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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) B23Q
管理番号 1014945
審判番号 審判1997-11437  
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2000-11-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 1997-07-04 
確定日 2000-01-20 
事件の表示 上記当事者間の登録第2132093号実用新案「カム式自動工具交換装置」の登録無効審判事件について、次のとおり審決する。   
結論 登録第2132093号実用新案の登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.本件考案
本件実用新案登録第2132093号(昭和60年5月14日実用新案登録出願。平成8年8月12日設定登録。)に係る考案(以下、「本件考案」という。)の要旨は、その願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、実用新案登録請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。「ハウジング内に互いに同軸にかつ一体的に回転可能に設けられ、回転駆動装置により回転させられる第一カムおよび第二カムと、それら第一および第二カムの回転軸心と直角に立体交差する軸心のまわりに回転可能かつ軸心方向に移動不能に前記ハウジングの第一外壁に支持された円筒状部材と、その円筒状部材の前記ハウジング内に位置する部分と一体的に設けられ、前記第一カムの外周に形成されたカム部と常時係合して第一カムの等速回転を円筒状部材の不等速回転に変換するローラギヤと、軸方向の中間部に環状係合部を備え、その環状係合部の片側において前記円筒状部材およびローラギヤの内側に軸心方向に相対移動可能かつ相対回転不能に嵌合する一方、環状係合部の反対側において前記ハウジングの前記第一外壁とは反対側の第二外壁に回転可能かつ軸心方向に移動可能に支持されるとともにハウジング外に突出したアーム軸と、そのアーム軸の突出端部から半径方向に互いに逆向きに延び出し、各先端部に工具にその工具の半径方向から係合してその工具を保持する工具保持部を有する一対の工具保持アームと、前記ハウジングにより前記第一および第二カムの回転軸心と平行な回動軸心のまわりに回動可能に支持されたレバーと、そのレバーに設けられ、前記第二カムの端面に形成されたカム部と係合して第二カムの回転運動をレバーの回動運動に変換するカムフォロワと、前記レバーに設けられ、前記アーム軸の環状係合部に、その環状係合部の回転を許容しつつ軸心方向には一緒に移動する状態で係合し、レバーの回動運動をアーム軸の軸心方向の運動に変換する係合部と、を含み、前記第一カムおよび第二カムのカム部の形状が、それら両カムの一方向の回転を、前記工具保持アームの前記工具に対する係合,離脱のための正逆両方向の回動および工具搬送のための180度の回動と、工作機械および工具保持装置に対する工具の挿入,抜出しのための軸心方向における正逆両方向の移動とにそれぞれ変換する形状とされたことを特徴とするカム式自動工具交換装置。」
2.甲各号証
これに対して、無効審判請求人・株式会社森精機製作所の提出した甲第2号証(実願昭58-123212号(実開昭60-31545号)のマイクロフィルム)、甲第1号証(特開昭58-45836号公報)、甲第3号証(特開昭59-14480号公報)、甲第4号証(特開昭59-53175号公報)には、次の事項が記載されている。
(1)甲第2号証刊行物
