用新案の請求項2,3および4の記載は、その明細書の考案の詳細な説明に記載されているものではなく、単なる希望的事項を述べたに過ぎないものであり実用新案法第5条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから無効とすべきである。
III.被請求人の主張
一方、被請求人は、平成10年12月29日付けの実用新案登録訂正書を提出し、本件請求項1を削除し、
(1)本件請求項2?7に係る考案は、甲号各証記載の考案に基づいて当業者が極わめて容易に考案し得たものではないから、本件実用新案は登録は無効とされるべきではない。
(2)本件請求項2?4の考案は、通常の知識を有する当業者ならば実施可能な程度に記載されており、これら請求項の構成は、本件明細書にそれぞれ明記されており、実用新案法第5条第4項及び第6項第1号に規定する要件を満たしており本件実用新案登録は無効とされるべきではない。
したがって、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求める旨主張している。
IV.甲号各証記載の事項
甲第1号証(米国特許第3348536号明細書)には、
「(A)基板;(B)その移動を垂直に調節するために設けられたアーム;このアームによって担持される垂直シリンダ(60);(C)外部式胸骨コンプレッサ・パッド(68)を備えたシリンダ(60)内のプランジャ(66);(D)加圧ガス源(56);(E)このガス源をシリンダ(60)の頂部および底部に連結して同時的にシリンダの一端には空気を供給しかつシリンダの他端からは空気を排出し、それによりのプランジャを往復運動させるための弁付き導管;(F)プランジャの行程を適当に制限する手段;および(G)前記行程の調節と同期して患者に間歌的に空気または酸素を供給するための手段(90);からなる外部式心臓マッサージ・肺通気装置」(第1欄10?22行)が記載され、また、「本願発明の他の目的は、酸素、窒素などの加圧ガスを使用してモーターにエネルギーを供給するので、蘇生器を任意の場所で使用することができ、かつその振動のために電気エネルギー源を必要としないような心肺蘇生器を提供することである。」(第1欄48?53行)こと、「図4は、肺給気用空気の供給を行程調節と同期させる手段を示す、図3と同様な図である。」(第2欄1?3行)こと、「コンプレッサ26は、固定ブロック14に垂直に対向する水平部材によって担持操作され、ハウジング18およびカバー22は、コンプレッサおよび水平アームを操作し調節する種々の手段ならびに普通の可撓性チューブ27を通って患者に空気を供給する手段を包含しており、このチューブはハウジング18のニップルに連結され顔面マスク28が取付けられている。」(第2欄26?33行)こと、「ロッド(66)の上端は特殊な構造のピストンヘッド70に取付けられているので、潤滑の必要はなく、外にガスを供給できないときには酸素によって操作できる。」(第2欄下から2行?第3欄2行)こと、「プランジャまたはロッド66には横ロッド112の通っているブロック110が固定されており、ロッドの一端はクランク96の自由端に隣接する細長いスロット114の中に伸びている。こうしてプランジャが往復するときに、クランクはロッド102の回りに回転し、そしてベローズ(90)を動かす。」(第3欄26?30行)こと、「こうして、ハンドル20を回転させることにより、ピン108とカム134との間の距離を変化させることができ、後にさらに明らかにされるように、最終的にはコンプレッサ(26)の行程長さを調節する。」(第3欄40?44行)こと、「L型カップリングが設けられている加圧室88と連動し、その水平アーム136は排気を行い、垂直アーム138は通気作動弁140を閉じる。」(第3欄45?48行)こと、「また、ニップル250は肺給気の酸素富化が望まれるならば、圧力室88を酸素シリンダに連結することを保証するものである。」