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審決分類 |
審判 全部申し立て B65D |
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管理番号 | 1018559 |
異議申立番号 | 異議1998-71588 |
総通号数 | 13 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2001-01-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1998-03-30 |
確定日 | 1999-11-08 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 実用新案登録第2549808号「包装袋」の実用新案に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 実用新案登録第2549808号の実用新案登録を維持する。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本件実用新案登録第2549808号は、出願日が昭和62年3月19日である実願昭62-40773号の分割出願である実願平4-8016号の更に分割出願の実願平7-365号出願であって、平成9年6月6日に設定登録され、平成10年3月30日に実用新案登録異議申立人、東洋製罐株式会社より実用新案登録異議の申立てがなされ、当審の平成10年6月22日付取消理由通知に対し平成10年9月7日付訂正請求書を、また同じく当審の平成11年3月3日付訂正拒絶理由通知に対し平成11年5月10日付手続補正書を提出した。 2.補正について 平成11年5月10日付手続補正書による平成10年9月7日付訂正請求書及び該訂正請求書に添付した訂正明細書の補正は、実用新案登録請求の範囲を減縮するとともに、該減縮に伴って不明確となる明細書の考案の詳細な説明の欄の記載を明りょうにするものであって、その要旨を変更するものではなく、当該補正は認められる。 3.訂正について 1)訂正の要旨 (1)訂正事項a 本件実用新案登録明細書(以下、「本件明細書」という。)における実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る記載、 「1.矩形状をなすプラスチックラミネートフィルムを折曲げ成形し、接合端部をヒ-トシ-ルして筒状部を形成し、筒状部の開口端をヒ-トシ-ルした包装袋において、上記プラスチックラミネ-トフィルムを、貫通孔を有する粗面部を設けた延伸プラスチックフィルムに押出しラミネ-ト手段によりプラスチックフィルムをラミネ-トすることで構成し、粗面部の貫通孔にプラスチック材料を充填して開封用粗面部を形成し、プラスチックラミネ-トフィルムを、延伸プラスチックフィルムが外側で、開封用粗面部が包装袋の折曲げ部に位置するように折曲げ成形したことを特徴とする包装袋。」を、 「[請求項1]矩形状をなすプラスチックラミネートフィルムを折曲げ成形し、接合端部をヒ-トシ-ルして筒状部を形成し、筒状部の開口端をヒ-トシ-ルしたピロー形包装袋において、上記プラスチックラミネ-トフィルムを、貫通孔を有する粗面部を設けた延伸プラスチックフィルムに押出しラミネ-ト手段により未延伸プラスチックフィルムをラミネ-トすることで構成し、粗面部の貫通孔にプラスチック材料を充填して開封用粗面部を形成し、プラスチックラミネ-トフィルムを、延伸プラスチックフィルムが外側で、開封用粗面部が包装袋の折曲げ部に位置するように折曲げ成形し、 前記折曲げ部は、包装袋の側縁に形成した折曲げ部と、包装袋の背面に突出して形成した前記接合端部からなる折曲げ部とからなり、前記開封用粗面部を、開封方向に対して山折りされる包装袋の側縁と、前記包装袋の背面に突出して形成した折曲げ部の、開封方向に対して山折りされる部分とに形成したことを特徴とする包装袋。」と訂正する。 (2)訂正事項b 本件明細書の段落番号0006の第3行の「透湿度や酸素透過度が低下」を「透湿度や酸素透過度が増大」に、段落番号0007の第2行の「透湿度や酸素透過度の低下」を「透湿度や酸素透過度の増大」に、段落番号0016の第5乃至6行の「それほど低下せず」を「それほど増大せず」にそれぞれ訂正する。 (3)訂正事項c 本件明細書の段落番号0008の「本考案の包装袋は、矩形状をなす・・・・・・・折曲げ成形して構成される。」