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審決分類 審判 全部申し立て   G03G
審判 全部申し立て   G03G
審判 全部申し立て   G03G
管理番号 1018549
異議申立番号 異議1999-73464  
総通号数 13 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-01-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-09-10 
確定日 2000-03-15 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 登録第2591807号「マグネットロール」の実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 登録第2591807号の実用新案登録を維持する。
理由 1.手続の経緯
本件実用新案登録第2591807号の請求項1に係る考案は、平成3年11月5日に実用新案登録出願され、平成11年1月8日にその実用新案登録の設定登録がなされ、その後、キャノン株式会社より実用新案登録異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年2月3日に訂正請求がなされたものである。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
訂正事項a;
明細書の実用新案登録請求の範囲、請求項1の記載「電子写真方式の現像装置に用いられる外周面に複数磁極が形成されたマグネットロールにおいて、」を、「現像剤として2成分系を用い、ピックアップ磁極により拾い上げられドクターブレードによって押し戻された前記現像剤が、仕切り板上方へ回り込んで現像剤堆積部に回収させられる経路をもつ電子写真方式の現像装置に用いられる外周面に複数磁極が形成されたマグネットロールにおいて、」と訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無
上記訂正事項aは、訂正前の「電子写真方式の現像装置に用いられる外周面に複数磁極が形成されたマグネットロールにおいて、」なる事項に「現像剤として2成分系を用い、ピックアップ磁極により拾い上げられドクターブレードによって押し戻された前記現像剤が、仕切り板上方へ回り込んで現像剤堆積部に回収させられる経路をもつ」なる事項を追加して本件考案の前提構成を限定するものであって、実用新案登録請求の範囲の減縮に該当する。
また、上記訂正事項aによって追加された「現像剤として2成分系を用い、ピックアップ磁極により拾い上げられドクターブレードによって押し戻された前記現像剤が、仕切り板上方へ回り込んで現像剤堆積部に回収させられる経路をもつ」なる事項は、出願当初の明細書における段落【0006】の記載から直接的且つ一義的に導き出せる事項であるから、上記訂正事項aは新規事項の追加に該当せず、また、当該訂正事項によって、本件考案の構成は出願当初明細書に記載の範囲内で減縮されているから、当該訂正が、実質的に実用新案登録請求の範囲を拡張するものでも変更するものでもないことは明らかである。
(3)独立特許要件についての判断
[訂正考案]
平成12年2月3日付けで提出された訂正請求書の訂正の趣旨は実用新案登録第2591807号の明細書を請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるものであるが、その訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案は、その訂正明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載のとおりの、
「現像剤として2成分系を用い、ピックアップ磁極により拾い上げられドクターブレードによって押し戻された前記現像剤が、仕切り板上方へ回り込んで現像剤堆積部に回収させられる経路をもつ電子写真方式の現像装置に用いられる外周面に複数磁極が形成されたマグネットロールにおいて、ドクターブレードの現像剤搬送方向上流側で、且つ攪拌パドルに最近接する位置に設けられたピックアップ磁極の磁気パターンを、そのピーク値の半値幅に対するマグネットロールの中心角が50°以上となるようにしたことを特徴とするマグネットロール。」であると認められる。以下、これを本件訂正考案という。
