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審決分類 審判 一部申し立て   G03B
審判 一部申し立て   G03B
管理番号 1016784
異議申立番号 異議1999-71869  
総通号数 12 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-12-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-05-11 
確定日 2000-03-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 登録第2584886号「カメラ用レンズシャッタ装置」の請求項1ないし3、及び5に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 登録第2584886号の請求項1ないし4に係る実用新案登録を維持する。
理由 (1)手続の経緯
実用新案登録第2584886号の請求項1?4に係る考案は、平成5年5月6日に実用新案登録出願され、平成10年9月4日にその実用新案の設定登録がなされ、その後異議申立人有限会社オフィスアテナにより異議の申立がなされ、その指定期間内である平成11年9月27日に訂正請求がなされた後、訂正拒絶理由が通知され、訂正拒絶理由に対して平成12年2月8日に手続補正書が提出されたものである。
(2)訂正の適否についての判断
(ア)訂正請求に対する補正の適否について
訂正請求に対する補正は、訂正請求書の要旨を変更するものではなく、特許法第120条の4第3項において準用する同法第131条第2項の規定に適合する。
(イ)訂正の内容
訂正事項a
訂正前の請求項4及び6を削除して、実用新案登録請求の範囲の請求項1?6を
「【請求項1】 電流の向きにより往復回動する開き用モー夕と閉じ用モー夕と、前記モー夕により往復駆動される開き用シャツ夕羽根と閉じ用シャツ夕羽根と、撮影の都度、初期位置から所定の撮影条件設定位置へ動かされ撮影終了後、前記初期位置へ復帰するセット機構とを備え、
前記セット機構には前記初期位置において少なくとも一方の前記モー夕の回転子の動きを拘束し、前記シャツ夕羽根を閉じ位置に保持するための係止部が設けられていて、前記係止部は、前記モー夕の回転子と一体に設けられたシャツ夕羽根駆動用のピンと係合するようにした
ことを特徴とするカメラ用レンズシャツ夕装置。
【請求項2】 前記セット機構が絞り口径のセット機構であることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用レンズシャツ夕装置。
【請求項3】 前記セット機構が焦点調整用レンズのセット機構であることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用レンズシャツ夕装置。
【請求項4】 前記セット機構はパルスモー夕によって往復作動されることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のカメラ用レンズシャツ夕装置。」と訂正する。
訂正事項b
明細書の段落【0005】,【0006】及び【0007】の記載を
「【0005】
上記の目的を達成するために、本考案においては、電流の向きにより往復回動する開き用モー夕と閉じ用モー夕と、前記モー夕により往復駆動される開き用シャツ夕羽根と閉じ用シャツ夕羽根と、撮影の都度、初期位置から所定の撮影条件設定位置へ動かされ撮影終了後、前記初期位置へ復帰するセット機構とを備え、前記セット機構には前記初期位置において少なくとも一方の前記モー夕の回転子の動きを拘束し、前記シャツ夕羽根を閉じ位置に保持するための係止部が設けられていて、前記係止部は、前記モー夕の回転子に設けられたシャツ夕羽根駆動用のピンに係合するようにする。
【0006】
また、前記セット機構は、絞り口径もしくは焦点調整用レンズのセット機構であるように構成することが好ましい。
【0007】
また、初期位置からの往復運動をパルスモー夕によって行うように構成することが好ましい。」と訂正する。
訂正事項c