(第4欄60?63行)こと「顔面マスクが患者の口の上に置かれ、オンーオフ弁246のボタンを押し、回転し、オン位置に固定することにより、胸骨はリズムに合わせて押圧され、所定体積の空気(または酸素富化空気)が4行程毎に顔面マスクに自動的に供給される。」(第5欄2?8行)こと、「ベローズ90は上昇行程時に圧力室88に、従って顔面マスクに空気を追い込み、下降行程時に拡大して圧力室から空気を取り出す。カム134の下面とピン108との間の距離は調節され、このことにより行程長さおよビベローズの拡大程度が決定されるので、顔面マスクを通って肺給気のために供給される空気の量は行程長さに同調される。従って、成人に対しては、2インチ行程が望ましく、空気または酸素約1050ccの供給量である。幼児に対しては、1/2インチ行程がのぞましく、空気または酸素約150ccの供給量である。」(第5欄45?58行)こと、「呼吸回数は通常脈拍数の1/4であるが、空気または酸素は顔面マスクを介して患者に各4行程毎に供給される。」(第5欄59?61行)「従って、表示板179の3つの位置に対して、空気が大気中に押出される。」(第6欄28?31行)ことが記載されている。
甲第2号証(米国特許第3307504号明細書)には、酸素を加圧ガス源とする心肺蘇生器が、また第1図には、「心臓コンプレッサシリンダ14」が記載されている。
甲第3号証(米国特許第35H275号明細書)には
「本発明のもう一つの重要な目的は、高度の信頼性を有し、製造が比較的安価でしかも非常に精密に制御することのできる空気システムの一部としてのパルス回路を提供することにある。」(1欄46?50行)こと、「これらの及びその他の目的を達成するため、本発明の救急ユニットには、心臓圧迫を適用するためのピストンとシリンダ、換気用ガスを肺の中に導入するため取付物、及び肺の換気と心臓圧迫を調和させるためピストンとシリンダ及び取付物の両方に対して連結された空気制御回路が含まれている。制御回路は、通常患者の肩及び上背部の下側に置かれたショルダリフト内に取付られる。空気制御回路の一部を成すパルス回路が非常に精確な間隔でピストン及びシリンダを起動させ、規則的間隔で処方された時間だけ選択された圧力の心臓圧迫を加える。」(1欄56?68行)こと、「図3に示された空気回路は、ショルダリフト10のケース22内に取付られている。ここで示された回路は、ダブルチェックバルブ42で組合わされている入口24及び26を内含する。通常は、入口のうちの1つは酸素タンクに連結され、タンクの容量レベルが低下した時点で第2のタンクをもう一つの入口に連結することができる。通常は酸素が用いられることから、本明細書ではそれをシステム内のガスとして言及することになるが、その他のガスも使用可能であるということも理解すべきである。」(2欄39?47行)こと「パルス回路は56は、図4に詳細に示されている。図4に示されているパルス回路の範囲がライン70(パルス入口)及びパルス回路78の出口により限定されていることが分かるだろう。この記述の目的のためには、ライン70が加圧された酸素供給源に恒常的に連結されていると仮定する。パイロットライン88により空気制御されている分配用バルブ86は、その入口90がパルス出口78に連結されているような条件へとバイアスされる。即ち分配用バルブ86の条件が変わらない限り、ライン70はバルブ86を通してパルス出口78に連続的に連結することになる。パイロットライン88は、空気バルブ92により制御される。通常は閉じている空気バルブ92は、開放された時点で、圧縮空気がパイロットライン88を通して流れて分配用バルブ86の条件を変えて今度は入口90をライン94に連結し入口90とパルス出口78の間の連結を遮断することができるようにする。バルブ92が開いた後で分配用バルブ86の条件変更を遅延させるために、抵抗96の形での遅延がパイロットライン88内に設けられる。抵抗96が無い場合には、バルブ92の開放時点で直ちにバルブ86は開放することになる。」