• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て   A01D
審判 全部申し立て   A01D
審判 全部申し立て   A01D
管理番号 1020848
異議申立番号 異議1999-72071  
総通号数 14 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 実用新案決定公報 
発行日 2001-02-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-05-26 
確定日 2000-05-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 実用新案登録第2586350号「農産物収穫機」の請求項1ないし2に係る実用新案登録に対する実用新案登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。   
結論 訂正を認める。 実用新案登録第2586350号の請求項1に係る実用新案登録を維持する。
理由 1.手続の経緯
実用新案登録第2586350号の請求項1ないし2に係る考案についての出願は、平成5年2月18日に実用新案登録出願されたものであって、平成10年10月2日にその実用新案登録の設定登録がなされ、その後、松山株式会社、井関農機株式会社より実用新案登録異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年12月13日に訂正請求がされたものである。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
実用新案登録権者が求めている訂正の内容は以下のとおりである。
a) 明細書の実用新案登録請求の範囲の記載
「【請求項1】 機体前部に、圃場に植生している農産物を機体の進行と共に収穫し、機体の後方に向け搬送するようにした収穫部を設け、この収穫部の後方に、収穫された農産物を収容するコンテナを載置するためのコンテナ載置部を設けた農産物収穫機において、上記コンテナ載置部は、コンテナを載置するフォークを機体外側に向け突出させ、このフォークを、昇降可能、かつ基端部を支点にして水平方向に張り出す位置と機体側に折り畳まれる位置とに回動可能に構成したことを特徴とする農産物収穫機。
【請求項2】フォークを、機体に対して斜め方向に昇降可能に構成したことを特徴とする請求項1記載の農産物収穫機。」を、
「【請求項1】機体前部に、圃場に植生している農産物を機体の進行と共に収穫し、機体の後方に向け搬送するようにした収穫部を設け、この収穫部の後方に、収穫された農産物を収容するコンテナを載置するためのコンテナ載置部を設けた農産物収穫機において、上記コンテナ載置部は、コンテナを載置するフォークを機体後方に向け突出させ、このフォークを、昇降可能、かつ基端部を支点にして水平方向に張り出す位置と機体側に折り畳まれる位置とに回動可能に構成すると共に、該フォークを、機体に対して前傾状に傾斜して昇降可能としたことを特徴とする農産物収穫機。」と訂正する。
b) 明細書の段落【0004】、【0005】、【0027】の記載
「【0004】【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために本考案は、
(1)機体前部に、圃場に植生している農産物を機体の進行と共に収穫し、機体の後方に向け搬送するようにした収穫部を設け、この収穫部の後方に、収穫された農産物を収容するコンテナを載置するためのコンテナ載置部を設けた農産物収穫機において、上記コンテナ載置部は、コンテナを載置するフォークを機体外側に向け突出させ、このフォークを、昇降可能、かつ基端部を支点にして水平方向に張り出す位置と機体側に折り畳まれる位置とに回動可能に構成したこと、
(2)フォークを、機体に対して斜め方向に昇降可能に構成したこと、をそれぞれ特徴とする。」、
「【0005】【作用】上記の構成によって本考案の農産物収穫機は、次の作用をする。
(1) コンテナ載置部は、コンテナを載置するフォークを機体外側に向け突出させ、このフォークを、昇降可能、かつ基端部を支点にして水平方向に張り出す位置と機体側に折り畳まれる位置とに回動可能にしたので、収穫機を使用しないときはフォークを折り畳むことにより邪魔にならない。また、フォークを昇降させることにより、収穫した農産物をコンテナに収容する距離を調節する。
(2) フォークを、機体に対して斜め方向に昇降可能にしたので、収穫した農産物をコンテナに収容する距離の調節がスムーズに行われる。」、「【0027】【考案の効果】以上説明したように本考案の農産物収穫機によれば、以下の効果を奏する。
(1) コンテナ載置部は、コンテナを載置するフォークを機体外側に向け突出させ、このフォークを、昇降可能、かつ基端部を支点にして水平方向に張り出す位置と機体側に折り畳まれる位置とに回動可能にしたので、収穫機を使用しないときはフォークを折り畳んでおくことにより、機体がコンパクトになり、邪魔になることがない。また、フォークを昇降させることにより、収穫した農産物をコンテナに収容する距離を調節し、農産物の損傷を防止することができる。
(2) フォークを、機体に対して斜め方向に昇降可能にしたので、収穫した農産物をコンテナに収容する距離の調節がよりスムーズに行われ、農産物の損傷を防止することができる。また、機体のバランスを良好に保持することができる。」を、
「【0004】【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために本考案は、機体前部に、圃場に植生している農産物を機体の進行と共に収穫し、機体の後方に向け搬送するようにした収穫部を設け、この収穫部の後方に、収穫された農産物を収容するコンテナを載置するためのコンテナ載置部を設けた農産物収穫機において、
上記コンテナ載置部は、コンテナを載置するフォークを機体後方に向け突出させ、このフォークを、昇降可能、かつ基端部を支点にして水平方向に張り出す位置と機体側に折り畳まれる位置とに回動可能に構成すると共に、該フォークを、機体に対して前傾状に傾斜して昇降可能としたことを特徴とする。」、
「【0005】【作用】上記の構成によって本考案の農産物収穫機は、次の作用をする。
コンテナ載置部は、コンテナを載置するフォークを機体外側に向け突出させ、このフォークを、昇降可能、かつ基端部を支点にして水平方向に張り出す位置と機体側に折り畳まれる位置とに回動可能にしたので、収穫機を使用しないときはフォークを折り畳むことにより邪魔にならない。また、フォークを昇降させることにより、収穫した農産物をコンテナに収容する距離を調節する。さらに、フォークを、機体に対して前傾状に傾斜させて昇降可能としたので、収穫した農産物をコンテナに収容する距離の調節がスムーズに行われる。」、