明細書の段落【0018】の記載を
「【0018】
【考案の効果】
以上のように、本考案によれば、開き用と閉じ用のシャツ夕羽根をそれぞれ開き用と閉じ用のムービングマグネット型モー夕の往復回動に連動して作動させるカメラ用レンズシャツ夕装置において、露光開始前に常に初期位置から移動して絞り口径などの撮影条件を設定するようになされたセット機構にその初期位置において少なくとも一方のモー夕の回動を拘束するための係合部を設けたものであるから、非撮影時において、たとえ強い振動や衝撃を受けてもシャツ夕羽根は開くことなく、不慮の露光を避けることができる。」と訂正する。
(ウ)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項aに係る訂正は、実用新案登録請求の範囲の減縮、および明瞭でない記載の釈明に該当し、実質的に実用新案登録請求の範囲を拡張又は変更するものではないし、新規事項の追加にも該当しない。
訂正事項b及びcに係る訂正は、明瞭でない記載の釈明に該当し、実質的に実用新案登録請求の範囲を拡張又は変更するものではないし、新規事項の追加にも該当しない。
(エ)独立登録要件の判断
(訂正明細書の請求項1?4に係る考案)
「【請求項1】 電流の向きにより往復回動する開き用モー夕と閉じ用モー夕と、前記モー夕により往復駆動される開き用シャツ夕羽根と閉じ用シャツ夕羽根と、撮影の都度、初期位置から所定の撮影条件設定位置へ動かされ撮影終了後、前記初期位置へ復帰するセット機構とを備え、
前記セット機構には前記初期位置において少なくとも一方の前記モー夕の回転子の動きを拘束し、前記シャツ夕羽根を閉じ位置に保持するための係止部が設けられていて、前記係止部は、前記モー夕の回転子と一体に設けられたシャツ夕羽根駆動用のピンと係合するようにした
ことを特徴とするカメラ用レンズシャツ夕装置。
【請求項2】 前記セット機構が絞り口径のセット機構であることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用レンズシャツ夕装置。
【請求項3】 前記セット機構が焦点調整用レンズのセット機構であることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用レンズシャツ夕装置。
【請求項4】 前記セット機構はパルスモー夕によって往復作動されることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のカメラ用レンズシャツ夕装置。」(以下、「本件請求項1?4に係る考案」という。)
(引用刊行物)
当審が平成11年11月24日付で通知した訂正拒絶理由、および平成11年7月9日付で通知した取消理由で引用した刊行物〔実願昭63-162022号(実開平2-83532号)のマイクロフィルム〕には、
「以下図面に示した一実施例に基づき本考案を詳述する。第1図及び第2図において、1はレンズ鏡筒1aと弧状スロット1bを有するシャッター基板、2はレンズ鏡筒1aに回動可能に装架されていて段部2aを形成したリング状のレンズ駆動部材、3はシャッター基板1上に軸4により回動可能に支持されていて弧状スロット1bを介してシャッター基板の裏側に突出したピン3aとスロット3bとレンズ駆動部材の段部2aに係合可能の端部3cとを有する羽根開閉部材、5はシャッター基板との間に羽根開閉部材3を挟むような関係でシャッター基板1上に取り付けられていて羽根開閉部材のスロット3bに嵌合するピン5aを有するローター5Aを含む電磁アクチュエーター、6はシャッター基板1の裏側表面上に枢着されていて羽根開閉部材3にピン3aとピン‐スロット連結されているシャッター羽根である。尚、羽根開閉部材3は図示しないスプリングにより羽根閉鎖方向即ち第1図の位置で反時計方向に弾圧され、且つ図示の羽根閉鎖状態即ち静止状態において端部3cの回動方向前方にはレンズ駆動部材2の段部2aが侵入して時計方向への回動が阻止されるように構成されている。又、レンズ駆動部材2は静止状態即ち撮影を行わない常態において図示の初期位置を占め、例えばAF制御装置等により露光に先立ってこの初期位置より必要量だけ時計方向へ回動せしめられてレンズを必要量だけ繰り出し得るように構成されている。更に、アクチュエーター5は露出時間制御回路を含む駆動制御回路に接続されていて、適正露出が達成されるように羽根開閉部材3を往復動せしめ得るようになっている。