(4欄36?60行)こと、「ライン70が酸素タンクといった圧力供給源に連結された時点で酸素は、ライン70からライン87を通して分配用バルブ86の入口90まで流れ、パルス出口78を通して排出する。同時に、圧力がパイロットライン100内で強まり、遅延周期の後、空気バルブ92が開く。パイロットライン88内のバルブ92が開いた時点で、一定の遅延の後、バルブ86の条件は変化し、パルス出口78は遮断され、分配用バルブ86はパイロット108を通して酸素を導く。しかしながら、バルブ92は、ライン108が一杯になるまで開放状態にとどまり、特定の大きさの圧力を第2の空気バルブ102に加える。ライン108の長さによって・・・・・・次に、ライン70が圧力供給源から連結解除されるまで、連続的にサイクルを繰り返す。」(5欄3?26行)ことが、さらに、「図1は、この発明により構成された心肺蘇生器の斜視図である。」(第2欄7,8行)こと、「図1に示した心肺蘇生器ユニットは背持上器10、心臓コンプレッサユニット12は、肺給気ユニット14、およびコンプレッサユニット12を患者の胸の適当な位置に保持するための皮紐16を持っている。」(1欄23?26行)ことが記載されている。
甲第4号証(特開平2-63458号公報)には、
「第1図はこの発明の全体斜視図である。それは圧縮空気圧の強弱と加圧の断続のリズムや時間間隔等を電子装置により制御して供給することのできる電子制御給気部(1)、人工呼吸用マスク(2)、心臓マッサージ加圧気筒(3)、遭難者を固定するふた箱(4)、給気部機構を納めた底箱(5)の5部分より成り立つ。」(1頁右欄下から7?末行)こと、「第3図(42)は心臓マッサージ用給排気の時間間隔調整ダイヤルで、人工呼吸と連動し人工呼吸1回に心臓マッサージ5回を標準とする・・・」(2頁左下欄下から5?2行)こと、「人工呼吸と心臓マッサージの圧縮空気は減圧弁と電子制御によって作動する給排気弁により遭難者の年齢及び状態で圧力ダイヤル(37)及び(38)と給排気間隔調整ダイヤル(41)及び(42)により調節制御して、圧力メーター(35)及び(36)で監視しながら供給することが出来る。」(2頁右下欄下から2行?3頁左上欄5行)ことが記載されている。
甲第5号証の1(HLR^(TM)「HEART-LUNG RESUSCITATOR OPERATING MANUAL」)の翻訳文である甲第5号証の2(「HLM^(TM)自動心肺蘇生器 取扱説明書」)には、「作動動力源として、標準加圧酸素ボンベ、あるいは固定式(壁などの配管から供給される酸素を利用)システムを使用することが可能」(3頁7?9行)であること、「HLRユニットは、その操作の肺換気相と圧迫相のタイミングが、可搬タンク、あるいは病院の酸素ラインからの酸素のみに依存しているので「ガスコンピュータ」と呼ばれています。」(6頁29?31行)、「酸素源{酸素パック(#1)、または固定壁酸素システム}からくる酸素ホース(#15)の接続部分はクイックコネクタになっています。」(17頁末行?18頁1行)、「一定の酸素供給をします。第1の酸素ボンベ中の酸素圧力が低下し始めたら、備え付けのレンチで第2の酸素ボンベを開けます。第1のボンベを閉め新しいタンクを第1のタンクの代わりに接続し、第2のタンクがHLRを作動し始めたならば第1のタンクを取り外す」(24頁25?28行)ことが記載されている。
甲第5号証の3(納品書)には、
小川医理機器株式会社が、「商品コード1545の「人工心肺蘇生装置HLR、トヨタ藤沢分No.779324」1台を、平成5年11月22日にワコー商事に納品したこと」が記載されている。
甲第5号証の4(取引データ)には、
「小川医理器(株)のコンピュータから打出したデータ」と記載されている取引伝票No.29319の欄には、平成5年11月22日に、取引先CD「H042」、商品名「人工心肺蘇生装置HLR」トヨタ藤沢分No.779324と記載されている。
甲第5号証の5(「CATALOGUE O.G.W.MEDICAL ’94」)には、
