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審決分類 審判 全部無効 発明同一 無効とする。(申立て全部成立) G10K
管理番号 1020792
審判番号 審判1996-21666  
総通号数 14 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案審決公報 
発行日 2001-02-23 
種別 無効の審決 
審判請求日 1996-12-27 
確定日 2000-05-19 
事件の表示 上記当事者間の登録第2066168号「カラオケ装置」の実用新案登録無効審判事件についてされた平成 9年11月21日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成10(行ケ)年第3号平成11年 4月27日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。(なお、上記判決に対して上告受理の申立てがなされたが、平成11年11月11日に最高裁判所において上告審として受理しない旨の決定がなされたことにより、上記判決は確定した。)   
結論 登録第2066168号実用新案の明細書の請求項に記載された考案についての登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1.手続の経緯、本件考案
本件登録第2066168号実用新案の考案(昭和59年10月19日実用新案登録出願。平成7年6月25日設定登録。以下、「本件考案」という。)の要旨は明細書及び図面の記載からみて、その実用新案登録請求の範囲に記載された以下のとおりのものと認める。
「伴奏音楽と該伴奏に対応する歌詞画像が一体的に記録された記録媒体から音楽信号と映像信号を読み取って伴奏音楽と歌詞映像を再生する伴奏・歌詞再生装置と、背景映像が予め格納された記録媒体から映像信号を読み取って動画像である背景映像を再生する背景映像再生装置と、前記伴奏・歌詞再生装置から出力された歌詞映像を前記背景映像再生装置から出力された動画像である背景映像に重ねる為のミクサーと、該ミクサーから出力された映像信号を受けて動画像である背景映像と歌詞映像との合成映像を表示する受像器とからなり、伴奏音楽を演奏すると同時に該伴奏音楽に対応する歌詞映像を受像器に写し出し、適宜、好みの背景映像を選択して受像機の受像画面全体に及ぶ背景画像を入れ替えてなるカラオケ装置。」

2、請求人の主張
これに対して請求人は、本件考案は、本件出願前に出願された他の出願であって本願出願後に出願公開された特願昭59-100149号(特開昭60-244169号)の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であるので、実用新案法第3条の2の規定により実用新案登録を受けることができないものであり、同法第37条第1項により無効とすべきであると主張し、証拠方法として、甲第1号証(特願昭59-100149号(特開昭60-244169号公報))を、また、甲第2号証(実願昭56-94736号の明細書及び図面、並びに実開昭57-23668号公報)、甲第3号証(特開昭55-26792号公報)、甲第4号証(特開昭59-167887号公報)を提出している。

3、甲各号証の記載
(1)甲第1号証(特願昭59-100149号(特開昭60-244169号公報))
本件出願前に出願された他の出願であって本願出願後に出願公開された甲第1号証の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「先願明細書」という。)には以下の記載がある。
(a)「リクエスト曲に応じた第1の映像信号およびリクエスト曲に応じた音声信号を再生する第1のビデオ再生装置と、リクエスト曲に無関係な映像である第2の映像信号を再生する第2のビデオ再生装置と、前記第1の映像信号と前記第2の映像信号とを合成し第3の映像信号を形成する映像合成装置と、リクエスト時、前記第1のビデオ再生装置の再生状態に応じて前記第2のビデオ再生装置を再生状態にすると共に、前記第2の映像信号を再生させて前記映像合成装置から前記第3の映像信号を出力させる制御を行う制御装置とからなるビデオ再生装置」(特許請求の範囲)
(b)「本発明は、ビデオ再生装置に係り、同一曲をリクエストするたびに映像の種類をかえて再生することができるビデオ再生装置に関するものである。」(公報第1頁左下欄第19行?右下欄第1行)
(c)「(発明の解決しようとする問題点)
同じ曲を何回リクエストしても同じ映像しか再生できず、映像再生の面で単調さがある。」(公報第1頁下左欄第11行?第13行)
(d)「本発明になるビデオ再生装置は、同じ曲をリクエストするたびに一連の映像の種類がかわるビデオカラオケ装置である。」(公報第2頁上左欄第8行?第10行)、
(e)「再生装置1で用いるビデオディスクに収録してあるのは曲ごとに、オーディオ信号としては伴奏メロディー、ビデオ信号としてはテロップだけの映像(例えば、単色(青)をバックにした歌詞の文字あるいは譜面)である。再生装置2で用いるビデオディスクに収録してあるのは、再生装置1で用いるビデオディスクの曲の内容とは無関係である映像であり、テロップのない一連の映像(例えば、ストーリーのない風景だけの映像)である。」(公報第2頁上右欄第20行?下左欄第8行)
(f)「再生装置2はこのコマンドコードを受けた後、スタンバイ状態から再生状態となされ、ビデオディスクの任意の位置から再生を開始する。」(公報第3頁左上欄第15行?第18行)
(g)「このように、テロップだけの映像とテロップのない映像とを合成してテロップの入った新しい映像をつくるのである。そしてテロップのない映像を適宜かえることにより、リクエストするたびに、同じテロップでもバックの映像が相違する映像をつくることができる。すなわち、同一曲を繰り返しリクエストしても、再生装置2のビデオディスクを前回リクエストしたときに再生した映像とは異なる映像が記録されたところから再生を開始させたり、あるいは、ビデオディスクを交換して、新しい内容のビデオディスクを再生することによって、リクエストするたびに、同じテロップでもバックの映像が相違する映像をつくることができる。」(公報第3頁下右欄第4行?第16行)
上記各記載及び図面等の記載から、上記先願明細書には以下の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されているということができる。