本案シャッターは上記のように構成されているから、撮影に当たりカメラのレリーズ釦を押せば、先ずAF制御装置が働いてレンズ駆動部材2が所定量だけ図示位置から時計方向へ回動せしめられて(鎖線図示)撮影レンズのピント調整を行うと同時に羽根開閉部材3の回動領域から段部2aが退避して、羽根開閉部材3の右旋を可能にし、次に上記駆動制御回路が働いてアクチュエーター5により羽根開閉部材3が所定量だけ時計回動せしめられた後図示位置へ戻されて適正露出がおこなわれるようにシャッター羽根6の開閉が行われる。かくして露出が完了するとAF制御装置の働きによりレンズ駆動部材2は再び初期位置へ戻され、一回の撮影動作が終了せしめられて、羽根開閉部材3の端部3cの時計回動方向前方にレンズ駆動部材2の段部2aが再び侵入するに至る。」(第3頁第7行?第5頁第14行)
「上述の如く本考案によれば、常態においてシャッターに如何なる衝撃が加えられてもシャッター羽根は不用意に開くようなことはなく、実用上有用なこの種のシャッターを提供することができる。」(第6頁第1?4行)
が記載されている。
(対比・判断)
(本件請求項1に係る考案について)
本件請求項1に係る考案と刊行物に記載された考案とを対比すると、刊行物には、本件請求項1に係る考案を特定するための構成である、開き用モータと閉じ用モータと、前記モータにより往復駆動される開き用シャッタ羽根と閉じ用シャッタ羽根を設けた点、および、セット機構に設けられた係止部は、前記モータの回転子と一体に設けられたシャッタ羽根駆動用のピンと係合するようにした点、が記載されていない。そして、当該構成により、本件請求項1に係る考案は、明細書記載のような作用・効果を奏するものであり、本件請求項1に係る考案は、上記刊行物に記載されたものとも、上記刊行物記載のものから当業者がきわめて容易に推考することができたものともいえない。
(本件請求項2?4に係る考案について)
本件請求項2?4に係る考案は、本件請求項1に係る考案の構成の一部をさらに限定したものであるから、上記本件請求項1に係る考案と同様の判断により、本件請求項2?4に係る考案は、上記刊行物に記載されたものとも、上記刊行物記載のものから当業者がきわめて容易に推考することができたものともいえない。
(オ)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第10条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第2項、同条第3項で準用する第126条第2?4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
(3)登録異議の申立について
(ア)申立の理由の概要
申立人有限会社オフィスアテナは、証拠として甲第1号証〔実願昭63-162022号(実開平2-83532号)のマイクロフィルム〕を提出し、本件請求項1及び3に係る考案の実用新案登録は実用新案法第3条第1項第3号の規定に違反してなされたものであり、本件請求項1?3、及び5に係る考案の実用新案登録は実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであるから、本件請求項1?3、及び5に係る考案の実用新案登録を取り消すべき旨主張している。
(イ)甲第1号証記載の考案
申立人有限会社オフィスアテナが提出した甲第1号証は、当審が平成11年11月24日付で通知した訂正拒絶理由、および平成11年7月9日付で通知した取消理由で引用した刊行物と同じものであり、上記「(2)、(エ)独立登録要件の判断、(引用刊行物)」において示されたとおりの考案が記載されている。
(ウ)対比・判断
訂正前の請求項4および6が削除され、かつ、訂正された、訂正後の請求項1?4に係る考案(本件請求項1?4に係る考案)と申立人が提出した甲第1号証記載の考案とを対比すると、上記「(2)、(エ)独立登録要件の判断、(対比・判断)」において示されたとおりの理由により、本件請求項1?4に係る考案は、甲第1号証に記載されたものとも、甲第1号証に記載の考案から当業者がきわめて容易に推考することができたものともいえない。
