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審決分類 審判 全部申し立て   F04B
管理番号 1018553
異議申立番号 異議1998-74989  
総通号数 13 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-01-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-10-01 
確定日 1999-09-13 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 実用新案登録第2567549号「容量可変斜板式コンプレッサ」の請求項1ないし2に係る実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 実用新案登録第2567549号の請求項1に係る実用新案登録を維持する。
理由 第1 手続の経緯
本件実用新案登録第2567549号については、平成3年7月23日に実用新案登録出願され、平成9年12月26日に実用新案権の設定登録がされ、その後、同10年10月1日に株式会社豊田自動織機製作所より請求項1及び請求項2について実用新案登録異議の申立てがされ、同11年1月27日付けで取消しの理由の通知がされ、その指定期間内である同11年4月12日に明細書の訂正の請求がされ、同11年4月30日付けで訂正拒絶の理由の通知がされ、その指定期間内である同11年8月3日に訂正の請求の補正がされた。
第2 訂正の適否についての判断
1 補正の内容及びその適否
実用新案権者は、手続補正書において、訂正請求書の訂正事項に関して以下のように補正している。
(1)訂正請求書第2頁第7行の「実用新案登録請求の範囲の減縮を目的として、」を「実用新案登録請求の範囲の減縮と誤記の訂正を目的として、」と補正する。
(2)訂正請求書第2頁第12行の「導入された前記帰還冷媒」を「導入された帰還冷媒」と補正する。
(3)訂正請求書第2頁第14行の「(33)と前記クランク」を「(33)とクランク」と補正する。
(4)訂正請求書第2頁下から5?4行の「取付けボルト(72)のボルト挿通孔(73)と」を「取付けボルト(72)が螺合されたボルト挿通孔(73)のねじ部分と」と補正する。
(5)訂正請求書第4頁第2行の「導入された前記帰還冷媒」を「導入された帰還冷媒」と補正する。
(6)訂正請求書第4頁第4行の「吐出ポートと前記クランク」を「吐出ポートとクランク」と補正する。
(7)訂正請求書第4頁第10?11行の「取付けボルトのボルト挿通孔と」を「取付けボルトが螺合されたボルト挿通孔のねじ部分と」と補正する。
(8)訂正請求書第4頁第17行の「(4)請求の原因」の前に下記の文を加入する。
「c.実用新案登録明細書の段落0016
「【0016】
本実施例では、帰還冷媒の圧力Psを前記クランク室12内に導く第3連通路R3を形成するに当り、図2に示す容量可変式コンプレッサのようにシリンダ通路61等を用いて形成せず、前記ベローズ37の周辺を冷媒が流通しないような位置に設けている。この第3連通路R3は、冷媒がベローズ37の周辺を流れず帰還冷媒の圧力Psを前記クランク室12内に導くことができる通路であれば、どのような位置に形成してもよく、従来の容量可変式コンプレッサを流用する場合には、クランク室12内とべローズ室64とを連通するシリンダ通路61等を適当な手段により閉塞し、冷媒がベローズ室64に流入しないようにする一方、帰還冷媒が導入される吸入ポート29とクランク室12内とを適当なサブ連通路Rsにより連通してもよい。容量可変式コンプレッサの構成を簡素化する上から好ましものとしては、クランク室12を貫通して伸延された取付けボルト72のボルト挿通孔73を利用し、このボルト挿通孔73と前記吸入ポート29とを連通するようにサブ連通路Rsを開設することが望ましい。
ここに、取付けボルト72は、複数本設けられ、胴体ケーシング17、シリンダ25、シリンダヘット30等を相互に連結するためのものであり、これらシリンダ25等を貫通して設けられたボルト挿通孔73内にある程度の隙間をもって挿通されている。この隙間が帰還冷媒の圧力Psをクランク室12内に導く第3連通路R3の一部となる。」を
明りょうでない記載の釈明を目的として、
「【0016】
本実施例では、帰還冷媒の圧力Psを前記クランク室12内に導く第3連通路R3を形成するに当り、図2に示す容量可変式コンプレッサのようにシリンダ通路61等を用いて形成せず、前記ベローズ37の周辺を冷媒が流通しないような位置に設けている。この第3連通路R3は、冷媒がベローズ37の周辺を流れず帰還冷媒の圧力Psを前記クランク室12内に導くことができる通路であれば、どのような位置に形成してもよく、従来の容量可変式コンプレッサを流用する場合には、クランク室12内とべローズ室64とを連通するシリンダ通路61等を適当な手段により閉塞し、冷媒がベローズ室64に流入しないようにする一方、帰還冷媒が導入される吸入ポート29とクランク室12内とを適当なサブ連通路Rsにより連通してもよい。容量可変式コンプレッサの構成を簡素化する上から好ましものとしては、クランク室12を貫通して伸延された取付けボルト72とボルト挿通孔73のねじ部分を利用し、このボルト挿通孔73と前記吸入ポート29とを連通するようにサブ連通路Rsを開設することが望ましい。
ここに、取付けボルト72は、複数本設けられ、胴体ケーシング17、シリンダ25、シリンダヘット30等を相互に連結するためのものであり、これらシリンダ25等を貫通して設けられたボルト挿通孔73内にある程度の隙間をもって挿通されている。この隙間が帰還冷媒の圧力Psをクランク室12内に導く第3連通路R3の一部となる。」と訂正する。

