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審決分類 |
審判 全部申し立て A01K 審判 全部申し立て A01K |
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管理番号 | 1016795 |
異議申立番号 | 異議1998-74141 |
総通号数 | 12 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2000-12-22 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1998-08-18 |
確定日 | 2000-03-13 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 登録第2571523号 「中通し竿」の実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 登録第2571523号の請求項1に係る実用新案登録を維持する。 |
理由 |
一、手続の経緯 登録第2571523号の実用新案についての出願は、平成4年4月16日に実用新案登録出願された実願平4-24110号の一部を平成8年4月15日に新たな実用新案登録出願としたものであって、平成10年2月20日にその実用新案の設定登録がなされ、その後、実用新案登録異議申立人湯浅貞夫(以下、「申立人」という。)より実用新案登録異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年7月30日付に訂正請求がなされ、さらに当審において訂正拒絶理由を通知したところ、平成11年11月30日に訂正明細書を補正する手続補正書が提出されたものである。 二、訂正の適否についての判断 1.訂正の内容 上記手続補正書の補正は訂正請求の要旨を変更するものではないから、実用新案権者が求めている訂正の内容は、上記手続補正書で補正された、次のとおりである。 (1)実用新案登録請求の範囲の訂正 ・訂正事項a 実用新案登録明細書の実用新案登録請求の範囲の「【請求項1】竿材(R)に形成した糸導入部(A)を介して該竿材(R)の内部に導入される釣り糸(6)を先部に導く糸案内経路を形成して成る中通し竿であって、糸導入本体(7)に釣り糸(6)を前記糸案内経路に導く導入路(L)を形成するとともに前記導入路(L)を前記糸案内経路に対して傾斜する状態で設けて前記糸導入部(A)を形成し、前記導入路(L)における入口側部と出口側部とに夫々前記糸導入本体(7)より耐摩耗性の高い釣糸案内部材(8),(9)を内嵌し、前記釣糸案内部材(8),(9)の開ロ部における、糸が張力を受けた場合に摺接する面(8A),(9A)を外向きに広がる湾曲面に形成してある中通し竿。」を、 「【請求項1】竿材(R)に形成した糸導入部(A)を介して該竿材(R)の内部に導入される釣り糸(6)を先部に導く糸案内経路を形成して成る中通し竿であって、糸導入本体(7)に釣り糸(6)を前記糸案内経路に導く導入路(L)を形成するとともに前記導入路(L)を前記糸案内経路に対して傾斜する状態で設けて前記糸導入部(A)を形成し、前記導入路(L)における出口側部としての内端部及び入口側部としての外端部のみに、かつ前記糸導入路(L)の内径より小径の内径を有し前記糸導入本体(7)より耐摩耗性の高い釣糸案内部材(8),(9)を互いに接触することなく両者の間に間隙が生じるように内嵌し、前記釣糸案内部材(8),(9)の開ロ部における、糸が張力を受けた場合に摺接する面(8A),(9A)を外向きに広がる湾曲面に形成してある中通し竿。」と訂正する。 (2)考案の詳細な説明の訂正 ・訂正事項b 同明細書の【0005】の欄の「【課題を解決するための手段】本考案による特徴構成は、糸導入本体に釣り糸を前記糸案内経路に導く導入路を形成するとともに前記導入路を前記糸案内経路に対して傾斜する状態で設けて前記糸導入部を形成し、前記導入路における入口側部と出口側部とに夫々前記糸導入本体より耐摩耗性の高い釣糸案内部材を内嵌し、前記釣糸案内部材の開ロ部における、糸が張力を受けた場合に摺接する面を外向きに広がる湾曲面に形成してある点にあり、その作用、及び、効果は次の通りである。」