(エ)むすび
したがって、登録異議申立の理由及び証拠によっては、本件請求項1?4に係る考案の実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?4に係る考案の実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
カメラ用レンズシャッタ装置
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 電流の向きにより往復回動する開き用モータと閉じ用モータと、前記モータにより往復駆動される開き用シャッタ羽根と閉じ用シャッタ羽根と、撮影の都度、初期位置から所定の撮影条件設定位置へ動かされ撮影終了後、前記初期位置へ復帰するセット機構とを備え、
前記セット機構には前記初期位置において少なくとも一方の前記モータの回転子の動きを拘束し、前記シャッタ羽根を閉じ位置に保持するための係止部が設けられていて、前記係止部は、前記モータの回転子と一体に設けられたシャッタ羽根駆動用のピンと係合するようにした
ことを特徴とするカメラ用レンズシャッタ装置。
【請求項2】 前記セット機構が絞り口径のセット機構であることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用レンズシャッタ装置。
【請求項3】 前記セット機構が焦点調整用レンズのセット機構であることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用レンズシャッタ装置。
【請求項4】 前記セット機構はパルスモータによって往復作動されることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のカメラ用レンズシャッタ装置。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、シャッタ羽根の開閉駆動を、電流の向きにより往復回動ずるムービングマグネット型モータ(アイリスモータとも称される)により行うカメラ用レンズシャッタ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のレンズシャッタは、撮影をしていない時にはモータの電源を切っているのが普通であるため、シャッタ羽根は極めて不安定な状態となる。即ち、シャッタ羽根はモータの回転子を構成する永久磁石の磁力だけで閉じ状態に保持されているからである。このような保持状態を少しでも良くするために回転子の近傍に磁性体からなる補極を設け、これにより回転子をシャッタ羽根の閉じ方向にバイアスする方法が考えられている。
【0003】
【考案が解決しようとする手段】
しかし、この種のシャッタに用いられるモータは極めて小型であることが要求されるため保持力が十分でなく、強い振動や衝撃を受けるとシャッタ羽根が開いてしまい、極端な場合には開きっ放しになってしまうという不都合があった。これは光景の大きいシャッタ程顕著となる。
【0004】
本考案は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、モータの往復回動に連動してシャッタ羽根を往復駆動するレンズシャッタにおいて、シャッタ閉鎖状態におけるシャッタ羽根の動きを確実に拘束し、不慮の露光を防止できるようにしたカメラ用レンズシャッタ装置を提供することである。
【0005】
上記の目的を達成するために、本考案においては、電流の向きにより往復回動する開き用モータと閉じ用モータと、前記モータにより往復駆動される開き用シャッタ羽根と閉じ用シャッタ羽根と、撮影の都度、初期位置から所定の撮影条件設定位置へ動かされ撮影終了後、前記初期位置へ復帰するセット機構とを備え、前記セット機構には前記初期位置において少なくとも一方の前記モータの回転子の動きを拘束し、前記シャッタ羽根を閉じ位置に保持するための係止部が設けられていて、前記係止部は、前記モータの回転子に設けられたシャッタ羽根駆動用のピンに係合するようにする。
【0006】
