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審決分類 審判 全部申し立て   B41J
審判 全部申し立て   B41J
審判 全部申し立て   B41J
審判 全部申し立て   B41J
審判 全部申し立て   B41J
管理番号 1020845
異議申立番号 異議1999-71777  
総通号数 14 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-02-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-05-06 
確定日 2000-04-24 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 登録第2584771号「プリンタのヘッドケーブル接続構造」の実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 登録第2584771号の請求項1ないし2に係る実用新案登録を維持する。
理由 [手続の経緯]
本件実用新案登録第2584771号の実用新案登録請求の範囲の請求項1,2に係る考案は、平成4年8月25日に実用新案登録出願され、平成10年9月4日にその実用新案の設定登録がなされ、その後、その実用新案登録について鈴木俊孝より実用新案登録異議の申立がなされ、当審において取消理由通知がなされてその指定期間内である平成11年12月7日に訂正請求がなされ、さらに、当審において訂正拒絶理由通知がなされてその指定期間内である平成12年3月13日に訂正請求書の補正がなされたものである。

[訂正の適否]
【1】訂正請求書に対する補正の適否
平成12年3月13日付け手続補正書による補正は、訂正明細書の実用新案登録請求の範囲及び考案の詳細な説明における「フラットケーブルを筐体に押さえ付けて接触状態に規制するための押さえ板」の固定のための構成に関して、設定登録時の実用新案登録明細書における「嵌合」に対する「設けられ」との訂正を設定登録時の実用新案登録明細書における「嵌合」に戻す補正であって、軽微な瑕疵の補正に相当するものであり、訂正明細書の要旨を変更するものではない。
以上のとおりであるから、上記補正は、特許法等の一部を改正する法律(平成11年法律第41号)附則第15条の規定による改正後の特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号、以下「平成6年改正法」という)附則第9条第2項の規定により準用され、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第131条第2項の規定に適合するので、採用する。

【2】訂正の内容
〔1〕訂正事項a
実用新案登録請求の範囲の請求項1において、「前記フラットケーブルを前記キャリッジの外部から内部に導くキャリッジ側開口部と、」を「前記フラットケーブルを前記キャリッジの内部から外部に導くとともに複数枚のフラットケーブルを接触状態に規制するキャリッジ側開口部と、」と訂正し、「前記筐体側開口部に嵌合し前記フラットケーブルを前記筐体に押さえ付けるための押さえ板と、」を「前記筐体側開口部に嵌合し前記フラットケーブルを前記筐体に押さえ付けて接触状態に規制するための押さえ板と、」と訂正し、「前記複数枚のフラットケーブルの外側ケーブルと内側ケーブルが前記第1の部分と第2の部分では接触し、前記曲転部では接触していない」を「前記複数枚のフラットケーブルにおいてキャリッジ外側面と押さえ板までの外側フラットケーブルの長さをL_(A)とし、内側フラットケーブルの長さをL_(B)としたとき、L_(A)がL_(B)より大きくなるようにすることにより、前記複数枚のフラットケーブルの外側ケーブルと内側ケーブルが前記第1の部分と第2の部分では接触し、前記曲転部では接触していない」と訂正する。

〔2〕訂正事項b
考案の詳細な説明中、段落【0009】中の請求項1に関する記載について、「前記フラットケーブルを前記キャリッジの外部から内部に導くキャリッジ側開口部と、」を「前記フラットケーブルを前記キャリッジの内部から外部に導くとともに複数枚のフラットケーブルを接触状態に規制するキャリッジ側開口部と、」と訂正し、「前記筐体側開口部に嵌合し前記フラットケーブルを前記筐体に押さえ付けるための押さえ板と、」を「前記筐体側開口部に嵌合し前記フラットケーブルを前記筐体に押さえ付けて接触状態に規制するための押さえ板と、」と訂正し、「前記複数枚のフラットケーブルの外側ケーブルと内側ケーブルが前記第1の部分と第2の部分では接触し、前記曲転部では接触していない」を「前記複数枚のフラットケーブルにおいてキャリッジ外側面と押さえ板までの外側フラットケーブルの長さをL_(A)とし、内側フラットケーブルの長さをL_(B)としたとき、L_(A)がL_(B)より大きくなるようにすることにより、前記複数枚のフラットケーブルの外側ケーブルと内側ケーブルが前記第1の部分と第2の部分では接触し、前記曲転部では接触していない」と訂正し、また、当該段落【0009】中の請求項2に関する記載について、「(L_(A))」,「(L_(B))」をそれぞれ「L_(A)」,「L_(B)」と訂正する。

【3】訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
〔1〕訂正事項aについて
当該訂正において、「キャリッジ側開口部」及び「押さえ板」に関する訂正は、訂正前の請求項1及び段落【0009】の「複数枚のフラットケーブルの外側ケーブルと内側ケーブルが第1の部分と第2の部分では接触し、曲転部では接触していない」旨の記載、及び、図1に記載された事項の範囲内において、「キャリッジ側開口部」及び「押さえ板」についての構成を限定したものであり、また、「複数枚のフラットケーブル」に関する訂正は、訂正前の請求項2及び段落【0009】のキャリッジ外側面と押さえ板までの外側フラットケーブルの長さL_(A)と内側フラットケーブルの長さL_(B)との関係を示す記載、段落【0010】?【0013】の記載、並びに、図1に記載した事項の範囲内において、「複数枚のフラットケーブル」の構成を限定したものであって、実用新案登録請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

〔2〕訂正事項bについて
当該訂正は、上記訂正事項aの訂正に伴い、それとの整合を図るために【考案の詳細な説明】中の段落【0009】を訂正するものであって、明りょうでない記載の釈明に相当するものであり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

