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審決分類 |
審判 全部申し立て B41J 審判 全部申し立て B41J 審判 全部申し立て B41J |
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管理番号 | 1020844 |
異議申立番号 | 異議1999-71326 |
総通号数 | 14 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 実用新案決定公報 |
発行日 | 2001-02-23 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-04-05 |
確定日 | 2000-04-17 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 登録第2582482号「印刷装置」の実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 登録第2582482号の請求項1ないし2に係る実用新案登録を維持する。 |
理由 |
A.手続の経緯 実用新案登録第2582482号の請求項1に係る考案及び請求項2に係る考案は、平成1年11月20日に実用新案登録出願され、平成10年7月24日にその考案について実用新案登録の設定登録がなされ、その後、実用新案登録異議申立人石塚輝(以下「異議申立人」という。)により実用新案登録異議の申立てがなされ、平成11年8月2日付けで取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年11月2日に訂正請求がなされたものである。 B.訂正の適否についての判断 1.訂正の内容 実用新案権者が求めている訂正の内容は、以下のとおりである。 a.実用新案登録請求の範囲の請求項1の「前記印刷対象物のうち広いテープ幅とほぼ対応して、」を「前記印刷対象物のうち広いテープ幅の印刷対象物とほぼ対応して、」に、「印刷対象物の送り方向に対して直行する向き」を「印刷対象物の送り方向に対して直交する向き」に、「いずれの印刷対象物」を「いずれのテープ幅の印刷対象物」に、「テープ幅が広い場合には大きい文字、狭い場合には小さい文字」を、「テープ幅が広い印刷対象物の場合には大きい文字、狭い印刷対象物の場合には小さい文字」に訂正する。 b.平成8年10月21日付提出の全文補正明細書の第2頁18行(実用新案登録公報第2頁第3欄25行)の「テープ幅」を「テープ幅の印刷対象物」に訂正する。 c.平成8年10月21日付提出の全文補正明細書の第2頁20行(実用新案登録公報第2頁第3欄31行)の「いずれの印刷対象物」を「いずれのテープ幅の印刷対象物」に訂正する。 d.平成8年10月21日付提出の全文補正明細書の第2頁29行(実用新案登録公報第2頁第3欄43行)の「広い場合には大きい文字、狭い場合」を「広い印刷対象物の場合には大きい文字、狭い印刷対象物の場合」に訂正する。 e.平成8年10月21日付提出の全文補正明細書の第5頁18行(実用新案登録公報第3頁第6欄12行)の「テープ幅」を「テープ幅の印刷対象物」に訂正する。 f.平成8年10月21日付提出の全文補正明細書の第5頁23行(実用新案登録公報第3頁第6欄19行?20行)の「広い場合には大きい文字を、狭い場合」を「広い印刷対象物の場合には大きい文字を、狭い印刷対象物の場合」に訂正する。 g.平成8年10月21日付提出の全文補正明細書の第2頁19行(実用新案登録公報第2頁第3欄第29行)の「直行」を「直交」に訂正する。 h.平成8年10月21日付提出の全文補正明細書の第3頁28行(実用新案登録公報第2頁第4欄31行?32行)の「直行」を「直交」に訂正する。 i.平成8年10月21日付提出の全文補正明細書の第5頁19行(実用新案登録公報第3頁第6欄13行)の「直行」を「直交」に訂正する。 2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 訂正事項a.に関し、願書に添付した明細書(以下「実用新案登録明細書」という。)