(9)訂正請求書第4頁下から5行の「取付けボルト(72)のボルト挿通孔(73)と」を「取付けボルト(72)が螺合されたボルト挿通孔(73)のねじ部分と」と補正する。
(10)訂正請求書第5頁第11行の「(72)のボルト挿通孔(73)と」を「(72)が螺合されたボルト挿通孔(73)のねじ部分と」と補正する。
上記補正事項の中、補正事項(2)及び(3)は、実用新案登録請求の範囲の誤記の訂正であり、補正事項(1)、(5)及び(6)は、この誤記の訂正に対応させるための補正である。また、補正事項(4)、(7)、(9)及び(10)は、実用新案登録請求の範囲の減縮に対応させるための補正であり、補正事項(8)は、明りょうでない記載の釈明に相当する。
したがって、これらの補正は、いずれも訂正請求書の要旨を変更するものではない。
2 訂正の内容
実用新案権者は、補正された訂正請求書において、本件実用新案登録明細書を以下のように訂正している。
(1)訂正事項a
実用新案登録請求の範囲を下記のように訂正する。

「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 ケーシング(17)内のバルブ室(V)に取付けられたバルブケース(h)と、該バルブケース(h)内に形成したベローズ室(64)と、このベローズ室(64)と吸入ポート(29)とを連通する第1連通路(R1)と、第1連通路(R1)を介して導入された帰還冷媒の圧力(Ps)により伸縮するベローズ(37)と、ベローズ(37)の伸縮により弁口(47)の開度を制御する制御弁(39)と、前記弁口(47)を介してピストン(23)により圧縮された冷媒が導入される吐出ポート(33)とクランク室(12)内とを連通する第2連通路(R2)と、帰還冷媒の圧力(Ps)を前記クランク室(12)内に導く第3連通路(R3)とを有するコントロールバルブ(Cv)を備え、該コントロールバルブ(Cv)のベローズ(37)により帰還冷媒の圧力(Ps)を感知し、この圧力(Ps)に応じてクランク室(12)内の圧力(Pc)を変化させてピストン(23)のストロークを調整し、吐出される冷媒量を調節するようにしてなる容量可変斜板式コンプレッサにおいて、当該第3連通路(R3)を流れる冷媒が前記ベローズ(37)の周辺を流通しないように、前記クランク室(12)を貫通して伸延された取付けボルト(72)が螺合されたボルト挿通孔(73)のねじ部分と前記吸入ポート(29)とをサブ通路(Rs)により連通することにより前記第3連通路(R3)の一部を構成するようにしたことを特徴とする容量可変式コンプレッサ。」
(2)訂正事項b
実用新案登録明細書の段落【0012】を下記のように訂正する。

「 【0012】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、本考案は、ケーシング内のバルブ室に取付けられたバルブケースと、該バルブケース内に形成したベローズ室と、このベローズ室と吸入ポートとを連通する第1連通路と、第1連通路を介して導入された帰還冷媒の圧力により伸縮するベローズと、ベローズの伸縮により弁口の開度を制御する制御弁と、前記弁口を介してピストンにより圧縮された冷媒が導入される吐出ポートとクランク室内とを連通する第2連通路と、帰還冷媒の圧力を前記クランク室内に導く第3連通路とを有するコントロールバルブを備え、該コントロールバルブのベローズにより帰還冷媒の圧力を感知し、この圧力に応じてクランク室内の圧力を変化させてピストンのストロークを調整し、吐出される冷媒量を調節するようにしてなる容量可変斜板式コンプレッサにおいて、当該第3連通路を流れる冷媒が前記ベローズの周辺を流通しないように、前記クランク室を貫通して伸延された取付けボルトが螺合されたボルト挿通孔のねじ部分と前記吸入ポートとをサブ通路により連通することにより前記第3連通路の一部を構成するようにしたことを特徴とする容量可変式コンプレッサである。」
(3)訂正事項c
実用新案登録明細書の段落【0016】を下記のように訂正する。

「 【0016】
本実施例では、帰還冷媒の圧力Psを前記クランク室12内に導く第3連通路R3を形成するに当り、図2に示す容量可変式コンプレッサのようにシリンダ通路61等を用いて形成せず、前記ベローズ37の周辺を冷媒が流通しないような位置に設けている。この第3連通路R3は、冷媒がベローズ37の周辺を流れず帰還冷媒の圧力Psを前記クランク室12内に導くことができる通路であれば、どのような位置に形成してもよく、従来の容量可変式コンプレッサを流用する場合には、クランク室12内とベローズ室64とを連通するシリンダ通路61等を適当な手段により閉塞し、冷媒がベローズ室64に流入しないようにする一方、帰還冷媒が導入される吸入ポート29とクランク室12内とを適当なサブ連通路Rsにより連通してもよい。容量可変式コンプレッサの構成を簡素化する上から好ましものとしては、クランク室12を貫通して伸延された取付けボルト72とボルト挿通孔73のねじ部分を利用し、このボルト挿通孔73と前記吸入ポート29とを連通するようにサプ連通路Rsを開設することが望ましい。
ここに、取付けボルト72は、複数本設けられ、胴体ケーシング17、シリンダ25、シリンダヘット30等を相互に連結するためのものであり、これらシリンダ25等を貫通して設けられたボルト挿通孔73内にある程度の隙間をもって挿通されている。この隙間が帰還冷媒の圧力Psをクランク室12内に導く第3連通路R3の一部となる。」