[引用刊行物]
これに対して、当審が取消理由通知で引用した刊行物1及び刊行物2には、以下の記載がある。
ア.刊行物1:特開昭60-93471号公報;
特許請求の範囲、
「複数個の磁極を有する磁気部材を内包した現像剤担持体を現像容器の開口部に配設し、該担持体上に一成分磁性現像剤を担持して現像領域へ該現像剤を搬送させるようにした現像装置において、前記磁気部材の前記磁極のうち、前記現像容器の開口部内に位置する現像剤搬送用磁極の磁束密度半値幅を、該開口部の開口幅の40%以上かつ80%以下にしたことを特徴とする現像装置。」、
第2頁左下欄第4行?同頁右下欄第14行、
「同図には一成分現像のための一般の現像装置を示してある。ここで、長手円筒状の現像剤担持体(以下、スリーブと称す)1はそれぞれ小径な磁気部材としてのマグネットロール2を内包しており、またスリーブ1は、磁性現像剤(以下、トナーと称す)5を貯えた現像容器としてのホッパー4の底部に形成された開口部6に回転可能に配設されている。ここで、マグネットローラ2はその周面に交互に異種の磁極S_(1),N_(1),S_(2),N_(2)が着磁されており、これ自体は回転しない。更にトナー5の層厚を規制するために、鉄などの磁性体で作られた長手状のブレード3が、スリーブ1の表面と微小間隔を保って配置されている。また、スリーブ1の表面に近接して設けられる不図示の静電像保持体(感光体)へスリーブ1上のトナーを転移させるために必要な、交流ならびに直流バイアスを設定するためのバイアス電源7、8がスリーブ1に接続されている。
そこで、上述したような構成を有する現像装置が作動すると、スリーブ1は矢印Aの方向に回転する。すると、トナー5はスリーブ1上にブレード3で薄層にコーティングされ、現像領域(マグネットローラ2の磁極S_(1)周辺)に運ばれ、静電像保持体(不図示)上の潜像を現像する。
一方、ホッパー4中のトナー5は、スリーブ1の回転と、マグネットローラ2のN_(1),S_(2)の影響とによって、矢印Bの如く流動する。ところが、この流動中にトナー5の凝集度が高まると、ホッパー4中の長手方向に部分的に、密度が高く流動性に欠いた幾つかのトナーブロックが生じることがある。」、
第3頁左上欄第8行?同頁右下欄下から3行及び同頁右下欄第1表、
「次に第3図を用いて上述したトナーブロックの発生理由について、磁極S_(2)の半値幅との関係から説明する。…(中略)…。
第4図(a)は本発明の一実施例を示す概略図である。…(中略)…磁極S_(2)の半値幅23が、第3図(b)に示す半値幅13と比較して明らかに広くなる。そのため、穂立ち24が広範囲に形成され、トナー流Eを拡散させる作用が強くなる。従って、…(中略)…トナーブロックは解きほぐされて、前述したような表面層ができなくなる。その結果、…(中略)…白スジの発生を防止することができる。
次に、以下に実験結果に基づいて、上述した半値23の開口幅11に対する割合を具体的に設定する場合について述べる。この実験で使用したマグネットローラの径は…(中略)…、ホッパーの開口幅はスリーブの回転軸を中心としてスリーブ表面上145°Cとした。
第1表に、上記実験によって得られた、ホッパーの開口幅に対する磁極S_(2)の半値幅23の割合Rと、白スジ発生の度合Pとの関係を示す。…(中略)…。従って、R=40%以上かつ80%以下に設定することにより上述した効果を有するものである。」、
第4頁左上欄第5?13行、
「以上説明したように、本発明は磁気部材現像容器開口部に位置する磁極の半値幅を現像容器の開口部に対し40%以上かつ80%以下に設定することにより、複雑な攪拌機構を設けることなく大きな攪拌作用を生ぜしめ、更に上記機構を備えることが不可能なほど小型の現像装置に対しては特にその利用性が高く、従って白スジのない良質の画像を得ることができるという非常に優れた効果を奏するものである。」、
第1図、第3図(a)、第4図。
イ.刊行物2:実願昭59-72527号(実開昭60-184067号)のマイクロフィルム;
第5頁第7行?第7頁第7行及び第1図、
「第1図は順方向現像システムを採用した本考案の現像装置の断面図を示すものである。