記載を、 「本考案の包装袋は、矩形状をなすプラスチックラミネートフィルムを折曲げ成形し、接合端部をヒートシールして筒状部を形成し、筒状部の開□端をヒートシールしたピロー形包装袋において、上記プラスチックラミネートフィルムを、貫通孔を有する粗面部を設けた延伸プラスチックフィルムに押出しラミネート手段により未延伸プラスチックフィルムをラミネートすることで構成し、粗面部の貫通孔にプラスチック材料を充境して開封用粗面部を形成し、プラスチックラミネートフィルムを、延伸プラスチックフィルムが外側で、開封用粗面部が包装袋の折曲げ部に位置するように折曲げ成形し、 前記折曲げ部は、包装袋の側縁に形成した折曲げ部と、包装袋の背面に突出して形成した前記接合端部からなる折曲げ部とからなり、前記開封用粗面部を、開封方向に対して山折りされる包装袋の側縁と、前記包装袋の背面に突出して形成した折曲げ部の、開封方向に対して山折りされる部分とに形成して構成される。」と訂正する。 (4)訂正事項d 本件明細書の段落番号0011の「本考案の包装袋では、開封用粗面部を・・・・・・・の開封を行なうことができる。」の記載を、 「本考案のピロー形の包装袋では、開封用粗面部を延伸プラスチックフィルムに設けた粗面部の貫通孔をプラスチック材料で充填することで形成するので、開封用粗面部の透湿度や酸素透過度の増大を防ぐことができ、開封用粗面部を包装袋の側縁と背面の折曲げ部に位置させ、前記開封用粗面部を開封方向に対して山折りされる部分に形成したので、包装袋の折曲げ部からの開封をスムースに行うことができる。」と訂正する。 (5)訂正事項e 本件明細書の段落番号0014、第1行の「折曲げ部1a」を「側緑の折曲げ部1a」に訂正する。 (6)訂正事項f 本件明細書の段落番号0019、第3行の「折曲げ部の内の山折りされる折曲げ部14」を「折曲げ部14の内の山折りされる部分」と訂正し、同第8行の「折曲げ部の山折りされる折曲げ部14」を「折曲げ部14の山折りされる部分」と訂正する。 (7)訂正事項g 本件明細書の段落番号0017、第12乃至14行の「なお、ピロー形包装袋1の左側および右側のいずれかの方向からの開封を可能にするためには、両側に位置する折曲げ部1a,1bおよび背面中央部に位置する接合端部の折曲げ部全部に開封用粗面部を形成する。」の記載を削除する。 (8)訂正事項h 本件明細書の段落番号0019、第11行の「山折りした折曲げ部1b」を「開封方向に対して谷折りした折曲げ部1b」に訂正する。 (9)訂正事項i 本件明細書の段落番号0021の「以上述べたように本考案によれば、・・・・・・開封を容易に行なうことができる。」の記載を、 「以上述べたように本考案によれば、プラスチックラミネートフィルムに設けた粗面部に押出しラミネート手段によりラミネートされるプラスチックフィルムのプラスチックフィルム材料を充填することで開封用粗面部を形成するので、開封用粗面部の透湿度や酸素透過度の増大を防ぐことができ、包装袋の側縁と背面の接合端部に形成した開封用粗面部が包装袋の折曲げ部の開封方向に対して山折りされる部分に位置することで、開封用粗面部を開封導入部として包装袋の折曲げ部からの開封を容易に行うことができる。」と訂正する。 2)訂正の目的の適否、新規事項の追加及び拡張・変更の存否 (1)訂正事項a 本件明細書の実用新案登録請求の範囲、請求項1に記載された「ヒートシールした包装袋」を「ヒートシールしたピロー形包装袋」と限定し、「プラスチックフィルム」を「未延伸プラスチックフィルム」と限定し、「折曲げ部」に関して「前記折曲げ部は、包装袋の側縁に形成した折曲げ部と、包装袋の背面に突出して形成した前記接合端部からなる折曲げ部とからなり、前記開封用粗面部を、開封方向に対して山折りされる包装袋の側縁と、前記包装袋の背面に突出して形成した折曲げ部の、開封方向に対して山折りされる部分とに形成した」と限定追加する訂正は、何れも実用新案登録請求の範囲の減縮と認められる。 この訂正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内であって、新規事項を含むものではなく、また、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張しまたは変更するものではない。 (2)訂正事項b乃至i 訂正事項b乃至iは、明りょうでない記載の釈明を目的として、上記実用新案登録請求の範囲の訂正に応じて、考案の詳細な説明の欄の記載をこれと整合するように訂正したものと認められる。 