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審決分類 審判 全部申し立て   B29C
審判 全部申し立て   B29C
審判 全部申し立て   B29C
管理番号 1016810
異議申立番号 異議1999-73983  
総通号数 12 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2000-12-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-10-21 
確定日 2000-05-18 
異議申立件数
事件の表示 登録第2594537号「樹脂成形体」の請求項1、2に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 登録第2594537号の請求項1、2に係る実用新案登録を維持する。
理由 1.本件考案
本件登録第2594537号実用新案は、平成3年8月26日出願の実願平3-67562号の実用新案登録出願に係り、平成11年2月26日にその実用新案権の設定登録がなされたものであって、その請求項1?2に係る考案は、実用新案登録明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1?2に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】復元性のある丸線の外周面にポリエステル系融着性ワニスを塗布焼付して融着層を形成し、その外周上に樹脂を所定の形状に押出すると共に、押出時の熱により前記融着層を溶融し丸線と樹脂を接着させてなることを特徴とする樹脂成形体。
【請求項2】復元性のある丸線の外周面に融着性ワニスを塗布焼付して融着層を有する融着丸線とし、前記融着丸線を押出ラインに供給して前記融着丸線の外周上に樹脂を所定の形状に押出すると共に、押出時の熱により前記融着層を溶融し丸線と樹脂を接着させてなることを特徴とする樹脂成形体。」

2.申立ての理由の概要
これに対し、実用新案登録異議申立人・極東貿易株式会社(以下、「申立人A」という。)は、甲第1号証(実願昭52-39024号(実開昭53-134415号)のマイクロフィルム)、甲第2号証(特開昭48-48975号公報)、甲第3号証(特開昭48-58380号公報)、甲第4号証(特開昭48-58381号公報)、甲第5号証(特開昭48-104087号公報)、甲第6号証(特開昭51-37189号公報)、甲第7号証(「理化学事典」第5版、岩波書店、(1998年4月24日第2刷発行)、740?741頁、1520?1521頁)、甲第8号証(平成10年11月18日付手続補正書(方式))、甲第9号証(「英和プラスチック工業辞典」、工業調査会、1973年9月25日初版第1刷発行、64?65頁)、甲第10号証(「接着百科(上)」、高分子刊行会、1988年7月20日第9刷発行、60?63頁)、甲第11号証(「接着百科(下)」、高分子刊行会、1987年12月10日第7刷発行、40?41頁)を提出し、
1)本件登録実用新案の請求項1に係る考案(以下、「考案1」という。)は、甲第1号証に記載された考案(以下、甲第m号証を「甲m」、該甲号証記載の考案を「甲m考案」という。)、甲2ないし甲5考案のいずれか、及び甲6考案に基づき当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、該考案に係る本件実用新案登録は、平成5年改正前の実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、
2)本件登録実用新案の請求項2に係る考案(以下、「考案2」という。)は、甲1考案及び甲2ないし甲5考案のいずれかに基づき当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、該考案に係る本件実用新案登録は、同実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものである、
と主張する。
また、実用新案登録異議申立人・日本ウェーブロック株式会社(以下、「申立人B」という。)は、甲第1号証(沖田慶司著「プラスチック異型押出と複合押出」、日刊工業新聞社、昭和50年12月20日発行、137?153頁)、甲第2号証(実願昭59-51523号(実開昭60-164580号)のマイクロフィルム)、甲第3号証(特開昭50-88134号公報)、甲第4号証(実願昭63-14475号(実開昭63-131816号)のマイクロフィルム)、甲第5号証(特開昭63-230316号公報)、甲第6号証(「接着百科(上)」、高分子刊行会、1988年7月20日第9刷発行、60?63頁)、甲第7号証(「接着百科(下)」、高分子刊行会、1987年12月10日第7刷発行、40?41頁)、参考資料(「JIS 工業用語大辞典」第4版、1919頁、2076頁)を提出し、