矢符1の方向に回転する感光ドラム2に対向して全体として3で示す現像装置が設けてある。この現像装置3のハウジング3’の感光ドラム2側開口部には、矢符4方向に回転する非磁性の円筒形スリーブ5が設けられている。このスリーブ5には、複数の磁極を表面に有し、それ自体回転しないマグネット6が内設され、現像スリーブを構成している。そして、この現像スリーブ表面に、トナーとキャリアーとから成る二成分系現像剤を保持し、矢符4方向に回転する磁気ブラシ9が形成され、この磁気ブラシ9が感光ドラム2を摺察する位置に現像領域Aを形成する。
また、スリーブ5の感光ドラム2と反対側には、複数の攪拌羽根7を備えた現像剤攪拌ローラ8がスリーブ5に近接して設けてある。
この攪拌ローラ8は、スリーブ5とは同方向に回転し、スリーブ5と攪拌ローラ8との最も近接する領域においてスリーブ5表面に現像剤を供給する現像剤供給領域Bを形成している。
さらに攪拌ローラ8の上方には、現像剤の循環経路を形成するための現像剤流規制板10が設けられ、スリーブ5の上方には、スリーブ5上に形成される磁気ブラシ9の穂長を規制するための穂切板11を設けられている。また現像装置3の上方部にはトナー供給ローラ14を設けたホッパー部15が配設されている。
ここで、現像剤の流れを説明すると、前述した領域Bにおいて攪拌ローラ8からスリーブ5へ供給された現像剤は規制板10の下面10aと、スリーブ5の曲面とのなす角度に従い、しだいに圧縮された現像剤は穂切板11により所定の穂立ちにされる。この時の余りの現像剤は規制板10の上面の斜面に沿って運ばれ、攪拌ローラ8にまで戻され、再びここで攪拌、混合されスリーブ表面に供給されることになる。」。
[対比・判断]
上記刊行物1には、上記の記載から、「一成分磁性現像剤を担持して現像領域へ該現像剤を搬送させるようにした電子写真方式の現像装置に用いられる、外周面に複数磁極が形成されたマグネットローラ2において、ブレード3の現像剤搬送方向上流側で、且つ現像剤容器の開口部内に位置する現像剤搬送用磁極の磁束密度半値幅を、上記現像剤容器開口部の開口幅を145°として、その40?80%(58?116°)としたマグネットローラ」が記載されているといえる。そして、上記刊行物1に記載のものは、上記のマグネットローラにおいて、現像剤容器の開口部内に位置する現像剤搬送用磁極の磁束密度半値幅を上記のように規定することによって、この現像剤搬送用磁極による穂立ちを広範囲に形成させ、これによるトナー流の拡散作用によってトナーブロックの発生を防止し、複雑な攪拌機構を設けることなく白スジのない良質の画像を得ることができる、というものである。
また、上記刊行物2には、上記の記載から明らかなように、「現像剤として2成分系を用い、磁極により拾い上げられ穂切板11によって押し戻された前記現像剤が、規制板10上方へ回り込んで現像剤堆積部に回収される経路をもつ電子写真方式の現像装置に用いられる、外周面に複数磁極が形成されたマグネット6」が記載されている。
ここで、本件訂正考案と上記刊行物1に記載のものとを比較すると、
上記刊行物1に記載のものが、一成分磁性現像剤を扱う現像装置に用いられるマグネットローラを前提とし、現像剤容器内に攪拌手段を設けない装置構成を得るための事項として、マグネットローラの現像剤搬送磁極の磁束密度半値幅を規定しているのに対して、
本件訂正考案は、2成分系現像剤を用いる現像装置に用いられるマグネットロールを前提とし、攪拌手段である攪拌パドルとの位置関係が特定された磁極(「攪拌パドルに最近接する位置に設けられたピックアップ磁極」)に対して、その磁気パターンを規定する構成事項を特定している。
つまり、上記刊行物1に記載された、マグネットローラにおける現像剤搬送磁極の磁束密度半値幅を規定した事項は、前提となる現像装置の形態が本件訂正考案とは根本的に異なると共に、現像装置の攪拌手段である攪拌パドルとの位置関係から特定されるピックアップ磁極の磁気パターンを如何に特定するかということを何ら開示していない。このことからして、上記刊行物1に記載の事項と上記刊行物2に記載の事項との組み合わせを考察しても、本件訂正考案における「攪拌パドルに最近接する位置に設けられたピックアップ磁極の磁気パターンを、そのピーク値の半値幅に対するマグネットロールの中心角が50°以上となるようにした」という事項を導き出すことはできない。