には、「テープ状の印刷対象物」(請求項1)、「また、サーマルヘッド17は、第2図に示すように、テープの送り方向に対して直行する向きに発熱素子21が配設されている。」(実用新案登録公報第2頁第4欄30?32行)と記載されており、また、第2図(A)にはテープ幅の広い印刷テープ23のテープ幅とほぼ対応して、印刷テープ23の送り方向に対して直交する向きに発熱素子21が配設されていることが示されている。さらに、「一方のテープカセットには・・・テープ幅の広い印刷テープ23が収納され、他方のテープカセットには、・・・テープ幅の狭い印刷テープ25が収納されている。これらの印刷テープ23,25は、第2図から明らかなように、テープカセット3が保持部5に装着された際、その幅方向における中心とサーマルヘッド17の発熱素子21の並び方向の中心が一致するようになっている。」(実用新案登録公報第2頁第4欄37?45行)、「保持部に装着されたテープカセットに収納されている印刷対象物のテープ幅に応じて、テープ幅が広い場合には大きい文字を、狭い場合には小さい文字を印刷することができる。」(実用新案登録公報第3頁第6欄17?20行)と記載されている。 これらの記載より、当該訂正事項に係る「広いテープ幅の印刷対象物とほぼ対応して」印刷素子を有していること、「いずれのテープ幅の印刷対象物に対してもその幅方向における中心と印刷素子列の配設方向における中心が一致する」こと、「テープ幅が広い印刷対象物の場合には大きい文字、狭い印刷対象物の場合には小さい文字となる」ことは、いずれも実用新案登録明細書に記載されていたことと認められる。 そして、この訂正は実用新案登録明細書に記載された事項の範囲内において、技術内容を限定したものといえるから、実用新案登録請求の範囲の減縮に相当するものである。 また、「印刷対象物の送り方向に対して直交する向きに配設した印刷素子」とした訂正は誤記の訂正に相当するものと認められる。 また、考案の詳細な説明の訂正事項のうち、訂正事項b.?f.は、請求項1の訂正に伴い、それとの整合性を保つためになされたものであり、明りょうでない記載の釈明に相当するものであり、訂正事項g.?i.は誤記の訂正に相当する、ものである。 なお、実用新案登録請求の範囲及び考案の詳細な説明の誤記の訂正に関し、願書に最初に添付した明細書には、「第2図に示すように、テープの送り方向対して直交する向きに発熱素子21が配設されている。」(明細書第4頁13?15行)と記載されていることから、「印刷対象物の送り方向に対して直交する向きに配設した印刷素子」は、願書に最初に添付した明細書に記載されていたことと認められる。 そして、これらの訂正は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3.独立特許要件 (1)訂正考案 訂正明細書の請求項1に係る考案(以下、「訂正考案1」という。)及び請求項2に係る考案(以下、「訂正考案2」という。)は、その実用新案登録請求の範囲の各請求項に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「1.テープ状の印刷対象物に印刷を行う印刷装置において、 異なるテープ幅の印刷対象物をそれぞれ内部に収納し、外面に収納した印刷対象物のテープ幅に関する情報を示す情報部を設けた複数種類のテープカセットと、 前記印刷対象物のうち広いテープ幅の印刷対象物とほぼ対応して、印刷対象物の送り方向に対して直交する向きに配設した印刷素子を有し、印刷対象物に印刷を行う印刷ヘッドと、 その印刷ヘッドを配設し、いずれのテープ幅の印刷対象物に対してもその幅方向における中心と印刷素子列の配設方向における中心とが一致するように、複数種類のテープカセットを交換可能に装着する保持部と、 その保持部に配設され、保持部に装着されたテープカセットの情報部から印刷対象物のテープ幅を検出する検出手段と、 前記保持部に配設され、その保持部に装着されたテープカセットの印刷対象物を送り駆動する送り手段と、 大きさの異なる文字を印刷するための複数の文字データを記憶する記憶手段と、 前記検出手段からの信号に基づいて、前記保持部に装着されたテープカセットに収納された印刷対象物のテープ幅に応じて、前記印刷対象物に印刷する文字サイズを、テープ幅が広い印刷対象物の場合には大きい文字、狭い印刷対象物の場合には小さい文字となるように、前記記憶手段から文字データを選択的に読み出す制御手段と を備えたことを特徴とする印刷装置。 