また、前記セット機構は、絞り口径もしくは焦点調整用レンズのセット機構であるように構成することが好ましい。
【0007】
また、初期位置からの往復運動をパルスモータによって行うように構成することが好ましい。
【0008】
本考案の実施例を、図1乃至図3により説明する。図1はシャッタ羽根の開閉機構を示す平面図である。図2はシャッタ羽根を開閉作動させるモータ回転子の拡大図であり、(a)は閉じ用モータの回転子、(b)は開き用モータの回転子を示している。図3は本考案によりレンズシャッタ装置の実施例の平面図である。
【0009】
先ず、図1及び図2により本考案のバルブ機構が適用されるシャッタ開閉機構の一例を説明する。1はシャッタ地板で、撮影用開口1aと、スロット1b,1cを有し、軸1d,1e,1f,1gを植立している。2、3は夫々ピン1d、1eに回転可能に枢支された開き用シャッタ羽根、4、5は夫々ピン1f,1gに回転可能に枢支された開き用シャッタ羽根である。図面を解り易くするため省略したが、これらのシャッタ羽根2、3、4、5には夫々後述するモータの駆動ピンと嵌合するためのスロットが形成されている。6はシャッタ地板1の背面に取り付けられたムービングマグネット型の開き用モータであり、永久磁石からなる回転子6aを有するとともに、回転子6aと一体的に回動するレバー上に駆動ピン6bが設けられている。6cは開き用モータ6に設けられている磁性体からなる補極である。7は開き用モータ6と同種の閉じ用モータであり、シャッタ地板1の背面に取り付けられ、回転子7aと駆動ピン7bと補極7cを有している。尚、駆動ピン6b,7bは何れもスロット1b,1cを貫通してシャッタ地板1の表面で、夫々開き用シャッタ羽根2、3及び閉じ用シャッタ羽根4、5に設けられた図示していないスロットに嵌合している。
【0010】
次に、図1、図2に示したシャッタ機構の作動を説明する。図1においては閉じ用シャッタ羽根4、5が開き位置にあるが、静止状態においては開き用シャッタ羽根2、3と同じように閉じ位置にあり、両シャッタ羽根により二重に撮影用開口1aを覆い、遮光効果を高めている。この静止状態においては閉じ用モータ7の回転子7aは、図2(a)に示す実線状態にあり、補極6cの関係で同じく閉じ方向ヘバイアスされている。従って、モータ6、7に通電されていなくても振動等によって各シャッタ羽根は動かされにくくなってる。
【0011】
この状態でカメラのレリーズが行われると、先ず閉じ用モータ7が通電され、閉じ用シャッタ羽根4、5は、駆動ピン7bにより軸1f、1gを支点として図1に示されている開き位置へ動かされる。この開き位置においてモータ7へは開き方向屁の通電が継続されている。また、回転子7aは図2(a)に破線で示した状態となるため補極7cによるバイアスは閉じ方向へきいている。これは閉じ用モータ7に閉じ方向への通電がなされたとき、その初期速度を効果的にするためである。次に、開き用モータ6が通電されると、開き用シャッタ羽根2、3は駆動ピン6bにより軸1d,1eを支点として開き位置へ作動し、撮影用開口1aを開き、フィルムの露光が行われる。この状態において開き用モータの回転子6aは図2(b)に破線で示した状態となるため、補極6cによるバイアスは開き方向となる。
【0012】
その後、閉じ用モータ7に前記とは逆向きの通電が行われると、回転子7aは図1において時計方向へ回動し、閉じ用シャッタ羽根4、5は駆動ピン7bによって撮影用開口1aの閉鎖位置へもたらされ、フィルムの露光が終了する。その後、開き用モータ6にも前記とは逆向きの通電が行われ、閉じ用シャッタ羽根4、5と同様、開き用シャッタ羽根2、3も撮影用開口1aを覆う位置にもたらされ、一連の撮影動作が完了する。
【0013】
次に、上記のようなシャッタ機構において、撮影の時以外はシャッタ羽根を閉じ位置で確実に拘束するようにした機構について、図3を用いて説明する。図3においては図1に示したシャッタ地板1を省略しているが、シャッタ地板1に設けられた撮影用開口1aと、シャッタ地板1に背面に取り付けられた開き用モータ6、閉じ用モータ7が示されている。また、実際には、シャッタ羽根2、3、4、5をシャッタ地板1とで挟む位置に絞り地板が存在するが、これも省略されている。図3に示す構成部品のほとんどはこの絞り地板上に設置されている。