「HLR自動心肺蘇生器」の全体の外観図とその装置の特徴として、「ボリュームサイクル式で、胸部圧迫(心臓マッサージ)と人工呼吸を5:1の割合で自動的かつ正確にくり返」すことが記載されている。
甲第5号証の6には
「HLR HEARTーLUNG RESUSCITATOR」「BRUNSWICK」と銘の入った装置を前方から撮影した写真1,2と、同じく後方から撮影した写真3が添付されている。
甲第5号証の1の1には
ブラウンズウィック(BRUNSWICK)社から請求人株式会社ワコー商事へ1991年8月30日10時46分にファクシミリ送付された文書が添付されている。
甲第5号証の1の2には、
株式会社ワコー商事の長田文夫の名刺が添付され、FAX番号が、0466-35-5594であることが記載されている
甲第5号証の3の1には、
人工心肺蘇生装置HLRを平成5年11月22日に株式会社ワコー商事へ販売したことを証明する木村忠久の署名した証明書が添付されている。
甲第5号証の4の1には、
神奈川トヨタ自動車株式会社がワコー商事より人工心肺蘇生装置HLRを仕入れ藤沢消防本部に販売し、平成5年12月20日に納入したことを証明する販売証明書が添付されている。
甲第5号証の6には、
装置を上部から撮影した写真4が添付されている。
甲第5号証の6の1には、
人工心肺蘇生装置HLR(写真1?3)が平成5年12月20日に、神奈川トヨタ自動車株式会社より納品されたことを藤沢消防署西山茂が証明する証明書が添付されている。
V.対比・判断
そこで、請求人の主張する無効事由(1)乃至及び(2)について検討する。
1.第1の無効事由について
前述したように、請求項1は訂正により削除されているので、まず、本件請求項2に係る考案と甲号各証に記載された考案とを対比検討する。
甲第1号証乃至甲第4号証記載の考案は、いずれも自動衝撃心肺蘇生器に関するものであり、本件請求項2に係る考案の構成の一部ずつが記載されているけれども、上記甲第1号証乃至甲第4号証のいずれにも本件考案の構成要件である「酸素ガスの圧力によって信号を圧縮空気系に送り、酸素ガスの圧力が所定値より高いときは衝撃槌を作動する圧縮空気を送気する経路を自動的に開いた状態とし、酸素ガスの圧力が所定値より低いときは衝撃槌を作動する圧縮空気を送気する経路を自動的に閉じた状態とする」構成が備わっておらずまた示唆するところもない。
すなわち、甲第1号証には、「酸素、窒素などの加圧ガスを使用してモータにエネルギーを供給する」こと、および「肺吸気の酸素富化が望まれるならば、圧力室88を酸素シリンダに連結する」ことが記載されているから、本件請求項2に係る考案の前提的構成である衝撃槌の駆動を圧縮空気によって行い、該休止動作の間に酸素ガスに富んだ空気を供給する構成を備えていることは認められるが、「酸素ガスの圧力によって信号を圧縮空気系に送り、酸素ガスの圧力が所定値より高いときは衝撃槌を作動する圧縮空気を送気する経路を自動的に開いた状態とし、酸素ガスの圧力が所定値より低いときは衝撃槌を作動する圧縮空気を送気する経路を自動的に開いた状態とする」構成を備えたものではなくまた示唆するところもない。
同じく、甲第2号証には、酸素を加圧ガスとする心肺蘇生器が記載されているが、本件の請求項2に係る考案の前提的構成である「衝撃槌の駆動を圧縮空気で行い、休止動作の間に酸素ガスを供給する」構成を備えておらず、また「酸素ガスの圧力によって信号を圧縮空気系に送る」構成も備えていない。
同じく、甲第3号証には、本件請求項2に係る考案の前提構成である「繰り返し衝撃を付加することによって心臓マッサージを行うとともに呼吸用の酸素ガスを供給する自動衝撃心肺蘇生器であって、衝撃槌のあらかじめ設定された回数の繰返し衝撃動作及び所定時間の休止動作とを組合せ」た構成が記載されており、また、使用するガスについて、通常は酸素が用いられるが、その他のガスも使用可能であるということも記載されているが、本件発明の特徴的構成である「該衝撃槌の駆動を圧縮空気によって行い、該休止動作の間に酸素ガスを供給する」構成及び「酸素ガスの圧力によって信号を圧縮空気系に送り、酸素ガスの圧力が所定値より高いときは衝撃槌を作動する圧縮空気を送気する経路を自動的に開いた状態とし、酸素ガスの圧力が所定値より低いときは衝撃槌を作動する圧縮空気を送気する経路を自動的に閉じた状態とする」構成は何ら記載されていない。