【4】独立実用新案登録要件
〔1〕実用新案登録請求の範囲の請求項1,2に係る考案
訂正後の実用新案登録請求の範囲の請求項1,2に係る考案は、その実用新案登録請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定される以下のとおりである。
「【請求項1】往復動可能に設置されたキャリッジと、前記キャリッジ上に搭載された印字ヘッドと、前記キャリッジとプラテンとキャリッジステーを収容する筐体と、前記筐体外に設けられた回路基板と、前記回路基板上に設けられた回路基板側コネクタと、前記キャリッジ内に設けられたヘッド側コネクタと、前記ヘッド側コネクタと回路基板側コネクタとを接続する複数枚のフラットケーブルと、を備えたプリンタのヘッドケーブル接続構造であって、前記フラットケーブルを前記キャリッジの内部から外部に導くとともに複数枚のフラットケーブルを接触状態に規制するキャリッジ側開口部と、前記フラットケーブルを前記筐体の内部から外部へ導く筐体側開口部と、前記筐体側開口部に嵌合し前記フラットケーブルを前記筐体に押さえ付けて接触状態に規制するための押さえ板と、を備え、前記フラットケーブルはキャリッジ側開口部に規制されキャリッジ内部から外部へ延びる第1の部分と、筐体に沿って延び押さえ板で押さえられる第2の部分と、第1の部分と第2の部分に挟まれる曲転部とからなり、前記複数枚のフラットケーブルにおいてキャリッジ外側面と押さえ板までの外側フラットケーブルの長さをL_(A)とし、内側フラットケーブルの長さをL_(B)としたとき、L_(A)がL_(B)より大きくなるようにすることにより、前記複数枚のフラットケーブルの外側ケーブルと内側ケーブルが前記第1の部分と第2の部分では接触し、前記曲転部では接触していないことを特徴とするプリンタのヘッドケーブル接続構造。
【請求項2】請求項1記載のプリンタのヘッドケーブル接続構造において、キャリッジ外側面と押さえ板までの外側フラットケーブルの長さをL_(A)とし、内側フラットケーブルの長さをL_(B)としたとき、L_(A)とL_(B)が下記の数式を満足することを特徴とするプリンタのヘッドケーブル接続構造。 2≦L_(A)-L_(B)≦10(単位はmm)」