したがって、本件訂正考案は、上記刊行物1及び上記刊行物2に記載のものから当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
[結論]
以上のとおり、本件訂正考案は、実用新案法第3項第2項の規定により実用新案登録を受けることができない、とすることはできない。また、当審が通知した取消理由で提示した明細書の記載不備は、当該訂正によって解消した。
よって、本件訂正考案は、出願の際に独立して実用新案登録を受けることができたものである。
(4)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項によって準用する特許法第120条の4第2項及び同条第3項でさらに準用する特許法第126条第2?4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.実用新案登録異議の申立てについての判断
(1)申立の理由の概要
申立人キャノン株式会社は、本件請求項1に係る考案は甲第1号証及び甲第2号証に記載のものに基づいて、その考案の属する分野における通常の知識を有する者がきわめて容易に考案をすることができたものであるので、実用新案法第3条第2項の規定により登録を受けることができないものであるから、本件請求項1に係る実用新案登録は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項によって準用する特許法第113条第2号の規定により取り消されるべき旨主張すると共に、
本件明細書の実用新案登録請求の範囲及び考案の詳細な説明の記載に不備があり、本件請求項1に係る実用新案登録は、実用新案法第5条第4項及び第5項に規定する要件を満たしていない実用新案登録出願に対してされたものであるから、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項によって準用する特許法第113条第1項第4号の規定により取り消されるべき旨主張している。
(2)本件考案
平成12年2月3日付け訂正請求書により訂正された本件実用新案登録明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案(以下、「本件考案」という。)は、上記2.において述べたように適法に訂正された本件実用新案登録明細書の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおり(上記2.(3)[訂正考案]参照。)のものである。
(3)甲号各証
甲第1号証:特開昭60-93471号公報;
上記2.(3)[引用刊行物]の「刊行物1」に関する記載を参照。
甲第2号証:実願昭59-72527号(実開昭60-184067号)のマイクロフィルム;
上記2.(3)[引用刊行物]の「刊行物2」に関する記載を参照。
(4)当審の判断
実用新案法第3条第2項違反について;
上記2.(3)[対比・判断]で示した理由により(「刊行物1」,「刊行物2」をそれぞれ「甲第1号証」,「甲第2号証」と読み替える。)、本件考案は、上記甲第1号証及び甲第2号証に記載された考案に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができた考案であるとすることはできない。
実用新案法第5条違反について;
(申立人の主張)
申立人は、以下に示す(1),(2)の点を取り上げ、本件明細書の記載は不備であると主張している。
(1).本件請求項1においては、「仕切り板」に関する特定がなされるべきである。
(2).本件請求項1においては「マグネットロールの中心角が50°以上となるようにした」と記載され、本件明細書の考案の詳細な説明には「具体的には図2に示すように半値幅に対する中心角θが50°以上に設定するものである。」と記載されているが、請求項1及び考案の詳細な説明において、「中心角」の上限値に関して記載されるべきである。
(当審の判断)
上記(1)の点については、平成12年2月3日付けで提出された訂正請求書による訂正によって解消した。