1)考案1は、甲1考案に必要に応じて甲2?5の技術を適用することにより当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、該考案に係る本件実用新案登録は、前記実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、
2)考案2は、甲1考案に必要に応じて甲2?5の技術を適用することにより当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、該考案に係る本件実用新案登録は、同実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであり、
3)本件実用新案登録明細書は、前記実用新案法第5条第4項及び第5項の規定を満たしていない、
と主張する。
さらに、実用新案登録異議申立人・山田 葉子(以下、「申立人C」という。)は、甲第1号証の1(実開昭53-440808号公報)、甲第1号証の2(実願昭51-126213号(実開昭53-440808号)のマイクロフィルム)、甲第2号証(特開昭60-247539号公報)、甲第3号証(「電気用品技術基準の取扱細則」(改訂版)、日本電気協会、昭和54年9月25日発行、421?422頁)を提出し、
1)考案1?2は、甲1?3考案に基づき当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、該考案に係る本件実用新案登録は、前記実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものである、
と主張する。

3.申立人の主張の適否の判断
3の1.申立人Aの主張について
(1)甲各号証の記載内容
a.甲第1号証
ア.「エチレンと酢酸ビニルと塩化ビニルとのグラフトコポリマからなる合成樹脂に金属線条が酢酸ビニル系接着剤により一体的に埋設されてなる補強入り合成樹脂押出し成形品。」(実用新案登録請求の範囲)、
イ.「第6図は本案に係る押出し成形品の製造装置の一例を示し、……金属線条1をボビン11から繰出して接着剤塗布器12を通過させ……表面に均一厚さに塗布し乾燥器13にて接着剤中の揮発成分を除去した後に押出機14のダイ15に導入し……溶融合成樹脂に埋設しダイ出口のノズルから送出するのであって、……線条1はその表面に塗布形成された接着剤層2によって合成樹脂と密着一体化している。」(4頁9行?5頁2行)。
b.甲第2号証
ウ.「コポリアミド100重量部、……メチルエピクロルヒドリンと2,2ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンとの反応物8?15重量部である組成のワニスを導体上に塗布焼付してなる自己融着性絶縁電線。」(特許請求の範囲)。
c.甲第3号証
エ.「分子量10,000以上で、1分子中に2ケ以上のアルコール性水酸基を有するポリエーテル……樹脂と、……タール酸アルデヒド樹脂……を主成分とする絶縁塗料を導体上に他の絶縁物を介して塗布焼付けして得られる自己融着可能な絶縁電線。」(特許請求の範囲)。
d.甲第4号証
オ.「残存ヒドロキシル基を有する高分子量線状ポリエステル樹脂100重量部、……エポキシ樹脂1?30重量部を主体とする塗料を導体上に……塗布焼付けてなる自己融着性絶縁電線。」(特許請求の範囲)。
e.甲第5号証
カ.「コポリアミド100重量部、……ポリヒドロキシポリエーテルエステル樹脂10?25重量部である組成のワニスを導体上に塗布焼付してなる自己融着性絶縁電線。」(特許請求の範囲)。
f.甲第6号証
キ.「……ポリカルボン酸とポリアルコールとの縮合により、……溶剤不含のポリエステルワニス樹脂を製造する際に、縮合を、……長時間行ない、引続き、……所望粘度に達するまで縮合を続けることを特徴とする、溶剤不含のポリエステルワニス樹脂の製法。」(特許請求の範囲)、
g.甲第7号証
ク.「接着剤」とは、「同種または異種の物体をはりあわせるために使用される物質」を指し(741頁左欄「接着剤」の項)、「ワニス」とは、「顔料を含まず、透明な塗膜を作る塗料」を指す(1520頁左欄「ワニス」の項)。
h.甲第8号証
摘記を省略。
i.甲第9号証
ケ.「65℃以上の温度に加熱して初めて乾燥するワニス」を「焼付ワニス」という(65頁左欄「焼付ワニス」の項)。
j.甲第10号証
コ.「「2.1熱可塑性樹脂接着剤
熱可塑性樹脂接着剤は熱可塑性樹脂を基材とする接着剤で、……加熱すると軟化溶融し、冷却すると固化し、この工程を何度も繰返すことができる。」(62頁左欄)。
k.甲第11号証
サ.「4.2再活性接着法
再活性接着法はあらかじめ塗膜を完全に乾燥しておき、接着時に乾燥塗膜を溶剤で湿すか、加熱して塗膜を粘着化して接着する方法である。