(ア)ハウジング1内に互いに同軸にかつ一体的に回転可能に設けられ、回転駆動装置により回転させられる「グロボイダルカム3におけるテーパーリブ3aを備える部分」(以下「第一カム」という。)及び「グロボイダルカム3における溝4を備える部分」(以下「第二カム」という。)と、それら第一カム及び第二カムの回転軸心と直角に立体交差する軸心の周りに回転可能かつ軸心方向に移動不能に前記ハウジング1の第一外壁(特に名称が記載されていないため、第1図におけるハウジング1の上部外壁を「第一外壁」とする。)に支持された円筒状の従節軸10と、その従節軸10の前記ハウジング1内に位置する部分と一体的に設けられ、前記第一カムの外周に形成されたカム部であるテーパーリブ3aと常時係合して第一カムの等速回転を従節軸10の不等速回転に変換するターレット11と、軸方向の端部に環状溝15を備え、その環状溝15の片側において前記従節軸10及びターレット11の内側に軸心方向に相対移動可能かつ相対回転不能に嵌合する一方、環状溝15の反対側は前記ハウジング1の前記第一外壁とは反対側の第二外壁(第1図におけるハウジング1の下部外壁を「第二外壁」とする。)には支持されず、前記片側延長部分が第一外壁に回転可能かつ軸心方向に移動可能に支持されるとともにハウジング1外に突出した出力軸9と、前記ハウジング1により前記第一カム及び第二カムの回転軸心と平行な回動軸心の周りに回動可能に支持されたアーム5と、そのアーム5に設けられ、前記第二カムの端面に形成されたカム部である溝4と係合して第二カムの回転運動をアーム5の回動運動に変換する第2転子7と、前記アーム5に設けられ、前記出力軸9の環状溝15に、その環状溝15の回転を許容しつつ軸心方向には一緒に移動する状態で係合し、アーム5の回動運動を出力軸9の軸心方向の運動に変換する第1転子8とを含み、前記第一カム及び第二カムのカム部の形状が、それら両カムの一方向の回転を、出力軸9の正方向の回動及び逆方向の回動と、軸心方向に正方向の移動及び逆方向の移動とにそれぞれ変換する形状とされた各種の自動工作機械等に用いられるカム装置。
(イ)第一カムのカム部であるテーパーリブ3a及び第二カムのカム部である溝4の形状を適宜変更することによって、出力軸9に様々な複合運動をさせることが可能であること。
(2)甲第1号証刊行物
カムの一方向の回転をカム機構により交換腕軸37の工具交換のための運動に変換する自動工具交換装置であって、交換腕軸37には、その突出端部から半径方向に互いに逆向きに延び出し、各先端部に工具にその工具の半径方向から係合してその工具を保持する工具保持部を有する一対の工具交換腕36が備えられ、カムによる交換腕軸37の運動が、工具交換腕36の工具に対する係合,離脱のための正逆両方向の回動及び工具搬送のための180度の回動と、工作機械及び工具保持装置に対する工具の挿入,抜出しのための軸心方向における正逆両方向の移動である装置。
(3)甲第3号証刊行物
オートハンド装置において、共に回動するとともに軸心方向移動を許容するゼネバ歯車17による回動と、枠体20と係合するスリーブ13による軸心方向の正逆移動を行う従動軸12が、スリーブ13を軸方向中間部に備え、ゼネバ歯車17と反対側において、箱体1の外壁に支持されて突出すること。
(4)甲第4号証刊行物
自動部品供給装置において、共に回動するとともに軸心方向移動を許容するゼネバギア36による回動と、挺子桿37と係合する係合部32による軸心方向の正逆移動を行う可動軸13が、係合部32を軸方向中間部に備え、ゼネバギア36と反対側において、ハウジング10の外壁に支持されて突出すること。
3.当審の判断
(1)本件考案と甲第2号証刊行物に記載されたものを対比すると、後者における「ハウジング1」、「第一カム」、「第二カム」、「従節軸10」、「ターレット11」、「環状溝15」、「出力軸9」、「アーム5」、「第2転子7」、「第1転子8」は、その機能から、それぞれ前者における「ハウジング」、「第一カム」、「第二カム」、「円筒状部材」、「ローラギヤ」、「環状係合部」、「アーム軸」、「レバー」、「カムフォロワ」、「係合部」に相当することから、両者は、次の点で一致している。