この点に関して、請求人は、弁駁書において、甲第3号証には「システム内のガスとして酸素以外のその他のガスも使用可能であること、換言すれば、例えば専ら空気を使用できることが教示されている。」と主張するが、甲第3号証には、第2図では、装置はガス源である酸素タンク18とのみ接続しており、第3図では入口24、26は酸素タンクにそれぞれ連結され、酸素ガスは空気回路を介してコンプレッサユニット12とマスク14から排出されるものであり、また図4においては、ライン70は酸素タンクに連結しパルス出口78から排出されるものである。したがって、これら図面及び明細書の記載を見るかぎり、衝撃槌の作動用ガス源および呼吸用のガスとしていづれも酸素ガスを使用すること、あるいはその他のガス(心肺蘇生装置においては空気)を衝撃槌の作動用ガス源および呼吸用のガスとして使用することが記載されているにすぎず、酸素ガスとその他のガスを併用することは何ら示されていないし示唆するところもない。
したがって、請求人のこの主張は採用できない。
同じく、甲第4号証には、「空気の圧力、加圧時間及び加圧間隔を制御した圧縮空気を使って、自動的に人工呼吸及び心臓マッサージを行う」ことは記載されているが、本件請求項2に係る考案の前提的構成である「衝撃槌の駆動を圧縮空気で行い、休止動作の間に酸素ガスを供給する」構成をも備えていないものである。
以上のとおりであり、本件請求項2に係る考案は、甲第1号証乃至甲第4号証に記載の考案のいずれにも備わっていない上記構成要件と本件請求項2に係る考案の他の構成要件と相侯って、「衝撃槌の駆動が圧縮空気により行われ、かつ呼吸用の酸素ガスが供給されている場合に限り衝撃槌が駆動するので、酸素ガスの消費量を減少せしめ、かつ排酸素ガス濃度の上昇による火災爆発の危険を防ぎ、衝撃槌の駆動と呼吸用の酸素ガスの供給を誤動作を起こすことなく行うことができる。」という明細書記載の効果を奏するものである。したがって、本件請求項2に係る考案が、甲第1号証乃至甲第4号証のものに記載された考案と同一でないばかりでなく、甲第1号証乃至甲第4号証記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるともいえないから、実用新案法第3条第1項第3号または第2項の規定により実用新案登録を受けることができないという請求人の主張は採用することができない。
同じく請求項3乃至請求項7に係る考案は、請求項2に係る考案をさらに限定したものであるから、請求項2に係る考案についての判断と同様の理由により、上記甲号各証に記載の考案と同一でないばかりでなく、甲号各証記載の考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるともいえないから、実用新案法第3条第1項第3号または第2項の規定により実用新案登録を受けることができないという請求人の主張は採用することができない。
次に、請求人は本件請求項2乃至請求項7に係る考案は、甲第1号証乃至甲第4号証に記載された発明と甲第5号証の1乃至甲第5号証の6の公知事実に基づいて当業者が極めて容易になし得たものであるとも主張しているのでその点について検討する。