を、 「【課題を解決するための手段】本考案による特徴構成は、糸導入本体に釣り糸を前記糸案内経路に導く導入路を形成するとともに前記導入路を前記糸案内経路に対して傾斜する状態で設けて前記糸導入部を形成し、前記導入路(L)における出口側部としての内端部及び入口側部としての外端部のみに、かつ前記糸導入路(L)の内径より小径の内径を有し前記糸導入本体(7)より耐摩耗性の高い釣糸案内部材(8),(9)を互いに接触することなく両者の間に間隙が生じるように内嵌し、前記釣糸案内部材の開ロ部における、糸が張力を受けた場合に摺接する面を外向きに広がる湾曲面に形成してある点にあり、その作用、及び、効果は次の通りである。」と訂正する。 2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記(1)の訂正事項aの訂正は、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、上記(2)の訂正事項bの訂正は、考案の詳細な説明の記載を訂正後の実用新案登録請求の範囲の記載と整合させるためのものであるから、上記(2)の訂正事項bの訂正は明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。 そして、これらの訂正は、願書に添付した明細書、又は図面に記載した事項の範囲内において訂正するものであって新規事項を追加するものでなく、かつ、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3.独立実用新案登録要件の判断 (1)訂正明細書の考案 訂正明細書の請求項1に係る考案(以下、「訂正明細書の考案」という。)は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの、次の事項により特定されるものである。 「【請求項1】竿材(R)に形成した糸導入部(A)を介して該竿材(R)の内部に導入される釣り糸(6)を先部に導く糸案内経路を形成して成る中通し竿であって、糸導入本体(7)に釣り糸(6)を前記糸案内経路に導く導入路(L)を形成するとともに前記導入路(L)を前記糸案内経路に対して傾斜する状態で設けて前記糸導入部(A)を形成し、前記導入路(L)における出口側部としての内端部及び入口側部としての外端部のみに、かつ前記糸導入路(L)の内径より小径の内径を有し前記糸導入本体(7)より耐摩耗性の高い釣糸案内部材(8),(9)を互いに接触することなく両者の間に間隙が生じるように内嵌し、前記釣糸案内部材(8),(9)の開ロ部における、糸が張力を受けた場合に摺接する面(8A),(9A)を外向きに広がる湾曲面に形成してある中通し竿。」 (2)引用例記載の考案又は発明 当審において通知した取消理由に引用した各引用例には次の事項が記載されている。 ・引用例1(実願昭63-74403号(実開平1-178373号)のマイクロフィルム)には、「元部竿管31および竿管33,35内には、リール37に一端を接続される釣糸39が挿通され、この釣糸39は、竿管35の先端から引き出されている。」(5頁14?17行)、「中通し部材41には、この中通し部材41の外側から凸部55に向けて、釣糸39を竿管33内に挿入するための釣糸挿入孔57が貫通して形成されている。この実施例では、釣糸挿入孔57は、外側から内側に向けて元部竿管31側から竿管33側に傾斜する傾斜面とされ、また、釣糸挿入孔57には、釣糸39を案内するためのラインガイド59が形成されている。」(6頁20行?7頁8行)が記載されている。 また、第1図および第2図には、ラインガイド59がその開口部における、糸が張力を受けた場合に摺接する面を外向きに広がる湾曲面に形成してあることが示されている。 ・引用例2(実願平1-138389号(実開平3-76460号)のマイクロフィルム)には、「竿管の内側から外側へ釣糸を案内する構造の釣竿」(2頁14?15行)、「他のチタン等の金属や合成樹脂等の細径パイプからなる釣糸案内用ガイド9」(5頁20行?6頁2行)、「釣糸案内用ガイド9の一端開口部9aの後側には硬質ガイド16が元竿管5の突出部5aの内側に固定され、」(6頁7?9行)、「釣糸10が出る他端開口部8bの端面形状は釣糸がガイド方向に摩擦抵抗が小さく指向するように傾面開口とするとよい。」(7頁1?3行)が記載されている。 ・引用例3(特開昭56-127032号公報)には、「本発明の釣竿は、中空軸から成り、竿の柄端部に、軸の内部に糸を導入する口と、一方先端部に軸の内部から糸を導出する口とを設け、中空軸の内部には一連の糸道が設けられており、」(2頁左上欄19行~同頁右上欄3行)、「ステンレス鋼の環7(第2図と第3図)が、糸の導入口の部材8の中に備えられ、リール6から糸9を受取る。」(2頁右下欄11?13行)、「部材8は、第2図に示されているように熱可塑性材料を成型したカートリッジとして、竿の対応する凹みの中に切込まれている。」