2.前記検出手段は、前記テープカセットが前記保持部に装着されたとき少なくとも1つのテープカセットによって押圧可能な作動突起と、その作動突起によって操作される検出器から構成されることを特徴とする実用新案登録請求の範囲第1項に記載の印刷装置。」 (2)引用文献 当審が通知した取消理由で引用した刊行物1である米国特許4,815,875号明細書(異議申立人が提出した甲第2号証)には、「印刷装置に関すること」(第1欄60?64行)、「印刷ヘッド10、プラテン11、カートリッジ収容トレイ15、テープ・リボンカートリッジ16を有すること」(第3欄35?42行)、「カートリッジ16にあるハブ69の底部はトレイ15に取り付けられたマイクロスイッチ49のステム50と協調し、幅の狭いテープが使用される場合、ハブ69はステム50に係合してこれを圧迫し、マイクロスイッチ49を付勢させ、このテープに関する情報を機械の使用者及びカートリッジ内のテープの厚さを指示するためのこの機械のその他の処理回路に伝えること」(第8欄20?33行)、「印刷又は転写行程の間、駆動ローラ106と112とは回転し、映像が形成されること」(第12欄61?63行)等が記載されており、これらの記載を含む明細書及び図面の記載から、刊行物1には以下のような考案が記載されているものと認める。 「テープに印刷を行う印刷装置において、異なる幅のテープを内部に収納し、テープ幅に関する情報を示すハブを設けた複数種類のテープカートリッジと、テープに印刷を行う印刷ヘッドと、テープカートリッジ収容トレイと、トレイに配設されテープカセットのハブと協調するステムを備えたテープ幅を検出するマイクロスイッチと、トレイに設けられた駆動ローラとを備えた印刷装置。」 また、同じく刊行物2である特開平1-280577号公報(異議申立人が提出した参考資料2)及び刊行物3である特開昭63-268677号公報(異議申立人が提出した参考資料3)には、「大きさの異なる印刷対象物があるときに、それらの中心を合わせた方が実用上都合が良いこと」が示されており、刊行物4である特開昭64-53863号公報(異議申立人が提出した参考資料4)には「印刷装置において、複数の文字データを記憶し、印刷対象物の大きさに応じて文字を拡大・縮小させること」が示されている。 (3)対比・判断 訂正考案1と、刊行物1に記載された考案とを比較すると、刊行物1に記載された考案の「テープ」、「テープ幅に関する情報を示すハブ」、「テープカートリッジ収容トレイ」、「テープカセットのハブと協調するステムを備えたテープ幅を検出するマイクロスイッチ」、「トレイに設けられた駆動ローラ」は、訂正考案1の「テープ状の印刷対象物」、「印刷対象物のテープ幅に関する情報を示す情報部」、「複数種類のテープカセットを交換可能に装着する保持部」、「保持部に装着されたテープカセットの情報部から印刷対象物のテープ幅を検出する検出手段」、「保持部に配設され、その保持部に装着されたテープカセットの印刷対象物を送り駆動する送り手段」に相当することから、両者は、「テープ状の印刷対象物に印刷を行う印刷装置において、異なるテープ幅の印刷対象物をそれぞれ内部に収納し、印刷対象物のテープ幅に関する情報を示す情報部を設けた複数種類のテープカセットと、印刷対象物に印刷を行う印刷ヘッドと、複数種類のテープカセットを交換可能に装着する保持部と、その保持部に配設され、保持部に装着されたテープカセットの情報部から印刷対象物のテープ幅を検出する検出手段と、前記保持部に配設され、その保持部に装着されたテープカセットの印刷対象物を送り駆動する送り手段と、を備えたことを特徴とする印刷装置。」の点で一致するが、以下の点で相違する。 相違点1:訂正考案1は、いずれのテープ幅の印刷対象物に対してもその幅方向における中心と印刷素子列の配設方向における中心とが一致するように、複数種類のテープカセットを交換可能に装着する保持部を備えているのに対し、刊行物1に記載された考案では、この点が特定されていないこと。 