伴奏メロディーとテロップ(歌詞の文字)だけの映像(第1の映像)が一体的に記録されたビデオディスから音楽信号と映像信号を読み取って伴奏メロディーとテロップ(歌詞の文字)だけの映像を再生する第1のビデオ再生装置と、テロップのない一連の映像(第2の映像)が予め格納されたビデオディスクから映像信号を読み取ってテロップのない一連の映像を再生する第2のビデオディスクと、前記第1のビデオ再生装置から出力されたテロップ(歌詞の文字)だけの映像を前記第2のビデオ再生装置から出力されたテロップのない一連の映像と合成する為の映像合成装置と、該映像合成装置から出力された映像信号を受けてテロップのない一連の映像とテロップ(歌詞の文字)だけの映像との合成映像(第3の映像)を表示するテレビジョン装置とからなり、伴奏メロディーを演奏すると同時にテロップ(歌詞の文字)だけの映像を受像器に写し出し、曲のリクエスト毎にテロップのない一連の映像を入れ替えてなるビデオカラオケ装置。
(2)甲第2号証乃至甲第4号証
甲第2号証(実願昭56-94736号の明細書及び図面、並びに実開昭57-23668号公報)には、好みのチャンネルの放送を受信しながら、他のチャンネルで放送されている文字放送を画面に重畳してみることができる文字放送受信アダプターが記載されている。
甲第3号証(特開昭55一26792号公報)には、教育あるいは娯楽の分野で、ビデオテープのビデオ信号とテレビゲームのパターン信号とを同時にテレビジョン受像機に画像表示できるテレビジョン画面表示装置が記載されている。
甲第4号証(特開昭59一167887号公報)には、テレビジョン画面に楽譜及び歌詞を重ねて表示したり、楽譜の表示をタイミング信号にしたがって、順次色を変化させるなどの表示を行うことができるテレビジョン音楽演奏時の楽譜表示方法が記載されている。

4、対比・判断
本件考案と甲第1号証に記載された先願発明とを対比すると、先願発明の「伴奏メロディー」、「テロップ(歌詞の文字)だけの映像」、「ビデオディスク」、「第1のビデオ再生装置」、「第2のビデオ再生装置」、「映像合成装置」、「テレビジョン装置」、「ビデオカラオケ装置」は、本件考案の「伴奏音楽」、「伴奏に対応する歌詞画像」、「記録媒体」、「伴奏・歌詞再生装置」、「背景映像再生装置」、「ミクサー」、「受像機」、「カラオケ装置」にそれぞれ相当するのは明らかである。
また、先願発明の「テロップのない一連の映像」は、上記3.(e)の記載、第4図に関する記載等から、動画像である背景画像であり、かつ、受像器の受像画面全体に及ぶ映像であると認められる。
以上より、本件考案と先願発明とは、
伴奏音楽と該伴奏に対応する歌詞画像が一体的に記録された記録媒体から音楽信号と映像信号を読み取って伴奏音楽と歌詞画像を再生する伴奏・歌詞再生装置と、背景映像が予め格納された記録媒体から映像信号を読み取って動画像である背景映像を再生する背景映像再生装置と、前記伴奏・歌詞再生装置から出力された歌詞映像を前記背景映像再生装置から出力された動画像である背景映像に重ねる為のミクサーと、該ミクサーから出力された映像信号を受けて動画像である背景映像と歌詞映像との合成映像を表示する受像機とからなり、伴奏音楽を演奏すると同時に該伴奏音楽に対応する歌詞映像を受像機に写し出し、受像器の受像画面全体に及ぶ背景映像を入れ替えてなるカラオケ装置
である点で一致し、本件考案のものが、背景映像を入れ替えるのに、適宜、好みの背景映像を選択するものであるのに対し、先願発明のものは、適宜、好みの背景映像を選択して入れ替えているものか否か明確でない点で一応の相違がみられる。