「【0027】【考案の効果】以上説明したように本考案の農産物収穫機によれば、コンテナ載置部は、コンテナを載置するフォークを機体後方に向け突出させ、このフォークを、昇降可能、かつ基端部を支点にして水平方向に張り出す位置と機体側に折り畳まれる位置とに回動可能にしたので、収穫機を使用しないときはフォークを折り畳んでおくことにより、機体がコンパクトになり、邪魔になることがない。また、フォークを昇降させることにより、収穫した農産物をコンテナに収容する距離を調節し、農産物の損傷を防止することができる。さらに、フォークを、機体に対して前傾状に傾斜させて昇降可能としたので、収穫した農産物をコンテナに収容する距離の調節がよりスムーズに行われ、農産物の損傷を防止することができる。また、機体のバランスを良好に保持することができる。」と訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、拡張・変更の存否
上記(1)a)の訂正については、訂正前の実用新案登録請求の範囲の請求項1における「機体外側」を「機体後方」と限定し、請求項2における「斜め方向に」を「前傾状に傾斜して」と訂正し、訂正前の実用新案登録請求の範囲の請求項1に請求項2を併合したものである。そして、実用新案登録請求の範囲の記載を訂正する、上記(1)a)の構成は、実用新案登録査定時の明細書段落【0016】の「コンテナ載置部10は、2本のフォークからなる載置台が、切断台8の後方に前傾状に設けられた左右一対のチャンネル材からなる傾斜フレーム42に、図示しないがローラ、チェーンを介して油圧シリンダ43に連繋され、油圧シリンダ43の伸縮作動により昇降可能に支持されリフト装置を構成している。」の記載および【図2】から、上記明細書に記載されていることは明らかであり、(1)a)の訂正は実用新案登録請求の範囲の減縮および明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。また、上記(1)b)の訂正は、考案の詳細な説明の記載を訂正後の実用新案登録請求の範囲の記載と整合させるものであるから、(1)b)の訂正は明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
したがって、上記(1)a)及びb)の訂正は、願書に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内においてするものであって新規事項を追加するものでなく、かつ、実質上実用新案登録請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)独立要件
(訂正明細書の考案)
訂正明細書の実用新案登録請求の範囲の請求項1に係る考案(以下、「訂正考案」という。)は、訂正明細書における実用新案登録請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである((1)a)参照。)。
(引用刊行物記載の考案)
当審において通知した取消理由で引用した刊行物1(実願平3-573号(実開平4-94930号)のマイクロフィルム)には、「1は収穫機本体で、この収穫機本体1は、主フレーム2の下側部にクローラ3を備えているとともに、前記主フレーム2の上部には収穫物を後方に向って搬送しながら収穫物の茎葉を除去処理する茎葉処理装置4を備えている。? つぎに、前記主フレーム2の前端部から前方部には収穫物を掘取って搬送する掘取搬送装置6が設けられている。この掘取搬送装置6は、前部から後方の主フレーム2に向って順次、接地輪7、掘起体8、第1のコンベヤ9、第2のコンベヤ10及び第2のコンベヤ10の搬出端部から前記茎葉処理装置4に収穫物を案内するシュート11を連設して構成されている。? つぎに、前記主フレーム2の後端部から後方部には収穫物積込装置12が設けられている。この収穫物積込装置12は、収穫物を持上げる持上げコンベヤ装置13とコンテナ14を昇降動する昇降装置15とを備えて構成されている。」(第6頁第13?28行)、「また前記昇降装置15は、?連結支持されている。?この荷受台35は、?この左右部の垂直状部37は上下部の複数の横杆38にて連結支持されている。そして、この左右部の垂直状部37及びこの垂直状部37の下端部から後方に突出された左右部のフオーク状の水平状部39にて前記コンテナ14を支持するようになっている。?そして、この第1のシリンダー装置42のピストンロッド43の伸縮により荷受台35を有する昇降マスト30が固定マスト26にそって昇降動されるようになっている。」(第7頁第14行?第8頁第8行)、「さらに前記荷受台35の?軸支されている。そして、この第2のシリンダー装置49のピストンロッド50の伸縮により、昇降マスト30の荷受台35が支軸33を中心として上下方向に回動されるようになっている。」(第8頁第10?16行)、「そして、クローラ3の駆動回行により、収穫機が進行されるとともに、掘起体8により圃場の茎葉を有する収穫物が順次掘起され、この各収穫物は、図2時計方向に駆動回行される第1のコンベヤ9から第2のコンベヤ10に順次搬送搬入され、この第2のコンベヤ10の搬出端部からシュート11を介してさらに茎藁処理装置4に順次搬入される。この茎葉処理装置4に搬入された各収穫物は、この茎葉処理装置4によって搬送されながら収穫物と茎葉に分離処理され、収穫物は、搬出端部から図2時計方向に駆動回行される持上げコンベヤ装置13に順次搬入される。そして、この各収穫物は無端回行体24の係止横杆25に係止されて持上げられ、搬出端部からシュート53を介してコンテナ14内に順次搬入収容される。この場合コンテナ14はシュート53を挿入した状態で傾斜支持されているので、収穫物の収容落差が小さく、収穫物を損傷することなく収容される。そして、傾斜状態でのコンテナ14内に所定量の収穫物が収容されたところで、第2のシリンダー装置49を作動してこのピストンロッド50を収縮すると、コンテナ14を載置した荷受台35は支軸33を中心として図2時計方向に下降回動され、コンテナ14内に収穫物を収容できる状態で第2のシリンダー装置49の作動を停止する。
【0022】したがって第2のシリンダー装置49は、コンテナ14内に対する収穫物の収容状態に応じて順次下降回動することにより、コンテナ14内には収穫物の収容落差を小さくして収穫物を損傷することなく順次収容される。
【0023】つぎに、収穫物を収容したコンテナ14を積下す場合には、第1のシリンダー装置42を作動してそのピストンロッド43を収縮することにより、コンテナ14を載置した荷受台35を有する左右部の昇降マスト30は左右部の固定マスト26にそって下降され、コンテナ14が所定の積下し位置に下降されたところで第2のシリンダー装置49の作動を停止する。そしてコンテナ14を荷受台35から積下す。
【0024】前記コンテナ14内に対する収穫物の収容及びコンテナ14の下降に際し、コンテナ14を載置した荷受台35を有する左右の昇降マスト30は、持上げコンベヤ装置13の左右のコンベヤフレーム16の外側部に立設した左右の固定マスト26にそって昇降され、コンテナ14は収穫機本体1側に可及的に近づけられた状態で支持されているので、収容した収穫物によってコンテナ14の重量が増大しても収穫機本体1の前後の重量バランスが確保され、したがって収穫作業が安全に行なわれる。」(第9頁第4行?第10頁第6行)の記載からみて、「収穫機本体1前部に、圃場に植生している農産物を収穫機本体1の進行と共に収穫し、収穫機本体1の後方に向け搬送するようにした収穫部(堀取搬送装置6、茎葉処理装置4、収穫物積込装置12)を設け、この収穫部(6、4、12)の後方に、収穫された農産物を収容するコンテナ14を載置するための荷受台5を設けた農産物収穫機において、上記コンテナ載置部35は、コンテナ14を載置するフオーク状の水平部39を収穫機本体1後方に向け突出させ、このフオーク状の水平部39を、昇降可能に構成した農産物収穫機」が記載されている。