3 訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項aは、実用新案登録請求の範囲の請求項1を削除し、請求項2の第3連通路(R3)の構成をさらに限定すると共に誤記を訂正するものであり、実用新案登録請求の範囲の減縮及び誤記の訂正に相当し、且つ、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質的に実用新案登録請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(2)訂正事項b及びcは、実用新案登録請求の範囲の減縮に対応してなされた考案の詳細な説明の欄の部分的訂正であり、明りょうでない記載の釈明に相当し、且つ、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質的に実用新案登録請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
4 独立実用新案登録要件の判断
(1)訂正明細書の請求項に係る考案
訂正明細書の請求項1に係る考案は、上記2(1)に示すとおりの「容量可変式コンプレッサ」である。
(2)引用刊行物
これに対して、上記取消しの理由で引用した本件実用新案登録の出願前に頒布された各刊行物にはそれぞれ以下の考案乃至技術的事項が記載されている。
刊行物1 (特開昭62-203980号公報):
ケーシング内のバルブ室に取付けられたバルブケースと、該バルブケース内に形成した吸入圧力室30と、この吸入圧力室30と吸入チャンバー6とを連通する連通路6’と、連通路6’を介して導入された帰還冷媒の圧力Psにより伸縮するベローズ33と、ベローズ33の伸縮により弁口の開度を制御する開閉弁36と、前記弁口を介してピストン16により圧縮された冷媒が導入される吐出チャンバー7とクランク室13内とを連通する連通路7’及び供給通路37と、前記吸入チャンバー6と前記クランク室13内とを相互に連通する連通路とを有するコントロールバルブ29を備え、該コントロールバルブ29のベローズ33により帰還冷媒の圧力Psを感知し、この圧力Psに応じてクランク室13内の圧力Pcを変化させてピストン16のストロークを調整し、吐出される冷媒量を調節するようにしてなる揺動斜板型圧縮機において、前記吸入チャンバー6と前記クランク室13内とを相互に連通する連通路を流れる冷媒が前記ベローズ33の周辺を流通しないように、クランク室13と吸入チャンバー6間に延在させて固定逃し孔27が穿設されている揺動斜板型圧縮機。
刊行物2 (特公昭56-17554号公報):
斜板式圧縮機において、斜板室13を貫通して伸延される締付ボルト8を挿通させるための該締付ボルト8径よりも大径のボルト通し孔10を形成し、該通し孔10により前記斜板室13と低圧室6F,6Rとを連通させて冷媒ガスの通路とすること。
(3)対比・判断
訂正明細書の請求項1に係る考案と刊行物1記載の考案とを対比すると、刊行物1記載の考案の「吸入圧力室30」、「吸入チャンバー6」、「連通路6’」、「開閉弁36」、「吐出チャンバー7」、「連通路7’及び供給通路37」及び「揺動斜板型圧縮機」は、それぞれ訂正明細書の請求項1に係る考案の「ベローズ室(64)」、「吸入ポート(29)」、「第1連通路(R1)」、「制御弁(39)」、「吐出ポート(33)」、「第2連通路(R2)」及び「容量可変(斜板)式コンプレッサ」に相当することが明らかである。また、刊行物1記載の考案の「前記吸入チャンバー6と前記クランク室13内とを相互に連通する連通路」は、吸入チャンバー6、すなわち、吸入ポート(29)の帰還冷媒の圧力がクランク室内の圧力より大きい場合には、帰還冷媒の圧力をクランク室に導くものであることから、訂正明細書の請求項1に係る考案の「第3連通路」に相当する。したがって、両者は、「ケーシング内のバルブ室に取付けられたバルブケースと、該バルブケース内に形成したベローズ室と、このベローズ室と吸入ポートとを連通する第1連通路と、第1連通路を介して導入された帰還冷媒の圧力により伸縮するベローズと、ベローズの伸縮により弁口の開度を制御する制御弁と、前記弁口を介してピストンにより圧縮された冷媒が導入される吐出ポートとクランク室内とを連通する第2連通路と、帰還冷媒の圧力を前記クランク室内に導く第3連通路とを有するコントロールバルブを備え、該コントロールバルブのベローズにより帰還冷媒の圧力を感知し、この圧力に応じてクランク室内の圧力を変化させてピストンのストロークを調整し、吐出される冷媒量を調節するようにしてなる容量可変斜板式コンプレッサにおいて、当該第3連通路を流れる冷媒が前記ベローズの周辺を流通しないように、前記クランク室と前記吸入ポートとを連通することにより前記第3連通路を構成するようにした容量可変式コンプレッサ。」である点で一致しているものの、訂正明細書の請求項1に係る考案では、「クランク室(12)を貫通して伸延された取付けボルト(72)が螺合されたボルト挿通孔(73)のねじ部分と前記吸入ポート(29)とをサブ通路(Rs)により連通することにより前記第3連通路(R3)の一部を構成する」こと(以下「構成A」という。)をその必須の構成要件としているのに対して、刊行物1記載の考案は、構成Aを備えていない。
また、刊行物2には、上記したように、斜板式圧縮機において、斜板室13を貫通して伸延される締付ボルト8を挿通させるための該締付ボルト8径よりも大径のボルト通し孔10を形成し、該通し孔10により前記斜板室13と低圧室6F,6Rとを連通させて冷媒ガスの通路とすることが記載されているものの、締付ボルト8が螺合されたボルト挿通孔のねじ部分を流体の通路とすることは記載されておらず、刊行物2記載の考案も上記構成Aを備えていない。
そして、訂正明細書の請求項1に係る考案は、上記構成Aを備えることによって、通路断面積を小さく構成する必要がある第3連通路を極めて簡便に形成し得るという効果を奏すことが期待できる。