相違点2:訂正考案1は、大きさの異なる文字を印刷するための複数の文字データを記憶する記憶手段と、印刷対象物のテープ幅を検出する検出手段からの信号に基づいて、保持部に装着されたテープカセットに収納された印刷対象物のテープ幅に応じて、前記印刷対象物に印刷する文字サイズを、テープ幅が広い印刷対象物の場合には大きい文字、狭い印刷対象物の場合には小さい文字となるように、前記記憶手段から文字データを選択的に読み出す制御手段とを備えているのに対し、刊行物1に記載された考案には、この点が特定されていないこと。 これらの相違点について検討する。 相違点1に関し、刊行物2及び刊行物3には、大きさの異なる印刷対象物があるときに、それらの中心を合わせた方が実用上都合が良いことが示されているが、訂正考案1を特定する事項である「いずれのテープ幅の印刷対象物に対してもその幅方向における中心と印刷素子列の配設方向における中心とが一致するように、複数種類のテープカセットを交換可能に装着する保持部を備えている」点については記載されておらず、示唆もされていない。そして、かかる事項を備えることにより、訂正考案1は発熱素子を複雑に高精度に制御することなく発熱させることができ、CPUに過大な負荷を与えることがないという効果を生じるものである また、相違点2に関し、刊行物4には印刷装置において、複数の文字データを記憶し、印刷対象物の大きさに応じて文字を拡大・縮小させる技術が示されているが、訂正考案1を特定する事項である、「印刷対象物のテープ幅を検出する検出手段からの信号に基づいて、保持部に装着されたテープカセットに収納された印刷対象物のテープ幅に応じて、前記印刷対象物に印刷する文字サイズを、テープ幅が広い印刷対象物の場合には大きい文字、狭い印刷対象物の場合には小さい文字となるように、前記記憶手段から文字データを選択的に読み出す制御手段」については記載されておらず、示唆もされていない。そしてかかる事項を備えることにより、訂正考案1は、簡単な構成で印刷装置の制御部に過大な負担をかけることなく、保持部に装着されたテープカセットに収納されている印刷対象物のテープ幅に応じて、テープが広い印刷対象物の場合には大きい文字を、狭い印刷対象物の場合には小さい文字を印刷することが出来るという効果を生じるものである。 したがって、訂正考案1は、刊行物1に記載された考案及び刊行物2?4に記載された技術から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるとすることはできない。 また、訂正考案2は、訂正考案1の検出手段を限定した考案であり、上記の訂正考案1に対する対比判断で述べたのと同じ理由により、刊行物1に記載された考案及び刊行物2?4に記載された技術から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるとすることはできない。 (4)記載不備について 当審は取消理由通知において、実用新案登録明細書の記載からは、印刷対象物の幅方向における中心と印刷素子列の配設方向における中心とをどのようにして一致させるのか不明瞭である旨の記載不備を指摘した。 この点に関し、訂正事項a.で、テープカセットを保持部に装着すると、印刷対象物の幅方向における中心と印字ヘッドの印刷素子列の配設方向における中心とが一致することが明確にされ、また、保持部及びテープカセットにおいて、種々の構成を用いることによりテープと発熱素子の中心を合わせることは当業者が適宜なし得ることと認められることから、取消理由通知で示した記載不備は解消したものと認める。 (5)まとめ したがって、当審で通知した取消理由は全て解消しており、また、他に訂正考案1及び訂正考案2を拒絶すべき理由を発見しないから、結局、訂正考案1、2は実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができるものである。 4.むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定により準用される、同附則第10条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成6年改正前特許法第126条第1?3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 C.特許異議申立について 1.本件考案 B.