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審決分類 審判 判定 同一 属する(申立て不成立) H04B
管理番号 1015021
判定請求番号 判定請求1999-60068  
総通号数 11 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案判定公報 
発行日 2000-11-24 
種別 判定 
判定請求日 1999-10-01 
確定日 2000-03-30 
事件の表示 上記当事者間の登録第2569864号の判定請求事件について、次のとおり判定する。   
結論 本件判定の請求は、成り立たない。
理由 1.請求の趣旨
本件平成11年判定請求60068号(以下「本件判定請求」という。)の請求の趣旨は、イ号図面並びにその説明書に記載する「簡易型携帯電話機の基地局」(以下「イ号物件」という)が、被請求人所有の実用新案登録2569864号(以下「本件実用新案登録」という)の技術的範囲に属しない、との判定を求めたものである。
2.本件実用新案登録
本件実用新案登録は、その明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、これを構成要件ごとに分説すると次のとおりである。
「【請求項1】
A その上部で耐雷施設である架空地線を支持し、
B その下部で商用電力配線および通信伝送線を支持する電柱に設けられる簡易型携帯電話機の基地局であって、
C 前記電柱は中空円柱状であって、頂部に開口部を有するとともに側壁にケーブル取出口が開口されていて、
D 前記電柱の頂部と前記架空地線との間に設けられ、前記電柱の頂部の開口部を覆いかつ垂直に延びるアンテナが設けられた円板状のアンテナ台、および
E 前記通信伝送線に吊下げられる送受信機を備え、
F 前記電柱の頂部の開口部と該電柱内部と該電柱の側壁に開口されたケーブル取出口とに前記商用電力配線と隔離してケーブルを挿通し、該ケーブルによって前記アンテナと前記送受信機とを接続することを特徴とする、簡易型携帯電話機の基地局。」
3.イ号物件
これに対し、イ号図面並びにその説明書に記載された「簡易型携帯電話機の基地局」の構成は、分説すると次のとおりである。
「a アンテナ本体(13)を内部に収容した中空円筒状のアーム(12)の上部で頂部蓋(18)を介して架空地線(100)を直接支持し、
b 電柱(11)の下部で通信伝送線(16)を支持する電柱に設けられる簡易型携帯電話機の基地局であって、
c 電柱(11)は中空円柱状であって、頂部に開口部(11A)を有するとともに側壁にケーブル取出口(11B)が開口されていて、
d-1 電柱(11)の頂部と架空地線(100)との間に設けられ、電柱の頂部の開口部(11A)を覆った円板状のアンテナ台(17)、
d-2 アンテナ台(17)の上に垂直に設けられ、中空の絶縁体で形成された中空円筒状のアーム(12)、
d-3 アーム(12)に内蔵されたアンテナ本体(13)、
d-4 アンテナ本体(13)の上端と下端をアーム(12)の中空部内で支持するための支持部材(14A,14B)、
d-5 アーム(12)の頂部を覆って、地線用碍子(18B)を支持する地線取り付け金具(18A)、および、
e 通信伝送線(16)に吊下げられる送受信機(15)を備え、
f 電柱(11)の頂部の開口部(11A)と電柱内部と電柱(11)の側壁に開口されたケーブル取出口(11B)とに商用電力配線と隔離してケーブル(19)を挿通し、ケーブル(19)によってアンテナ(13)と送受信機(15)とを接続する簡易型携帯電話機の基地局。」
4.当審の判断
そこで、本件実用新案登録とイ号物件とを対比、判断する。
(1) 前記構成要件Aとaについて
本件実用新案登録の構成要件Aは、「その上部で耐雷施設である架空地線を支持し、」というものであり、架空地線の支持構造については特定されていないが、その上部とは電柱の上部のことであるので、構成要件Aは電柱の上部において、任意の支持部材により架空地線を支持するものと解される。
これに対し、イ号物件の構成要件aは、「アンテナ本体(13)を内部に収容した中空円筒状のアーム(12)の上部で頂部蓋(18)を介して架空地線(100)を直接支持し、」というものであり、イ号図面を参酌すれば、電柱の上部に設けられた中空円筒状のアーム(12)と頂部蓋(18)を支持部材として、架空地線を支持するものである。