したがって、訂正明細書の請求項1に係る考案は、刊行物1及び刊行物2記載の考案乃至技術的事項に基づいて当業者がきわめて容易に考案をすることができたとすることはできず、実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができるものである。
5 むすび
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、平成6年法律第116号附則第9条第2項において準用され、同附則第10条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する同法第126条第2項から第4項の規定に適合するので当該訂正を認める。
第3 実用新案登録異議の申立てについての判断
1 実用新案登録異議申立ての理由の概要
実用新案登録異議申立人株式会社豊田自動織機製作所は、本件の請求項1に係る考案は、甲第1号証(上記刊行物1)記載の考案に基づいて、また、本件の請求項2に係る考案は、甲第1号証及び甲第2号証(上記刊行物2)記載の考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件の請求項1及び2に係る実用新案登録は、実用新案第3条第2項の規定に違反して実用新案登録されたものであり、取り消されるべきものである旨主張している。
2 特許異議申立人の主張の検討
上記第2の5に示すように本件訂正請求が認容されたことにより、本件実用新案登録は、請求項1に係るものだけとなった。
本件の請求項1に係る考案は、上記第2の2(1)に示すとおりのものであり、同4(3)に示す理由により、甲第1号証及び甲第2号証記載の考案に基づいて、当業者がきわめて容易に考案をすることができたとすることはできない。
3 むすび
以上のとおりであるから、実用新案登録異議申立人の主張する実用新案登録異議申立ての理由及び提出した証拠によっては、本件の請求項1に係る実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項1に係る実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
容量可変斜板式コンプレッサ
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 ケーシング(17)内のバルブ室(V)に取付けられたバルブケース(h)と、該バルブケース(h)内に形成したベローズ室(64)と、このベローズ室(64)と吸入ポート(29)とを連通する第1連通路(Rl)と、第1連通路(Rl)を介して導入された帰還冷媒の圧力(Ps)により伸縮するベローズ(37)と、ベローズ(37)の伸縮により弁口(47)の開度を制御する制御弁(39)と、前記弁口(47)を介してピストン(23)により圧縮された冷媒が導入される吐出ポート(33)とクランク室(12)内とを連通する第2連通路(R2)と、帰還冷媒の圧力(Ps)を前記クランク室(12)内に導く第3連通路(R3)とを有するコントロールバルブ(Cv)を備え、該コントロールバルブ(Cv)のベローズ(37)により帰還冷媒の圧力(Ps)を感知し、この圧力(Ps)に応じてクランク室(12)内の圧力(Pc)を変化させてピストン(23)のストロークを調整し、吐出される冷媒量を調節するようにしてなる容量可変斜板式コンプレッサにおいて、当該第3連通路(R3)を流れる冷媒が前記ベローズ(37)の周辺を流通しないように、前記クランク室(12)をー通して伸延された取付けボルト(72)が螺合されたボルト挿通孔(73)のねじ部分と前記吸入ポート(29)とをサブ通路(Rs)により連通することにより前記第3連通路R3の一部を構成するようにしたことを特徴とする容量可変式コンプレッサ。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、高速回転時等の制御性を向上させた容量可変斜板式コンプレッサの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近の自動車用空気調和装置に使用されるコンプレッサには、第2図に示すような、容量可変斜板式コンプレッサが提案されている(例えば、実開昭64-56,577号公報、実開平1-160,179号公報等参照)。
容量可変斜板式コンプレッサ3は、シリンダ25における圧縮室内容積を、このコンプレツサ3に帰還する冷媒の吸込圧に応じて変化させて、該コンプレッサ3の吐出冷媒量を調節し、このコンプレッサ3の吸入圧が一定になるようにしたものである。
【0003】
このように吸入圧を一定にすると、ある程度エバポレータの出口における冷媒圧力(すなわち、エバポレータにおける冷媒の蒸発圧力)が一定になり、いわゆる低負荷時のエバポレータ凍結を避けることができ、また、コンプレッサが熱負荷に応じた吐出量となり、従来から行なわれていたマグネットクラッチによるコンプレッサのオン、オフを可及的に減少することができ、このコンプレッサのオン、オフによる吹き出し空気の急激な温度変化及びエンジン回転の急激なトルク変化がなくなり、運転時の快適性を向上させることもできる。
容量可変斜板式コンプレッサ3は、エンジンによりベルト、プーリ2及びマグネットクラッチ2aを介して回転駆動される駆動軸11を有している。駆動軸11には、駆動棒11aが駆動軸11と直角方向に突設され、クランク室12内で駆動軸11と共に回転するようなっている。駆動棒11aにはピン11bを支点として駆動斜板13が駆動軸11に対して傾斜して揺動し得るように連結され、駆動軸11の回転力が駆動棒11a及びピン11bを介して駆動斜板13に伝達するようになっている。この駆動斜板13には、スラスト軸受14及びラジアル軸受15を介して、非回転のソケットプレート16を摺動自在に取付けてある。ソケットプレート16は、クランク室12の胴部ケーシング17に固定された案内ピン18に対して滑動自在に連結されたシュー19を有し、このシュー19により回転が防止され、軸線方向の往復動が許容されている。ソケットプレート16には、複数のピストンロッド22が円周方向等間隔に取付けられており、このピストンロッド22の他端にはピストン23が連結されている。