〔2〕平成11年9月17日付け取消理由通知の取消理由
(1)取消理由1(実用新案法第3条違反)について
1.取消理由1の概要
取消理由1は、刊行物1〔特開平2-265778号公報(異議申立人提出の甲第1号証)〕,刊行物2〔実願昭57-89991号(実開昭58-192053号)のマイクロフィルム(異議申立人提出の甲第2号証)〕,刊行物3〔実願昭59-71400号(実開昭60-182157号)のマイクロフィルム(異議申立人提出の甲第3号証)〕,刊行物4〔実願昭62-79080号(実開昭63-187368号)のマイクロフィルム(異議申立人提出の甲第4号証)〕を提示し、本件考案1,2は、それぞれ、刊行物1に記載された考案であるか、または、刊行物1?4に記載された考案から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件考案1,2についての実用新案登録は、実用新案法第3条の規定に違反してされたものであるというものである。
2.取消理由1についての検討
ア)各刊行物に記載された考案
〈a〉刊行物1〔特開平2-265778号公報〕
当該刊行物には、公報2頁右上欄14行?同頁右下欄6行,第2図の記載を参照すると、「往復動可能に設置されたキャリッジ2と、前記キャリッジ2上に搭載されたプリントヘッド1と、前記キャリッジ2とキャリッジ軸3を少なくとも収容するプリンタ本体と、前記プリンタ本体に設けられた回路基板7と、前記回路基板7上に設けられたフレキシブルフラットケーブル6a、6bの連結構造と、前記キャリッジ2内に設けられたフレキシブルフラットケーブル6a、6bの中継コネク夕5a、5b等の連結構造と、前記キャリッジ2側の連結構造と回路基板7側の連結構造とを接続する複数枚のフレキシブルフラットケーブル6a、6bと、を備えたプリンタのヘッドケーブル接続構造であって、前記フレキシブルフラットケーブル6a、6bを前記キャリッジ2の内部から外部に導き、前記フレキシブルフラットケーブル6a、6bはキャリッジ2の内部から外部へ延びる部分と、プリンタ本体に沿って延びる部分と、前記各部分に挟まれる部分とからなり、前記複数枚のフレキシブルフラットケーブル6a、6bにおいて前記キャリッジ2側の連結構造から回路基板7側の連結構造までの外側フレキシブルフラットケーブル6aの長さを内側フレキシブルフラットケーブル6bの長さより大きくなるようにすることにより、前記複数枚のフレキシブルフラットケーブル6a、6bの外側フレキシブルフラットケーブル6aと内側フレキシブルフラットケーブル6bが前記各部分と各部分に挟まれる部分とで接触していないことを特徴とするプリンタのヘッドケーブル接続構造。」が記載されている。
〈b〉刊行物2〔実願昭57-89991号(実開昭58-192053号)のマイクロフィルム〕
当該刊行物には、L字型スリット11の両端で折って二重にし、その印字手段3との接続部13をキャリッジ2に固定するとともに、その外部回路との接続部14を固定部材4に挟み込んで固定するフレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)1であって、該L字型スリット11における該接続部14側の短いスリット部分によりFFC1の内側となる部分の曲折動作部15の長さをFFC1の外側となる部分の曲折動作部15の長さよりも短くなるように構成することにより、キャリッジ2の往復動作の際、FFC1の内側となる部分の一部に座屈現象が生じないようにして、キャリッジ2の往復動作の繰り返しによるFFC1の損傷を防止する考案が記載されている。
〈c〉刊行物3〔実願昭59-71400号(実開昭60-182157号)のマイクロフィルム〕
当該刊行物には、フイルム状基板1に形成したスリット6上の点線7から二重に折り曲げて2条の細片8,9とし、フイルム状基板1の一端を固定部3に固定し他端をキャリア5に固定してなるフレキシブルケーブルであって、細片8,9の端部に湾曲部10における外側となる細片9と内側となる細片8との弧の長さを調整する折曲調整部12,13を形成することにより、キャリア5の往復動作の際、内側となる細片8に湾曲部10において屈曲部が形成されないようにして、キャリア5の往復動作の繰り返しによるフレキシブルケーブルの損傷を防止する考案が記載されている。
〈d〉刊行物4〔実願昭62-79080号(実開昭63-187368号)のマイクロフィルム〕
当該刊行物には、複数枚のフレキシブルプリント基板5a,5bを重ね、各々の両端を固定部材6a,7a,6b,7bで固定してなる情報機器出力プリンタヘッド等に用いられるフレキシブルプリント基板構成品であって、屈曲時に内側となるフレキシブルプリント基板5bの長さl_(2)を屈曲時に外側となるフレキシブルプリント基板5aの長さl_(1)よりも短くすることにより、該フレキシブルプリント基板構成品を屈曲した際、内側となるフレキシブルプリント基板5bの屈曲部に余分なストレスが発生されないようにして、フレキシブルプリント基板構成品の寿命を向上させる考案が記載されている。
イ)訂正後の実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案(以下、単に「本件考案1」という)と各刊行物に記載された考案との対比
本件考案1と刊行物1に記載された考案とを比較すると、刊行物1に記載された考案の「キャリッジ2」,「プリントヘッド1」,「キャリッジ軸3」,「プリンタ本体」,「回路基板」,「フレキシブルフラットケーブル6a、6b」,「フレキシブルフラットケーブル6a、6bの中継コネクタ5a、5b等の連結構造」,「キャリッジ2の内部から外部へ延びる部分」,「プリンタ本体に沿って延びる部分」,「前記各部分に挟まれる部分」は、本件考案1の「キャリッジ」,「印字ヘッド」,「キャリッジステー」,「筐体」,「回路基板」,「フラットケーブル」,「ヘッド側コネクタ」,「キャリッジ内部から外部へ延びる第1の部分」,「筐体に沿って延びる第2の部分」,「第1の部分と第2の部分に挟まれる曲転部」に、それぞれ対応ないし相当するから、両者は、「往復動可能に設置されたキャリッジと、前記キャリッジ上に搭載された印字ヘッドと、前記キャリッジとキャリッジステーを少なくとも収容する筐体と、前記筐体に設けられた回路基板と、前記回路基板上に設けられたフラットケーブルの連結構造と、前記キャリッジ内に設けられたヘッド側コネクタと、前記キャリッジ側の連結構造と回路基板側の連結構造とを接続する複数枚のフラットケーブルと、を備えたプリンタのヘッドケーブル接続構造であって、前記フラットケーブルを前記キャリッジの内部から外部に導き、前記フラットケーブルはキャリッジ内部から外部へ延びる第1の部分と、筐体に沿って延びる第2の部分と、第1の部分と第2の部分に挟まれる曲転部とからなり、前記複数枚のフラットケーブルにおいて前記キャリッジ側の連結構造から回路基板側の連結構造までの外側フラットケーブル長さを内側フラットケーブルの長さより大きくなるようにすることにより、前記複数枚のフラットケーブルの外側ケーブルと内側ケーブルが少なくとも前記曲転部で接触していないことを特徴とするプリンタのヘッドケーブル接続構造。」の点で一致し、以下の点で相違している。
〈a〉相違点1
本件考案1がキャリッジとキャリッジステー以外にプラテンをも筐体に収容し、また、回路基板の設置位置を筐体外であるとし、さらに、回路基板側の連結構造にコネクタを用いているのに対し、刊行物1に記載された考案はそれらの点が定かでない。
〈b〉相違点2
本件考案1がキャリッジの内部から外部に導くキャリッジ側開口部により接触状態に規制した状態で複数枚のフラットケーブルのキャリッジ側を固定しているのに対し、刊行物1に記載された考案は複数枚のフラットケーブルをキャリッジの内部から外部に導いてはいるが接触状態に規制した状態で固定しているのか否か定かでない。
〈c〉相違点3
本件考案1が筐体の内部から外部へ導く筐体側開口部に嵌合した押さえ板により接触状態に規制した状態で複数枚のフラットケーブルの筐体側を固定しているのに対し、刊行物1に記載された考案は筐体に複数枚のフラットケーブルを筐体の内部から外部へ導く開口部を設けるのか否かも該開口部に押さえ板を嵌合して複数枚のフラットケーブルを接触状態に規制した状態で固定しているのか否かも定かでない。
〈d〉相違点4
本件考案1が複数枚のフラットケーブルの外側ケーブルと内側ケーブルの配設構造を第1の部分と第2の部分では接触し曲転部では接触していないものとするのに対し、刊行物1に記載された考案は第1の部分と第2の部分と曲転部との全領域で接触していない。
ウ)相違点1?4についての判断
〈a〉相違点1について
プリンタがキャリッジやキャリッジステー以外にもプラテンや回路基板を通常具えるものであること、また、回路基板を筐体の内外何れにも設けうること、そして、回路基板の連結構造として一般にコネクタを用いるものであることからみて、当該相違点1に係る「前記キャリッジとプラテンとキャリッジステーを収容する筐体と、前記筐体外に設けられた回路基板と、前記回路基板上に設けられた回路基板側コネクタ」との本件考案1のプリンタの基本構成は、当業者が通常採用する程度の技術的事項であると認められるから、これらの相違点1により本件考案1が刊行物1に記載された考案に比して格別のものであるとはいえない。
〈b〉相違点2?4について
先ず、相違点4について検討すると、本件考案1のように、キャリッジの往復動作の際、内側に配置されているフラットケーブルが撓んで膨らむことを防止してフラットケーブルの損傷を防止するために、外側のフラットケーブルと内側のフラットケーブルとの相対長さを調整することは、刊行物2,3,4に示すように従来から普通に行われている周知の技術であるが、刊行物1に記載された考案においては、複数枚のフラットケーブルは、その全領域で相互に充分に離間した状態に配設されていることから、キャリッジの往復動作により外側のフラットケーブルの影響で内側のフラットケーブルが撓む現象はそもそも生じえないものであり、本件考案1の如くの課題を推考することは困難であるから、フラットケーブルの損傷を防止するために外側のフラットケーブルと内側のフラットケーブルとの相対長さを調整することが刊行物2,3,4に示すように従来から普通に行われている周知の技術であるといっても、刊行物1に記載された考案に直ちにこれらの技術を適用することは当業者といえども想到しえないものと認められ、また、上記相違点4に係る本件考案1の特有な構成を得るための相違点2,3の構成は刊行物2?4の何れにも記載されておらず、また、示唆もされていない。
そして、本件考案1は、上記相違点2?4に係る構成を具備することにより、実用新案登録明細書に記載されたような格別の作用効果を奏するものであるから、本件考案1が、刊行物1に記載された考案であるとも、刊行物1?4に記載された考案から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとも認めることができない。
エ)訂正後の実用新案登録請求の範囲の請求項2に係る考案(以下、単に「本件考案2」という)と各刊行物に記載された考案との対比・判断
本件考案2は、本件考案1における外側フラットケーブルと内側フラットケーブルの長さの差を「2≦L_(A)-L_(B)≦10(単位はmm)」と限定したものであるから、本件考案1が、刊行物1に記載された考案であるとも、刊行物1?4に記載された考案から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとも認めることができない以上、本件考案2も、刊行物1に記載された考案であるとも、刊行物1?4に記載された考案から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとも認めることができない。