3)独立特許要件の適否 (1)訂正拒絶理由通知について 訂正拒絶理由通知において引用された刊行物1、特開昭62-52065号公報には、実質的に 「矩形状をなすプラスチック積層フィルムを折曲げ成形し、接合端部を融着シ-ルして筒状部を形成し、筒状部の開口端を融着シ-ルしたピロ-形包装袋において、上記プラスチック積層フィルムを、貫通傷痕を有する基材層に接着層をラミネ-トすることで構成し、貫通傷痕を接着層でふさぎ、プラスチック積層フィルムを、基材層が外側で、貫通傷痕部が包装袋の溶融シ-ル部に位置するように設け、 折曲げ部を、包装袋の両側縁に形成し、包装袋の背面には前記接合端部からなる重ね合わせ部とした溶融シ-ル部を設ける」点が記載されている。 また、刊行物2の米国特許第3608815号明細書には、表現上の差異は別として実質的に、「折り線14及び15は包装袋の表側を画定し、折り線14には各頂部シ-ル領域12に隣接して上記折り線と垂直に延在する開封補助領域16が設けてある。」(第1欄第73乃至75行目)、「開封補助用の穿孔パタ-ンを2種以上の材料に設けるのが望ましい包装材料又は条件では、穿孔パタ-ンの位置を材料の個々の穿孔が並ぶのを防止するように接近させることにより、複合材料の必要とされる製品保持と大気遮断を確保する。」(第2欄第53乃至58行目)、「複数の小さな穿孔から構成される領域のパタ-ンは、包装袋の折り線14又は15の任意の位置に配置することができ、またその形状も任意所望のものとすることができる。」(第3欄第4乃至7行目)と記載されている。 すなわち、刊行物2には「開封補助領域を、包装袋の折り線に位置するように折り曲げ形成する」点が記載されているといえる。 しかし、上記刊行物1乃至2には、本件請求項1に係る考案の構成要件である「前記折曲げ部は、包装袋の側縁に形成した折曲げ部と、包装袋の背面に突出して形成した前記接合端部からなる折曲げ部とからなり、前記開封用粗面部を、開封方向に対して山折りされる包装袋の側縁と、前記包装袋の背面に突出して形成した折曲げ部の、開封方向に対して山折りされる部分とに形成した」点の構成に関する記載が認められず、またこれを示唆する記載も認められないので、本件請求項1に係る考案を上記刊行物1乃至2の記載に基づいて当業者が、きわめて容易に考案をすることができたとすることはできない。 (2)取消理由通知について 取消理由通知において引用された刊行物3、実願昭56-91833号(実開昭57-202970号)のマイクロフイルムには、「矩形状をなす包装シ-ト材を折曲げ成形し、長手方向シ-ル部をシ-ルして円筒状部を形成し、円筒状部の上端及び下端をシ-ルした筒状袋体において、上記包装シ-ト材を、ミシン目を有する部分を設けた延伸合成樹脂フイルムにラミネ-ト手段によりポリエチレンフイルムをラミネ-トすることで構成し、包装シ-ト材を、延伸合成樹脂フイルムが外側で開封を容易にするためのミシン目を有する部分が筒状袋体の長手方向と直角になるように折曲げ成形した筒状袋体」が記載されている。 また、同じく引用された刊行物4、実願昭54-86902号(実開昭56-3842号)のマイクロフイルムには、「・・・剛性等の所望の性能を付与するために選定された単層あるいは複層の・・・外層膜1の内面にポリエチレン・・・・・等の熱接着性樹脂2を・・・・成層した内層が熱接着性樹脂2である包材シート3を折曲形成,重ね合せ形成した包装本体4の開口予定部5に適宜の形状の開口用ミシン目6を一端から他端へ連通して片面もしくは両面に穿設し,該ミシン目6を加熱加圧により,熱接着性樹脂2で圧接融着して該ミシン目を内面より閉止してなる開口機構付包装袋」(第2頁第15行目乃至第3頁第11行目)と記載されており、また、「ミシン目6を活用して容易且つ美麗に開口することができ,該ミシン目6は圧接融着された熱接着性樹脂2で圧接融着され閉止されているから,内容物の保護性能も十分保持でき,内容物の漏出も完全に防止することができ,一般のミシン目のない包装袋と遜色なく使用できる」(第5頁第8乃至14行目)と記載されている。 そして、更に、訂正拒絶理由通知において引用された刊行物2も引用されているが、これらの刊行物には、上記本件請求項1に係る考案の構成要件は、記載されておらず、またこれを示唆する記載も認められないので、これらの刊行物の記載に基づいて当業者が、きわめて容易に考案をすることができたとすることはできない。 4)むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、適法なものであり、当該訂正を認める。 4.