【0004】
そして駆動斜板13の回転により、ソケットプレート16がいわゆるみそすり的動作をして軸線方向に往復動することになり、これによりピストンロッド22を介してピストン23が往復動される。ここに、ピストン23が嵌挿されたシリンダ25のピストン23の前面側部分は圧縮室となり、背面側部分は前記クランク室12と連通している。
シリンダヘッド30には吸入ポート29及び吐出ポート33が設けられ、この吸入ポート29には、エバポレータからの帰環冷媒が流入し、この冷媒はバルブプレート20に開設された吸入口27を閉鎖する吸入弁34の閉鎖弾発力に抗してシリンダボア26内に形成される圧縮室に流入するようになっている。
また、この冷媒はシリンダヘッド30に形成された前記吸入ポート29と連通状態の吸入側圧力室32を経た後、第1連通路Rlを通って前記ベローズ室64内に導かれるようになっている。
一方、吐出ポート33には、圧縮された冷媒が流出し、バルブプレート20に開設された吐出口28から吐出された冷媒をコンデンサに送り込む配管(いずれも図示せず)が連通されているが、この吐出ポート33から流出した冷媒の一部はさらに後述のバルブ室V内に形成された吐出側圧力室35にも流入するようになっている。
【0005】
吸入側圧力室32と吐出側圧力室35との間には、前記シリンダヘッド30に開設されたバルブ室Vが設けられ、このバルブ室V内にコントロールバルブCvのバルブケースhが設けられている。このコントロールバルブCvは、シリンダ25の吸入ポート29に帰還する冷媒の圧力に応じて作動するものである。つまり、該コントロールバルブCvは、帰還する冷媒の圧力が低圧ならば第1弁口40を閉止し、第2弁口47を開放する方向に移動し、高圧ならば第1弁口40を開放し、第2弁口47を閉止する方向に移動するもので、下部に第1制御弁36を、頂部に第2制御弁39を有し、第1制御弁36は、吸入側圧力室32の内部圧力に応じて伸縮するベローズ37と、このベローズ37内に設けられたばね38との力の均衡により第1弁口40の開度を調整する。
【0006】
また、第1制御弁36には作動ロッド46が設けられ、作動ロッド46により両制御弁36,39は連動し、前述のように第1制御弁36が第1弁口40の開度を大きくする場合には、この第2制御弁39は、第2弁口47の開度を小さくするように作動する。したがって、冷房サイクルにおける熱負荷が小さい場合には、帰環冷媒の圧力は、十分なスーパーヒート量が得られず、低圧で帰還するため、吸入側圧力室32内の圧力(以下吸入圧Ps)が低くなり、ベローズ37は上方に伸び、第2弁口47を大きく開き、吐出口28から圧縮工程にあるピストン23によって圧縮された圧縮冷媒(以下吐出圧Pd)の一部を、この第2弁口47より第2連通路R2(通路62,通路63,通路48,中心孔44,中心通路45等の総称)、つまり通路62→通路63→通路48→中心孔44→中心通路45を通ってクランク室12に導入し、このクランク室12の内部圧力(以下クランク室圧Pc)を高めることになる。
【0007】
これにより、ソケットプレート16の傾斜角は複数のピストン23に対して加わる前後の圧力バランスによってコントロールされる。つまり、クランク室12内の圧力Pcが吸入側の圧力より大きくなると、複数のピストン23の背面に加わる力の合成力は、ソケットプレート16にピン11bを中心とするモーメントとして働き、ソケットプレート16の傾斜角度を減少させるにように作用する。
このため、吸入工程にあるピストン23は、充分に大きなストロークとなるように後退できず、次に圧縮工程に入るときに僅かな圧縮ストロークしかとることができない。これにより冷媒の圧縮量は少なくなり、冷房サイクル内を循環する冷媒流量が減少し、低い熱負荷に応じた適正な冷媒量となる。冷媒量の減少により、コンプレッサ3の吸入圧Psが次第に上昇し、結果的に一定な吸入圧Psに保たれる。また、クランク室12に流入する前記圧縮冷媒中には潤滑油が含有されており、この潤滑油は、駆動軸11に穿設された中心通路45の開口部45bから駆動斜板13とソケットプレートの摺動面15aであるラジアル軸受15に供給される。
【0008】
冷房サイクルにおける熱負荷が大きい場合には、吸入圧Psが高くなり、ベローズ37が縮少して第1制御弁36が下方に移動し、第1弁口40の開度を大きくし、第2弁口47の開度を小さくする。したがって、高圧の吐出圧Pdはクランク室12内に導入されず、吸入圧Psがクランク室12内の圧力Pcより小さいと、クランク室12内の冷媒が、第3連通路R3(シリンダ通路61,通路41等の総称)、つまりシリンダ通路61→通路41→第1弁口40→ベローズ室64を通って吸入ポート29中に流れ、これによりクランク室圧Pcと吸入圧力Psがほぼ等しくなる。
【0009】
このため、前述したモーメントの作用によりソケットプレート16及び駆動傾斜板13が駆動軸11に対して最大に傾斜することになり、ピストン23の往復動ストロークが長くなる。この状態で圧縮を行なうと、吐出冷媒量は増大し、高い熱負荷に応じた適正な冷媒流量となり、コンプレッサ3の吸入圧力Psが次第に下降し、その結果一定の吸入圧力Psに保たれることになる。
【0010】
【考案が解決しようとする課題】