(2)取消理由2(実用新案法第3条の2違反)について
1.取消理由2の概要
取消理由2は、先願として、特願平3-343286号〔特開平5-169647号(当該出願の公開公報が異議申立人提出の甲第5号証)〕を提示し、本件考案1,2は、先願の願書に最初に添付した明細書または図面(以下「先願明細書」という)に記載された発明と同一であり、しかも、本件考案1,2の考案者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一でも、本件考案1,2の出願の出願時の出願人が上記先願の出願人と同一でもないから、本件考案1,2に係る実用新案登録は、実用新案法第3条の2の規定に違反してされたものであるというものである。
2.取消理由2についての検討
ア)先願明細書に記載された発明
先願明細書には、明細書の段落【0010】?【0013】,【0041】,【0043】,【0136】,【0191】?【0199】及び図1,5,18?20,35,43,45の記載を参照すると、「往復動可能に設置されたキャリア203と、前記キャリア203上に搭載された記録ヘッド200と、前記キャリア203とリードスクリュー213を少なくとも収容するシャーシ1と、前記シャーシ1に設けられた電気回路部と、前記電気回路部上に設けられたフレキシブルケーブル211の固定側コンタクト部1001cに対応するコンタクト部と、前記キャリア203内に設けられたヘッドコンタクト部227と、前記ヘッドコンタクト部227とフレキシブルケーブル211の固定側コンタクト部1001cに対応するコンタクト部とを接続する一枚のフレキシブルケーブル211と、を備えたプリンタのヘッドケーブル接続構造であって、前記フレキシブルケーブル211を前記キャリア203の内部から外部に導くとともに一枚のフレキシブルケーブル211のフレキシブルケーブル分割部1001d,1001eの移動側1000aを接触状態に規制するキャリア203側開口部と、フレキシブルケーブル211のフレキシブルケーブル分割部1001d,1001eの固定側1000bを固定部1003に固定するための固定部材1004と、を備え、前記フレキシブルケーブル211はキャリア203側開口部に規制されキャリア203内部から外部へ延びる部分と、シャーシ1に沿って延び固定部1003に固定部材1004で固定される部分と、前記各部分に挟まれる部分とからなり、前記一枚のフレキシブルケーブル211においてキャリア203外側面と固定部材1004までの外側となるフレキシブルケーブル分割部1001eの長さを、内側となるフレキシブルケーブル分割部1001dの長さより大きくなるようにすることにより、前記一枚のフレキシブルケーブル211の外側となるフレキシブルケーブル分割部1001eと内側となるフレキシブルケーブル分割部1001dが前記各部分では接触し、前記各部分に挟まれる部分では接触していないことを特徴とするプリンタのヘッドケーブル接続構造。」が記載されている。
イ)本件考案1と先願明細書に記載された発明との対比
本件考案1と先願明細書に記載された発明とを比較すると、先願明細書に記載された発明の「キャリア203」,「記録ヘッド200」,「リードスクリュー213」,「シャーシ1」,「電気回路部」,「フレキシブルケーブル211」,「フレキシブルケーブル211の固定側コンタクト部1001cに対応するコンタクト部」,「ヘッドコンタクト部227」,「キャリア203側開口部に規制されキャリア203内部から外部へ延びる部分」,「シャーシ1に沿って延び固定部1003に固定部材1004で固定される部分」,「前記各部分に挟まれる部分」は、本件考案1の「キャリッジ」,「印字ヘッド」,「キャリッジステー」,「筐体」,「回路基板」,「フラットケーブル」,「回路基板側コネクタ」,「ヘッド側コネクタ」,「キャリッジ側開口部に規制されキャリッジ内部から外部へ延びる第1の部分」,「筐体に沿って延びる第2の部分」,「第1の部分と第2の部分に挟まれる曲転部」に、それぞれ対応ないし相当するから、両者は、「往復動可能に設置されたキャリッジと、前記キャリッジ上に搭載された印字ヘッドと、前記キャリッジとキャリッジステーを少なくとも収容する筐体と、前記筐体に設けられた回路基板と、前記回路基板上に設けられたフラットケーブルの回路基板側コネクタと、前記キャリッジ内に設けられたヘッド側コネクタと、前記ヘッド側コネクタと回路基板側コネクタとを接続するフラットケーブルと、を備えたプリンタのヘッドケーブル接続構造であって、前記フラットケーブルを前記キャリッジの内部から外部に導くとともにフラットケーブルを接触状態に規制するキャリッジ側開口部と、フラットケーブルを固定するための部材と、を備え、前記フラットケーブルはキャリッジ側開口部に規制されキャリッジ内部から外部へ延びる第1の部分と、筐体に沿って延びる第2の部分と、第1の部分と第2の部分に挟まれる曲転部とからなり、前記フラットケーブルにおいてキャリッジ外側面とフラットケーブル固定部分までの外側となるフラットケーブルの長さを、内側となるフラットケーブルの長さより大きくなるようにすることにより、前記フラットケーブルの外側となるフラットケーブルと内側となるフラットケーブルが前記第1の部分と第2の部分では接触し、前記曲転部では接触していないことを特徴とするプリンタのヘッドケーブル接続構造。」の点で一致し、以下の点で相違している。
〈a〉相違点1
本件考案1がキャリッジとキャリッジステー以外にプラテンをも筐体に収容し、また、回路基板の設置位置を筐体外であるとしているのに対し、先願明細書に記載された発明はそれらの点が定かでない。
〈b〉相違点2
本件考案1がフラットケーブルを筐体側開口部を介して筐体の内部から外部へ導くと共に筐体側開口部に設けた押さえ板により接触状態に規制するのに対し、先願明細書に記載された発明はフラットケーブルを固定部1003に対して単に固定部材1004で固定しているだけであり、また、筐体にフラットケーブルを導くための開口部を設けるのか否かも該開口部に押さえ板を嵌合するのか否かも定かでない。
〈c〉相違点3
本件考案1が複数枚のフラットケーブルを内側フラットケーブルと外側フラットケーブルとで長さを異ならせ、それらが外側と内側になるように積層して配設しているのに対し、先願明細書に記載された発明は一枚のフラットケーブルを内側となるフレキシブルケーブル分割部1001dと外側となるフレキシブルケーブル分割部1001eとなるように折り曲げたものであってそもそも長さが同一であり、その配設状態での長さの調整は位置決めピン1003aを挿入するフレキシブルケーブル位置決め穴1001h,1001h’,1001i,1001i’の位置を変えることにより行っている。
ウ)相違点1?3についての判断
〈a〉相違点1について
プリンタがキャリッジやキャリッジステー以外にもプラテンを通常具えるものであること、そして、回路基板を筐体の内外何れにも設けうることからみて、当該相違点1に係る「前記キャリッジとプラテンとキャリッジステーを収容する筐体と、前記筐体外に設けられた回路基板」との本件考案1のプリンタの基本構成は、当業者が通常採用する程度の技術的事項であると認められるから、これらの相違点1により本件考案1が先願明細書に記載された発明に比して格別のものであるとはいえない。
〈b〉相違点2,3について
これらの相違点2,3に係る本件考案1の特有な構成は、先願明細書に示唆されておらず、しかも、周知慣用の技術であるとはいえない。
そして、本件考案1は、上記相違点2,3に係る構成を具備することにより、実用新案登録明細書に記載されたような格別の作用効果を奏するものであるから、本件考案1が先願明細書に記載された発明と同一のものであると認めることができない。
エ)本件考案2と先願明細書に記載された発明との対比・判断
本件考案2は、本件考案1における外側フラットケーブルと内側フラットケーブルの長さの差を「2≦L_(A)-L_(B)≦10(単位はmm)」と限定したものであるから、本件考案1が先願明細書に記載された発明と同一のものであると認めることができない以上、本件考案2も先願明細書に記載された発明と同一のものであると認めることができない。