実用新案登録異議の申立てについての判断 1)本件考案 本件考案は、上記訂正請求により訂正された実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。 2)実用新案登録異議申立ての理由の概要 実用新案登録異議申立ての理由の概要は、実願昭56-91833号(実開昭57-202970号)のマイクロフイルム(甲第1号証、刊行物3)、実願昭57-181996号(実開昭59-87447号)のマイクロフイルム(甲第2号証、刊行物5)、特開昭62-52065号公報(甲第3号証、刊行物1)、実願昭54-86902号(実開昭56-3842号)のマイクロフイルム(甲第4号証、刊行物4)等の証拠を提出して、本件実用新案登録の請求項1に係る考案は、証拠に記載された考案に基いて当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件請求項1に係る考案の実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたもので、取り消されるべきものであるというにある。 3)判断 上記刊行物5にも、上記構成要件について記載は認められず、また、これを示唆する記載も認められないので、上記訂正後の請求項1に係る考案は、上記3.3)(1)又は(2)で述べたと同様の理由により、上記刊行物1乃至5の記載に基づいて当業者が、きわめて容易に考案をすることができたとすることはできない。 5.むすび 以上のとおりであるから、実用新案登録異議申立ての理由及び証拠方法によっては、実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案についての本件実用新案登録を取り消すことはできない。 また、他に本件実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【考案の名称】 包装袋 (57)【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】 矩形状をなすプラスチックラミネートフィルムを折曲げ成形し、接合端部をヒートシールして筒状部を形成し、筒状部の開口端をヒートシールしたピロー形包装袋において、上記プラスチックラミネートフィルムを、貫通孔を有する粗面部を設けた延伸プラスチックフィルムに押出しラミネート手段により未延伸プラスチックフィルムをラミネートすることで構成し、粗面部の貫通孔にプラスチック材料を充填して開封用粗面部を形成し、プラスチックラミネートフィルムを、延伸プラスチックフィルムが外側で、開封用粗面部が包装袋の折曲げ部に位置するように折曲げ成形し、 前記折曲げ部は、包装袋の側縁に形成した折曲げ部と、包装袋の背面に突出して形成した前記接合端部からなる折曲げ部とからなり、前記開封用粗面部を、開封方向に対して山折りされる包装袋の側縁と、前記包装袋の背面に突出して形成した折曲げ部の、開封方向に対して山折りされる部分とに形成したことを特徴とする包装袋。 【考案の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本考案は、包装袋の折曲げ部からの開封を容易に行い得るようにした包装袋に関する。 【0002】 【従来の技術】 一般に用いられている、セロファン、紙等にポリエチレンフィルムをラミネートした複合フィルムを素材とした包装袋は、ヒートシール面の開封をカッタを用いることなく手で容易にできるので、その用途も広範囲にわたっているが、この種の包装袋は、破断強度が低く、特に、防湿性が不足するため、封入される内容物に制限がある。 そこで、包装袋素材としてプラスチックラミネートフィルムを用いて、破断強度を上げるとともに、防湿性を改良した包装袋が開発された。 【0003】 プラスチックラミネートフィルムを包装袋素材とした包装袋においては、包装袋素材であるプラスチックラミネートフィルムの具有する引裂き強度の強さにより、成形した包装袋を手で開封することが難しく、包装袋の開封に、カッタ等の切断治具を必要とする。 カッタ等の切断治具を予め準備することは面倒であるから、カッタ等の切断治具を用いることなく、手で容易に開封できる包装袋がユーザーから要望されており、包装袋のヒートシール部にV形ノッチやI形ノッチを設けることで、このV形ノッチやI形ノッチを開封導入部として、ヒートシール部からの開封を容易に行なう包装袋が作られた。 