上記(2)の点については、「ピックアップ磁極」との記載によって、攪拌パドルによって攪拌された現像剤をピックアップする機能を果たすために「中心角」をどの程度まで拡大可能であるかは、当業者が普通に認識できるところであるから、明細書中に「中心角」の上限に関する記載がないからといって、明細書の記載が不備であるとはいえない。
(5)まとめ
以上のとおりであるから、本件考案は、実用新案登録異議申立ての理由及び証拠によっては、実用新案法第3条第2項の規定に該当しているとすることができず、また、実用新案登録異議申立ての理由によっては、本件実用新案登録が、実用新案法第5条に規定する要件を満たしていない実用新案登録出願に対してされたものであるとすることができない。
4.むすび
したがって、実用新案登録異議申立ての理由及び証拠によっては、本件実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
マグネットロール
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 現像剤として2成分系を用い、ピックアップ磁極により拾い上げられドクターブレードによって押し戻された前記現像剤が、仕切り板上方へ回り込んで現像剤堆積部に回収させられる経路をもつ電子写真方式の現像装置に用いられる外周面に複数磁極が形成されたマグネットロールにおいて、ドクターブレードの現像剤搬送方向上流側で、且つ攪拌パドルに最近接する位置に設けられたピックアップ磁極の磁気パターンを、そのピーク値の半値幅に対するマグネットロールの中心角が50°以上となるようにしたことを特徴とするマグネットロール。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は複写機やファクシミリ、更にはレーザープリンタ等の電子写真方式の現像装置に用いられるマグネットロールに関し、更に詳しくは、2成分系の現像剤を用いるマグネットロールにおいて、トナーボックス内の現像剤の還流バランスを一定に維持し、キャリアとトナーの混合比並びに帯電量を一定に保つことができるマグネットロールに関する。
【0002】
【従来の技術】
複写機やファクシミリ等の電子写真方式の現像装置には、図4(イ),(口)に示す如く円筒状又は円柱状のマグネットロール1にスリーブ2を外装したマグネット装置Mが内蔵されている。そして、マグネットロール1外周には例えば図5に示すような磁気パターンを有する磁極N1,S1,N2,S2,S3がそれぞれ形成されている。
【0003】
このようなマグネット装置Mの現像剤ボックス内への組込み状態は図6で示される。図中3はスリーブ表面との間に現像剤通過間隙を設けた状態でスリーブ全幅にわたって設けられた現像剤通過量規制板(以下、ドクターブレード3と称す)である。図中Tは現像剤ボックス4内に収容された2成分系の現像剤であり、図中5,5は当該現像剤を構成するトナーとキャリアーの均一混合状態を促進するとともに現像剤の帯電量を一定に保つために設けられたスクリュー状の攪伴パドルである。両攪拌パドル5,5は互いに逆回転させることによって現像剤の効果的な攪拌を可能にしている。また図中6はドクターブレード3によってその通過を規制されて押し戻された現像剤を、ピックアップ経路とは別経路で現像剤堆積部7に還流させるための仕切り板である。
【0004】
マグネットロール1は、このような装置群のなかに、磁極N1,S1,N2,S2,S3が図例の配置となるようにして位置づけられる。S3極は現像剤をピックアップする機能を担い、N2極はスリーブ2表面に吸着した現像剤をドクターブレード3まで搬送するとともに現像剤を保持しながらドクターブレード3下方を通過することによってスリーブ2表面の現像剤吸着量を規制する機能を担っている。またS1極はドクターブレード3通過後の現像剤を保持しながらN1極に引渡す機能を担い、N1極は現像を行なう機能を、更にS2極はスリーブ2表面に残留する現像剤を現像剤堆積部7内に回収する機能を担っている。
【0005】
このような構成の現像装置は、スリーブ2をマグネットロール1に対して回転させることで、攪拌パドル5,5によって攪拌された現像剤をスリーブ2表面に磁力により拾い上げ、且つスリーブ2表面の現像剤をドクターブレード3との間を通過させて現像剤の付着量を規制した後、この現像剤を静電潜像が形成された感光ドラム8上に搬送し、他方、ドクターブレード3によって押し戻された現像剤は仕切り板6上方へ回り込ませた後、図中矢印で示す経路を辿らせて現像剤堆積部7に還流させている。そして還流させられた現像剤は攪拌パドル5,5によって現像剤堆積部7内の現像剤と混合させられる。