〔3〕独立実用新案登録要件についてのまとめ
以上のとおりであり、また、他に本件考案1,2の実用新案登録を取り消すべき理由を発見しないから、本件考案1,2は実用新案登録出願の際独立して実用新案登録を受けることができるものである。

【5】訂正の適否のまとめ
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成11年法律第41号)附則第15条の規定による改正後の特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号、以下「平成6年改正法」という)附則第9条第2項の規定により準用され、同附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1,2,3項の規定に適合するので、認める。

[異議申立]
【1】異議申立人の主張
〔1〕異議申立人の主張する異議理由1(実用新案法第3条違反)
異議理由1の概要は、甲第1号証〔特開平2-265778号公報(上記刊行物1)〕,甲第2号証〔実願昭57-89991号(実開昭58-192053号)のマイクロフィルム(上記刊行物2)〕,甲第3号証〔実願昭59-71400号(実開昭60-182157号)のマイクロフィルム(上記刊行物3)〕,甲第4号証〔実願昭62-79080号(実開昭63-187368号)のマイクロフィルム(上記刊行物4)〕を提示し、本件考案1,2は、それぞれ、甲第1号証に記載された考案であるか、または、甲第1?4号証に記載された考案から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものであるから、本件考案1,2についての実用新案登録は、実用新案法第3条の規定に違反してされたものであるというものである。(前記[訂正の適否]の欄、【4】,〔2〕,(1)の「取消理由1(実用新案法第3条違反)」と同様。)

〔2〕異議申立人の主張する異議理由2
異議理由2は、先願として、甲第5号証(特願平3-343286号〔特開平5-169647号(甲第5号証は先願発明の公開公報)(上記先願)〕を提示し、本件考案1,2は、先願の願書に最初に添付した明細書または図面(以下「先願明細書」という)に記載された発明と同一であり、しかも、本件考案1,2の考案者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一でも、本件考案1,2の出願の出願時の出願人が上記先願の出願人と同一でもないから、本件考案1,2についての実用新案登録は、実用新案法第3条の2の規定に違反してされたものであるというものである。(前記[訂正の適否]の欄、【4】,〔2〕,(2)の「取消理由2(実用新案法第3条の2違反)」と同様。)

〔3〕異議申立人の主張する異議理由3
本件考案1,2は、「押さえ板」を「筐体側開口部に嵌合」した構造が明細書及び図面に記載されていないから、明細書の記載に不備があり、実用新案法第5条第4,5項(異議申立書では第3,4項)の規定により実用新案登録を受けることができないものであって、本件考案1,2についての実用新案登録は、実用新案法第5条に規定する要件を満たしていないものに対してされたものであるというものである。

【2】異議申立人の主張についての検討・判断
〔1〕異議理由1について
前記[訂正の適否]の欄、【4】,〔2〕,(1),「2.取消理由1についての検討」の項で述べたとおり、本件考案1,2が、甲第1号証に記載された考案であるとも、甲第1?4号証に記載された考案から当業者がきわめて容易に考案をすることができたものとも認めることができないから、当該異議理由1は採用できない。

〔2〕異議理由2について
前記[訂正の適否]の欄、【4】,〔2〕,(2),「2.取消理由2についての検討」の項で述べたとおり、本件考案1,2が先願発明の公開公報である甲第5号証に記載された発明と同一であると認めることができないから、当該異議理由2は採用できない。

