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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 無効としない G09F 審判 全部無効 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 無効としない G09F 審判 全部無効 特許請求の範囲の実質的変更 無効としない G09F |
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管理番号 | 1016773 |
審判番号 | 審判1999-35392 |
総通号数 | 12 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案審決公報 |
発行日 | 2000-12-22 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1999-07-29 |
確定日 | 2000-05-10 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2006094号実用新案「表示装置」の実用新案登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯・訂正の内容 本件登録第2006094号実用新案(平成2年8月21日出願、平成6年2月14日設定登録)の願書に添付した明細書(実公平5-16599号公報参照)は、平成10年審判第39080号の審決により、訂正審判請求書添付の訂正明細書のように、即ち次の[1]乃至[4]のように訂正することが認められたものである。(以下、その訂正前の明細書を単に「原明細書」という。) [1]原明細書の実用新案登録請求の範囲の 「ばね弾力により挟み片対を閉じる一対の可動片の一側のハンドル部片から球条突起を突出して成るクリップ本体と、両端面に前記の球状突起に合致する截頭球状凹面を設けると共にその各截頭球状凹面に前記クリップ本体等の球状突起等を緊密にかつ回転自由に嵌める筒形片と、該筒形片の截頭球状凹面に回転自由に嵌める球状突起を設けたカード挟み本体若しくは前記クリップ本体と同形のカード挟み本体とからなることを特徴とする表示装置。」を 「ばね弾力により挟み片対を閉じる一対の可動片の一側のハンドル部片から短い頸部を持つ球状突起を突出して成るクリップ本体と、両端面に前記の球状突起に合致する截頭球状凹面を設けると共に一方の截頭球状凹面に前記頚部を直角まで曲げて嵌める欠溝を設けその各截頭球状凹面に前記クリップ本体等の球状突起等を前記頸部との連結部が前記端面の外側に位置するように、緊密にかつ回転自由に嵌める筒形片と、短い頸部を持ち、前記筒形片の截頭球状凹面に前記頸部との連結部が前記筒形片の端面の外側に位置するように、回転自由に嵌める球状突起を設けたカード挟み本体若しくは前記クリップ本体と同形のカード挟み本体とからなることを特徴とする表示装置。」と訂正する。 [2]原明細書の第3頁第9行目から第14行目(公告公報第1頁第2欄第8行目から第13行目)の「一対の可動片の一側のハンドル部片から球条突起を突出して成るクリップ本体と、両端面に前記の球状突起に合致する截頭球状凹面を設けると共にその各截頭球状凹面に前記クリップ本体の球状突起等を回転自由に嵌める筒形片と、該筒形片の截頭球状凹面に回転自由に嵌める球状突起を設けた」を「一対の可動片の一側のハンドル部片から短い頸部を持つ球状突起を突出して成るクリップ本体と、両端面に前記の球状突起に合致する截頭球状凹面を設けると共に一方の截頭球状凹面に前記頚部を直角まで曲げて嵌める欠溝を設けその各截頭球状凹面に前記クリップ本体等の球状突起等を前記頸部との連結部が前記端面の外側に位置するように、緊密にかつ回転自由に嵌める筒形片と、短い頸部を持ち、前記筒形片の截頭球状凹面に前記頸部との連結部が前記筒形片の端面の外側に位置するように、回転自由に嵌める球状突起を設けた」と訂正する。 [3]原明細書の第7頁第1行目(公告公報第2頁第3欄第32行目)の「截頭球状凹面17を圧入連結を施し、」を「截頭球状凹面17を球状突起13と頸部12との連結部が端面16の外側に位置するように、圧入連結を施し、」と訂正する。 [4]原明細書の第7頁第3行目(公告公報第2頁第3欄第34行目)の「球状突起22を緊密に」を「球状突起22を頸部21との連結部が端面16の外側に位置するように、緊密に」と訂正する。 2.請求人の主張 これに対して、請求人は、 (a)実用新案登録請求の範囲の訂正は、出願当初の実用新案登録請求の範囲を実質上変更するものである(以下、「理由a」という。)