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審決分類 審判 全部申し立て   F16H
審判 全部申し立て   F16H
管理番号 1015007
異議申立番号 異議1999-70673  
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-02-15 
確定日 2000-02-16 
異議申立件数
事件の表示 実用新案登録第2578677号「無段変速装置」の実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 実用新案登録第2578677号の実用新案登録を取り消す。
理由 I.手続の経緯
本件実用新案登録第2578677号の請求項1に係る考案は、平成4年5月15日に出願され、その後、平成10年5月29日に、その実用新案登録の設定登録がされたものである。これに対して、井関農機株式会社より実用新案登録異議の申立てがあったので、当審において、当該申立ての理由を検討し、実用新案登録取消理由を通知したところ、そこで指定した期間内の平成11年8月9日に意見書が提出されると共に訂正請求がされ、その訂正請求に対して、当審より平成11年8月30日付で訂正拒絶理由を通知して、意見書を提出する機会を与えたが、実用新案登録権者からは何らの応答もない。
II.訂正の適否
1.新規事項の追加について
上記訂正請求の訂正事項eにより、作用効果として「連結ロッドの略中間部を操作レバーに連結して両可変プーリのプーリ径を操作するようにしたから、両可変プーリに対する操作力が略均等に働き円滑な操作が行えると共に、操作力を軽減することができる。」との記載が追加されるが、「両可変プーリに対する操作力が略均等に働き円滑な操作が行えると共に、操作力を軽減することができる」ことについては、願書に添付した明細書又は図面に記載されておらず、かつ、これらから直接かつ一義的に導き出せる事項でもない。
2.独立登録要件について
(1)訂正明細書の請求項1に係る考案
訂正明細書の請求項1に係る考案(以下、「訂正考案」という。)は、訂正明細書及び図面からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「固定割りプーリに対向する可動割りプーリの接離動作に基づいてプーリ径を変化し得る一対の可変プーリを、プーリ径が互いに逆方向に変化するよう連結ロッドを介して連動連結すると共に、両可変プーリ間に懸回される伝動ベルトには、テンションプーリを押圧接当せしめてなる無段変速装置において、前記両可変プーリ間に、テンションプーリを付勢するための弾機を配置すると共に、連結ロッドを、弾機との干渉を避け伝動ベルト上を交叉させたクランク形状に形成し、かつ、その略中間部を操作レバーに連結したことを特徴とする無段変速装置。」
(2)引用刊行物
上記訂正考案に対し、当審が訂正拒絶理由通知に引用した刊行物1(実願平1-17666号(実開平2-109051号)のマイクロフィルム)には、
固定シェイブ12,18に対向する可動シェイブ13,19の接離動作に基づいてプーリ径を変化し得る駆動プーリ10及び受動プーリ16を、プーリ径が互いに逆方向に変化するようリンク41を介して連動連結すると共に、駆動プーリ10及び受動プーリ16間に懸回されるVベルトBには、テンションプーリ53を押圧接当せしめてなるプーリ式変速装置において、前記駆動プーリ10及び受動プーリ16間に、テンションプーリ53を付勢するためのばね54を配置すると共に、リンク41を、ばね54と干渉しないように、また、受動プーリ16の一側を囲縛するように配置し、かつ、受動プーリ16の接離動作を行う回動レバー33に取り付けられた操作レバー取付部34を操作レバーに連結したこと(第13頁第4行?第19頁第13行、第1,2図参照)が記載されている。
(3)対比・判断
訂正考案と上記刊行物1に記載された考案とを比較すると、刊行物1に記載された「固定シェイブ12,18」は訂正考案の「固定割りプーリ」、以下同様に「可動シェイブ13,19」は「可動割りプーリ」に、「駆動プーリ10及び受動プーリ16」は「一対の可変プーリ」に、「リンク41」は「連結ロッド」に、「VベルトB」は「伝動ベルト」に、「プーリ式変速装置」は「無段変速装置」に、「ばね54」は「弾機」にそれぞれ相当することより、両者は、固定割りプーリに対向する可動割りプーリの接離動作に基づいてプーリ径を変化し得る一対の可変プーリを、プーリ径が互いに逆方向に変化するよう連結ロッドを介して連動連結すると共に、両可変プーリ間に懸回される伝動ベルトには、テンションプーリを押圧接当せしめてなる無段変速装置において、前記両可変プーリ間に、テンションプーリを付勢するための弾機を配置した点で一致し、次の各点で相違する。
a.連結ロッドを、訂正考案では、弾機との干渉を避け伝動ベルト上を交叉させたクランク形状に形成しているに対し、刊行物1に記載されたものでは、弾機と干渉しないように配置されているものの、伝動ベルト上を交叉させたクランク形状に形成されていない点。
b.操作レバーを、訂正考案では、連結ロッドの略中間部に連結しているのに対し、刊行物1に記載されたものでは、プーリの接離動作を行う回動レバーに取り付けられた操作レバー取付部に連結している点。