〔3〕異議理由3について
出願当初の明細書及び図面からは、「ケーブル押さえ板29によって框体1(正しくは「筐体1」)上に押さえ付けられている」(段落【0004】参照)との構成、及び、「筐体1」の開口部分において「ケーブル押さえ板29」を何らかの固定手段により固定して「フラットケーブル」を押さえ付けるとの構成が明確に把握でき、そして、そのための固定手段としての「嵌合」手段は明細書の記載からみて自明の事項であると認められるから、「押さえ板」を「筐体側開口部に嵌合」した点の構造が明細書及び図面に詳細に記載されていないからといって、この点により明細書の記載が格別不明りょうであるということができないから、当該異議理由3は採用できない。

【3】異議理由1?3についての結論
以上、述べたとおり、本件考案1,2の実用新案登録が、実用新案法第3条第1項第3号、同法第3条第2項、同法第3条の2第1項、又は、同法第5条第4,5項の規定に違反してされたものであるという、異議申立人の主張は採用できない。

[むすび]
以上のとおりであるから、異議申立ての理由によっては、本件考案1,2についての実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件考案1,2についての実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件考案1,2についての実用新案登録は拒絶の査定をしなければならない実用新案登録出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号、以下「平成6年改正法」という)附則第9条第7項の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第3条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
プリンタのヘッドケーブル接続構造
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 往復動可能に設置されたキャリッジと、前記キャリッジ上に搭載された印字ヘッドと、前記キャリッジとプラテンとキャリッジステーを収容する筐体と、前記筐体外に設けられた回路基板と、前記回路基板上に設けられた回路基板側コネクタと、前記キャリッジ内に設けられたヘッド側コネクタと、前記ヘッド側コネクタと回路基板側コネクタとを接続する複数枚のフラットケーブルと、を備えたプリンタのヘッドケーブル接続構造であって、
前記フラットケーブルを前記キャリッジの内部から外部に導くとともに複数枚のフラットケーブルを接触状態に規制するキャリッジ側開口部と、前記フラットケーブルを前記筐体の内部から外部へ導く筐体側開口部と、前記筐体側開口部に嵌合し前記フラットケーブルを前記筐体に押さえ付けて接触状態に規制するための押さえ板と、を備え、
前記フラットケーブルはキャリッジ側開口部に規制されキャリッジ内部から外部へ延びる第1の部分と、筐体に沿って延び押さえ板で押さえられる第2の部分と、第1の部分と第2の部分に挟まれる曲転部とからなり、前記複数枚のフラットケーブルにおいてキャリッジ外側面と押さえ板までの外側フラットケーブルの長さをL_(A)とし、内側フラットケーブルの長さをL_(B)としたとき L_(A)がL_(B)より大きくなるようにすることにより、前記複数枚のフラットケーブルの外側ケーブルと内側ケーブルが前記第1の部分と第2の部分では接触し、前記曲転部では接触していないことを特徴とするプリンタのヘッドケーブル接続構造。
【請求項2】請求項1記載のプリンタのヘッドケーブル接続構造において、キャリッジ外側面と押さえ板までの外側フラットケーブルの長さをL_(A)とし、内側フラットケーブルの長さをL_(B)としたとき、L_(A)とL_(B)が下記の数式を満足することを特徴とするプリンタのヘッドケーブル接続構造。
2≦L_(A)-L_(B)≦10(単位はmm)
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、例えば、印字装置のキャリッジに搭載された印字ヘッドと、印字装置本体側に固定されたメインPCB(プリントサーキットボード)とを接続するヘッドケーブルに係り、特に、薄板状のフラットケーブルを複数枚積層させた状態で設置されたものにおいて、キャリッジの移動に伴って内側に配置されたフラットケーブルが撓んで膨らんでしまうようなことを防止できるように工夫したものに関する。
【0002】
【従来の技術】
印字装置のキャリッジ及びその周辺は、例えば、図2に示すような構成になっている。まず、印字装置の筐体1があり、この筐体1内には、プラテン3が回転可能に取付けられている。上記プラテン3に対向する位置には、印字ヘッド5が配置されていて、この印字ヘッド5はキャリッジ7に搭載されている。このキャリッジ7は、筐体1内に設置されたキャリッジステー9に沿って、図中左右方向に往復動可能に構成されている。キャリッジ7の往復動に伴って印字ヘッド5も同方向に往復動ずることになる。
【0003】
一方、筐体1にはメインPCB11が固定されていて、このメインPCB11と上記印字ヘッド5とはヘッドケーブル13によって電気的に接続されている。上記ヘッドケーブル13は、薄板状の外側フラットケーブル15と内側フラットケーブル17とを積層させた構成になっている。そして、上記ヘッドケーブル13と印字ヘッド5との接続構造は次のようなものである。まず、印字ヘッド5側より基板19の一部が突出・配置されていて、この基板19には接続具21、23が取付けられている。これら接続具21、23には差込口21a、23aが形成されていて、それら差込口21a、23aに、ヘッドケーブル13の外側フラットケーブル15と内側フラットケーブル17の端部が図示しない補強板と共に差し込まれており、それによって電気的に接続されている。
【0004】
又、ヘッドケーブル13とメインPCB11側との接続構造は次のようなものである。メインPCB11側には接続具25、27が取付けられていて、ヘッドケーブル13の外側フラットケーブル15と、内側フラットケーブル17の端部が、これら接続具25、27の差込口25a、27aに図示しない補強板と共に差し込まれており、それによって、電気的に接続されている。又、メインPCB11側の外側フラットケーブル15と、内側フラットケーブル17は、ケーブル押さえ板29によって筐体1上に押さえ付けられている。又、ヘッドケーブル13の外側フラットケーブル15の変形可能な部分の長さ(キャリッジ7の外側面と押さえ板29の端面までの長さ、L_(A))と、内側フラットケーブル17の変形可能な部分の長さ(キャリッジ7の外側面と押さえ板29の端面までの長さ、L_(B))とは、略等しい値に設定されている。