(2頁右下欄第16?19行)が記載されている。また、第2図および第3図には、環7が部材8の孔の出口側(リール側)にのみ設けられる点が示されている。 ・引用例4[特願平3-13230号(特開平4-248945号)の願書に最初に添付した明細書又は図面]には、「釣糸ガイドを有する中通し継ぎ竿を示している。・・・釣糸導出部23から、竿管11内の釣糸19が外部に導出されている。」(2頁右欄15?26行)、「枠体31の本体部33には、後端部41から長孔部27に向けて緩やかに傾斜するほぼ直線状のガイド孔43が形成されている。・・・このガイド孔43には、釣糸通路を形成する、ほぼ直線状の管状ガイド47が、挿通固定されている。」(2頁右欄49行?3頁左欄5行)、「凹部55には、例えば、炭化珪素、ジルコニア、アルミナ等の耐磨耗性材料からなる環状ガイド57が挿入固定されている。」(3頁左欄20?23行)、「管状ガイド47の前端の内面には、面取面あるいは曲面が形成されている。」(3頁左欄26?27行)が記載されている。さらに、図1及び図2には、ガイド孔43が竿管13内の糸案内経路に対して傾斜する状態で設けられるように釣糸ガイド29が形成されている断面図が記載され、また図1ないし図3には、糸が張力を受けた場合に摺接する面が外向きに広がる湾曲面に形成してある環状ガイド57が記載されている。 (3)対比・判断 (3-1)実用新案法第3条第2項違反について 訂正明細書の考案と前記引用例1ないし引用例3に記載の考案とを対比すると、引用例1ないし引用例3のいずれにも、訂正明細書の考案を特定するための事項であり、本件訂正によって限定された事項である「前記導入路(L)における出口側部としての内端部及び入口側部としての外端部のみに、かつ前記糸導入路(L)の内径より小径の内径を有し前記糸導入本体(7)より耐摩耗性の高い釣糸案内部材(8),(9)を互いに接触することなく両者の間に間隙が生じるように内嵌し、」が記載されていない。そして、当該事項により、訂正明細書の考案は明細書記載の効果を奏するものであり、訂正明細書の考案は、上記引用例1ないし引用例3に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものではない。 (3-2)実用新案法第3条の2第1項違反について 訂正明細書の考案と引用例4に記載の発明とを対比すると、引用例4には、訂正明細書の考案を特定するための事項であり、本件訂正によって限定された事項である「前記導入路(L)における出口側部としての内端部及び入口側部としての外端部のみに、かつ前記糸導入路(L)の内径より小径の内径を有し前記糸導入本体(7)より耐摩耗性の高い釣糸案内部材(8),(9)を互いに接触することなく両者の間に間隙が生じるように内嵌し、」が記載されていない。そして、当該事項により、訂正明細書の考案は、明細書に記載の効果を奏するものであり、訂正明細書の考案と引用例4に記載の発明とは明らかに構成が相違するから、訂正明細書の考案は引用例4に記載の発明と同一ではない。 (4)まとめ 以上のとおり、訂正明細書の考案は実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができるものである。 4.むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定において準用され、同附則第10条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第2項及び同条第3項の規定において準用する同第126条第2ないし4項の訂正に関する規定に適合するので、当該訂正を認める。 三、実用新案登録異議の申立てについて 1.本件考案 本件考案は、上記二、3.(1)訂正明細書の考案の項に記載した次のとおりのものである。 「【請求項1】竿材(R)に形成した糸導入部(A)を介して該竿材(R)の内部に導入される釣り糸(6)を先部に導く糸案内経路を形成して成る中通し竿であって、糸導入本体(7)に釣り糸(6)を前記糸案内経路に導く導入路(L)を形成するとともに前記導入路(L)を前記糸案内経路に対して傾斜する状態で設けて前記糸導入部(A)を形成し、前記導入路(L)における出口側部としての内端部及び入口側部としての外端部のみに、かつ前記糸導入路(L)の内径より小径の内径を有し前記糸導入本体(7)より耐摩耗性の高い釣糸案内部材(8),(9)を互いに接触することなく両者の間に間隙が生じるように内嵌し、前記釣糸案内部材(8),(9)の開ロ部における、糸が張力を受けた場合に摺接する面(8A),(9A)を外向きに広がる湾曲面に形成してある中通し竿。」