そこで、上記相違点について検討すると、
・相違点aについて
上記刊行物1に記載されたものも、両可変プーリ間に、テンションプーリを付勢するための弾機が配置されているため、無段変速装置の大型化を招くことなく、無段変速装置を極めてコンパクトに構成することができるという訂正考案と同様な作用効果を奏するものであり、また、連結ロッドが、弾機と干渉しないように配置されているいる点でも、刊行物1に記載されたものと訂正考案とに差異はない。
そして、一対の可変プーリの各可動割りプーリが、伝動ベルトに対して互いに反対側に配置されるものであっては、それらの可動割りプーリを連動連結する連結ロッドとして、刊行物1に記載されたもののように一方の可変プーリの一側を囲繞する配置とするものの他に、訂正考案のように伝動ベルトを交叉する配置とするものも当業者がきわめて容易に想到することができるものである。
また、無段変速装置の設計上、連結ロッドと弾機が干渉する恐れがある場合、当然、その干渉を避けるべく連結ロッドの形状を考慮すべきものであるから、その形状をクランク形状とすることも、連結ロッドと弾機の配置関係を考慮して、当業者が適宜になす程度のことである。
よって、上記相違点aにおける訂正考案の構成は、当業者がきわめて容易に想到できたものである。
・相違点bについて
刊行物1に記載されたものも、操作レバーからの操作力が連結ロッドを介して可変プーリに連動される点では訂正考案と差はなく、その操作力を連動するための構成は、無段変速機及び操作機構のそれぞれの構成及び相互の配置関係により、当業者が設計上適宜に決め得るものであり、また、一対の可変プーリを連結ロッドを介して連動連結した無段変速装置において、その連結ロッドの略中間部を操作レバーに連結することは周知の技術(必要なら、実公昭45-14571号公報参照。)であるので、上記相違点bにおける訂正考案の構成も、当業者がきわめて容易に想到できたものである。
そして、訂正考案が上記各相違点における構成を備えることによる作用効果も、格別なものとは認められない。
(4)むすび
したがって、訂正考案は、上記刊行物1に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、実用新案法第3条第2項の規定により本件実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができないものである。
3.まとめ
以上のとおりであるから、この訂正は、平成6年法律第116号附則第9条第2項において準用する特許法第120条の4第3項でさらに準用する同法第126条第2項及び第4項の規定について、平成6年法律第116号附則第6条第1項の規定により、なお従前の例によるとされることから適用される平成5年特許法第126条第1項ただし書き及び第3項の規定に適合しないもので、当該訂正は認められない。
III.実用新案登録異議申立について
1.本件考案
本件実用新案登録第2578677号の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「固定割りプーリに対向する可動割りプーリの接離動作に基づいてプーリ径を変化し得る一対の可変プーリを、プーリ径が互いに逆方向に変化するよう連結ロッドを介して連動連結すると共に、両可変プーリ間に懸回される伝動ベルトには、テンションプーリを押圧接当せしめてなる無段変速装置において、前記両可変プーリ間に、テンションプーリを付勢するための弾機を配置すると共に、連結ロッドを、弾機との干渉を避けてクランク形状に形成したことを特徴とする無段変速装置。」
2.実用新案法第3条第2項について
(1)引用刊行物
上記本件考案に対し、当審が取消理由通知に引用した刊行物1は、上記訂正拒絶理由通知に引用した刊行物1と同一のものであり、上記した事項が記載されている。
(2)対比・判断
本件考案と上記刊行物1に記載された考案とを比較すると、刊行物1に記載された「固定シェイブ12,18」は本件考案の「固定割りプーリ」、以下同様に「可動シェイブ13,19」は「可動割りプーリ」に、「駆動プーリ10及び受動プーリ16」は「一対の可変プーリ」に、「リンク41」は「連結ロッド」に、「VベルトB」は「伝動ベルト」に、「プーリ式変速装置」は「無段変速装置」に、「ばね54」は「弾機」にそれぞれ相当することより、両者は、固定割りプーリに対向する可動割りプーリの接離動作に基づいてプーリ径を変化し得る一対の可変プーリを、プーリ径が互いに逆方向に変化するよう連結ロッドを介して連動連結すると共に、両可変プーリ間に懸回される伝動ベルトには、テンションプーリを押圧接当せしめてなる無段変速装置において、前記両可変プーリ間に、テンションプーリを付勢するための弾機を配置した点で一致し、
本件考案では、連結ロッドを、弾機との干渉を避けてクランク形状に形成しているに対し、刊行物1に記載されたものでは、弾機と干渉しないように配置されているものの、クランク形状に形成されていない点で相違する。
そこで、上記相違点について検討すると、