しかしながら、上記3.(1)(b)、(f)及び(g)の記載によれば、先願発明の要件である第2の映像は、適宜に選択できるものであると解するのが相当である。
また、カラオケ装置のビデオディスクは、通常、歌い手等が適宜に選択して交換していることはいうまでもない。したがって、上記3.(1)(g)の記載におけるビデオディスクの交換について、新たなディスクが常に機械的に決定され、歌い手等の意志が全く反映されない構成のみを想定するのが不自然であることは明らかである。
この点について、被請求人は、先願発明の要件である第2の映像はリクエスト曲に無関係な映像であるから、歌い手等が選択するまでもないものである旨主張する。
検討するに、先願発明の要件である第2の映像が常に機械的に決定され、歌い手等の意志が全く反映されないものであるとすると、例えば「夏の海」を歌う歌詞及び伴奏に対して「冬の山」の映像が背景として現れ、「日本の民謡」の歌詞及び伴奏に対して「西欧の街並み」の映像が背景として現れるような、奇妙な事態が頻繁に生ずることは明らかである。
しかしながら、そのようにちぐはぐな画面を頻繁に呈するカラオケ装置が実用に耐えないことは当然であって、先願発明がそのような不合理な事態をあえて容認している技術的思想であると考えるべき理由はない。したがって、先願発明の特許請求の範囲における「リクエスト曲に無関係な映像である第2の映像信号」との記載は、第2の映像が歌い手等が選択するまでもないものであるとする論拠にはなりえないというべきである。
なお、被請求人は、先願明細書には歌い手等がどのような手段によって第2の映像の再生開始位置を選択するのかを明らかにする記載が存在しない旨主張する。しかしながら、本件考案の願書添付の明細書においても、好みの背景映像を選択する手段については、単に実施例の説明として、「背景映像再生装置2にテープまたはデイスクをセットし、任意に背景となる映像を選定する。」(本件実用新案公報(実公昭63-49884号公報)第3欄第32行?34行)と記載されているにすぎないことが認められる。したがって、本件考案の要件である背景映像(先願考案の要件である第2の映像)を適宜に選択する手段は、当業者にとっては単純な設計事項にすぎないと解されるから、先願明細書に第2の映像の再生開始位置を選択する手段が記載されていないことも、先願発明の要件である第2の映像が適宜に選択できないものであるとする論拠にはなりえないのである。
したがって、上記一応の相違点は、実質的なものではなく、本件考案と先願発明とは、実質的に同一であると認める。

5.むすび
以上のとおりであるから、本件考案は、先願明細書に記載された発明と同一であると認められ、しかも、本件考案の考案者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また本件の出願時に、その出願人が上記先願明細書に係る出願の出願人と同一であるとも認められない。
したがって、本件考案の登録は、実用新案法第3条の2第1項の規定に違反してされたものであり、同法第37条第1項の規定により、これを無効にすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1997-10-30 
結審通知日 1997-11-25 
審決日 1997-11-21 
出願番号 実願昭59-158557 
審決分類 U 1 112・ 161- Z (G10K)
最終処分 成立    
前審関与審査官 小松 正  
特許庁審判長 三友 英二
特許庁審判官 藤井 浩
麻野 耕一
犬飼 宏
田良島 潔
登録日 1995-06-23 
登録番号 実用新案登録第2066168号(U2066168) 
考案の名称 カラオケ装置  
代理人 野村 晋右  
代理人 柳野 隆生  
代理人 鈴木 康夫  
代理人 茂木 龍平  

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