(略)
4.2.2熱再活性接着法
乾燥塗膜を接着剤の軟化点以上に加熱し、表面を粘着性にして接着する方法である。」(40頁?41頁)。
(2)対比・判断
a.主張1)について
考案1(前者)と甲1考案(後者)とを対比すると、前記ア?イからみて、後者の「金属線条」、「エチレンと酢酸ビニルと塩化ビニルとのグラフトコポリマからなる合成樹脂」、「補強入り合成樹脂押出し成形品」は、それぞれ、前者の「復元性のある丸線」、「樹脂」、「樹脂成形品」に相当するから、
両者は
「復元性のある丸線の外周上に樹脂を所定の形状に押出してなる樹脂成形体」
に係る点で一致するものの、
甲1には、前者の必須の構成である、前記「復元性のある丸線の外周面にポリエステル系融着性ワニスを塗布焼付して融着層を形成し」「押出時の熱により前記融着層を溶融し丸線と樹脂を接着させてなる」「樹脂成形体」(以下、「構成α)について、記載されていない。
この点について申立人は甲2?6を引用し、考案1のワニスは接着剤の概念に含まれるものであるところ、ワニスを線材に塗布焼付後、該焼付層を加熱して溶融させ、その溶融状態を接着に利用することは甲2?5からも周知であるから、かかる周知技術を甲1考案に適用する(=甲1考案の「接着剤」を「ワニス」で置換する)ことは当業者にとってきわめて容易、と主張する。
しかしながら、申立人自身が提出した甲7にもあるとおり(前記ク参照)、従来から「接着剤」と「ワニス」とは異なる概念に属し、それぞれ、異なる固有の用途を有するものと認識されている上、甲2?5考案におけるワニスは、それ自体溶融して製品(=自己融着性電線)の表面層を形成するにとどまるから、このようなワニスの用法が、その上に他物(=押出された樹脂)を接着すべき接着剤としての用法までを教示するものとはいえず、結局、甲1考案の「接着剤」を「ワニス」で置換すべき技術的必然性はない。
そうすると、甲6によりポリエステル系ワニスが考案1の出願前公知であっても、甲1?6考案からは考案1の必須の構成αを導き出すことはできない。
また、残る甲各号証は何ら構成αを示唆するものではない。
一方、考案1は、構成αの採用により、明細書の【考案の効果】欄記載の顕著な効果を奏するものと認められる。
以上のとおりであるから、考案1は、甲1?6考案から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものということはできない。
b.主張2)について
主張1)についての対比・判断で述べたところと同様、甲1?5には、考案2の必須の構成である、前記「復元性のある丸線の外周面に融着性ワニスを塗布焼付して融着層を有する融着丸線とし」「押出時の熱により前記融着層を溶融し丸線と樹脂を接着させてなる」「樹脂成形体」(以下、「構成β」という。)について、記載も示唆もされていない。
したがって、考案2は、甲1?5考案から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものということはできない。
3の2.申立人Bの主張について
(1)甲各号証等の記載内容
a.甲第1号証
ア.「9・1・1金属とプラスチックの複合異形品の利点
金属埋込み技術を利用した複合異形品の根本的な利点は剛性と寸法安定性を増すということであり、実際、プロファイル中に金属を埋め込んだ場合、プラスチック内の熱膨張または熱収縮の問題をとり除くことができる。
(略)
図9・3は熱膨脹を最小にするため、直径0.021インチの3本の金属ワイヤを埋め込んだ硬質塩化ビニルでできた暴風雨よけ窓の部材を図解したものであり……このように硬質塩化ビニルで金属を被覆した管状の押出製品……は応用範囲の広い、強力な耐腐食性コンポーネントとして市場に供給されている。」(138頁2行?139頁1行)。
b.甲第2号証
イ.「内部要所に複数の金属線を長手方向に沿って埋設した熱可塑性合成樹脂配合物により作られたグラスラン。」(実用新案登録請求の範囲)、 ウ.「グラスラン1に金属線……を埋設するには、押出機のダイ部分を公知のクロスヘッドダイ方式……を用いて、ビニル被覆電線の製造と同じ方法で実施することができる。埋設する金属線……としては……細線を使用でき、熱可塑性の軟質合成樹脂との接着性を良くするため、金属線の表面にあらかじめ接着剤層を設けたり……すればさらに効果的である。」(7頁1?11行)。
c.甲第3号証
エ.「線状ポリエステルを形成する酸性分がテレフタル酸……、グリコール成分がエチレングリコール0?70モル%、ネオペンチルグリコール30?100モル%からなる溶剤可溶性の熱融着ポリエステル接着剤。」(特許請求の範囲)、
オ.「実施例1?6において調整されたポリエステル樹脂をトルエン・酢酸エチル・メチルエチルケトンの混合溶媒……に30重量%となるよう溶解させた溶液を……ボンデ鋼板……上に塗布し……溶媒を乾燥させた。ダブルローラー型の接着装置を使用して150℃で半硬質ポリ塩化ビニルフィルムを、前述のポリエステル樹脂でコーティングされた鋼板に接着した。」(4頁左上欄3?11行、実施例9)。
