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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01K
管理番号 1014947
審判番号 審判1996-17574  
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2000-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1996-10-17 
確定日 2000-03-22 
事件の表示 平成4年実用新案登録願第46882号「温度センサー」拒絶査定に対する審判事件(平成6年1月28日出願公開、実開平6-7029)について、次のとおり審決する。   
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1,本願考案
本願は、平成4年7月6日の出願であって、本願の請求項1及び請求項2に係る考案は、平成6年2月16日、平成8年6月17日及び平成8年11月19日に明細書が補正されたので、補正された明細書又は図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された下記の事項により特定されるものである。
請求項1
内燃機関の冷却水路に取り付けられるセンサーケースと、このセンサーケースの底部に配置された水温計用のサーミスターと、伝熱材に埋設され前記センサーケースの底部から突出して設けられた電子制御装置用のサーミスターと、この電子制御装置用のサーミスターと前記水温計用のサーミスターとの間に介在し、両サーミスター相互間の熱干渉を防止する断熱材と、からなることを特徴とする温度センサー。
請求項2
前記水温計用のサーミスターは伝熱材に埋設されていること、を特徴とする請求項1に記載の温度センサー。
2,刊行物の記載事項
原査定の拒絶理由に引用された、実願昭48-46359号(実開昭50-8978号)のマイクロフィルム(以下、刊行物1という。)及び実願昭62-62286号(実開昭63-168833号)のマイクロフィルム(以下、刊行物2という。)にはそれぞれ下記の事項が記載されている。
(1)刊行物1
「たとえば自動車エンジンの冷却水の温度を時々刻々と伝えるための計器(メータ)用のサーミスタとして1個を用い、他のサーミスタを冷却水の温度をある一定の範囲内に保つために各々規定の温度を検知し何らかの制御を行なう場合などに用いることができる。この場合、各々別々のケースにサーミスタを組込んだサーミスタ検出器を2個用いてもよいが、被測定部が同一で、取付け場所(検出位置)も同一の場合には一体とする方が無駄も少なく、コストも当然安価なものとなる。
しかし、上記のような同一ケース内にサーミスタを組込む場合、2個のサーミスタの内、1個は計器用で、他方は制御用であり」(第2頁14行?第3頁第7行)
「図において11は一部に断部を有して底部側の内径が開口部側のそれに対して小さい形状をした上部開口で内部中空の金属製のケース、12はケース11内の断部に密着して設けられた熱伝導性良好なワッシャ型金属板で、この金属板12はその周囲にシリコンオイルのような熱伝導良好な絶縁性液体(図示せず)を塗布している。13および14はケース11の内部底面上および金属板12上に載置されたサーミスタで、サーミスタ13はケース11の内部底面に直接半田付けされている。また、サーミスタ14はワッシャ形の金属製接触板15を介してコイルスプリング16によりワッシャ形金属版12側に押圧されており、これによりサーミスタ13および14はケース11の内部底面上および金属板12上に固定されている。」(第4頁16行?第5頁11行)
上記記載によれば、刊行物1には「サーミスタ検出器のケース11内に、1個はエンジンの冷却水の温度を伝えるサーミスタと、制御用のサーミスタを組込んでおり、ケース11途中の段部に設けられた金属板に押圧されたサーミスタ14と、ケース11の内部底面に直接半田付けされたサーミスタ13とよりなるサーミスタ検出器」が記載されている。
(2)刊行物2
「かかる従来の温度センサー(1A)及び(1B)にあっては、保護管(3)が金属材料または熱伝導率が5Kcal/mh℃以上の材料で構成されている為、測定したい部分に熱電対(2)の感温部(2’)を配置しても、保護管(3)を通じて測定したい部分以外の熱が熱電対(2)の感温部(2’)に伝導され、正確な温度測定が困難であった。」(第2頁11行?18行)
「本考案の温度センサー(7A)及び(7B)は図示するように、保護管(3)の熱電対(2)の感温部(2’)と対応する近傍の一部を切除し、この切除部分に熱電対(2)の嵌挿孔(8’)を有する断熱材(8)を介在する」(第4頁13行?17行)
「上記温度センサー(7A)及び(7B)であれば、測定したい部分以外の熱が保護管(3)を通じて熱電対(2)の感温部(2’)に伝導しようとしても、断熱材(8)により遮断され、熱電対(2)の感温部(2’)は測定したい部分以外の熱の影響を受けず正確な温度測定が行える。」(第5頁13行?19行)