上記引用例1に記載されたものも、両可変プーリ間に、テンションプーリを付勢するための弾機が配置されているため、無段変速装置の大型化を招くことなく、無段変速装置を極めてコンパクトに構成することができるという本件考案と同様な作用効果を奏するものであり、また、連結ロッドが、弾機と干渉しないように配置されているいる点でも、引用例1に記載されたものと本件考案とに差異はない。そして、無段変速装置の設計上、連結ロッドと弾機が干渉する恐れがある場合、当然、その干渉を避けるべく連結ロッドの形状を考慮すべきもので、その際、その形状をクランク形状とすることも、連結ロッドと弾機の配置関係を考慮して、当業者が適宜になす程度のことである。よって、上記相違点における本件考案の構成は、当業者がきわめて容易に想到できたものである。
(3)むすび
したがって、本件考案は、上記刊行物1に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件考案の実用新案登録は、実用新案法第3条第2項に規定に違反してされたものである。
2.実用新案法第3条の2について
(1)先願明細書等の記載事項
上記本件考案に対し、当審が取消理由通知に引用した特願平4-100449号(特開平5-268812号)は、本件考案に係る出願の日前の他の出願であって、本件考案に係る出願後に出騒公開されたもので、その願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、「先願明細書等」という。)には、
固定割りプーリに対向する可動割りプーリの接離動作に基づいてプーリ径を変化し得る一対の割りプーリ16b,15aを、プーリ径が互いに逆方向に変化するよう連結ロッド18aを介して連動連結すると共に、両可変プーリ間に懸回される伝動ベルトには、テンションプーリを押圧接当せしめてなる無段変速装置において、連結ロッド18aを、クランク形状に形成した無段変速装置(上記先願明細書等を掲載した公開公報第2欄第30?36行、第4及び7図参照)が記載されている。
(2)対比・判断
本件考案と上記先願明細書等に記載された発明とを比較すると、先願明細書等に記載された「移動プーリ」及び「割りプーリ16b,15a」は、それぞれ本件考案の「可動割りプーリ」及び「一対の可変プーリ」に相当することから、両者は、固定割りプーリに対向する可動割りプーリの接離動作に基づいてプーリ径を変化し得る一対の可変プーリを、プーリ径が互いに逆方向に変化するよう連結ロッドを介して連動連結すると共に、両可変プーリ間に懸回される伝動ベルトには、テンションプーリを押圧接当せしめてなる無段変速装置において、連結ロッドを、弾機との干渉を避けてクランク形状に形成した無段変速装置点で一致し、本件考案では、両可変プーリ間に、テンションプーリを付勢するための弾機を配置すると共に、連結ロッドを、弾機との干渉を避けたものとしているのに対し、先願明細書等に記載された発明では、該弾機について明記されていない点で一応相違する。
そこで上記相違点について検討すると、
先願明細書等に記載されたものも、テンションプーリを伝導ベルトに押圧接当させていることより、該テンションプーリを付勢するために何らかの弾機を配置するものであることは当業者にとって自明なことであること、また、該弾機の配置を両可変プーリ間とすることは、実開平3-39657号公報、特開平3-79845号公報及び実開平2-109051号公報にも記載されているように、周知の技術であり、さらに、テンションプーリを付勢するための弾機を両可変プーリ間に配置した場合には、連結ロッドが該弾機との干渉を避けるように設けられることは、当然に行われる設計事項であることから、本件考案が上記相違点にのように構成を限定したことにより、先願明細書等に記載された発明と構成において実質的に差が生じるものではない。
(3)むすび
したがって、本件考案は、上記先願明細書等に記載された発明と同一であり、しかも、本件考案の考案者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本件実用新案登録に係る出願時に、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないから、本件考案の実用新案登録は、実用新案法第3条の2の規定に違反してされたものである。
4.まとめ
以上のとおりであるから、本件考案に係る実用新案登録は、拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものである。
よって、本件考案に係る実用新案登録は、平成6年法律第116号附則第9条第7項の規定に基づき適用される、平成7年政令205号第3条第1項及び第2項の規定により、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 1999-12-22 
出願番号 実願平4-39124 
審決分類 U 1 651・ 121- ZB (F16H)
U 1 651・ 113- ZB (F16H)
最終処分 取消    
前審関与審査官 中屋 裕一郎小谷 一郎  
特許庁審判長 舟木 進
特許庁審判官 鳥居 稔
佐藤 洋
登録日 1998-05-29 
登録番号 実用登録第2578677号(U2578677) 
権利者 三菱農機株式会社
島根県八束郡東出雲町大字揖屋町667番地1
考案の名称 無段変速装置  

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