【0014】
8は駆動リングで、偏心ピン8a、歯部8b、係止部8c,8dを有している。9は絞りリングであり、7個のカム溝9aと腕部9bを有している。10は、実際には7枚あるうちの1枚のみを示している絞り羽根で、図示していない絞り地板に支承される支点ピン10aとカム溝9aに嵌合する動点ピン10bとを有している。11は絞りリング9に右旋習性を与えるバネであり、これにより通常は偏心ピン8cと腕部9bは係接している。12は、駆動リング8や絞りリング9より紙面に対し手前に存在する図示していない押え板に取り付けられたパルスモータであり、ピニオン12aを有している。13はパルスモータ12と同じように押え板に軸支された2段式歯車で、その大径部13aはピニオン12aに噛合し、小径部13bは駆動リング8の歯部8bに噛合している。
【0015】
次に作動を説明する。図3は非撮影状態を示しており、開き用モータ6の駆動ピン6bと閉じ用モータ7の駆動ピン7bは、何れも駆動リング8に設けられた係止部8c,8dによってその動きを拘束されている。この状態においてカメラのレリーズ釦を押すと、パルスモータ12が回転し、歯車13を介して駆動リング8を左旋させる。この駆動リング8の初期行程で各駆動ピン6b,7bは係止部8c,8dによる拘束から開放される。駆動リング8は、偏心ピン8aで腕部9bを押し、絞りリング9をバネ11に抗して左旋させる。絞りリング9の左旋によりカム溝9aが絞り羽根10の動点ピン10bを動かし、絞り羽根10を全開(F3.5)状態にある破線位置から最小絞り(F22)となる鎖線位置に向かって変化させる。予め決められた絞り口径位置に達するとパルスモータ12は停止し、その後、図1で説明したように閉じ用モータ7が通電され、閉じ用シャッタ羽根4、5が開き位置に動かされる。
【0016】
露光が終了し、開き用シャッタ羽根4、5が閉じ位置へ戻って後、パルスモータ12は逆転し、駆動リング8は右旋をして図3の初期位置へ復帰する。この時、絞りリング9も羽根11によって追従し図3の位置へ復帰する。この復帰位置において、開き用モータ6の駆動ピン6bと閉じ用モータ7の駆動ピン7bは、再び係止部8c,8dに係止されその動きを拘束される。
【0017】
尚、偏心ピン8aは、駆動リング8と絞りリング9との相対関係を組立時に調整するためのものであり、バネ11は駆動リング8と絞りリング9との間に張架してもかまわなし、また駆動リング8と絞りリング9を一体的又は一部品で構成しても構わない。また上記の実施例では駆動リングは絞り口径を設定するものとして説明したが、オートフォーカス機構において焦点調整用のレンズを所定位置に設定するためのものであっても差し支えない。更に、上記の実施例では開き用シャッタ羽根と閉じ用シャッタ羽根が別個に設けられている場合を示したが、本考案は一組のシャッタ羽根を開閉動作させるものにも適用できるし、また係止部は直接モータの一部を係止する必要はなく、モータと連動する部材であればどの部材を係止するようにしても構わない。
【0018】
【考案の効果】
以上のように、本考案によれば、開き用と閉じ用のシャッタ羽根をそれぞれ開き用と閉じ用のムービングマグネット型モータの往復回動に連動して作動させるカメラ用レンズシャッタ装置において、露光開始前に常に初期位置から移動して絞り口径などの撮影条件を設定するようになされたセット機構にその初期位置において少なくとも一方のモータの回動を拘束するための係合部を設けたものであるから、非撮影時において、たとえ強い振動や衝撃を受けてもシャッタ羽根は開くことなく、不慮の露光を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本考案を適用するシャッタ機構の一例を示す平面図である。
【図2】
図1におけるモータ回転子の拡大説明図であり、(a)は閉じ用モータの回転子、(b)は開き用モータの回転子を示している。
【図3】
本考案の実施例の非撮影状態を示す平面図である。
【符号の説明】
1 シャッタ地板
1a 撮影用開口
1b,1c スロット
1d,1e,1f,1g 軸
2,3 開き用シャッタ羽根