刊行物2(実願昭52-22993号(実開昭53-117428号)のマイクロフィルム)には、「機体外側方に突出する案内部(9)を介して、収穫物を機体外側方に向けて案内すべく構成するとともに、前記案内部(9)からの収穫物を収納する容器(10)を、前記案内部(9)の下部に設けた受台(11)にて載置すべく構成してある移動収穫機において、前記受台(11)を上方に向けて折り込み格納可能に構成するとともに、前記受台(11)には、格納時に前記案内部(9)を係入し得る空間(B)を形成してあることを特徴とする移動収穫機。」(実用新案登録請求の範囲)、「この受台(11)は、?機枠から連設された支持片(12)、(12)に対して、受台(11)から上方に向って連設されたアーム(11a)、(11a)が前後方向軸心周りに回動自在に枢支連結されており、?収納容器(10)を載置支持する姿勢(第3図参照)と、上方に折り込まれ、?格納姿勢(第4図参照)とに切換自在に構成されている。」(第4頁第18行?第5頁第9行)の記載からみて、「機体前部に、圃場に植生している農産物を機体の進行と共に収穫し、機体の後方に向け搬送するようにした前処理部・後処理部を設け、この前処理部・後処理部の後方に、収穫された農産物を収容する収納容器(10)を載置するための受台(11)を設けた移動収穫機において、 上記受台(11)は、収納容器(10)を載置するアーム(11a)を機体外側に向け突出させ、このアーム(11a)を、支持片(12)の枢支部を支点にして水平方向に張り出す位置と機体側に折り畳まれる位置とに回動可能に構成した移動収穫機」が記載されている。
刊行物3(実願昭56-58883号(実開昭57-174494号)のマイクロフィルム)には、「フオークリフトトラックの前部に突出樹立せしめたマストに沿って昇降自在に設けたフォークに於て荷役を行う水平部とマストに沿う垂直部との屈曲部にて軸を設けてフォークの水平部を折畳自在になしたフオークリフトトラックのフォーク。」(実用新案登録請求の範囲)、「図に於て1はフオークリフトトラックの本体、2はこの本体1の前部に突出樹立せしめたマストでこれは二又は三段以上となり伸縮せしめこのマストに具備したフオーク3を昇降せしめるか、又は樹立したマストに沿ってフオークを昇降せしめるものである。このフオークは全体がL字形をしており、その荷物の下に挿入するようになした水平部3aとフィンカバー、リフトブラケット等を具備した垂直部3bとの屈曲部に於て水平部が折り畳まれるように水平部、垂直部を軸4にて枢着する。この折畳方向は水平部3aが水平状態より垂直部に沿うまでの角度に傾起するが水平位置よりも降下しないように即ち予じめ定められたL字形よりさらに水平部、垂直部のなす角度が大きくならないように規制される。そしてこの軸4は望ましくは水平部の後端で垂直部の背面位置となるようにし、両部分の枢着部が荷役作業時支障のないようになすものである。」(第2頁第15行?第3頁第12行)、「而して上述の如く形成するフォークリフトトラックに於ては空で走行及び旋回する時あるいは静置して保管する時等フォーク水平部を上方に折り畳むことによりフオークが先方に長く突出しないため走行あるいは旋回時安全であると共に場所をとらず小廻りがきき狭小な作業場でも容易に荷役作業が行える等の利点を有する。」(第3頁第20行?第4頁第6行)、第1図の記載からみて、「フォーク3を昇降可能、かつ基端部を支点にして水平方向に張り出す位置と本体2側に折り畳まれる位置とに回動可能に構成したフォークリフト」が記載されている。
(対比・判断)
訂正考案と刊行物1乃至3に記載された考案とを対比すると、刊行物1乃至3のいずれにも、訂正考案を特定するための事項である、「フォークを、機体に対して前傾状に傾斜して昇降可能としたこと」が記載されておらず、また、これを示唆する記載もない。そして、当該事項により、訂正考案は、「収穫した農産物をコンテナに収容する距離の調節がよりスムーズに行われ、農産物の損傷を防止することができる。また、機体のバランスを良好に保持することができる」という明細書記載の顕著な効果を奏するものである。
したがって、訂正考案は、刊行物1乃至刊行物3に記載された考案から当業者がきわめて容易に考案できたものではないので、実用新案登録の際独立して実用新案登録を受けることができないものとはいえない。
(4)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第9条第2項の規定において準用する特許法第120条の4第3項で準用する第126条第1乃至3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.実用新案登録異議の申立てについて
(1)申立ての理由の概要
申立人松山株式会社は、本件請求項1乃至2に係る考案についての実用新案登録に対して、証拠として甲第1号証(特開平5-91811号公報)、甲第2号証(実願昭52-142258号(実開昭54-68724号)のマイクロフィルム)、甲第3号証(特開平1-256314号公報)、甲第4号証(実開平5-1794号公報)、甲第5号証(実公平2-24413号公報)、甲第6号証(実願昭51-76154号(実開昭52-167142号)のマイクロフィルム)を提出し、本件請求項1乃至2に係る考案の実用新案登録は、実用新案法第3条の2の規定に違反してなされたものであり、同法第3条第1項第3号の規定に違反してなされ、または、同法第3条第2項の規定に違反してなされたものであるので取り消すべき旨主張している。
申立人井関農機株式会社は、本件請求項1乃至2に係る考案についての実用新案登録に対して、証拠として甲第1号証(実願平3-573号(実開平4-94930号)のマイクロフィルム)、甲第2号証の1(実願昭57-98077号(実開昭59-1638号)のマイクロフィルム)、甲第2号証の2(実願昭56-58883号(実開昭57-174494号)のマイクロフィルム)、甲第2号証の3(実願昭56-58884号(実開昭57-174495号)のマイクロフィルム)、甲第2号証の4(実願昭57-139585号(実開昭59-43499号)のマイクロフィルム)、甲第3号証の1(実願昭56-162758号(実開昭58-67894号)のマイクロフィルム)、甲第3号証の2(実願昭55-133699号(実開昭57-56689号)のマイクロフィルム)を提出し、本件請求項1乃至2に係る考案の実用新案登録は、実用新案法第3条第2項の規定に違反してなされたものであるので取り消すべき旨主張している。
(2)本件考案
本件考案については、上記2(3)(訂正明細書の考案)に記載されたとおりである。
(3)申立人が提出した甲号各証記載の考案