したがって、イ号物件の構成要件aは、本件実用新案登録の構成要件Aを充足する。
(2)前記構成要件Bとbについて
本件実用新案登録の構成要件Bは、「その下部で商用電力配線および通信伝送線を支持する電柱に設けられる簡易型携帯電話機の基地局であって、」である。
これに対し、イ号物件の構成要件bは、「電柱(11)の下部で通信伝送線(16)を支持する電柱に設けられる簡易型携帯電話機の基地局であって、」であり、商用電力配線を支持する点は、前記イ号物件の構成要件fに「商用電力配線と隔離してケーブル(19)を挿通し」との記載があることから、該商用電力配線もあるものと認められる。
したがって、イ号物件の構成要件bは、本件実用新案登録の構成要件Bを充足する。
(3)前記構成要件Cとcについて
本件実用新案登録の構成要件Cは、「前記電柱は中空円柱状であって、頂部に開口部を有するとともに側壁にケーブル取出口が開口されていて、」であり、また、イ号物件の構成要件cは、「電柱(11)は中空円柱状であって、頂部に開口部(11A)を有するとともに側壁にケーブル取出口(11B)が開口されていて、」であるから、明らかにイ号物件の構成要件cは、本件実用新案登録の構成要件Cを充足する。
(4)前記構成要件Dとd-1?d-5について
本件実用新案登録の構成要件Dは、「前記電柱の頂部と前記架空地線との間に設けられ、前記電柱の頂部の開口部を覆いかつ垂直に延びるアンテナが設けられた円板状のアンテナ台、および」というものである。ここで、「円板状のアンテナ台」は、電柱の頂部の開口部を覆い、また、明細書中には特にその構造は規定されていないが、アンテナを垂直に支持固定するためのなんらかの支持手段を有するものと解される。
そこで、イ号物件の構成要件d-1?d-5についてみると、イ号物件の構成要件d-1は「電柱(11)の頂部と架空地線(100)との間に設けられ、電柱の頂部の開口部(11A)を覆った円板状のアンテナ台(17)、」、構成要件d-2は「アンテナ台(17)の上に垂直に設けられ、中空の絶縁体で形成された中空円筒状のアーム(12)、」、構成要件d-3は「アーム(12)に内蔵されたアンテナ本体(13)、」、構成要件d-4は「アンテナ本体(13)の上端と下端をアーム(12)の中空部内で支持するための支持部材(14A,14B)、」というものである。
このイ号物件の構成要件d-1で示される円板状のアンテナ台(17)は、電柱(11)の頂部の開口部(11A)の全体を覆っているのか、また、構成要件d-2で示される中空円筒状のアーム(12)との接続部分において、該アーム(12)の内径に相当する穴(該アーム(12)の内部と電柱(11)の内部を連通する穴)を有するものであるのかは、イ号図面並びにその説明書を参酌しても明らかではないが、もし電柱(11)の頂部の開口部(11A)の全体を覆っているとすると、前記構成要件d-3で示されるアンテナ本体(13)は、前記構成要件d-2で示される中空の絶縁体で形成された中空円筒状のアーム(12)と、前記構成要件d-4で示されるアンテナ本体(13)の上端と下端をアーム(12)の中空部内で支持するための支持部材(14A,14B)との支持手段によって、前記円板状のアンテナ台(17)に垂直に固定されるものであり、また、前記構成要件d-1に示されるように円板状のアンテナ台(17)は、「電柱(11)の頂部と架空地線(100)との間に設けられ」ているのであるから、イ号物件の構成要件d-1?d-4は本件実用新案登録の構成要件Dを充足するものといえる。
また、イ号物件の構成要件d-1で示される円板状のアンテナ台(17)が、構成要件d-2で示される中空円筒状のアーム(12)において、該アーム(12)の内径に相当する穴(該アーム(12)の内部と電柱(11)の内部を連通する穴)を有するものであるとしても、該円板状のアンテナ台(17)に加えて、前記構成要件d-2で示される中空の絶縁体で形成された中空円筒状のアーム(12)と、前記構成要件d-4で示されるアンテナ本体(13)の下端をアーム(12)の中空部内で支持するための支持部材(14B)とによって、電柱(11)の頂部の開口部(11A)を覆うことになり、また、前記構成要件d-3で示されるアンテナ本体(13)は、前記構成要件d-2で示される中空の絶縁体で形成された中空円筒状のアーム(12)と、前記構成要件d-4で示されるアンテナ本体(13)の上端と下端をアーム(12)の中空部内で支持するための支持部材(14A,14B)との支持手段によって、前記円板状のアンテナ台(17)に垂直に固定されるものである。そして、電柱(11)の頂部の開口部(11A)を覆っている円板状のアンテナ台(17)、中空円筒状のアーム(12)及び支持部材(14B)は、イ号図面を参照すれば、電柱(11)の頂部と架空地線(100)との間に設けられていることは明らかであるから、イ号物件の構成要件d-1?d-4は本件実用新案登録の構成要件Dを充足するものといえる。