(以下、これを「本件考案」という。) 2.実用新案登録異議申立理由の概要 申立人は下記の証拠方法を提示し、本件の請求項1に係る考案は甲第1号証ないし甲第4号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、或いは、本件の請求項1に係る考案は甲第5号証に記載の発明と同一であるから、その実用新案の登録は、実用新案法第3条第2項、或いは、第3条の2第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきである、と主張している。 記 甲第1号証:実願昭63-74403号(実開平1-178373号)のマイクロフィルム 甲第2号証:実公平7-50926号公報 甲第3号証:実公昭45-5027号公報 甲第4号証:特開昭56-127032号公報 甲第5号証:特願平3-13230号(特開平4-248945号)の願書に最初に添付した明細書又は図面 3.甲号各証記載の考案 申立人が提出した甲第1号証、甲第4号証及び甲第5号証には、上記二、3.(2)引用例記載の考案又は発明の項に記載したとおりの引用例1(甲第1号証に対応)、引用例3(甲第4号証に対応)及び引用例4(甲第5号証に対応)の考案又は発明がそれぞれ記載されている。 また、申立人が提出した甲第3号証には、「中空管体を連結して成る釣竿」(1頁左欄17行)、「孔2は先端方向に向かって斜めに穿設せられており、これに先端がラッパ状に丸味を有して開□した糸導管3が取付けられている。この糸導管3はアルミニユーム等で作られ、」(1頁左欄35行?1頁右欄2行)、「糸導管の先端は丸味を有するラッパ状に開□され、糸の滑り具合が円滑で先端に摩擦して糸切れすることもない。」(1頁右欄20?22行)が記載されている。 なお、申立人が提出した甲第2号証(実公平7-50926号公報)は、本件実用新案登録出願の出願前に頒布された刊行物ではないから、出願前の公知技術を立証するための証拠方法として採用することができない。 4.対比・判断 上記甲第1号証ないし甲第4号証のいずれにも、本件考案を特定するための事項である「前記導入路(L)における出口側部としての内端部及び入口側部としての外端部のみに、かつ前記糸導入路(L)の内径より小径の内径を有し前記糸導入本体(7)より耐摩耗性の高い釣糸案内部材(8),(9)を互いに接触することなく両者の間に間隙が生じるように内嵌し、」が記載されてなく、また示唆されてもいない。また、申立人が提出した甲第5号証にも、本件考案を特定するための事項である上記「前記導入路(L)における出口側部としての内端部及び入口側部としての外端部のみに、かつ前記糸導入路(L)の内径より小径の内径を有し前記糸導入本体(7)より耐摩耗性の高い釣糸案内部材(8),(9)を互いに接触することなく両者の間に間隙が生じるように内嵌し、」が記載されていない。そして、当該事項により、本件考案は明細書に記載の効果を奏するものと認められる。 したがって、本件考案が、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるとすることも、或いはまた、本件考案が甲第5号証に記載された発明と同一であるとすることもできない。 四、むすび 以上のとおりであるから、実用新案登録異議申立人の申立ての理由及び提出した証拠方法によっては、本件考案の登録を取り消すことができない。また、他に本件考案の登録を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 中通し竿 (57)【実用新案登録請求の範囲】 竿材(R)に形成した糸導入部(A)を介して該竿材(R)の内部に導入される釣り糸(6)を先部に導く糸案内経路を形成して成る 中通し竿であって、 糸導入本体(7)に釣り糸(6)を前記糸案内経路に導く導入路(L)を形成するとともに前記導入路(L)を前記糸案内経路に対して傾斜する状態で設けて前記糸導入部(A)を形成し、 前記導入路(L)における出口側部としての内端部及び入口側部としての外端部のみに、かつ前記糸導入路(L)の内径より小径の内径を有し前記糸導入本体(7)より耐摩耗性の高い釣糸案内部材(8),(9)を互いに接触することなく両者の間に間隙が生じるように内嵌し、 前記釣糸案内部材(8),(9)の開口部における、糸が張力を受けた場合に摺接する面(8A),(9A)を外向きに広がる湾曲面に形成してある中通し竿。 