「ハウジング内に互いに同軸にかつ一体的に回転可能に設けられ、回転駆動装置により回転させられる第一カム及び第二カムと、それら第一カム及び第二カムの回転軸心と直角に立体交差する軸心の周りに回転可能かつ軸心方向に移動不能にハウジングの第一外壁に支持された円筒状部材と、その円筒状部材のハウジング内に位置する部分と一体的に設けられ、第一カムの外周に形成されたカム部と常時係合して第一カムの等速回転を円筒状部材の不等速回転に変換するローラギヤと、環状係合部を備え、その環状係合部の片側において前記円筒状部材及びローラギヤの内側に軸心方向に相対移動可能かつ相対回転不能に嵌合する一方、ハウジングの外壁に回転可能かつ軸心方向に移動可能に支持されるとともにハウジング外に突出したアーム軸と、ハウジングにより第一カム及び第二カムの回転軸心と平行な回動軸心の周りに回動可能に支持されたレバーと、そのレバーに設けられ、第二カムの端面に形成されたカム部と係合して第二カムの回転運動をレバーの回動運動に変換するカムフォロアと、レバーに設けられ、アーム軸の環状係合部に、その環状係合部の回転を許容しつつ軸心方向には一緒に移動する状態で係合し、レバーの回動運動をアーム軸の軸心方向の運動に変換する係合部とを含み、第一カム及び第二カムのカム部の形状が、それら両カムの一方向の回転を、アーム軸の正方向の回動及び逆方向の回動と、軸心方向に正方向の移動及び逆方向の移動とにそれぞれ変換する形状とされた装置。」
そして、両者は、以下の点において相違するものである。
(相違点1)
本件考案が、カム式自動工具交換装置に係るものであり、アーム軸には、その突出端部から半径方向に互いに逆向きに延び出し、各先端部に工具にその工具の半径方向から係合してその工具を保持する工具保持部を有する一対の工具保持アームが備えられ、カムによるアーム軸の運動が、工具保持アームの工具に対する係合,離脱のための正逆両方向の回動及び工具搬送のための180度の回動と、工作機械及び工具保持装置に対する工具の挿入,抜出しのための軸心方向における正逆両方向の移動であるのに対し、甲第2号証刊行物に記載のものは、各種の自動工作機械等に用いられるカム装置に係るものであって、カムによるアーム軸の運動が正方向の回動及び逆方向の回動と、軸心方向に正方向の移動及び逆方向の移動である点。
(相違点2)
アーム軸について、本件考案においては、環状係合部が備えられるのが軸方向中間部であり、円筒状部材と反対側において、第二外壁に支持され、その側から突出しているのに対し、甲第2号証刊行物に記載のものにおいては、環状係合部は端部に備えられており、一端は第二外壁には支持されずに、円筒状部材側の延長部が第一外壁に支持されて突出している点。
(2)そこで、前記各相違点について検討する。
(相違点1について)
甲第1号証刊行物には、前記2(2)のとおりの事項が記載されている。ここで、交換腕軸37、工具交換腕36が本件考案におけるアーム軸、工具保持アームにそれぞれ相当することから、結局,甲第1号証刊行物には、「カム式自動工具交換装置に係るものであって、アーム軸には、その突出端部から半径方向に互いに逆向きに延び出し、各先端部に工具にその工具の半径方向から係合してその工具を保持する工具保持部を有する一対の工具保持アームが備えられ、カムによるアーム軸の運動が、工具保持アームの工具に対する係合,離脱のための正逆両方向の回動及び工具搬送のための180度の回動と、工作機械及び工具保持装置に対する工具の挿入,抜出しのための軸心方向における正逆両方向の移動である装置」が記載されているものである。
そして、甲第2号証刊行物に記載のものは、具体的な適用対象の装置については特定されていないが、各種の自動工作機械等に用いるとされており、甲第1号証に記載のものは、工作機械の自動工具交換装置であって、両者は工作機械において使用される装置である点で技術分野が共通しているものである。
また、甲第2号証刊行物には、カム部の形状を適宜変更することにより、アーム軸に相当するところの出力軸に様々な複合運動をさせることができるとしながら、かつ具体的には、正方向の回動と逆方向の回動、及び軸心方向における正方向と逆方向の移動を行う1つの運動パターンが記載されている。
ところで、甲第1号証刊行物に記載されたものにおける工具保持アームの工具に対する係合,離脱のための正逆両方向の回動及び工具搬送のための180度の回動と、工作機械及び工具保持装置に対する工具の挿入,抜出しのための軸心方向における正逆両方向の移動は、運動としては正方向の回動と逆方向の回動及び軸心方向における正方向と逆方向の移動から成り、甲第2号証刊行物に記載された運動パターンと完全には一致しないものの同様な回動と軸心方向移動の組合せである点で共通している。