【0006】
このような構成の現像装置においては、ドクターブレード3下方を通過して感光ドラム8に引き渡される現像剤の流れが重要であることは勿論であるが、ピックアップ磁極S3により拾い上げられドクターブレード3で押し戻された現像剤が、仕切り板6上方へ回り込んで現像剤堆積部7に回収させられる経路も極めて重要である。特に本考案が対象とする2成分系の現像剤の場合はトナーとキャリアーの混合比と帯電量の管理が重要であり、このためピッタアップ磁極S3による拾い上げから仕切り板6を経由した現像剤堆積部7への回収までの流れのバランスを維持することが重要である。
【0007】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のマグネットロールにおいては、仕切り板6を経由して現像剤堆積部7に還流する現像剤量にムラがあり、還流する現像剤量が多くなったり少なくなったりする結果、全体の流れが崩れて現像剤堆積部7に堆積する現像剤がマグネットロールの長手方向において片寄る現象が生じる問題があった。そして、現像剤の片寄りが発生するとピックアップ磁極によって拾われる現像剤量がマグネットロール長手方向においてばらつく問題がある上に、トナーとキャリアーの混合比並びに帯電量もマグネットロール長手方向においてばらつきが生じ、現像画像に濃淡ムラが発生する問題があった。
【0008】
本考案者はかかる現象を鋭意研究したところ、この原因はピックアップ磁極S3の磁気パターンにあることを見出した。即ち、従来のピックアップ磁極S3の磁気パターンは図7に示す如く、幅細のシャープな形状をしており、例えば磁界強度のピーク値が600Gであるとすれば、その半値である300Gの磁界強度を示す部分の磁界幅(以下、半値幅と称す)は狭く、半値幅に対するマグネットロールの中心角θは40°以下に設計されている。しかしながらこのようなシャープな磁気パターンではマグネットロールセッティングのズレや機械的振動等によりピックアップ磁極S3の設定位置が2?3°振れるだけで、現像剤のピックアップ量が大きく変動し、この結果、現像剤の流れのバランスが崩れてボックス内の一方に現像剤が片寄る現象が発生する。
【0009】
本考案は、かかる現況に鑑みてなされたものであり、現像剤ボックス内の現像剤の片寄りが発生せず、トナーとキャリアーの混合比並びに帯電量を一定に保つことができ、良好な現像画像を得ることができるマグネットロールを提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決する為の手段】
このような課題を解決した本考案のマグネットロールは、ドクターブレードの現像剤搬送方向上流側で、且つ攪拌パドルに最近接する位置に設けられた磁極の磁気パターンを、そのピーク値の半値幅に対するマグネットロールの中心角が50°以上となるようにしたことを特徴としている。
【0011】
【作用】
このような構成のマグネットロールは、現像剤をピックアップする磁極のピーク値の半値幅に対するマグネットロールの中心角が50°以上であり、ピックアップ磁極の磁気パターンが従来のものに比べて幅広に設定されているから、ピックアップ磁極が及ぼす磁界強度はなだらかに変化するようになり、スリーブ表面における現像剤を吸着する力、即ち磁気吸引力を広い範囲にわたってほぼ一定にすることができる。したがってピックアップ磁極の設定位置が2?3。振れた場合でも、現像剤のピックアップ量をほぼ一定に保つことができ、ボックス内での現像剤の流れのバランスを崩すことはなく、ボックス内での現像剤の片寄りを防止できる。
【0012】
【実施例】
次に本考案の詳細を図示した実施例に基づき説明する、図1は本考案のマグネットロールの磁気パターンを示す説明図であり、図中1が外周面に複数磁極N1,N2,S1,S2,S3が形成されたマグネットロールであり、図中2がスリーブである。本考案は図示するようにこれら複数磁極のうちピックアップ磁極S3の磁気パターンを、従来の磁気パターンに比べて幅広にすることを特徴としており、具体的には図2に示すように半値幅に対する中心角θが50°以上に設定するものである。
【0013】