【0004】 アメリカ特許第3608815号に開示されている包装袋のように、包装袋の折曲げ部にピンを貫通することで形成した開封補助区域を設け、この開封補助区域を切断導入部として、カッタ等の治具を必要とせずに、手で容易に開封できるようにしたものも知られている。 【0005】 【考案が解決しようとする課題】 プラスチックラミネートフィルムを矩形状に裁断した素材を、2つ折りして3方端部をヒートシールした包装袋は、ヒートシール部にV形ノッチ等を設けることで、ヒートシール部からの開封を容易に行うことはできる。 この形式の包装袋は、包装袋を包装材料加工メーカーが製造してユーザーに納入する場合には、包装材料加工メーカーにおいて、包装袋を成形する段階で包装袋のヒートシール部へのノッチ加工を行なうことができるのでヒートシール部にV形ノッチ等を設けることに問題はないが、包装材料加工メーカーが、ロール状の包装材料素材をユーザーに納入し、包装袋の成形をユーザーの内容物充填機で内容物を充填しながら行なう場合には、包装袋のヒートシール部にノッチ加工を施すことが難しい。 【0006】 折曲げ部にピンを貫通することで開封補助区域を設けた包装袋は、カッタ等の治具を必要とせずに、手で容易に開封することはできるものの、開封補充区域に設けた貫通孔により、包装袋としての透湿度や酸素透過度が増大してしまうため、たとえば、コーヒー粉末やせんべいのような湿気をきらう製品を封入した場合には、その製品が湿気を吸収してしけた状態となり、湿気をきらう製品を封入するための包装袋に使用することができず、封入する製品が制限されてしまう。 この難点を解消するために、2枚のプラスチックフィルムをプラスチックフィルムに設けた開封捕助区域のピン貫通孔の位置をずらしてラミネートしたプラスチックラミネートフィルムで成形した包装袋も開発されているが、この形式の包装袋ではラミネートされるプラスチックラミネートフィルムのピン貫通孔の位置決めが難しく、しかも、開封補助区域を包装袋の折曲げ部に設けても、この開封補助区域を開封導入部として開封を行なうことが難しい。 【0007】 本考案は、上記した点に鑑みてなされたもので、延伸プラスチックフィルムに設けた粗面部にポリエチレン材料を充填することで透湿度や酸素透過度の増大を防いだ開封用粗面部を形成し、この開封用粗面部を包装袋の折曲げ部に位置することで、開封用粗面部を開封導入部として包装袋の折曲げ部からの開封を行うことができる包装袋を提供することを目的とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】 本考案の包装袋は、矩形状をなすプラスチックラミネートフィルムを折曲げ成形し、接合端部をヒートシールして筒状部を形成し、筒状部の開口端をヒートシールしたピロー形包装袋において、上記プラスチックラミネートフィルムを、貫通孔を有する粗面部を設けた延伸プラスチックフィルムに押出しラミネート手段により未延伸プラスチックフィルムをラミネートすることで構成し、粗面部の貫通孔にプラスチック材料を充填して開封用粗面部を形成し、プラスチックラミネートフィルムを、延伸プラスチックフィルムが外側で、開封用粗面部が包装袋の折曲げ部に位置するように折曲げ成形し、 前記折曲げ部は、包装袋の側縁に形成した折曲げ部と、包装袋の背面に突出して形成した前記接合端部からなる折曲げ部とからなり、前記開封用粗面部を、開封方向に対して山折りされる包装袋の側縁と、前記包装袋の背面に突出して形成した折曲げ部の、開封方向に対して山折りされる部分とに形成して構成される。 【0009】 【作用】 本考案のピロー形の包装袋では、開封用粗面部を延伸プラスチックフィルムに設けた粗面部の貫通孔をプラスチック材料で充填することで形成するので、開封用粗面部の透湿度や酸素透過度の増大を防ぐことができ、開封用粗面部を包装袋の側縁と背面の折曲げ部に位置させ、前記開封用粗面部を開封方向に対して山折りされる部分に形成したので、包装袋の折曲げ部からの開封をスムースに行うことができる。 【0010】 【実施例】 以下本考案の一実施例を図面につき説明する。 図1は、本考案による包装袋をピロー形包装袋1に適用した例を示し、このピロー形包装袋1は、矩形状をなすプラスチックラミネートフィルム2を、接合端部3,3が背面中央部に位置するように折曲げ成形し、接合端部3同士をヒートシールして筒状部を形成し、筒状部の開口端をヒートシールすることで形成される。 【0011】 上記プラスチックラミネートフィルム2は、図2に示すように、厚さ20ミクロンの2軸延伸ポリプロピレンフィルム4に押出しラミネート手段により40ミクロンのポリエチレンフィルム5によりラミネートすることで作られている。 