申立人松山株式会社が提出した甲第1号証(特開平5-91811号公報)には、第2頁第2欄第25?33行(段落【0006】)、第3頁第3欄第48行?第4欄第2行(段落【0012】)、第3頁第4欄第49行?第4頁第5欄第26行(段落【0016】、【0017】、【0018】)、第5頁第7欄第21?40行(段落【0029】、【0030】)、第1図、第5図の記載からみて、「機体前部に、圃場に植生している農産物を機体の進行と共に収穫し、機体の後方に向け搬送するようにした堀起体、コンベヤ、茎葉処理装置4、持上げコンベヤ19を順次設け、この持上げコンベヤ19の後方に、収穫された農産物を収容するコンテナ35を載置するための荷受台30を設けた農産物収穫機において、荷受台30は、コンテナ35を載置するフォーク状の水平状部34を機体後方に向け突出させ、この水平状部34を昇降可能に構成した農産物収穫機」が記載されている。
甲第2号証(実願昭52-142258号(実開昭54-68724号)のマイクロフィルム)には、第3頁第5行?第11行、第4頁第9行?第11行、第1図の記載からみて、「農産物を収容する収穫カゴ19を基端側角部を支点として水平方向に張り出す位置と折り畳まれる位置とに回動可能にした構成を有する農産物収穫機」が記載されている。
甲第3号証(特開平1-256314号公報)には、第2頁左下欄第13行?右下欄第14行、第2図の記載からみて、「農産物を収容するキャリア13を基端部を支点として水平方向に張り出す位置と折り畳まれる位置とに回動可能にした構成」が記載されている。
甲第4号証(実開平5-1794号公報)には、第2頁【実用新案登録請求の範囲1の欄、図1、図4(a)ないし(d)の記載からみて、「フォーク6を基端部を支点として水平方向に張り出す位置と折り畳まれる位置とに回動可能にした構成を有するフォークリフト」が記載されている。
甲第5号証(実公平2-24413号公報)には、「圃場の根菜類を掘起しながら拾上げて後方に搬送する拾上げ装置1と、この拾上げ装置1から供給される根菜類2を?選別する選別装置3と、選別された根菜類2を後方の回収部4に搬送する送りコンベヤー装置5を?機体6に連設し、圃場の根菜類2を連続的に収穫回収する根菜類収穫機8を構成してある。」(第2頁第3欄第9行?第18行)、「ローラマスト11は?アクチュエー夕13によって上下方向に昇降できるように構成してある。また、ローラマスト11?には、?根菜類2を収納する容器15を支持する一対のL字形状の受台16、16の?取付けてある。」(第2頁第3欄第22行?第33行)、第1図、第2図の記載からみて、「機体6前部に、圃場に植生している農産物を機体の進行と共に収穫し、機体6の後方に向け搬送するようにした拾上げ装置1、選別装置3、送りコンベヤー装置5を連設し、この送りコンベヤー装置5の後方に、収穫された農産物を収容する容器15を載置する受台16を設けた農産物収穫機において、受台16は、容器15を載置するフォーク状の水平部分を機体後方に向け突出させ、この水平部分を昇降可能に構成した農産物収穫機」が記載されている。
甲第6号証(実願昭51-76154号(実開昭52-167142号)のマイクロフィルム)には、「リフト装置は、フォーク14をコンテナのパレットに差し込んで支持し、リフト用シリンダで上下し、また、前後傾動用シリンダ16により前後方向に関し傾斜調節できるようにしてあり、」(第5頁第14行?第18行)、第3図、第4図の記載からみて、「フォーク14を昇降可能に構成すると共に、外フォーク14を機体に対して前後方向に傾斜可能とした農産物収穫機」が記載されている。
申立人井関農機株式会社が提出した甲第1号証(実願平3-573号(実開平4-94930号)のマイクロフィルム)、甲第2号証の2(実願昭56-58883号(実開昭57-174494号)のマイクロフィルム)には、2.(3)独立要件(引用刊行物記載の考案)に記載されたとおりの考案が記載されている。
甲第2号証の1(実願昭57-98077号(実開昭59-1638号)のマイクロフィルム)には、第4頁第15行?第5頁第12行、第1図乃至第3図の記載からみて、甲第2号証の2と同様の考案が記載されている。
甲第2号証の3(実願昭56-58884号(実開昭57-174495号)のマイクロフィルム)には、第2頁第20行?第4頁第6行、第4頁第7?16行、第1図の記載からみて、甲第2号証の2と同様の考案が記載されている。
甲第2号証の4(実開昭57-139585号(実開昭59-43499号)のマイクロフィルム)には、第2頁第10?20行、第3頁第7?12行、第3頁第13?17行、第1図乃至第4図の記載からみて、甲第2号証の2と同様の考案が記載されている。
甲第3号証の1(実願昭56-162756号(実開昭58-67894号)のマイクロフィルム)には、「操作レバー5cを操作することにより、傾斜用のシリンダー32が作動し、そのピストン32aが進退することによって、ガイドコラム16、17はその基部を中心として前後の向きに適宜傾斜する。たとえば、ガイドコラム17が鎖線17Aで示す位置にあるときには、ピストン32aの進退作用によってガイドコラム17Aは、鎖線17Bまたは17Cで示す前後方向の位置にそれぞれ傾斜し、その傾斜角度は例えば30°程度に設定される。」(第6頁第14行?第7頁第2行)、「運搬車が?上昇走行を行う場合には、?ガイドコラム16、17が前方に傾斜されて、荷物59の重心はやや前方に移動されて、運搬車が後方に傾倒するのが防止される。?前方に傾倒するのが防止される。」(第7頁第5?14行)、第4図の記載からみて、「フォーク14、15を、本体1に対して前後に傾斜可能としたフォークリフト」が記載されている。
甲第3号証の2(実願昭55-133699号(実開昭57-56689号)のマイクロフィルム)には、第5頁第7?20行、第6頁第11?16行、第2図の記載からみて、甲第3号証の1と同様の考案が記載されている。
(4)対比・判断
本件考案と申立人松山株式会社提出の甲第1乃至6号証に記載された考案、申立人井関農機株式会社提出の甲第1号証乃至甲第3号証の2に記載された考案とを対比すると、申立人松山株式会社提出の甲第1乃至6号証、申立人井関農機株式会社提出の甲第1号証乃至甲第3号証の2のいずれにも、訂正考案を特定するための事項である、「フォークを、機体に対して前傾状に傾斜して昇降可能としたこと」が記載されておらず、また、これを示唆する記載もない。
そして、当該事項により、訂正考案は、「収穫した農産物をコンテナに収容する距離の調節がよりスムーズに行われ、農産物の損傷を防止することができる。また、機体のバランスを良好に保持することができる」という明細書記載の顕著な効果を奏するものである。なお、申立人松山株式会社提出の甲第1号証、甲第6号証には、甲第1号証におけるマスト15、甲第6号証におけるフォーク14の支持部を傾斜させる構成が記載されているが、これらが機体に対して傾斜した上でフォークを昇降可能とする構成については記載がなく、これらを機体に対して傾斜させる事項とフォークを昇降可能とする事項と組み合わせることは当業者にとって、普通に採用することができる程度の技術的事項でもない。また、申立人井関農機株式会社提出の甲第3号証の1乃至甲第3号証の2についても同様である。