【0005】
【考案が解決しようとする課題】
上記従来の構成によると次のような問題があった。既に説明したように、ヘッドケーブル13の外側フラットケーブル15の変形可能な部分の長さ(L_(A))と、内側フラットケーブル17の変形可能な部分の長さ(L_(B))とは、略等しい値に設定されている。それが設計通り略等しい値で取付けられていれば、それ程大きな問題にはならないが、寸法のバラツキ等に起因して、フラットケーブル15の長さ(L_(A))と、内側フラットケーブル17の長さ(L_(B))とが、次の式(1)に示すような関係になった場合には、図2中破線で示すように、内側フラットケーブル17が撓んで膨らんでしまうことがある。つまり、内側フラットケーブル17の場合には、外側に逃げることができないので、内側に膨らむことになってしまう。
L_(A)<L_(B)???(I)
このように、内側フラットケーブル17が撓んで膨らんでしまった場合には、キャリッジ7と衝突してキャリッジ7の往復動作を損なってしまったり、同時に、内側フラットケーブル17がキャリッジ7との衝突により損傷してしまうという問題があった。
【0006】
尚、内側フラットケーブル17が撓んで膨らむケースとしては、図2に示すようなケース以外に、図3及び図4に示すようなケースもある。図3に示す場合は、キャリッジ7が図中右側に往動して次に左側に復動しょうとした場合に、その左側位置において、内側フラットケーブル17が撓んで膨らんでしまったケースである。この場合には、キャリッジ7のそれ以上の復動が阻害されるとともに、内側フラットケーブル17の損傷が懸念される。又、図4に示す場合には、キャリッジ7が往動しょうとしたときに、その右側位置において、内側フラットケーブル17が撓んで膨らんでしまったケースである。この場合には、キャリッジ7のそれ以上の往動が阻害されるとともに、内側フラットケーブル17の損傷が懸念される。
【0007】
又、上記従来の構成では、外側、内側フラットケーブル15、17が略等しい長さになっている場合、両者が共に同じ経路に位置しようとする為、外側、内側フラットケーブル15、17の対接する面が強く圧接されてしまい、両者が貼付いた状態となる。この様な状態でキャリッジ7が移動すると、外側、内側フラットケーブル15、17が反転して曲がる部分(以後、「曲転部」という)がキャリッジ7の移動に伴って移動しようとするが、外側、内側フラットケーブル15、17が貼付いた状態にあるため、外側、内側フラットケーブル15、17が硬くなったような状態となり、曲転部がスムーズに移動することができず、結果的にキャリッジ7の走行が不安定となったり、圧接状態で無理に曲転部が移動されることにより、外側、内側フラットケーブル15、17が強く擦れあって、外側、内側フラットケーブル15、17の被覆部分が傷付いてしまうという不具合があった。
【0008】
本考案はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、内側に配置されているフラットケーブルが撓んで膨らむ現象をなくすことにより、キャリッジの円滑な往復動を保障するとともに、フラットケーブル自身の損傷を防止することを可能にするプリンタのヘッドケーブル接続構造を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するべく本願考案の請求項1によるプリンタのヘッドケーブル接続構造は、往復動可能に設置されたキャリッジと、前記キャリッジ上に搭載された印字ヘッドと、前記キャリッジとプラテンとキャリッジステーを収容する筐体と、前記筐体外に設けられた回路基板と、前記回路基板上に設けられた回路基板側コネクタと、前記キャリッジ内に設けられたヘッド側コネクタと、前記ヘッド側コネクタと回路基板側コネクタとを接続する複数枚のフラットケーブルと、を備えたプリンタのヘッドケーブル接続構造であって、前記フラットケーブルを前記キャリッジの内部から外部に導くとともに複数枚のフラットケーブルを接触状態に規制するキャリッジ側開口部と、前記フラットケーブルを前記筐体の内部から外部へ導く筐体側開口部と、前記筐体側開口部に嵌合し前記フラットケーブルを前記筐体に押さえ付けて接触状態に規制するための押さえ板と、を備え、前記フラットケーブルはキャリッジ側開口部に規制されキャリッジ内部から外部へ延びる第1の部分と、筐体に沿って延び押さえ板で押さえられる第2の部分と、第1の部分と第2の部分に挟まれる曲転部とからなり、前記複数枚のフラットケーブルにおいてキャリッジ外側面と押え板までの外側フラットケーブルの長さをL_(A)とし、内側フラットケーブルの長さをL_(B)としたとき、L_(A)がL_(B)より大きくなるようにすることにより、前記複数枚のフラットケーブルの外側ケーブルと内側ケーブルが前記第1の部分と第2の部分では接触し、前記曲転部では接触していないことを特徴とするものである。
又、請求項2によるプリンタのヘッドケーブル接続構造は、請求項1記載のプリンタのヘッドケーブル接続構造において、キャリッジ外側面と押さえ板までの外側フラットケーブルの長さをL_(A)とし、内側フラットケーブルの長さをL_(B)としたとき、L_(A)とL_(B)が下記の数式を満足することを特徴とするものである。
2≦L_(A)-L_(B)≦10(単位はmm)
【0010】
【作用】
本考案の場合には、ヘッドケーブルを構成する複数枚のフラットケーブルの長さを内側に向かって順次短くするようにしている。よって、キャリッジが往復動する際に、内側に配置されているフラットケーブルが撓んで膨らんでしまうようなことを防止することができる。又、フラットケーブルを損傷させることなく使用することができる。
【0011】
【実施例】
以下、図1を参照して本考案の一実施例を説明する。
尚、従来と同一部分には同一符号を付して示しその説明は省略する。本実施例の場合には、ヘッドケーブル13の外側フラットケーブル15の変形可能な部分の長さ(キャリッジ7の外側面と押さえ板29の端面までの長さ、L_(A))と、内側フラットケーブル17の変形可能な部分の長さ(キャリッジ7の外側面と押さえ板29の端面までの長さ、L_(B))との間に、次の式(II)に示すような関係が設定されている。
L_(A)>L_(B)???(II)
具体的にどの程度長さに差を設けるかであるが、少なくとも、寸法のバラツキによって上記式(II)の関係が不成立にならないような値であることが必要である。本実施例の場合には、2から10mmの間で適当な値を設定してある。その他の構成は従来と同じであり、その説明は省略する。