本件請求項2に係る考案と甲第5号証の1に記載の考案を対比検討(甲第5号証の1には、甲第5号証の2として翻訳文が提出されている)すると、甲第5号証の1の翻訳文である甲第5号証の2には、「作動動力源として、標準加圧酸素ボンベ、あるいは固定式(壁などの配管から供給される酸素を利用)システムを使用することが可能で」あること、「HLRユニットは、その操作の肺換気相と圧迫相のタイミングが、可搬タンク、あるいは病院の酸素ラインからの酸素のみに依存しているので「ガスコンピュータ」と呼ばれて」いること等の記載があって、TLR^(TM)自動心肺蘇生器(ブランズウィックバイオメディカル技術社)が、酸素ガスを作動動力源として用いていること、そして、本件請求項2に係る考案の前提的構成要件である「繰返し衝撃を付加することによって心臓マッサージを行うとともに、呼吸用の酸素ガスを供給する」構成は備えていることは認められるが、本件請求項2に係る特徴的構成要件である「衝撃槌の駆動を圧縮空気によって行い該休止動作の間に酸素ガスを供給する」構成及び「酸素ガスの圧力によって信号を圧縮空気系に送り、酸素ガスの圧力が所定値より高いときは衝撃槌を作動する圧縮空気を送気する経路を自動的に開いた状態とし、酸素ガスの圧力が所定値より低いときは衝撃槌を作動する圧縮空気を送気する経路を自動的に閉じた状態とする」構成は何ら備わっておらずまた示唆するところもない。
そして、本件請求項2に係る考案は、上記構成を備えることにより、「衝撃槌の駆動が圧縮空気により行われ、かつ呼吸用の酸素ガスが供給されている場合に限り衝撃槌が駆動するので、酸素ガスの消費量を減少せしめ、かつ排酸素ガス濃度の上昇による火災爆発の危険を防ぎ、衝撃槌の駆動と呼吸用の酸素ガスの供給を誤動作を起こすことなく行うことができる。」という明細書記載の効果を奏するものである。
ところで、請求人は、甲第5号証の3、甲5号証の4、甲第5号証の5,甲第5号証の6を提出し、さらに、甲第5号証の1の1乃至甲第5号証の6の4を提出して、甲第5号証の1に記載された、米国ブラランズウィック・バイオメディカル・テクノロジーズ・インコーポレテイテッド(BRUNSWICK BIOMESICAL TECHNOLOGIES,INC.;以下、「ブランズウィック社」という)の自動心肺蘇生器(HEART-LUNG RESUCITAOR)が「本件考案」の出願日である平成6年(1994)7月1日以前に日本国内において公知であったことを実証すると主張しているが、上記したとおり、ブラウンズウィック社の自動心肺蘇生器の取扱説明書の内容をみても本件請求項2に係る考案の特徴的構成要件をブラウンズウィック社の自動心肺蘇生装置は備えていないことは明らかであるから、たとえ甲第5号証の1に記載された自動心肺蘇生装置が公知であったとしても本件請求項2に係る考案の先行技術にはならない。
以上の通りであるから、請求項2に係る考案は甲第5号証の1乃至甲第5号証の6の公知事実に基づいて当業者がきわめて容易に考案することができたものとすることができない。
また、請求項3乃至請求項7に係る考案は、請求項2に係る考案を更に限定したものであるから、請求項2に係る考案についての判断と同様の理由により上記甲号各証に記載の考案からきわめて容易に考案をすることができたものとは認められない。
2.第2の無効事由について
請求人は、
(1)本件請求項2に記載された考案は、「呼吸用酸素ガスの圧力が所定値以上のときには衝撃槌作動用空気の送気を行い、呼吸用酸素ガスの圧力が所定値以下になったときには衝撃槌作動用空気の送気を中止して、心臓マッサージを中止することを延べている。しかしながら、「本件考案」の明細書第10頁3?9行に「酸素ボンベ1には、酸素ガスの圧力低下に対応する回路閉塞器5が、また、圧縮空気だめ4には圧縮空気の圧力低下に対応する回路閉塞器26が設けられている。これらの回路閉塞器は、スプリングリターンであってもよく、電磁弁圧力スイッチであってもよい。本自動衝撃心肺蘇生器において、手動バルブ2を開き、気体式スイッチ3から気体式切換弁6に信号が送られることにより、始めて圧縮空気を送り出すことが可能になるので、酸素ガスを送らないままで圧縮空気により衝撃槌を作動させることは起こり得ず、人為的な誤操作を防止することができる。」と記載されているだけであって、図1を参照しても請求項2の考案が、その考案の属する技術の分野における通常の知識を有するものがその実施をすることができる程度に明確かつ十分に明細書に記載されていない。