【考案の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本考案は、竿材に形成した糸導入部を介して該竿材の内部に導入される釣り糸を先部に導く糸案内経路を形成して成る中通し竿に関し、詳しくは、糸導入部の改良に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 従来、上記のように構成された中通し竿としては、実公昭45-5027号公報に示されるものが存在し、この従来例においては、竿材の一部を外方に突出させ、この部位に形成した開口部に硬質の釣糸案内パイプを装着しこの案内パイプを介して釣り糸の導入を行うよう構成してある。 【0003】 【考案が解決しようとする課題】 上記構成においては、釣糸案内パイプの先端はパイプ径と同一径の開口に形成してある。したがって、このパイプ内に挿通されて糸案内経路に導びかれる釣糸がパイプの開口縁に接触すると、その接触抵抗が大きくなる欠点があった。特に、パイプが糸案内経路に対して傾斜する状態で設けられている場合には、パイプを出た釣糸はその開口縁部位で大きく曲げられる為に、開口縁に強く圧接して抵抗を大きくすることになる。 【0004】 本考案の目的は、釣り糸を円滑に送ることのできる中通し竿を構成する点にある。 【0005】 【課題を解決するための手段】 本考案による特徴構成は、糸導入本体に釣り糸を前記糸案内経路に導く導入路を形成するとともに前記導入路を前記糸案内経路に対して傾斜する状態で設けて前記糸導入部を形成し、前記導入路(L)における出口側部としての内端部及び入口側部としての外端部のみに、かつ前記糸導入路(L)の内径より小径の内径を有し前記糸導入本体(7)より耐摩耗性の高い釣糸案内部材(8),(9)を互いに接触することなく両者の間に間隙が生じるように内嵌し、前記釣糸案内部材の開口部における、糸が張力を受けた場合に摺接する面を外向きに広がる湾曲面に形成してある点にあり、その作用、及び、効果は次の通りである。 【0006】 【作用】 つまり、釣糸は釣糸案内部材内に導入される場合又は導出される場合に、釣糸案内部材の開口縁に直接接触することが少なく、釣糸が開口縁で曲げられる場合には、外広がり湾曲面に沿って曲げられる。したがって、湾曲面への圧接度合いを少なくでき、釣糸への摺動抵抗を小さくできる。 【0007】 【考案の効果】 導入路と糸案内経路とが傾斜状態にあるので、釣糸が曲げられることになる釣糸案内部材の開口部位での摺動抵抗を、糸が張力を受けた状態で摺接する面を外向きに開がる湾曲面に形成する改良によって低減でき、全体としての摺動抵抗を低減できるに至ったのである。 【0008】 【実施例】 以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明する。 図5に示すように、高強度繊維のプリプレグにより作られた穂先竿1、中間竿2、元竿3夫々の竿材Rを並継ぎ型に構成すると共に、元竿3のリールシート4に釣り用リール5を装着する中通し竿を構成する。 この中通し竿では、元竿3の中間部に、好ましくは、前半部分に高強度繊維のプリプレグにより竿素材に補強部を設け、その補強部に形成された糸導入部Aから釣り糸6を元竿の内部に導入し、この元竿3、中間竿2、穂先竿1夫々の内部の糸案内経路15を介して、穂先竿1の先端部に案内するよう構成されている。 【0009】 図1乃至図4に示すように、前記糸導入部Aはブロック状に成形された樹脂製の糸導入本体7に貫通孔状に導入路Lを形成し、この導入路Lにおける出口部としての内端部に釣糸案内部材としての金属製の案内筒8を備え、導入路Lにおける入口部としての外端側に釣糸案内部材としてのセラミック製のリング9を嵌め込んである。前記案内筒8の内端開口部、及び、リング9の開口部には外向きに広がる湾曲面状(ラッパ状)の糸が摺接する面8A、9Aを構成してある。、又、この糸導入本体7のうち導入路Lを取り囲む位置の部材を元竿3の側に突出させて嵌合部10を形成すると共に、この導入路Lの前後位置に貫通孔11,11を形成してある。 又、この糸導入部Aを元竿3に装着する際には、嵌合部10を元竿3に形成した開口12に嵌め込み、貫通孔11に対してビス13を挿入してナット14で固定することになる。 【0010】 そして、この中通し竿では嵌合部10によって、元竿3の前後方向、周方向への移動が阻止され、しかも、ビス13によって剥離方向への変位が阻止されると共に、釣り糸6を導入路Lの長い経路に接触させて円滑に、しかも、元竿3の中心位置(軸芯Xの近傍位置)に釣り糸6を送り込めるものとなっている。 【0011】 糸導入本体7の導入路Lの全長に亘って、耐摩耗性に優れた樹脂、セラミック等を挿入して良く、糸導入本体7全体をセラミック等耐摩耗性に優れた素材を用いることにより、導入路Lを貫通孔のみで形成することも可能である。 