に示したように、平成11年11月2日付けの訂正請求を認めるので、本件請求項1に係る考案(以下「本件考案1」という。)及び本件請求項2に係る考案(以下「本件考案2」という。)は、B.3.(1)訂正考案に記載したとおりのものである。 2.申立の理由の概要 実用新案登録異議申立人石塚輝は、甲第1号証(特願平1-23624号(以下「先願明細書」という。)の公開公報である特開平2-147272号公報)を提出し、本件考案1及び本件考案2の実用新案登録は実用新案法第3条の2に違反してなされたものであること、甲第2号証(米国特許第4,815,875号明細書(上記刊行物1))及び参考資料1(特開昭56-118888号公報)、参考資料2(特開平1-280577号公報(上記刊行物2))、参考資料3(特開昭63-268677号公報(上記刊行物3))、参考資料4(特開昭64-53863号公報(上記刊行物4))を提出し、本件考案1及び本件考案2は甲第2号証に記載された発明及び参考資料1?4に記載された技術から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであり、本件考案1及び本件考案2の実用新案登録は実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであること、並びに、本件の明細書には記載不備があり、実用新案法第5条の規定を満たしていないことから、本件考案1及び本件考案2の実用新案登録を取り消すべきである旨主張している。 3.実用新案法第3条の2違反について 先願明細書に係る出願は、甲第2号証(刊行物1)に記載された発明に基づいてパリ条約による優先権を主張してなされたものであり、B.3.(2)引用文献に示した刊行物1と同様の発明が記載されている。そして、本件考案1及び本件考案2と先願明細書に記載された発明とを比較すると、両者には、B.3.(3)対比・判断で示した相違点1及び相違点2があることから、本件考案1及び本件考案2はいずれも先願明細書に記載された発明であるとは認められない。 4.実用新案法第3条第2項違反について 甲第2号証及び参考資料2?4には、B.3.(2)引用文献で示した考案及び技術が示されている。 また、参考資料1には、参考資料2?3と同様に、大きさの異なる印刷対象物があるときに、それらの中心を合わせた方が実用上都合が良いことが示されている。 しかし、参考資料1を参酌したとしても、B.3.(3)対比・判断で示したとおり、本件考案1及び本件考案2は甲第2号証に記載された考案及び各参考資料に記載された技術から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとはすることができない。 5.実用新案法第5条違反について 異議申立人が主張する記載不備については、B.3.(4)で示したように解消されたものと認める。 6.むすび 以上のとおりであるから、実用新案登録異議申立ての理由及び証拠によっては、本件考案1及び本件考案2の実用新案登録を取り消すことはできない。 また、他に本件考案1及び本件考案2の実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【考案の名称】 印刷装置 (57)【実用新案登録請求の範囲】 1.テープ状の印刷対象物に印刷を行う印刷装置において、 異なるテープ幅の印刷対象物をそれぞれ内部に収納し、外面に収納した印刷対象物のテープ幅に関する情報を示す情報部を設けた複数種類のテープカセットと、 前記印刷対象物のうち広いテープ幅の印刷対象物とほぼ対応して、印刷対象物の送り方向に対して直交する向きに配設した印刷素子を有し、印刷対象物に印刷を行う印刷ヘッドと、 その印刷ヘッドを配設し、いずれのテープ幅の印刷対象物に対してもその幅方向における中心と印刷素子列の配設方向における中心とが一致するように、複数種類のテープカセットを交換可能に装着する保持部と、 その保持部に配設され、保持部に装着されたテープカセットの情報部から印刷対象物のテープ幅を検出する検出手段と、 前記保持部に配設され、その保持部に装着されたテープカセットの印刷対象物を送り駆動する送り手段と、 大きさの異なる文字を印刷するための複数の文字データを記憶する記憶手段と、 前記検出手段からの信号に基づいて、前記保持部に装着されたテープカセットに収納された印刷対象物のテープ幅に応じて、前記印刷対象物に印刷する文字サイズを、テープ幅が広い印刷対象物の場合には大きい文字、狭い印刷対象物の場合には小さい文字となるように、前記記憶手段から文字データを選択的に読み出す制御手段と を備えたことを特徴とする印刷装置。 