したがって、本件考案は、申立人松山株式会社提出の甲第1号証の出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された考案と同一ではなく、甲第5号証に記載された考案ではなく、また、上記甲第2号証乃至甲第6号証に記載された考案から当業者がきわめて容易に考案できたものでもない。
また、本件考案は、申立人井関農機株式会社提出の甲第1号証乃至甲第3号証の2に記載された考案から当業者がきわめて容易に考案できたものではない。
4.むすび
以上のとおりであるから、実用新案登録異議申立ての理由及び証拠によっては、本件考案の実用新案登録を取り消すことはできない。
また、他に本件考案の実用新案登録を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
発明の名称 (54)【考案の名称】
農産物収穫機
(57)【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 機体前部に、圃場に植生している農産物を機体の進行と共に収穫し、機体の後方に向け搬送するようにした収穫部を設け、この収穫部の後方に、収穫された農産物を収容するコンテナを載置するためのコンテナ載置部を設けた農産物収穫機において、
上記コンテナ載置部は、コンテナを載置するフォークを機体後方に向け突出させ、このフォークを、昇降可能、かつ基端部を支点にして水平方向に張り出す位置と機体側に折り畳まれる位置とに回動可能に構成すると共に、該フォークを、機体に対して前傾状に傾斜して昇降可能としたことを特徴とする農産物収穫機。
【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、農産物を圃場から収穫し、収穫した農産物を収容するコンテナを載置するコンテナ載置部に特徴を有する小型乗用形式の農産物収穫機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、農産物を収穫するようにした農産物収穫機として各種のものが提案されている。例えば、機体前部に、圃場に植生している農産物を機体の進行と共に収穫し、機体の後方に向け搬送するようにした収穫部を設け、この収穫部の後方に、収穫された農産物を収容するコンテナを載置するためのコンテナ載置部を設けたものを、本出願人は提案している。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
上記農産物収穫機のコンテナ載置部は、2本のフォークを機体から外側に向け突出させているので、収穫機を使用しないときには邪魔になった。また、コンテナ載置部上にコンテナを載置して農産物を収容するときに、農産物を投入する位置からコンテナヘの収容位置までの距離が大きいと、農産物を傷つけ易くなる、といった問題点があった。
本考案は、上記の問題点を解決することを目的になされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本考案は、機体前部に、圃場に植生している農産物を機体の進行と共に収穫し、機体の後方に向け搬送するようにした収穫部を設け、この収穫部の後方に、収穫された農産物を収容するコンテナを載置するためのコンテナ載置部を設けた農産物収穫機において、
上記コンテナ載置部は、コンテナを載置するフォークを機体後方に向け突出させ、このフォークを、昇降可能、かつ基端部を支点にして水平方向に張り出す位置と機体側に折り畳まれる位置とに回動可能に構成すると共に、該フォークを、機体に対して前傾状に傾斜して昇降可能としたことを特徴とする。
【0005】
【作用】
上記の構成によって本考案の農産物収穫機は、次の作用をする。
コンテナ載置部は、コンテナを載置するフォークを機体後方に向け突出させ、このフォークを、昇降可能、かつ基端部を支点にして水平方向に張り出す位置と機体側に折り畳まれる位置とに回動可能にしたので、収穫機を使用しないときはフォークを折り畳むことにより邪魔にならない。また、フォークを昇降させることにより、収穫した農産物をコンテナに収容する距離を調節する。さらに、フォークを、機体に対して前傾状に傾斜させて昇降可能としたので、収穫した農産物をコンテナに収容する距離の調節がスムーズに行われる。
【0006】
【実施例】
以下、本考案の一実施例を添付の図面を参照して具体的に説明する。
図1ないし図4において、符号1は結球野菜収穫機で、この結球野菜収穫機1は、左右対をなしスピン旋回を可能にしたクローラ2,2を装備している。このクローラ2,2間の機体ほぼ中央部にエンジン3を搭載し、このエンジン3の前側下部位置に、油圧ポンプ4、油圧無段変速装置(HST)を含むトランスミッション5を搭載すると共に、エンジン3から動力伝達するようにしている。また、機体の下部前方からトランスミッション5上を通り機体中央上部にかけて斜め方向に、圃場に植生している結球野菜を抜取り、後方に向け搬送する左右一対のスクリューコンベア6,6を配設し、このスクリューコンベア6,6は、前側部分を上下動するように基端部を枢支している。エンジン3の側方には、操縦部7を設けている。
【0007】
スクリューコンベア6,6は、図5ないし図10にも示すように、圃場に植生している結球野菜(例えばキャベツ)の根茎部を左右両側から挟持するようにして回転しながら機体の進行と共に圃場から引き抜く引き抜き部6aと、引き抜き部6aで引き抜かれた結球野菜を根茎部を挟持した状態で引き継いで、機体の後方斜め上方に向け搬送する第1搬送部6b及び第2搬送部6cとで構成されている。このスクリューコンベア6の搬送終端部に臨んで機体のほぼ中央部に、搬送された結球野菜から根茎部を人力により切断処理する切断台(処理スペース)8を設けている。切断台8の後方に、切断処理された結球野菜を収容するコンテナ9を載置するフォークリフトからなるコンテナ載置部10を、ピン10aを中心にして水平方向に張り出す位置と機体側に折り畳まれる位置とに回動可能とし、また上部で切断台8に接近し、下部で切断台8から離間するように斜めに昇降可能に設けている。
【0008】
スクリューコンベア6の引き抜き部6aは、前側が平面において八字状に開いていて、圃場に植生している結球野菜の根茎部の導入を容易にし、その先端部にスクリューを有しない紡錘状のガイド体11を設けている。また、スクリューコンベア6の第2搬送部6cの始端部下方には、スクリューコンベア6,6により搬送されて来る結球野菜の根部を切断する切断刃12を設けている。スクリューコンベア6,6の両側方に、伝動軸13を内装した支持フレーム兼伝動フレーム14,14が設けられていてスクリューコンベア6,6を回動自在に支持すると共に、引き抜き部6aの前部においてギヤ伝動機構15を介して動力伝達するようにしている。上記支持フレーム兼伝動フレーム14,14は、スクリューコンベア6,6の側方に限らず上方に設けるようにしてもよいものである。
【0009】