、 (b)訂正後の実用新案登録請求の範囲には、考案の不可欠構成事項が記載されていないから、実用新案登録出願の際、独立して実用新案登録を受けることができないものである(以下、「理由b」という。)、 (c)考案の詳細な説明の訂正は、実用新案登録請求の範囲の訂正に伴う明瞭でない記載の釈明に相当するものではなく、実質上実用新案登録請求の範囲を変更するものである(以下、「理由c」という。)、 (d)訂正後の実用新案登録請求の範囲に記載されている事項により構成される考案が、甲第4号証、甲第5号証及び卓上ペンホルダに見られる周知技術に基づいて当業者が極めて容易に考案をすることができたものであって、実用新案登録出願の際、独立して実用新案登録を受けることができないものである(以下、「理由d」という。)、 (e)訂正後の考案の詳細な説明は、当業者がその考案を実施し得る程度に記載されていない(以下、「理由e」という。)、 (f)訂正後の実用新案登録請求の範囲に記載の考案は、訂正後の考案の詳細な説明に記載されていないものであるから、実用新案登録出願の際、独立して実用新案登録を受けることができないものである(以下、「理由f」という。)、 の各理由により、本件登録実用新案に係る訂正は旧実用新案法第39条第1項乃至第3項に違反し無効である旨の主張をしている。 3.当審の判断 上記各理由について以下検討する。 理由aについて 実用新案登録請求の範囲の訂正について検討するに、「球状突起」を「短い頸部を持つ球状突起」及び「短い頸部を持ち前記・・・球状突起」に訂正し、「筒形片」を「一方の截頭球状凹面に前記頚部を直角まで曲げて嵌める欠溝を設け」た構成に訂正することは、夫々原明細書中に実施例として記載されていた通りの構成に限定するものであり、また、「球状突起」と「筒形片」との嵌合位置関係を「前記頸部との連結部が前記端面の外側に位置するように、」及び「前記頸部との連結部が前記筒形片の端面の外側に位置するように、」と訂正することは、実施例である第1図に明確に示されている通りの位置関係に限定するものであるから、本訂正は実用新案登録請求の範囲の減縮を目的としたものである。 さらに、本訂正は「カードを最も見易い角度若しくは注目を惹き易い角度に表示できる」という原明細書に記載の目的の範囲内で、かつ、実施例として開示されていた通りの構成に限定するものであり、このような訂正が実質上実用新案登録請求の範囲を何等変更するものでないことは明らかである。 理由bについて 請求人は、頚部の材質が、可撓性又は屈曲性を有する関節機能を具有している剛体でないことが明らかである以上、頚部それ自体を「直角まで曲げる(ベンドする、屈曲する)」ことはできないものであり、「一方の截頭球状凹面に前記頚部を直角まで曲げて嵌める欠溝を設け」というような表現を、実用新案登録請求の範囲に加入訂正することは、訂正後の実用新案登録請求の範囲に考案の不可欠構成事項が記載されていないことになる旨の主張をしている。 しかしながら、「頚部を直角まで曲げて」とは、「頚部を直角まで倒して」或いは「頚部を直角まで傾けて」の意味であることは、明細書全体の記載及び第1図に示された構成から明らかであって、何等実施不可能な表現ではない。 したがって、「頚部を直角まで曲げて」という記載の存在を根拠に、訂正後の実用新案登録請求の範囲に考案の不可欠構成事項が記載されていないとすることは相当でない。 理由cについて 考案の詳細な説明の訂正は、いずれも、実用新案登録請求の範囲の訂正事項に整合させるためになされたものであり、明瞭でない記載の釈明に相当するものである。 一方、請求人は、考案の詳細な説明の訂正が、実質上実用新案登録請求の範囲を変更するものであるとする根拠を何等示しておらず、このような請求人の主張は到底認められない。 理由dについて 甲第4号証(実公昭40-25486号公報)には、ばね弾力により挟み片対を閉じる一対の可動片の一側のハンドル部片から棒状突起を突出して成る挟持体(クリップ本体に相当)と、一端面に前記の棒状突起を係合固定すると共に他端面に球状突起に合致する截頭球状凹面を設けた取付杆と、短い頸部を持ち、前記取付杆の截頭球状凹面に前記頸部との連結部が前記取付杆の端面の外側に位置するように、回転自由に嵌める球状突起を設けた額縁(カード挟み本体に相当)からなる写真挟み(表示装置に相当)が記載されている。 また、甲第5号証(実公昭43-11541号公報)には、車検標を表示ケース(カード挟み本体に相当)に内蔵し、且つ該表示ケース及びその取付基板にT状の摺動溝(欠溝に相当)を形成すると共に球状突起に合致した球状凹面を有する自由接手を夫々固定し、これにL状に形成した保持腕の両端に設けられた短い頸部を持つ球状部(球状突起に相当)を各々連結して成ることを特徴とする車検標表示装置(表示装置に相当)であって、T状の摺動溝によって、前記頚部を直角まで曲げて嵌めうるものが記載されている。 訂正後の実用新案登録請求の範囲に記載された考案(以下、「本件考案」という。)