なお、イ号物件の構成要件d-5は「アーム(12)の頂部を覆って、地線用碍子(18B)を支持する地線取り付け金具(18A)、および、」というものであり、アーム(12)の頂部で架空地線を支持するものと認められる。しかし、本件の構成要件Dでは、架空地線とその支持構造についてはなんら限定しておらず、また、前記4(1)でも述べたように、その支持構造は任意のものでよい。してみれば、イ号物件が前記d-5の構成を有しているからといって、イ号物件の構成要件b-1?b-4が本件構成要件Dを充足しないとすることはできない。
(5)前記構成要件Eとeについて
本件実用新案登録の構成要件Eは、「前記通信伝送線に吊下げられる送受信機を備え、」であり、また、イ号物件の構成要件eは、「通信伝送線(16)に吊下げられる送受信機(15)を備え、」であるから、明らかにイ号物件の構成要件eは、本件実用新案登録の構成要件Eを充足する。
(6)前記構成要件Fとfについて
本件実用新案登録の構成要件Fは、「前記電柱の頂部の開口部と該電柱内部と該電柱の側壁に開口されたケーブル取出口とに前記商用電力配線と隔離してケーブルを挿通し、該ケーブルによって前記アンテナと前記送受信機とを接続することを特徴とする、簡易型携帯電話機の基地局。」であり、また、イ号物件の構成要件fは、「電柱(11)の頂部の開口部(11A)と電柱内部と電柱(11)の側壁に開口されたケーブル取出口(11B)とに商用電力配線と隔離してケーブル(19)を挿通し、ケーブル(19)によってアンテナ(13)と送受信機(15)とを接続する簡易型携帯電話機の基地局。」であるから、明らかにイ号物件の構成要件fは、本件実用新案登録の構成要件Fを充足する。
(7)なお、請求人は、判定請求の理由において次のように主張している。
(イ)本件判定被請求人は、アンテナを既設の電柱の頂部に設けるのみでは登録に無理があることを以って、アンテナの構成配置に限定を加えて権利化を図ったのである。したがって、アンテナの構成配置は、本件登録実用新案の請求項1における上記構成要件Dに記載の事項に限定されるべきものと解する。加えて、平成9年6月23日付意見書の第1項最下行?第2項第1行において、「本願考案は既設の電柱にアンテナを設けることを要旨とする」ことを主張しており、つまり、本考案は、架空地線を支持するための既設の部材とは別個に、電柱の頂部を覆うようにして円板状のアンテナ台を設け、そのアンテナ台に垂直に延びるアンテナを設けた構造に限定されると解する。
(ロ)本件登録実用新案は既設の電柱にアンテナを設けることに要旨を求めるものであって、その実用新案登録請求の範囲における「前記電柱の頂部の開口部を覆いかつ垂直に延びるアンテナが設けられた円板状のアンテナ台」との記載より、アンテナはアンテナ台に直接に設けられており、かつアンテナを設けたアンテナ台は電柱頂部の開口部を覆っていることを要すると解釈するのが妥当であり、イ号物件の如くアームおよび支持部材までも用いてアンテナをアームに内蔵して支持させることまでも包含できるはずはなく、アンテナはアンテナ台にそのまま露出状態で設けられているに過ぎないと解する。他方、イ号物件においては、アンテナはアンテナ台に直に設けられているのではなく、アンテナはアンテナ台に設けられたアームに設けられた支持部材に取付けられている。イ号物件においては、中空のアームの内部に、支持部材を用いてアンテナ本体を収納し、かつこのアームを設けたアンテナ台により開口部を覆っている。