支持フレーム兼伝動フレーム14,14の後端部両側には回動支持部材16,16が固着され、この回動支持部材16,16が回動軸17を介して機体に枢支されている。また、支持フレーム兼伝動フレーム14の下側と機体との間には、油圧シリンダ18が介装されていて、この油圧シリンダ18の伸縮作動によってスクリューコンベア6,6、支持フレーム兼伝動フレーム14,14等は回動軸17を中心に回動して、その前部側が上下移動するようになっている。
【0010】
支持フレーム兼伝動フレーム14,14の後端部には、図1及び図5に示すように、エンジン3からの伝動系により動力伝達される動力伝達部19を設け、この動力伝達部19からチェン伝動系を介してスクリューコンベア駆動部20,20に動力伝達するようにしている。スクリューコンベア駆動部20,20から、ギヤ伝動機構21,22を介して、支持フレーム兼伝動フレーム14,14に内装された伝動軸13,13及びスクリューコンベア6,6の第2搬送部6c,6cの終端にそれぞれ動力伝達され、第2搬送部6c,6cから第1搬送部6b,6bを駆動するようにしている。また、スクリューコンベア6,6の引き抜き部6a、第1搬送部6b及び第2搬送部6cは、それぞれ独立して構成され、単独で交換可能となっている。
【0011】
そして、伝動軸13,13からギヤ伝動機構15,15を介して動力伝達される引き抜き部6a,6aは共に外側に向け回転し、スクリューコンベア駆動部20,20からギヤ伝動機構21,22を介して動力伝達される第1搬送部6b及び第2搬送部6cは共に内側に向け回転するようになっている。また、引き抜き部6aと第1搬送部6b及び第2搬送部6cは、それぞれの機能に適した回転数で回転し、また、異なったスクリューの旋回方向及びピッチを有している。さらに、スクリューコンベア6は、図6に示すように、水平線に対して引き抜き部6aの前半部がa度(0?20度)、引き抜き部6aの後半部から第1搬送部6bにかけてb度(28±5度)、第2搬送部6cがc度(45±10度)屈曲しており、それぞれの屈曲部においてユニバーサルジョイント23,24により接続されている。また、支持フレーム兼伝動フレーム14には、屈曲伝動部25が形成されている。
【0012】
上記スクリューコンベア6,6の搬送部分に対応して、搬送される結球野菜を上方から押さえる押えベルト26を設けている。この押えベルト26は、支持フレーム兼伝動フレーム14,14を、その前部において門型フレーム27により連結し、この門型フレーム27と支持フレーム兼伝動フレーム14,14の後端部とを左右一対の縦フレーム28,28により連結し、縦フレーム28,28間を跨ぐように連結した上部フレーム29,30に対して、支持フレーム26aの後部を左右一対のリンク体31,31により上下,前後方向に平行移動及び回動移動可能に支持し、また前部を左右一対のバネ32,32により弾持している。押えベルト26の移動速度とスクリューコンベア6,6の回転速度,即ち、結球野菜の移動速度とは同期させている。上記リンク体31,31は、押えベルト26の後部に限らず中間部あるいは前部に設けるようにしてもよいものである。
【0013】
押えベルト26の外周面には、可撓性部材からなる板状の掻込み体33,33…が所定間隔に設けられている。この掻込み体33は、必ずしも設けなくともよいものである。また、押えベルト26への動力伝達は、上記スクリューコンベア駆動部20の軸端部からフレキシブルチューブ(伝達機構)34を介して行われようになっている。さらに、上記切断刃12への動力伝達も、機体側からフレキシブルチューブ(伝達機構)35を介して行われようになっている。そして、押えベルト26はスクリューコンベア6,6に対して所定範囲で上下及び前後動可能であり、また、押えベルト26及びスクリューコンベア6,6等により構成される収穫搬送部36全体が、回動軸17を中心に回動して、その前部側が上下動可能となっている。
【0014】
スクリューコンベア6,6の引き抜き部6a,6a側方付近には、結球野菜栽培畝の両側に接して追従し、かつ結球野菜の引き抜き反力を受ける左右一対のガイド輪37,37を配設している。このガイド輪37は、上部フレーム29と門型フレーム27との間に設けられた上下調節機構38に、連繋部材39を介して連繋,支持され、また、左右幅調節も可能であり、かつキャンバー角を有している。そして、機体の走行と共に結球野菜栽培畝の両側にガイド輪37,37が転接して機体を自動操向させ、一人の作業者による圃場端での操縦(旋回)操作と切断台8での切断作業とを可能にしている。また、結球野菜栽培畝の高さや幅に応じて、ガイド輪37,37の上下移動調節及び左右幅調節が行われる。
【0015】
操縦部7の後方で、切断台8の側方に位置して、作業者が乗るステップ40が設けられると共に、その一部に座席41が設けられている。作業者は、圃場端において旋回するとき操縦部7での操縦(操向)操作を行う以外は、収穫作業中の殆どはガイド輪37,37が結球野菜栽培畝の両側に接して追従し、ほぼ自動的に操向操作されて、作業者は専ら、スクリューコンベア6,6及び押えベルト26によって搬送され、その搬送終端から切断台8に向け排出される結球野菜から、包丁等で根茎部を切断処理する作業を行うようにしている。切断処理された結球野菜は、コンテナ載置部10上に載置されたコンテナ9に収容される。
【0016】
コンテナ載置部10は、2本のフォークからなる載置台が、切断台8の後方に前傾状に設けられた左右一対のチャンネル材からなる傾斜フレーム42に、図示しないがローラ、チェーンを介して油圧シリンダ43に連繋され、油圧シリンダ43の伸縮作動により昇降可能に支持されリフト装置を構成している。そして、根茎部を切断処理された結球野菜を収容したコンテナ9を載置して、その収容量によって上下移動させると共に、コンテナ9の荷役作業にも用いられる。ここで使用されるコンテナ9は、結球野菜を約200kg収容できる程度の大型のものである。また、コンテナ載置部10は、その基端部のピン10aを中心に上方に回動して機体側に収納できる。
【0017】
エンジン3から動力を受けて変速するトランスミッション5においては、無段変速する油圧無段変速装置(HST)と、変速ギヤとにより無段と有段とに変速するようにし、サイドクラッチ、デファレンシャル装置を介して動力伝達を接,断してクローラ2,2を無段と有段とに変速走行させるようにしている。また、デファレンシャル装置に関連してブレーキ装置が設けられている。そして、操向レバーを大きく操作したとき、サイドクラッチ、差動機構、ブレーキの作動により機体をスピン旋回させるようにしている。
【0018】
スクリューコンベア6,6及び押えベルト26は、その回転速度及び移動速度が無段と有段とに変速調節可能であり、これにクローラ2,2の無段または有段変速走行と組合せることにより、結球野菜の収穫作業速度が自由に設定可能である。また、スクリューコンベア6,6及び押えベルト26は、路上走行時や圃場端での旋回作業時には、油圧シリンダ18を伸張させて回動軸17を中心回動させ、先端側を上昇させた状態で、路上走行を容易にし、枕地旋回を少ない面積で行えるようにしている。
【0019】
次に、上記のように構成された結球野菜収穫機1の動作について説明する。