d.甲第4号証
カ.「車体に固定されるウインドウガラスの周縁と車体パネルとの間隙を覆う長尺の頭部、この頭部から下方に伸びて前記間隙内に挿入される脚部、およびこの脚部の両側から伸びるリップを有する合成樹脂成形品からなるウインドウモールディングにおいて、前記合成樹脂成形品は軟質ポリ塩化ビニル樹脂の押出成形品であり、かつ前記間隙内に取付けた時にウインドウガラスの端面とほぼ平行となる脚部のほぼ中央部の長手方向全長にわたって、前記ウインドウガラスの端面とほぼ平行となるように埋設された、剛性を有しかつ前記……成形品より伸縮性の小さいシート状部材からなる芯材を有することを特徴とするウインドウモールディング。」(実用新案登録請求の範囲第1項)、
キ.「芯材13を埋込むには、……芯材13の外表面にポリエステル系ホットメルト等の接着剤14の皮膜を形成して押出型……に供給し、押出成形することにより芯材13とモールディング1の本体樹脂部を接着させる。」(8頁8?13行)。
e.甲第5号証
ク.「合成樹脂発泡体内に補強用芯線を埋入してなる発泡長尺体を製造するに際し、芯線の表面部の全体を発泡抑制剤で被覆してなる被服芯線を、押出成形機の金型から押出される発泡性熱可塑性樹脂内に連続して供給し、該発泡抑制剤の発泡抑制作用によって、芯線の周囲部分における熱可塑性樹脂の発泡を抑制し、該周囲部分から外側に向かうにつれて徐々に発泡するようになし、これによって芯線と合成樹脂発泡体とを密着一体化することを特徴とする、芯線で補強された合成樹脂発泡体の連続的製造方法。」(特許請求の範囲)、 ケ.「芯線を……金属製単線を以て形成するばあいには、……該芯線の周囲に一旦接着剤層を形成した後該接着剤層の表面部を発泡抑制剤で被覆し、あるいは発泡抑制剤が混入されてなる接着剤で該芯線を被覆するのがよい。」(2頁左下欄20行?右下欄6行)。
f.甲第6号証
3の1の(1)のj参照。
g.甲第7号証
3の1の(1)のk参照。
h.参考資料
コ.「焼付け」とは、「塗料を塗りつけたのち、高温で加熱して塗膜を硬化させる工程」を指し(1919頁左欄「焼付け」の項)、「ワニス」とは、「樹脂などを溶剤に溶かして作った塗料の総称で、顔料は含まれておらず、塗膜は概して透明なもの」をいう(2076頁右欄「ワニス」の項)。
(2)対比・判断
a.主張1)について
考案1(前者)と甲1考案(後者)とを対比すると、後者の前記「金属ワイヤを埋め込んだ硬質塩化ビニルでできた窓の部材」に着目した場合、後者の「金属ワイヤ」、「硬質塩化ビニル」、「窓の部材」は、それぞれ、前者の「復元性のある丸線」、「樹脂」、「樹脂成形品」に相当するから、
両者は
「復元性のある丸線の外周上に樹脂を所定の形状に押出してなる樹脂成形体」
に係る点で一致するものの、
甲1には、前者の前記必須の構成αについて記載されていない。
これに関し申立人の引用する甲2?5は、申立人A提出の甲各号証同様、もっぱら接着剤の使用に関するものにとどまる(前記イ?ケ参照。なお、申立人が「ポリエステル系ワニス」に相当する旨主張する甲3記載のもの(前記エ?オ参照)も、「可溶性・熱融着ポリエステル接着剤」との「発明の名称」からも明らかなとおり、事実は明らかに接着剤として示されているにすぎない。)ところ、前記のとおり、従来から「接着剤」と「ワニス」とは異なる概念に属し、それぞれ、異なる固有の用途を有するものと認識されていた事情が存在する。
そうすると、もっぱら接着剤の用法に係る甲2?5考案からは、甲1考案の必須の構成である「復元性のある丸線の外周面にポリエステル系融着性ワニスを塗布焼付して融着層を形成」する旨の構成を導き出すことはできない。
一方、考案1は、構成αの採用により、明細書記載の所期の効果を奏するものと認められる。
以上のとおりであるから、考案1は、甲1?5考案から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものということはできない。
b.主張2)について
主張1)についての対比・判断で述べたところと同様、甲1?5には、考案2の前記必須の構成βについて、記載も示唆もされていない。
したがって、考案2は、甲1?5考案から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものということはできない。
c.主張3)について
申立人は、1)各請求項における構成の外延が不明確、2)考案の詳細な説明には、本件考案を容易に実施できる程度に、考案の目的、構成、効果が記載されていない、の2点で、本件明細書は記載不備、と主張する。
しかしながら、先ず1)について、申立人が指摘する「復元性のある丸線」、「ポリエステル系融着性ワニス」、「焼付」、「押出し時の熱」、「溶融」等の技術用語は、いずれも格別難解ではなく、当業者にはその意味内容、すなわち、外延が明確なものとして理解可能と解されるから、現在の請求項の記載に格別の不備があるとはいえない。