【0012】
上記構成によると、次のような作用・効果を奏することができる。まず、ヘッドケーブル13の外側フラットケーブル15の変形可能な部分の長さ(L_(A))と、内側フラットケーブル17の変形可能な部分の長さ(L_(B))との間に、前記式(II)に示すような関係が設定されていて、外側フラットケーブル15の変形可能な部分の長さ(L_(A))の方が内側フラットケーブル17の変形可能な部分の長さ(L_(B))より長くなっている。よって、キャリッジ7が往復動する際に、内側フラットケーブル17が撓んで膨らむような事態を防止することができる。それによって、キャリッジ7の円滑な往復動が保障されるとともに、キャリッジ7との衝突による内側フラットケーブル17の損傷を防止することができる。又、同時に、外側フラットケーブル15と内側フラットケーブル17との間に、僅かに隙間が生じることになり、曲転部において外側フラットケーブル15と内側フラットケーブル17が貼付いた状態が無くなるので、外側フラットケーブル15と内側フラットケーブル17の無理な擦れによる損傷やキャリッジ7の不安定な走行を回避することができる。
【0013】
尚、本考案は前記一実施例に限定されるものではない。前記一実施例では、外側フラットケーブル15と内側フラットケーブル17の二枚のフラットケーブルよりなるヘッドケーブルを例にとって示したが、3枚以上のフラットケーブルを積層して構成されたヘッドケーブルに対しても同様に適用できる。この場合には、内側に配置されるフラットケーブルの長さを順次所定量ずつ短くしていくことになる。又、各フラットケーブルの幅は同じである必要はなく、幅の異なるフラットケーブルを積層して構成されたヘッドケーブルに対しても同様に適用できる。
【0014】
【考案の効果】
以上詳述したように本考案によるプリンタのヘッドケーブル接続構造によると、ヘッドケーブルを構成する複数枚のフラットケーブルの長さを内側に向かって順次短くするようにしている。よって、キャリッジが往復動する際に、内側に配置されているフラットケーブルが撓んで膨らんでしまうようなことを防止することができる。それによって、キャリッジと膨らんだフラットケーブルとの衝突もなくなり、キャリッジの往復動を円滑なものとすることができる。又、フラットケーブルの損傷を防止することができ、寿命の延長を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本考案の一実施例を示す図でプリンタのヘッドケーブル接続構造及びその周辺の構成を示す図である。
【図2】
従来例を示す図でプリンタのヘッドケーブル接続構造及びその周辺の構成を示す図である。
【図3】
従来例を示す図でプリンタのヘッドケーブル接続構造及びその周辺の構成を示す図である。
【図4】
従来例を示す図でプリンタのヘッドケーブル接続構造及びその周辺の構成を示す図である。
【符号の説明】
5 印字ヘッド
7 キャリッジ
11 メインPCB
13 ヘッドケーブル
15 外側フラットケーブル
17 内側フラットケーブル
訂正の要旨 訂正の要旨
〔1〕訂正事項a
実用新案登録請求の範囲の請求項1において、「前記フラットケーブルを前記キャリッジの外部から内部に導くキャリッジ側開口部と、」を「前記フラットケーブルを前記キャリッジの内部から外部に導くとともに複数枚のフラットケーブルを接触状態に規制するキャリッジ側開口部と、」と訂正し、「前記筐体側開口部に嵌合し前記フラットケーブルを前記筐体に押さえ付けるための押さえ板と、」を「前記筐体側開口部に嵌合し前記フラットケーブルを前記筐体に押さえ付けて接触状態に規制するための押さえ板と、」と訂正し、「前記複数枚のフラットケーブルの外側ケーブルと内側ケーブルが前記第1の部分と第2の部分では接触し、前記曲転部では接触していない」を「前記複数枚のフラットケーブルにおいてキャリッジ外側面と押さえ板までの外側フラットケーブルの長さをL_(A)とし、内側フラットケーブルの長さをL_(B)としたとき、L_(A)がL_(B)より大きくなるようにすることにより、前記複数枚のフラットケーブルの外側ケーブルと内側ケーブルが前記第1の部分と第2の部分では接触し、前記曲転部では接触していない」と訂正する。
〔2〕訂正事項b
考案の詳細な説明中、段落【0009】中の請求項1に関する記載について、「前記フラットケーブルを前記キャリッジの外部から内部に導くキャリッジ側開口部と、」を「前記フラットケーブルを前記キャリッジの内部から外部に導くとともに複数枚のフラットケーブルを接触状態に規制するキャリッジ側開口部と、」と訂正し、「前記筐体側開口部に嵌合し前記フラットケーブルを前記筐体に押さえ付けるための押さえ板と、」を「前記筐体側開口部に嵌合し前記フラットケーブルを前記筐体に押さえ付けて接触状態に規制するための押さえ板と、」と訂正し、「前記複数枚のフラットケーブルの外側ケーブルと内側ケーブルが前記第1の部分と第2の部分では接触し、前記曲転部では接触していない」を「前記複数枚のフラットケーブルにおいてキャリッジ外側面と押さえ板までの外側フラットケーブルの長さをL_(A)とし、内側フラットケーブルの長さをL_(B)としたとき、L_(A)がL_(B)より大きくなるようにすることにより、前記複数枚のフラットケーブルの外側ケーブルと内側ケーブルが前記第1の部分と第2の部分では接触し、前記曲転部では接触していない」と訂正し、また、当該段落【0009】中の請求項2に関する記載について、「(L_(A))」,「(L_(B))」をそれぞれ「L_(A)」,「L_(B)」と訂正する。
異議決定日 2000-03-31 
出願番号 実願平4-65044 
審決分類 U 1 651・ 121- YA (B41J)
U 1 651・ 16- YA (B41J)
U 1 651・ 536- YA (B41J)
U 1 651・ 113- YA (B41J)
U 1 651・ 537- YA (B41J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 上田 正樹  
特許庁審判長 小沢 和英
特許庁審判官 信田 昌男
伊波 猛
登録日 1998-09-04 
登録番号 実用新案登録第2584771号(U2584771) 
権利者 スター精密株式会社
静岡県静岡市中吉田20番10号
考案の名称 プリンタのヘッドケーブル接続構造  
代理人 島野 美伊智  
代理人 島野 美伊智  
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