しかも、甲第1号証刊行物に記載された工具交換装置と甲第2号証刊行物に記載の装置は、カムの一方向の回転をカム機構により所定の運動に変換するものである点でも共通しており、甲第1号証刊行物に記載された工具交換のために甲第2号証刊行物に記載の装置を用いることを妨げる格別の理由も認められない。
とすれば、甲第1号証刊行物に記載された前記事項を単に甲第2号証刊行物に記載の装置に適用することにより、装置をカム式自動工具交換装置となすとともに、アーム軸には、その突出端部から半径方向に互いに逆向きに延び出し、各先端部に工具にその工具の半径方向から係合してその工具を保持する工具保持部を有する一対の工具保持アームが備えられ、カムによるアーム軸の運動が、工具保持アームの工具に対する係合,離脱のための正逆両方向の回動及び工具搬送のための180度の回動と、工作機械及び工具保持装置に対する工具の挿入,抜出しのための軸心方向における正逆両方向の移動であるものとし、本件考案の構成とすることに何等の困難性も認められない。
(相違点2について)
甲第2号証記載のものにおけるアーム軸のように、軸に対し共に回動するとともに軸心方向移動を許容する円筒状部材による回動と、レバーと係合する環状係合部による軸心方向の正逆移動を行う軸において、環状係合部を軸方向中間部とし、円筒状部材と反対側においても、ハウジングの外壁に支持させその方向からアーム軸を突出させることは、例えば甲第3、4号証刊行物にも示されるように周知の技術である。(甲第3号証刊行物に記載の従動軸12、ゼネバ歯車17の中央円筒部、枠体20、スリーブ13、箱体1、甲第4号証刊行物に記載の可動軸13、ゼネバギア36の中央円筒部、挺子桿37、係合部32、ハウジング10がそれぞれ、アーム軸、円筒状部材、レバー、環状係合部、ハウジングに相当する。)
また、相違点2における本件考案の構成に伴う装置の小型化という効果も、前記周知技術を甲第2号証記載のものに適用した場合に、当然予測される程度のものに過ぎない。
とすれば、甲第2号証刊行物に記載されたアーム軸について、前記周知技術を適用し、本件考案の構成とすることは、当業者が極めて容易になし得たものである。
(3)また、本件考案の構成を総合しても、甲第2号証刊行物、甲第1号証刊行物に記載の考案及び周知技術から予測される以上の格別の効果を有するとも認められない。
4.むすび
したがって、本件考案は、本件実用新案登録に係る出願の出願前に頒布された刊行物である甲第2号証、甲第1号証に記載された考案及び周知技術に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものであって、本件考案に係る実用新案登録は実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第37条第1項第1号に該当し、無効にすべきものである。
また、本件審判費用については、同法第41条において準用する特許法第169条第2項においてさらに準用する民事訴訟法第89条の規定を適用する。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1998-04-22 
結審通知日 1998-05-08 
審決日 1998-05-12 
出願番号 実願昭60-70823 
審決分類 U 1 112・ 121- Z (B23Q)
最終処分 成立    
特許庁審判長 城戸 博兒
特許庁審判官 桐本 勲
播 博
登録日 1996-08-12 
登録番号 実用登録第2132093号(U2132093) 
考案の名称 カム式自動工具交換装置  
代理人 池田 治幸  
代理人 原島 典孝  
代理人 鈴木 知  
代理人 中島 三千雄  
代理人 一色 健輔  
代理人 黒川 恵  
代理人 神戸 典和  
代理人 中島 敏  

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