と上記甲第4号証及び甲第5号証に記載のものとを比較すると、甲第4号証及び甲第5号証に記載のものは、少なくとも本件考案を特定する事項である、筒形片に「両端面に球状突起に合致する截頭球状凹面を設けると共に一方の截頭球状凹面に(球状突起の)頚部を直角まで曲げて嵌める欠溝を設け」た構成を具備していない。 そして、本件考案は上記構成により、「カードを最も見易い角度若しくは注目を惹き易い角度に表示できる」、「意外性を持つカード表示が簡易にできる」という明細書に記載の効果を奏するものである。 確かに、甲第4号証には、球状突起に合致する截頭球状凹面を設けた取付杆が記載されているが、このものは、取付杆の一端面にのみ截頭球状凹面を設ける構成であり、カード等の表示角度が大幅に制限されるものである。しかも、截頭球状凹面に(球状突起の)頚部を直角まで曲げて嵌める欠溝を設けることは全く想定されていない。 また、甲第5号証には、保持腕の両端部に設けた球状突起を該球状突起に合致する球状凹面を設けた各自由接手に係合すると共に、該球状凹面に(球状突起の)頚部を直角まで曲げて嵌める欠溝を設けたものが記載されているが、このものは、截頭球状凹面とはなっておらず、欠溝を設けることにより初めて保持腕が摺動出来る構成であるため、カード等の表示角度が欠溝の範囲内のみに制限されるものである。 したがって、截頭球状凹面に更に欠溝を設ける ことは、上記甲各号証に記載の技術からは想到し得ないことである。 一方、卓上ペンホルダーに見られるように「球状突起を回転自由に嵌めた截頭球状凹面の一部を有する筒形片に(球状突起の)頚部を直角まで倒して嵌める欠溝を設け」た構成は周知のものと認められるが、筆記具関連用品である卓上ペンホルダは、表示装置とは全く異なる技術分野に属するものであり、欠溝を設ける目的も、不使用時或いは運搬時に頚部を直角まで倒して邪魔にならない位置に固定することにあり、表示装置における表示角度の拡大という目的とは異なるものと認められる。 よって、ペンホルダーに関する技術を、表示装置における截頭球状凹面を設けた筒形片に適用すること自体、共通する課題が何等存在しない以上、当業者といえども極めて容易に想到し得ないことである。 以上のとおりであって、本件考案が甲第4号証、甲第5号証及び卓上ペンホルダーに見られる周知の構成に基づいて、本件考案の進歩性を否定し、本件考案が登録要件を具備しないとする請求人の主張は認めることができない。 理由eについて 請求人は、考案の詳細な説明にある「一方の截頭球状凹面17に前記頚部12を直角まで曲げて」という記載を根拠に、頚部の材質が、可撓性又は屈曲性を有する関節機能を具有している剛体でないことが明らかである以上、頚部それ自体を「直角まで曲げる(ベンドする、屈曲する)」ことはできないものであって、訂正後の考案の詳細な説明は当業者がその考案を実施し得る程度に記載されていない旨の主張をしている。 しかしながら、「頚部を直角まで曲げて」とは、「頚部を直角まで倒して」或いは「頚部を直角まで傾けて」の意味であることは、明細書全体の記載及び第1図に示された構成から明らかであって、何等実施不可能な表現ではない。 したがって、上記請求人の主張は認めることができない。 理由fについて 訂正後の実用新案登録請求の範囲に記載の事項を検討するに、これらは全て訂正後の考案の詳細な説明に記載されているところである。 一方、請求人は、訂正後の実用新案登録請求の範囲に記載の考案が、訂正後の考案の詳細な説明に記載されていないとする根拠を何等示しておらず、このような請求人の主張は到底認められない。 4.むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張する理由及び証拠によっては本件考案に係る訂正を無効にすることはできない。 また、他に本件考案を無効とする理由も存在しない。 審判に関する費用については、実用新案法第41条の規定により準用する特許法第162条第2項の規定でさらに準用する民事訴訟法第61条の規定を適用する。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2000-02-14 |
結審通知日 | 2000-03-07 |
審決日 | 2000-03-22 |
出願番号 | 実願平2-87793 |
審決分類 |
U
1
112・
855-
Y
(G09F)
U 1 112・ 534- Y (G09F) U 1 112・ 121- Y (G09F) |
最終処分 | 不成立 |
特許庁審判長 |
田中 秀夫 |
特許庁審判官 |
和泉 等 藤本 信男 |
登録日 | 1994-02-14 |
登録番号 | 実用新案登録第2006094号(U2006094) |
考案の名称 | 表示装置 |
代理人 | 三宅 始 |
代理人 | 野中 誠一 |
代理人 | 佐當 彌太郎 |