(2)本件請求項3に記載された考案は、「衝撃槌駆動用圧縮空気の圧力が所定圧以下になったときに衝撃槌の駆動を即座に停止して心臓マッサージを中止することを述べている。しかしながら、「本件考案」の明細書第10頁下から5?3行に「本考案の自動衝撃心肺蘇生器においては、衝撃槌の駆動用圧縮空気の圧力があらかじめ設定された圧力以下に下がった場合には、空気による衝撃槌の駆動は直ちに停止する。」と記載され、同第11頁3?7行に「圧縮空気の圧力が所定の圧力以下に下がった場合には、衝撃槌の駆動を続けるよりも、むしろ直ちに衝撃槌の駆動を停止することが望ましい。あるいは、電池を使用したコンプレッサーによる圧縮空気を動力源とする場合にも、同様に圧力が低下した場合には衝撃槌の駆動を停止することが望ましい。また、同時にかかる緊急の場合のための警報器が併設されたものが望ましい。」と記載されているだけであって、図2を参酌しても請求項3の考案が、その考案の属する技術の分野における通常の知識を有するものがその実施をすることができる程度に明確かつ十分に明細書に記載されていない。
(3)本件請求項4に記載された考案は、「衝撃槌駆動用圧縮空気の圧力が所定圧以下になったときに、酸素ガスを衝撃槌駆動用に切り換えて心臓マッサージを継続して行うことを述べている。しかしながら、「本件考案」の明細書第10頁下から5?2行に「本考案の自動衝撃心肺蘇生器においては、衝撃槌の駆動用圧縮空気の圧力があらかじめ設定された圧力以下に下がった場合には、空気による衝撃槌の駆動は直ちに停止する。これにより、衝撃槌は停止したままの状態にとどまり、あるいは、酸素ガス駆動に切り換えて衝撃が継続される。」と記載され、同第11頁6?5行に「暫定的ではあっても接続されている呼吸用の酸素ガスの系統を切換弁によって駆動系統に供給し、心臓に対して有効な衝撃を継続することがもっとも緊急な措置である。ただし、この酸素ガスによる緊急継続措置装置(ライン)を設けることについては、救急隊員の間では以下の点を慮って異論がないわけでもない。すなわち、一旦この酸素による駆動に切り替えると、その簡便さに馴れてしまって、酸素が消滅し尽くされてしまうまで空気に戻すことを怠りがちとなるので、本考案の主旨からみて好ましくないというものである。」と記載されているだけであって、図1および図2を参酌しても、請求項4の考案がその考案の属する技術分野おける通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確にかつ十分に記載されていない。
から明細書に記載不備があり、実用新案法第5条安全装置により結合されている。酸素ボンベ1のバルブが開かれることにより、ダイヤフラム13に圧力がかかって圧縮空気用開孔部12が配管の位置に移動し圧縮空気が衝撃作動ユニット9へ送られる。酸素ボンベ1のバルブが開かれていないときは、圧縮空気用開孔部12はスプリング11により押し下げられているので、酸素ガスを送らないままで圧縮空気により衝撃槌を作動させることは起こり得ず人為的な誤動作を防止することができる。酸素ガスは、さらに減圧弁14、衝撃タンク15及び切り換え弁16を通じて酸素ブロー用マスク17へ送られる。衝撃作動ユニット9からは、衝撃槌が設定回数の往復運動を行うと切換弁16に信号が送られて切換弁16が開き、酸素ブロー用マスク17へ呼吸用の酸素ガスが送られる。」ことが記載されている。
したがって、酸素圧力が一定値以上になったとき、圧縮空気による衝撃槌の作動が起こり、酸素圧力が一定値以下になると圧縮空気の回路が閉塞する構成が示されているものであり、酸素圧力によって、ダイヤフラムによる気体信号を圧縮空気系に送って、酸素ガスの圧力が所定値より高いときは、圧縮空気用開孔部12が配管の位置に移動し、圧縮空気が衝撃作動ユニット9へ送られ、酸素圧力が所定値より低いときは、圧縮空気用開孔部12はスプリング11により押し下げられているので、圧縮空気を送気する経路が自動的に閉じた状態となり圧縮空気による衝撃槌の作動は起こらないことは明らかであり、本件明細書には、請求項2に係る考案の特定構成が当業者にとって容易に実施できる程度に記載されているものと認められる。