しかし、従来の容量可変斜板式コンプレッサ3では、コントロールバルブCvのベローズ37の周囲が感圧領域となるとともに冷媒流通通路の一部ともなっている。したがって、例えば、前述した冷房サイクルにおける熱負荷が大きい場合のように、クランク室12内の冷媒が、前記第3連通路R3を通って流れると、ベローズ37に対し冷媒の動圧が作用し、実際の吸入圧Psとベローズ37が感知する吸入圧Ps′の間に圧力差を生じ、Ps′>Psという状態が生じる。このような状態となると、ベローズ37は、熱負荷が大きい場合と同様に、前述したモーメントの作用によりソケットプレート16及び駆動傾斜板13の駆動軸11に対する傾斜状態を変化させることになり、ピストン23の往復動ストロークは長くなり、結果的にコンプレッサ3の吸入圧力Psはさらに下降することになる。
また、容量可変斜板式コンプレッサが高速回転しているときほど、クランク室12内のクランク室圧Pcは高くし、ピストン23の往復動ストロークを短くする必要があるが、この場合には、ベローズ37の周囲を流れる冷媒量も増大し、さらに前述した圧力差が大きくなり、吸入圧Ps′の低下が損なわれ、容量制御性が低下することになる。
【0011】
本考案は、上記従来技術の欠点乃至問題点に鑑みてなされたものであり、容量可変斜板式コンプレッサにおけるベローズの周囲を冷媒が流れないようにし、ベローズが真の冷媒圧力を感知し、容量可変斜板式コンプレッサの容量制御性を高めることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、本考案は、ケーシング内のバルブ室に取付けられたバルブケースと、該バルブケース内に形成したベローズ室と、このベローズ室と吸入ポートとを連通する第1連通路と、第1連通路を介して導入された帰還冷媒の圧力により伸縮するベローズと、ベローズの伸縮により弁口の開度を制御する制御弁と、前記弁口を介してピストンにより圧縮された冷媒が導入される吐出ポートとクランク室内とを連通する第2連通路と、帰還冷媒の圧力を前記クランク室内に導く第3連通路とを有するコントロールバルブを備え、該コントロールバルブのベローズにより帰還冷媒の圧力を感知し、この圧力に応じてクランク室内の圧力を変化させてピストンのストロークを調整し、吐出される冷媒量を調節するようにしてなる容量可変斜板式コンプレッサにおいて、当該第3連通路を流れる冷媒が前記ベローズの周辺を流通しないように、前記クランク室を貫通して伸延された取付けボルトが螺合されたボルト挿通孔のねじ部分と前記吸入ポートとをサブ通路により連通することにより前記第3連通路の一部を構成するようにしたことを特徴とする容量可変式コンプレッサである。
【0013】
【作用】
本考案にあっては、冷房サイクルにおける熱負荷が小さい場合には、吸入圧Psの低い帰環冷媒が、吸入ポートよりベローズ室に入り、ベローズは上方に伸び制御弁を開き、ピストンによって圧縮された高い吐出圧Pdの冷媒の一部を、第2連通路よりクランク室12に導入し、クランク室圧Pcを高くする。これにより吸入工程にあるピストン23は、充分に大きなストロークとなるように後退できず、圧縮ストロークが小さくなり、冷媒圧縮量は少なく、低い熱負荷に応じた適正な冷媒量となる。
次に、冷房サイクルにおける熱負荷が大きい場合には、吸入圧Psの高い帰環冷媒が、吸入ポートよりベローズ室に入り、ベローズは縮少し、制御弁の開度を閉じる。これにより、ピストンによって圧縮された高い吐出圧Pdの冷媒は、クランク室に導入されることはない。
この場合、比較的高圧の吸入圧Psはサブ連通路を通ってクランク室内に導入されることになるので、ベローズの周囲には冷媒は流れず、ベローズは正確に冷媒の圧力によって作動し、クランク室内の圧力Pcとの差圧がなくなる。これにより、モーメントの作用により駆動傾斜板等が駆動軸に対して傾斜し、ピストンの往復動ストロークが長くなる。この状態で圧縮すれば、吐出冷媒量は増大し、高い熱負荷に応じた適正な冷媒流量となり、コンプレッサ3の吸入圧Psが次第に下降し、その結果一定の吸入圧Psに保たれることになる。特に、容量可変斜板式コンプレッサが高速回転しているときほど、クランク室圧Pcを高くし、ピストンの往復動ストロークを短くする必要があるが、この場合にベローズの周囲を流れる冷媒の動圧によりベローズが変位し、吸入圧が必要以上に低下するという事態はなくなり、容量制御性が向上することになる。
【0014】
【実施例】
以下、本考案の一実施例を図面に基づいて説明する。
第1図は、本考案の実施例に係る容量可変斜板式コンプレッサを示す断面図であり、第2図に示すものと共通する部材には同一の符号を付し、その説明は省略する。
本実施例の容量可変斜板式コンプレッサの、帰還冷媒の吸入圧Psを感知するコントロールバルブCvは、ケーシング17の一部であるシリンダヘッド30に開設されたバルブ室V内に設けられている。このコントロールバルブCvは、バルブ室V内に螺着されたバルブケースhを有し、バルブケースh内に形成されたベローズ室64の下部には、第1連通路R1が開設され、この第1連通路R1を介して吸入側圧力室32、即ち吸入ポート29と連通されている。ベローズ室64内には、吸入側圧力室32の内部圧力に応じて伸縮するベローズ37と、このベローズ37内に設けられたばね38とが設けられている。
【0015】
バルブケースの上部には、圧縮された冷媒が導入される吐出圧力室35と連通された第2連通路R2の一端が連通され、第2連通路R2の他端側は、前記クランク室12内と連通されている。この第2連通路R2の流路途上には、弁口47が設けられ、該弁口47は、前記ベローズ37の伸縮により作動棒46を介して作動される制御弁39により弁口47の開度が制御されるようになっている。
なお、作動棒46は、バルブケースh内の中心孔71により軸方向摺動可能に保持されている。
【0016】