すなわち、プラスチックラミネートフィルム2は、2軸延伸ポリプロピレンフィルム4と未延伸ポリエチレンフィルム5により形成されている。 プラスチックラミネートフィルム2で成形したピロー形包装袋1を直線的に開封しようとする場合には、2軸延伸ポリプロピレンフィルムでなく、1軸強延伸ポリプロピレンを用いることが望ましい。 【0012】 上記ピロー形包装袋1の側縁の折曲げ部1aには、図1に示すように、開封用粗面部6が形成されている。この開封用粗面部6は、所定寸法のプラスチックラミネートフィルム2を折り曲げ成形してピロー形包装袋1を形成する際の包装袋1の折曲げ部1aに対応する部位に設けられている。この開封用粗面部6は、砥粒面を2軸延伸ポリプロピレンフィルム4の面に圧接することで形成される複数の凹部7および貫通孔8からなる粗面部9と、この粗面部9の凹部7および貫通孔8に充填されるプラスチック材料10から構成される。このプラスチック材料10は、押出しラミネート手段を用いて2軸延伸ポリプロピレンフィルム4にポリエチレンフィルム5を押出しラミネートしてプラスチックラミネートフィルム2を形成する際に、粗面部9の凹部7および貫通孔8に充填される。このプラスチック材料10には、2軸延伸ポリプロピレンフィルム4の面に塗布されるアンカー剤も含まれる。 【0013】 2軸延伸ポリプロピレンフィルム4に形成される粗面部9は、図4に示す開封用粗面形成装置11により成形される。 上記開封用粗面形成装置11は、金属ロール12とこの金属ロール12に弾接する粗面形成ロール12aと、この粗面形成ロール12aに巻回された粒度100番のサンドペーパー13とから構成され、2軸延伸ポリプロピレンフィルム4を金属ロール12と粗面形成ロール12aとの間を通すことで、2軸延伸ポリプロピレンフィルム4に粗面形成ロール12aに巻回されたサンドペーパー13を圧接し、これにより、2軸延伸ポリプロピレンフィルム4の面に凹部7および貫通孔8からなる粗面部9を形成する。 【0014】 プラスチックラミネートフィルム2の開封用粗面部6は、2軸延伸ポリプロピレンフィルム4に形成された粗面部9の凹部7および貫通孔8をポリエチレン材料10で充填することにより形成されるので、折曲げ部1aに開封用粗面部6を設けているのもかかわらず、包装袋は、外観的に平滑面を呈し、包装袋の透湿度や酸素透過度も、開封用粗面部を設けていない同一構成の包装袋と比較してそれほど増大せず、したがって、包装袋に封入される内容物が従来の包装袋のように湿気等による制限を受けることがない。 【0015】 上記包装袋1を構成するプラスチックラミネートフィルム2の表面側に位置する2軸延伸ポリプロピレンフィルム4の背面中央部に位置する接合端部3の折曲げ部14に対応した部位にも、図1に示すように、上記開封用粗面部6と同一構成の開封用粗面部15が形成されている。この開封用粗面部15は、開封用粗面部6と協働して包装袋1の直線的な開封を可能にする。 すなわち、包装袋1を図1で矢印方向に開封する場合、包装袋1の開封用粗面部6は、開封開始端側に位置する山折りした折曲げ部1aに位置し、開封用粗面部15は、接合端部3の折曲げ部の内の山折りされる折曲げ部14に位置している。矢印方向の開封に谷折りした折曲げ部1bは、開封途中において容易に開封できるから、矢印方向の開封に谷折りした折曲げ部に開封用粗面部を設ける必要はない。 【0016】 ピロー形包装袋1を構成するプラスチックラミネートフィルム2の2軸延伸ポリプロピレンフィルム4の透湿度の測定結果は下表に示す。 【表1】 この透湿度の測定結果によれば、ピロー形包装袋1の折曲げ部に粗面部9を形成すると、透湿度は大きくなるが、粗面部9の貫通孔をラミネート接着剤であるポリエチレン材料で充填することで、粗面部9のない包装袋と比較しても透湿度にそれほど差がなく、湿気をきらう製品に対しても使用することができる。 また、粗面部9にプラスチック材料を充填したラミネートフィルムは、粗面部のないラミネートフィルムに比較して、引張強度、伸度は低下するものの、この素材で作ったピロー形包装袋は、耐圧試験、落下テストでは両者の間に優位差は認められなかった。 