(ハ)架空地線の支持構造についても、イ号物件と登録実用新案で全く異なる。登録実用新案の請求の範囲においては、単に「その上部で…(中略)…架空地線を支持し」とあるだけであり、この支持の仕方については、何ら記載もない。ここで、請求の範囲からは、上部とは「商用電力配線および通信伝送線を支持する電柱の下部」に対する「電柱の上部」を意味するだけで、その意味は明確ではない。アンテナ台が架空地線との関係で規定されている以上、架空地線の支持構造も特定しておくべきであるが、その支持構造が明示されていない以上、架空地線の支持は出願当時の技術に従ったものと思料する。しかして、その支持構造は本件登録実用新案の明細書に添付の図1に示されている如き支持棒、つまり電柱に対してアンテナ台とは別体に取付けられている支持棒を含むものであるを相当とする。これに対し、イ号物件では、上述したアンテナ本体を内部に収容した中空円筒状アームという本件登録実用新案に欠けている部材を利用し、その頂部に設けた頂部蓋を介してアームにより架空地線を支持する。このように、明細書の記載を参酌すると、「その上部で架空地線を支持し」とは、電柱の上部において、アンテナ台とは別個の支持具を用いて支持するものであると解される。加えて、本件出願人は、その明細書において登録実用新案の効果に関し、「電柱と一体化(アンテナおよび柱体内ケーブル)しているため、人目につかず都市景観を損なうことがない。」と記載している。このことから、本件出願人は電柱と一体化されるのは、電柱の頂部におけるアンテナおよびアンテナと送受信機をつなぐ電柱の内部を通るケーブルであると認識しており、架空地線の支持具までも電柱と一体化することについては何らの認識も意図もないと考えられる。
そこで、前記請求人の主張について検討する。
(イ)の主張について
確かに被請求人は平成9年6月23日付意見書の第1項最下行?第2項第1行において、「本願考案は既設の電柱にアンテナを設けることを要旨とする」と記載しているが、この既設の電柱が架空地線を支持する電柱であるとは記載しておらず、また、明細書中にもそのような記載は認められない。
したがって、この記載から請求人が主張するような内容にまで限定して解釈すべき理由は見当たらない。
(ロ)の主張について
本件実用新案登録における「前記電柱の頂部の開口部を覆いかつ垂直に延びるアンテナが設けられた円板状のアンテナ台」は、前記4(4)で述べたように電柱の頂部の開口部を覆い、アンテナを垂直に支持固定するためのなんらかの支持手段を有するものであれば足りるものである。そして、イ号物件は、円板状のアンテナ台(17)、中空円筒状のアーム(12)及び支持部材(14A,14B)によって、電柱の頂部の開口部を覆いかつアンテナを垂直に支持固定するものであり、機能的にも差異は認められない。また、本件登録実用新案において、アンテナが露出状態で設けられるという限定はないのであるから、請求人が主張するような内容にまで限定して解釈すべき理由は見当たらない。
(ハ)の主張について
本件実用新案登録における「その上部で耐雷施設である架空地線を支持し、」では、前記4(1)でも述べたようにその架空地線の支持構造については特定されておらず、また、この点について確かに明細書には電柱の上部において、電柱(6)の頂部側面に取り付けられた支持棒(13)によって架空地線を支持することが記載されている。しかしながら、本件実用新案登録の「架空地線と電柱頂部の間に施設するため、雷撃を受けてもアンテナ・基地局自身に影響をうけることがない。」(公報第3頁第6欄第5行?7行参照)との効果を得るためには、電柱頂部より上に架空地線を支持できる機能を有する支持部材であればよいのであるから、前記明細書中に記載されている支持棒(13)に限定して解釈する必要もなく、また、その支持部材がアンテナ本体を収容しているか否か、架空地線の支持具を電柱と一体化するか否かを考慮する必要もない。
したがって、請求人が主張するような内容にまで限定して解釈すべき理由は見当たらない。
5.むすび
以上のとおりであるから、イ号図面並びにその説明書に記載する「簡易型携帯電話機の基地局」は、本件実用新案登録の技術的範囲に属するものである。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2000-03-14 
出願番号 実願平5-66869 
審決分類 U 1 2・ 1- YB (H04B)
最終処分 不成立    
前審関与審査官 井関 守三  
特許庁審判長 内藤 照雄
特許庁審判官 吉見 信明
金子 幸一
登録日 1998-02-06 
登録番号 実用新案登録第2569864号(U2569864) 
考案の名称 簡易型携帯電話機の基地局  
代理人 阿部 和夫  
代理人 橋本 傳一  
代理人 谷 義一  

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