2.前記検出手段は、前記テープカセットが前記保持部に装着されたとき少なくとも1つのテープカセットによって押圧可能な作動突起と、その作動突起によって操作される検出器から構成されることを特徴とする実用新案登録請求の範囲第1項に記載の印刷装置。 【考案の詳細な説明】 本考案は、テープ状の印刷対象物に印刷を行う印刷装置に関する。 [従来技術] 従来、テープ状の印刷対象物に印刷を行う印刷装置があった。この印刷装置では、テープ状の印刷対象物を内部に収納したカセットケースが、着脱交換可能になっており、そのカセットケースを印刷装置に装着することにより、印刷対象物に印刷されるようになっていた。 [考案が解決しようとする課題] しかしながら、従来の印刷装置では、印刷対象物のテープ幅を識別することができなかったため、不適切な幅のテープを用いれば、印刷対象物より文字がはみ出たり、印刷対象物の幅に対して文字が小さすぎたりする等の問題が起こる可能性があった。 本考案は、上述した課題を解決するためになされたものであり、印刷対象物のテープ幅に適した大きさの文字が印刷可能であり、その最適な大きさの文字が自動的に設定される印刷装置を提供することを目的とする。 [課題を解決するための手段] この目的を達成するために、本考案の印刷装置は、テープ状の印刷対象物に印刷を行う印刷装置であって、異なるテープ幅の印刷対象物をそれぞれ内部に収納し、外面に収納した印刷対象物のテープ幅に関する情報を示す情報部を設けた複数種類のテープカセットと、前記印刷対象物のうち広いテープ幅の印刷対象物とほぼ対応して、印刷対象物の送り方向に対して直交する向きに配設した印刷素子を有し、印刷対象物に印刷を行う印刷ヘッドと、その印刷ヘッドを配設し、いずれのテープ幅の印刷対象物に対してもその幅方向における中心と印刷素子列の配設方向における中心とが一致するように、複数種類のテープカセットを交換可能に装着する保持部と、その保持部に配設され、保持部に装着されたテープカセットの情報部から印刷対象物のテープ幅を検出する検出手段と、前記保持部に配設され、その保持部に装着されたテープカセットの印刷対象物を送り駆動する送り手段と、大きさの異なる文字を印刷するための複数の文字データを記憶する記憶手段と、前記検出手段からの信号に基づいて、前記保持部に装着されたテープカセットに収納された印刷対象物のテープ幅に応じて、前記印刷対象物に印刷する文字サイズを、テープ幅が広い印刷対象物の場合には大きい文字、狭い印刷対象物の場合には小さい文字となるように、前記記憶手段から文字データを選択的に読み出す制御手段とを備えている。 尚、前記検出手段は、前記テープカセットが前記保持部に装着されたとき少なくとも1つのテープカセットによって押圧可能な作動突起と、その作動突起によって操作される検出器から構成されることが望ましい。 [作用] 上記の構成を有する本考案の印刷装置では、テープカセットを保持部に装着すると、印刷対象物の幅方向における中心と印字ヘッドの印刷素子列の配設方向における中心とが一致する。そして、検出手段が、テープ装着部に装着された印刷対象物のテープ幅を検出するので、制御手段は、検出手段からの信号に基づいて、保持部の装着されたテープカセットに収納された印刷対象物のテープ幅に応じて、記憶手段から文字データを選択的に読み出す。よって、印刷される文字が、印刷対象物のテープ幅が広い場合には大きい文字となり、狭い場合には小さい文字となる。 [実施例] 以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。 本考案の印刷装置1の裏面には、第1図に示すように、テープカセット3を装着する保持部が形成され、その保持部材5にはリボン巻取りカム7とテープ送りローラ9が配設されている。このリボン巻取りカム7とテープ送りローラ9は印刷装置1内部に内蔵されたモータ11と連動されている。 