【0017】 しかして、ピロー形包装袋1を図1で矢印方向に開封する場合には、開封用粗面部6が、開封開始端側に位置する山折りした折曲げ部1aに位置し、開封用粗面部15が、接合端部3の折曲げ部14の内の山折りされる部分に位置しているので、開封開始端側からの矢印方向の開封に際して、延伸プラスチックフィルムに設けた開封用粗面部を開封導入部として破れにくい未延伸プラスチックフィルムを破くことで、折曲げ部1aを強い力を必要とせずに手で容易に行うことができ、折曲げ部1aから延びる切断線が背面中央部に至り、開封しにくい突き出た接合端部3に達しても、接合端部3の折曲げ部14の山折りされる部分に設けた同様な開封用粗面部15により接合端部3も容易に開封され、接合端部3を切断した切断線は、この接合端部3から開封開始端側に位置する山折りした折曲げ部1aと反対側に位置する開封方向に対して谷折りした折曲げ部1bまで直線的に延びるから、ピロー形包装袋1を直線的に開封することができる。 【0018】 なお、上記実施例では、プラスチックラミネートフィルムの開封用粗面部6が、2軸延伸ポリプロピレン4に設けた粗面部9の複数の凹部または貫通孔8,9に押出しラミネート処理する際のポリエチレン材料を充填することで形成されるが、ドライラミネート処理のように、接着剤を用いてプラスチックラミネートフィルムを形成する場合には、粗面部9の複数の凹部または貫通孔8,9に接着剤を構成するプラスチック材料を充填することで開封用粗面部を形成する。 また、上記実施例では、包装袋1の開封すべき折曲げ部全域に開封用粗面部を設けたが、開封すべき部分にだけ設けてもよく、また、プラスチックラミネートフィルムをアルミニウム箔を有する4層構造のものとしてもよいのはもちろんである。 【0019】 【考案の効果】 以上述べたように本考案によれば、プラスチックラミネートフィルムに設けた粗面部に押出しラミネート手段によりラミネートされるプラスチックフィルムのプラスチックフィルム材料を充填することで開封用粗面部を形成するので、開封用粗面部の透湿度や酸素透過度の増大を防ぐことができ、包装袋の側縁と背面の接合端部に形成した開封用粗面部が包装袋の折曲げ部の開封方向に対して山折りされる部分に位置することで、開封用粗面部を開封導入部として包装袋の折曲げ部からの開封を容易に行うことができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本考案による包装袋をピロー形包装袋に適用した例を示す図。 【図2】 包装袋素材のプラスチックフィルムの断面図。 【図3】 同プラスチックフィルムの開封用粗面を設けた部位の断面図。 【図4】 粗面形成装置を示す図。 【符号の説明】 1 包装袋 2 プラスチックラミネートフィルム 3 接合端部 4 2軸延伸ポリプロピレンフィルム 6 開封用粗面部 7 凹部 8 貫通孔 9 粗面部 10 プラスチック材料 |
訂正の要旨 |
1.訂正の要旨 1)本件実用新案登録明細書(以下、「本件明細書」という。)における実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る記載、 「1.矩形状をなすプラスチックラミネ-トフィルムを折曲げ成形し、接合端部をヒ-トシ-ルして筒状部を形成し、筒状部の開口端をヒ-トシ-ルした包装袋において、上記プラスチックラミネ-トフィルムを、貫通孔を有する粗面部を設けた延伸プラスチックフィルムに押出しラミネ-ト手段によりプラスチックフィルムをラミネ-トすることで構成し、粗面部の貫通孔にプラスチック材料を充填して開封用粗面部を形成し、プラスチックラミネ-トフィルムを、延伸プラスチックフィルムが外側で、開封用粗面部が包装袋の折曲げ部に位置するように折曲げ成形したことを特徴とする包装袋。」を、特許請求の範囲の減縮を目的として、 「[請求項1]矩形状をなすプラスチックラミネ-トフィルムを折曲げ成形し、接合端部をヒ-トシ-ルして筒状部を形成し、筒状部の開口端をヒ-トシ-ルしたピロー形包装袋において、上記プラスチックラミネ-トフィルムを、貫通孔を有する粗面部を設けた延伸プラスチックフィルムに押出しラミネ-ト手段により未延伸プラスチックフィルムをラミネ-トすることで構成し、粗面部の貫通孔にプラスチック材料を充填して開封用粗面部を形成し、プラスチックラミネ-トフィルムを、延伸プラスチックフィルムが外側で、開封用粗面部が包装袋の折曲げ部に位置するように折曲げ成形し、 前記折曲げ部は、包装袋の側縁に形成した折曲げ部と、包装袋の背面に突出して形成した前記接合端部からなる折曲げ部とからなり、前記開封用粗面部を、開封方向に対して山折りされる包装袋の側縁と、前記包装袋の背面に突出して形成した折曲げ部の、開封方向に対して山折りされる部分とに形成したことを特徴とする包装袋。」と訂正する。 