図3はこのような構成のマグネット装置1を現像剤ボックス4に組み込んだ状態を示している。本考案のマグネットロール1は、ピックアップ磁極S3が幅広い磁気パターンを有することから、ピックアップ磁極S3の磁気吸引力は広い範囲にわたってほぼ均一であり、機械的振動等によりピックアップ磁極S3の設定位置が2°?3°ズレたときにもピックアップ磁極S3によってスリーブ表面に吸着させる現像剤の量をほぼ一定に保つことができる。したがって、現像剤ボックス内での現像剤の流れのバランスを維持することができ、現像剤ボックス内での現像剤の片寄りをなくすことができる。尚、図示したものはマグネットロール外周に形成した磁極数が5極のものであるが、この数は限定されない。
【0014】
【考案の効果】
本考案のマグネットロールは、外周面に形成された複数磁極のうち、ドクターブレードの現像剤搬送方向上流側で、且つ攪拌パドルに最近接する位置に設けられるピックアップ磁極の磁気パターンを、そのピーク値の半値幅に対するマグネットロールの中心角が50°以上となるように設定した。このように、ピックアップ磁極の磁気パターンを従来のものより幅広に設定したので、ピックアップ磁極の磁気吸引力は広い範囲にわたってほぼ一定となり、ピックアップ磁極の設定位置がズレたときにも、ピックアップ磁極によってスリーブ表面に吸着される現像剤量にほとんど変化はなく、常に一定量の現像剤を吸着させることができる。したがって現像剤ボックス内での現像剤の流れのバランスを維持することができ、現像剤ボックス内での現像剤の片寄りを防止することが可能で、現像剤を構成するキャリアとトナーの混合比並びに帯電量を一定に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案のマグネットロールの磁気パターンを示す説明図
【図2】本考案のマグネットロールにおけるピックアップ磁極の半値幅に対する中心角の大きさを示す説明図
【図3】本考案のマグネットロールを組み込んだ現像装置を示す説明図
【図4】マグネットロールとスリーブより構成されるマグネット装置を示し、(イ)は軸方向断面図、(口)は径方向断面図
【図5】従来のマグネットロールの磁気パターンを示す説明図
【図6】従来のマグネットロールを組み込んだ現像装置を示す説明図
【図7】従来のマグネットロールにおけるピックアップ磁極の半値幅に対する中心角の大きさを示す説明図
【符号の説明】
Mマグネット装置
T現像剤
1マグネットロール
2スリーブ
3ドクターブレード
4現像剤ボックス
5攪拌パドル
6仕切り板
7現像剤堆積部
8感光ドラム
訂正の要旨 実用新案登録第2591807号考案の明細書を本件訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに訂正する。すなわち、
明細書の実用新案登録請求の範囲、請求項1の記載「電子写真方式の現像装置に用いられる外周面に複数磁極が形成されたマグネットロールにおいて、」を、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、
「現像剤として2成分系を用い、ピックアップ磁極により拾い上げられドクターブレードによって押し戻された前記現像剤が、仕切り板上方へ回り込んで現像剤堆積部に回収させられる経路をもつ電子写真方式の現像装置に用いられる外周面に複数磁極が形成されたマグネットロールにおいて、」と訂正する。
異議決定日 2000-02-25 
出願番号 実願平3-99341 
審決分類 U 1 651・ 532- YA (G03G)
U 1 651・ 531- YA (G03G)
U 1 651・ 121- YA (G03G)
最終処分 維持    
前審関与審査官 小宮山 文男  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 水垣 親房
小橋 立昌
登録日 1999-01-08 
登録番号 実用新案登録第2591807号(U2591807) 
権利者 鐘淵化学工業株式会社
大阪府大阪市北区中之島3丁目2番4号
考案の名称 マグネットロール  
代理人 柳野 隆生  
代理人 柳野 隆生  
代理人 倉橋 暎  

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