上記記載によれば、測定したい部分以外の熱の影響を受けないようにするため、すなわち熱干渉を受けないようにするため、2つの温度センサーの間に断熱材を介在させる点が記載されている。
3,本願請求項1に係る考案と刊行物1に記載の考案との対比
刊行物1の「サーミスタ検出器」、「ケース11」は、本願請求項1に係る考案の「温度センサー」、「センサーケース」に相当し、刊行物1のサーミスタ検出器も自動車エンジンの冷却水の温度を検知していることから見て、ケース11が内燃機関の冷却水路に取り付けられていることは自明である。
また、本願請求項1に係る考案の「センサーケースの底部に配置されたサーミスター」における「底部」の意味について検討するに、本願の考案の実施例を示した図面の図1乃至図3には「底部」に設けられたとするサーミスタがいずれもセンサーケース途中に設けられており、一方、刊行物1のサーミスタ13は、ケース11途中の段部に設けられた金属板に押圧された位置にあることからみて、本願請求項1に係る考案と同様にセンサーケースの「底部」に配置されているものと認める。
よって、本願請求項1に係る考案は、刊行物1に記載の考案と
「内燃機関の冷却水路に取り付けられるセンサーケースと、このセンサーケースの底部に配置されたサーミスターと、前記センサーケースの底部から突出して設けられたサーミスターであって、一方のサーミスターが水温計用であり、他方のサーミスターが制御装置用である温度センサー。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1
本願請求項1に係る考案は、センサーケースの底部に設けられたサーミスターを水温計用とし、前記底部から突出したサーミスターを電子制御用としているのに対し、刊行物1に記載の考案は、2つのサーミスタの内、一方を水温計器用、他方を制御用としているものの、どちらに設けられるかを限定した記載がない点。
相違点2
本願請求項1に係る考案は、電子制御用のサーミスターと水温計用のサーミスターとの間にサーミスター相互間の熱干渉を防止する断熱材を設けたのに対し、刊行物1に記載の考案は、かかる構成がない点。
相違点3
本願請求項1に係る考案は、センサーケースの底部から突出して設けられたサーミスターが伝熱材に埋設されているのに対し、刊行物1にはかかる構成がない点。
4,相違点の判断
相違点1について
エンジンの制御として電子制御装置は周知慣用の技術手段であるから、制御用サーミスタを電子制御装置用サーミスタとしたとしても、格別の用途限定とは認められず、また一般に、ケースの先端側にサーミスターを配置した方が冷却水の水温を正確且つ応答性が速く測定できるものであるから、どちらをケースの先端側に配置するかは、この点を含め利害得失を勘案した上で当業者が適宜選択しうる程度の事項にすぎない。
相違点2について
刊行物2には、測定したい部分以外の熱の影響を受けないようにするため、すなわち熱干渉を受けないようにするため、2つの温度センサーの間に断熱材を介在させる点が記載されているから、相違点2は、刊行物1記載の考案に刊行物2記載の断熱材を適用することにより、当業者がきわめて容易に想到しうる程度のものにすぎない。
相違点3について
検出温度の応答性を良くするためにケース内のサーミスターを伝熱部材に埋設することは従来周知(例えば、実願昭59-169320号(実開昭61-84830号)のマイクロフィルム、実願昭58-37432号(実開昭59-142736号)のマイクロフィルム、実願昭59-49243号公報(実開昭60-161835号)のマイクロフィルム参照)であるから、相違点3は、刊行物1に記載の考案のサーミスタ13に前記周知技術を適用することにより、当業者がきわめて容易に想到しうる程度のことにすぎない。
そして、本願請求項1に係る考案の奏する作用効果は、刊行物1及び刊行物2の記載事項並びに前記周知技術から当業者が予測しうる程度のものにすぎない。
5,むすび
したがって、本願請求項1に係る考案は、刊行物1、刊行物2に記載された考案及び前記周知技術に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により実用新案登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1998-10-23 
結審通知日 1998-11-06 
審決日 1998-11-11 
出願番号 実願平4-46882 
審決分類 U 1 8・ 121- Z (G01K)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 榮永 雅夫  
特許庁審判長 高瀬 浩一
特許庁審判官 島田 信一
森 雅之
考案の名称 温度センサー  
代理人 磯野 道造  

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