2)明瞭でない記載の釈明を目的として、本件明細書の段落番号0006の第3行の「透湿度や酸素透過度が低下」を「透湿度や酸素透過度が増大」に、段落番号0007の第2行の「透湿度や酸素透過度の低下」を「透湿度や酸素透過度の増大」に、段落番号0016の第5乃至6行の「それほど低下せず」を「それほど増大せず」にそれぞれ訂正する。 3)明瞭でない記載の釈明を目的として、本件明細書の段落番号0008の「本考案の包装袋は、矩形状をなす・・・・・・・折曲げ成形して構成される。」記載を、 「本考案の包装袋は、矩形状をなすプラスチックラミネートフィルムを折曲げ成形し、接合端部をヒートシールして筒状部を形成し、筒状部の開□端をヒートシールしたピロー形包装袋において、上記プラスチックラミネートフィルムを、貫通孔を有する粗面部を設けた延伸プラスチックフィルムに押出しラミネート手段により未延伸プラスチックフィルムをラミネートすることで構成し、粗面部の貫通孔にプラスチック材料を充填して開封用粗面部を形成し、プラスチックラミネートフィルムを、延伸プラスチックフィルムが外側で、開封用粗面部が包装袋の折曲げ部に位置するように折曲げ成形し、 前記折曲げ部は、包装袋の側縁に形成した折曲げ部と、包装袋の背面に突出して形成した前記接合端部からなる折曲げ部とからなり、前記開封用粗面部を、開封方向に対して山折りされる包装袋の側縁と、前記包装袋の背面に突出して形成した折曲げ部の、開封方向に対して山折りされる部分とに形成して構成される。」と訂正する。 4)明瞭でない記載の釈明を目的として、本件明細書の段落番号0011の「本考案の包装袋では、開封用粗面部を・・・・・・・の開封を行なうことができる。」の記載を、 「本考案のピロー形の包装袋では、開封用粗面部を延伸プラスチックフィルムに設けた粗面部の貫通孔をプラスチック材料で充填することで形成するので、開封用粗面部の透湿度や酸素透過度の増大を防ぐことができ、開封用粗面部を包装袋の側縁と背面の折曲げ部に位置させ、前記開封用粗面部を開封方向に対して山折りされる部分に形成したので、包装袋の折曲げ部からの開封をスムースに行うことができる。」と訂正する。 5)明瞭でない記載の釈明を目的として、本件明細書の段落番号0014、第1行の「折曲げ部1a」を「側緑の折曲げ部1a」に訂正する。 6)明瞭でない記載の釈明を目的として、本件明細書の段落番号0019、第3行の「折曲げ部の内の山折りされる折曲げ部14」を「折曲げ部14の内の山折りされる部分」と訂正し、同第8行の「折曲げ部の山折りされる折曲げ部14」を「折曲げ部14の山折りされる部分」と訂正する。 7)明瞭でない記載の釈明を目的として、本件明細書の段落番号0017、第12乃至14行の「なお、ピロー形包装袋1の左側および右側のいずれかの方向からの開封を可能にするためには、両側に位置する折曲げ部1a,1bおよび背面中央部に位置する接合端部の折曲げ部全部に開封用粗面部を形成する。」の記載を削除する。 8)明瞭でない記載の釈明を目的として、本件明細書の段落番号0019、第11行の「山折りした折曲げ部1b」を「開封方向に対して谷折りした折曲げ部1b」に訂正する。 9)明瞭でない記載の釈明を目的として、本件明細書の段落番号0021の「以上述べたように本考案によれば、・・・・・・開封を容易に行なうことができる。」の記載を、 「以上述べたように本考案によれば、プラスチックラミネートフィルムに設けた粗面部に押出しラミネート手段によりラミネートされるプラスチックフィルムのプラスチックフィルム材料を充填することで開封用粗面部を形成するので、開封用粗面部の透湿度や酸素透過度の増大を防ぐことができ、包装袋の側縁と背面の接合端部に形成した開封用粗面部が包装袋の折曲げ部の開封方向に対して山折りされる部分に位置することで、開封用粗面部を開封導入部として包装袋の折曲げ部からの開封を容易に行うことができる。」と訂正する。 |
異議決定日 | 1999-10-19 |
出願番号 | 実願平7-365 |
審決分類 |
U
1
651・
121-
YA
(B65D)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 原 慧、林 直生樹、岡田 幸夫、鈴木 泰彦 |
特許庁審判長 |
佐藤 久容 |
特許庁審判官 |
祖山 忠彦 三原 彰英 |
登録日 | 1997-06-06 |
登録番号 | 実用登録第2549808号(U2549808) |
権利者 |
ニチバン株式会社 東京都文京区関口二丁目3番3号 株式会社細川洋行 東京都千代田区二番町11番地5 |
考案の名称 | 包装袋 |
代理人 | 石川 泰男 |
代理人 | 石川 泰男 |