本実施例では、帰還冷媒の圧力Psを前記クランク室12内に導く第3連通路R3を形成するに当り、図2に示す容量可変式コンプレッサのようにシリンダ通路61等を用いて形成せず、前記ベローズ37の周辺を冷媒が流通しないような位置に設けている。この第3連通路R3は、冷媒がベローズ37の周辺を流れず帰還冷媒の圧力Psを前記クランク室12内に導くことができる通路であれば、どのような位置に形成してもよく、従来の容量可変式コンプレッサを流用する場合には、クランク室12内とベローズ室64とを連通するシリンダ通路61等を適当な手段により閉塞し、冷媒がベローズ室64に流入しないようにする一方、帰還冷媒が導入される吸入ポート29とクランク室12内とを適当なサブ連通路Rsにより連通してもよい。容量可変式コンプレッサの構成を簡素化する上から好ましものとしては、クランク室12を貫通して伸延された取付けボルト72とボルト挿通孔73のねじ部分を利用し、このボルト挿通孔73と前記吸入ポート29とを連通するようにサブ連通路Rsを開設することが望ましい。
ここに、取付けボルト72は、複数本設けられ、胴体ケーシング17、シリンダ25、シリンダヘット30等を相互に連結するためのものであり、これらシリンダ25等を貫通して設けられたボルト挿通孔73内にある程度の隙間をもって挿通されている。この隙間が帰還冷媒の圧力Psをクランク室12内に導く第3連通路R3の一部となる。
【0017】
次に、実施例の作用を説明する。
冷房サイクルにおける熱負荷が小さい場合には、吸入圧Psの低い帰環冷媒が吸入ポート29よりベローズ室64に入り、ベローズ37はばね38の力により上方に伸び、制御弁39が弁口47を開く。これにより、ピストン23によって圧縮された高い吐出圧Pdの冷媒の一部が、吐出ポート33、弁口47等を経て、第2連通路R2よりクランク室12に導入され、クランク室圧Pcを高める。この結果、吸入工程にあるピストン23は、充分に大きなストロークとなるように後退できず、圧縮ストロークが小さくなり、冷媒の圧縮量は少なくなり、低い熱負荷に応じた適正な冷媒量となる。
この場合、図面からも明らかなように、ベローズ室64の容積は、小さく(実際上、1cm3程度)、これに対して吸入ポート29の容積は、極めて大きい(実際上、100cm3程度)ので、従来のようにクランク室12からベローズ室64を通って吸入ポート29へと冷媒が流れる場合と、直接吸入ポート29に流入する場合とでは、冷媒がベローズ37に与える影響は、明らかに後者の方が少ない。また、クランク室12に導入された高い吐出圧Pdの冷媒が、ボルト挿通孔73やサブ連通路Rsを通って吸入ポート29に漏れるが、この高い吐出圧Pdの冷媒は、狭小なサブ連通路Rsを通って大きな吸入ポート29に流入することになり、このサブ連通路Rsから流出するときに、ある程度減圧される点、あるいは冷房サイクル中を流れ吸入ポート29に帰環してくる冷媒量に比しサブ連通路Rsから流出する冷媒量は極めて少ない点からしても、この吸入ポート29に漏れ出た高い吐出圧Pdの冷媒がベローズ室64に入っても制御弁39の作動に影響することはない。
【0018】
冷房サイクルにおける熱負荷が大きい場合には、吸入圧Psの高い帰環冷媒が吸入ポート29よりベローズ室64に入り、ベローズ37はばね38の力に抗して縮少し、制御弁39の開度を閉じる。これにより、ピストン23によって圧縮された高い吐出圧Pdの冷媒は、クランク室12に導入されることはない。
この場合、高圧の吸入圧Psはサブ連通路Rsを通ってクランク室12内に導入されることになるので、ベローズ37の周囲には冷媒は流れず、ベローズ37は正確に冷媒の圧力によって作動することになり、クランク室12内の圧力Pcとの差圧がなくなる。これにより、モーメントの作用により駆動傾斜板13等が駆動軸1に対して傾斜し、ピストン23の往復動ストロークが長くなる。この状態で圧縮すれば、吐出冷媒量は増大し、高い熱負荷に応じた適正な冷媒流量となり、コンプレッサ3の吸入圧力Psが次第に下降し、その結果一定の吸入圧力Psに保たれることになる。特に、容量可変斜板式コンプレッサが高速回転しているときほど、クランク室内のクランク室圧Pcは高くし、ピストンの往復動ストロークを短くする必要があるが、この場合にベローズ37の周囲を流れる冷媒の動圧によりベローズ37が変位し、吸入圧が低下するという事態はなくなり、容量制御性が向上することになる。
【0019】
本考案は、上述した実施例のみに限定されるものではなく、実用新案登録請求の範囲の範囲内において種々改変することができる。例えば、第3連通路は、流れる冷媒がベローズの周辺を流通せず、帰還冷媒の圧力をクランク室内に導くようにしたものであれば、どのような通路であってもよく、シリンダ通路を閉塞したり、ボルト挿通孔と前記吸入ポートとを連通するサブ連通路のみに限定されるものではない。
【0020】
【考案の効果】
以上のように、本考案によれば、冷房サイクルにおける熱負荷が大きい場合のように容量可変式コンプレッサを作動し、多量の冷媒を流通させなければならないときに、ベローズの周囲に冷媒を流さないようにしているので、ベローズは正確に冷媒の圧力によって作動し、熱負荷に応じた適正な冷媒流量となる。特に、容量可変斜板式コンプレッサが高速回転しているときでも、適正な冷媒流量となり、容量制御性が向上することになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、本考案の一実施例を示す断面図である。
【図2】は、従来の容量可変斜板式コンプレッサである。
【符号の説明】
3…容量可変斜板式コンプレッサ、 11…駆動軸、
12…クランク室、 13…駆動斜板、
17…ケーシング、 23…ピストン、
29…吸入ポート、 33…吐出ポート、
37…ベローズ、 39…制御弁、
47…弁口、 61…シリンダ通路、
64…ベローズ室、 72…取付けボルト、
73…ボルト挿通孔、 Cv…コントロールバルブ、