また、2)についても、いやしくも当業者であれば、現在の明細書の記載に従い、格別の困難性なく本件考案を実施できると解されるから、これに反する申立人の主張は採用できない。
3の3.申立人Cの主張について
(1)甲各号証の記載内容
a.甲第1号証
ア.「合成樹脂を押出成形して作られるモールディング材本体1が、その押出成形時に一体的に押出されて内包されている屈曲可能な金属線2と、該モールディング材の全長にわたって一体的に結合されている自動車用合成樹脂製モールディング材」(実用新案登録請求の範囲)、
イ.「第1図のモールディング材本体1内には1本の合成樹脂用接着材の塗被加工を施した金属線2aが芯材として埋込まれている。21は、該金属線に予め施された上記の塗被加工層である。 (略)
第3図……(a)は、第1図のモールディング材に内包させた金属線2aを示し、合成樹脂用接着剤の塗被加工層21を有する。
(略)
このように押出成形されたモールディング材において、第1図製品のように金属線に接着材が塗被加工されている場合は、モールディング材本体と金属線とが接着剤を介して一体的に結合される。」(甲第1号証の2、3頁6行?5頁15行)。
b.甲第2号証
ウ.「合成樹脂部(3)と金属部(1)とからなる自動車用サイドモールにおいて、ポリエステルポリオール100重量部と、アクリル酸……200重量部以下との重合物に、ポリイソシアナートをOH:NCO=1:2?40(モル比)となるように混合し、この混合物100重量部にポリ塩化ビニル100重量部以下を加えて接着剤(2)を組成し、この接着剤(2)を前記金属部(1)の表面に塗布および焼付し、共押出成形によりその金属部(1)と前記合成樹脂部(3)とを一体化したことを特徴とするサイドモールの製造方法。」(特許請求の範囲)。
c.甲第3号証
エ.電気用品の巻線に使用されるエナメル線には、自己融着性ポリエステル(テレフタレート)線を含め、多数のものが存在すること(421?422頁表中のNo.38?50)。
(2)対比・判断
a.主張1)について
考案1?2(前者)と甲1?2考案(後者)とを対比すると、後者は接着剤の使用に係るのみ(前記ア?ウ参照)であり、甲1?2のいずれにも、前者の必須の構成である前記構成α(考案1について)及び構成β(考案2について)について、記載も示唆もされていない。
申立人は、「前者に係る『融着性ワニス』は『合成樹脂用接着剤』に相当する」との前提に立って(異議申立書8頁5?7行、同9頁23?25行)前者の進歩性を否定しようとするが、ワニスと接着剤とが同一の製品でもなければ、一方が他方の用途に互換的に使用されていたわけでもないことは3の1の(2)のaで既述のとおりであるから、申立人の主張1)は、その前提の点で失当という外はない。
なお、単なる自己融着ポリエステル(テレフタレート)線等について開示する甲3(前記エ参照)が、何ら上記構成α、βを教示するものではないことは、同じく3の1の(2)のaでも既述のとおりである。
してみると、考案1?2は、甲1?3考案から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものということはできない。

4.むすび
したがって、実用新案登録異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1?2の考案に係る実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?2の考案に係る実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2000-04-20 
出願番号 実願平3-67562 
審決分類 U 1 651・ 534- Y (B29C)
U 1 651・ 121- Y (B29C)
U 1 651・ 531- Y (B29C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 加藤 友也北村 弘樹  
特許庁審判長 小林 正巳
特許庁審判官 仁木 由美子
石井 克彦
登録日 1999-02-26 
登録番号 実用新案登録第2594537号(U2594537) 
権利者 日本プライ株式会社
東京都江東区亀戸1丁目8番8号 昭和電線電纜株式会社
神奈川県川崎市川崎区小田栄2丁目1番1号
考案の名称 樹脂成形体  
代理人 橋本 正男  
代理人 鈴木 憲七  
代理人 池谷 豊  
代理人 曾我 道照  
代理人 小川 眞一  
代理人 古川 秀利  
代理人 今井 庄亮  
代理人 曾我 道治  
代理人 社本 一夫  
代理人 福井 宏司  
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