次に、請求項3に係る考案に関して検討する。
本件明細書の【0007】欄には「本考案の自動衝撃心肺蘇生器においては、衝撃槌の駆動用圧縮空気の圧力があらかじめ設定された圧力以下に下がった場合には、空気による衝撃槌の駆動は直ちに停止する。」と記載されており、図1には、圧縮空気4だめと手動バルブ5の間に回路閉塞器26が設けられている。
そして、この回路閉塞器は圧縮空気の圧力低下に対応するものであって、圧縮空気の圧力が一定圧力以下に低下すると回路を閉塞するので圧縮空気により駆動される衝撃槌は、駆動を停止することは明らかであり、本件明細書には、請求項3に係る考案の特定構成が当業者にとって容易に実施できる程度に記載されているものと認められる。
次に、請求項4に係る考案に関して検討する。
本件明細書の【0007】欄には「本考案の自動衝撃心肺蘇生器においては、衝撃槌の駆動用圧縮空気の圧力があらかじめ設定された圧力以下に下がった場合には、空気による衝撃槌の駆動は直ちに停止する。・・・かかる場合、新たな圧縮空気のボンベに接続して衝撃槌の駆動を継続することを行わなければならないが、暫定的ではあっても接続されている呼吸用の酸素ガスの系統を切換弁によって駆動系統に供給し、・・・」と記載されている。
すなわち、この記載及び図1から、衝撃槌の駆動用圧縮空気の圧力が、あらかじめ設定された圧力以下に下がった場合回路閉塞器26によって圧縮空気だめから手動バルブ5への通路が閉塞する。このとき減圧弁7の設定圧力を酸素ガス圧との関係で適当な圧力に設定しておけば、開放されている手動バルブ2から、気体スイッチ3を経由する酸素ボンベからの圧力で減圧弁7を酸素ガスが通過して、圧縮空気だめ4に、酸素ガスが圧入する。ここに圧入された酸素ガスはその圧力で回路閉塞器26を押し開けて、気体式切換弁6を経由して、衝撃作動ユニット9を作動することができるものと認められる。
したがって、本件明細書には、請求項4に係る考案の特定構成が当業者にとって、容易に実施できる程度に記載されているものと認められる。
また、請求人は、本件請求項2,3および4の記載は、その明細書の考案な(「の」の誤りと認められる。)詳細な説明に記載されたものではなく、単なる希望的事項を述べたにすぎないものであって実用新案法第5条第6項第1号に適合しない
とも主張している。
しかしながら、請求項2、3及び4に係る考案について、その目的、構成、効果は、明細書の【0004】欄及び図面によって、明確に記載されており、実用新案法第5条第6項第1号違反であるとする請求人の主張は採用できない。
VI.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件考案の請求項2乃至請求項7に係る実用新案登録を無効とすることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1999-12-06 
結審通知日 1999-12-14 
審決日 1999-12-15 
出願番号 実願平6-9059 
審決分類 U 1 111・ 531- Y (A61H)
U 1 111・ 121- Y (A61H)
U 1 111・ 113- Y (A61H)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 岡田 幸夫
特許庁審判官 大里 一幸
長崎 洋一
登録日 1994-10-26 
登録番号 実用登録第3006088号(U3006088) 
考案の名称 自動衝撃心肺蘇生器  
代理人 内山 充  
代理人 市川 利光  
代理人 添田 全一  
代理人 萩野 平  
代理人 本多 弘徳  
代理人 栗宇 百合子  
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