結球野菜収穫機1は、例えば、結球野菜であるキャベツを栽培している圃場において収穫作業を行うとき、栽培畝に応じてガイド輪37,37を上下調節機構38により上下調節し、また左右幅を調節して、油圧シリンダ18を収縮させて収穫搬送部36の前部を下降させ、ガイド輪37,37を栽培畝の両側に接した状態で、スクリューコンベア6,6及び押えベルト26を回転駆動させ、クローラ2,2により機体を走行させる。すると、機体はガイド輪37,37によりほぼ自動操向されて走行し、栽培畝に植生している結球野菜は、スクリューコンベア6,6の引き抜き部6a,6aにより根茎部が両側から挟持され、外側への回転と機体の走行とによって引き抜かれ、後方へ送られる。
【0020】
引き抜き部6a,6aには先端部にガイド体11,11が設けられているので結球野菜への導入がよく、また回転している引き抜き部6a,6aに、圃場に生えている雑草等が巻付くのが防止される。引き抜き部6a,6aで引き抜かれた結球野菜は、内側に回転する第1搬送部6b,6bに引き継がれ、次いで第2搬送部6c,6cに引き継がれて機体の後方に向け急角度で上昇,搬送される。この搬送過程において、結球野菜は上方から押えベルト26により押さえられて安定した姿勢で移動し、その移動途中で結球野菜の根部が切断刃12により切断される。
【0021】
押えベルト26は、前端側が上部フレーム29にバネ32により吊持されてリンク体31により上下動及び平行移動ができ、しかもスクリューコンベア6,6との対応部分では掻込み体33,33…により掻き込まれるので、結球野菜の大きさ、間隔等に応じて的確に押えて姿勢を矯正すると共に、より確実な搬送を行う。また、押えベルト26への動力伝達はフレキシブルチューブ35により行われるので、押えベルト26は所定範囲で自由に上下動、平行移動を行うことができる。
【0022】
また、スクリューコンベア6,6及び押えベルト26等の収穫搬送部36は、支持フレーム兼伝動フレーム14,14の後端部が回動軸17により回動自在であり、前端側がガイド輪37,37により支持されているので、スクリューコンベア6,6の前側はきわめて軽く支持されることになり、フローティング状態で圃場の凹凸に対してすばやく追従し、精度の高い収穫作業を行うことができる。また、切断刃12への動力伝達も、機体側からフレキシブルチューブ35を介して行われているので、収穫搬送部36全体の上下動もスムーズに行われ、安定した収穫作業が行われる。
【0023】
クリューコンベア6,6の搬送終端部から排出された結球野菜は切断台8にもたらされる。そして作業者は、結球野菜から茎幹部及び下葉等を包丁等で切断して処理する。切断された茎幹部及び下葉等は圃場に放出される。切断処理された結球野菜は、コンテナ載置部10上に載置されたコンテナ9に投入するようにして収容される。このとき、コンテナ9に収容された結球野菜の量が少ないときはコンテナ載置部10を上昇させ、その量が多くなるに従って下降させることで、結球野菜の投入,落下時おける損傷を少なくすることができる。また、収穫機を使用しないときは、コンテナ載置部10のフォークをピン10aを中心に上方に回動して機体側に収納することにより、コンパクトとなり、邪魔にならない。
【0024】
コンテナ載置部10は、油圧シリンダ43により機体に対し前傾状に斜め方向に昇降するようになっているので、上昇させて機体側に接近させることにより、機体重心を機体中央寄りに移動させて安定した走行性が得られる。また、コンテナ9内の結球野菜が一杯になったときには、一旦収穫作業を中断し、油圧シリンダ18により収穫搬送部36の前側を揚上した状態で、機体を畦畔部またはすでに収穫を終わった場所に移動し、コンテナ載置部10によりコンテナ9を降ろし、新たなコンテナ9を載置して収穫作業を再開する。降ろされたコンテナ9内の結球野菜は、別の作業者により箱詰めされて出荷される。
【0025】
ここで、結球野菜収穫機1は、クローラ2,2の前方側にトランスミッション5、ほぼ中央部にエンジン3、操縦部7及び処理スペース8を配設し、後方側にコンテナ載置部10を配置することにより、機体の前後,左右のバランスがよくなり、作業性,作業精度が良好となり、機体の走行性,旋回性能,安定性が向上している。また、クローラ2,2をスピン旋回が可能に構成すると共に、トランスミッション5を機体前側中央部に配設していることにより、機体がスピン旋回するときに左右何れの方向にもバランスよく旋回できる。従って、クローラ2,2によって圃場の土を大きくかき寄せることがない。
【0026】
上記実施例のスクリューコンベア6,6の引き抜き部6a、第1搬送部6b及び第2搬送部6cの螺旋方向、ピッチ及び回転方向、回転数を、それぞれの機能に適した状態にしているので結球野菜の適切な引き抜きと搬送作業が行われる。また、引き抜き部6aと第1搬送部6b及び第2搬送部6cとは別々の動力伝達系で駆動されているので、それぞれの回転数を変更することも可能であり、その調節によりより適切な作業を行うこともできる。さらに、引き抜き部6aと第1搬送部6b及び第2搬送部6cは、それぞれ複数のユニットで構成されているので、それらの何れかが破損した場合には、破損したもののみを交換すればよい。
【0027】
【考案の効果】
以上説明したように本考案の農産物収穫機によれば、コンテナ載置部は、コンテナを載置するフォークを機体後方に向け突出させ、このフォークを、昇降可能、かつ基端部を支点にして水平方向に張り出す位置と機体側に折り畳まれる位置とに回動可能にしたので、収穫機を使用しないときはフォークを折り畳んでおくことにより、機体がコンパクトになり、邪魔になることがない。また、フォークを昇降させることにより、収穫した農産物をコンテナに収容する距離を調節し、農産物の損傷を防止することができる。さらに、フォークを、機体に対して前傾状に傾斜させて昇降可能としたので、収穫した農産物をコンテナに収容する距離の節がよりスムーズに行われ、農産物の損傷を防止することができる。また、機体のバランスを良好に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本考案による結球野菜収穫機全体の斜視図である。
【図2】
同側面図である。
【図3】
同平面図である。
【図4】
同正面図である。
【図5】
スクリューコンベア部分の平面図である。
【図6】
同側面図である。
【図7】
図5及び図6の矢印A部の断面図である。
【図8】
図5及び図6の矢印B部の断面図である。
【図9】
図5及び図6の矢印C部の断面図である。
【図10】
図5及び図6の矢印D部の断面図である。
【符号の説明】
1 結球野菜収穫機
2 クローラ
3 エンジン
4 油圧ポンプ
5 トランスミッション
6 スクリューコンベア 6a 引き抜き部 6b 第1搬送部 6c 第2搬送部
7 操縦部
8 切断台(処理スペース)
9 コンテナ
10 コンテナ載置部(フォーク) 10a ピン
11 ガイド体
12 切断刃
13 伝動軸
14 支持フレーム兼伝動フレーム
15,21,22 ギヤ伝動機構
16 回動支持部材
17 回動軸
18,43 油圧シリンダ
19 動力伝達部
20 スクリューコンベア駆動部
23,24 ユニバーサルジョイント
25 屈曲伝動部
26 押さえベルト26a支持フレーム
27 門型フレーム
28 縦フレーム
29,30 上部フレーム