保持部5はさらに、作動突起13が配設されており、この作動突起13は図面上下方向に移動可能になっている。そして、この作動突起13は、常には上方向へ付勢されているが、下方へ押圧移動されたときには、印刷装置1内部に内蔵された検出器15を操作するようになっており、後述する印刷装置の制御部に接続されている。 また、保持部5には、サーマルヘッド17が配設されており、サーマルヘッド17はテープカセット3が装着されたとき、テープカセット3に形成された開口部19に位置するように配設されている。また、サーマルヘッド17は、第2図に示すように、テープの送り方向に対して直交する向きに発熱素子21が配設されている。この発熱素子21は、第2図(A)に示されるように、後述するテープ幅の広い印刷テープ23のテープ幅とほぼ対応して、サーマルヘッド17に配設されている。 保持部5に装着されるテープカセット3は、二種類のテープカセットが用意されており、一方のテープカセットには、第2図(A)に示すようなテープ幅の広い印刷テープ23が収納され、他方のテープカセットには、第2図(B)に示すようなテープ幅の狭い印刷テープ25が収納されている。これら印刷テープ23、25は、第2図から明らかなように、テープカセット3が保持部5に装着された際、その幅方向における中心とサーマルヘッド17の発熱素子21の並び方向の中心が一致するようになっている。 特に、第2図(B)に示すように、サーマルヘッド17にて、その発熱素子21の幅よりも狭い幅の印刷テープ25を印刷する場合、印刷テープ25の幅方向における中心と発熱素子21の並び方向における中心とを一致させず、例えば、印刷テープ25の下端と発熱素子21の列の下端とを一致させると、印刷テープ25の幅方向における両端に対応するサーマルヘッド17の蓄熱情況が不揃いになり、印字品質に悪影響を与える。そして、その悪影響を補正して印字品質を向上させるためには、発熱素子21を複雑に高精度に制御しなければならず、CPU27に過大な負荷を与えることになる。本実施例にように、印刷テープ25の幅方向における中心と発熱素子21の並び方向における中心とを一致させれば、印刷テープ25の幅方向における両端に対応するサーマルヘッド17の蓄熱情況が一致し、発熱素子21を複雑に高精度に制御することなく発熱させることができ、CPU27に過大な負荷を与えることがない。 また、二種類のテープカセットの内、一方のテープカセット、例えば第2図(A)の印刷テープ23を収納したテープカセットには、テープカセットが保持部5に装着されたとき、前述の作動突起13を下方へ押圧しないための切欠部が下面に形成されており、切欠部を有するものと有しないものとで、作動突起13は、押圧移動されなかったり、押圧移動されたりする。そして、二種類のテープカセットは検出器15により識別可能になっている。 次に、この印刷装置1の動作を制御する制御部の構成を第3図を用いて説明する。図中、27は、本考案の制御手段を構成するCPUであり、このCPU27には、ROM29とキーボード等の入力部31が接続されている。このROM29は、本考案の記憶手段を構成し、CPU27の動作を制御するプログラムと、幅の広い印刷テープ23に印刷する大きな文字の文字データ及び幅の狭い印刷テープ25に印刷する小さな文字の文字データを記憶している。 また、CPU27には入力部31から入力されたデータ等を記憶するRAM33が接続され、さらに、CPU27には、作動突起13の動作を検出する周知の検出器15、印刷ヘッド駆動回路35及びモータ駆動回路37からそれぞれ接続されている。そして、この印刷ヘッド駆動回路35には、サーマルヘッド17が接続されており、モータ駆動回路37には、モータ11が接続されている。 このように構成される制御部では、幅の広い印刷テープ23を収納したテープカセットが装着されたと検出器15で検出されたときには、CPU27はROM29より大きな文字の文字データを読みだし、そのデータに基づいてサーマルヘッド17を制御する。また、幅の狭い印刷テープ25を収納したテープカセットが装着されたときには、ROM29より小さな文字の文字データを読みだし、そのデータに基づいてサーマルヘッドを制御する。 [考案の効果] 以上説明したことから明かなように、本考案によれば、印刷ヘッドの印刷素子が保持部に装着されるテープカセットのうち広いテープ幅の印刷対象物とほぼ対応して印刷対象物の送り方向に対して直交する向きに配設され、テープカセットが保持部に装着された際、印刷対象物の幅方向における中心と印刷ヘッドの印刷素子の配列方向における中心が一致するので、簡単な構成にて印刷装置の制御部に過大な負荷をかけることなく、保持部に装着されたテープカセットに収納されている印刷対象物のテープ幅に応じて、テープ幅が広い印刷対象物の場合には大きい文字を、狭い印刷対象物の場合には小さい文字を印刷することができる。即ち、印刷対象物のテープ幅に適した文字が印刷可能であり、最適な大きさの文字が自動的に読み出され、印刷対象物に印刷できる。 【図面の簡単な説明】 第1図から第3図は、本考案を具体化した実施例を示すもので、第1図は、本考案の印刷装置の裏面を示す斜視図、第2図(A)は、サーマルヘッドと幅の広い印刷テープを示す斜視図、第2図(B)は、サーマルヘッドと幅の狭い印刷テープを示す斜視図、第3図は、印刷装置の制御部の機構を示すブロック図である。 図中、1は印刷装置、3はテープカセット、13は作動突起、17はサーマルヘッド、21は発熱素子、23、25は印刷テープ、27はCPU、29はROMである。 |
訂正の要旨 |
1.訂正の要旨 実用新案権者が求めている訂正の要旨は、以下のとおりである。 a.実用新案登録請求の範囲の請求項1の「前記印刷対象物のうち広いテープ幅とほぼ対応して、」を「前記印刷対象物のうち広いテープ幅の印刷対象物とほぼ対応して、」に、「印刷対象物の送り方向に対して直行する向き」を「印刷対象物の送り方向に対して直交する向き」に、「いずれの印刷対象物」を「いずれのテープ幅の印刷対象物に、「テープ幅が広い場合には大きい文字、狭い場合には小さい文字」を、「テープ幅が広い印刷対象物の場合には大きい文字、狭い印刷対象物の場合には小さい文字」に訂正する。 b.平成8年10月21日付提出の全文補正明細書の第2頁18行(実用新案登録公報第2頁第3欄25行)の「テープ幅」を「テープ幅の印刷対象物に訂正する。 c.平成8年10月21日付提出の全文補正明細書の第2頁20行(実用新案登録公報第2頁第3欄31行)の「いずれの印刷対象物」を「いずれのテープ幅の印刷対象物」に訂正する。 d.平成8年10月21日付提出の全文補正明細書の第2頁29行(実用新案登録公報第2頁第3欄43行)の「広い場合には大きい文字、狭い場合」を「広い印刷対象物の場合には大きい文字、狭い印刷対象物の場合」に訂正する。 e.平成8年10月21日付提出の全文補正明細書の第5頁18行(実用新案登録公報第3頁第6欄12行)の「テープ幅」を「テープ幅の印刷対象物」に訂正する。 f.平成8年10月21日付提出の全文補正明細書の第5頁23行(実用新案登録公報第3頁第6欄19行?20行)の「広い場合には大きい文字を、狭い場合」を「広い印刷対象物の場合には大きい文字を、狭い印刷対象物の場合」に訂正する。 g.平成8年10月21日付提出の全文補正明細書の第2頁19行(実用新案登録公報第2頁第3欄第29行)の「直行」を「直交」に訂正する。 h.平成8年10月21日付提出の全文補正明細書の第3頁28行(実用新案登録公報第2頁第4欄31行?32行)の「直行」を「直交」に訂正する。 i.平成8年10月21日付提出の全文補正明細書の第5頁19行(実用新案登録公報第3頁第6欄13行)の「直行」を「直交」に訂正する。 |
異議決定日 | 2000-03-28 |
出願番号 | 実願平1-135146 |
審決分類 |
U
1
651・
531-
YA
(B41J)
U 1 651・ 16- YA (B41J) U 1 651・ 121- YA (B41J) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 柴田 和雄 |
特許庁審判長 |
砂川 克 |
特許庁審判官 |
田村 爾 伊波 猛 |
登録日 | 1998-07-24 |
登録番号 | 実用新案登録第2582482号(U2582482) |
権利者 |
ブラザー工業株式会社 愛知県名古屋市瑞穂区苗代町15番1号 |
考案の名称 | 印刷装置 |
代理人 | 山本 尚 |
代理人 | 中嶋 恭久 |
代理人 | 中嶋 恭久 |
代理人 | 山本 尚 |