尚、実用新案登録請求の範囲の項に図面との対照を便利にするために符号を記すが、該記入により本考案は添付図面の構成に限定されるものではない。 【図面の簡単な説明】 【図1】 糸導入部の縦断側面図 【図2】 分離状態の糸導入部の縦断側面図 【図3】 糸導入部の平面図 【図4】 糸導入部の縦断正面図 【図5】 中通し竿の側面図 【符号の説明】 6 釣り糸 7 糸導入本体 8,9 釣糸案内部材 8A,9A 摺接する面 A 糸導入部 L 導入路 R 竿材 |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 ・訂正事項a 実用新案登録明細書の実用新案登録請求の範囲の 「【請求項1】竿材(R)に形成した糸導入部(A)を介して該竿材(R)の内部に導入される釣り糸(6)を先部に導く糸案内経路を形成して成る中通し竿であって、糸導入本体(7)に釣り糸(6)を前記糸案内経路に導く導入路(L)を形成するとともに前記導入路(L)を前記糸案内経路に対して傾斜する状態で設けて前記糸導入部(A)を形成し、前記導入路(L)における入口側部と出口側部とに夫々前記糸導入本体(7)より耐摩耗性の高い釣糸案内部材(8),(9)を内嵌し、前記釣糸案内部材(8),(9)の開口部における、糸が張力を受けた場合に摺接する面(8A),(9A)を外向きに広がる湾曲面に形成してある中通し竿。」を、 実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、 「【請求項1】竿材(R)に形成した糸導入部(A)を介して該竿材(R)の内部に導入される釣り糸(6)を先部に導く糸案内経路を形成して成る中通し竿であって、糸導入本体(7)に釣り糸(6)を前記糸案内経路に導く導入路(L)を形成するとともに前記導入路(L)を前記糸案内経路に対して傾斜する状態で設けて前記糸導入部(A)を形成し、前記導入路(L)における出口側部としての内端部及び入口側部としての外端部のみに、かつ前記糸導入路(L)の内径より小径の内径を有し前記糸導入本体(7)より耐摩耗性の高い釣糸案内部材(8),(9)を互いに接触することなく両者の間に間隙が生じるように内嵌し、前記釣糸案内部材(8),(9)の開口部における、糸が張力を受けた場合に摺接する面(8A),(9A)を外向きに広がる湾曲面に形成してある中通し竿。」 と訂正する。 ・訂正事項b 同明細書の【0005】の欄の 「【課題を解決するための手段】本考案による特徴構成は、糸導入本体に釣り糸を前記糸案内経路に導く導入路を形成するとともに前記導入路を前記糸案内経路に対して傾斜する状態で設けて前記糸導入部を形成し、前記導入路における入口側部と出口側部とに夫々前記糸導入本体より耐摩耗性の高い釣糸案内部材を内嵌し、前記釣糸案内部材の開口部における、糸が張力を受けた場合に摺接する面を外向きに広がる湾曲面に形成してある点にあり、その作用、及び、効果は次の通りである。」を、 明りょうでない記載の釈明を目的として、 「【課題を解決するための手段】本考案による特徴構成は、糸導入本体に釣り糸を前記糸案内経路に導く導入路を形成するとともに前記導入路を前記糸案内経路に対して傾斜する状態で設けて前記糸導入部を形成し、前記導入路(L)における出口側部としての内端部及び入口側部としての外端部のみに、かつ前記糸導入路(L)の内径より小径の内径を有し前記糸導入本体(7)より耐摩耗性の高い釣糸案内部材(8),(9)を互いに接触することなく両者の間に間隙が生じるように内嵌し、前記釣糸案内部材の開口部における、糸が張力を受けた場合に摺接する面を外向きに広がる湾曲面に形成してある点にあり、その作用、及び、効果は次の通りである。」 と訂正する。 |
異議決定日 | 2000-02-01 |
出願番号 | 実願平8-3000 |
審決分類 |
U
1
651・
161-
YA
(A01K)
U 1 651・ 121- YA (A01K) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 星野 浩一 |
特許庁審判長 |
藤井 俊二 |
特許庁審判官 |
佐藤 昭喜 木原 裕 |
登録日 | 1998-02-20 |
登録番号 | 実用新案登録第2571523号(U2571523) |
権利者 |
株式会社シマノ 大阪府堺市老松町3丁77番地 |
考案の名称 | 中通し竿 |
代理人 | 關 健一 |
代理人 | 円城寺 貞夫 |
代理人 | 富崎 元成 |
代理人 | 円城寺 貞夫 |
代理人 | 關 健一 |
代理人 | 富崎 元成 |