4,5 閉じ用シャッタ羽根
6 開き用モータ
6a,7a 回転子
6b,7b 駆動ピン
6c,7c 補極
7 閉じ用モータ
8 駆動リング
8a 偏心ピン
8b 歯部
8c,8d 係止部
9 絞りリング
9a カム溝
9b 腕部
10 絞り羽根
10a 支点ピン
10b 動点ピン
11 バネ
12 パルスモータ
12a ピニオン
13 歯車
13a 大径部
13b 小径部
訂正の要旨 (訂正の要旨)
訂正事項a
訂正前の請求項4及び6を削除して、実用新案登録請求の範囲の請求項1?6を「【請求項1】 電流の向きにより往復回動する開き用モータと閉じ用モータと、前記モータにより往復駆動される開き用シャツタ羽根と閉じ用シャツタ羽根と、撮影の都度、初期位置から所定の撮影条件設定位置へ動かされ撮影終了後、前記初期位置へ復帰するセット機構とを備え、
前記セット機構には前記初期位置において少なくとも一方の前記モータの回転子の動きを拘束し、前記シャツタ羽根を閉じ位置に保持するための係止部が設けられていて、前記係止部は、前記モータの回転子と一体に設けられたシャツタ羽根駆動用のピンと係合するようにした
ことを特徴とするカメラ用レンズシャツタ装置。
【請求項2】 前記セット機構が絞り口径のセット機構であることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用レンズシャツタ装置。
【請求項3】 前記セット機構が焦点調整用レンズのセット機構であることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用レンズシャツタ装置。
【請求項4】 前記セット機構はパルスモータによって往復作動されることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のカメラ用レンズシャツタ装置。」と訂正する。
訂正事項b
明細書の段落【0005】,【0006】及び【0007】の記載を
「【0005】
上記の目的を達成するために、本考案においては、電流の向きにより往復回動する開き用モータと閉じ用モータと、前記モータにより往復駆動される開き用シャツタ羽根と閉じ用シャツタ羽根と、撮影の都度、初期位置から所定の撮影条件設定位置へ動かされ撮影終了後、前記初期位置へ復帰するセット機構とを備え、前記セット機構には前記初期位置において少なくとも一方の前記モータの回転子の動きを拘束し、前記シャツタ羽根を閉じ位置に保持するための係止部が設けられていて、前記係止部は、前記モータの回転子に設けられたシャツタ羽根駆動用のピンに係合するようにする。
【0006】
また、前記セット機構は、絞り口径もしくは焦点調整用レンズのセット機構であるように構成することが好ましい。
【0007】
また、初期位置からの往復運動をパルスモータによって行うように構成することが好ましい。」と訂正する。
訂正事項c
明細書の段落【0018】の記載を
「【0018】
【考案の効果】
以上のように、本考案によれば、開き用と閉じ用のシャツタ羽根をそれぞれ開き用と閉じ用のムービングマグネット型モータの往復回動に連動して作動させるカメラ用レンズシャツタ装置において、露光開始前に常に初期位置から移動して絞り口径などの撮影条件を設定するようになされたセット機構にその初期位置において少なくとも一方のモータの回動を拘束するための係合部を設けたものであるから、非撮影時において、たとえ強い振動や衝撃を受けてもシャツタ羽根は開くことなく、不慮の露光を避けることができる。」と訂正する。
異議決定日 2000-03-03 
出願番号 実願平5-23311 
審決分類 U 1 652・ 113- YA (G03B)
U 1 652・ 121- YA (G03B)
最終処分 維持    
前審関与審査官 佐藤 昭喜  
特許庁審判長 森 正幸
特許庁審判官 柏崎 正男
綿貫 章
登録日 1998-09-04 
登録番号 実用新案登録第2584886号(U2584886) 
権利者 日本電産コパル株式会社
東京都板橋区志村2丁目18番10号
考案の名称 カメラ用レンズシャッタ装置  

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