Ps…帰還冷媒の圧力、 Pc…クランク室内の圧力、
R1…第1連通路、 R2…第2連通路、
R3…第3連通路、 Rs…サブ連通路。
訂正の要旨 訂正の要旨
実用新案登録第2567549号の明細書を、本件に係る訂正請求書に添付された明細書のとおり、すなわち、次の訂正事項a乃至訂正事項cのとおりに訂正する。
(1)訂正事項a
実用新案登録請求の範囲を下記のように訂正する。

「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 ケーシング(17)内のバルブ室(V)に取付けられたバルブケース(h)と、該バルブケース(h)内に形成したベローズ室(64)と、このベローズ室(64)と吸入ポート(29)とを連通する第1連通路(Rl)と、第1連通路(Rl)を介して導入された帰還冷媒の圧力(Ps)により伸縮するベローズ(37)と、ベローズ(37)の伸縮により弁口(47)の開度を制御する制御弁(39)と、前記弁口(47)を介してピストン(23)により圧縮された冷媒が導入される吐出ポート(33)とクランク室(12)内とを連通する第2連通路(R2)と、帰還冷媒の圧力(Ps)を前記クランク室(12)内に導く第3連通路(R3)とを有するコントロールバルブ(Cv)を備え、該コントロールバルブ(Cv)のベローズ(37)により帰還冷媒の圧力(Ps)を感知し、この圧力(Ps)に応じてクランク室(12)内の圧力(Pc)を変化させてピストン(23)のストロークを調整し、吐出される冷媒量を調節するようにしてなる容量可変斜板式コンプレッサにおいて、当該第3連通路(R3)を流れる冷媒が前記ベローズ(37)の周辺を流通しないように、前記クランク室(12)を貫通して伸延された取付けボルト(72)が螺合されたボルト挿通孔(73)のねじ部分と前記吸入ポート(29)とをサブ通路(Rs)により連通することにより前記第3連通路(R3)の一部を構成するようにしたことを特徴とする容量可変式コンプレッサ。」
(2)訂正事項b
実用新案登録明細書の段落【0012】を下記のように訂正する。

「 【0012】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、本考案は、ケーシング内のバルブ室に取付けられたバルブケースと、該バルブケース内に形成したベローズ室と、このベローズ室と吸入ポートとを連通する第1連通路と、第1連通路を介して導入された帰還冷媒の圧力により伸縮するベローズと、ベローズの伸縮により弁口の開度を制御する制御弁と、前記弁口を介してピストンにより圧縮された冷媒が導入される吐出ポートとクランク室内とを連通する第2連通路と、帰還冷媒の圧力を前記クランク室内に導く第3連通路とを有するコントロールバルブを備え、該コントロールバルブのベローズにより帰還冷媒の圧力を感知し、この圧力に応じてクランク室内の圧力を変化させてピストンのストロークを調整し、吐出される冷媒量を調節するようにしてなる容量可変斜板式コンプレッサにおいて、当該第3連通路を流れる冷媒が前記ベローズの周辺を流通しないように、前記クランク室を貫通して伸延された取付けボルトが螺合されたボルト挿通孔のねじ部分と前記吸入ポートとをサブ通路により連通することにより前記第3連通路の一部を構成するようにしたことを特徴とする容量可変式コンプレッサである。」
(3)訂正事項c
実用新案登録明細書の段落【0016】を下記のように訂正する。

「 【0016】
本実施例では、帰還冷媒の圧力Psを前記クランク室12内に導く第3連通路R3を形成するに当り、図2に示す容量可変式コンプレッサのようにシリンダ通路61等を用いて形成せず、前記ベローズ37の周辺を冷媒が流通しないような位置に設けている。この第3連通路R3は、冷媒がベローズ37の周辺を流れず帰還冷媒の圧力Psを前記クランク室12内に導くことができる通路であれば、どのような位置に形成してもよく、従来の容量可変式コンプレッサを流用する場合には、クランク室12内とベローズ室64とを連通するシリンダ通路61等を適当な手段により閉塞し、冷媒がベローズ室64に流入しないようにする一方、帰還冷媒が導入される吸入ポート29とクランク室12内とを適当なサブ連通路Rsにより連通してもよい。容量可変式コンプレッサの構成を簡素化する上から好ましものとしては、クランク室12を貫通して伸延された取付けボルト72とボルト挿通孔73のねじ部分を利用し、このボルト挿通孔73と前記吸入ポート29とを連通するようにサプ連通路Rsを開設することが望ましい。
ここに、取付けボルト72は、複数本設けられ、胴体ケーシング17、シリンダ25、シリンダヘット30等を相互に連結するためのものであり、これらシリンダ25等を貫通して設けられたボルト挿通孔73内にある程度の隙間をもって挿通されている。この隙間が帰還冷媒の圧力Psをクランク室12内に導く第3連通路R3一部となる。」
異議決定日 1999-08-24 
出願番号 実願平3-57013 
審決分類 U 1 651・ 121- YA (F04B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 尾崎 和寛  
特許庁審判長 小池 正利
特許庁審判官 清田 榮章
山口 直
登録日 1997-12-26 
登録番号 実用登録第2567549号(U2567549) 
権利者 カルソニック株式会社
東京都中野区南台5丁目24番15号
考案の名称 容量可変斜板式コンプレッサ  
代理人 奈良 泰男  
代理人 齋藤 悦子  
代理人 八田 幹雄  
代理人 野上 敦  
代理人 奈良 泰男  
代理人 八田 幹雄  
代理人 齋藤 悦子  
代理人 野上 敦  
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