31 リンク体
32 バネ
33 掻込み体
34,35 フレキシブルチューブ(伝動機構)
36 収穫搬送部
37 ガイド輪
38 上下調節機構
39 連繋部材
40 ステップ
41 座席
42 傾斜フレーム
a?c 水平面との傾斜角度
訂正の要旨 訂正の要旨
a)明細書の実用新案登録請求の範囲の記載
「【請求項1】 機体前部に、圃場に植生している農産物を機体の進行と共に収穫し、機体の後方に向け搬送するようにした収穫部を設け、この収穫部の後方に、収穫された農産物を収容するコンテナを載置するためのコンテナ載置部を設けた農産物収穫機において、上記コンテナ載置部は、コンテナを載置するフォークを機体外側に向け突出させ、このフォークを、昇降可能、かつ基端部を支点にして水平方向に張り出す位置と機体側に折り畳まれる位置とに回動可能に構成したことを特徴とする農産物収穫機。
【請求項2】 フォークを、機体に対して斜め方向に昇降可能に構成したことを特徴とする請求項1記載の農産物収穫機。」を、
「【請求項1】 機体前部に、圃場に植生している農産物を機体の進行と共に収穫し、機体の後方に向け搬送するようにした収穫部を設け、この収穫部の後方に、収穫された農産物を収容するコンテナを載置するためのコンテナ載置部を設けた農産物収穫機において、
上記コンテナ載置部は、コンテナを載置するフォークを機体後方に向け突出させ、このフォークを、昇降可能、かつ基端部を支点にして水平方向に張り出す位置と機体側に折り畳まれる位置とに回動可能に構成すると共に、該フォークを、機体に対して前傾状に傾斜して昇降可能としたことを特徴とする農産物収穫機。」
と訂正する。
b) 明細書の段落【0004】、【0005】、【0027】の記載
「【0004】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために本考案は、
(1)機体前部に、圃場に植生している農産物を機体の進行と共に収穫し、機体の後方に向け搬送するようにした収穫部を設け、この収穫部の後方に、収穫された農産物を収容するコンテナを載置するためのコンテナ載置部を設けた農産物収穫機において、上記コンテナ載置部は、コンテナを載置するフォークを機体外側に向け突出させ、このフォークを、昇降可能、かつ基端部を支点にして水平方向に張り出す位置と機体側に折り畳まれる位置とに回動可能に構成したこと、
(2)フォークを、機体に対して斜め方向に昇降可能に構成したこと、をそれぞれ特徴とする。」、
「【0005】
【作用】上記の構成によって本考案の農産物収穫機は、次の作用をする。
(1) コンテナ載置部は、コンテナを載置するフォークを機体外側に向け突出させ、このフォークを、昇降可能、かつ基端部を支点にして水平方向に張り出す位置と機体側に折り畳まれる位置とに回動可能にしたので、収穫機を使用しないときはフォークを折り畳むことにより邪魔にならない。また、フォークを昇降させることにより、収穫した農産物をコンテナに収容する距離を調節する。
(2) フォークを、機体に対して斜め方向に昇降可能にしたので、収穫した農産物をコンテナに収容する距離の調節がスムーズに行われる。」、
「【0027】
【考案の効果】以上説明したように本考案の農産物収穫機によれば、以下の効果を奏する。
(1) コンテナ載置部は、コンテナを載置するフォークを機体外側に向け突出させ、このフォークを、昇降可能、かつ基端部を支点にして水平方向に張り出す位置と機体側に折り畳まれる位置とに回動可能にしたので、収穫機を使用しないときはフォークを折り畳んでおくことにより、機体がコンパクトになり、邪魔になることがない。また、フォークを昇降させることにより、収穫した農産物をコンテナに収容する距離を調節し、農産物の損傷を防止することができる。
(2) フォークを、機体に対して斜め方向に昇降可能にしたので、収穫した農産物をコンテナに収容する距離の調節がよりスムーズに行われ、農産物の損傷を防止することができる。また、機体のバランスを良好に保持することができる。」を、
「 【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本考案は、機体前部に、圃場に植生している農産物を機体の進行と共に収穫し、機体の後方に向け搬送するようにした収穫部を設け、この収穫部の後方に、収穫された農産物を収容するコンテナを載置するためのコンテナ載置部を設けた農産物収穫機において、
上記コンテナ載置部は、コンテナを載置するフォークを機体後方に向け突出させ、このフォークを、昇降可能、かつ基端部を支点にして水平方向に張り出す位置と機体側に折り畳まれる位置とに回動可能に構成すると共に、該フォークを、機体に対して前傾状に傾斜して昇降可能としたことを特徴とする。」、
「 【0005】
【作用】
上記の構成によって本考案の農産物収穫機は、次の作用をする。
コンテナ載置部は、コンテナを載置するフォークを機体外側に向け突出させ、このフォークを、昇降可能、かつ基端部を支点にして水平方向に張り出す位置と機体側に折り畳まれる位置とに回動可能にしたので、収穫機を使用しないときはフォークを折り畳むことにより邪魔にならない。また、フォークを昇降させることにより、収穫した農産物をコンテナに収容する距離を調節する。さらに、フォークを、機体に対して前傾状に傾斜させて昇降可能としたので、収穫した農産物をコンテナに収容する距離の調節がスムーズに行われる。」、
「 【0027】
【考案の効果】以上説明したように本考案の農産物収穫機によれば、コンテナ載置部は、コンテナを載置するフォークを機体後方に向け突出させ、このフォークを、昇降可能、かつ基端部を支点にして水平方向に張り出す位置と機体側に折り畳まれる位置とに回動可能にしたので、収穫機を使用しないときはフォークを折り畳んでおくことにより、機体がコンパクトになり、邪魔になることがない。また、フォークを昇降させることにより、収穫した農産物をコンテナに収容する距離を調節し、農産物の損傷を防止することができる。さらに、フォークを、機体に対して前傾状に傾斜させて昇降可能としたので、収穫した農産物をコンテナに収容する距離の調節がよりスムーズに行われ、農産物の損傷を防止することができる。また、機体のバランスを良好に保持することができる。」と訂正する。
異議決定日 2000-04-26 
出願番号 実願平5-10956 
審決分類 U 1 651・ 161- YA (A01D)
U 1 651・ 121- YA (A01D)
U 1 651・ 113- YA (A01D)
最終処分 維持    
前審関与審査官 山田 昭次  
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 新井 重雄
佐藤 昭喜
登録日 1998-10-02 
登録番号 実用新案登録第2586350号(U2586350) 
権利者 小橋工業株式会社
岡山県岡山市中畦684番地
考案の名称 農産物収穫機  
代理人 小橋 信淳  
代理人 山田 哲也  
代理人 樺沢 襄  
代理人 島宗 正見  
代理人 小橋 信淳  
代理人 樺沢 聡  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